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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039961
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ナノリボン及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20230314BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20230314BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230314BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20230314BHJP
   C07F 3/06 20060101ALI20230314BHJP
   C07F 1/08 20060101ALI20230314BHJP
   C07F 15/04 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C08G61/12
H10K10/46
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
C07F3/06
C07F1/08 C
C07F15/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193527
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2019036472の分割
【原出願日】2019-02-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「グラフェンナノリボンの合成・評価とシミュレーション」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】實宝 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】大伴 真名歩
(72)【発明者】
【氏名】林 宏暢
(72)【発明者】
【氏名】山田 容子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より多様な電子状態を実現することができるナノリボン及び半導体装置を提供する。
【解決手段】ナノリボンの一態様は、金属原子を含むポルフィリン錯体で表される構造を含む複数の第1サブユニットが並んだ構造を含む第1ユニットと、金属原子を含まないポルフィリン構造を含む複数の第2サブユニットが並んだ構造を含む第2ユニットとを有し、前記第1ユニットの端部と前記第2ユニットの端部との間の炭素-炭素結合により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが互いに接合されているナノリボン構造体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(10)で表される構造を含む複数の第1サブユニットが並んだ構造を含む第1ユニットと、
下記構造式(11)で表される構造を含む複数の第2サブユニットが並んだ構造を含む第2ユニットと、
を有し、
前記第1ユニットの端部と前記第2ユニットの端部との間の炭素-炭素結合により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが互いに接合されていることを特徴とするナノリボン。
(Mは金属原子であり、
Aは、水素原子又はアリール基である。)
【化1】
【化2】
【請求項2】
下記構造式(10)で表される構造を含む複数の第1サブユニットが並んだ構造を含む第1ユニットと、
下記構造式(12)で表される構造を含む複数の第2サブユニットが並んだ構造を含む第2ユニットと、
を有し、
前記第1ユニットの端部と前記第2ユニットの端部との間の炭素-炭素結合により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが互いに接合されていることを特徴とするナノリボン。
(M、Mは互いに異なる金属原子であり、
Aは、水素原子又はアリール基である。)
【化3】
【化4】
【請求項3】
前記第1ユニットは、下記構造式(13)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のナノリボン。
(Mは金属原子であり、
g、p、q、r、s、t及びuは、相互に独立して、1以上の整数であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、相互に独立して、水素原子、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであり、
Aは、水素原子又はアリール基である。)
【化5】
【請求項4】
前記第1ユニットは、下記構造式(13)で表される構造を有することを特徴とする請求項2に記載のナノリボン。
(Mは金属原子であり、
g、p、q、r、s、t及びuは、相互に独立して、1以上の整数であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、相互に独立して、水素原子、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであり、
Aは、水素原子又はアリール基である。)
【化6】
【請求項5】
前記第1サブユニット及び前記第2サブユニットのうち少なくとも一方は、更に、下記構造式(16)で表される構造を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項1又は2に記載のナノリボン。
(p、r及びsは、相互に独立して、1以上の整数であり、
、R、R及びRは、相互に独立して、水素原子、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかである。)
【化7】
【請求項6】
基板上に設けられた請求項1乃至5のいずれか1項に記載のナノリボンと、
前記ナノリボンに接続された電極と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノリボン及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの微細化の限界を克服するための材料として、電荷の移動度が極めて高い2次元材料であるグラフェンが注目されている。グラフェンは、室温でも100,000cm/Vs程度の高い移動度を持ち、更に電子、ホールの移動度に差が無いことから、将来の電子デバイスにおけるチャネル材料として期待されている。しかし、バンドギャップがないため、そのままではオン・オフ比が小さく、スイッチング素子としての利用は難しい。
【0003】
その一方で、ナノサイズのグラフェンは、エッジにあるC原子の個数とエッジの内側にあるC原子の個数との差が小さく、グラフェン自体の形状やエッジの形状の影響が大きく、バルク状のグラフェンとは大きく異なる特性を示す。ナノサイズのグラフェンとして、幅が数nmのリボン形状の擬一次元のグラフェン、所謂、グラフェンナノリボン(graphene nanoribbon:GNR)が知られている。GNRは、例えば、前駆体の化合物を重合することにより合成することができる。この方法はボトムアップ合成又はボトムアップ手法とよばれることがある。GNRの特性は、エッジ構造及びリボン幅によって大きく変化する。
【0004】
GNRのエッジ構造には、C原子が2原子周期で配列したアームチェアエッジ及びC原子がジグザグ状に配列したジグザグエッジの2種類がある。アームチェアエッジ型のGNR(AGNR)では、量子閉じ込め効果及びエッジ効果によって有限のバンドギャップが広がるため、AGNRは半導体的な性質を示す。一方、ジグザグエッジ型のGNR(ZGNR)は金属的な性質を示す。
