(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039902
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物及び熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20230314BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230314BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230314BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230314BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C09K5/14 E
C08L101/00
C08K3/08
C08L63/00 C
C08L71/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090891
(22)【出願日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2021146584
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】趙 奕靖
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】岩田 侑記
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
(72)【発明者】
【氏名】川上 亮子
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002AC032
4J002AC062
4J002BG032
4J002CD001
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CG002
4J002CH031
4J002DA076
4J002DC007
4J002EF068
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD148
4J002FD206
4J002FD207
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導性組成物及び熱伝導性シートの提供。
【解決手段】硬化成分と、該硬化成分を硬化させる硬化剤と、金属フィラーとを含有し、前記金属フィラーが熱伝導性粒子及び低融点金属粒子を含み、前記熱伝導性粒子の体積平均粒径が前記低融点金属粒子の体積平均粒径よりも大きく、前記低融点金属粒子の融点が熱伝導性組成物の熱硬化処理温度よりも低い熱伝導性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化成分と、該硬化成分を硬化させる硬化剤と、金属フィラーとを含有し、
前記金属フィラーが熱伝導性粒子及び低融点金属粒子を含み、前記熱伝導性粒子の体積平均粒径が前記低融点金属粒子の体積平均粒径よりも大きく、
前記低融点金属粒子の融点が熱伝導性組成物の熱硬化処理温度よりも低いことを特徴とする熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性粒子Aと前記低融点金属粒子Bとの体積平均粒径比(A/B)が2以上である、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記金属フィラーの体積充填率が50体積%以上である、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性粒子Aと前記低融点金属粒子Bとの体積比(A/B)が1以上である、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマーを含有する、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
前記熱伝導性粒子が、銅粒子、銀被覆粒子、及び銀粒子の少なくともいずれかである、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
前記低融点金属粒子がSnと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種とを含む、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
前記低融点金属粒子が、前記熱伝導性組成物の熱硬化処理条件下で前記熱伝導性粒子と反応して、前記低融点金属粒子より高い融点を示す合金となる、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
前記硬化剤が前記金属フィラーに対してフラックス活性を有する、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項10】
前記硬化成分Cと前記硬化剤Dとの当量比(C/D)が、0.5以上3以下である、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項11】
前記硬化成分がオキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかである、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項12】
前記硬化成分がオキセタン化合物であり、
前記硬化剤がグルタル酸である、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項13】
請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物をシート化したことを特徴とする熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物及び熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放熱基板に実装されたLED(発光ダイオード)チップ又はIC(集積回路)チップなどが発する熱を、放熱基板を介してヒートシンクに放熱するために、放熱基板とヒートシンクとを熱伝導性組成物により接着することが行われている。
【0003】
このような熱伝導性組成物が高熱伝導性及び低熱抵抗を満たすためには、金属フィラーの高充填化が必要であり、液状の組成物の場合には流動性が低下してしまい、シート状とした場合、シートが硬くなり追従性が損なわれ、界面の抵抗が高くなってしまうという問題がある。
【0004】
