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特開2023-39869脳機能訓練システム、脳機能訓練方法、及び、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039869
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】脳機能訓練システム、脳機能訓練方法、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 99/00 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A61H99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147220
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】397038037
【氏名又は名称】学校法人成蹊学園
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 武
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA33
4C046AA45
4C046BB10
4C046EE22
4C046EE23
4C046EE24
4C046EE25
4C046EE32
4C046EE33
4C046FF12
(57)【要約】
【課題】脳機能の訓練において、訓練者が感覚刺激へ向けた注意とともに、心理状態も訓練者に提示することができる脳機能訓練システムを提供する。
【解決手段】脳機能訓練システム100は、訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め(S4)、訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、訓練者の心理状態の前記訓練への適合度を示す第2特徴量を求め(S4)、第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示する(S10)、よう構成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、
前記訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、前記訓練者の心理状態の前記訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、
前記第1特徴量及び前記第2特徴量を前記訓練者に提示する、よう構成されている
脳機能訓練システム。
【請求項2】
他の訓練者の前記第1特徴量及び前記第2特徴量を取得し、
前記他の訓練者の前記第1特徴量及び前記第2特徴量を前記訓練者に提示する、よう構成されている
請求項1に記載の脳機能訓練システム。
【請求項3】
前記他の訓練者の前記第1特徴量及び前記第2特徴量を前記訓練者に提示することは、前記訓練者の前記第1特徴量及び前記第2特徴量との関連を表す情報を提示することを含む
請求項2に記載の脳機能訓練システム。
【請求項4】
前記他の訓練者は、前記訓練者と共通する訓練データを使用する訓練者である
請求項2又は3に記載の脳機能訓練システム。
【請求項5】
前記第1特徴量及び前記第2特徴量を前記訓練者に提示することは、前記第1特徴量及び前記第2特徴量を外部装置へ送信することを含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の脳機能訓練システム。
【請求項6】
前記外部装置は、前記訓練者と共通する訓練データを使用する複数の訓練者の前記第1特徴量及び前記第2特徴量を受信して、受信した複数の訓練者の前記第1特徴量及び前記第2特徴量を管理者に提示する装置を含む
請求項5に記載の脳機能訓練システム。
【請求項7】
訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、
前記訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、前記訓練者の心理状態の前記訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、
前記第1特徴量及び前記第2特徴量を前記訓練者に提示する、ことを備えた
脳機能訓練方法。
【請求項8】
コンピュータを、脳機能訓練システムに含まれる演算装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、
前記訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、前記訓練者の心理状態の前記訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、
前記第1特徴量及び前記第2特徴量を前記訓練者に提示する、ことを実行させる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脳機能訓練システム、脳機能訓練方法、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの脳機能には、例えば注意機能などが含まれる。ヒトの注意の向け方には、自身の身体運動そのもの(身体の内側)に注意を向けるインターナルフォーカス(Internal focus)や、運動のゴールとなるターゲット、道具又は外部環境(身体の外側)に注意を向けるエクスターナルフォーカス(External focus)がある。脳機能は、運動能力その他の能力に対して影響を与える。したがって、運動能力及びその他の能力を考慮させるため、注意機能のような脳機能の向上が望まれる。
【0003】
特開2021-083654号公報(以下、特許文献1)は、訓練者が感覚刺激へ向けた注意に関する特徴量を訓練者の脳活動の計測結果から求め、注意機能の訓練のために訓練者へフィードバックすることを開示している。また、実用新案登録第3217017号公報(以下、特許文献2)は、脳波信号及び心拍・呼吸を計測し、ニューロフィードバックすることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-083654号公報
【特許文献2】実用新案登録第3217017号公報
【発明の概要】
【0005】
ここで、注意機能などの脳機能の訓練効果は、心理状態によって差が生じる。しかしながら、特許文献1は、訓練に関する脳活動の特徴量とともに、心理状態をフィードバックすることを開示していない。また、特許文献2は、脳機能の訓練の効果が心理状態によって影響を受けることを開示しておらず、脳機能の訓練効果を高めるために心理状態を適切に訓練者にフィードバックすることを開示していない。そのため、心理状態フィードバックすることを行っていないこれら文献のシステムでも、訓練効果が高められない場合もある。したがって、脳機能の訓練の際には、心理状態も考慮することが望まれる。