【0005】
GNRの特性は、エッジ修飾基によっても大きく変化する。そこで、エッジ修飾基が異なるGNRを接合したヘテロ接合半導体装置も提案されている。
【0006】
しかしながら、従来の前駆体分子を用いて製造されるGNRの電子状態は限定的であり、より多様な電子状態を実現することが困難である。例えば、従来のGNRの導電型及びバンドギャップを多様化することは困難である。
【0007】
また、ポルフィリン環が連続したポルフィリンテープ又はテープポルフィリンとよばれるナノリボンも知られているが、このナノリボンの導電型及びバンドギャップを多様化することも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-027190号公報
【特許文献2】特開2007-194360号公報
【特許文献3】特開2016-090510号公報
【特許文献4】特開2015-191975号公報
【特許文献5】特開2016-194424号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Cai et al.,Nature 466(2010)470
【非特許文献2】A.Tsuda,A.Osuka,Science 293(2001)79
【非特許文献3】T.Q.Nguyen et al.,Physical review B 77(2008)195307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より多様な電子状態を実現することができるナノリボン及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
化合物の一態様は、下記構造式(1)又は(2)で表される。
(Mは金属原子であり、Xは、ハロゲン原子であり、p、q、r、s、t及びuは、相互に独立して、1以上の整数であり、R、R、R、R、R、R、R及びRは、相互に独立して、水素原子、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであり、Aは、水素原子又はアリール基である。)
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
化合物の製造方法の一態様では、下記構造式(3)で表される第1の化合物、下記構造式(4)で表される第2の化合物及び下記構造式(5)で表される第3の化合物をカップリングし、下記構造式(6)で表される第4の化合物を合成する。
(Xは、ハロゲン原子であり、p、q、r、s、t及びuは、相互に独立して、1以上の整数であり、R、R、R、R、R、R、R及びRは、相互に独立して、水素原子、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであり、Aは、水素原子又はアリール基である。)
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
ナノリボンの一態様は、下記構造式(8)又は(9)で表される構造を有する。
(Mは金属原子であり、g、h、p、q、r、s、t及びuは、相互に独立して、1以上の整数であり、R、R、R、R、R、R、R及びRは、相互に独立して、水素原子、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであり、Aは、水素原子又はアリール基である。)
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
ナノリボンの他の一態様は、下記構造式(10)で表される構造を有する複数の第1サブユニットが並んだ構造を含む第1ユニットと、下記構造式(11)又は(12)で表される構造を有する複数の第2サブユニットが並んだ構造を含む第2ユニットと、を有し、前記第1ユニットの端部と前記第2ユニットの端部との間の炭素-炭素結合により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが互いに接合されている。
(M、Mは互いに異なる金属原子であり、Aは、水素原子又はアリール基である。)
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
ナノリボンの製造方法の一態様では、上記の化合物を脱ハロゲン化反応して重合体を得、前記重合体を脱水素環化反応させる。
【0027】
半導体装置の一態様は、基板上に設けられた上記のナノリボンと、前記ナノリボンに接続された電極と、を有する。
【発明の効果】
【0028】
開示の技術によれば、より多様な電子状態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施形態に係るGNRを示す図である。
図2A】第1の実施形態に係るGNRのバンド構造を示す図である。
図2B】水素終端GNRのバンド構造を示す図である。
図3】水素終端GNRを示す図である。
図4A】第1の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その1)である。
図4B】第1の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その2)である。
図5】第1の実施形態に係るGNRの製造に用いる前駆体分子の製造方法を示す図である。
図6】第2の実施形態に係るGNRを示す図である。
図7A】第2の実施形態に係るGNRのバンド構造を示す図(M=Zn)である。
図7B】第2の実施形態に係るGNRのバンド構造を示す図(M=Cu)である。
図7C】第2の実施形態に係るGNRのバンド構造を示す図(M=Ni)である。
図8A】第2の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その1)である。
図8B】第2の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その2)である。
図9】第2の実施形態に係るGNRの製造に用いる前駆体分子の製造方法を示す図である。
図10】第3の実施形態に係るGNRを示す図である。
図11A】第3の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その1)である。
図11B】第3の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その2)である。
図12】第4の実施形態に係るGNRを示す図である。
図13A】第4の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その1)である。
図13B】第4の実施形態に係るGNRの製造方法を示す図(その2)である。
図14】第5の実施形態に係るナノリボンを示す図である。
図15A】第5の実施形態に係るナノリボンの製造方法を示す図(その1)である。
図15B】第5の実施形態に係るナノリボンの製造方法を示す図(その2)である。
図16】第6の実施形態に係るナノリボンを示す図である。
図17A】第6の実施形態に係るナノリボンの製造方法を示す図(その1)である。
図17B】第6の実施形態に係るナノリボンの製造方法を示す図(その2)である。
図18A】第7の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図18B】第7の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図19】第7の実施形態に含まれるGNRのバンド構造を示す図である。
図20A】第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図20B】第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図20C】第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図20D】第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図21A】第8の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図21B】第8の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図22】第8の実施形態に含まれるGNRのバンド構造を示す図である。
