(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003996
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブ
(51)【国際特許分類】
B03B 5/12 20060101AFI20230110BHJP
E21C 50/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B03B5/12
E21C50/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105440
(22)【出願日】2021-06-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】306031010
【氏名又は名称】ジグ・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 中
【テーマコード(参考)】
2D065
4D071
【Fターム(参考)】
2D065FA31
4D071AA03
4D071AA04
4D071AA05
4D071AA06
4D071AA15
4D071AB14
4D071CA01
(57)【要約】
【課題】海底又は水底鉱物資源の採取における選別作業に用いられる網下液室型湿式比重選別機用のロータリーバルブを提供する。
【解決手段】下面が開放した外側ケーシングと、外側ケーシングの内部に回転可能に配置され、下面が開放した内側回転体と、外側ケーシングの外部に配置された水中ポンプとを備え、外側ケーシングの周壁に水中ポンプの基数だけ設けられた開口と対応する水中ポンプの吐出口が管路によって連結されており、内側回転体の周壁に、外側ケーシングの開口と同数の横長の開口が設けられており、内側回転体を外側ケーシングの内部で回転させると、外側ケーシングの開口と内側回転体の開口が断続的に合致して、水中ポンプから吐出された脈動媒体を脈動室内に間欠的に放出させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別物質が投入される円筒形の選別室、前記選別室の下方に位置する円筒形の脈動室、前記選別室と前記脈動室との間に位置する網目、および前記選別室のほぼ中央に配置され、垂直方向に延びた投入管を有する網下液室型湿式比重選別機に設置されるロータリーバルブであって、
下面が開放した円筒形の外側ケーシングと、前記外側ケーシングの内部に外側ケーシングと同軸に回転可能に配置され、下面が開放した内側回転体と、前記内側回転体を回転駆動させるための駆動手段と、前記外側ケーシングの外部に配置された少なくとも1基の水中ポンプとを備え、
前記水中ポンプを前記投入管の上端よりも上方に位置させた状態で下端が前記脈動室内に位置するように前記投入管内に設置されており、
前記外側ケーシングの周壁に前記水中ポンプの基数だけ設けられた開口と対応する前記水中ポンプの吐出口が管路によってそれぞれ連結されており、
前記内側回転体の周壁の前記外側ケーシングの前記開口に対応する高さの個所に、前記外側ケーシングの前記開口と同数の横長の開口がそれぞれ設けられており、
前記内側回転体を前記外側ケーシングの内部で回転させると、前記外側ケーシングの前記開口と前記内側回転体の前記開口が断続的に合致するようになっており、これにより、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体を前記脈動室内に間欠的に放出させるように構成されていることを特徴とするロータリーバルブ。
【請求項2】
前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、
前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、前記側壁内を垂直方向に摺動する移動板、および前記移動板と前記上壁を連結するばねを有し、前記下壁が穴を介して前記管路と連通しており、
前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記チャンバ内に流入して前記移動板を前記上壁の方へ付勢し、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記チャンバ内の脈動媒体が前記ばねのばね力によって前記チャンバ外に押し出されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載されたロータリーバルブ。
【請求項3】
前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、
前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、および前記側壁内に配置された可撓性材料製の膨張体を有し、前記膨張体の一部が前記管路と連通しており、
前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記膨張体内に流入して前記膨張体を膨張させ、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記膨張体内の脈動媒体が前記膨張体の収縮力によって前記膨張体外に押し出されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載されたロータリーバルブ。