【0006】
本開示の一形態において、脳機能訓練システムは、訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、訓練者の心理状態の前記訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示する、よう構成されている。
【0007】
本開示の一形態において、脳機能訓練方法は、訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、訓練者の心理状態の前記訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示する、ことを備える。
【0008】
本開示の一形態において、コンピュータプログラムは、コンピュータを、脳機能訓練システムに含まれる演算装置として機能させるコンピュータプログラムであって、コンピュータに、訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、訓練者の心理状態の訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、第1特徴量及び第2特徴量を前記訓練者に提示する、ことを実行させる。
【0009】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る脳機能訓練システム(以下、システムと略する)の構成の一例を表す図である。
図2図2は、システムに含まれるサーバ及び処理装置の構成の一例を表した概略ブロック図である。
図3図3は、SSSEP(定常状態体性感覚誘発電位)応答と、個人の注意能力との関係と、を表した図である。
図4図4は、訓練画面での指示が訓練者に与えられる前の脳波のスペクトラムと、上記指示が与えられた後の脳波のスペクトラムとの一例を示した図である。
図5図5は、訓練画面での指示が訓練者に与えられる前の脳波のスペクトラムと、上記指示が与えられた後の脳波のスペクトラムとの他の例を示した図である。
図6図6は、訓練画面での指示が与えられた後の脳波のスペクトラムの他の例を示した図である。
図7図7は、第1のニューロフィードバックのための画面の一例を表した図である。
図8図8は、第2のニューロフィードバックのための画面の一例を表した図である。
図9図9は、実施の形態に係る脳機能訓練方法の一例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.脳機能訓練システム、脳機能訓練方法、及び、コンピュータプログラムの概要>
【0012】
(1)本実施の形態に係る脳機能訓練システムは、訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、訓練者の心理状態の前記訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示する、よう構成されている。
【0013】
脳機能の訓練においては、訓練者に感覚刺激が与えられる。感覚刺激は、例えば、体性感覚へ与えられる体性感覚、視覚へ与えられる視覚刺激、及び、聴覚へ与えられる聴覚刺激のうちの少なくとも1つである。脳活動の計測は、一例として、脳波の計測である。第1特徴量は、注意力に関する特徴量であって、訓練者が感覚刺激に向けた注意に関する特徴量である。
【0014】
訓練に関する脳活動の第1特徴量は、刺激が与えられたときの訓練者から計測された脳活動の計測結果から得られる指標値であって、体性感覚刺激によって誘発されるSSSEP(定常状態体性感覚誘発電位)応答、視覚刺激によって誘発されるSSVEP(定常状態視覚誘発電位)応答、又は、聴覚刺激によって誘発されるSSAEP(定常状態聴覚誘発電位)応答の強度を用いて得られる。
【0015】
自律神経系の活動の計測は、一例として、心拍の計測である。自律神経系の活動の計測は、他の例として、体温の計測、眼球運動の計測、血流の計測、皮膚電気抵抗(発汗量)の計測、などであってもよい。第2特徴量は、訓練者の心理状態の訓練への適合度に関する特徴量であって、一例として、自律神経系の活動が心拍の計測である場合、心電図信号から得られる、心拍の変化に基づいた指標値である。心電図信号から得られる指標値は、例えば、心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)を表す指標である。第2特徴量は、例えば、RRI(R-R Interval)と呼ばれる、R波間隔が挙げられる。第2特徴量は、一例として、RRIである。他の例として、meanNNなどの、RRIから算出される指標などであってもよい。
【0016】
脳機能訓練システムが第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示することによって、訓練者は、自身が感覚刺激に向けている注意の強さ、及び、心理状態の訓練への適合度を認識することができ、適合した心理状態で、注意が強くなるように訓練することができる。
【0017】
(2)好ましくは、脳機能訓練システムは、他の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を入力する第3の入力部をさらに備え、出力部は、さらに、他の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示する。これにより、訓練者は、他の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を把握しながら脳機能の訓練を行うことができる。
【0018】
(3)好ましくは、他の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示することは、訓練者の第1特徴量及び第2特徴量との関連を表す情報を提示することを含む。これにより、訓練者は、他の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を視覚的に把握しながら脳機能の訓練を行うことができる。
【0019】
(4)好ましくは、他の訓練者は、訓練者と共通する訓練データを使用する訓練者である。これにより、訓練者は、共通する訓練データを使用する他の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を把握しながら脳機能の訓練を行うことができる。
【0020】
(5)好ましくは、第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示することは、第1特徴量及び第2特徴量を外部装置へ送信することを含む。これにより、外部装置を利用しているユーザが訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を把握することができる。
【0021】