前記問題点を解決するため、例えば、硬化成分及び硬化剤を含有する熱硬化性接着剤と、その熱硬化性接着剤中に分散した金属フィラーとを有する熱伝導性接着剤において、金属フィラーは、銀粉及びはんだ粉を有し、該はんだ粉は、熱伝導性接着剤の熱硬化処理温度よりも低い溶融温度を示し、かつ該熱硬化性接着剤の熱硬化処理条件下で銀粉と反応して、当該はんだ粉の溶融温度より高い融点を示す高融点はんだ合金を生成するものであり、前記硬化剤は、金属フィラーに対してフラックス活性を有する硬化剤であり、前記硬化成分が、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂であり、前記硬化剤がトリカルボン酸のモノ酸無水物である熱伝導性接着剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、平均粒径の大きいはんだ粉を用いて平均粒径の小さい銀粒子間を接合させて高融点のはんだ合金のネットワークを形成すると、体積比で熱伝導性が低いはんだ粉の含有量が銀粒子の含有量がより多くなってしまい、高熱伝導性と低熱抵抗を満たすことができない。また、低融点のはんだ粉を用いた場合には、溶融したはんだ粉が濡れ難い界面材質に対しては、表面に樹脂層が形成され、熱伝導率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導性組成物及び熱伝導性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 硬化成分と、該硬化成分を硬化させる硬化剤と、金属フィラーとを含有し、
前記金属フィラーが熱伝導性粒子及び低融点金属粒子を含み、前記熱伝導性粒子の体積平均粒径が前記低融点金属粒子の体積平均粒径よりも大きく、
前記低融点金属粒子の融点が熱伝導性組成物の熱硬化処理温度よりも低いことを特徴とする熱伝導性組成物である。
<2> 前記熱伝導性粒子Aと前記低融点金属粒子Bとの体積平均粒径比(A/B)が2以上である、前記<1>に記載の熱伝導性組成物である。
<3> 前記金属フィラーの体積充填率が50体積%以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<4> 前記熱伝導性粒子Aと前記低融点金属粒子Bとの体積比(A/B)が1以上である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<5> 分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマーを含有する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<6> 前記熱伝導性粒子が、銅粒子、銀被覆粒子、及び銀粒子の少なくともいずれかである、前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<7> 前記低融点金属粒子がSnと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種とを含む、前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<8> 前記低融点金属粒子が、前記熱伝導性組成物の熱硬化処理条件下で前記熱伝導性粒子と反応して、前記低融点金属粒子より高い融点を示す合金となる、前記<1>から<7>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<9> 前記硬化剤が前記金属フィラーに対してフラックス活性を有する、前記<1>から<8>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<10> 前記硬化成分Cと前記硬化剤Dとの当量比(C/D)が、0.5以上3以下である、前記<1>から<9>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<11> 前記硬化成分がオキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかである、前記<1>から<10>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<12> 前記硬化成分がオキセタン化合物であり、
前記硬化剤がグルタル酸である、前記<1>から<11>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<13> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の熱伝導性組成物をシート化したことを特徴とする熱伝導性シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導性組成物及び熱伝導性シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明で用いられる放熱構造体の一例を示す概略断面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施例1の熱伝導性組成物の硬化物(界面Cu)を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を半導体検査顕微鏡で撮影した断面写真である。
【
図2B】
図2Bは、実施例1の熱伝導性組成物の硬化物(界面Al)を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を半導体検査顕微鏡で撮影した断面写真である。
【
図3A】
図3Aは、比較例1の熱伝導性組成物の硬化物(界面Cu)を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を半導体検査顕微鏡で撮影した断面写真である。
【
図3B】
図3Bは、比較例1の熱伝導性組成物の硬化物(界面Al)を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を半導体検査顕微鏡で撮影した断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(熱伝導性組成物)
本発明の熱伝導性組成物は、硬化成分と、硬化剤と、金属フィラーとを含有し、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマー(以下、「特定のポリマー」と称する)を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0012】
<硬化成分>
硬化成分としては、オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0013】
-オキシラン環化合物-
前記オキシラン環化合物は、オキシラン環を有する化合物であり、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール-キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール-キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール-ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
-オキセタン化合物-
前記オキセタン化合物は、オキセタニル基を有する化合物であり、脂肪族化合物、脂環式化合物、又は芳香族化合物であってもよい。
