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特開2023-39863張力調整装置、搬送装置、タイヤ部品製造装置、タイヤ製造装置、張力調整方法、搬送方法、タイヤ部品製造方法、タイヤ製造方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039863
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】張力調整装置、搬送装置、タイヤ部品製造装置、タイヤ製造装置、張力調整方法、搬送方法、タイヤ部品製造方法、タイヤ製造方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/192 20060101AFI20230314BHJP
   B29D 30/38 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B65H23/192
B29D30/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147209
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和生
(72)【発明者】
【氏名】小柳 玲央
(72)【発明者】
【氏名】佐野 晋一
【テーマコード(参考)】
3F105
4F215
【Fターム(参考)】
3F105AA12
3F105AB00
3F105BA02
3F105CA15
3F105CB02
3F105CC02
3F105DA02
3F105DA03
3F105DB02
4F215AH20
4F215AP04
4F215AR04
4F215VA11
4F215VD07
4F215VD08
4F215VD10
4F215VM02
4F215VM04
4F215VM06
4F215VP28
4F215VR03
(57)【要約】
【課題】本発明は、張力変動を抑制し、高精度な張力を保つ材料の搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】搬送される材料を支持する一対の支持ローラと、前記一対の支持ローラ間で、該支持ローラの軸方向から見て前記材料を該材料の搬送方向との交差方向に押す押しローラと、前記押しローラが前記材料を押す荷重を測定する測定部と、前記押しローラを駆動させる駆動部と、前記測定部の測定結果に基づいて前記荷重を目標荷重範囲となるように前記駆動部を制御する制御部と、を備えた張力調整装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される材料を支持する一対の支持ローラと、
前記一対の支持ローラ間で、該支持ローラの軸方向から見て前記材料を該材料の搬送方向との交差方向に押す押しローラと、
前記押しローラが前記材料を押す荷重を測定する測定部と、
前記押しローラを駆動させる駆動部と、
前記測定部の測定結果に基づいて前記荷重を目標荷重範囲となるように前記駆動部を制御する制御部と、
を備えた張力調整装置。
【請求項2】
前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを一端側で回転可能に支持すると共に該ローラの軸方向に沿って伸びる方向を軸方向として他端側で回転可能に支持されたアームと、を含むダンサアームであり、
前記駆動部は、前記ダンサアームの前記アームを回転駆動させ、
前記測定部は、前記ダンサアームに生じるトルクを測定する、
請求項1に記載の張力調整装置。
【請求項3】
前記ダンサアームは、前記軸に対して前記ローラの反対側にカウンタウェイトをさらに有する、
請求項2に記載の張力調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ダンサアームの角度と搬送される材料に生じる張力との対応関係を記憶する記憶部をさらに備え、前記記憶部に記憶された前記対応関係に基づいて、前記駆動部が出力するトルクを補正する、
請求項2又は請求項3に記載の張力調整装置。
【請求項5】
前記支持ローラに対して前記材料の搬送方向下流側に搬送された前記材料に生じる張力を測定する張力測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記張力測定部から得られる結果に基づいて、前記駆動部が出力するトルクを補正する、
請求項2又は請求項3に記載の張力調整装置。
【請求項6】
前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを回転可能に支持し前記交差方向に直動する直動体とを有する直動部材であり、
前記測定部は、前記直動部材が前記材料から受ける荷重を測定する、
請求項1に記載の張力調整装置。
【請求項7】
前記一対の支持ローラは、前記直動部材の前記ローラに前記材料が巻き掛かる角範囲が180°となるように配置されている、
請求項6に記載の張力調整装置。
【請求項8】
前記材料の搬送方向で前記一対の支持ローラに対する上流側に配置され、前記材料に搬送力を付与する搬送部をさらに備え、
前記制御部は、前記ダンサアームの角度又は前記直動部材を構成する前記ローラの位置が一定となるように前記搬送部による前記材料の搬送速度を制御する、
請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の張力調整装置。
【請求項9】
前記材料を巻き出す巻き出し部と、
前記材料を巻き取る巻き取り部と、
前記材料が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中に設けられた請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の張力調整装置と、
を有する搬送装置。
【請求項10】
前記材料は、タイヤ用部材であり、
前記タイヤ用部材を巻き出す巻き出し部と、
前記タイヤ用部材を巻き取る巻き取り部と、
前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中に設けられた請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の張力調整装置と、
を有するタイヤ部品製造装置。
【請求項11】
前記材料は、タイヤ用部材であり、
前記タイヤ用部材を巻き出す巻き出し部と、
前記タイヤ用部材を巻き取る巻き取り部と、
前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中に設けられた請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の張力調整装置と、
前記タイヤ用部材から得られるタイヤ部品をタイヤに加工するタイヤ成型装置と、
を有するタイヤ製造装置。
【請求項12】
搬送される材料を一対の支持ローラで支持し、
前記一対の支持ローラ間で、該支持ローラの軸方向から見て前記材料を該材料の搬送方向との交差方向に駆動部によって駆動された押しローラで押し、
前記押しローラが前記材料を押す荷重を測定部で測定し、
前記測定部の測定結果に基づいて前記荷重を目標荷重範囲となるように制御部で前記駆動部を制御する、
ことを含む、張力調整方法。
【請求項13】
前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを一端側で回転可能に支持すると共に該ローラに沿って伸びる方向を軸方向として他端側で回転可能に支持されたアームと、を含むダンサアームであり、
前記駆動部は、前記ダンサアームの前記アームを回転駆動させ、
前記測定部は、前記ダンサアームに生じるトルクを測定する、
請求項12に記載の張力調整方法。
【請求項14】
前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを回転可能に支持し前記交差方向に直動する直動体とを有する直動部材であり、
前記測定部は、前記直動部材が前記押しローラから受ける荷重を測定する、
請求項12に記載の張力調整方法。
【請求項15】
巻き出し部で前記材料を巻き出しし、
巻き取り部で前記材料を巻き取りし、
材料が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中で請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の張力調整方法で張力を制御することを含む、
搬送方法。
【請求項16】
前記材料は、タイヤ用部材であり、
前記タイヤ用部材を巻き出し部で巻き出し、
前記タイヤ用部材を巻き取り部で巻き取し、