(6)好ましくは、外部装置は、訓練者と共通する訓練データを使用する複数の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を受信して、受信した複数の訓練者の第1特徴量及び第2特徴量を管理者に提示する装置を含む。
【0022】
(7)本実施の形態に係る脳機能訓練方法は、訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、訓練者の心理状態の訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示する、ことを備える。
【0023】
第1特徴量及び第2特徴量が訓練者に提示されることによって、訓練者は、自身が感覚刺激に向けている注意の強さ、及び、心理状態の訓練への適合度を認識することができ、適合した心理状態で、注意が強くなるように訓練することができる。
【0024】
(8)本実施の形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、脳機能訓練システムに含まれる演算装置として機能させるコンピュータプログラムであって、コンピュータに、訓練者の脳活動の計測結果から、訓練に関する脳活動の第1特徴量を求め、訓練者の自律神経系の活動の計測結果から、訓練者の心理状態の訓練への適合度を示す第2特徴量を求め、第1特徴量及び第2特徴量を前記訓練者に提示する、ことを実行させる。
【0025】
コンピュータに、第1特徴量及び第2特徴量を訓練者に提示させることによって、訓練者は、自身が感覚刺激に向けている注意の強さ、及び、心理状態の訓練への適合度を認識することができ、適合した心理状態で、注意が強くなるように訓練することができる。
【0026】
<2.脳機能訓練システム、脳機能訓練方法、及び、コンピュータプログラムの例>
【0027】
図1は、本実施の形態に係る脳機能訓練システム(以下、システムと略する)100の構成の一例を表す図である。図1を参照して、システム100は、処理装置30を備える。また、システム100は、サーバ10を備える。サーバ10は、通信網70を介して処理装置30と通信可能である。サーバ10は、複数の処理装置30と通信可能であってもよい。サーバ10と処理装置30との通信は例えば無線通信である。
【0028】
処理装置30は、訓練者Tに、脳機能訓練の一例として注意機能の訓練を行わせるために用いられる。図2は、サーバ10及び処理装置30の構成の一例を表した概略ブロック図である。図2を参照して、サーバ10は、プロセッサ11とメモリ12とを有するコンピュータで構成される。プロセッサ11は、例えば、CPUである。メモリ12は、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、RAMなどを含む。または、メモリ12は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。
【0029】
メモリ12は、プロセッサ11で実行されるコンピュータプログラム121を記憶している。コンピュータプログラム121は、プロセッサ11に、指標算出処理111、ペアリング処理112、及び、第2ニューロフィードバック処理113を実行させる命令を含む。プロセッサ11は、メモリ12からコンピュータプログラム121を読み出して、実行する。指標算出処理111、ペアリング処理112、及び、第2ニューロフィードバック処理113は後述する。
【0030】
メモリ12は、後述する第1特徴量及び第2特徴量を記憶する特徴量記憶部122を有する。第1特徴量及び第2特徴量は、通信装置13が処理装置30から受信し、メモリ12に格納される。
【0031】
サーバ10は、通信装置13を備える。通信装置13は、通信網70を介して他の装置と無線通信を行う。他の装置は、例えば、処理装置30であってもよいし、管理者などが用いるコンピュータ90であってもよい。
【0032】
処理装置30は、プロセッサ31とメモリ32とを有するコンピュータで構成される。プロセッサ31は、例えば、CPUである。メモリ32は、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、RAMなどを含む。または、メモリ32は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。
【0033】
メモリ32は、プロセッサ31で実行されるコンピュータプログラム321を記憶している。コンピュータプログラム321は、プロセッサ31に、刺激提示器制御処理311、第1特徴量算出処理312、第2特徴量算出処理313、訓練画面表示処理314、及び、第1ニューロフィードバック処理315を実行させる命令を含む。刺激提示器制御処理311、第1特徴量算出処理312、第2特徴量算出処理313、訓練画面表示処理314、及び、第1ニューロフィードバック処理315は後述する。
【0034】
システム100は、刺激提示器51を備える。刺激提示器51は、訓練者Tに刺激を提示する。刺激提示器51は処理装置30に接続されて、処理装置30の制御信号に従って動作する。刺激提示器51は、複数の異なる感覚それぞれのための刺激を与える装置である。具体的には、刺激提示器51は、体性感覚へ刺激を与える体性感覚刺激提示器511,512と、視覚へ刺激を与える視覚刺激提示器513,514と、を備える。
【0035】
刺激提示器51は、さらに、図示しない聴覚刺激提示器を備えてもよい。刺激提示器51は、単一の感覚のための刺激を与えるものであってもよく、例えば、体性感覚刺激提示器511,512、視覚刺激提示器513,514、及び聴覚刺激提示器の少なくとも一つを備えれば足りる。
【0036】
体性感覚刺激提示器511,512は、それぞれ異なる周波数の振動刺激を訓練者Tへ与える。例えば、体性感覚刺激提示器511は、振動周波数f1が22Hzである振動刺激を発生し、体性感覚刺激提示器512は、振動周波数f2が25Hzである振動刺激を発生する。なお、以下では、周波数(第1周波数)f1の振動刺激を第1刺激といい、周波数(第2周波数)f2の振動刺激を第2刺激という。
【0037】
体性感覚刺激提示器511,512は、それぞれ訓練者Tの身体の異なる部位に装着され、装着された部位へ刺激を与える。例えば、体性感覚刺激提示器511は、訓練者Tの左手へ第1刺激を与え、体性感覚刺激提示器512は、訓練者Tの右手へ第2刺激を与える。体性感覚刺激提示器511,512は、それぞれ、訓練者Tの下肢など他の部位へ刺激を与えてもよい。
【0038】
視覚刺激提示器513,514は、それぞれ異なる周波数の光点滅刺激を、訓練者Tへ与える。例えば、視覚刺激提示器513は、視覚刺激となる点滅周波数f1が12Hzである光点滅(第1刺激)を発生し、視覚刺激提示器514は、視覚刺激となる点滅周波数f2が15Hzである光点滅(第2刺激)を発生する。
【0039】