【請求項4】
被選別物質が投入される円筒形の選別室、前記選別室の下方に位置する円筒形の脈動室、前記選別室と前記脈動室との間に位置する網目、および前記選別室のほぼ中央に配置され、垂直方向に延びた投入管を有する網下液室型湿式比重選別機に設置されるロータリーバルブであって、
下面に開口部が設けられた円筒形の外側ケーシングと、前記外側ケーシングの内部に外側ケーシングと同軸に回転可能に配置され、下面が開放した内側回転体と、前記内側回転体を回転駆動させるための駆動手段と、前記外側ケーシングの外部に配置された少なくとも1基の水中ポンプとを備え、
前記外側ケーシングの下面の前記開口部と前記脈動室が、前記投入管内を通る放出管路を介して連通しており、
前記外側ケーシングの周壁に前記水中ポンプの基数だけ設けられた開口と対応する前記水中ポンプの吐出口が管路によってそれぞれ連結されており、
前記内側回転体の周壁の前記外側ケーシングの前記開口に対応する高さの個所に、前記外側ケーシングの前記開口と同数の横長の開口がそれぞれ設けられており、
前記内側回転体を前記外側ケーシングの内部で回転させると、前記外側ケーシングの前記開口と前記内側回転体の前記開口が断続的に合致するようになっており、これにより、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体を前記放出管路経由で間欠的に放出させるように構成されていることを特徴とするロータリーバルブ。
【請求項5】
前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、
前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、前記側壁内を垂直方向に摺動する移動板、および前記移動板と前記上壁を連結するばねを有し、前記下壁が穴を介して前記管路と連通しており、
前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記チャンバ内に流入して前記移動板を前記上壁の方へ付勢し、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記チャンバ内の脈動媒体が前記ばねのばね力によって前記チャンバ外に押し出されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載されたロータリーバルブ。
【請求項6】
前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、
前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、および前記側壁内に配置された可撓性材料製の膨張体を有し、前記膨張体の一部が前記管路と連通しており、
前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記膨張体内に流入して前記膨張体を膨張させ、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記膨張体内の脈動媒体が前記膨張体の収縮力によって前記膨張体外に押し出されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載されたロータリーバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブに関する。より詳細には、本発明は、特に海底又は水底鉱物資源の採取に有用な網下液室型湿式比重選別機に用いられるロータリーバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
海底熱水鉱床、マンガン団塊、コバルトリッチクラスト等の海底又は水底鉱物資源が注目されており、海底又は水底鉱物資源を採取する種々の方法が提案されている。本発明者も、海底又は水底鉱物資源を採取する新規な方法を提案している(特許文献1参照)。このような海底又は水底鉱物資源には、有用な鉱石ばかりではなく不要な鉱石も含まれているため、採取過程で有用な鉱石と不要な鉱石を選別する作業が必要不可欠となり、このような選別作業において、網下液室型湿式比重選別機を利用すると効率的である。
【0003】
図11を参照して、網下液室型湿式比重選別機の動作原理について簡単に説明する。網下液室型湿式比重選別機は、選別しようとする物質が入れられる選別室が上方に、脈動室が下方に位置し、選別室と脈動室との間に網目が配置されている。脈動室内には、脈動液体を入/出させる液室が配置されており、液室内に脈動液体を入/出させることにより、選別室内の液位を昇降させることができるようになっている。そして、選別室に入れた物質に適切な液体の脈動を与えることによって、選別室内に比重別の物質の層が形成されることとなる。
【0004】
従来、網下液室型湿式比重選別機は、選別室及び脈動室が矩形の横断面を有し、選別室の一辺の側に被選別物質を投入する投入口、他辺の側に物質の排出口を設置する型式のものが大半である(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-082479号公報