前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中で請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の張力調整方法を含む、
タイヤ部品製造方法。
【請求項17】
前記材料は、タイヤ用部材であり、
前記タイヤ用部材を巻き出し部で巻き出し、
前記タイヤ用部材を巻き取り部で巻き取し、
前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中で請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の張力調整方法により得られるタイヤ部品をタイヤに加工することを含む、
タイヤ製造方法。
【請求項18】
コンピュータを請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の張力調整装置の制御部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力調整装置、搬送装置、タイヤ部品製造装置、タイヤ製造装置、張力調整方法、搬送方法、タイヤ部品製造方法、タイヤ製造方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される材料の張力を保つ調整装置及び調整方法として、次に示す文献が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、線材が巻掛けられる送り出し用プーリ21と、この送り出し用プーリ21を回転駆動して上流側にある線材を下流側へ送り出すサーボモータ22と、送り出し用プーリ21よりも下流側に配設され、下流側から引っ張られて引き出される線材の張力を検出する張力検出部50と、送り出し用プーリ21よりも下流側に配設され、下流側から引っ張られて引き出される線材の移動速度を検出する速度検出部40とを備える線材張力調整装置が開示されている。この装置では、速度検出部40で検出された線材の移動速度に基づきサーボモータ22の回転速度を制御するとともに、張力検出部50で検出された線材の張力に基づきサーボモータ22の回転速度を補正することにより、送り出し用プーリ21から送り出された線材の張力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5308860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材料を搬送する系において、上流側の駆動ローラ(巻き出しドラムの場合あり)と下流側の駆動ローラ(巻き取りドラムの場合あり)の周速を合わせること、すなわちライン速度を一定にすることが望ましい。しかしながら、機械振動、コア(ドラム)回転の変動等により、上記速度を合わせる事は、現実的には困難である。より具体的には、上記の駆動ローラの動力源はモータである。制御したいのは駆動ローラやドラムの表面速度であるが、実際に制御しているのはモータである。このため、モータごとに駆動対象の機械負荷が異なる為、表面速度を同一にすることが困難であり、またドラムの場合は長尺部材の巻き出し、巻取りに伴い巻き径が変化するため、表面速度を一定にすることが困難である。さらに、モータと駆動対象とが機械軸にて連結されているため、主に連結軸のねじり剛性に起因してねじり振動が発生する。
【0006】
そこで、上流側の駆動ローラと下流側の駆動ローラとの間で張力を生じさせ、この張力をダンサアームにて制御することが行われている。
【0007】
上記した特許文献1に記載の構成では、ダンサアーム式の線材弛緩吸収部30を有し、弛緩吸収用サーボモータ33のトルクによって弛緩吸収用プーリ32を支持するアーム31の揺動させることで、線材Wの張力を調整している。しかしながら、この構成では、サーボモータの温度が上昇した場合には、サーボモータから出力されるトルクが変化する。
【0008】
また、一般的には、サーボモータごとに出力トルクには個体差があり、さらにサーボモータの減速機や軸受け等によるトルクの損失は、温度により変化する。このため、サーボモータから出力するトルクのみを制御の比較対象とするフィードバック制御では、線材を引っ張る荷重が一定にならず、線材の張力が変動するという課題がある。
【0009】
本発明は上記した問題に着目してなされたものであって、搬送される材料の張力を高精度に調整し、張力変動を抑制可能な材料の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一態様の張力調整装置は、搬送される材料を支持する一対の支持ローラと、前記一対の支持ローラ間で、該支持ローラの軸方向から見て前記材料を該材料の搬送方向との交差方向に押す押しローラと、前記押しローラが前記材料を押す荷重を測定する測定部と、前記押しローラを駆動させる駆動部と、前記測定部の測定結果に基づいて前記荷重を目標荷重範囲となるように前記駆動部を制御する制御部と、を備える。
【0011】
第二態様の張力調整装置は、第一態様に記載の張力調整装置において、前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを一端側で回転可能に支持すると共に該ローラの軸方向に沿って伸びる方向を軸中心として他端側で回転可能に支持されたアームと、を含むダンサアームであり、前記駆動部は、前記ダンサアームの前記アームを回転駆動させ、前記測定部は、前記ダンサアームに生じるトルクを測定する。
【0012】
第三態様の発明は、第二態様に記載の張力調整装置において、前記ダンサアームは、前記軸に対して前記ローラの反対側にカウンタウェイトをさらに有する。
【0013】
第四態様の張力調整装置は、第二態様又は第三態様に記載の張力調整装置において、前記制御部は、前記ダンサアームの角度と搬送される材料に生じる張力との対応関係を記憶する記憶部をさらに備え、前記記憶部に記憶された前記対応関係に基づいて、前記駆動部が出力するトルクを補正する。
【0014】
第五態様の張力調整装置は、第二態様又は第三態様に記載の張力調整装置において、前記支持ローラに対して前記材料の搬送方向下流側に搬送された前記材料に生じる張力を測定する張力測定部をさらに備え、前記制御部は、前記張力測定部から得られる結果に基づいて、前記駆動部が出力するトルクを補正する。
【0015】
第六態様の張力調整装置は、第一態様に記載の張力調整装置において、前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを回転可能に支持し前記交差方向に直動する直動体とを有する直動部材であり、前記測定部は、前記直動部材が前記材料から受ける荷重を測定する。
【0016】
第七態様の張力調整装置は、第六態様に記載の張力調整装置において、前記一対の支持ローラは、前記直動部材の前記ローラに前記材料が巻き掛かる角範囲が180°となるように配置されている。
【0017】
第八態様の張力調整装置は、第二態様から第六態様のいずれか1態様の張力調整装置において、前記材料の搬送方向で前記一対の支持ローラに対する上流側に配置され、前記材料に搬送力を付与する搬送部をさらに備え、前記制御部は、前記ダンサアームの角度又は前記直動部材を構成する前記ローラの位置が一定となるように前記搬送部による前記材料の搬送速度を制御する。
【0018】
第九態様の搬送装置は、前記材料を巻き出す巻き出し部と、前記材料を巻き取る巻き取り部と、前記材料が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中に設けられた第一態様から第七態様のいずれか1態様の張力調整装置と、を有する。
【0019】
第十態様のタイヤ部品製造装置は、前記材料は、タイヤ用部材であり、前記タイヤ用部材を巻き出す巻き出し部と、前記タイヤ用部材を巻き取る巻き取り部と、前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中に設けられた第一態様から第七態様のいずれか1態様の張力調整装置と、を有する。
【0020】
第十一態様のタイヤ製造装置は、前記材料は、タイヤ用部材であり、前記タイヤ用部材を巻き出す巻き出し部と、前記タイヤ用部材を巻き取る巻き取り部と、前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中に設けられた第一態様から第七態様のいずれか1態様の張力調整装置と、前記タイヤ用部材から得られるタイヤ部品をタイヤに加工するタイヤ成型装置と、を有する。
【0021】
第十二態様の張力調整方法は、搬送される材料を一対の支持ローラで支持し、前記一対の支持ローラ間で、該支持ローラの軸方向から見て前記材料を該材料の搬送方向との交差方向に駆動部によって駆動された押しローラで押し、前記押しローラが前記材料を押す荷重を測定部で測定し、前記測定部の測定結果に基づいて前記荷重を目標荷重範囲となるように制御部で前記駆動部を制御する、ことを含む。