図23A】第8の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図23B】第8の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図23C】第8の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図23D】第8の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態はグラフェンナノリボン(GNR)に関する。図1は、第1の実施形態に係るGNRを示す図である。
【0032】
第1の実施形態に係るGNR100は、図1に示すように、ポルフィン環111にアントラセン112が2列結合したサブユニット113が並んだ構造を有する。すなわち、GNR100は、上記構造式(9)において、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれも水素(H)であり、AがHである構造を有する。GNR100は、ポルフィリンの化学構造を含んでいる。
【0033】
ここで、GNR100のバンド構造について説明する。図2A及び図2Bは、第一原理計算によって予測したGNRのバンド構造を示す図である。図2Aは、GNR100のバンド構造を示し、図2Bは、図3に示す水素終端GNR150のバンド構造を示す。
【0034】
図2Bに示すように、図3に示す水素終端GNR150は真性(i型)半導体の性質を示し、そのバンドギャップは1.6eVである。これに対し、図2Aに示すように、GNR100は真性(i型)半導体の性質を示し、そのバンドギャップは0.5eVであり、水素終端GNR150のバンドギャップの1/3以下である。このように、GNR100は、水素終端GNR150とは異なる電子状態を有し、電子状態の多様化に寄与することができる。そして、GNR100は種々の半導体装置への適用性に優れている。
【0035】
次に、GNR100の製造方法について説明する。図4A図4Bは、GNR100の製造方法を工程順に示す図である。
【0036】
先ず、図4Aに示す前駆体分子120を準備する。前駆体分子120は下記構造式(1´)で表される。前駆体分子120のXはハロゲン原子、例えば臭素(Br)原子であり、アントラセン122の10位の炭素原子130に結合している。アントラセン122の9位の炭素原子129がポルフィン環121と結合している。
【0037】
【化12】
【0038】
次いで、前駆体分子120を、加熱された触媒金属基板の(111)面上に真空蒸着する。触媒金属基板としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等の基板が用いられる。前駆体分子120は、触媒金属基板の(110)面又は(100)面上に真空蒸着してもよく、(788)面等の高指数面上に真空蒸着してもよい。Au基板の(111)面(以下、「Au(111)面」ということがある)を蒸着面として用いる場合、超高真空中で清浄化されたAu(111)面の温度を、例えば200℃~300℃程度に保持し、前駆体分子120の真空蒸着を行う。このときの蒸着量は、1分子層程度になるように調節することが望ましい。この温度域では、Au(111)面に吸着された前駆体分子120の間で臭化水素(HBr)が脱離する脱ハロゲン化反応が起こり、前駆体分子120群の重合が進行する。この結果、図4Bに示す重合体140が形成される。
【0039】
その後、重合体140が形成されたAu(111)面を、真空中でより高温に、例えば350℃~450℃程度の温度に加熱する。この温度域では、重合体140において、前駆体分子120内及び前駆体分子120間で水素(H)が脱離する脱水素環化反応が起こり、芳香族化が進行する。この結果、第1の実施形態に係るGNR100が形成される。
【0040】
このように、第1の実施形態に係るGNR100は、ボトムアップ合成により製造することができる。
【0041】
次に、前駆体分子120の製造方法について説明する。図5は、GNRの製造に用いる前駆体分子の製造方法を示す図である。この製造方法では、先ず、いずれもハロゲン部位及びホルミル基を有するアリール基151及び152、並びに2,2´-ジピロメタン153を有機溶媒中で攪拌し、その後、酸を加えることで縮合反応を生じさせる。次いで、酸化剤を加え、室温で攪拌するか、又は加熱しながら攪拌することで、酸化反応を進行させる。この結果、ポルフィリン154が得られる。
【0042】
図5において、Xは、ハロゲン原子であり、p、q、r、s、t及びuは、相互に独立して、1以上の整数であり、R、R、R、R、R、R、R及びRは、相互に独立して、水素原子、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであり、Aは、水素原子又はアリール基である。p、q、r、s、t及びuは、互いに相違していてもよく、このうちの2以上が同一であってもよい。R~Rは、互いに相違していてもよく、このうちの2以上が同一であってもよい。R~Rのアルキル部位及びフェニル部位は置換基を有してもよい。アルキル部位は直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。アルキル部位の炭素数は、例えば1~20である。アルキル部位の例として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロプル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基が挙げられる。置換基の例として、例えば、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシ基及びスルフォニル基が挙げられる。ハロゲン原子の例として、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。Aのアリール基が置換基を有してもよい。
【0043】
有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム等のハロゲン系溶媒に酸触媒を混合したものを用いることができる。酸触媒としては、例えばクロラニル、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸又は2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン等を用いることができる。酸としては、例えばトリフルオロ酢酸、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体又はプロピオン酸を用いることができる。酸化剤としては、例えばクロラニル又は2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン等を用いることができる。
【0044】
前駆体分子120を製造する場合、アリール基151及び152して、上記構造式(3)及び(4)において、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHである化合物を用いる。すなわち、アリール基151及び152は下記構造式(3´)で表される。また、2,2´-ジピロメタン153として、AがHである化合物を用いる。すなわち、2,2´-ジピロメタン153は下記構造式(5´)で表される。
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
以下、GNR100のように、上記構造式(11)で表される構造が並んだGNRをポルフィリンGNRということがある。
【0048】
なお、上記構造式(9)、(3)、(4)、(11)において、p、q、r、s、t及びuが、相互に独立して、2以上の整数であってもよく、R、R、R、R、R、R、R及びRが、相互に独立して、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであってもよく、Aがアリール基であってもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態はGNRに関する。図6は、第2の実施形態に係るGNRを示す図である。
【0050】
第2の実施形態に係るGNR200は、図6に示すように、金属原子Mを含むポルフィン環211にアントラセン212が2列結合したサブユニット213が並んだ構造を有する。すなわち、GNR200は、上記構造式(8)において、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHあり、AがHである構造を有する。金属原子Mは、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅(Cu)又は亜鉛(Zn)等である。金属元素Mは、ポルフィリン環に配位することができれば、これらに限定されない。GNR200は、ポルフィリンの金属錯体の化学構造を含んでいる。
【0051】
ここで、GNR200のバンド構造について説明する。図7A図7Cは、第一原理計算によって予測したGNRのバンド構造を示す図である。図7Aは、金属原子MがZnの場合のGNR200のバンド構造を示し、図7Bは、金属原子MがCuの場合のGNR200のバンド構造を示し、図7Cは、金属原子MがNiの場合のGNR200のバンド構造を示す。
【0052】
図7Aに示すように、金属原子MがZnの場合、GNR200は真性(i型)半導体の性質を示し、そのバンドギャップは0.5eVであり、水素終端GNR150のバンドギャップ(1.6eV)の1/3以下である。図7B及び図7Cに示すように、金属原子MがCu又はNiの場合、フェルミ準位Eが価電子帯底よりも高く、GNR200はn型半導体の性質を示す。このように、GNR200は水素終端GNR150とは異なる電子状態を有し、金属原子Mの種類によって導電型及びバンドギャップが相違する。従って、GNR200は電子状態の多様化に寄与することができ、種々の半導体装置への適用性に優れている。
【0053】
次に、GNR200の製造方法について説明する。図8A図8Bは、GNR200の製造方法を工程順に示す図である。
【0054】
先ず、図8Aに示す前駆体分子220を準備する。前駆体分子220は下記構造式(2´)で表される。前駆体分子220のXはハロゲン原子、例えばBr原子であり、アントラセン222の10位の炭素原子230に結合している。アントラセン222の9位の炭素原子229がポルフィン環221と結合している。また、ポルフィン環221のN原子には金属原子Mが結合されている。すなわち、前駆体分子220は金属錯体である。金属原子Mは、例えば、Mg、Fe、Co、Ni、Ti、Cu又はZn等である。
【0055】
【化15】
【0056】
次いで、前駆体分子220を、加熱された触媒金属基板の(111)面上に真空蒸着する。触媒金属基板としては、Au、Ag、Cu等の基板が用いられる。前駆体分子220は、触媒金属基板の(110)面又は(100)面上に真空蒸着してもよく、(788)面等の高指数面上に真空蒸着してもよい。Au(111)面を蒸着面として用いる場合、超高真空中で清浄化されたAu(111)面の温度を、例えば200℃~300℃程度に保持し、前駆体分子220の真空蒸着を行う。このときの蒸着量は、1分子層程度になるように調節することが望ましい。この温度域では、Au(111)面に吸着された前駆体分子220の間でHBrが脱離する脱ハロゲン化反応が起こり、前駆体分子220群の重合が進行する。この結果、図8Bに示す重合体240が形成される。
【0057】
その後、重合体240が形成されたAu(111)面を、真空中でより高温に、例えば350℃~450℃程度の温度に加熱する。この温度域では、重合体240において、前駆体分子220内及び前駆体分子220間でHが脱離する脱水素環化反応が起こり、芳香族化が進行する。この結果、第2の実施形態に係るGNR200が形成される。
【0058】
このように、第2の実施形態に係るGNR200は、ボトムアップ合成により製造することができる。
【0059】
次に、前駆体分子220の製造方法について説明する。図9は、GNRの製造に用いる前駆体分子の製造方法を示す図である。この製造方法では、先ず、図5に示す前駆体分子の製造方法に倣って、ポルフィリン154を準備する。次いで、ポルフィリン154及び金属原子Mの金属塩を有機溶媒中で攪拌する。この結果、ポルフィリン154のN原子に金属原子Mが結合してポルフィリン金属錯体255が得られる。攪拌は室温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。
【0060】
有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン・メタノール混合溶媒又はクロロホルム・メタノール混合溶媒等を用いることができる。
【0061】
金属塩としては、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)又はタリウム(Tl)等の塩を用いることができる。具体的には、金属原子MがZnの前駆体分子を製造する場合、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛又は塩化亜鉛を用いることができる。金属原子MがCuの前駆体分子を製造する場合、硫酸銅、酢酸銅、硝酸銅又は塩化銅(II)等を用いることができる。金属原子MがNiの前駆体分子を製造する場合、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル又は塩化ニッケル等を用いることができる。金属原子MがTiの前駆体分子を製造する場合、チタノセンジクロリド又は酸化チタンビスアセチルアセトナート等を用いることができる。ただし、酸化チタンビスアセチルアセトナートを用いた場合は、金属原子Mは、Tiそのものではなく、Ti酸化物(TiO)となる。金属原子MがFeの前駆体分子を製造する場合、硫酸鉄、酢酸鉄又は塩化鉄等を用いることができる。金属原子MがMgの前駆体分子を製造する場合、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム又は塩化マグネシウム等を用いることができる。ただし、金属塩はこれらに限定されない。
【0062】
前駆体分子220を製造する場合、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHであり、AがHであるポルフィリン154を準備する。
【0063】
以下、GNR200のように、上記構造式(10)で表される構造が並んだGNRをポルフィリン金属錯体GNRということがある。
【0064】
なお、上記構造式(8)、(10)において、p、q、r、s、t及びuが、相互に独立して、2以上の整数であってもよく、R、R、R、R、R、R、R及びRが、相互に独立して、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであってもよく、Aがアリール基であってもよい。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態はGNRに関する。図10は、第3の実施形態に係るGNRを示す図である。
【0066】