【特許文献2】特許第5063318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
海底又は水底鉱物資源の採取において、有用な鉱石と不要な鉱石の選別作業に網下液室型湿式比重選別機を用いる場合には、選別作業に使用する脈動媒体として、海水又は淡水が使用されるが、海水又は淡水は、気体(例えば、空気)と比べて粘性が大きい。したがって、海水又は淡水を短時間で大量に液室に入/出させるには、脈動室内への海水又は淡水の供給管を大きくする必要があるが、従来の矩形横断面の比重選別機では、その構造上、海水又は淡水の供給管の大きさには制限が課せられていた。すなわち、従来の矩形横断面の比重選別機では、
図12に示されるように、脈動室の側方から脈動室内に供給管が延びているため、供給管の径を大きくしすぎると、脈動媒体の昇降が供給管に妨げられて流れに悪影響を及ぼすという不都合があった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、海底又は水底鉱物資源の採取における選別作業に用いられる網下液室型湿式比重選別機用のロータリーバルブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、脈動媒体の昇降流が供給管の寸法に左右されにくい構造として、円筒形横断面の網下液室型湿式比重選別機を採用し、このような選別機に適したロータリーバルブを開発した。すなわち、詳細には後述するように、選別しようとする物質が投入される円筒形の選別室と、選別室の下方に位置し、脈動媒体が充填される円筒形の脈動室と、選別室と脈動室との間に配置される網目と、選別室のほぼ中央に配置され、垂直方向に延びた投入管とを備えた比重選別機を準備し、脈動媒体の供給管が投入管内を通るように構成した。
【0009】
本願請求項1に記載の、被選別物質が投入される円筒形の選別室、前記選別室の下方に位置する円筒形の脈動室、前記選別室と前記脈動室との間に位置する網目、および前記選別室のほぼ中央に配置され、垂直方向に延びた投入管を有する網下液室型湿式比重選別機に設置されるロータリーバルブは、下面が開放した円筒形の外側ケーシングと、前記外側ケーシングの内部に外側ケーシングと同軸に回転可能に配置され、下面が開放した内側回転体と、前記内側回転体を回転駆動させるための駆動手段と、前記外側ケーシングの外部に配置された少なくとも1基の水中ポンプとを備え、前記水中ポンプを前記投入管の上端よりも上方に位置させた状態で下端が前記脈動室内に位置するように前記投入管内に設置されており、前記外側ケーシングの周壁に前記水中ポンプの基数だけ設けられた開口と対応する前記水中ポンプの吐出口が管路によってそれぞれ連結されており、前記内側回転体の周壁の前記外側ケーシングの前記開口に対応する高さの個所に、前記外側ケーシングの前記開口と同数の横長の開口がそれぞれ設けられており、前記内側回転体を前記外側ケーシングの内部で回転させると、前記外側ケーシングの前記開口と前記内側回転体の前記開口が断続的に合致するようになっており、これにより、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体を前記脈動室内に間欠的に放出させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項2に記載の網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブは、前記請求項1のロータリーバルブにおいて、前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、前記側壁内を垂直方向に摺動する移動板、および前記移動板と前記上壁を連結するばねを有し、前記下壁が穴を介して前記管路と連通しており、前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記チャンバ内に流入して前記移動板を前記上壁の方へ付勢し、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記チャンバ内の脈動媒体が前記ばねのばね力によって前記チャンバ外に押し出されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項3に記載の網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブは、前記請求項1のロータリーバルブにおいて、前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、および前記側壁内に配置された可撓性材料製の膨張体を有し、前記膨張体の一部が前記管路と連通しており、前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記膨張体内に流入して前記膨張体を膨張させ、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記膨張体内の脈動媒体が前記膨張体の収縮力によって前記膨張体外に押し出されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本願請求項4に記載の、被選別物質が投入される円筒形の選別室、前記選別室の下方に位置する円筒形の脈動室、前記選別室と前記脈動室との間に位置する網目、および前記選別室のほぼ中央に配置され、垂直方向に延びた投入管を有する網下液室型湿式比重選別機に設置されるロータリーバルブは、下面に開口部が設けられた円筒形の外側ケーシングと、前記外側ケーシングの内部に外側ケーシングと同軸に回転可能に配置され、下面が開放した内側回転体と、前記内側回転体を回転駆動させるための駆動手段と、前記外側ケーシングの外部に配置された少なくとも1基の水中ポンプとを備え、前記外側ケーシングの下面の前記開口部と前記脈動室が、前記投入管内を通る放出管路を介して連通しており、前記外側ケーシングの周壁に前記水中ポンプの基数だけ設けられた開口と対応する前記水中ポンプの吐出口が管路によってそれぞれ連結されており、前記内側回転体の周壁の前記外側ケーシングの前記開口に対応する高さの個所に、前記外側ケーシングの前記開口と同数の横長の開口がそれぞれ設けられており、前記内側回転体を前記外側ケーシングの内部で回転させると、前記外側ケーシングの前記開口と前記内側回転体の前記開口が断続的に合致するようになっており、これにより、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体を前記放出管路経由で間欠的に放出させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本願請求項5に記載の網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブは、前記請求項4のロータリーバルブにおいて、前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、前記側壁内を垂直方向に摺動する移動板、および前記移動板と前記上壁を連結するばねを有し、前記下壁が穴を介して前記管路と連通しており、前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記チャンバ内に流入して前記移動板を前記上壁の方へ付勢し、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記チャンバ内の脈動媒体が前記ばねのばね力によって前記チャンバ外に押し出されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本願請求項6に記載の網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブは、前記請求項4のロータリーバルブにおいて、前記管路に配置され、脈動媒体の圧送力を高めるためのチャンバをさらに備え、前記チャンバが、側壁、上壁、下壁、および前記側壁内に配置された可撓性材料製の膨張体を有し、前記膨張体の一部が前記管路と連通しており、前記管路と前記内側回転体の前記開口の連通が遮断されている場合には、前記水中ポンプから吐出された脈動媒体が前記膨張体内に流入して前記膨張体を膨張させ、前記管路と前記内側回転体の前記開口が連通している場合には、前記膨張体内の脈動媒体が前記膨張体の収縮力によって前記膨張体外に押し出されるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロータリーバルブでは、脈動媒体が比重選別機の投入管内を通るように構成されているため、脈動媒体の昇降流が供給管の寸法に大きな影響を受けにくい構造となっている。したがって、比重選別機及び投入管を大きくし、ロータリーバルブの径及び/又は圧送力(水中ポンプの基数等)を高めることにより、脈動媒体(海水又は淡水)を所望のように短時間で大量に供給することが可能になる。また、チャンバを配置することにより、脈動媒体の圧送力を一層高めることができるので、選別作業の一層の効率化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態に係る網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブを示した斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2の線3a‐3aに沿って見た断面図、
図3(b)は、
図3(a)の線3b‐3bに沿って見た底面図、
図3(c)は、外側ケーシングと内側回転体との間にライナーを設置した形態を示した断面図である。
【
図4】
図4(a)は、外側ケーシングと内側回転体が連通している状態を示した図、
図4(b)は、外側ケーシングと内側回転体の連通が遮断している状態を示した図である。
【
図5】
図1のロータリーバルブが網下液室型湿式比重選別機に設置されている状態を模式的に示した図である。
【
図6】
図1のロータリーバルブが海底資源の採掘作業に使用されている一例を示した模式図である。
【
図7】ロータリーバルブの変形形態を示した図である。
【
図8】
図7のロータリーバルブが網下液室型湿式比重選別機に設置されている状態を模式的に示した図である。
【
図9】水中ポンプの設置態様の変形形態を示した図である。
【
図10】水中ポンプに隣接して配置されるチャンバを示した一連の図である。
【
図11】網下液室型湿式比重選別機の動作原理を説明するための模式図である。
【