【0022】
第十三態様の張力調整方法は、第十二態様に記載の張力調整方法において、前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを一端側で回転可能に支持すると共に該ローラに沿って伸びる方向を中心軸として他端側で回転可能に支持されたアームと、を含むダンサアームであり、前記駆動部は、前記ダンサアームの前記アームを回転駆動させ、前記測定部は、前記ダンサアームに生じるトルクを測定する。
【0023】
第十四態様の発明は、第十二態様に記載の張力調整方法において、前記押しローラは、前記材料に接するローラと、該ローラを回転可能に支持し前記交差方向に直動する直動体とを有する直動部材であり、前記測定部は、前記直動部材が前記押しローラから受ける荷重を測定する。
【0024】
第十五態様の搬送方法は、巻き出し部で前記材料を巻き出しし、巻き取り部で前記材料を巻き取りし、材料が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中で第十二態様から第十四態様のいずれか1態様の張力調整方法で張力を制御することを含む。
【0025】
第十六態様のタイヤ部品製造方法は、前記材料は、タイヤ用部材であり、前記タイヤ用部材を巻き出し部で巻き出し、前記タイヤ用部材を巻き取り部で巻き取し、前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中で第十二態様から第十四態様のいずれか1態様の張力調整方法を含む。
【0026】
第十七態様のタイヤ製造方法は、前記材料は、タイヤ用部材であり、前記タイヤ用部材を巻き出し部で巻き出し、前記タイヤ用部材を巻き取り部で巻き取し、前記タイヤ用部材が前記巻き出し部から前記巻き取り部まで搬送される経路の途中で第十二態様から第十四態様のいずれか1態様の張力調整方法により得られるタイヤ部品をタイヤ成型装置によってタイヤに加工することを含む。
【0027】
第十八態様のプログラムは、コンピュータを第一態様から第七態様までのいずれか1態様の張力調整装置の制御部として機能させる。
【発明の効果】
【0028】
第一態様の張力調整装置によれば、測定部が押しローラが材料を押す荷重を測定し、制御部が測定部の測定結果に基づいて荷重を目標荷重範囲となるように駆動部を制御する。このため、材料の搬送工程において、材料に生じる張力の変動を、押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、低減することができる。
【0029】
第二態様の張力調整装置によれば、回転駆動するダンサアームと、ダンサアームに生じるトルクを測定する測定部を有しているため、第一態様の発明に係る張力調整装置を、回転駆動するダンサアームによって達成することができる。
【0030】
第三態様の張力調整装置によれば、第二態様に係る張力調整装置において、カウンタウェイトをさらに有しているため、ダンサアームを回転駆動させるモータの定格容量をより小さくすることができる。
【0031】
第四態様の張力調整装置によれば、第二態様又は第三態様に係る張力調整装置において、対応関係を記憶する記憶部をさらに有している。このため、ダンサアームが回転駆動した角度に応じて、ダンサアームを回転駆動させるモータが出力するトルクを変動させることにより、材料の張力変動をより低減することができる。
【0032】
第五態様の張力調整装置によれば、第二態様又は第三態様に係る張力調整装置において、張力測定部をさらに有しているため、ダンサアームの角度が変化した場合でも、材料の張力変動をより低減することができる。
【0033】
第六態様の張力調整装置によれば、直動する直動部材と、直動部材が材料から受ける荷重を測定する測定部を有しているため、第一態様の発明に係る張力調整装置を、直動する直動部材によって達成することができる。
【0034】
第七態様の張力調整装置によれば、第六態様に係る張力調整装置において、ローラに材料が巻き掛かる角範囲が180°となるように配置されているため、材料の曲げ姿勢が一定となり、材料に生じる張力をより高精度に制御することができる。
【0035】
第八態様の張力調整装置によれば、搬送部の搬送速度によりダンサアームの角度又は直動部材のローラ位置が一定になるため、材料の曲げ姿勢が一定となり、材料に生じる張力をより高精度に制御することができる。
【0036】
第九態様の搬送装置によれば、第一態様から第七態様のいずれか1態様の張力調整装置と、を有している。このため、押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、材料に生じる張力の変動をより低減しつつ材料を搬送することができる。
【0037】
第十態様のタイヤ部品製造装置によれば、第一態様から第七態様のいずれか1態様の張力調整装置と、を有している。このため、押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、材料に生じる張力の変動をより低減しつつタイヤ用部材を製造することができる。
【0038】
第十一態様のタイヤ製造装置によれば、第一態様から第七態様のいずれか1態様の張力調整装置と、を有している。このため、長押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、を有しているため、材料に生じる張力の変動をより低減しつつタイヤを製造することができる。
【0039】
第十二態様の張力調整方法によれば、測定部が押しローラが材料を押す荷重を測定し、制御部が測定部の測定結果に基づいて荷重を目標荷重範囲となるように駆動部を制御する。このため、材料の搬送工程において、材料中に生じる張力の変動を、押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、低減することができる。
【0040】
第十三態様の張力調整方法によれば、回転駆動するダンサアームと、ダンサアームに生じるトルクを測定する測定部を有しているため、第十二態様の発明に係る張力調整方法を回転駆動するダンサアームによって達成する。
【0041】
第十四態様の張力調整方法によれば、直動する直動部材と、直動部材が材料から受ける荷重を測定する測定部を有しているため、第十二態様の発明に係る張力調整装置を直動する直動部材によって達成する。
【0042】
第十五態様の搬送方法によれば、巻き出し部と、巻き取り部と、第十二態様から第十四態様のいずれか1態様に記載の張力調整方法と、を含むため、材料中に生じる張力の変動を、押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、低減することができる。
【0043】
第十六態様のタイヤ部品製造方法によれば、タイヤ用部材を巻き出す巻き出し部と、タイヤ用部材を巻き取る巻き取り部と、第十二態様から第十四態様のいずれか1態様に記載の張力調整方法と、を含む。このため、材料中に生じる張力の変動を、押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、低減することができる。
【0044】
第十七態様のタイヤ製造方法によれば、タイヤ用部材を巻き出す巻き出し部と、タイヤ用部材を巻き取る巻き取り部と、第十二態様から第十四態様のいずれか1態様に記載の張力調整方法と、タイヤ用部材から得られるタイヤ部品をタイヤに加工する成型装置と、を有している。このため、材料中に生じる張力の変動を、押しローラが前記材料を押す荷重を測定しない場合と比して、低減することができる。
【0045】
第十八態様のプログラムによれば、測定部の測定結果に基づいて荷重を目標荷重範囲となるように駆動部を制御するため、コンピュータを第一態様から第七態様までのいずれか1態様に記載の張力調整装置の制御部として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置を説明する図である。
図2】第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置の張力調整装置を説明する図である。
図3】第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置のタイヤ成型装置を説明する図である。
図4】第一実施形態に係る制御部のハードウェア構成を説明する図である。
図5-A】第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置の張力調整装置の動作を説明する図である。
図5-B】第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置の張力調整装置のダンサアームの角度とダンサ回転モータが出力するトルクの関係を説明する図である。
図6】第一実施形態に係る制御部の動作手順を説明する図である。
図7】第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置の張力調整装置の変形例を説明する図である。
図8】第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置の変形例を説明する図である。
図9】第二実施形態に係るタイヤ部品製造装置の張力調整装置を説明する図である。
図10】第二実施形態に係る制御部の動作手順を説明する図である。
図11】第二実施形態に係るタイヤ部品製造装置の張力調整装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同一又は等価な構成要素及び部品には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0048】
<第一実施形態>
(装置概要)
図1は、本発明の第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置10を示す図である。本発明の第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置10は、材料を供給する巻き出し部20と、材料を巻き取る巻き取り部30と、材料を加工する圧着部90と、材料を搬送する搬送部40と、搬送部40と巻き取り部30との間で材料の張力を調整する張力調整装置50と、巻き出し部20、巻き取り部30、及び張力調整装置50の動作を制御する制御部70とを備える。
【0049】
(巻き出し部)
巻き出し部20には、タイヤ部品の製造原料である、繊維体F(材料の一例)が巻き付け状態で保持されている。
【0050】
巻き出し部20は、繊維体Fが巻き付けられている円筒状の材料ドラム22と、材料ドラム22の回転角度を制御する巻き出しモータ24とを有している。
【0051】
本発明に係る繊維体Fは、一例としてタイヤを形成する部品であるコードであり、ナイロン、アラミド、ポリエステル等の有機繊維が格子状に編み込まれている。
【0052】
材料ドラム22は、一例として材料ドラム22の軸において支持台に回転可能に支持されており、材料ドラム22の軸には巻き出しモータ24が接続されている。
【0053】
材料ドラム22の軸方向は、繊維体F(後述するタイヤ用部材TP)の搬送方向に直交する方向(各図の紙面奥行き方向)であり、特に断りのない限り、後述する各ローラ、ドラムの回転軸方向も同様である。
【0054】
巻き出しモータ24は、繊維体Fの搬送速度が一定となるように回転駆動することで、材料ドラム22に巻き付けられている繊維体Fを、張力調整装置50に搬送する。
【0055】
(圧着部)
圧着部90は、一例として図示しない未加硫ゴム供給部と、圧着ローラ92と、を有している。
【0056】
圧着ローラ92は、一例として圧着ローラ92の軸に対して回転可能に支持されており、圧着ローラ92の軸には、圧着モータ94が接続されている。
【0057】
圧着モータ94は、繊維体Fに未加硫ゴムを一定の速度で圧着されるように回転駆動することで、繊維体Fに未加硫ゴムを圧着して、繊維体Fを未加硫ゴムで被覆したシート状のタイヤ用部材TP(材料の他の一例)に加工する。
【0058】
そして、タイヤ用部材TPは、搬送部40に搬送される。
【0059】
(搬送部)
搬送部40は、圧着部90と後述する張力調整装置50との間に設けられ、圧着部90から搬送されたタイヤ用部材TPを、張力調整装置50に搬送する。
【0060】
搬送部40は、一例として、タイヤ用部材TPを搬送する搬送ローラ42と、搬送ローラ42を回転駆動させる搬送モータ44と、タイヤ用部材TPを滑らせずに搬送させるためにタイヤ用部材TPを搬送ローラ42と挟み込むピンチローラ46と、を有している。
【0061】
搬送ローラ42は、図示しない支持部に回転可能に軸支されると共に、搬送モータ44に接続され、搬送モータ44によって回転駆動される。また、搬送ローラ42は、タイヤ用部材TPと接した状態で回転することにより、タイヤ用部材TPを搬送する。
【0062】
また、搬送モータ44は回転角度及び回転速度を制御可能なサーボモータが好適とされ、後述する制御部70によって制御される。
【0063】
(張力調整装置)
張力調整装置50は、タイヤ用部材TPが搬送部40から巻き取り部30に搬送される経路の途中に設けられ、巻き取り部30に搬送されるタイヤ用部材TPの張力を調整する張力調整部52と、張力調整部52の動作を制御する制御部70とを備える。
【0064】
本実施形態では、制御部70は、張力調整部52の動作に加え、巻き出し部20、巻き取り部30、圧着部90、及び搬送部40の動作を制御する。
【0065】
(張力調整部)
張力調整部52は、一対の支持ローラ54と、ダンサアーム58(押しローラの一例)と、ダンサ回転モータ60(駆動部の一例)と、トルクメータ62(測定部の一例)を有している。
【0066】
ダンサアーム58は、一対の支持ローラ54の間でタイヤ用部材TPに接するテンショナーローラ56と、テンショナーローラ56を一端側で回転可能に支持すると共に該ローラの軸方向に沿って伸びる軸58Bに他端側で軸支されたアーム58Aとを含む。
【0067】
ダンサ回転モータ60は、ダンサアーム58のアーム58Aにトルクを伝達させる(回転駆動させる)。
【0068】
トルクメータ62は、ダンサアーム58に生じるトルクを測定する。
【0069】
図2に示すように、一対の支持ローラ54は、それぞれ回転可能に軸支され、タイヤ用部材TPに対して下方に設けられている。
【0070】
テンショナーローラ56は、ダンサアーム58の一端側で、一対の支持ローラ54に対して反対側すなわち上方からタイヤ用部材TPに荷重を加える。
【0071】
ダンサ回転モータ60は、ダンサアーム58に軸58Bで接続されており、ダンサ回転モータ60が出力するトルクをダンサアーム58に伝達する。
【0072】
これにより、上記の通り搬送されるタイヤ用部材TPに荷重が加えられる。ダンサアームは、ダンサ回転モータ60が出力するトルクとタイヤ用部材TPからの反力(押し荷重)によるモーメントとが釣り合うようにトルクが伝達される。
【0073】
また、ダンサ回転モータ60は、回転角度及び回転速度を制御可能なサーボモータであり、後述するように制御部70によって回転角度及び出力するトルクを制御される。
【0074】
トルクメータ62は、テンショナーローラ56がタイヤ用部材TPに加える荷重(に関する物理量)として、ダンサアーム58に生じるトルク、より具体的にはダンサアーム58が軸支されている軸58Bに生じるトルクを測定する。
【0075】
例えば、本実施形態においてトルクメータ62は、ダンサ回転モータ60の出力軸に設けられていてもよく、また、ダンサ回転モータ60が減速機を有している場合は、トルクメータ62は、減速機の出力軸端に設けられていてもよい。
【0076】
このようにタイヤ用部材TPは、張力調整部52によって搬送中に材料中の張力を調整されながら、巻き取り部30へと搬送される。
【0077】
なお、ダンサアーム58は、一例としてタイヤ用部材TPを上方から下方に荷重を加えるように設けられているが、これに限定されず、タイヤ用部材TPを下方から上方に荷重を加えるように設けてもよい。
【0078】
(巻き取り部)
巻き取り部30は、一例として、円筒状とされ、回転することによりタイヤ用部材TPを巻き取る巻き取りドラム32と、巻き取りドラム32を回転駆動させる巻き取りモータ34とを有している。
【0079】
巻き取りドラム32は、一例としてタイヤ部品を形成するために用いる成型ドラムである。巻き取りドラム32は、軸に対して回転可能に支持されており、巻き取りドラム32の軸には、巻き取りモータ34が接続されている。巻き取りモータ34は、制御部70により制御される。
【0080】
巻き取りモータ34は、搬送されるタイヤ用部材TPの巻き取り速度が一定となるように回転駆動することで、張力調整装置50から搬送されるタイヤ用部材TPを巻き取る。
【0081】
タイヤ用部材TPは、巻き取り部30で巻き取られる。また、巻き取られたタイヤ用部材TPは、後述するタイヤ成型装置80に搬送される。
【0082】
(タイヤ成型装置)
図3は、本実施形態に係る、タイヤ用部材TPをタイヤに加工するタイヤ成型装置80を説明する図である。
【0083】
図3に示すように、タイヤ成型装置80は、タイヤ用部材TPが巻き掛けられたベルト巻き出しドラム84と、コンベア82と、タイヤ成型ドラム86を有している。
