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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039893
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】面状採暖具
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
H05B3/00 320Z
H05B3/00 310H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034515
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021146764
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】396016973
【氏名又は名称】株式会社広電
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】石川 広
【テーマコード(参考)】
3K058
【Fターム(参考)】
3K058AA11
3K058BA02
3K058CA16
3K058CA23
3K058CA52
3K058CB02
3K058CE12
3K058CE19
(57)【要約】
【課題】コードヒータの劣化を検出して通電を停止することを目的とする。
【解決手段】本発明の面状採暖具100は、採暖部10に配線され、ヒータ線32と、温度検出線34と、中間層33とを有するコードヒータ30と、温度検出線34により検出される温度の情報に基づいてヒータ線32に対する通電と通電停止を交互に切替えて、採暖部10の温度を制御する制御部40とを有する。制御部40は、ヒータ線32に対する通電および通電停止の少なくとも何れか一方に関する情報に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採暖部に配線され、ヒータ線と、温度検出線と、前記ヒータ線と前記温度検出線との間に位置する中間層とを有するコードヒータと、
前記温度検出線により検出される温度の情報に基づいて前記ヒータ線に対する通電と通電停止を交互に切替えて、前記採暖部の温度を制御する制御手段と、を有する面状採暖具であって、
前記制御手段は、
前記ヒータ線に対する通電および通電停止の少なくとも何れか一方に関する情報に基づいて、前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする面状採暖具。
【請求項2】
前記ヒータ線に対する通電および通電停止の少なくとも何れか一方に関する情報は、
前記ヒータ線に対する通電および通電停止の周期の情報、
前記ヒータ線に対して通電している時間の情報、
前記ヒータ線に対して通電停止している時間の情報、
または、前記ヒータ線に対する通電および通電停止の少なくとも何れか一方の回数の情報、
であることを特徴とする請求項1に記載の面状採暖具。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記周期が閾値以下の場合、
前記ヒータ線に対して通電している時間が閾値以下の場合、
前記ヒータ線に対して通電停止している時間が閾値以下の場合、
または、前記ヒータ線に対する通電および通電停止の少なくとも何れか一方の回数が閾値以上の場合には、
前記温度検出線により検出される温度の情報に関わらず、前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする請求項2に記載の面状採暖具。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記周期と、漏洩電流がないときの前記ヒータ線に対する通電および通電停止の周期との差分が閾値以上の場合、
前記ヒータ線に対して通電している時間と、漏洩電流がないときに前記ヒータ線に対して通電している時間との差分が閾値以上の場合、
前記ヒータ線に対して通電停止している時間と、漏洩電流がないときに前記ヒータ線に対して通電停止している時間との差分が閾値以上の場合には、
前記温度検出線により検出される温度の情報に関わらず、前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする請求項2に記載の面状採暖具。
【請求項5】
前記ヒータ線に対する通電を遮断する温度ヒューズを有し、
前記閾値は、
前記温度ヒューズが前記ヒータ線に対する通電を遮断するときの前記ヒータ線に対する通電および通電停止の周期と、漏洩電流がないときの前記ヒータ線に対する通電および通電停止の周期との差分よりも小さい値であることを特徴とする請求項4に記載の面状採暖具。
【請求項6】
前記ヒータ線に対する通電を遮断する温度ヒューズを有し、
前記制御手段は、
前記温度ヒューズが通電を遮断するよりも前に前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の面状採暖具。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記ヒータ線に対して通電停止を継続していることを報知部を介して使用者に報知することを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の面状採暖具。
【請求項8】
採暖部に配線され、ヒータ線と、温度検出線と、前記ヒータ線と前記温度検出線との間に位置する中間層とを有するコードヒータと、
前記温度検出線により検出される温度の情報に基づいて前記ヒータ線に対する通電と通電停止を交互に切替えて、前記採暖部の温度を制御する制御手段と、
前記温度検出線とは別体で、前記コードヒータの温度を検出する温度検出手段と、を有する面状採暖具であって、
前記制御手段は、
前記温度検出手段により検出される温度の情報に基づいて、前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする面状採暖具。
【請求項9】
採暖部に配線され、ヒータ線と、温度検出線と、前記ヒータ線と前記温度検出線との間に位置する中間層とを有するコードヒータと、
前記温度検出線により検出される温度の情報に基づいて前記ヒータ線に対する通電と通電停止を交互に切替えて、前記採暖部の温度を制御する制御手段と、を有する面状採暖具であって、
前記制御手段は、
前記温度検出線により検出される温度の情報と、漏洩電流がないときの前記温度検出線により検出される温度の情報とに基づいて、前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする面状採暖具。
【請求項10】
前記温度検出線により検出される温度の情報を平滑化する平滑手段を有し、
前記制御手段は、