図12】矩形横断面の網下液室型湿式比重選別機の特徴を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブ(以下、単に「ロータリーバルブ」という)について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施の形態に係るロータリーバルブを示した斜視図、
図2は、
図1のロータリーバルブの平面図である。なお、
図1において、図面の簡単化のため、後述する4基の水中ポンプ14のうち、2基のみが図示され、他の2基は図示されていない。
【0018】
図1及び
図2において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係るロータリーバルブは、外側ケーシング12を備えている。外側ケーシング12は、円筒形の周壁12aと、周壁12aの上端に設けられる上壁12bとを有しており、周壁12aの下面12cは開放している。
【0019】
外側ケーシング12の周壁12aには、
図2に最も良く示されるように、下面12cから同一高さの個所に、90度間隔を隔てて4個の開口12a1が設けられている。外側ケーシング12は、適当な金属材料(例えば、鉄、ステンレス鋼)で形成されている。
【0020】
各開口12a1には、管路16を介して水中ポンプ14がそれぞれ連結されている。すなわち、水中ポンプ14の吐出口と外側ケーシング12の周壁12aの開口12a1が、管路16を介して連結している。参照符号14a、14bは、水中ポンプ14の吸込口、吐出口をそれぞれ示している。水中ポンプ14は、公知の型式のものを使用してよい。
【0021】
ロータリーバルブ10はまた、外側ケーシング12の内部に外側ケーシング12と同軸に回転可能に配置された内側回転体18を備えている。内側回転体18は、円筒形の周壁18aと、周壁18aの上端に設けられる上壁18bとを有しており、周壁18aの下面18cは開放している。なお、内側回転体18も、外側ケーシング12と同様に、適当な金属材料(例えば、鉄、ステンレス鋼)で形成されている。
【0022】
内側回転体18の周壁18aには、外側ケーシング12の周壁12aの開口12a1に対応する高さの個所に、横長の開口18a1がそれぞれ設けられている(
図1及び
図2に示される形態では、90度間隔を隔てて4個の開口12a1が設けられているので、開口18a1も、90度間隔を隔てて4個設けられている)。
【0023】
外側ケーシング12の中心軸線上に、軸受20aによって回転できるようにシャフト20が配置されており、シャフト20に連結された駆動手段(モータ)22によりシャフト20が回転駆動されるようになっている。
図3(b)に示される参照符号12c1は、シャフト18及び軸受18aを支持する補強材を示している。以上の構成により、モータ22を作動させることにより、内側回転体18が回転するようになっている。
【0024】
図4(a)は、内側回転体18が回転して、水中ポンプ14の吐出口14bに連結された管路16と内側回転体18の周壁18aの開口18a1が連通している状態を示した図(白抜き矢印は、脈動媒体の流れを図示)、
図4(b) は、内側回転体18が回転して、水中ポンプ14の吐出口14bに連結された管路16と内側回転体18の周壁18aの開口18a1の連通が遮断している状態を示した図である。
【0025】
好ましくは、
図3(c)に示されるように、内側回転体18の周壁18aの外面は、内側回転体18の回転時に外側ケーシング12の周壁12aの内面に摺動するように、ライナー24で被覆されている。或いは、外側ケーシング12の周壁12aの内面を、内側回転体18の周壁18aの外面に摺動するように、ライナー24で被覆してもよい。ライナー24は、作動時に発生する熱による外側ケーシング12及び内側回転体18の膨張に追従するように、外側ケーシング12及び内側回転体18と同じ桁数をもつ軟質材料で形成されている。ライナー24の形成材料としては好ましくは、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、4弗化エチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン樹脂、又は芳香族ポリアミド樹脂のいずれかが用いられる(外側ケーシング12及び内側回転体18の好適な形成材料である鉄の線膨張係数が1.6×10
-5であるのに対して、例えばフェノール樹脂の線膨張係数は2.0×10
-5であり、同じ桁数である)。
【0026】
図5は、ロータリーバルブ10が網下液室型湿式比重選別機に設置されている状態を模式的に示した斜視図である。ロータリーバルブ10が設置される網下液室型湿式比重選別機は、選別しようとする物質(以下「被選別物質」という)が投入される円筒形の選別室と、選別室の下方に位置し、選別媒体が充填される円筒形の脈動室と、選別室と脈動室との間に配置される網目と、選別室のほぼ中央に配置され、垂直方向に延びた投入管とを備えている。被選別物質が投入される投入管の下端は、網目の上方に位置している。また、選別室の側部に第1排出口、脈動室の底部に第2排出口がそれぞれ設けられている。
【0027】
ロータリーバルブ10は、投入管の内部に設置されている。すなわち、外側ケーシング12の外径が投入管の内径よりも小さくなるように、かつ、水中ポンプ14を投入管の上端よりも上方に位置させた状態で下端が脈動室内に位置するような高さを有するように形成された網下液室型湿式比重選別機を準備し、ロータリーバルブ10を投入管の内部に設置する。なお、ロータリーバルブ10の高さ(したがって、外側ケーシング12及び内側回転体18の高さ)は、設置される網下液室型湿式比重選別機の選別室の高さに応じて変動する。