前記オキセタン化合物は、オキセタニル基を1つのみ有する1官能のオキセタン化合物であってもよいし、オキセタニル基を2つ以上有する多官能のオキセタン化合物であってもよい。
【0015】
前記オキセタン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-(フェノキシ)メチルオキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、4,4′-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)、イソフタル酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル(OXIPA)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記オキセタン化合物としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、東亞合成株式会社から販売されている「アロンオキセタン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社から販売されている「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。
【0017】
上記オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の中でも、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、4,4′-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)、イソフタル酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル(OXIPA)が好ましい。
【0018】
前記硬化成分の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導性組成物の全量に対して、0.5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0019】
<硬化剤>
前記硬化剤としては、上記硬化成分に対応した硬化剤であって、例えば、酸無水物系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、イミダゾール等の触媒型硬化剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸無水物系硬化剤が好ましい。前記酸無水物系硬化剤は硬化成分がエポキシ樹脂である場合、熱硬化の際にガスの発生がなく、エポキシ樹脂と混合した際に長いポットライフを実現でき、また、得られる硬化物の電気的特性、化学的特性、及び機械的特性間の良好なバランスを実現できる点から好ましい。
前記酸無水物系硬化剤としては、例えば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、トリカルボン酸のモノ酸無水物などが挙げられる。前記トリカルボン酸のモノ酸無水物としては、例えば、シクロへキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-酸無水物などが挙げられる。
【0020】
前記硬化剤は、フラックス活性を有するものが、熱伝導性粒子に対する溶融した低融点金属粒子の濡れ性を向上させる点から好ましい。前記硬化剤にフラックス活性を発現させる方法としては、例えば、前記硬化剤にカルボキシ基、スルホニル基、リン酸基等のプロトン酸基を公知の方法により導入する方法などが挙げられる。これらの中でも、硬化成分としてのエポキシ樹脂又はオキセタン化合物との反応性の点から、カルボキシ基を導入することが好ましく、例えば、グルタル酸、コハク酸等のカルボキシル基含有の有機酸などが挙げられる。また、前記硬化剤はグルタル酸無水物又はコハク酸無水物から変性された化合物又はグルタル酸銀等の有機酸の金属塩などであっても構わない。
【0021】
前記硬化剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導性組成物の全量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明においては、前記硬化成分がオキセタン化合物であり、前記硬化剤がグルタル酸であることが、より高い熱伝導性を実現できる点から好ましい。
【0023】
前記硬化成分Cと前記硬化剤Dとのモル当量基準の当量比(C/D)は、用いる硬化成分及び硬化剤の種類に応じて異なり一概には規定することができないが、0.5以上3以下が好ましく、0.5以上2以下がより好ましく、0.7以上1.5以下が更に好ましい。
前記当量比(C/D)が0.5以上3以下であると、熱伝導性組成物を熱硬化時に低融点金属粒子が十分に溶融してネットワークを形成できるという利点がある。
【0024】
<金属フィラー>
金属フィラーとしては、熱伝導性粒子及び低融点金属粒子を含む。
【0025】
-熱伝導性粒子-
前記熱伝導性粒子としては、銅粒子、銀被覆粒子、及び銀粒子の少なくともいずれかが好ましい。
前記銀被覆粒子としては、例えば、銀被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、銀被覆アルミニウム粒子などが挙げられる。
前記熱伝導性粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、粒状、針状などが挙げられる。
前記熱伝導性粒子の体積平均粒径は、10μm以上300μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましい。熱伝導性粒子の体積平均粒径が10μm以上300μm以下であると、熱伝導性粒子の低融点金属粒子に対する体積割合を大きくすることができ、熱伝導性組成物の高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。
前記体積平均粒径は、例えば、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Microtrac MT3300EXII)により、測定することができる。
【0026】
-低融点金属粒子-
前記低融点金属粒子としては、JIS Z3282-1999に規定されているはんだ粒子が好適に用いられる。
前記はんだ粒子としては、例えば、Sn-Pb系はんだ粒子、Pb-Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Pb-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Cu系はんだ粒子、Sn-Pb-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子、Sn-Ag系はんだ粒子、Sn-Pb-Ag系はんだ粒子、Pb-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Snと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種と、を含むはんだ粒子が好ましく、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子がより好ましい。