視覚刺激提示器513,514は、それぞれ、訓練者Tの視野(外部環境)における異なる位置に設置され、視野における異なる位置(異なる外部環境位置)において、視覚刺激を訓練者Tへ与える。例えば、視覚刺激提示器513は、視野の左側において第1刺激となる光点滅を発生し、視覚刺激提示器514は、視野の右側において第2刺激となる光点滅を発生する。視覚刺激提示器513,514は、それぞれ、視野中の他の位置において視覚刺激を発生してもよい。
【0040】
各刺激提示器511~514によって発生する刺激の周波数f1,f2は、固定であってもよいし、可変であってもよい。周波数f1,f2が可変である場合、周波数f1,f2は、処理装置30によって調整される。また、各刺激提示器511~514による刺激発生のON/OFFは、処理装置30により制御される。
【0041】
処理装置30のプロセッサ31は、コンピュータプログラム321を実行することによって刺激提示器制御処理311を実現する。各刺激提示器511~514による刺激発生のON/OFF及び周波数f1,f2などの刺激提示器51に関する制御は、プロセッサ31が刺激提示器制御処理311を実行することにより達成される。
【0042】
システム100は、脳波計測器52を含む。脳波計測器52は、訓練者Tの脳活動を計測する計測装置の一例である。脳波計測器52は、体性感覚刺激が与えられたときの脳活動を計測できるように、脳の体性感覚野近傍の脳波を計測する。また、脳波計測器52は、視覚刺激が与えられたときの脳活動を計測できるように、脳の視覚野近傍の脳波を計測する。脳波計測器52は、聴覚刺激が与えられたときの脳活動を計測できるように、脳の聴覚野近傍の脳波を計測するよう構成されていてもよい。また、脳波計測器52は、体性感覚刺激、視覚刺激、及び聴覚刺激のいずれかまたは複数が与えられたときの脳活動を計測できるように、脳機能に関わる、前頭前野や後頭頂連合野近傍の脳波を計測するよう構成されていてもよい。
【0043】
体性感覚刺激によって、定常状態体性感覚誘発電位(SSSEP)応答が誘発される。体性感覚刺激に注意が向けられていると、SSSEP応答が大きくなる。視覚刺激によって、定常状態視覚誘発電位(SSVEP)応答が誘発される。視覚刺激に注意が向けられていると、SSVEP答が大きくなる。聴覚刺激によって、定常状態聴覚誘発電位(SSAEP)応答が誘発される。聴覚刺激に注意が向けられていると、SSAEP応答が大きくなる。
【0044】
感覚野で誘発されるSSSEP、SSVEP、又はSSAEPは、脳内を伝播し、前頭前野又は後頭頂連合野において特徴的な脳活動が観測されることがある。したがって、前頭前野や後頭頂連合野近傍の脳波を計測することでも、感覚刺激が与えられた時の脳活動を計測できる。
【0045】
脳波計測器52は、処理装置30に接続されている。脳波計測器52は、感覚刺激が与えられている訓練者Tの脳活動を表す脳波を計測し、計測結果(脳波信号)を処理装置30へリアルタイムで出力する。処理装置30は、訓練者Tに感覚刺激が与えられているときに、脳波計測器52から出力された計測結果をリアルタイムで受信する。
【0046】
処理装置30のプロセッサ31は、コンピュータプログラム321を実行することによって第1特徴量算出処理312を実現する。第1特徴量算出処理312は、受信した脳波信号の計測結果を用いて第1特徴量を算出することを含む。第1特徴量は、注意力に関する特徴量であって、訓練者Tが感覚刺激に向けた注意に関する特徴量である。第1特徴量算出処理312は、SSSEP応答、SSVEP応答、又はSSAEP応答から第1特徴量を求めることを含み、例えば、SSSEP応答、SSVEP応答、又はSSAEP応答の強度を用いて第1特徴量を求めることを含む。
【0047】
訓練者Tに与えられた感覚刺激が、体性感覚刺激である場合、プロセッサ31は、体性感覚野近傍の脳波の計測結果から、体性感覚刺激の周波数に対応するSSSEP応答の強度を求める。処理装置30は、SSSEP応答の強度から、体性感覚刺激に向けられた注意に関する特徴量を求める。
【0048】
訓練者Tに与えられた感覚刺激が、視覚刺激である場合、プロセッサ31は、視覚野近傍の脳波の計測結果から、視覚刺激の周波数に対応するSSVEP応答の強度を求める。処理装置30は、SSVEP応答の強度から、視覚刺激に向けられた注意に関する特徴量を求める。
【0049】
訓練者Tに与えられた感覚刺激が、聴覚刺激である場合、プロセッサ31は、聴覚野近傍の脳波の計測結果から、聴覚刺激の周波数に対応するSSAEP応答の強度を求める。処理装置30は、SSAEP応答の強度から、聴覚刺激に向けられた注意に関する特徴量を求める。
【0050】
なお、脳波が前頭前野又は後頭頂連合野近傍において計測される場合も、SSSEP,SSVEP,SSAEPの伝搬成分の強度から、感覚刺激に向けられた注意に関する特徴量を求めればよい。
【0051】
図3は、SSSEP応答と、個人の注意能力との関係と、を表した図である。図3は、被験者に22Hzの振動刺激と25Hzの振動刺激とを同時に与えたときの、体性感覚野近傍の脳波の測定結果であるパワースペクトラムを示している。図3において、横軸は、脳波の周波数を示し、縦軸は、パワーを示す。
【0052】
図3の上図は、体性感覚の注意能力が高い被験者の測定結果を示し、図3の下図は、体性感覚の注意能力が低い被験者の測定結果を示している。図3の上図に示すように、注意能力が高い被験者の場合、振動刺激の周波数である22Hzと25Hzとにおいて、鋭いピークが生じている。22Hzと25Hzとにおいて生じているピークが、22Hz及び25Hzの振動刺激に対するSSSEP応答に相当する。ピークの大きさは、SSSEP応答の強さを示しており、体性感覚の注意能力が高い場合、振動刺激に対するSSSEP応答が強くなることがわかる。
【0053】
一方、図3の下図に示すように、注意能力が低い被験者の場合、振動刺激の周波数である22Hzと25Hzとにおいて、鋭いピークが生じない。したがって、体性感覚の注意能力が低い場合、振動刺激に対するSSSEP応答が弱くなることがわかる。
【0054】
このように、体性感覚における注意能力の強さによって、SSSEP応答の強さが変動することがわかる。したがって、体性感覚の注意能力が低い者であっても、SSSEP応答が図3の上図のように強くなるように脳活動状態を訓練することで、体性感覚の注意能力を高めることができる。
【0055】
同様に、視覚における注意能力の強さによって、SSVEP応答の強さが変動する。したがって、視覚における注意能力が低い者であっても、SSVEP応答が強くなるように訓練することで、視覚における注意能力を高めることができる。また、SSAEP応答が強くなるように訓練することで、聴覚における注意能力を高めることができる。
【0056】
処理装置30は、ディスプレイ34に接続されて、ディスプレイ34の表示を制御する。処理装置30のプロセッサ31は、コンピュータプログラム321を実行することによって訓練画面表示処理314を実行する。訓練画面表示処理314は、ディスプレイ34に、訓練者Tに提示する訓練画面を表示させ、訓練者Tへの指示内容を制御することを含む。
【0057】