前記温度検出線により検出される温度の情報が前記平滑手段により平滑化された後の情報に基づいて、前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする請求項9に記載の面状採暖具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状採暖具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からヒータ線と温度検出線とが一体で構成された1線式のコードヒータを用いた面状採暖具が知られている(特許文献1を参照)。このような面状採暖具は、温度検出線により検出された温度の情報に基づいてヒータ線を発熱させることにより使用者の所望する温度になるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-5175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、面状採暖具上に長時間に亘って物体を放置しておくと当該位置の放熱性が損なわれ、局所的に保温されて高温状態が続いてしまう。このように高温状態が続くと、ヒータ線と温度検出線の間の中間層が徐々に劣化してしまい、ヒータ線と温度検出線とが短絡してしまう虞がある。面状採暖具は一般的に安全装置としての温度ヒューズを備えており、ヒータ線と温度検出線とが短絡することで温度ヒューズが溶断されるが、中間層の劣化の程度によっては温度ヒューズが溶断されなかったり、想定よりも早めに溶断されたりしてしまう。
【0005】
本発明は、コードヒータの劣化を検出して通電を停止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、採暖部に配線され、ヒータ線と、温度検出線と、前記ヒータ線と前記温度検出線との間に位置する中間層とを有するコードヒータと、前記温度検出線により検出される温度の情報に基づいて前記ヒータ線に対する通電と通電停止を交互に切替えて、前記採暖部の温度を制御する制御手段と、を有する面状採暖具であって、前記制御手段は、前記ヒータ線に対する通電および通電停止の少なくとも何れか一方に関する情報に基づいて、前記ヒータ線に対する通電停止を継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コードヒータの劣化を検出して通電を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】面状採暖具の構成を模式的に示す図である。
図2】コードヒータの概略構成の一例を示す図である。
図3】面状採暖具の内部構成の一例を示す図である。
図4】温度検出線の電圧の変化等の一例を示す図である。
図5】コードヒータの温度の変化等の一例を示す図である。
図6】漏洩電流を説明するための図である。
図7】漏洩電流が増えた場合の温度検出線の電圧の変化の一例を示す図である。
図8】漏洩電流がある場合の温度検出線の電圧の変化等の一例を示す図である。
図9】第1実施例の処理の一例を示すフローチャートである。
図10】第2実施例の処理の一例を示すフローチャートである。
図11】第3実施例の処理の一例を示すフローチャートである。
図12】第4実施例の通電制御部の構成の一例を示す図である。
図13】通電制御部の処理を説明するための図である。
図14】第4実施例の処理の一例を示すフローチャートである。
図15】第5実施例の通電制御部の構成の一例を示す図である。
図16】第5実施例の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態に係る面状採暖具について図面を参照して説明する。本実施形態では、面状採暖具として電気カーペットに適用するものとする。
図1は、面状採暖具100の構成の一例を模式的に示す図である。面状採暖具100は、例えば交流100Vの電力を受電することで駆動を開始する。
【0010】
面状採暖具100は、採暖部10、コントローラ20、コードヒータ30を備える。
採暖部10は、使用者が載って暖を採る面状の部位である。採暖部10は、上側から見て例えば矩形状であり、水平方向に沿って広い面積を有する。採暖部10は、上から順に、表面層、クッション層、断熱層等が積層して構成される。表面層は、使用者と接触する部位であり、例えば、フェルト、ポリ塩化ビニル(PVC)等を用いることができる。クッション層は、採暖部10上に使用者が載ったときに採暖部10に掛かる力を分散させて使用者に弾力性を与えたり、コードヒータ30が発熱した熱を保温したりする。クッション層は、例えば、ウレタン等を用いることができる。また、断熱層は、コードヒータ30が発熱した熱が床面に放熱されないように断熱する。断熱層は、例えば、フェルト等を用いることができる。
【0011】
コントローラ20は、コードヒータ30の後述するヒータ線32に対する通電と通電停止を交互に切替えて、採暖部10の温度を制御する。コントローラ20は、採暖部10に対して露出する部位に配置される。コントローラ20には、使用者が採暖部10の温度を所望する温度に設定するための温度設定部21と、使用者に対して面状採暖具100の駆動状態を報知する報知部22とが電気的に接続されている。温度設定部21は、例えば、使用者が摘みをスライドさせることで、所望する温度レベル(例えばLv1~Lv5)に設定するスイッチであって、スライドした位置に対応する電圧がコントローラ20に入力される。ここでは、温度レベルLv1は採暖部10の温度が低くなる「弱」に相当し、温度レベルLv5は採暖部10の温度が高くなる「強」に相当する。報知部22は、例えば、LED等の発光部であり、点灯する時間および消灯する時間を変化させることで現時点における面状採暖具100の駆動状態を使用者に報知する。
【0012】
コードヒータ30は、通電されることで電力を熱に変換して発熱する。コードヒータ30は、採暖部10に配線される。具体的に、コードヒータ30は、採暖部10内におけるクッション層と断熱層との間で面方向に沿って配線される。コードヒータ30は、採暖部10の全面に亘って面方向に蛇行するように配線したり、スパイラル状に配線したりすることで、採暖部10を満遍なく加熱する。なお、コードヒータ30をシート状の不織布等の部材で上下から挟み込んだユニットを予め生成し、生成したユニットをクッション層と断熱層との間に積層させることでコードヒータ30を採暖部10に配線してもよい。
【0013】
図2は、コードヒータ30の概略構成の一例を示す図である。
コードヒータ30には、いわゆる1線式コードヒータが用いられる。具体的に、コードヒータ30は、巻芯31と、ヒータ線32と、中間層33と、温度検出線34と、外皮層35とを有する。巻芯31は、例えばポリエステル樹脂であって、外周にヒータ線32が配置される。ヒータ線32は、例えば銅合金等の導体であって、巻芯31の外周に螺旋状に巻き付くように配置される。中間層33は、例えばナイロン樹脂等の高分子層であって、外周に温度検出線34が配置される。温度検出線34は、例えばニッケル等の導体であって、中間層33の外周に螺旋状に巻き付くように配置される。温度検出線34は、温度が高くなるに応じて抵抗値が大きくなる特性を有している。外皮層35は、例えばポリ塩化ビニル等であって最外周に配置される。なお、コードヒータ30は、上述した構成および材質に限られず、例えば、ヒータ線32と温度検出線34とが反対になるように配置したり、その他の層を追加して配置したりして適宜、構成および材質を変更することができる。
【0014】
図3は、面状採暖具100の内部構成の一例を示す図である。
図3に示すように、面状採暖具100は上述したコードヒータ30に加えて、制御部40と各種素子および回路を有する。制御部40と各種素子および回路は上述したコントローラ20内に配置される。