【0084】
タイヤ成型装置80に搬送されたタイヤ用部材TPは、ベルト巻き出しドラム84に掛けられた状態からコンベア82によってタイヤ成型ドラム86に搬送され、図示しないトレッドやビードワイヤ等の他のタイヤ部品と共に生タイヤに成型される。
【0085】
そして、成型された生タイヤは、加硫工程で熱と圧力を加えられることで、タイヤに加工される。
【0086】
(制御部)
図4は、本実施形態に係る制御部70のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0087】
図4に示すように、制御部70は、一例として、記憶部76と、CPU78A(Central Processing Unit)とROM78B(Read Only Memory)と、RAM78C(Random Access Memory)とを有している。
【0088】
トルクメータ62、巻き出しモータ24、巻き取りモータ34、搬送モータ44、圧着モータ94、ダンサ回転モータ60、記憶部76は、それぞれインターフェース(I/O)で接続され、また、CPU78A、ROM78B、RAM78C及びインターフェースは、バス79を介して相互に通信可能に接続されている。
【0089】
CPU78Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU78Aは、ROM78B又は記憶部76からプログラムを読み出し、RAM78Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0090】
CPU78Aは、ROM78B又は記憶部76に記録されているプログラムに従って、上記構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0091】
本実施形態では、ROM78B又は記憶部76には、本発明に係る張力調整プログラム、及び後述するダンサアーム角度―トルク補正関係が記憶されている。
【0092】
ROM78Bは、各種プログラム及び各種データを記憶する。RAM78Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0093】
記憶部76は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを記憶する。
【0094】
インターフェースは、トルクメータ62が測定したトルクを取得し、CPU78Aが演算して得られた結果を巻き出しモータ24、巻き取りモータ34、搬送モータ44、圧着モータ94、ダンサ回転モータ60に出力する。
【0095】
インターフェースは、それぞれの機器とどの様に通信してもよいが、例えばUSB(Universal Serial Bus)、RS-232C、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0096】
なお、巻き出しモータ24、巻き取りモータ34、搬送モータ44、圧着モータ94、ダンサ回転モータ60を制御する制御部70は、上記の構成に限られず、例えばPLC(Programmable Logic Controller)とサーボアンプとを統合されたものとされていてもよい。
【0097】
(張力調整)
次に図2及び図5-Aを参照しながら、本実施形態における張力調整について説明する。
【0098】
始めに、図2に示されるように、タイヤ用部材TPは、一対の支持ローラ54の間で、テンショナーローラ56に荷重をかけられることで搬送方向が変化しながら搬送される。
【0099】
また、制御部70は、巻き取りドラム32を駆動する巻き取りモータ34に内蔵されたエンコーダの情報に基づいて、搬送ローラ42を回転駆動させる搬送モータ44の速度制御を行う。
【0100】
すなわち、制御部70は、巻き取りドラム32の周速を制御目標として搬送モータ44の速度制御を行う。これにより、張力調整部52に搬送されるタイヤ用部材TPは、材料ドラム22の張力変動が遮断されている。
【0101】
そして、本実施形態では、一対の支持ローラ54間で、テンショナーローラ56の軸方向から見て搬送中のタイヤ用部材TPに対して一対の支持ローラ54と反対側からテンショナーローラ56によって荷重を加えることで、搬送中のタイヤ用部材TPの張力が付加される。
【0102】
また、タイヤ用部材TPの搬送中に、制御部70は、トルクメータ62の測定結果をダンサ回転モータ60にフィードバックし、該測定結果が制御目標範囲に収まるようダンサ回転モータ60を制御している。
【0103】
ダンサ回転モータ60の出力トルクは、タイヤ用部材TPの張力と相関があり、上記の制御によって、タイヤ用部材TPの張力の変動が一定範囲内に収まる。
【0104】
ところで、上記の制御に伴って図5-Aに示すようにダンサアーム58の角度が変化する場合がある。この場合、テンショナーローラ56は、軸58Bからダンサアーム58の長さを半径とした仮想線I上を移動する。
【0105】
ここで、図5-Aに示すようにダンサアーム58が回転した場合、タイヤ用部材TPの張力が変化しなくても、タイヤ用部材TPがテンショナーローラ56に巻き掛かる角範囲が変化することで、トルクメータ62で測定されるトルクの測定結果は、変化する。
【0106】
また、タイヤ用部材TPは、一般的に曲げ剛性を有しているため、テンショナーローラ56に巻き掛かった状態では、タイヤ用部材TPを曲げるための曲げ抵抗(ベンドロス)が生じる。
【0107】
そして、上記のようにタイヤ用部材TPがテンショナーローラ56に巻き掛かる角範囲が変化すると、曲げ抵抗も変化することとなり、これよってもトルクメータ62で測定されるトルクの測定結果は、変化する。
【0108】
このように、ダンサアーム58が回転した場合、タイヤ用部材TPの張力が変化しなくても、ダンサアーム58が回転する前後でトルクメータ62の測定結果が変化するため、ダンサ回転モータ60の出力トルクとタイヤ用部材TPの張力との相関は、変化する。
【0109】
ここで、本実施形態では、上述したダンサ回転モータ60の出力トルクとタイヤ用部材TPの張力との相関の変化が加味された、ダンサアーム58の角度とダンサ回転モータ60が出力する補正されたトルクとの対応関係(以下、「ダンサアーム角度―トルク補正関係」と称する)を予め導出し、記憶部76に記憶させている。
【0110】
制御部70は、このダンサアーム角度―トルク補正関係に基づいて、ダンサアーム58に伝達するトルクを補正する。この制御の詳細については後述する。
【0111】
なお、制御部70は、ダンサ回転モータ60に送信されるモータパルス信号により、ダンサアーム58の角度情報を取得する。
【0112】
次に、図6を参照しながら、本実施形態に係る制御部70の処理動作について説明する。
【0113】
図6は、制御部70がタイヤ用部材TPの張力を調整する処理の流れを示すフローチャートである。CPU78AがROM78B又は記憶部76から張力調整プログラムを読みだして、RAM78Cに展開して実行することにより張力調整処理が行われる。
【0114】
ステップS101では、制御部70は、搬送されるタイヤ用部材TPの目標張力を記憶部76から取得し、ダンサ回転モータ60が出力するトルクの値をCPU78Aが演算することによって目標荷重範囲を導出する。
【0115】
導出されたトルクの値は、RAM78Cに記憶される。
【0116】
ステップS102では、制御部70は、張力調整部52のトルクメータ62から、ダンサアーム58の軸58Bが受けているトルクの測定結果を取得する。
【0117】
ステップS103では、制御部70は、張力調整部52のサーボモータであるダンサ回転モータ60から、ダンサアーム58の角度を検出する。
【0118】
ステップS104では、制御部70は、ステップS103で取得したダンサアーム58の角度と、記憶部76に記憶されたダンサアーム角度―トルク補正関係に基づき、ダンサ回転モータ60が出力するトルクをステップS101で導出した値から補正する。
【0119】
補正したトルクの値は、RAM78Cに記憶される。
【0120】
ステップS105では、制御部70は、ステップS104で補正したトルクの値と、ステップS102で取得したダンサアーム58の軸58Bが受けているトルクとの差分を求める。
【0121】
求めたトルクの値は、RAM78Cに記憶される。
【0122】
ステップS106では、制御部70は、ステップS105で求めたトルクの値に基づいて、サーボモータがダンサアーム58の軸58Bにトルクを出力させる。
【0123】
ステップS107では、制御部70は、タイヤ用部材TPの搬送を継続するかを確認し、搬送を継続する場合には張力調整を続けるためステップS102に戻る。また、搬送を終了する場合には、処理を終了する。
【0124】