一例として、訓練画面での指示は、「左手に注意を向けてください」旨の文章を含む。このとき、プロセッサ31は刺激提示器制御処理311を実行し、一例として、体性感覚刺激提示器511を動作させ、他の刺激提示器512,513,514を動作させない。これにより、訓練者Tの左手に装着された体性感覚刺激提示器511より訓練者Tの左手へ第1刺激が与えられ、他の刺激提示器512,513,514からの刺激は与えられない。
【0058】
訓練者Tは、訓練画面に提示された指示に従って、左手に注意を向ける。プロセッサ31は、第1特徴量算出処理312を実行することで、SSSEP応答の強度から第1特徴量を算出する。
【0059】
図4は、上記指示が訓練者Tに与えられる前の脳波のスペクトラム200Aと、上記指示が与えられた後の脳波のスペクトラム200Bとを示した図である。なお、指示前後のいずれでも第1刺激が訓練者Tへ与えられているものとする。
【0060】
指示前後のスペクトラム200A,200Bにおいて、振動周波数f1に対応する22Hzにおけるパワーのピーク値P1ref,P1が、指示前後のSSSEP応答を表している。図4では、指示前後のいずれも22Hzにおいてピーク値P1ref,P1が生じてはいるものの、指示後のピーク値P1は注意が強く向けられているため、指示前のピーク値P1refよりも大きい。
【0061】
処理装置30のプロセッサ31は、第1特徴量算出処理312を実行することによって、第1特徴量の一例としての特徴量CLを算出する。特徴量CLは、指示前後のピーク値P1ref,P1の関係を表す値であって、例えば、指示前後のピーク値P1ref,P1の比である。より具体的には、特徴量CLは、例えば、CL=P1/P1refの計算によって得られる。指示前は、左手へ注意がほとんど向けられていないか、向けられていても非常に弱いため、指示前のピーク値P1refは小さくなる。指示前のピーク値P1refを基準とした指示後のピーク値P1として特徴量CLを求めることにより、指示前後における注意の強さの変動を特徴量CLに反映させることができる。
【0062】
他の例として、プロセッサ31は刺激提示器制御処理311を実行し、体性感覚刺激提示器511,512を動作させ、他の刺激提示器513,514を動作させない。これにより、訓練者Tの左右の手にそれぞれ、第1刺激、第2刺激が与えられ、他の刺激提示器513,514からの刺激は与えられない。
【0063】
この状態において、一例として、訓練画面での指示は、「左手に注意を向けてください」旨の文章を含む。これは、プロセッサ31が訓練画面表示処理314において、与えられている第1刺激及び第2刺激のうちの一方を選択刺激として選択し、選択した側に注意を向けるような指示内容とするものである。選択は、予め設定されたものであってもよいし、他の装置からの指示に従うものであってもよい。これにより、訓練者Tは、左右両手ともに振動が与えられている状態で、一方の手(例えば左手)だけに注意を向ける訓練が行える。
【0064】
図5は、上記指示が訓練者Tに与えられる前の脳波のスペクトラム210Aと、上記指示が与えられた後の脳波のスペクトラム210Bとを示した図である。なお、指示前後のいずれでも第1刺激及び第2刺激が訓練者Tへ与えられているものとする。
【0065】
図5を参照して、指示前後のスペクトラム210A,210Bにおいて、選択刺激の振動周波数f1に対応する22Hzに、選択刺激によって生じる脳活動の測定結果であるピーク値P1が生じている。また、非選択刺激の振動周波数f2に対応する25Hzに、非選択刺激によって生じる脳活動の測定結果であるピーク値P2が生じている。
【0066】
これは、上記指示が与えられた訓練者Tが左手に注意を向けると、図5に示すように、注意が向けられた左手に対応するピーク値P1が大きくなり、右手に対応するピーク値P2は逆に小さくなることを示している。
【0067】
処理装置30のプロセッサ31は、第1特徴量算出処理312を実行することによって、第1特徴量の一例としての特徴量CLを算出する。特徴量CLは、ピーク値P1,P2の関係を表す値であって、例えば、ピーク値P1,P2の比である。より具体的には、特徴量CLは、例えば、CL=P1/P2の計算によって得られる。選択刺激に向けられた注意に関する特徴量CLは、非選択刺激によって生じる脳活動の測定結果であるピーク値P2を基準値とする値として求められる。なお、特徴量CLは、ピーク値P1だけから求められてもよい。
【0068】
なお、この例において、逆に、右手の刺激が選択刺激として選択された場合、訓練画面での指示は「右手に注意を向けてください」旨の文章を含む。図6は、上記指示が与えられた後の脳波のスペクトラム220を示した図である。図6を参照して、訓練者Tが右手に注意を向けると、注意が向けられた右手に対応するピーク値P2が大きくなり、左手に対応するピーク値P1は逆に小さくなる。
【0069】
この場合、処理装置30のプロセッサ31は、第1特徴量算出処理312を実行することによって、第1特徴量の一例としての特徴量CRを算出する。特徴量CRは、例えば、CR=P2/P1の計算により求めることができる。なお、特徴量CRは、ピーク値P2だけから求められてもよい。
【0070】
システム100は、心拍計測器53を含む。心拍計測器53は、訓練者Tの自律神経系の活動を計測する計測装置の一例である。心拍計測器53は、訓練中の心拍を計測する。
【0071】
心拍計測器53は、訓練者Tの心拍が計測可能な部位に装着される。例えば、心拍計測器53は、訓練者Tの心臓の付近に装着され、心拍を計測する。心拍計測器53は処理装置30に接続されて、処理装置30に接続されている。心拍計測器53は、感覚刺激が与えられている訓練者Tの自律神経系の活動を計測し、計測結果(心電図信号)を処理装置30へリアルタイムで出力する。処理装置30は、訓練者Tに感覚刺激が与えられているときに、心拍計測器53から出力された計測結果をリアルタイムで受信する。
【0072】
なお、心拍計測器53の他の例として、訓練者Tの指先などに取り付けられた脈波センサであってよい。この場合、脈波センサによって血流が計測され、血流の計測値を表す脈波信号の入力を受けた処理装置30が、脈波から心拍を推定してもよい。
【0073】
処理装置30のプロセッサ31は、コンピュータプログラム321を実行することによって第2特徴量算出処理313を実現する。第2特徴量算出処理313は、受信した計測結果を用いて第2特徴量を算出することを含む。第2特徴量算出処理313は、一例として、心拍数から第2特徴量を求めることを含む。
【0074】
第2特徴量は、訓練者Tの心理状態の訓練への適合度に関する特徴量であって、一例として、心電図信号から得られる、心拍の変化に基づいた指標値である。心電図信号から得られる、心拍の変化に基づいた指標値は、例えば、心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)を表す指標である。第2特徴量は、例えば、RRI(R-R Interval)と呼ばれる、R波間隔の変化が挙げられる。第2特徴量は、一例として、RRIのばらつきを示す値である。RRIのばらつきを示す値は、例えば、所定期間内のRRIの分散値として求められる。他の例として、meanNNなどの、RRIから算出される値のばらつきなどであってもよい。