【0015】
図3に示すコードヒータ30のうち抵抗H1がヒータ線32であり、ヒータ線32の長さ方向における一端が接点h1に接続され、他端が接点h2に接続される。また、抵抗S1が温度検出線34であり、温度検出線34の長手方向における一端が接点s1に接続され、他端が接点s2に接続される。なお、ヒータ線32と温度検出線34との間は中間層33によって絶縁される。
【0016】
また、接点v1および接点v2にはヒータ線32に通電させるためのAC100Vの電源が供給される。接点v1から接点v2までの間には、ヒータ線32(抵抗H1)と、スイッチSWと、温度ヒューズTF1とが直列に接続される。ヒータ線32に通電することで発熱して採暖部10を加熱する。スイッチSWはオン状態でヒータ線32に対して通電され、オフ状態でヒータ線32に対する通電が停止される。スイッチSWのオンとオフは、リレーRLあるいは後述する通電制御部50により切替えられる。温度ヒューズTF1は、温度ヒューズTF1に一体で構成される抵抗TF1-Rにより加熱され、所定の温度以上になることで溶断する。温度ヒューズTF1が溶断することで、スイッチSWがオンであってもヒータ線32に対する通電が遮断される。したがって、新たな温度ヒューズTF1に交換されるまでヒータ線32は発熱されず採暖部10を加熱することができない。
【0017】
また、接点u1から接点u2には温度制御に用いる例えばDC5Vの制御電源が供給される。ここで、制御電源は、AC100Vを図示しない電圧変換回路で変換することで供給される。接点u1から接点u2までの間には、抵抗R1と、可変抵抗VR1と、温度検出線34(抵抗S1)と、抵抗R2とが直列に接続される。温度検出線34は温度に応じて抵抗S1が変化することで、制御部40には温度に応じた直流の電圧が入力される。抵抗R1、R2は制御部40に入力される電圧が適切な値になるように分圧するための抵抗であり、可変抵抗VR1は面状採暖具の種類(機種)に応じて調整するための抵抗である。また、抵抗R3とコンデンサーC1から構成される平滑回路38は、制御部40に入力される電圧を平滑化するための回路である。
【0018】
また、温度検出線34の両端にはダイオードD1、D2のアノードがそれぞれ接続され、ダイオードD1、D2のカソードがまとめて抵抗TF1-Rの一端に接続される。また、抵抗TF1-Rの他端にはダイオードD3のアノードが接続され、ダイオードD3のカソードが温度ヒューズTF1とスイッチSWとの間に接続される。
【0019】
制御部40は、通電制御部50と温度制御部60とを有する。
通電制御部50は、コードヒータ30の劣化を検出した場合にコードヒータ30のヒータ線32に対して通電しないように制御する。なお、通電制御部50による処理については後述する。
【0020】
温度制御部60は、温度検出線34により検出される温度の情報に基づいてヒータ線32に対する通電と通電停止とを交互に切替えて、採暖部10の温度を制御する。温度制御部60は、AD変換器61と、AD変換器62と、テーブル63と、セレクタ64と、上限比較器65aと、下限比較器65bと、リレー切替部66とを有する。
【0021】
AD変換器61は、温度検出線34により検出された温度に応じた電圧をデジタル信号に変換して、上限比較器65aと下限比較器65bとにそれぞれ出力する。AD変換器62は、温度設定部21で設定された温度レベルに応じた電圧をデジタル信号に変換して、セレクタ64に出力する。テーブル63は、温度設定部21で設定された温度レベル(Lv1~Lv5)ごとの上限閾値と下限閾値との情報を保持している。ここで、例えば、温度レベルLv1の上限閾値をVrmax1、温度レベルLv1の下限閾値をVrmin1、温度レベルLv5の上限閾値をVrmax5、温度レベルLv5の下限閾値をVrmin5とすると、Vrmax1>Vrmin1、Vrmax5>Vrmin5、Vrmax5>Vrmax1、Vrmin5>Vrmin1の関係を有する。
セレクタ64は、温度設定部21で設定された温度レベルに応じた上限閾値と下限閾値を抽出して、上限比較器65aと下限比較器65bとにそれぞれ出力する。
【0022】
上限比較器65aは、温度検出線34に基づき出力される検知線入力端子(以下、検知線入力と記載)から入力された電圧値と上限閾値とを比較し、比較した結果をリレー切替部66に出力する。下限比較器65bは、検知線入力から入力された電圧値と下限閾値とを比較し、比較した結果をリレー切替部66に出力する。
リレー切替部66は、上限比較器65aおよび下限比較器65bからの比較結果に基づいてリレーRLのオンとオフを切替える。具体的には、リレー切替部66は、検知線入力の電圧値が下限閾値である場合あるいは下限閾値よりも小さい場合にはリレーRLをオンにする。また、リレー切替部66は、検知線入力の電圧値が下限閾値に至ってから下限閾値と上限閾値との間の範囲に移行した場合には、リレーRLをオンにする。一方、リレー切替部66は、検知線入力の電圧値が上限閾値である場合あるいは上限閾値よりも大きい場合にはリレーRLをオフにする。また、リレー切替部66は、検知線入力の電圧値が上限閾値に至ってから下限閾値と上限閾値との間の範囲に移行した場合には、リレーRLをオフにする。
リレーRLがオンになることでスイッチSWがオン状態となり、ヒータ線32に対して通電される。一方、リレーRLがオフになることでスイッチSWがオフ状態となり、ヒータ線32に対して通電が停止される。
【0023】
ここで、温度制御部60による上述した動作に応じた、温度検出線34の電圧の変化、ヒータ線32に対する通電状態の変化、コードヒータ30の温度の変化について図4を参照して説明する。なお、図4は、漏洩電流がない正常状態の場合の動作を表すものであり、この場合、温度検出線34の電圧と検知線入力の電圧とは一致する。
図4(a)は温度検出線34の電圧の変化を示す図であり、図4(b)はヒータ線32の通電状態の変化を示す図であり、図4(c)はコードヒータ30の温度の変化を示す図である。なお、ここでの温度検出線34の電圧は、平滑回路38で平滑化されて制御部40に出力された電圧値である。
【0024】
図4(a)に示す電圧値Va1はコードヒータ30の温度が上昇しているときの温度検出線34の電圧値である。ここでは、電圧値が下限閾値に至ってから下限閾値と上限閾値との間の範囲に移行していることから、リレーRLがオンであり、図4(b)に示すようにヒータ線32に対して通電されている状態(オン状態)である。したがって、図4(c)に示すように、コードヒータ30の温度も継続して上昇する。なお、図4(b)に示すオン状態は時間をHHsで示している。その後、電圧値が上限閾値に至ることでリレーRLがオフになり、ヒータ線32に対して通電が停止された状態(オフ状態)となる。また、ヒータ線32に対して通電が停止されることで、コードヒータ30の温度がToffから低下する。
【0025】
