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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003995
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】含水有機汚泥排水の脱水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/10 20060101AFI20230110BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20230110BHJP
【FI】
C02F11/10 Z ZAB
C02F11/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105439
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059BB03
4D059BE00
4D059BK21
4D059CA01
4D059CC03
(57)【要約】
【課題】今までにはない新たな代替エネルギーを実現することができる含水有機汚泥排水の脱水方法を提供しようとするもの。
【解決手段】排水中の水分を蒸発させる蒸発工程と、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程とを有し、前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして利用するようにした。排水中の水分を蒸発させる蒸発工程と、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程とを有するので、蒸発工程で排水中の水分を蒸発させ、水分がほぼ蒸発した排水について熱分解工程で排水中の有機成分を熱分解することが出来る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水中の水分を蒸発させる蒸発工程と、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程とを有し、前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして利用するようにしたことを特徴とする含水有機汚泥排水の脱水方法。
【請求項2】
前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを蒸発工程の加熱エネルギーとして利用するようにした請求項1記載の含水有機汚泥排水の脱水方法。
【請求項3】
前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを熱分解工程の加熱エネルギーとして利用するようにした請求項1又は2記載の含水有機汚泥排水の脱水方法。
【請求項4】
前記可燃性ガスで熱分解工程における有機成分の熱分解炉の外周を加熱するようにした請求項3記載の含水有機汚泥排水の脱水方法。
【請求項5】
前記排水を電気分解するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の含水有機汚泥排水の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、含水有機汚泥排水の脱水方法に関するものであり、含水有機汚泥排水に対し脱水その他の処理を行って新たなエネルギーを取り出すことが出来るようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、再生可能エネルギーに関する提言があった(非特許文献1)。
すなわち、再生可能エネルギー(Renewable Energy)とは、石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギーのことである。
その大きな特徴は、「枯渇しない」「どこにでも存在する」「CO2を排出しない(増加させない)」の3点である。
日本では、平成21年8月施行の「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用および化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」および「同施行令」において、定義および具体的な種類が規定されている。
法における定義:非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用できると認められるもの(法第2条第3項)
具体的な種類:(1)太陽光、(2)風力、(3)水力、(4)地熱、(5)太陽熱、(6)大気中の熱その他の自然界に存在する熱、(7)バイオマス(動植物に由来する有機物)の7種類(施行令第4条)、というものである。