第3の実施形態に係るGNR300は、図10に示すように、ポルフィリンGNR部301及びポルフィリン金属錯体GNR部302を含む。ポルフィリンGNR部301は、複数のサブユニット113が並んだ構造を含む。すなわち、ポルフィリンGNR部301は、上記構造式(14)において、hが1以上の整数、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHあり、AがHである構造を有する。ポルフィリン金属錯体GNR部302は、複数のサブユニット213が並んだ構造を含む。すなわち、ポルフィリン金属錯体GNR部302は、上記構造式(13)において、gが1以上の整数、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHあり、AがHである構造を有する。サブユニット213は上記構造式(10)で表される構造をその一部に含み、サブユニット113は上記構造式(11)で表される構造をその一部に含む。ポルフィリン金属錯体GNR部302は第1ユニットの一例であり、ポルフィリンGNR部301は第2ユニットの一例である。そして、ポルフィリンGNR部301とポルフィリン金属錯体GNR部302とが、両者の端部同士の炭素-炭素結合により互いに接合されている。GNR300は、ポルフィリンの化学構造及びポルフィリンの金属錯体の化学構造を含んでいる。
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
第3の実施形態によれば、電子状態が異なるポルフィリンGNR部301とポルフィリン金属錯体GNR部302とのヘテロ接合を実現することができる。従って、GNR300は電子状態の多様化に寄与することができ、種々の半導体装置への適用性に優れている。
【0070】
次に、GNR300の製造方法について説明する。図11A図11Bは、GNR300の製造方法を工程順に示す図である。
【0071】
先ず、図11Aに示すように、第1の実施形態に係るGNR100を触媒金属基板上に形成する。次いで、図11Bに示すように、GNR100上に、GNR100のポルフィリン金属錯体GNR部302の形成予定領域を露出し、残部を覆うマスク350を形成する。その後、ポルフィリン金属錯体GNR部302に含ませる金属原子Mの金属塩を溶解させた有機溶媒中に、マスク350が形成されたGNR100を触媒金属基板と共に浸漬し、攪拌する。この結果、GNR100のマスク350から露出している領域において、ポルフィン環111のN原子に金属原子Mが結合してポルフィリン金属錯体GNR部302が形成される。また、GNR100の残部がポルフィリンGNR部301となる。攪拌は室温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。続いて、触媒金属基板をポルフィリンGNR部301及びポルフィリン金属錯体GNR部302と共に有機溶媒から取り出し、マスク350を除去する。
【0072】
このようにして、第3の実施形態に係るGNR300を製造することができる。
【0073】
ポルフィリン金属錯体GNR部302に含ませる金属原子Mの金属塩としては、例えば、図9に示す前駆体分子の製造方法において用いる金属塩と同様のものを用いることができる。マスク350の材料及び有機溶媒の種類は限定されず、マスク350の材料としてポリメタクリル酸メチル樹脂(poly(methyl methacrylate):PMMA)を用い、有機溶媒として酢酸水溶液を用いることが好ましい。
【0074】
第3の実施形態では、上記のように、ポルフィリン金属錯体GNR部302及びポルフィリンGNR部301が、それぞれ、上記構造式(13)、(14)において、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHあり、AがHである構造を有する。ただし、p、q、r、s、t及びuが、相互に独立して、2以上の整数であってもよく、R、R、R、R、R、R、R及びRが、相互に独立して、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであってもよく、Aがアリール基であってもよい。ポルフィリン金属錯体GNR部302及びポルフィリンGNR部301が周期的に並んでいてもよい。
【0075】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態はGNRに関する。図12は、第4の実施形態に係るGNRを示す図である。
【0076】
第4の実施形態に係るGNR400は、図12に示すように、ポルフィリン金属錯体GNR部401及びポルフィリン金属錯体GNR部402を含む。ポルフィリン金属錯体GNR部401は、金属原子Mを含むポルフィン環411aにアントラセン412が2列結合した複数のサブユニット413aが並んだ構造を有する。すなわち、ポルフィリン金属錯体GNR部401は、上記構造式(13)において、gが1以上の整数、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHあり、AがHである構造を有する。ポルフィリン金属錯体GNR部402は、金属原子Mを含むポルフィン環411bにアントラセン412が2列結合した複数のサブユニット413bが並んだ構造を有する。すなわち、ポルフィリン金属錯体GNR部402が上記構造式(15)において、hが1以上の整数、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHあり、AがHである構造を有する。サブユニット413aは上記構造式(10)で表される構造をその一部に含み、サブユニット413bは上記構造式(12)で表される構造をその一部に含む。金属原子M及びMは、例えば、Mg、Fe、Co、Ni、Ti、Cu又はZn等であり、互いに相違している。金属元素M及びMは、ポルフィリン環に配位することができれば、これらに限定されない。ポルフィリン金属錯体GNR部401は第1ユニットの一例であり、ポルフィリン金属錯体GNR部402は第2ユニットの一例である。そして、ポルフィリン金属錯体GNR部401とポルフィリン金属錯体GNR部402とが、両者の端部同士の炭素-炭素結合により互いに接合されている。GNR400は、ポルフィリンの金属錯体の化学構造を含んでいる。
【0077】
【化18】
【0078】
第4の実施形態によれば、ポルフィリン金属錯体GNR部401とポルフィリン金属錯体GNR部402とのヘテロ接合を実現することができる。従って、GNR400は電子状態の多様化に寄与することができ、種々の半導体装置への適用性に優れている。
【0079】
次に、GNR400の製造方法について説明する。図13A図13Bは、GNR400の製造方法を工程順に示す図である。ここでは、金属原子Mが金属原子Mよりも、ポルフィン環のN原子と結合しやすいものとする。
【0080】
先ず、図13Aに示すように、GNR200の製造方法に倣って、ポルフィン環のN原子に金属原子Mが結合したポルフィリン金属錯体GNR460を触媒金属基板上に形成する。次いで、図13Bに示すように、ポルフィリン金属錯体GNR460上に、ポルフィリン金属錯体GNR460のポルフィリン金属錯体GNR部402の形成予定領域を露出し、残部を覆うマスク450を形成する。その後、ポルフィリン金属錯体GNR部402に含ませる金属原子Mの金属塩を溶解させた有機溶媒中に、マスク450が形成されたポルフィリン金属錯体GNR460を触媒金属基板と共に浸漬し、攪拌する。この結果、ポルフィリン金属錯体GNR460のマスク450から露出している領域において、金属原子Mに代わって金属原子MがN原子に結合してポルフィリン金属錯体GNR部402が形成される。また、ポルフィリン金属錯体GNR460の残部がポルフィリン金属錯体GNR部401となる。攪拌は室温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。続いて、触媒金属基板をポルフィリン金属錯体GNR部401及びポルフィリン金属錯体GNR部402と共に有機溶媒から取り出し、マスク450を除去する。
【0081】
このようにして、第4の実施形態に係るGNR400を製造することができる。
【0082】
ポルフィリン金属錯体GNR部402に含ませる金属原子Mの金属塩としては、例えば、図9に示す前駆体分子の製造方法において用いる金属塩と同様のものを用いることができる。マスク450の材料及び有機溶媒の種類は限定されず、マスク450の材料としてPMMAを用い、有機溶媒として酢酸水溶液を用いることが好ましい。
【0083】