図4(a)に示す電圧値Vb1はヒータ線32に対する通電が停止されることでコードヒータ30の温度が低下しているときの温度検出線34の電圧値である。ここでは、電圧値が上限閾値に至ってから下限閾値と上限閾値との間の範囲に移行していることから、リレーRLがオフであり、図4(b)に示すようにヒータ線32に対して通電が停止されている状態(オフ状態)である。したがって、図4(c)に示すように、コードヒータ30の温度も継続して低下する。なお、図4(b)に示すオフ状態の時間をHLsで示している。その後、電圧値が下限閾値に至ることでリレーRLがオンになり、ヒータ線32に対して通電された状態(オン状態)となる。また、ヒータ線32に対して通電されることで、コードヒータ30の温度がTonから上昇する。
このように、図4(a)に示すように温度検出線34の電圧値は、下限閾値と上限閾値との間で上昇と低下を繰り返すことで、図4(b)に示すようにヒータ線32に対する通電と通電停止とが交互に切替わり、図4(c)に示すようにコードヒータ30の温度が上昇と低下を繰り返す。
なお、温度設定部21で設定された温度レベルが高くなると、上限比較器65aおよび下限比較器65bにおいて比較される下限閾値と上限閾値がそれぞれ大きくなる。したがって、温度設定部21で設定される温度レベルが高いほどコードヒータ30は高い温度で上昇と低下を繰り返す。
【0026】
図5は、面状採暖具100に電源を供給してからのコードヒータ30の温度および採暖部10の表面温度の変化の一例を示す図である。なお、図5に示すコードヒータ30の温度の上昇と低下の周期は、図4(c)に示すコードヒータ30の温度の上昇と低下の周期と同じであり、図5は横軸の時間を図4(c)の横軸の時間よりも長く設定したグラフである。図5に示す横軸の単位は時間[h(hour)]である。
【0027】
図5に示すように、コードヒータ30の温度が上昇と低下とを繰り返すことで、採暖部10の表面温度も略同一の周期で上昇と低下とを繰り返す。このとき、採暖部10の表面温度もコードヒータ30の温度と同様に、温度設定部21で設定された温度レベルに応じた温度で上昇と低下を繰り返す。なお、採暖部10の表面温度の上限と下限との間の温度範囲は、コードヒータ30の温度の上限と下限との間の温度範囲に比べて小さく、使用者が気にならない程度の温度変化である。
このように、温度制御部60は、温度検出線34により検出される温度の情報に基づいてヒータ線32に対する通電と通電停止を交互に切替えることで採暖部10の温度を制御する。
【0028】
次に、コードヒータ30の劣化を検出する方法について説明する。図6は、コードヒータ30が劣化したことにより漏洩電流が発生した状態を示す図である。具体的に、図6(a)は交流電源が正の半波である場合の漏洩電流を示す図であり、図6(b)は交流電源が負の半波である場合の漏洩電流を示す図である。
コードヒータ30の中間層33は、周辺温度が高くなるほど劣化が進み、劣化するほど絶縁抵抗が低下する。中間層33の絶縁抵抗が低下することで、ヒータ線32に通電されている交流電流が中間層33を通じて温度検出線34に漏洩する。
【0029】
図6(a)に示すように交流電源が正の半波である場合には、接点v1が正であり、接点v2が負となる。ヒータ線32から中間層33を介して温度検出線34に漏洩した漏洩電流は、接点s1および分岐点Aを経由して平滑回路38に流れると共に、接点s2を経由して制御GNDに流れる。なお、交流電源が正の半波の場合には、接点s1、s2よりもダイオードD1、D2側の電圧が高いことから、漏洩電流は接点s1、s2からダイオードD1、D2側には流れない。漏洩電流が接点s1および分岐点Aを経由して平滑回路38に流れることで、温度検出線34により検出される電圧に、漏洩電流に応じた電圧が加算されて制御部40に入力される。
【0030】
図6(b)に示すように交流電源が負の半波である場合には、接点v1が負であり、接点v2が正となる。ヒータ線32から中間層33を介して温度検出線34に漏洩した漏洩電流は、接点s1および接点s2を経由してダイオードD1、D2から抵抗TF1-R、ダイオードD3に流れる。なお、交流電源が負の半波の場合には、ダイオードD1、D2側よりも分岐点A側の電圧が高いことから、漏洩電流は分岐点A側には流れない。また、中間層33の劣化が更に進むと、ヒータ線32と温度検出線34とが短絡されることで漏洩電流が更に抵抗TF1-Rに流れ、抵抗TF1-Rが発熱して高温になることで温度ヒューズTF1が溶断する。温度ヒューズTF1が溶断することで、スイッチSWがオンであってもヒータ線32に対する通電が遮断され、最終的な保護回路として機能する。
【0031】
ここで、図6(a)および図6(b)に示す分岐点Aの電圧に注目すると、分岐点Aでは漏洩電流に応じた電圧が交流電源の正の半波のときのみに発生する。一方、図6(a)および図6(b)に示す回路の制御部40に入力される電圧に注目すると、交流電源の正の半波のときのみに発生した、漏洩電流に応じた電圧が平滑回路38によって平滑化される。
【0032】
図7は、漏洩電流に応じて検出される電圧の変化を示す図である。ここでは、交流電源が60Hzとして説明する。図7に示すように、漏洩電流が低い場合には分岐点Aでは1/60秒ごと、すなわち交流の半波ごとに漏洩電流に応じた電圧dvが発生する。この漏洩電流に応じた電圧dvは平滑回路38によって平滑化されることで電圧advとなる(図7に示す「平滑値」参照)。結果として、温度検出線34により検出される電圧に、漏洩電流に応じた電圧advが加算された電圧が制御部40に入力される。
また、漏洩電流が増えて高くなると分岐点Aでは1/60秒ごとに漏洩電流に応じて、電圧dvよりも高い電圧dv+が発生する(図7に示す破線を参照)。この漏洩電流に応じた電圧dv+は平滑回路38によって平滑化されることで電圧advよりも高い電圧adv+となる。結果として、温度検出線34により検出される電圧に、漏洩電流に応じた電圧adv+が加算された電圧が制御部40に入力される。
【0033】
このように、漏洩電流に応じて加算された電圧が制御部40に入力されると、電流が漏洩しておらず温度検出線34により検出される電圧のみが制御部40に入力される場合と比べて、温度検出線34の電圧の変化等が異なる挙動となる。具体的に、漏洩電流に応じて加算された電圧が制御部40に入力された場合の温度制御部60の動作に応じた、温度検出線34の電圧の変化、ヒータ線32に対する通電状態の変化、コードヒータ30の温度の変化について図8を参照して説明する。
【0034】
図8(a)は温度検出線34の電圧の変化を示す図であり、漏洩電流がある場合の温度検出線34の電圧の変化を実線で示し、漏洩電流がない場合の温度検出線34の電圧の変化を破線で示している。なお、漏洩電流がない場合の温度検出線34の電圧の変化は、図4(a)の実線の変化と同一である。図8(b)はヒータ線32の通電状態の変化を示す図であり、漏洩電流がある場合の通電状態の変化を実線で示し、漏洩電流がない場合の通電状態の変化を破線で示している。なお、漏洩電流がない場合の通電状態の変化は、図4(b)の実線の変化と同一である。図8(c)はコードヒータ30の温度の変化を示す図であり、漏洩電流がある場合のコードヒータ30の温度の変化を実線で示し、漏洩電流がない場合のコードヒータ30の温度の変化を破線で示している。なお、漏洩電流がない場合のコードヒータ30の温度の変化は、図4(c)の実線の変化と同一である。
【0035】