【0075】
心拍数などの自律神経系の活動の計測値は、ストレスが高いほど心拍数が上がるとともに、RRIのばらつきが小さくなる。従って、第2特徴量をRRIとした場合、第2特徴量が小さいほど心拍の変化が小さく、訓練者Tの心理状態の訓練の適合度が低いことを示し、第2特徴量が大きいほど心拍の変化が大きく、適合度が高いことを示している。
【0076】
自律神経系の活動は、他の例として、体温によって計測されてもよい。その場合、計測装置として非接触体温計などが用いられる。体温も、ストレスが高くなると上昇するため、その値を第2特徴量として用いることができる。
【0077】
自律神経系の活動は、他の例として、眼球運動によって計測されてもよい。その場合、計測装置として視線計測装置などが用いられる。ストレスが高くなると細かく速い眼球運動成分が強く観察されると言われているため、眼球運動を表す値を第2特徴量として用いることができる。
【0078】
自律神経系の活動は、他の例として、発汗量によって計測されてもよい。その場合、計測装置としてSRR(skin resistance response:皮膚抵抗反応)メータなどが用いられる。ストレスが高くなると発汗量が増し、皮膚電気抵抗が上がるため、皮膚電気抵抗値を第2特徴量として用いることができる。
【0079】
処理装置30のプロセッサ31は、コンピュータプログラム321を実行することによって第1ニューロフィードバック処理315を実現する。第1ニューロフィードバック処理315は、第1特徴量及び第2特徴量を第1のニューロフィードバックをさせるための処理を指す。第1のニューロフィードバックは、人間自身による知覚が困難である脳活動を、光又は音などに変換して、脳活動をしている人間自身に自覚させることで、脳活動を調整することを指す。
【0080】
具体的には、第1ニューロフィードバック処理315は、第1特徴量及び第2特徴量に基づく情報を少なくとも訓練者Tに提示することを含む。第1特徴量及び第2特徴量に基づく情報を訓練者Tに提示することは、一例として、第1ニューロフィードバック処理315は、第1特徴量及び第2特徴量に基づく表示を、計測とリアルタイムでディスプレイ34に表示させることを含む。
【0081】
第1特徴量は、訓練者Tが、与えられた感覚刺激に向けた注意の大きさを示す特徴量であり、第2特徴量は、訓練者Tの心理状態の訓練への適合度を示す特徴量である。これら特徴量を、リアルタイムで、訓練者Tへニューロフィードバックすることで、訓練者Tは、自身が感覚刺激に向けている注意の強さ、及び、心理状態の訓練への適合度を認識することができ、適合した心理状態で、注意が強くなるように訓練することができる。
【0082】
図7は、第1のニューロフィードバックのための画面34Aの一例を表した図である。図7の例では、画面34Aは、訓練画面を兼ねている。すなわち、訓練画面表示処理314及び第1ニューロフィードバック処理315は、それぞれ、画面34Aの内容を制御することを含む。
【0083】
図7を参照して、画面34Aは、第1のニューロフィードバックのための図形41及び表示42を含む。図形41は、訓練者Tの第1特徴量の変動(注意の強さの変動)を可視化する図形である。図形41は、例えば丸印である。
【0084】
処理装置30のプロセッサ31は、第1特徴量の変動を図形41の移動によって可視化させる。すなわち、プロセッサ31は、第1特徴量の変動が大きいほど大きな移動量として図形41の表示位置を決定する。これにより、図形41は、第1特徴量の変動に応じた移動を示す。訓練者Tは、図形41の移動量に応じて、注意の強さを把握できる。
【0085】
表示42は、訓練者Tの第2特徴量(心理状態の訓練への適合度)を可視化する表示である。表示42は、例えばRRIのグラフであって、RRIのばらつきを可視化したものである。表示48は、訓練者Tの第2特徴量の表示である。表示48は、例えばRRIの分散値の表示である。
【0086】
プロセッサ31は、第2特徴量をリアルタイムにグラフ化して画面34Aに表示させる。表示42により、ストレスが大きく心理状態の訓練への適合度が低い場合には値のばらつきが小さく示される。訓練者Tは、表示42に示された値のばらつきに応じて、心理状態の訓練への適合度を把握できる。
【0087】
好ましくは、画面34Aは、訓練者Tに注意を向けることを促す指示の表示43を含む。すなわち、プロセッサ31は、訓練画面表示処理314を実行することによって表示43を生成し、画面34Aに表示させる。これにより、画面34Aは、訓練画面としても機能する。
【0088】
好ましくは、画面34Aは、脳機能の訓練目標と現在の脳機能の強さとの差に基づいた表示44を含む。差は、例えば、目標までのポイントとして表される。現在の脳機能の強さは、第1特徴量によって表される。プロセッサ31には、訓練目標とする第1特徴量が予め設定されており、第1特徴量の目標値と現在の第1特徴量との差を算出して表示44を行わせる。
【0089】
好ましくは、画面34Aは、心理状態の評価の表示45を含む。心理状態の評価は、例えば、RRIの分散値に基づく表示であって、心理状態の目標とするRRIの分散値と、現在のRRIの分散値との差に基づいた表示45を含む。表示45は、例えば、良い、悪い、普通、の評価であってもよいし、目標とする分散値に近づけるためのアドバイスを含んでもよい。一例として、プロセッサ31には、理想の分散値の範囲が予め設定されており、第2特徴量として得られたRRIの分散値と設定されている分散値の範囲との差が予め設定されている閾値より大きい場合に、予め記憶されている表示45を行わせる。
【0090】
このような表示がディスプレイ34に行われることによって、訓練者Tに対して第1のニューロフィードバックが行われる。これにより、訓練者Tは自身の脳活動を自覚することができ、効果的な訓練を行うことができる。また、訓練に効果的な心理状態に近づけることができる。脳機能の訓練効果は心理状態によって差が生じるため、第2特徴量がニューロフィードバックされることで、訓練者Tのより効果的な脳機能の訓練を支援することができる。
【0091】
なお、第1ニューロフィードバック処理315において、第1特徴量及び第2特徴量に基づく情報を訓練者Tに提示することは、他の例として、音声で出力することであってもよい。処理装置30のプロセッサ31は、例えば、第1特徴量及び第2特徴量が目標値から乖離するほど不協和音を出力し、近づくと和音を出力する、などを行わせてもよい。このようにすることでも、訓練者Tは能機能の訓練を行いながら第1特徴量及び第2特徴量を把握することができ、効果的な訓練を行うことができる。
【0092】