金属原子Mが金属原子Mよりも、ポルフィン環のN原子に結合しやすい場合には、金属原子Mがポルフィン環のN原子に結合したポルフィリン金属錯体GNRを準備し、金属原子Mの一部を金属原子Mで置換すればよい。この場合も、ポルフィリン金属錯体GNR部401に含ませる金属原子Mの金属塩としては、例えば、図9に示す前駆体分子の製造方法において用いる金属塩と同様のものを用いることができる。
【0084】
第4の実施形態では、上記のように、ポルフィリン金属錯体GNR部401及びポルフィリン金属錯体GNR部402が、それぞれ、上記構造式(13)、(15)において、p、q、r、s、t及びuがいずれも1であり、R、R、R、R、R、R、R及びRがいずれもHあり、AがHである構造を有する。ただし、p、q、r、s、t及びuが、相互に独立して、2以上の整数であってもよく、R、R、R、R、R、R、R及びRが、相互に独立して、置換基、アルキル部位、フェニル部位又はハロゲン原子のいずれかであってもよく、Aがアリール基であってもよい。ポルフィリン金属錯体GNR部401及びポルフィリン金属錯体GNR部402が周期的に並んでいてもよい。
【0085】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態はポルフィリンをサブユニットとするナノリボンに関する。図14は、第5の実施形態に係るナノリボンを示す図である。
【0086】
第5の実施形態に係るナノリボン500は、図14に示すように、ポルフィリンナノリボン部501及びポルフィリン金属錯体ナノリボン部502を含む。ポルフィリンナノリボン部501は、ポルフィン環511aのサブユニットが並んだ構造を有する。ポルフィリン金属錯体ナノリボン部502は、ポルフィン環511bのサブユニットが並んだ構造を有する。ポルフィン環511bのN原子に金属原子Mが結合している。ポルフィリン金属錯体ナノリボン部502は第1ユニットの一例であり、ポルフィリンナノリボン部501は第2ユニットの一例である。そして、ポルフィリンナノリボン部501とポルフィリン金属錯体ナノリボン部502とが、両者の端部同士の炭素-炭素結合により互いに接合されている。ナノリボン500は、ポルフィリンの化学構造及びポルフィリンの金属錯体の化学構造を含んでいる。
【0087】
第5の実施形態によれば、ポルフィリンナノリボン部501とポルフィリン金属錯体ナノリボン部502とのヘテロ接合を実現することができる。従って、ナノリボン500は電子状態の多様化に寄与することができ、種々の半導体装置への適用性に優れている。
【0088】
次に、ナノリボン500の製造方法について説明する。図15A図15Bは、ナノリボン500の製造方法を工程順に示す図である。
【0089】
先ず、図15Aに示すように、ポルフィリンナノリボン560を触媒金属基板上に形成する。ポルフィリンナノリボン560は、例えば、p、q、r、s、t及びuがいずれも0で、AがHのポルフィリン154を重合することで触媒金属基板上に合成することができる。ポルフィリンナノリボン560は、例えば非特許文献2及び非特許文献3に記載されている。次いで、図15Bに示すように、ポルフィリンナノリボン560上に、ポルフィリンナノリボン560のポルフィリン金属錯体ナノリボン部502の形成予定領域を露出し、残部を覆うマスク550を形成する。その後、ポルフィリン金属錯体ナノリボン部502に含ませる金属原子Mの金属塩を溶解させた有機溶媒中に、マスク550が形成されたポルフィリンナノリボン560を触媒金属基板と共に浸漬し、攪拌する。この結果、ポルフィリンナノリボン560のマスク550から露出している領域において、ポルフィン環のN原子に金属原子Mが結合してポルフィリン金属錯体ナノリボン部502が形成される。また、ポルフィリンナノリボン560の残部がポルフィリンナノリボン部501となる。攪拌は室温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。続いて、触媒金属基板をポルフィリンナノリボン部501及びポルフィリン金属錯体ナノリボン部502と共に有機溶媒から取り出し、マスク550を除去する。
【0090】
このようにして、第5の実施形態に係るナノリボン500を製造することができる。
【0091】
マスク550の材料及び有機溶媒の種類は限定されず、マスク550の材料としてPMMAを用い、有機溶媒として酢酸水溶液を用いることが好ましい。
【0092】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態はポルフィリンをサブユニットとするナノリボンに関する。図16は、第6の実施形態に係るナノリボンを示す図である。
【0093】
第6の実施形態に係るナノリボン600は、図16に示すように、ポルフィリン金属錯体ナノリボン部601及びポルフィリン金属錯体ナノリボン部602を含む。ポルフィリン金属錯体ナノリボン部601は、ポルフィン環611aのサブユニットが並んだ構造を有する。ポルフィリン金属錯体ナノリボン部602は、ポルフィン環611bのサブユニットが並んだ構造を有する。ポルフィン環611aのN原子に金属原子Mが結合し、ポルフィン環611bのN原子に金属原子Mが結合している。ポルフィリン金属錯体ナノリボン部601は第1ユニットの一例であり、ポルフィリン金属錯体ナノリボン部602は第2ユニットの一例である。そして、ポルフィリン金属錯体ナノリボン部601とポルフィリン金属錯体ナノリボン部602とが、両者の端部同士の炭素-炭素結合により互いに接合されている。ナノリボン600は、ポルフィリンの金属錯体の化学構造を含んでいる。
【0094】
第6の実施形態によれば、ポルフィリン金属錯体ナノリボン部601とポルフィリン金属錯体ナノリボン部602とのヘテロ接合を実現することができる。従って、ナノリボン600は電子状態の多様化に寄与することができ、種々の半導体装置への適用性に優れている。
【0095】
次に、ナノリボン600の製造方法について説明する。図17A図17Bは、ナノリボン600の製造方法を工程順に示す図である。ここでは、金属原子Mが金属原子Mよりも、ポルフィン環のN原子と結合しやすいものとする。
【0096】
先ず、図17Aに示すように、ポルフィリン金属錯体ナノリボン660を触媒金属基板上に形成する。ポルフィリン金属錯体ナノリボン660は、例えば、p、q、r、s、t及びuがいずれも0で、AがHのポルフィリン金属錯体255を重合することで触媒金属基板上に合成することができる。次いで、図17Bに示すように、ポルフィリン金属錯体ナノリボン660上に、ポルフィリン金属錯体ナノリボン660のポルフィリン金属錯体ナノリボン部602の形成予定領域を露出し、残部を覆うマスク650を形成する。その後、ポルフィリン金属錯体ナノリボン部602に含ませる金属原子Mの金属塩を溶解させた有機溶媒中に、マスク650が形成されたポルフィリン金属錯体ナノリボン660を触媒金属基板と共に浸漬し、攪拌する。この結果、ポルフィリン金属錯体ナノリボン660のマスク650から露出している領域において、金属原子Mに代わって金属原子MがN原子に結合してポルフィリン金属錯体ナノリボン部602が形成される。また、ポルフィリン金属錯体ナノリボン660の残部がポルフィリン金属錯体ナノリボン部601となる。攪拌は室温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。続いて、触媒金属基板をポルフィリン金属錯体ナノリボン部601及びポルフィリン金属錯体ナノリボン部602と共に有機溶媒から取り出し、マスク650を除去する。
【0097】
このようにして、第6の実施形態に係るナノリボン600を製造することができる。
【0098】
マスク650の材料及び有機溶媒の種類は限定されず、マスク650の材料としてPMMAを用い、有機溶媒として酢酸水溶液を用いることが好ましい。
【0099】
金属原子Mが金属原子Mよりも、ポルフィン環のN原子に結合しやすい場合には、金属原子Mがポルフィン環のN原子に結合したポルフィリン金属錯体ナノリボンを準備しておき、金属原子Mの一部を金属原子Mで置換すればよい。