図8(a)に示す電圧値Va2はコードヒータ30の温度が上昇しているときの温度検出線34の電圧値である。電圧値Va2は漏洩電流がない場合の電圧値Va1に比べて電圧Δv(オフセットΔv)が加算されている。電圧Δvは、図7に示す電圧advや電圧adv+に相当する。ここでは、図8(b)に示すようにヒータ線32に対して通電されている状態(オン状態)であり、図8(c)に示すようにコードヒータ30の温度も継続して上昇する。この後、電圧値は、電圧Δvが加算された分だけ早く上限閾値に至ることで、リレーRLがオフになり、ヒータ線32に対して通電が停止された状態(オフ状態)となる。したがって、図8(b)に示すようにオン状態の時間HHは、電圧値が早く上限閾値に至った分だけ早くヒータ線32に対して通電が停止されることから、漏洩電流がない場合のオン状態の時間HHsよりも短くなる。また、図8(c)に示すように、コードヒータ30の温度は、ヒータ線32に対して早く通電が停止されることから、漏洩電流がない場合に比べてコードヒータ30の温度が温度Toffに至る前に早く低下し始める。また、図8(a)に示すように、電圧値が上限閾値に至るとヒータ線32に対して通電が停止されることで漏洩する電流自体がなくなるために、電圧Δv分の加算が直ちに消滅して、漏洩電流がない場合の温度検出線34の電圧値(図8(a)に示す破線上の電圧値)に戻り、徐々に低下する。
【0036】
図8(a)に示す電圧値Vb2はヒータ線32に対する通電が停止されることでコードヒータ30の温度が低下しているときの温度検出線34の電圧値である。ここでは、リレーRLがオフであり、図8(b)に示すヒータ線32に対して通電が停止されている状態(オフ状態)である。したがって、図8(c)に示すように、コードヒータ30の温度も継続して低下する。その後、電圧値は、電圧Δv分の加算が消滅した分だけ早く下限閾値に至ることで、リレーRLがオンとなり、ヒータ線32に対して通電された状態(オン状態)となる。したがって、図8(b)に示すようにオフ状態の時間HLは、電圧値が早く下限閾値に至った分だけ早くヒータ線32に対して通電されることから、漏洩電流がない場合のオフ状態の時間HLsよりも短くなる。また、図8(c)に示すように、コードヒータ30の温度は、ヒータ線32に対して早く通電されることから、漏洩電流がない場合よりも早く上昇し始める。
【0037】
以降も同様に、温度検出線34の電圧値が電圧Δv分だけ加算されたり、電圧Δv分の加算が直ちに消滅したりする影響によって、ヒータ線32に対して通電されるオン状態の時間HHと、通電が停止されるオフ状態の時間HLとが、それぞれ漏洩電流がない場合よりも短くなることから、ヒータ線32に対する通電と通電停止の周期が短くなる。また、コードヒータ30の温度も上昇と低下の周期が短くなると共に、漏洩電流がない場合の温度Toffに至らないことからコードヒータ30の温度(平均温度)が低下する。
なお、漏洩電流が増えるほど電圧Δvが大きくなるために、漏洩電流が増えるにしたがってヒータ線32に対する通電と通電停止の周期が短くなる。同様に、漏洩電流が増えるにしたがってコードヒータ30の温度も上昇と低下の周期が短くなり、コードヒータ30の温度(平均温度)が低下する。
【0038】
本実施形態の通電制御部50は、漏洩電流が発生することで生じる上述した各種変化に基づいて、温度ヒューズTF1が溶断される前にコードヒータ30の劣化を検出し、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。以下、具体的な通電制御部50による処理についてフローチャートを参照して説明する。
(第1実施例)
第1実施例では、通電制御部50がヒータ線32に対する通電および通電停止に関する情報、具体的にはヒータ線32に対する通電および通電停止の周期に基づいて、ヒータ線32に対して通電停止を継続する。
図9は、第1実施例の通電制御部50による処理の一例を示すフローチャートである。なお、図9を含む以降のフローチャートでは、通電制御部50内のメモリに記憶されたプログラムを通電制御部50が実行することにより実現される。
【0039】
S10では、通電制御部50は、ヒータ線32に対して通電されているオン状態の時間HHを取得する(図8(b)参照)。通電制御部50は、リレー切替部66がリレーRLに対してオンの信号を出力している時間を測定することで、ヒータ線32に対して通電されているオン状態の時間HHを取得する。ただし、通電制御部50は、リレーRLがオンになっている時間、あるいは、スイッチSWがオンになっている時間を測定することで、オン状態の時間HHを取得してもよい。
【0040】
S11では、通電制御部50は、ヒータ線32に対して通電が停止されているオフ状態の時間HLを取得する(図8(b)参照)。通電制御部50は、リレー切替部66がリレーRLに対してオフの信号を出力している時間を測定することで、ヒータ線32に対して通電が停止されているオフ状態の時間HLを取得する。ただし、通電制御部50は、リレーRLがオフになっている時間、あるいは、スイッチSWがオフになっている時間を測定することで、オフ状態の時間HLを取得してもよい。
【0041】
S12では、通電制御部50は、通電および通電停止の周期を取得する。通電制御部50は、オン状態の時間HHとオフ状態の時間HLとを加算することで通電および通電停止の周期を取得する。上述したように漏洩電流が増えるにしたがってヒータ線32に対する通電および通電停止の周期が短くなる。
【0042】
S13では、通電制御部50は取得した通電および通電停止の周期と、漏洩電流がないときの通電および通電停止の周期との差分を算出する。なお、漏洩電流がないときの通電および通電停止の周期は、図4(b)に示すオン状態の時間HHsと、オフ状態の時間HLsとを加算した時間に相当し、予め通電制御部50内のメモリに記憶されている。また、通電制御部50はS10~S13を複数回、繰り返して差分の平均値を算出してもよい。
【0043】
S14では、通電制御部50は周期の差分が所定の値(閾値Ta)以上であるか否かを判定し、所定の値以上である場合にはS15に進み、所定の値以上ではない場合にはS10に戻る。所定の値は、予め通電制御部50内のメモリに記憶されており、温度設定部21で設定される温度レベルに関わらず一定である。また、所定の値は、温度ヒューズTF1が溶断されるとき(直前)の通電および通電停止の周期と、漏洩電流がないときの通電および通電停止の周期との差分よりも小さい値が設定される。なお、周期の差分はS10~S13を複数回、繰り返すことで算出した平均値であってもよい。
【0044】
S15では、通電制御部50はコードヒータ30が劣化していると判定して、温度検出線34により検出される温度の情報に関わらず、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。具体的には、通電制御部50は、図示しない安全回路を介してリレーRLをオフしたり、スイッチSWをオフにしたりすることでヒータ線32に対する通電停止を継続する。通電制御部50による通電停止の処理は、温度制御部60による温度制御の処理よりも優先される。また、通電制御部50は、報知部22の点灯する時間および消灯する時間を変化させることでコードヒータ30の劣化のために通電停止を継続していることを使用者に報知する。
【0045】