(作用及び効果)
上記の通り、制御部70は、巻き取りドラム32の周速を制御目標として搬送モータ44の速度制御を行っており搬送部40の搬送ローラ42及び巻き取り部30の巻き取りドラム32の周速度を併せることが望ましい。
【0125】
しかしながら、機械振動、搬送ローラ42や巻き取りドラム32回転の変動等により、上記速度を合わせる事は、現実的には困難である。
【0126】
すなわち、搬送部40の搬送ローラ42及び巻き取り部30の巻き取りドラム32の周速度を同一にすることでタイヤ用部材TPの張力を一定に保つことは困難である。
【0127】
ここで、本実施形態に係るタイヤ部品製造装置10は、ダンサアーム58をダンサ回転モータ60で回転させ、タイヤ用部材TPにテンショナーローラ56を当てて荷重を加えることによってタイヤ用部材TPに張力を生じさせる。
【0128】
これにより、タイヤ用部材TPに加える荷重を一定範囲に保つことで、巻き出し部20、巻き取り部30、搬送部40等のタイヤ用部材TPを搬送するローラの回転速度によらずタイヤ用部材TPの張力を一定範囲に調整することが可能になる。
【0129】
また、本発明に係るタイヤ部品製造装置10は、トルクメータ62によって、張力調整部52のダンサアーム58がタイヤ用部材TPに加える荷重に関連する物理量として、ダンサアーム58に生じているトルクを測定している。
【0130】
そして、タイヤ部品製造装置10では、制御部70が、トルクメータ62によって測定したダンサアーム58のトルクを用いてダンサ回転モータ60をフィードバック制御する。
【0131】
これにより、ダンサ回転モータ60の出力するトルクが、ダンサ回転モータ60の温度上昇などの外乱によって変化した場合においても、ダンサ回転モータ60の出力トルクすなわちテンショナーローラ56がタイヤ用部材TPを押す荷重を一定に保つことができる。
【0132】
したがって、ダンサアーム58のトルクの変動を検出しない場合や、ダンサ回転モータ60へ出力するトルク指令値を一定に制御する場合と比して、本実施形態に係るタイヤ部品製造装置10によれば、タイヤ用部材TPの張力をより高精度に調整することができる。
【0133】
また、本発明に係るタイヤ部品製造装置10は、タイヤ用部材TPの張力を一定範囲に調整するため、張力調整部52のダンサアーム58の角度に応じて、ダンサ回転モータ60が出力するトルクを補正する。
【0134】
すなわち、ダンサアーム角度―トルク補正関係に基づき、図5-Aに示すようなダンサアーム58の回転角度θに応じて、テンショナーローラ56にタイヤ用部材TPが巻き掛かる角度の変化及びタイヤ用部材TPのベンドロスによる、ダンサ回転モータ60の出力トルクとタイヤ用部材TPの張力の相関の変化が加味された値となるように、ダンサ回転モータ60が出力するトルクを補正する。
【0135】
より具体的には、ダンサアーム58の角度に応じてテンショナーローラ56がタイヤ用部材TPに巻き掛かる角度が変化するため、タイヤ用部材TPに作用する張力を一定するために出力するトルクを、図5-Bに示すように変化させる。
【0136】
このタイヤ用部材TPに作用する張力を一定するための出力トルクとダンサアーム58の角度との関係を実験的に求めて記憶部76に記憶しておき、ダンサアーム58の角度に応じてダンサ回転モータ60が出力するトルクを補正する。
【0137】
これにより、ダンサアーム58の角度を検出しない場合や、搬送部40の搬送ローラ42のトルク又は回転速度でタイヤ用部材TPに生じる張力を調整する場合と比して、タイヤ用部材TPの張力をより高精度に調整することができる。
【0138】
なお、図5-Bに示す通り、-20°から-10°までの範囲においては、角度の変化に対する、出力するトルクの補正量の変化量が大きくなるため、タイヤ用部材TPの張力をより高精度に調整するためには、ダンサアーム58の角度は-10°から20°までの範囲とすることがより好ましい。
【0139】
(第1変形例)
図7は、本実施形態に係る変形例の一例である。図7に示すように、本変形例では、ダンサアーム58には、ダンサアーム58の軸58Bに対してテンショナーローラ56との反対側にカウンタウェイト64が設けられている。
【0140】
本変形例では、図7においてカウンタウェイト64がダンサアーム58の軸58Bに対してテンショナーローラ56との反対側に設けられている。
【0141】
このため、ダンサアーム58の軸58Bに掛かるテンショナーローラ56の重量によるモーメント(の少なくとも一部)は、カウンタウェイト64の重量によるモーメントによって打ち消される。
【0142】
したがって、本変形例のように、ダンサアーム58がカウンタウェイト64を有する構成とすることで、ダンサアーム58の慣性モーメントが低減される。
【0143】
これにより、ダンサアーム58を回転させるために必要なトルクが低減するため、ダンサ回転モータ60の容量を低減することができる。
【0144】
(第2変形例)
本変形例では、図8に示すように、一例として張力調整部52に対して搬送方向下流側に張力測定部66が設置されている。張力測定部66は、巻き取り部30に搬送される直前のタイヤ用部材TPの張力を測定する。
【0145】
張力測定部66は、一例として、接触型の張力測定器68が好適に採用され、搬送されるタイヤ用部材TPの張力を連続的に測定すると共に、制御部70に測定した張力を送信する。
【0146】
本変形例に係るタイヤ部品製造装置10は、ダンサアーム58の角度に基づく第一実施形態で説明した張力調整動作に代えて、張力測定部66で得られた結果に基づいてダンサ回転モータ60の出力トルクを補正する。
【0147】
このように、張力調整部52がタイヤ用部材TPの張力を調整した結果をフィードバックされることで、張力調整部52に対して搬送方向下流側で張力変動が生じた場合に、ダンサアーム58の角度に依らず、高精度にタイヤ用部材TPの張力を調整することができる。
【0148】
ただし、この場合、第一実施形態に係るタイヤ部品製造装置10と比較して、張力測定器68を省略することができない。
【0149】
(第3変形例)
また、ダンサアーム58の回転角が所定の目標値になるように、ダンサ回転モータ60の角度により搬送部40の搬送ローラ42をフィードバック制御してもよい。
【0150】
例えば、制御部70は、ダンサアーム58の回転角度θが増す場合には、搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を下げ、ダンサアーム58の回転角度θが減る場合には、搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を上げることで、ダンサアーム58の回転角を一定に保持する。
【0151】
これにより、タイヤ用部材TPは、ダンサアーム58によって張力を付与されつつ搬送姿勢が一定となり、タイヤ用部材TPがテンショナーローラ56に巻き掛かる角範囲の変化に起因したタイヤ用部材TPの張力を一定にするトルクの補正が不要となる。
【0152】
なお、上記第一実施形態におけるダンサアーム58の角度に応じたトルクの補正と、本変形例によるダンサアーム58の回転角度θを一定に保つ制御を併用してもよい。
【0153】
この場合、ダンサアーム58の回転角度θを一定に保つ制御をしつつも何らかの原因でダンサアーム58の回転角度θが変動した場合でも、制御部70によるダンサアーム58の角度に応じたトルクの補正によりタイヤ用部材TPの張力を一定にすることができる。
【0154】
また、この場合、制御部70は、ダンサアームの回転角度θを変動前の角度に戻す制御を行ってもよく、ダンサアームの回転角度θを変動後の角度で一定に保つ制御を行ってもよい。
【0155】
本変形例においては、搬送部40は、張力制御装置の構成要素と捉えることができる。
【0156】
(第4変形例)
また、ダンサアーム58の回転角範囲を予め求めた所定の角度範囲とし、ダンサ回転モータ60の角度に応じて搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を調整してもよい。
【0157】
例えば、図5-Aにおいて、ダンサアーム58の回転角度θが所定の回転角度を超えた場合には、ダンサアーム58の回転角度θが所定の角度範囲に収まるように、搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を下げる。
【0158】
また、ダンサアーム58の回転角度θが所定の回転角度を下回った場合には、ダンサアーム58の回転角度θが所定の角度範囲に収まるように、搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を上げる。
【0159】