【0100】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態はGNRを含む半導体装置に関する。図18A及び図18Bは、それぞれ、第7の実施形態に係る半導体装置を示す平面図、断面図である。図18B図18A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0101】
第7の実施形態に係る半導体装置700は、図18A及び図18Bに示すように、シリコン基板701、GNR702、ゲート絶縁膜703、ゲート電極704、ソース電極705及びドレイン電極706を有する。GNR702はシリコン基板701上に設けられ、ソース電極705はシリコン基板701上でGNR702の一端(第1の端部)と接触し、ドレイン電極706はシリコン基板701上でGNR702の他端(第2の端部)と接触する。ゲート絶縁膜703はソース電極705とドレイン電極706との間でGNR702上に設けられ、ゲート電極704はゲート絶縁膜703上に設けられている。
【0102】
GNR702は、ゲート絶縁膜703下のポルフィリンGNR部702a、及びポルフィリンGNR部702aよりソース電極705側又はドレイン電極706側のポルフィリン金属錯体GNR部702bを含む。ポルフィリンGNR部702aとポルフィリン金属錯体GNR部702bとが、両者の端部同士の炭素-炭素結合により互いに接合されている。ポルフィリン金属錯体GNR部702bは、N原子にCu原子が結合したポルフィン環を含む。すなわち、ポルフィリンGNR部702aはポルフィリンの化学構造を含み、ポルフィリン金属錯体GNR部702bはポルフィリンの金属錯体の化学構造を含む。図19は、GNR702のバンド構造を示す図である。図19に示すように、ポルフィリンGNR部702aではフェルミ準位Eが伝導帯頂と価電子帯底との間にあり、ポルフィリン金属錯体GNR部702bではフェルミ準位Eが価電子帯底より高い。従って、ポルフィリンGNR部702aはi型半導体の性質を示し、ポルフィリン金属錯体GNR部702bはn型半導体の性質を示し、GNR702はninヘテロ接合を含む。
【0103】
このように、半導体装置700は、GNR702をチャネル層とするnin構造のトップゲート型電界効果トランジスタ(FET)の一例である。
【0104】
ゲート絶縁膜703には、酸化シリコン(SiO)等の絶縁材料が用いられる。ゲート電極704、ソース電極705及びドレイン電極には706には、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、Au等の金属材料が用いられる。
【0105】
第7の実施形態によれば、簡易な構造でバンドギャップが小さなFETを実現することができる。また、ポルフィリン金属錯体GNR部702bに含ませる金属原子をNi原子等の、フェルミ準位Eが価電子帯底より高くなる金属原子に変更することで、ninヘテロ接合を実現しながらバンドギャップを調整することができる。
【0106】
次に、半導体装置700の製造方法について説明する。図20A図20Dは、半導体装置700の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0107】
先ず、図20Aに示すように、シリコン基板701上にポルフィリンGNR760を設ける。ポルフィリンGNR760は、例えば触媒金属基板上にボトムアップ合成した後、メンディングテープ等を用いてシリコン基板701上に転写する。
【0108】
次いで、図20Bに示すように、シリコン基板701上に、ポルフィリンGNR760のポルフィリンGNR部702aとなる領域を覆うようにゲート絶縁膜703及びゲート電極704を形成する。ゲート絶縁膜703及びゲート電極704の形成では、先ず、レジストをリソグラフィーによりパターニングし、ゲート絶縁膜703及びゲート電極704の形成予定領域を開口するレジストマスクを形成する。次いで、スパッタ法等の堆積法により、レジストマスク上及び開口内に厚さが1nm程度のAl膜を形成し、このAl膜をシード層として原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法によりHfO等の絶縁膜をAl膜上に堆積する。その後、絶縁膜上に、蒸着法又はスパッタ法により金属膜を堆積する。金属膜としては、例えばTi膜及びその上のAu膜の積層膜を形成する。そして、リフトオフにより、レジストマスク並びにその上の絶縁膜及び金属膜を除去する。このようにして、ゲート絶縁膜703及びゲート電極704を形成することができる。
【0109】
その後、図20Cに示すように、ポルフィリンGNR760、ゲート絶縁膜703及びゲート電極704が形成されたシリコン基板701を、Cuの金属塩を溶解させた有機溶媒中に浸漬し、攪拌する。この結果、ポルフィリンGNR760のゲート絶縁膜703及びゲート電極704から露出している領域において、ポルフィン環のN原子に金属原子MとしてCu原子が結合する。このようにして、ポルフィリンGNR部702a及びポルフィリン金属錯体GNR部702bを含むGNR702が形成される。有機溶媒としては、例えば酢酸水溶液を用いる。
【0110】
続いて、図20Dに示すように、シリコン基板701上に、GNR702の第1の端部と接触するソース電極705及び第2の端部と接触するドレイン電極706を形成する。ソース電極705及びドレイン電極706の形成では、先ず、レジストをリソグラフィーによりパターニングし、ソース電極705の形成予定領域及びドレイン電極706の形成予定領域を開口するレジストマスクを形成する。次いで、蒸着法又はスパッタ法により、レジストマスク上及び開口内に金属膜を堆積する。金属膜としては、例えばTi膜及びその上のAu膜の積層膜を形成する。そして、リフトオフにより、レジストマスク及びその上の金属膜を除去する。このようにして、ソース電極705及びドレイン電極706が形成される。
【0111】
このようにして、第7の実施形態に係る半導体装置700を製造することができる。
【0112】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態はGNRを含む半導体装置に関する。図21A及び図21Bは、それぞれ、第8の実施形態に係る半導体装置を示す平面図、断面図である。図21B図21A中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0113】
第8の実施形態に係る半導体装置800は、図21A及び図21Bに示すように、半導体装置700におけるGNR702に代えてGNR802を含む。他の構成は第7の実施形態と同様である。GNR802は、ゲート絶縁膜703下のポルフィリン金属錯体GNR部802a、及びポルフィリン金属錯体GNR部802aよりソース電極705側又はドレイン電極706側のポルフィリン金属錯体GNR部802bを含む。ポルフィリン金属錯体GNR部802aとポルフィリン金属錯体GNR部802bとが、両者の端部同士の炭素-炭素結合により互いに接合されている。ポルフィリン金属錯体GNR部802aは、N原子にZn原子が結合したポルフィン環を含み、ポルフィリン金属錯体GNR部802bは、N原子にCu原子が結合したポルフィン環を含む。図22は、GNR802のバンド構造を示す図である。図22に示すように、ポルフィリン金属錯体GNR部802aではフェルミ準位Eが伝導帯頂と価電子帯底との間にあり、ポルフィリン金属錯体GNR部802bではフェルミ準位Eが価電子帯底より高い。従って、ポルフィリン金属錯体GNR部802aはi型半導体の性質を示し、ポルフィリン金属錯体GNR部802bはn型半導体の性質を示し、GNR802はninヘテロ接合を含む。
【0114】
このように、半導体装置800は、GNR802をチャネル層とするnin構造のトップゲート型電界効果トランジスタ(FET)の一例である。
【0115】