つまり、石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーではない今までにはない新たな代替エネルギーに対する要望があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】関西電力HP「再生可能エネルギーについて」https://www.kepco.co.jp/siteinfo/faq/new_energy/9098953_10603.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、今までにはない新たな代替エネルギーを実現することができる含水有機汚泥排水の脱水方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の含水有機汚泥排水の脱水方法は、排水中の水分を蒸発させる蒸発工程と、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程とを有し、前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして利用するようにしたことを特徴とする。
ここで、前記有機成分として、食品製造工場での冷菓製造時のCIP排水中の糖分(C6H12O6)、化学工場での有機化合物(特に沸点が100℃以上のもの)などを例示することが出来る。前記熱分解工程で排水中の有機成分を熱分解する温度として、約450~1,000℃を例示することが出来る。
排水中の有機成分が熱分解されて生成した可燃性ガスは、圧力ボンベ等に貯蔵しておくことも出来る。
【0006】
この含水有機汚泥排水の脱水方法は、排水中の水分を蒸発させる蒸発工程と、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程(蒸留ではない)とを有するので、蒸発工程(100℃に加熱したり減圧下で加熱したりすることができる)で排水中の水分を蒸発させ、水分がほぼ蒸発した排水について熱分解工程(約450℃以上に加熱することができる)で排水中の有機成分を熱分解することが出来る。
【0007】
そして、前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして利用するようにしたので、排水中の有機成分が熱分解されて生成した可燃性ガス(メタンガス、エタンガス、プロパンガスなどと推測される)を蒸発工程(脱水時)や熱分解工程(エネルギー抽出時)などでエネルギー利用することができ、決して「枯渇」することはない含水有機汚泥からエネルギーを取り出すことが出来る。
【0008】
また、排水中の有機成分が熱分解されて生成した可燃性ガスを蒸発工程や熱分解工程などでエネルギー利用することができるので、従来よりも安価に含水有機汚泥排水の脱水処理をすることが出来る。可燃性ガスは、加熱エネルギーとしての利用のみならず、燃焼させてタービンを回し発電に利用することも出来る。
【0009】
一般的に、排水中の含水有機汚泥は生物処理により凝集沈殿させ、この有機汚泥を産業廃棄物として焼却処分しており、焼却有機汚泥から大量の二酸化炭素(CO2)が排出されているが、この発明によると、有機汚泥は一旦エネルギー利用を果たしてから二酸化炭素(CO2)へと変化することとなるので、昨今のエネルギー資源保護の趣旨に合致し、国家が推進している施策の潮流に適合することとなる。
【0010】
従前の加熱エネルギーとして、一般的に常用されているLNGガスなどを例示することが出来る。そして、これ(LNGガス)に熱分解されて生成した可燃性ガスを補充・追加したり、またこの熱分解されて生成した可燃性ガスを排水加熱の主たるエネルギーとして利用したり、さらにこの際の余剰量の可燃性ガスを他の機器に対する加熱エネルギーその他の用途として利用することも出来る。
【0011】
含水有機汚泥排水は時間の経過とともに腐敗して、夏場は菌体やバクテリアが特に繁殖することがあり、有機汚泥自体の量が膨れ上がって臭気を発したり感染性を発現したりするので、素早く脱水することが大事である。
これに対し、排水中の水分を蒸発させる蒸発工程で脱水し、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程で生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして利用するようにしたので、そのまま放置しておくと不具合が発生して困った状況になる含水有機汚泥を先ず「脱水」して非公害化・衛生化しつつそのうえ更にエネルギー化まですることにより、環境に配慮しつつ不要物(含水有機汚泥)についての積極的な有効活用(新たなエネルギーの供給)を図ることが出来る。
そして、この方法は生物処理後の含水有機汚泥(いわゆる排水よりも含水量が少ない)にも適用されるものである。
【0012】
(2)前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを蒸発工程の加熱エネルギーとして利用するようにしてもよい。
このように構成し、熱分解工程で生成した可燃性ガスを蒸発工程の加熱エネルギー(費用が必要)として利用するようにすると、蒸発工程(脱水時)でのエネルギー資源の消費を節減することが出来る。
例えば、生成した可燃性ガスの燃焼ガスを、蒸発工程の蒸発釜の加熱エネルギーとして利用することが出来る。
【0013】
(3)前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを熱分解工程の加熱エネルギーとして利用するようにしてもよい。
このように構成し、熱分解工程で生成した可燃性ガスを熱分解工程の加熱エネルギー(費用が必要)として利用するようにすると、熱分解工程(エネルギー抽出時)でのエネルギー資源の消費を節減することが出来る。
【0014】
(4)前記可燃性ガスで熱分解工程における有機成分の熱分解炉の外周を加熱するようにしてもよい。