このように、ダンサ回転モータ60の角度に応じて搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を調整することで、ダンサアーム58が回転可能な角範囲を逸脱してダンサアーム58がメカストッパに当たらないようにすることができる。
【0160】
(その他の変形例)
なお、上述した説明では、ダンサアーム58に生じているトルクを取得するため、ダンサ回転モータ60の出力軸に設けられたトルクメータ62を用いていたが、これに限らず、ダンサアーム58が受けるトルクを検出することが出来れば足りる。
【0161】
例えば、トルクメータ62の代わりに、ダンサアーム58にひずみゲージを取り付けることによって、ダンサアーム58の曲げモーメントを測定し、ダンサアーム58が受けるトルクを検出してもよい。
【0162】
この場合でも、上述したように発明に係るタイヤ部品製造装置10と同様の効果を得ることができる。
【0163】
また、上述の説明においては、張力調整プログラムは、ROM78B又は記憶部76に記憶されていたが、これに限らず、上述した張力調整プログラムが記録されたCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。
【0164】
また、張力調整プログラムは、ネットワークを介して、外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0165】
また、上述の説明においては、タイヤ用部材TPの目標張力を記憶部76から取得していたが、これに限らず、タッチパネル等の外部入力装置を用いて作業者が入力する形態とされていてもよい。
【0166】
また、例えば上述の説明におけるタイヤ成型装置80には、搬送される経路の途中にタイヤ部品製造装置10と同様に張力調整装置50がさらに設けられていてもよい。
【0167】
この場合、タイヤ成型装置80においてタイヤ成型ドラム86に巻き取られるタイヤ用部材TPの張力をより精度よく制御することができるため、生タイヤの品質をより安定化することが可能となる。
【0168】
また、上述の説明においては、本発明に係るタイヤ部品製造装置10と、タイヤ成型装置80とをそれぞれ説明していたが、タイヤ部品製造装置10とタイヤ成型装置80と組み合わせることでタイヤ製造装置として用いることも可能である。
【0169】
また、上述の説明においては、本発明に係るタイヤ部品製造装置10は、圧着部90を有していたが、これを備えずに予めゴムを被覆した繊維体Fを用いることで圧着部90を有さないタイヤ製造装置とすることも可能である。
【0170】
また、上述の説明においては、本発明に係るタイヤ用部材TPは、巻き取りドラム32に巻き取られていたが、これに限らずに、例えばタイヤ成型ドラム86に巻き取られてもよい。
【0171】
すなわち、タイヤ部品製造装置10及びタイヤ成型装置80は、巻き取り部30やベルト巻き出しドラム84、コンベア82を有さずに一体化されたタイヤ製造装置として用いることも可能である。
【0172】
また、上述の説明においては、材料の一例としてコードのような有機繊維としていたが、これに限らない。例えばタイヤトレッド用のゴムを含む未加硫ゴム等のタイヤ用部品の材料とされていてもよく、ビードワイヤやスチールベルト等の金属製の線材とされているタイヤ用部品の材料でもよい。すなわち、タイヤ製造に関連する部材すべてが張力調整装置50による張力調整対象になり得、タイヤ部品製造装置10による製造対象になり得、タイヤ成型装置80により用いられる材料になり得る。
【0173】
また、本発明に係る材料は、タイヤ用部品の原料に限られず、フィルム状、シート状、紐状又は帯状の材料のように、搬送方向と交差する方向に対して変形可能とされる場合において好適に採用され得る。
【0174】
また、本発明に係るタイヤ部品製造装置10は、タイヤ部品の製造装置として用いる以外にも、張力調整装置50を有する繊維体Fの搬送装置として用いることも可能である。
【0175】
<第二実施形態>
続いて、本発明の第二実施形態に係るタイヤ部品製造装置100を図9及び図10を適宜参照しながら説明する。タイヤ部品製造装置100は、張力調整部52に代えて張力調整部152を備える点で、第一実施形態とは異なる。なお、第一実施形態同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0176】
(張力調整部)
図9に示されるように、本実施形態に係る張力調整部152は、第一実施形態に係る張力調整部152に対して次のように変更されている。すなわち、押しローラは、テンショナーローラ56と、直動体158Aを有すると共に直動する直動部材158であり、駆動部は、駆動モータ160であり、測定部は、荷重計162とされている。
【0177】
直動部材158は、タイヤ用部材TPの搬送方向に対して略鉛直方向に直動し、一例として、タイヤ用部材TPに対して下方に設置されている。
【0178】
テンショナーローラ56は、直動体158Aの一端側で回動可能に軸支され、第一実施形態と同様に、一対の支持ローラ154の間でタイヤ用部材TPにタイヤ用部材TPの搬送方向と交差する方向に荷重を加える。
【0179】
荷重計162は、テンショナーローラ56がタイヤ用部材TPに荷重を加える荷重を測定する。
【0180】
駆動モータ160は、直動体158Aに直動機構を介して接続されており、直動体158Aを直動させる。
【0181】
また、駆動モータ160は、回転角度及び回転速度を制御可能なサーボモータであり、第一実施形態と同様に制御部70によって回転角度及び出力するトルクを制御される。
【0182】
なお、直動体158Aを直動機構及び直線運動させる方法については特に限定されないが、一例として、駆動モータ160から出力される回転運動を、ラックアンドピニオン機構を用いて直線運動に変換する方法が好適に採用される。
【0183】
(張力調整)
本実施形態においても第一実施形態と同様に、一対の支持ローラ154間で、搬送中のタイヤ用部材TPに対して一対の支持ローラ154と反対側の面側からテンショナーローラ56によって荷重を加えることで、搬送中のタイヤ用部材TPに張力を調整する。
【0184】
また、タイヤ用部材TPの搬送中に、制御部70は、荷重計162の測定結果を駆動モータ160にフィードバックし、該測定結果が制御目標範囲に収まるよう駆動モータ160を制御している。
【0185】
荷重計162の測定結果は、タイヤ用部材TPの張力と相関があり、上記の制御によって、タイヤ用部材TPの張力の変動が一定範囲内に収まる。
【0186】
ここで、図9に示すように直動体158Aが直動した場合、第一実施形態と同様に、タイヤ用部材TPの張力が変化しなくても、タイヤ用部材TPがテンショナーローラ56に巻き掛かる角範囲が変化することで、荷重計162で測定される荷重の測定結果は、変化する。
【0187】
また、第一実施形態と同様に、タイヤ用部材TPは、一般的に曲げ剛性を有しているため、テンショナーローラ56に巻き掛かることにより、タイヤ用部材TPを曲げるための曲げ抵抗(ベンドロス)も生じる。
【0188】
そして、上記のようにタイヤ用部材TPがテンショナーローラ56に巻き掛かる角範囲が変化すると、曲げ抵抗も変化することとなり、これよっても荷重計162で測定されるトルクの測定結果は、変化する。
【0189】
このように、直動体158Aが直動した場合、タイヤ用部材TPの張力が変化しなくても、直動体158Aが直動する前後で荷重計162の測定結果が変化するため、駆動モータ160の出力トルクとタイヤ用部材TPの張力との相関は、変化する。
【0190】
ここで本実施形態では、上述した、駆動モータ160の出力トルクとタイヤ用部材TPの張力との相関の変化が加味された、直動体158Aの位置と駆動モータ160が出力する補正されたトルクとの対応関係(以下、「直動体の位置―トルク補正関係」と称する)を予め導出し、記憶部76に記憶させる。
【0191】
この直動体の位置―トルク補正関係に基づいて、駆動モータ160が出力するトルクを補正する値を導出する。
【0192】
次に、図10を参照しながら、本実施形態に係る制御部70の処理動作及びタイヤ部品製造装置10の動作について説明する。
【0193】
図10は、制御部70がタイヤ用部材TPの張力を調整する処理の流れを示すフローチャートである。CPU78AがROM78B又は記憶部76から張力調整プログラムを読みだして、RAM78Cに展開して実行することにより張力調整処理が行われる。
【0194】
ステップS201では、制御部70は、搬送されるタイヤ用部材TPの目標張力を記憶部76から取得し、駆動モータ160が出力するトルクの値をCPU78Aが演算することによって目標荷重範囲を導出する。
【0195】
導出されたトルクの値は、RAM78Cに記憶される。