処理装置30のプロセッサ31は、訓練者Tから得られた第1特徴量及び第2特徴量を通信装置33に渡し、サーバ10に送信させる。サーバ10のメモリ12には、処理装置30から送信された第1特徴量及び第2特徴量が格納される。図1に示されるように、システム100に複数の処理装置30が含まれる場合、サーバ10のメモリ12には、訓練者T,T1,…ごとに第1特徴量及び第2特徴量が格納される。
【0093】
好ましくは、訓練者T,T1,…ごとの第1特徴量及び第2特徴量は、各処理装置30において脳機能の訓練に用いられている訓練データを特定する識別子と共にサーバ10に送信される。これにより、サーバ10のメモリ12には、同一の訓練データを用いた脳機能の訓練において複数の訓練者T,T1,…それぞれから得られた第1特徴量及び第2特徴量が記憶される。その結果、プロセッサ11は、同一の訓練を行う複数の訓練者T,T1,…(以下、複数の訓練者)についての第1特徴量及び第2特徴量を用いた処理が可能になる。
【0094】
サーバ10のプロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによって第2ニューロフィードバック処理113を実現する。第2ニューロフィードバック処理113は、複数の訓練者T,T1,…についての第1特徴量及び第2特徴量を第2のニューロフィードバックをさせるための処理を指す。第2のニューロフィードバックは、複数人の脳活動を、光又は音などに変換して、脳活動をしている人間又は脳活動を行っていない人間に把握させることで、脳活動をしている人間における脳活動、又は、複数人の脳活動を調整することを指す。
【0095】
具体的には、第2ニューロフィードバック処理113は、複数の訓練者T,T1,…についての第1特徴量及び第2特徴量に基づく提示を行わせるための表示データを生成し、表示させる装置に送信させることを含む。提示は、例えば、複数の訓練者T,T1,…それぞれの第1特徴量及び第2特徴量を、比較可能なように表示することであってよい。
【0096】
また、提示は、各処理装置30に表示用のデータを送信して、処理装置30に接続されたディスプレイ34に表示させることであってもよい、管理者などが用いるコンピュータ90に表示用のデータを送信して表示させることであってもよい。これにより、各訓練者T,T1,…が視認可能なディスプレイ34又は、ディスプレイ34に替えて、あるいは、加えて、管理者等の視認可能なコンピュータ90のディスプレイに、訓練者T,T1,…それぞれの第1特徴量及び第2特徴量が比較可能なように表示される。
【0097】
図8は、第2のニューロフィードバックのための画面34Bの一例を表した図である。図8の例では、画面34Bは、訓練画面を兼ねており、一例として、訓練者Tの用いているディスプレイ34に表示されている。すなわち、処理装置30のプロセッサ31は、訓練画面表示処理314を実行して画面34Bの内容を制御するとともに、サーバ10から送信された第2のニューロフィードバックのための表示データに基づいた表示も行わせる。
【0098】
図8を参照して、画面31Bは、第1のニューロフィードバックのための図形41及び表示42、並びに訓練者Tに注意を向けることを促す指示の表示43に加えて、第2のニューロフィードバックのための図形46及び表示47を含む。図形46は、各訓練者T,T1,…の第1特徴量の変動(注意の強さの変動)を可視化する図形である。図形46は、例えば訓練者ごとの複数の丸印である。
【0099】
サーバ10のプロセッサ11は、各処理装置30から得た第1特徴量の変動の大きさに応じてそれぞれの図形46の表示位置を決定する。これにより、各訓練者T,T1,…の第1特徴量の変動が図形46の移動によって可視化される。これらを、一例として、重ねて表示させることにより、各訓練者T,T1,…の第1特徴量の変動を比較可能に表示させることができる。このため、図8の例の場合、訓練者Tは、図形46の移動量の比較によって、他の訓練者T1,…の注意の強さを自身の注意の強さと比較しながら把握できる。
【0100】
表示47は、各訓練者T,T1,…第2特徴量(心理状態の訓練への適合度)を可視化する表示である。表示47は、例えば訓練者ごとRRIを表したグラフであって、訓練者ごとRRIのばらつきを可視化したものである。
【0101】
プロセッサ11は、各処理装置30から得たRRIをリアルタイムにグラフ化して画面34Bに表示させる。表示47により、各訓練者T,T1,…の第2特徴量を比較可能に表示させることができる。このため、図8の例の場合、訓練者Tは、グラフの比較によって、他の訓練者T1,…の心理状態の訓練への適合度を自身の心理状態の訓練への適合度と比較しながら把握できる。
【0102】
図8の例のように、各訓練者T,T1,…の用いているディスプレイ34に第2のニューロフィードバックのための画面34Bが表示されることによって、各訓練者T,T1,…は、他の訓練者よりもよい訓練を行ったり、他の訓練者と揃えた訓練を行ったり、グループとしての脳機能の訓練が可能になる。また、本システム100は、各訓練者T,T1,…が遠隔であっても、グループとしての脳機能の訓練を支援できる。
【0103】
第2ニューロフィードバック処理113において、プロセッサ11が第2のニューロフィードバックのための画面34Bを表示させる表示データを管理者等の視認可能なコンピュータ90に送信して表示させる場合、画面34Bはコンピュータ90に表示される。これにより、管理者等の訓練者T,T1,…の以外の者が、訓練者T,T1,…の脳機能の訓練の様子をリアルタイムに把握することが可能になる。また、本システム100は、管理者等が訓練者T,T1,…に対して遠隔であっても、訓練者T,T1,…の脳機能の訓練を支援できる。
【0104】
好ましくは、サーバ10のプロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによって指標算出処理111を実現する。指標算出処理111は、複数の訓練者T,T1,…についての第1特徴量及び第2特徴量を用いて、複数の訓練者T,T1,…の脳機能の訓練の関連性を示す指標を算出することを示す。指標は、例えば、第1特徴量の訓練者T,T1,…の相関度合を示す指標であってもよいし、ばらつきを示す指標であってもよい。また、指標は、第2特徴量の訓練者T,T1,…の相関度合を示す指標であってもよいし、ばらつきを示す指標であってもよい。
【0105】
プロセッサ11は、算出された指標を用いて第2ニューロフィードバック処理113を実行してもよい。すなわち、プロセッサ11は、画面31Bに算出された指標をさらに含めてもよい。これにより、複数の訓練者T,T1,…の脳機能の訓練の関連性が把握されやすくなる。
【0106】
好ましくは、サーバ10のプロセッサ11は、コンピュータプログラム121を実行することによってペアリング処理112を実現する。ペアリング処理112は、複数の訓練者T,T1,…から、脳機能の訓練を行うグループを決定することを含む。
【0107】
一例として、プロセッサ11は、グルーピングの基準を予め記憶しており、複数の訓練者T,T1,…それぞれの第1特徴量及び第2特徴量の少なくとも一方を用いてグループを決定する。その他、性別や性格など処理装置30の入力装置35で入力された訓練者に関する情報が用いられてもよい。