【0027】
前記低融点金属粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、粒状、針状などが挙げられる。
前記低融点金属粒子の融点は、100℃以上250℃以下が好ましく、120℃以上200℃以下がより好ましい。
前記低融点金属粒子の融点は前記熱伝導性組成物の熱硬化処理温度よりも低いことが、熱伝導性組成物の硬化物中に溶融した低融点金属粒子により熱伝導性粒子を介してネットワーク(金属の連続相)を形成でき、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる点から好ましい。
前記低融点金属粒子が、前記熱伝導性組成物の熱硬化処理条件下で前記熱伝導性粒子と反応して、前記低融点金属粒子より高い融点を示す合金となることにより、高温下で溶融することを防止でき、信頼性が向上する。また、熱伝導性組成物の硬化物の耐熱性が向上する。
前記熱伝導性組成物の熱硬化処理は、例えば、150℃以上200℃の温度で30分間以上2時間以下の条件で行われる。
【0028】
前記低融点金属粒子の体積平均粒径は、10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。低融点金属粒子の体積平均粒径が10μm以下であると、低融点金属粒子の熱伝導性粒子に対する体積割合を小さくすることができ、熱伝導性組成物の高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。
前記低融点金属粒子の体積平均粒径は、上記熱伝導性粒子の体積平均粒径と同様にして測定することができる。
【0029】
前記熱伝導性粒子の体積平均粒径が前記低融点金属粒子の体積平均粒径よりも大きく、前記熱伝導性粒子Aと前記低融点金属粒子Bとの体積平均粒径比(A/B)は2以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。前記体積平均粒径比(A/B)の上限値は20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
前記熱伝導性粒子よりも体積平均粒径が小さい低融点金属粒子を用いることにより、熱伝導性組成物中で前記熱伝導性粒子が主成分となり、前記熱伝導性粒子と前記熱伝導性粒子の間に存在する低融点金属粒子が加熱により溶融し熱伝導性粒子と合金化してネットワークを形成するために、熱伝導性組成物の高熱伝導率及び低熱抵抗が実現できる。
【0030】
熱伝導性組成物中での前記熱伝導性粒子Aと前記低融点金属粒子Bとの体積比(A/B)は、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上が更に好ましい。前記体積比(A/B)の上限値は5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
前記体積比(A/B)が1以上であると、低融点金属粒子よりも体積平均粒径が大きい熱伝導性粒子の体積割合が多くなるため、溶融した低融点金属粒子の流動を抑えることができる。また、低融点金属粒子が濡れにくい界面(例えば、アルミニウム)に対しても分離が発生しにくいため、界面の材質の影響を抑えることができ、界面材質の選択性が向上する。
【0031】
前記金属フィラーの体積充填率は、50体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましく、70体積%以上が更に好ましく、75体積%以上が特に好ましい。前記金属フィラーの体積充填率の上限値は90体積%以下が好ましく、85体積%以下がより好ましい。
前記金属フィラーの体積充填率が50体積%以上であると、熱伝導性組成物の高熱伝導率及び低熱抵抗が実現できる。
【0032】
<特定のポリマー>
本発明の熱伝導性組成物は、柔軟性及びシート性を付与するために、特定のポリマーを含有することが好ましい。
前記特定のポリマーとしては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマーが用いられる。
【0033】
前記特定のポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン及び水添ポリブタジエン等が有するポリブタジエン構造、シリコーンゴム等が有するポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造(炭素原子数2~15のポリアルキレン構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレン構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレン構造が更に好ましい)、ポリアルキレンオキシ構造(炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造が更に好ましい)、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有することが好ましく、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有することが好ましく、ポリブタジエン構造、ポリイソプレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有することがより好ましい。
【0034】
前記特定のポリマーは、柔軟性を示すために高分子量であることが好ましい。前記特定のポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000以上1,000,000以下が好ましく、5,000以上900,000以下がより好ましい。
前記数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0035】
前記特定のポリマーは、柔軟性を示すために、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下のポリマー、及び25℃で液状であるポリマーから選択されることが好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg)が25℃以下であるポリマーのガラス転移温度は、20℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましい。ガラス転移温度の下限は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-15℃以上が好ましい。
25℃で液状であるポリマーとしては、20℃以下で液状であるポリマーが好ましく、15℃以下で液状であるポリマーがより好ましい。
【0036】
前記特定のポリマーとしては、硬化物の機械的強度を向上させる観点から、上記硬化成分と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、上記硬化成分と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も含めるものとする。