【0028】
ロータリーバルブ10の作動について説明する。ロータリーバルブ10の水中ポンプ14は、駆動媒体(水中ポンプ14が海中に設置されている場合は、海水)を吸込口14aから吸い込み、吐出口14bから吐き出す。モータ22を駆動させると、内側回転体18が外側ケーシング12の内部で回転する。吐出口14bに連結された管路16と内側回転体18の周壁18aの開口18a1が合致する(
図4(a)参照)と、内側回転体19内に海水が流入する。内側回転体19内に流入した海水は、下面18cから網下液室型湿式比重選別機の脈動室内に流入し、脈動室の底部に当たって上昇流となり、網目を超えて選別室内の被選別物質に上昇流を付与することにより選別作業が行われる(
図5の白抜き矢印参照)。一方、管路16と内側回転体18の周壁18aの開口18a1が合致しない(
図4(b)参照)と、内側回転体19内に海水が流入しない。このようにして、内側回転体18内に海水を間欠的に流入させることができる。
【0029】
網下液室型湿式比重選別機の作動型式としては、種々のものが提案されているが、本発明者の開発した圧力センサ式(特許第5088784号)、スイッチ式(特許第5063318号)などの適当な型式を用いてよい。圧力センサ式について簡単に説明すると、選別室内の垂直方向に間隔を隔てた箇所に複数基の圧力センサを配置し、演算制御器を、圧力センサおよび駆動手段(例えば、選別機用モータ)とケーブルを介して接続する。そして、演算制御器において、圧力センサから送られた信号を、既存の演算方式(例えば、移動平均、偏差値など)に基づいて制御信号に変換し、この制御信号を選別機用モータに送って選別機用モータを回転駆動させるようになっている。また、スイッチ式では、選別室内の高さの異なる箇所に近接スイッチを配置し、演算制御器を、近接スイッチおよび選別機用モータとケーブルを介して接続する。そして、演算制御器において、近接スイッチから送られるオン/オフ信号を選別機用モータの制御信号に変換して選別機用モータを回転駆動させるようになっている。
【0030】
図6は、ロータリーバルブ10が海底資源の採掘作業に使用されている一例を示した模式図である。
図6に従って説明すると、まず最初に、海底に存在する鉱物資源を掘削手段を用いて採掘する。次いで、採掘された鉱物を、破砕手段(例えば、ハンマー型クラッシャー、コーン型クラッシャー)を用いて破砕する。破砕された鉱物は、管路を介して粒度調整手段(例えば、振動スクリーン、旋回篩い、トロンメル)に送られ、所定粒度に選別される。次いで、粒度が所定範囲内の鉱物を、有用な鉱石と不要な鉱石(脈石)に選別する湿式比重選別工程を実施する。
【0031】
湿式比重選別工程においては、ロータリーバルブ10が設置された網下液室型湿式比重選別機を使用する。網下駆動媒体室型湿式比重選別機による湿式比重選別工程は、以下のように行われる。粒度が所定範囲内の鉱物が、投入管を介して選別室内に投入される。次いで、液室内の液位を海水の入/出によって昇降させて選別室内の鉱物に海水の脈動を与えることによって、選別室内に層が徐々に形成され、重量物は、網目を通して脈動室の底部に落下する。このようにして、有用な鉱石と不要な脈石が選別される。そして、有用な鉱石の比重が不要な脈石の比重よりも軽い場合には、
図6に示されるように、鉱石は、選別室の側部に設けられた第1排出口から管路を介して次工程に送られ、脈石は、脈動室の底部に設けられた第2排出口から海底に廃棄される。一方、有用な鉱石の比重が不要な脈石の比重よりも重い場合には、鉱石は、第2排出口から管路を介して次工程に送られ、脈石は、第1排出口から海底に廃棄される。以上の湿式比重選別工程では、比重選別する鉱物の比重が重いので、選別室の上方が開放していても、鉱物が選別室外に流出するおそれはない。
【0032】
なお、網下液室型湿式比重選別機は、必ずしも海底に堅固に固定する必要はなく、フロート(図示せず)を用いて海底から浮かせ、アンカー(図示せず)を用いて海底に係留してもよい。また、海流の影響を回避するため、
図6に示されるように、網下液室型湿式比重選別機の周囲に海流防護壁を設置してもよい。
【0033】
上述のようにして選別された鉱石は、管路を介して海上に圧送される。圧送には、通常のポンプ(図示せず)を用いてよい。このようにして海上に圧送された鉱石は、所望の手段で精錬所に搬送され、種々の用途に供される。
【0034】
図1~
図5に示されるロータリーバルブ10では、外側ケーシング12の周壁12aの下面12cが開放しているが、
図7に示されるように、外側ケーシング12の周壁12aの下面に下壁12´cを設置し、下壁12´cの適所に開口部12´c1を設けてもよい。この形態では、ロータリーバルブ10を投入管の内部に設置する必要はなく、網下液室型湿式比重選別機の外部にロータリーバルブ10を配置し、放出管路の一端を開口12´c1に連結し、他端を投入管を通して脈動室内に配置することによって、脈動媒体の入/出が行われる(
図8参照)。
図8の白抜き矢印は、内側回転体19内に流入した海水が開口部12´c1、次いで放出管路を経て脈動室内に流入し、脈動室の底部に当たって上昇流となり、網目を超えて選別室内の被選別物質に上昇流を付与することにより選別作業が行われる状態を模式的に示したものである。