【0108】
グルーピングの基準は、一例として、第1特徴量が所定の相関性を有すること、第2特徴量が所定の相関性を有すること、などである。これにより、例えば、脳機能の訓練における行動のレベルが似た訓練者や、心理状態が似た訓練者をグループとすることができる。
【0109】
グルーピングの基準の他の例は、第1特徴量が最も高い訓練者、及び、その値から第1特徴量が所定範囲にある訓練者、などであってもよい。これにより、例えば、脳機能の訓練における行動が優れた訓練者をリーダーとし、リーダーの行動から所定範囲にある訓練者を構成員、としたグループとすることができる。
【0110】
プロセッサ11のペアリング処理112を実現する機能は、第1特徴量及び第2特徴量の少なくとも一方を入力値とし、対応したグループを出力値とするよう機械学習された学習モデルであってもよい。これにより、容易にグループが決定される。
【0111】
なお、ペアリング処理112は、他の装置で行われてもよい。この場合、プロセッサ11は、他の装置に必要な情報を送信する。また、グループの決定はユーザによってなされ、サーバ10は、その結果の入力を受け付けるものであってもよい。
【0112】
図9は、本実施の形態に係る脳機能訓練方法の一例を表した図である。図9を参照して、処理装置30のプロセッサ31は刺激提示器制御処理311を実行して、所定の訓練データに基づいて訓練者Tに体性感覚刺激を提示するとともに、訓練画面表示処理314を実行し、ディスプレイ34に訓練画面を表示させる(ステップS1)。これにより、訓練者Tは脳機能訓練を行うことができる。
【0113】
訓練者Tによる脳機能訓練中において、処理装置30のプロセッサ31は、脳波計測器52による脳波の計測結果である脳信号、及び、心拍計測器53による自律神経系の活動の計測結果である心電図信号の入力を受け付ける(ステップS2,S3)。プロセッサ31は、脳信号を用いて第1特徴量を算出し(ステップS4)、心電図信号を用いて第2特徴量を算出する(ステップS5)。
【0114】
プロセッサ31は脳機能訓練の間、連続的にステップS2~S4を繰り返す。すなわち、脳信号の入力、及び、心電図信号の入力を受け付け、リアルタイムに第1特徴量及び第2特徴量を算出する。これにより、リアルタイムに第1特徴量及び第2特徴量が得られる。
【0115】
プロセッサ31は、算出された第1特徴量及び第2特徴量を用いて第1ニューロフィードバック処理315を実行する(ステップS6)。これにより、処理装置30に接続されたディスプレイ34には、図7の第1のニューロフィードバックのための画面が表示される。この画面によって、訓練者Tは、訓練のための指示を見ることができるとともに、リアルタイムに第1特徴量及び第2特徴量を把握できる。これにより、訓練者Tは効果的な脳機能の訓練を行うことができる。
【0116】
プロセッサ31は、また、算出された第1特徴量及び第2特徴量をサーバ10に送信する(ステップS7)。サーバ10は、複数の処理装置30から、同一の訓練データで脳機能の訓練を行っている複数の訓練者T,T1,…それぞれの第1特徴量及び第2特徴量を得る。サーバ10のプロセッサ11は、これら第1特徴量及び第2特徴量を用いて第2ニューロフィードバック処理113を実行する(ステップS8)。
【0117】
プロセッサ11は、第2ニューロフィードバック処理113によって得られた結果として、第2のニューロフィードバックのための画面を表示させる表示データを処理装置30に送信する(ステップS9)。これにより、処理装置30のプロセッサ31は、訓練者Tの用いているディスプレイ34に図8の第2のニューロフィードバックのための画面を表示させることができる(ステップS10)。このため、訓練者Tは、他の訓練者T1,…の第1特徴量及び第2特徴量と自身の第1特徴量及び第2特徴量とを比較しながら脳機能の訓練を行うことができる。
【0118】
プロセッサ11は、第2のニューロフィードバックのための画面を表示させる表示データを管理者等の用いるコンピュータ90に送信してもよい(ステップS11)。これにより、コンピュータ90では、図8の第2のニューロフィードバックのための画面を表示させることができる(ステップS12)。このため、管理者等が複数の訓練者T,T1,…それぞれの第1特徴量及び第2特徴量を把握することができる。これにより、管理者等は、一例として、複数の訓練者T,T1,…の中から脳機能の訓練を行うグループを決定することができる。
【0119】
なお、サーバ10のプロセッサ11は、ペアリング処理112を実行し、その結果をコンピュータ90や処理装置30に出力するようにしてもよい。これにより、グループでの脳機能の訓練を支援することができる。
【0120】
以上の例では、第1ニューロフィードバック処理315を各処理装置30が行うものとしている。この場合、各処理装置30のプロセッサ31自身が、第1特徴量をプロセッサ31に入力する第1の入力部、及び、第2特徴量をプロセッサ31に入力する第2の入力部として機能する。
【0121】
他の例として、第1特徴量及び第2特徴量が処理装置30からサーバ10に送信され、第1ニューロフィードバック処理315がサーバ10のプロセッサ11が実行されてもよい。この場合、サーバ10の通信装置13が第1特徴量をプロセッサ11に入力する第1の入力部、及び、第2特徴量をプロセッサ11に入力する第2の入力部として機能する。
【0122】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0123】
10 :サーバ
11 :プロセッサ
12 :メモリ
13 :通信装置
30 :処理装置
31 :プロセッサ
31B :画面
32 :メモリ
33 :通信装置
34 :ディスプレイ
34A :画面
34B :画面
35 :入力装置
41 :図形
42 :表示
43 :表示
44 :表示
45 :表示
46 :図形
47 :表示
48 :表示
51 :刺激提示器
52 :脳波計測器
53 :心拍計測器
70 :通信網
90 :コンピュータ
100 :システム
111 :指標算出処理
112 :ペアリング処理
113 :第2ニューロフィードバック処理
121 :コンピュータプログラム
122 :特徴量記憶部
200A :スペクトラム
200B :スペクトラム
210A :スペクトラム
210B :スペクトラム
220 :スペクトラム
311 :刺激提示器制御処理
312 :第1特徴量算出処理
313 :第2特徴量算出処理
314 :訓練画面表示処理
315 :第1ニューロフィードバック処理
321 :コンピュータプログラム
511 :体性感覚刺激提示器
512 :体性感覚刺激提示器
513 :視覚刺激提示器
514 :視覚刺激提示器
P1 :ピーク値
P1ref :ピーク値
P2 :ピーク値
T :訓練者
T1 :訓練者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9