上記硬化成分と反応し得る官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。これらの中でも、前記官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。
【0037】
前記特定のポリマーの好適な一実施形態は、ブタジエン樹脂である。前記ブタジエン樹脂としては25℃で液状又はガラス転移温度が25℃以下のブタジエン樹脂が好ましく、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ブタジエン樹脂、酸無水物基含有ブタジエン樹脂、エポキシ基含有ブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ブタジエン樹脂及びウレタン基含有ブタジエン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂が更に好ましい。
前記水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂としては、ポリブタジエン構造を有し、かつフェノール性水酸基を有する樹脂などが挙げられる。
【0038】
ここで、前記「ブタジエン樹脂」とは、ポリブタジエン構造を含有する樹脂をいい、これらの樹脂においてポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。ブタジエン構造は一部又は全てが水素添加されていてもよい。
ここで、前記「水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂」とは、ポリブタジエン骨格の少なくとも一部が水素化された樹脂をいい、必ずしもポリブタジエン骨格が完全に水素化された樹脂である必要はない。
【0039】
前記ブタジエン樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000~100,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましく、7,500~30,000が更に好ましく、10,000~15,000が特に好ましい。
ここで、前記ブタジエン樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0040】
前記ブタジエン樹脂が官能基を有する場合の官能基当量は、100~10,000が好ましく、200~5,000がより好ましい。なお、官能基当量とは、1グラム当量の官能基を含む樹脂のグラム数である。例えば、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。水酸基当量はJIS K1557-1に従って測定した水酸基価でKOHの分子量を割ることで算出することができる。
【0041】
前記ブタジエン樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、クレイバレー社製の「Ricon 657」(エポキシ基含有ポリブタジエン)、「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン);日本曹達株式会社製の「JP-100」、「JP-200」(エポキシ化ポリブタジエン)、「GQ-1000」(水酸基、カルボキシ基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン);ダイセル株式会社製の「PB3600」、「PB4700」(ポリブタジエン骨格エポキシ化合物)、「エポフレンドA1005」、「エポフレンドA1010」、「エポフレンドA1020」(スチレンとブタジエンとスチレンブロック共重合体のエポキシ化合物)、ナガセケムテックス株式会社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ化合物)、「R-45EPT」(ポリブタジエン骨格エポキシ化合物)などが挙げられる。
【0042】
前記特定のポリマーの他の好適な一実施形態として、イミド構造を有する樹脂を使用することもできる。イミド構造を有する樹脂として、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号パンフレットに記載のポリイミド)などが挙げられる。
前記ポリイミド樹脂のポリブタジエン構造の含有率は、60質量%~95質量%が好ましく、75質量%~85質量%がより好ましい。
前記ポリイミド樹脂の詳細については、例えば、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号パンフレットの記載を参酌することができる。
【0043】
前記特定のポリマーの好適な一実施形態は、イソプレン樹脂である。イソプレン樹脂の具体例としては株式会社クラレ製の「KL-610」、「KL-613」などが挙げられる。ここで、「イソプレン樹脂」とは、ポリイソプレン構造を含有する樹脂をいい、これらの樹脂においてポリイソプレン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0044】
前記特定のポリマーの好適な一実施形態は、カーボネート樹脂である。前記カーボネート樹脂としてはガラス転移温度が25℃以下のカーボネート樹脂が好ましく、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂及びウレタン基含有カーボネート樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂がより好ましい。
ここで、前記「カーボネート樹脂」とは、ポリカーボネート構造を含有する樹脂をいい、これらの樹脂においてポリカーボネート構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0045】
前記カーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)、及び官能基を持つ場合の官能基当量はブタジエン樹脂と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
前記カーボネート樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール);株式会社クラレ製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)などが挙げられる。
【0047】
ヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。前記ポリイミド樹脂のポリカーボネート構造の含有率は、60質量%~95質量%が好ましく、75質量%~85質量%がより好ましい。前記ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号パンフレットの記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0048】