このように本実施例によれば、通電および通電停止の周期に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続することで温度ヒューズTF1が溶断される前にコードヒータ30の劣化を早期に検出することができる。なお、通電および通電停止の周期は、交流電源の波形の周期と比べて時間が長いために、高精度に周期を測定する必要がないことから低コストでコードヒータ30の劣化を検出することができる。
【0046】
なお、第1実施例では、通電および通電停止の周期を用いる場合について説明したが、ヒータ線32に対して通電されているオン状態の時間HHと、漏洩電流がない場合のオン状態の時間HHsとの差分が所定の値(閾値Tb)以上である場合に、ヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。また、ヒータ線32に対して通電されていないオフ状態の時間HLと、漏洩電流がない場合のオフ状態の時間HLsとの差分が所定の値(閾値Tc)以上である場合に、ヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。
また、ヒータ線32に対して通電されているオン状態の時間HHと所定の時間(閾値Td)とを比較して所定の時間以下の場合にヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。また、ヒータ線32に対して通電されていないオフ状態の時間HLと所定の時間(閾値Te)とを比較して所定の時間以下の場合にヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。また、測定した通電および通電停止の周期と所定の周期(閾値Tf)とを比較して所定の周期以下の場合にヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。
【0047】
(第2実施例)
第2実施例では、通電制御部50がヒータ線32に対する通電および通電停止に関する情報、具体的にはヒータ線32に対する通電および通電停止された回数に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続する。図10は、第2実施例の通電制御部50による処理の一例を示すフローチャートである。
【0048】
S20では、通電制御部50は、ヒータ線32に対して通電および通電停止された回数をカウントして、第1のカウンタに加算する。通電制御部50は、通電されたときに第1のカウンタに「1」を加算し、次に通電停止されたときに第1のカウンタに「1」を加算する。通電制御部50は、リレーRLがオンおよびオフになった回数をカウントしたり、スイッチSWがオンおよびオフになった回数をカウントしたりすることで、通電および通電停止された回数をカウントする。上述したように漏洩電流が増えるにしたがってヒータ線32に対する通電および通電停止の周期が短くなるために、漏洩電流が増えるにしたがって一定時間の間に通電および通電停止される回数が大きくなる。
【0049】
S21では、通電制御部50は、一定時間の間にカウントした回数(第1のカウンタ)が所定の回数(閾値N、例えば10回)以上になったか否かを判定する。所定の回数以上の場合には第2のカウンタに「1」を加算してS22に進む。一方、所定の回数以上ではない場合にはS20に戻り、通電および通電停止された回数のカウントを継続する。閾値Nは、予め通電制御部50内のメモリに記憶されており、温度設定部21で設定される温度レベルに関わらず一定である。また、閾値Nは、温度ヒューズが溶断されるときのヒータ線32に対して通電および通電停止される回数よりも小さい回数が設定される。
【0050】
S22では、通電制御部50は、一定時間の間にカウントした回数(第1のカウンタ)が所定の回数以上である場合が所定の回数(閾値M、例えば3回)連続したか否かを判定する。すなわち、第2のカウンタが連続して加算され、所定の回数(閾値M、例えば3回)に至ったか否かを判定する。所定の回数、連続した場合にはS23に進む。一方、所定の回数、連続していない場合にはS20に戻り、カウントした回数(第1のカウンタ、第2のカウンタ)をリセットした上で通電および通電停止された回数のカウントを継続する。
【0051】
S23では、通電制御部50はコードヒータ30が劣化していると判定して、温度検出線34により検出される温度の情報に関わらず、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。この処理は、上述したS15と同様の処理である。
このように本実施例によれば、通電および通電停止の回数に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続することで温度ヒューズTF1が溶断される前にコードヒータ30の劣化を早期に検出することができる。
【0052】
なお、第2実施例では、通電および通電停止された回数をカウントする場合について説明したが、通電された回数のみをカウントして一定時間の間にカウントした回数が所定の回数(閾値N/2、例えば5回)以上になったか否かを判定してもよく、通電停止された回数のみをカウントして一定時間の間にカウントした回数が所定の回数(閾値N/2、例えば5回)以上になったか否かを判定してもよい。また、一定時間が経過するまでにカウントした回数が所定の回数に至った場合には、一定時間が経過するのを待機することなくカウントした回数をリセットして、次の一定時間の計時を開始した上で通電および通電停止された回数をカウントしてもよい。このように、一定時間が経過するのを待機することなく次の一定時間の計時を開始することで、コードヒータ30の劣化をより早期に検出することができる。
【0053】
(第3実施例)
第3実施例では、通電制御部50がコードヒータ30の温度に関する情報、具体的にはコードヒータ30の平均温度に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続する。
図11は、第3実施例の通電制御部50による処理の一例を示すフローチャートである。第3実施例では面状採暖具100がコードヒータ30の温度を測定する温度センタを有する。温度センサは、コードヒータ30の複数点で測定できることが好ましく、例えば、コードヒータ30とは別体でコードヒータ30に貼り付けられるフィルム状の多点センサを用いることができる。温度センサにより測定された温度の情報は通電制御部50に入力される。
【0054】
S30では、通電制御部50は、コードヒータ30の複数点における温度の情報を温度センサから一定時間に亘って常時、取得する。通電制御部50は取得したコードヒータ30の温度の情報を記憶する。
S31では、通電制御部50は、取得した複数点の温度の情報からコードヒータ30の平均温度を算出する。上述したように漏洩電流が増えるにしたがってコードヒータ30の平均温度が低下する。
【0055】
S32では、通電制御部50は算出したコードヒータ30の平均温度と、漏洩電流がないときのコードヒータ30の平均温度との差分を算出する。なお、漏洩電流がないときのコードヒータ30の平均温度は、温度設定部21で設定される温度レベルに応じた温度であり、予め通電制御部50内のメモリに記憶されている。また、通電制御部50はS30~S32を複数回、繰り返して差分の平均値を算出してもよい。
【0056】