第8の実施形態によれば、簡易な構造でバンドギャップが小さなFETを実現することができる。また、ポルフィリン金属錯体GNR部802bに含ませる金属原子をNi原子等の、フェルミ準位Eが価電子帯底より高くなる他の金属原子に変更することで、ninヘテロ接合を実現しながらバンドギャップを調整することができる。更に、ポルフィリン金属錯体GNR部802aに含ませる金属原子を、フェルミ準位Eが伝導帯頂と価電子帯底との間になる他の金属原子に変更することで、ninヘテロ接合を実現しながらバンドギャップを調整することもできる。
【0116】
次に、半導体装置800の製造方法について説明する。図23A図23Dは、半導体装置800の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0117】
先ず、図23Aに示すように、シリコン基板701上に、ポルフィン環のN原子にZn原子が結合したポルフィリン金属錯体GNR860を設ける。ポルフィリン金属錯体GNR860は、例えば触媒金属基板上にボトムアップ合成した後、メンディングテープ等を用いてシリコン基板701上に転写する。
【0118】
次いで、図23Bに示すように、シリコン基板701上に、ポルフィリン金属錯体GNR860のポルフィリン金属錯体GNR部802aとなる領域を覆うようにゲート絶縁膜703及びゲート電極704を形成する。
【0119】
その後、図23Cに示すように、ポルフィリン金属錯体GNR860、ゲート絶縁膜703及びゲート電極704が形成されたシリコン基板701を、Cuの金属塩を溶解させた有機溶媒中に浸漬し、攪拌する。この結果、ポルフィリン金属錯体GNR860のゲート絶縁膜703及びゲート電極704から露出している領域において、Zn原子に代わって金属原子MとしてCu原子がN原子に結合する。このようにして、ポルフィリン金属錯体GNR部802a及びポルフィリン金属錯体GNR部802bを含むGNR802が形成される。有機溶媒としては、例えば酢酸水溶液を用いる。
【0120】
続いて、図23Dに示すように、シリコン基板701上に、GNR802の第1の端部と接触するソース電極705及び第2の端部と接触するドレイン電極706を形成する。
【0121】
このようにして、第8の実施形態に係る半導体装置800を製造することができる。
【0122】
いずれの実施形態においても、ユニットに含まれるアセンはアントラセンに限定されず、アセンがナフタレン又はテトラセン等であってもよい。また、いずれのナノリボンの実施形態においても、ナノリボンの末端基については制限されるものではない。例えば、図4Aに示される前駆体分子から合成されるナノリボンの末端基は、図4Aの前駆体分子と同様に、ナノリボンの末端に位置する複数の炭素原子に対してそれぞれ水素、ハロゲン原子のいずれかが結合してもよいし、すべて水素原子が結合していてもよい。第7又は第8の実施形態において、GNRに代えてポルフィリンのナノリボンを用いてもよい。
【0123】
これら半導体装置の用途は特に限定されず、例えば、無線基地局用ハイパワーアンプ、携帯電話基地局用ハイパワーアンプ、サーバ用半導体素子、パーソナルコンピュータ用半導体素子、車載集積回路(IC)、及び電気自動車のモータ駆動用トランジスタとして用いることができる。
【0124】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0125】
(付記1)
上記構造式(1)又は(2)で表されることを特徴とする化合物。
(付記2)
前記Xは、相互に独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることを特徴とする付記1に記載の化合物。
(付記3)
上記構造式(3)で表される第1の化合物、上記構造式(4)で表される第2の化合物及び上記構造式(5)で表される第3の化合物をカップリングし、上記構造式(6)で表される第4の化合物を合成する工程を有することを特徴とする化合物の製造方法。
(付記4)
前記第4の化合物と金属塩とをカップリングし、上記構造式(2)で表される第5の化合物を合成する工程を有することを特徴とする付記3に記載の化合物の製造方法。
(付記5)
上記構造式(8)で表される構造を有することを特徴とするナノリボン。
(付記6)
上記構造式(9)で表される構造を有することを特徴とするナノリボン。
(付記7)
上記構造式(10)で表される構造を含む複数の第1サブユニットが並んだ構造を含む第1ユニットと、
上記構造式(11)で表される構造を含む複数の第2サブユニットが並んだ構造を含む第2ユニットと、
を有し、
前記第1ユニットの端部と前記第2ユニットの端部との間の炭素-炭素結合により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが互いに接合されていることを特徴とするナノリボン。
(付記8)
上記構造式(10)で表される構造を含む複数の第1サブユニットが並んだ構造を含む第1ユニットと、
上記構造式(12)で表される構造を含む複数の第2サブユニットが並んだ構造を含む第2ユニットと、
を有し、
前記第1ユニットの端部と前記第2ユニットの端部との間の炭素-炭素結合により、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが互いに接合されていることを特徴とするナノリボン。
(付記9)
前記第1ユニットは、上記構造式(13)で表される構造を有することを特徴とする付記7に記載のナノリボン。
(付記10)
前記第2ユニットは、上記構造式(14)で表される構造を有することを特徴とする付記9に記載のナノリボン。
(付記11)
前記第1ユニットは、上記構造式(13)で表される構造を有することを特徴とする付記8に記載のナノリボン。
(付記12)
前記第2ユニットは、上記構造式(15)で表される構造を有することを特徴とする付記11に記載のナノリボン。
(付記13)
前記第1サブユニット及び前記第2サブユニットのうち少なくとも一方は、更に、下記構造式(16)で表される構造を少なくとも一つ有することを特徴とする付記7又は8に記載のナノリボン。
(付記14)
前記第1ユニットと前記第2ユニットとは周期的に並んでいることを特徴とする付記7乃至13のいずれか1項に記載のナノリボン。
(付記15)
付記1又は2に記載の化合物を脱ハロゲン化反応して重合体を得る工程と、
前記重合体を脱水素環化反応させる工程と、
を有することを特徴とするナノリボンの製造方法。
(付記16)
前記脱水素環化反応させる工程の後に、
前記ナノリボンに含まれる一部又は全部のポルフィン環の窒素原子に金属原子を結合させる工程を有することを特徴とする付記15に記載のナノリボンの製造方法。
(付記17)
前記ナノリボンに含まれる一部又は全部のポルフィン環の窒素原子に金属原子を結合させる工程の後で、該金属原子の一部を他の金属原子に置換する工程を有することを特徴とする付記16に記載のナノリボンの製造方法。
(付記18)
基板上に設けられた付記5乃至14のいずれか1項に記載のナノリボンと、
前記ナノリボンに接続された電極と、
を有することを特徴とする半導体装置。
(付記19)
更に、ソース電極及びドレイン電極を有し、
前記電極はゲート電極であることを特徴とする付記18に記載の半導体装置。
(付記20)
基板上に付記5乃至14のいずれか1項に記載のナノリボンを設ける工程と、
前記ナノリボンに接続される電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0126】
【化19】
【符号の説明】
【0127】
100、200、300、400、702、802:GNR
111、121、211、221、411a、411b、511a、511b、611a、611b:ポルフィン環
112、122、212、222、412:アントラセン
113、213、413a、413b:サブユニット
120、220:前駆体分子
301、702a:ポルフィリンGNR部
302、401、402、702b、802a、802b:ポルフィリン金属錯体GNR部
500、600:ナノリボン
501:ポルフィリンナノリボン部
502、601、602:ポルフィリン金属錯体ナノリボン部
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図23C
図23D