前記特定のポリマーの他の好適な一実施形態は、アクリル樹脂である。前記アクリル樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下のアクリル樹脂が好ましく、ヒドロキシ基含有アクリル樹脂、フェノール性水酸基含有アクリル樹脂、カルボキシ基含有アクリル樹脂、酸無水物基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、イソシアネート基含有アクリル樹脂及びウレタン基含有アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂がより好ましい。
ここで、前記「アクリル樹脂」とは、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂をいい、これらの樹脂においてポリ(メタ)アクリレート構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0049】
前記アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、10,000~1,000,000が好ましく、30,000~900,000がより好ましい。
ここで、前記アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0050】
前記アクリル樹脂が官能基を有する場合の官能基当量は、1,000~50,000が好ましく、2,500~30,000がより好ましい。
【0051】
前記アクリル樹脂としては市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、ナガセケムテックス株式会社製のテイサンレジン「SG-70L」、「SG-708-6」、「WS-023」、「SG-700AS」、「SG-280TEA」(カルボキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、酸価5mgKOH/g~34mgKOH/g、重量平均分子量40万~90万、Tg-30℃~5℃)、「SG-80H」、「SG-80H-3」、「SG-P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、エポキシ当量4761g/eq~14285g/eq、重量平均分子量35万~85万、Tg11℃~12℃)、「SG-600TEA」、「SG-790」(ヒドロキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、水酸基価20mgKOH/g~40mgKOH/g、重量平均分子量50万~120万、Tg-37℃~-32℃);根上工業株式会社製の「ME-2000」、「W-116.3」(カルボキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)、「W-197C」(水酸基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)、「KG-25」、「KG-3000」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)などが挙げられる。
【0052】
また、前記特定のポリマーの好適な一実施形態は、シロキサン樹脂、アルキレン樹脂、アルキレンオキシ樹脂、イソブチレン樹脂である。
【0053】
前記シロキサン樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、信越シリコーン株式会社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサン、四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号パンフレット)などが挙げられる。ここで、前記「シロキサン樹脂」とは、ポリシロキサン構造を含有する樹脂をいい、これらの樹脂においてポリシロキサン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0054】
前記アルキレン樹脂及び前記アルキレンオキシ樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、旭化成せんい株式会社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」;三菱化学株式会社製の「YX-7180」(エーテル結合を有するアルキレン構造を含有する樹脂);DIC Corporation社製の「EXA-4850-150」「EXA-4816」「EXA-4822」;株式会社ADEKA製の「EP-4000」、「EP-4003」、「EP-4010」、「EP-4011」;新日本理化株式会社製の「BEO-60E」「BPO-20E」;三菱化学株式会社製の「YL7175」、「YL7410」などが挙げられる。
ここで、前記「アルキレン樹脂」とは、ポリアルキレン構造を含有する樹脂をいい、「アルキレンオキシ樹脂」とは、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂をいう。これらの樹脂においてポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0055】
前記イソブチレン樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、株式会社カネカ製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)などが挙げられる。ここで、前記「イソブチレン樹脂」とは、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂をいい、これらの樹脂において、ポリイソブチレン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0056】
前記特定のポリマーの好適な実施形態として、アクリルゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。
前記アクリルゴム粒子の具体例としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴムなどのゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体が挙げられ、具体的には、XER-91(日本合成ゴム株式会社製);スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、ガンツ化成株式会社製);パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
前記ポリアミド微粒子としては、ナイロンのような脂肪族ポリアミド、更には、ポリアミドイミド等の柔軟な骨格であればどのようなものでもよく、具体的には、VESTOSINT 2070(ダイセルヒュルス株式会社製)、SP500(東レ株式会社製)などが挙げられる。
【0058】