S33では、通電制御部50は温度の差分が所定の値(閾値Tg)以上であるか否かを判定し、所定の値以上である場合にはS33に進み、所定の値以上ではない場合にはS30に戻る。所定の値は、予め通電制御部50内のメモリに記憶されており、温度設定部21で設定される温度レベルに関わらず一定である。また、所定の値は、温度ヒューズTF1が溶断されるときのコードヒータ30の平均温度と、漏洩電流がないときのコードヒータ30の平均温度との差分よりも小さい値が設定される。なお、温度の差分はS30~S32を複数回、繰り返すことで算出した平均値であってもよい。
【0057】
S34では、通電制御部50はコードヒータ30が劣化していると判定して、温度検出線34により検出される温度の情報に関わらず、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。この処理は、上述したS15と同様の処理である。
このように本実施例によれば、コードヒータ30の温度に基づいてヒータ線32に対する通電停止を継続することで温度ヒューズTF1が溶断される前にコードヒータ30の劣化を早期に検出することができる。
【0058】
なお、第3実施例では、コードヒータ30の複数点における温度の情報を一定時間に亘って常時、取得して平均温度を算出する場合について説明したが、コードヒータ30の複数点において温度が上昇から低下に切替わるときの温度(上限温度)、低下から上昇に切替わるときの温度(下限温度)を記憶して、複数点における上限温度と下限温度とから平均温度を算出してもよい。
また、一定時間に亘って複数点における上限温度のみから平均を算出して上限平均温度を算出して、漏洩電流がないときのコードヒータ30の上限平均温度との差分を算出し、所定値(閾値Th)以上であるか否かを判定してもよい。
【0059】
また、コードヒータ30の複数点における平均温度と所定の温度(閾値Ti)とを比較して所定の温度以上の場合にヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。また、コードヒータ30の複数点における上限平均温度と所定の温度(閾値Tj)とを比較して所定の温度以上の場合にヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。
【0060】
また、第1実施例の通電と通電停止の周期を、コードヒータ30の温度が上昇から低下に切替わるときの周期に置換したり、第1実施例のヒータ線32に対して通電されているオン状態の時間HHをコードヒータ30の温度が上昇している時間に置換したり、第1実施例のヒータ線32に対して通電されていないオフ状態の時間HLをコードヒータ30の温度が低下している時間に置換したりして、コードヒータ30の劣化を検出してもよい。
【0061】
(第4実施例)
第4実施例では、通電制御部50が、温度検出線34により検出される電圧に、漏洩電流に応じて加算される電圧の情報に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続する。
図12は、第4実施例の面状採暖具100の内部構成の一例を示す図である。
ここでは、面状採暖具100に通電制御部50のブロック図が追加されている。
通電制御部50は、半波整流&ゼロクロス検出部121と、サンプリングパルス生成部122と、電圧検出部123と、減算器124と、比較器125と、平滑回路38とを有する。
【0062】
半波整流&ゼロクロス検出部121は、漏洩電流がある場合であっても漏洩電流に応じた電圧が生じない交流電源の負の半波のタイミングを検出する。サンプリングパルス生成部122は、半波整流&ゼロクロス検出部121により検出された負の半波のタイミングに基づいてサンプリングパルスを生成する。
【0063】
図13は、半波整流&ゼロクロス検出部121およびサンプリングパルス生成部122による処理を説明するための図である。
図13(a)は、半波整流&ゼロクロス検出部121に入力される交流電源の波形を示す図である。半波整流&ゼロクロス検出部121は、入力された交流電源のうち波形に基づいて負の半波を整流する。
図13(b)は、負の半波を整流した後の波形を示す図である。半波整流&ゼロクロス検出部121は、整流した波形に基づいて電圧値が0[v]と交差(ゼロクロス)するタイミングを検出する。
図13(c)は、電圧値が0[v]と交差(ゼロクロス)するタイミングを検出した後の波形を示す図である。サンプリングパルス生成部122は、電圧が発生するタイミングから所定の時間ごとにサンプリングパルスを生成する。
図13(d)は、サンプリングパルスを生成するタイミングを示す図である。サンプリングパルス生成部122は、生成したサンプリングパルスを電圧検出部123に出力する。
【0064】
電圧検出部123は、分岐点Aにおける平滑化される前の温度検出線34の電圧値が入力される。電圧検出部123は、サンプリングパルス生成部122から出力されたサンプリングパルスのタイミングで温度検出線34の電圧値を測定する。したがって、電圧検出部123は、漏洩電流がある場合でも漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値Vsoを測定することができる。
【0065】
平滑回路38は、分岐点Aにおける温度検出線34の電圧値を平滑化する。したがって、平滑回路38は、漏洩電流がある場合には、漏洩電流に応じて加算された電圧値(Vso+ΔV)を出力する。なお、平滑回路38は、漏洩電流がない場合には、温度検出線34の電圧値Vsoを出力する。
【0066】
減算器124は、平滑回路38により出力された電圧値から、電圧検出部123により測定された電圧値を減算して、減算した値を比較器125に出力する。例えば漏洩電流がある場合には、減算器124は、平滑回路38により出力された漏洩電流に応じて加算された電圧値(Vso+ΔV)から、電圧検出部123により測定された電圧値Vsoを減算して、電圧値ΔVを比較器125に出力する。
比較器125は、減算器124から出力された電圧値と所定の閾値とを比較して、電圧値が所定の閾値以上である場合には、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。
【0067】
図14は、第4実施例の通電制御部50による処理の一例を示すフローチャートである。
S40では、通電制御部50は、ヒータ線32に対して通電されている時間において、平滑回路38により平滑化された後の温度検出線34の電圧値を取得する。具体的に、通電制御部50は、制御部40に入力される電圧値を測定することで平滑化された後の温度検出線34の電圧値を取得することができる。上述したように漏洩電流が増えるにしたがって温度検出線34の電圧値が大きくなる。
【0068】
S41では、通電制御部50は取得した温度検出線34の電圧値と、漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値との差分を算出する。ここで、漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値は、上述したように電圧検出部123が、サンプリングパルス生成部122により生成されたサンプリングパルスのタイミングで、温度検出線34の電圧値を測定することにより取得することができる。なお、漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値は、予め通電制御部50内のメモリに温度設定部21で設定された温度レベルに応じた値で記憶されていてもよい。また、通電制御部50はS40~S41を複数回、繰り返して差分の平均値を算出してもよい。