このように構成し、生成した可燃性ガスの燃焼ガスを加熱エネルギーとして利用して、熱分解工程における有機成分の熱分解炉の外周を加熱するようにすると、燃焼ガスそのものを有機成分に及ぼして可燃性ガスを発生させる場合と比較して(燃焼ガスと可燃性ガスの混合気体になる)、燃焼ガス(夾雑物)を含まない可燃性ガスを採取することが出来る。
【0015】
(5)前記排水を電気分解するようにしてもよい。
このように構成し、(蒸発工程までに)排水を電気分解するようにすると、蒸発工程で排水中の水分子のクラスターが電気分解により平準化・統一化され、整えられることによって水分が蒸発し易くなる。
また、電解の際 電極間を含水有機汚泥排水が通ると、有機成分の構成分子に対して電気的に等方性が付与されることとなって、熱分解工程で有機成分が熱分解し易くなる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
決して「枯渇」することはない含水有機汚泥からエネルギーを取り出すことができるので、今までにはない新たな代替エネルギーを実現することができる含水有機汚泥排水の脱水方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
この実施形態の含水有機汚泥排水の脱水方法は、排水中の水分を蒸発させる蒸発工程と、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程とを有し、前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして利用するようにした。前記排水は、蒸発工程の前に予め電気分解した。
前記有機成分として、食品製造工場での冷菓製造時のCIP排水中の糖分(C6H12O6)を処理した。具体的には、熱分解工程で排水中の有機成分を熱分解する温度として約600℃で処理した。
【0018】
蒸発工程と熱分解工程の加熱媒体としてLNGガスを使用し、これに熱分解されて生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして補充・追加した。
すなわち、熱分解工程で生成した可燃性ガスを蒸発工程の加熱エネルギーとして利用した。具体的には、生成した可燃性ガスの燃焼ガスを、蒸発工程の蒸発釜の加熱エネルギーとして利用した。
【0019】
また、前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを熱分解工程の加熱エネルギーとして利用した。前記可燃性ガスで、熱分解工程における有機成分の熱分解炉の外周を加熱するようにした。
この含水有機汚泥排水の脱水方法は、排水中の水分を蒸発させる蒸発工程と、排水中の有機成分を熱分解する熱分解工程とを有するので、蒸発工程(100℃に加熱した)で排水中の水分を蒸発させ、水分がほぼ蒸発した排水について熱分解工程(約600℃に加熱した)で排水中の有機成分を熱分解することが出来た。
【0020】
次に、この実施形態の含水有機汚泥排水の脱水方法の使用状態を説明する。
前記熱分解工程で生成した可燃性ガスを加熱エネルギーとして利用するようにしたので、排水中の有機成分が熱分解されて生成した可燃性ガス(メタンガス、エタンガス、プロパンガスなどと推測される)を蒸発工程(脱水時)や熱分解工程(エネルギー抽出時)などでエネルギー利用することができ、含水有機汚泥からエネルギーを取り出すことが出来た。
【0021】
また、排水中の有機成分が熱分解されて生成した可燃性ガスを蒸発工程や熱分解工程などでエネルギー利用することができるので、従来よりも安価に含水有機汚泥排水の脱水処理をすることが出来た。
一般的に、排水中の含水有機汚泥は生物処理により凝集沈殿させ、この有機汚泥を産業廃棄物として焼却処分しており、焼却有機汚泥から大量の二酸化炭素(CO2)が排出されているが、この実施形態では、有機汚泥は一旦エネルギー利用を果たしてから二酸化炭素(CO2)へと変化することとなる。
【0022】
また、熱分解工程で生成した可燃性ガスを蒸発工程の加熱エネルギーとして利用するようにしたので、蒸発工程(脱水時)でのエネルギー資源の消費を節減することが出来た。
さらに、熱分解工程で生成した可燃性ガスを熱分解工程の加熱エネルギーとして利用したので、熱分解工程(エネルギー抽出時)でのエネルギー資源の消費を節減することが出来た。
【0023】
そのうえ、生成した可燃性ガスの燃焼ガスを加熱エネルギーとして利用して、熱分解工程における有機成分の熱分解炉の外周を加熱するようにしたので、燃焼ガスそのものを有機成分に及ぼして可燃性ガスを発生させる場合と比較して(燃焼ガスと可燃性ガスの混合気体になる)、燃焼ガス(夾雑物)を含まない可燃性ガスを採取することが出来た。
【0024】
そして、排水を電気分解するようにしており、蒸発工程で排水中の水分子のクラスターが電気分解により平準化・統一化され、整えられることによって水分が蒸発し易くなった。また、電解の際 電極間を含水有機汚泥排水が通ると、有機成分の構成分子に対して電気的に等方性が付与されることとなって、熱分解工程で有機成分が熱分解し易くなった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
今までにはない新たな代替エネルギーを実現することができることによって、種々の含水有機汚泥排水の脱水方法の用途に適用することができる。