前記ポリアミド構造を有するポリマー(ポリアミド樹脂)としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、トーマイド558、560、535(以上、株式会社T&K TOKA製)、Platamid HX2592、M1276, H2544(アルケマ株式会社製)などが挙げられる。
【0059】
前記特定のポリマーの含有量は、熱伝導性組成物の全量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0060】
<その他の成分>
前記熱伝導性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいてその他の成分を含有してもよい。前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属以外の熱伝導性粒子(例えば、窒化アルミ、アルミナ、炭素繊維等)、添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤、難燃剤等)などが挙げられる。
【0061】
本発明の熱伝導性組成物は、前記硬化成分、前記硬化剤、前記金属フィラー、前記特定のポリマー、及び必要に応じてその他の成分を常法により均一に混合することにより調製することができる。
【0062】
前記熱伝導性組成物は、シート状の熱伝導性シート、及びペースト状の熱伝導性ペースト(熱伝導性接着剤、又は熱伝導性グリースと称することもある)のいずれであってもよい。これらの中でも、取り扱いのし易さの点から熱伝導性シートが好ましく、コストの面から熱伝導性ペーストが好ましい。
【0063】
(熱伝導性シート)
本発明の熱伝導性シートは、本発明の熱伝導性組成物をシート化したものである。
前記熱伝導性シートの平均厚みは、薄型化の観点から、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。前記熱伝導性シートの平均厚みの下限値は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。
【0064】
前記熱伝導性シートの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記熱伝導性組成物を所定の形状に成型して硬化させ、熱伝導性成形体を成形し、得られた熱伝導性成形体をシート状にスライスし、熱伝導性シートを製造する方法、(2)剥離層付き支持体上に前記熱伝導性組成物の硬化物を含む硬化物層を形成し熱伝導性シートを製造する方法などが挙げられる。なお、前記(2)においては、熱伝導性シートを放熱基板に積層する際に支持体を剥離する。
【0065】
本発明の熱伝導性組成物及び熱伝導性シートは、例えば、LEDチップ又はICチップを実装した放熱基板を、ヒートシンクに接着してパワーLEDモジュール又はパワーICモジュールを構成する際に好適に使用することができる。
ここで、パワーLEDモジュールとしては、ワイヤーボンディング実装タイプのものとフリップチップ実装タイプのものがあり、パワーICモジュールとしてはワイヤーボンディング実装タイプのものがある。
【0066】
<放熱構造体>
本発明に用いられる放熱構造体は、発熱体と、熱伝導性材料と、放熱部材とから構成され、前記発熱体と前記放熱部材の間に、本発明の熱伝導性組成物の硬化物を有する。
【0067】
前記発熱体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の電子部品などが挙げられる。
【0068】
前記放熱部材としては、電子部品(発熱体)の発する熱を放熱する構造体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、ベーパーチャンバー、ヒートパイプなどが挙げられる。
前記ヒートスプレッダは、前記電子部品の熱を他の部品に効率的に伝えるための部材である。前記ヒートスプレッダの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートスプレッダは、通常、平板形状である。
前記ヒートシンクは、前記電子部品の熱を空気中に放出するための部材である。前記ヒートシンクの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートシンクは、例えば、複数のフィンを有する。前記ヒートシンクは、例えば、ベース部と、前記ベース部の一方の面に対して非平行方向(例えば、直交する方向)に向かって延びるように設けられた複数のフィンを有する。
前記ヒートスプレッダ、及び前記ヒートシンクは、一般的に、内部に空間を持たない中実構造である。
前記ベーパーチャンバーは、中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。前記ベーパーチャンバーとしては、例えば、前記ヒートスプレッダを中空構造にしたもの、前記ヒートシンクを中空構造にしたような板状の中空構造体などが挙げられる。
前記ヒートパイプは、円筒状、略円筒状、又は扁平筒状の中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。
【0069】
ここで、
図1は、放熱構造体としての半導体装置の一例を示す概略断面図である。本発明の熱伝導性組成物の硬化物(熱伝導性シート)1は、半導体素子等の電子部品3の発する熱を放熱するものであり、
図1に示すように、ヒートスプレッダ2の電子部品3と対峙する主面2aに固定され、電子部品3と、ヒートスプレッダ2との間に挟持されるものである。また、熱伝導性シート1は、ヒートスプレッダ2とヒートシンク5との間に挟持される。そして、熱伝導性シート1は、ヒートスプレッダ2とともに、電子部品3の熱を放熱する放熱部材を構成する。
【0070】
ヒートスプレッダ2は、例えば、方形板状に形成され、電子部品3と対峙する主面2aと、主面2aの外周に沿って立設された側壁2bとを有する。ヒートスプレッダ2は、側壁2bに囲まれた主面2aに熱伝導性シート1が設けられ、また主面2aと反対側の他面2cに熱伝導性シート1を介してヒートシンク5が設けられる。ヒートスプレッダ2は、高い熱伝導率を有するほど、熱抵抗が減少し、効率よく半導体素子等の電子部品3の熱を吸熱することから、例えば、熱伝導性の良好な銅やアルミニウムを用いて形成することができる。
【0071】
電子部品3は、例えば、BGA等の半導体素子であり、配線基板6へ実装される。またヒートスプレッダ2も、側壁2bの先端面が配線基板6に実装され、これにより側壁2bによって所定の距離を隔てて電子部品3を囲んでいる。
そして、ヒートスプレッダ2の主面2aに、熱伝導性シート1が接着されることにより、電子部品3の発する熱を吸収し、ヒートシンク5より放熱する放熱部材が形成される。
【実施例0072】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
(実施例1~12及び比較例1~2)
<熱伝導性組成物の調製>
下記の表1~表4に記載の組成及び含有量を、撹拌装置(泡とり練太郎・自動公転ミキサー、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合し、実施例1~12及び比較例1~2の熱伝導性組成物を調製した。なお、表1~表4中における各成分の含有量は質量部である。