【0196】
ステップS202では、制御部70は、張力調整部152の荷重計162から、直動体158Aが受けている荷重を取得する。
【0197】
ステップS203では、制御部70は、張力調整部152の駆動モータ160から、直動体158Aの位置を検出する。
【0198】
ステップS204では、制御部70は、ステップS203で取得した直動体158Aの位置と、記憶部76に記憶された、直動体158Aの位置―トルク補正関係に基づいて、駆動モータ160が出力する荷重を、ステップS201で導出した値から補正をする。
【0199】
補正した荷重の値は、RAM78Cに記憶される。
【0200】
ステップS205では、制御部70は、ステップS204で補正した荷重の値と、ステップS202で取得した直動体158Aが受けている荷重との差分を求める。
【0201】
求めた荷重の値は、RAM78Cに記憶される。
【0202】
ステップS206では、制御部70は、ステップS205で求めた荷重の値に基づいて、駆動モータ160が直動体158Aを直動させる荷重を出力させる。
【0203】
ステップS207では、制御部70は、タイヤ用部材TPの搬送を継続するかを確認し、搬送を継続する場合は張力調整を続けるためステップS202に戻る。また、搬送を終了する場合は、処理を終了する。
【0204】
(作用及び効果)
本実施形態係るタイヤ部品製造装置100では、駆動モータ160を駆動させることにより直動部材158を直線運動させ、タイヤ用部材TPにテンショナーローラ56を当てて荷重を加えることによってタイヤ用部材TPに張力を生じさせる。
【0205】
そして、タイヤ部品製造装置10では、制御部70が、荷重計162によって測定したテンショナーローラがタイヤ用部材TPを押す荷重を用いて駆動モータ160をフィードバック制御する。
【0206】
これにより、駆動モータ160によるテンショナーローラ56がタイヤ用部材TPを押す荷重が、駆動モータ160の温度上昇などの外乱によって変化した場合においても、該荷重を一定に保つことができる。
【0207】
したがって、テンショナーローラ56がタイヤ用部材TPを押す荷重の変動を検出しない場合や、駆動モータ160へ出力する位置指令値を一定に制御する場合と比して、本実施形態に係るタイヤ部品製造装置100によれば、タイヤ用部材TPの張力をより高精度に調整することができる。
【0208】
また、本発明に係るタイヤ部品製造装置10は、タイヤ用部材TPの張力を一定範囲に調整するため、張力調整部152のテンショナーローラ56の位置に応じて、駆動モータ160が出力するトルクを補正する。
【0209】
すなわち、直動体158Aの位置―トルク補正関係に基づき、直動体158Aの位置に応じて、テンショナーローラ56にタイヤ用部材TPが巻き掛かる角度の変化及びタイヤ用部材TPのベンドロスによる、駆動モータ160の出力トルクとタイヤ用部材TPの張力の相関の変化が加味された値となるように、駆動モータ160が出力するトルクを補正する。
【0210】
これにより、直動体158Aの位置を検出しない場合や、搬送部40の搬送ローラ42のトルク又は回転速度でタイヤ用部材TPに生じる張力を調整する場合と比して、タイヤ用部材TPの張力をより高精度に調整することができる。
【0211】
(第1変形例)
本実施形態に係るタイヤ部品製造装置100では、さらにテンショナーローラ56の上下方向の位置が所定の目標値になるように、該テンショナーローラ56の位置により搬送部40の搬送ローラ42をフィードバック制御してもよい。
【0212】
例えば、制御部70は、テンショナーローラ56の位置が上昇する場合には、搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を下げ、テンショナーローラ56の位置が下降する場合には、搬送部40の搬送ローラ42の回転速度を上げることで、テンショナーローラ56の位置を一定に保持する。
【0213】
これにより、タイヤ用部材TPは、直動部材158によって張力を付与されつつ搬送姿勢が一定となり、タイヤ用部材TPがテンショナーローラ56に巻き掛かる角範囲の変化に起因したタイヤ用部材TPの張力を一定にするトルクの補正が不要となる。
【0214】
なお、上記第一実施形態におけるダンサアーム58の角度に応じたトルクの補正と、本変形例によるテンショナーローラ56の位置を一定に保つ制御を併用してもよい。
【0215】
この場合、テンショナーローラ56の位置を一定に保つ制御をしつつも何らかの原因でテンショナーローラ56の位置が変動した場合でも、制御部70によるテンショナーローラ56の位置に応じたトルクの補正によりタイヤ用部材TPの張力を一定にすることができる。
【0216】
また、この場合、制御部70は、テンショナーローラ56の位置を変動前の位置に戻す制御を行ってもよく、テンショナーローラ56の位置を変動後の位置で一定に保つ制御を行ってもよい。
【0217】
本変形例においては、搬送部40は、張力制御装置の構成要素と捉えることができる。
【0218】
(第2変形例)
上述したように、図9に示す直動体158Aが直動した場合、テンショナーローラ56と、支持ローラ154との距離が変化するため、タイヤ用部材TPがテンショナーローラ56に巻き掛かる角範囲も変化する。
【0219】
ここで、図11に示すように、本変形例では、第二実施形態に係る張力調整装置150によりも一対の支持ローラ154の間隔を狭め、直動体158Aのテンショナーローラ56にタイヤ用部材TPが巻き掛かる角範囲が180°となるように配置される。
【0220】
このように、タイヤ用部材TPの巻き掛かる角範囲を180°とすれば、直動体158Aの位置が変化した場合、すなわち、直動体158Aが図11における上方に直動した場合でも、テンショナーローラ56にタイヤ用部材TPが巻き掛かる角範囲が変化しない。
【0221】
このように、タイヤ用部材TPが巻き掛かる角範囲を180°とすることにより巻き掛かる角範囲が変化しなくなるため、直動体158Aの位置―トルク補正関係に基づくことなく、タイヤ用部材TPに張力を発生させる直動体158Aの位置を導出することができる。
【0222】
したがって、タイヤ用部材TPが巻き掛かる角範囲を180°とすることで、タイヤ用部材TPの張力をより高精度に調整することができる。
【0223】
(その他の変形例)
なお、本実施形態において、荷重計162は、直動体158Aが受ける荷重を直接検出していたが、本実施形態に係る荷重計162は、これに限らない。
【0224】
例えば、第一実施形態と同様に、駆動モータ160の出力軸に組み込まれたトルクメータ62を用い、駆動モータ160が出力するトルクから荷重を測定してもよい。
【0225】
また、本実施形態において、直動体158Aは、駆動モータ160の回転トルクを直動機構により直線運動に変換していたが、本実施形態に係る直線運動方法は、これに限らない。例えば、リニアサーボモータや油圧シリンダを用いて、直接的に直線運動させてもよい。また、上記したラックアンドピニオン機構に代えて送りねじ機構を用いてもよい。
【0226】
なお、第一実施形態で採用可能な変形例は、本実施形態においても適宜採用し、組み合わせることができる。
【0227】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本開示による張力調整装置は、材料の張力を高精度に調整しながら搬送する張力調整装置、搬送装置、タイヤ部品製造装置及びタイヤ製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0229】
10…タイヤ部品製造装置、20…巻き出し部、22…材料ドラム、24…巻き出しモータ、30…巻き取り部、32…巻き取りドラム、34…巻き取りモータ、40…搬送部、42…搬送ローラ、46…ピンチローラ、50…張力調整装置、52…張力調整部、54…支持ローラ、56…テンショナーローラ、58…ダンサアーム、直動部材(押しローラの一例)、58A…アーム、直動体、58B…軸、60…ダンサ回転モータ(駆動部の一例)、62…トルクメータ(測定部の一例)、64…カウンタウェイト、66…張力測定部、68…張力測定器、70…制御部、76…記憶部、78A…CPU、78B…ROM、78C…RAM、79…バス、80…タイヤ成型装置、82…コンベア、84…ベルト巻き出しドラム、86…タイヤ成型ドラム、90…圧着部、92…圧着ローラ、94…圧着モータ、100…タイヤ部品製造装置、150…張力調整装置、152…張力調整部、154…支持ローラ、158…直動部材、158A…直動体、160…駆動モータ、162…荷重計、F…繊維体、I…仮想線、TP…タイヤ用部材
図1
図2
図3
図4
図5-A】
図5-B】
図6
図7
図8
図9
図10
図11