【0035】
前記実施形態では、外側ケーシング12の下面12cから同一高さの個所に、90度間隔を隔てて4基の水中ポンプ14が設置されているが、水中ポンプ14の設置個所及び設置基数は、これに限定されるものではない。例えば、
図9(a)に示される形態では、外側ケーシング12の下面12cから異なる高さの個所(それぞれ、H、2H、3H)に、120度間隔を隔てて3基の水中ポンプ14が設置されている。また、
図9(b)に示される形態では、外側ケーシング12の下面12cから高さHの対向個所に2基の水中ポンプ14、外側ケーシング12の下面12cから高さ2Hの対向個所に2基の水中ポンプ14(計4基)がそれぞれ配置されている。
【0036】
好ましくは、外側ケーシング12の周壁12aの開口12a1と水中ポンプ14の吐出口14bとを連結する管路16の途中に、海水の圧送力を高めるためのチャンバ26が配置される(
図10(a)参照)。
【0037】
図10(b)~
図10(d)は、チャンバ26の一形態を示した図である。すなわち、チャンバ26は、円筒形の側壁26a、側壁の上端の上壁26b、及び側壁の下端の下壁26cを有し、下壁26cが穴26c1を介して管路16と連通している。チャンバ16の内部には、側壁26a内を垂直方向に摺動する移動板26dが配置されており、移動板26dと上壁26bとは、ばね26eで連結されている。水中ポンプ14の作動時において、管路16と内側回転体18の周壁18aの開口18a1の連通が遮断されている場合には、水中ポンプ14の吐出口14bから吐出された海水は、内側回転体18内への流入が妨げられるので、専らチャンバ26内に流入し、ばね26eのばね力に抗して移動板26dが上壁26bの方へ付勢される(
図10(c)参照)。一方、管路16と内側回転体18の周壁18aの開口18a1が連通している場合には、水中ポンプ14の吐出口14bから吐出された海水が、内側回転体18の周壁18aの開口18a1から内側回転体18内に流入するとともに、チャンバ26内の海水が、ばね26eのばね力によってチャンバ26内から押し出され、開口18a1から内側回転体18内に流入する(
図10(d)参照)。これにより、内側回転体18内への海水の圧送力が増大する。
【0038】
図10(e)~
図10(g)は、チャンバ26の別形態を示した図である。別形態のチャンバ26は、ばね26e付きの移動板26dの代わりに、膨張体26´dが配置される点を除いて、前記形態のチャンバ26と実質的に同一の構成を有している。膨張体26´dは、いわゆる風船状のもので、可撓性材料(例えば、天然ゴム又は合成ゴム)で形成されている。この形態のチャンバ26では、管路16と開口18a1との連通遮断時には、内側回転体18内への海水の流入が妨げられ、専ら膨張体26´d内への海水の流入により膨張体26´dが膨張する(
図10(f)参照)が、管路16と開口18a1が連通している場合には、膨張体26´dが収縮することにより、膨張体26´d内(従って、チャンバ26内)の海水が押し出され、開口18a1から内側回転体18内に流入する(
図10(g)参照)。これにより、前記形態のチャンバ26と同様に、内側回転体18内への海水の圧送力が増大する。
【0039】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0040】
例えば、前記実施形態では、ロータリーバルブ10が設置される網下液室型湿式比重選別機が専ら海底に存在する鉱物資源の採取に関連して説明されているが、ロータリーバルブ10が設置される網下液室型湿式比重選別機を、例えば湖底に存在する鉱物資源の採取に使用してもよい(その場合は、脈動媒体は、海水ではなく、淡水となる)。
【0041】
図示されているロータリーバルブ10の細部の寸法及び形状は、単なる例示的なものにすぎない。例えば、
図1、
図3、及び
図4に示されるロータリーバルブ10の高さは比較的小さめに描かれているが、
図5に示されるロータリーバルブ10の高さは、設置個所の状況に応じて、大きくなっている。また、チャンバ26は円筒形の形状を有するものとして図示されているが、他の適当な形状(例えば、角筒形)を採用してもよい。
図10では、チャンバ26が特定の管路16にのみ設置された状態で図示されているが、他の所望の管路16にチャンバ26を設置してもよい。
【0042】
なお、
図5ではロータリーバルブ10の下面から、
図8では放出管路の下端から、脈動媒体が脈動室内に直接放出されるように図示されているが、放出される脈動媒体が過度に乱流になるような場合には、ロータリーバルブ10の下面や放出管路の下端に、放出される脈動媒体を整流にするための液室を設置してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 網下液室型湿式比重選別機用ロータリーバルブ
12 外側ケーシング
12a 周壁
12a1 開口
12b 上壁
12c 下面
12c1 補強材
12´c 下壁
12´c1 開口部
14 水中ポンプ
14a 吸込口
14b 吐出口
16 管路
18 内側回転体
18a 周壁
18a1 開口
18b 上壁
18c 下面
20 シャフト
20a 軸受
22 駆動手段(モータ)
24 ライナー
26 チャンバ
26a 側壁
26b 上壁
26c 下壁
26c1 穴
26d 移動板
26e ばね
26´d 膨張体