【0069】
S42では、通電制御部50は電圧値の差分が所定の値(閾値Vc)以上であるか否かを判定し、所定の値以上である場合にはS43に進み、所定の値以上ではない場合にはS40に戻る。所定の値は、予め通電制御部50内のメモリに記憶されており、温度設定部21で設定される温度レベルに関わらず一定である。また、所定の値は、温度ヒューズが溶断されるときの電圧値と、漏洩電流がないときの電圧値との差分よりも小さい値が設定される。なお、電圧値の差分はS40~S41を複数回、繰り返すことで算出した平均値であってもよい。
【0070】
S43では、通電制御部50はコードヒータ30が劣化していると判定して、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。この処理は、上述したS15と同様の処理である。
このように本実施例によれば、平滑回路38により平滑化された後の温度検出線34の温度の情報に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続することで温度ヒューズTF1が溶断される前にコードヒータ30の劣化を早期に検出することができる。
【0071】
なお、第4実施例では、平滑化された温度検出線34の電圧値と、漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値との差分を算出する場合について説明したが、ヒータ線32に対して通電されている時間において平滑化された温度検出線34の電圧値と所定の電圧値(閾値Vd)とを比較して所定の電圧値以上の場合にヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。
【0072】
(第5実施例)
第5実施例では、通電制御部50が、温度検出線34により検出される電圧に、漏洩電流に応じて加算される電圧の情報に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続する。
図15は、第5実施例の面状採暖具100の内部構成の一例を示す図である。
ここでは、面状採暖具100に通電制御部50のブロック図が追加されている。なお、図12と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略する。通電制御部50は、分岐点Aと平滑回路38との間に位置する。
【0073】
通電制御部50は、遅延部126を有する。遅延部126には、分岐点Aにおける平滑化される前の温度検出線34の電圧値が入力される。遅延部126は、入力された電圧値のうち交流電源の半波ごとに出力されるピーク電圧値を測定して、測定したピーク電圧値を減算器124に遅延させて出力する。このように遅延させるのは、電圧検出部123により温度検出線34の電圧値を測定したタイミングと合わせるためである。また、遅延部126は、ピーク電圧値を含め、測定した電圧値を逐次、平滑回路38に出力する。
【0074】
減算器124は、遅延部126により出力された電圧値から、電圧検出部123により測定された電圧値を減算して、減算した値を比較器125に出力する。比較器125は、減算器124から出力された電圧値と所定の閾値とを比較して、電圧値が所定の閾値よりも大きい場合には、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。
【0075】
図16は、第5実施例の通電制御部50による処理の一例を示すフローチャートである。
S50では、通電制御部50は、ヒータ線32に対して通電されている時間において、平滑回路38により平滑化される前の温度検出線34のピーク電圧値を取得する。具体的に、通電制御部50は、図3に示す分岐点Aにおける電圧値を測定することで平滑化される前の温度検出線34の電圧値を取得することができる。上述したように漏洩電流があると交流の半波ごとに漏洩した電流に応じて電圧が発生する。
【0076】
S51では、通電制御部50は取得した温度検出線34のピーク電圧値と、漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値との差分を算出する。ここで、漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値は、電圧検出部123が、サンプリングパルス生成部122により生成されたサンプリングパルスのタイミングで、温度検出線34の電圧値を測定することにより取得することができる。なお、漏洩電流がないときの温度検出線34の電圧値は、予め通電制御部50内のメモリに温度設定部21で設定された温度レベルに応じた値で記憶されていてもよい。
【0077】
S52では、通電制御部50は電圧値の差分が所定の値(閾値Ve)以上であるか否かを判定し、所定の値以上である場合にはS53に進み、所定の値以上ではない場合にはS50に戻る。所定の値は、予め通電制御部50内のメモリに記憶されており、温度設定部21で設定される温度レベルに関わらず一定である。また、所定の値は、温度ヒューズが溶断されるときの電圧値と、漏洩電流がないときの電圧値との差分よりも小さい値が設定される。
【0078】
S53では、通電制御部50はコードヒータ30が劣化していると判定して、ヒータ線32に対して通電停止し、通電停止を継続する。この処理は、上述したS15と同様の処理である。
このように本実施例によれば、平滑回路38により平滑化される前の温度検出線34の温度の情報に基づいて、ヒータ線32に対する通電停止を継続することで温度ヒューズTF1が溶断される前にコードヒータ30の劣化を早期に検出することができる。
【0079】
なお、第5実施例では、平滑化される前の温度検出線34のピーク電圧値と、漏洩する電流がないときの温度検出線34の電圧値との差分を算出する場合について説明したが、平滑化される前の温度検出線34のピーク電圧値と所定の電圧値(閾値Vf)とを比較して所定の電圧値以上の場合にヒータ線32に対して通電停止を継続してもよい。
【0080】
以上、本発明を上述した実施形態および各実施例を用いて説明したが、本発明は上述した実施形態および各実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、各実施例および変形例を適宜、組み合わせてもよい。
上述した実施形態では、面状採暖具が電気カーペットである場合について説明したが、この場合に限られず、電気マット、電気毛布等に適用してもよい。また、交流100Vの製品に限られず、交流200Vの製品にも適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
100:面状採暖具 10:採暖部 20:コントローラ 21:温度設定部 22:報知部 30:コードヒータ 32:ヒータ線 33:中間層 34:温度検出線 38:平滑回路 40:制御部 50:通電制御部 60:温度制御部
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