【0074】
<硬化物の作製>
次に、30mm×30mm×2mmのアルミニウム板(A5052P)2枚の間に0.125mmのスペーサ、直径20mmとなるように各熱伝導性組成物を挟み込み、150℃で60分間オーブンキュアを施し、各熱伝導性組成物の硬化物(界面Al)を得た。
【0075】
次に、実施例1~12及び比較例1~2について、以下のようにして、「シート性」、「ネットワーク形成性」、及び「熱伝導性」を評価した。結果を表1~表4に示した。
【0076】
<シート性>
100℃で15分間乾燥した各熱伝導性シートを45度又は90度折り曲げて、各熱伝導性シートの折り曲げた箇所の目視観察を行い、下記の基準によりシート性を評価した。
[評価基準]
◎:折り曲げた熱伝導性シートの曲げた箇所に90度折り曲げて割れが生じなかった
〇:折り曲げた熱伝導性シートの曲げた箇所に45度折り曲げて割れが生じなかった
×:折り曲げた熱伝導性シートの曲げた箇所に割れが発生した
【0077】
<ネットワーク形成性>
各熱伝導性組成物の硬化物(界面Al)を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を半導体検査顕微鏡(MX61L、オリンパス株式会社製)で撮影し、低融点金属粒子により形成されたネットワーク(金属の連続相)の有無を観察し、下記の基準により、ネットワーク形成性を評価した。
[評価基準]
◎:低融点金属粒子が完全に溶融し、熱伝導性粒子と繋がった
〇:低融点金属粒子が一部溶融し、熱伝導性粒子と繋がった
×:低融点金属粒子が溶融していない
【0078】
<熱伝導性>
上記各熱伝導性組成物の硬化物(界面Al)、及び30mm×30mm×2mmの銅板2枚の間に0.125mmのスペーサ、直径20mmとなるように各熱伝導性組成物を挟み込み、150℃で60分間オーブンキュアを施し、各熱伝導性組成物の硬化物(界面Cu)について、ASTM-D5470に準拠した方法で熱抵抗(℃・cm2/W)を測定した。その結果から金属板の熱抵抗を引いて硬化物の熱抵抗を算出し、前記熱抵抗と硬化物の厚みから、熱伝導率(W/m・K)を求め、下記の基準により熱伝導性を評価した。
[評価基準]
◎:熱伝導率が11.0W/m・K以上
〇:熱伝導率が8.0W/m・K以上11.0W/m・K未満
×:熱伝導率が8.0W/m・K未満
【0079】
次に、実施例1及び比較例1の熱伝導性組成物の硬化物(界面Cu)を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を半導体検査顕微鏡(MX61L、オリンパス株式会社製)で撮影した断面写真を
図2A及び
図3Aに示した。
また、実施例1及び比較例1の熱伝導性組成物の硬化物(界面Al)を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を半導体検査顕微鏡(MX61L、オリンパス株式会社製)で撮影した断面写真を
図2B及び
図3Bに示した。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表4の結果から、特定のポリマーを添加した実施例8~12は、特定のポリマーを添加していない実施例1~7に比べてシートの折り曲げ耐性が優れていることがわかった。
また、硬化成分としてオキセタン化合物、硬化剤としてグルタル酸を用いた実施例11~12は、硬化成分としてエポキシ樹脂、硬化剤としてシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物を用いた実施例8~10に比べて熱伝導性が優れていることがわかった。
【0085】
表1~表4中における各成分の詳細については、以下のとおりである。
【0086】
-硬化成分-
*AER9000:旭化成株式会社製
*OXBP:UBE株式会社製、4,4′-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル
*OXIPA:UBE株式会社製、イソフタル酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル
【0087】
-硬化剤-
*MH-700:リカシッドMH-700、新日本理化株式会社製、4-メチルHHMA(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)を主成分とする液状脂環式酸無水物
*グルタル酸:東京化成株式会社製、1,3-プロパンジカルボン酸
【0088】
-低融点金属粒子(はんだ粒子)-
*Sn58Bi42:三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径Dv:4μm、融点139℃
*Sn58In42:5N Plus社製、体積平均粒径Dv:16μm、融点117℃
*Sn58Bi42:三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径Dv:20μm、融点139℃
上記低融点金属粒子の体積平均粒径Dvは、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Microtrac MT3300EXII)により、測定した値である。
【0089】
-熱伝導性粒子-
*AgコートCu粒子:福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:40μm
*AgコートCu粒子:福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:5μm
*Cu粒子:福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:40μm
*Cu粒子:福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:5μm
上記熱伝導性粒子の体積平均粒径Dvは、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Microtrac MT3300EXII)により、測定した値である。
【0090】
-特定のポリマー-
*LIR-410:クラプレン(登録商標)、株式会社クラレ製、イソプレン系液状ゴム
*エポフレンドAT501:株式会社ダイセル製、スチレン-ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化合物
*M1276:アルケマ株式会社製、ポリアミド化合物
本発明の熱伝導性組成物及び熱伝導性シートは、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できるので、例えば、温度によって素子動作の効率や寿命等に悪影響が生じるCPU、MPU、パワートランジスタ、LED、レーザーダイオード、各種電池(リチウムイオン電池等の各種二次電池、各種燃料電池、キャパシタ、アモルファスシリコン、結晶シリコン、化合物半導体、湿式太陽電池等の各種太陽電池等)などの各種の電気デバイス周り、熱の有効利用が求められる暖房機器の熱源周り、熱交換器、床暖房装置の熱配管周りなどに好適に用いられる。