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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003997
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】じゃがいもの皮むき機
(51)【国際特許分類】
   A23N 7/02 20060101AFI20230110BHJP
   A23N 12/02 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
A23N7/02
A23N12/02 F
A23N12/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105442
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】596062266
【氏名又は名称】株式会社エフ・イー
(74)【代理人】
【識別番号】100126402
【弁理士】
【氏名又は名称】内島 裕
(72)【発明者】
【氏名】三宅 勇太
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA02
4B061BA08
4B061BB12
4B061BB15
4B061CA10
4B061CA13
4B061CA34
4B061CB02
4B061CB18
4B061CB23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】じゃがいもの皮の一部を残して薄くむくことができるじゃがいもの皮むき機を提供する。
【解決手段】じゃがいもが投入される入口シュートと排出される出口シュートとを備えた上部フレームが取り付けられたフレーム本体および高水圧噴射装置を備え、入口シュートが出口シュートよりも上方に位置し、高水圧噴射装置はじゃがいもの進行方向に沿って高水圧の水を噴射する噴射ノズルを有し、上部フレームの長手方向に添って配設された内方皮むき用ロールブラシ16と、これに対して外側に位置する外方皮むき用ロールブラシ18とを回動可能に設け、それぞれのロールブラシに、刷毛をじゃがいもが進む方向に傾けて植毛し、皮むき時にじゃがいも表面に刷毛の先端部分を傷つき防止用の水膜を発生させることなく当接させ、じゃがいもを回転させながら入口シュートから出口シュートへ向かって移動させ、じゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
じゃがいもが投入される入口シュートと前記じゃがいもが排出される出口シュートとを備えた上部フレームを有するとともに、前記上部フレームが取り付けられたフレーム本体および高水圧噴射装置を備え、前記入口シュートが前記出口シュートよりも上方に位置してなり、前記高水圧噴射装置は前記じゃがいもの進行方向に沿って高水圧の水を前記じゃがいもへ噴射する噴射ノズルを有し、前記上部フレームの長手方向に添って配設された内方皮むき用ロールブラシと、該内方皮むき用ロールブラシに対して外側に位置する外方皮むき用ロールブラシとを回動可能に設け、前記内方皮むき用ロールブラシおよび前記外方皮むき用ロールブラシに、刷毛を前記じゃがいもが進む方向に傾けて植毛して、前記じゃがいもの皮むき時に前記じゃがいもの表面に前記刷毛の先端部分を傷つき防止用の水膜を発生させることなく当接させて前記じゃがいもを回転させながら前記入口シュートから前記出口シュートへ向かって移動させ、前記じゃがいもの前記皮の一部を残して前記皮を薄くむくことを特徴とするじゃがいもの皮むき機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、じゃがいもの皮を薄くむく技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1および特許文献2に開示されているように、ブラシの刷毛を用いて、じゃがいもの皮をむく機械が知られている。
【0003】
また、近年、じゃがいもの皮の食感が残らない(気にならない)程度に皮の一部を少し残して薄くむいた状態のものが需要者から求められている。
従来の機械を使用して、じゃがいもの皮を全部むいていたものと比較して、皮を薄くむくことにより、皮むき後の歩留まりが高く、肉(実)が多く残ることとなる。例えば、図9に示すように、じゃがいもの皮が、まだらに全体の1/6乃至1/8程度の割合で残った状態であってよい。なお、皮が残る割合は必ずしも1/6乃至1/8に限定されない。
じゃがいもの旨味成分や栄養素は皮と肉(実)の間に多くあるので、皮付近の肉(実)をしっかり残して皮ぎし(皮のすぐ内側)の旨味成分や栄養素を多く残すことで、需要者のメリットを増大させることができる。
このようなじゃがいもは、例えば、1個を1/6ずつにカットしてカレーの材料として食しても、皮の食感が残らなく、需要者の満足度を低下させることが無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-193297号公報
【特許文献2】実開平4-6694号公報
【特許文献3】特許第3786673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1および特許文献2に開示されている技術では、じゃがいもの進行方向(移動方向)への運搬を促進しつつ、じゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことは困難であった。
すなわち、ブラシの刷毛がじゃがいもが進む方向(進行方向)に傾けられることなく垂直に植毛されている一般的な構成であると、入口シュートが出口シュートよりも上方に位置したとしても、その傾斜角度による運搬の促進効果しか生じなく、じゃがいもの進行方向(移動方向)への運搬をさらに促進することは困難であったし、垂直に植毛された刷毛の先端部分が、じゃがいもの表面に強く当接する(傾けて植毛よりも表面に強く当接する)ので皮をしっかりむいてしまいがちで、じゃがいもの皮を従来のように可能な限り全てむくことを意図する際には適しているのかもしれないが、効果的かつ効率的にじゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことは困難であった(この点、本願出願人は実験により確認済み。)。
本発明は、メーカーならではの高い技術力に基づき、試行錯誤により到達できた高い水準にあり、個人のアイデアレベルでは実現できない、製品としての現実性・完成度を誇るものである。
【0006】
本発明の目的は、じゃがいもの進行方向への運搬を促進しつつ、効果的かつ効率的にじゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことができるじゃがいもの皮むき技術を提供することにある。
【0007】
なお、上記の特許文献3(本願出願人の自社公報)には、ブラシの刷毛がじゃがいも(大根等)が進む方向(進行方向)に傾けて植毛されている構成の開示があるが、特許文献3は大根等を洗浄する技術に関するものであり、本願のじゃがいもの皮をむく技術とは技術分野がまったく異なる。つまり、特許文献3は、毛細管現象、遠心力、および刷毛を進行方向に傾けて植毛していることに起因して保水とブラシの水膜を実現し、この水膜により大根等の傷つきを防止しながら洗浄する技術に関するものであるのに対して、本願のじゃがいもの皮をむく技術は、ブラシに傷つき防止用の水膜を発生させてしまうと、むしろじゃがいもの皮がむけなくなってしまう(皮をむくためには、いわば傷をつけるような作用が必要という意味。)ので、ブラシに傷つき防止用の水膜を発生させることは意図しない点で根本的に目的・作用効果が異なる。従って、上記の特許文献3を、上記の特許文献1および特許文献2等と組み合わせることには、いわゆる阻害要因があるものといえる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のじゃがいもの皮むき機は、じゃがいもが投入される入口シュートと前記じゃがいもが排出される出口シュートとを備えた上部フレームを有するとともに、前記上部フレームが取り付けられたフレーム本体および高水圧噴射装置を備え、前記入口シュートが前記出口シュートよりも上方に位置してなり、前記高水圧噴射装置は前記じゃがいもの進行方向に沿って高水圧の水を前記じゃがいもへ噴射する噴射ノズルを有し、前記上部フレームの長手方向に添って配設された内方皮むき用ロールブラシと、該内方皮むき用ロールブラシに対して外側に位置する外方皮むき用ロールブラシとを回動可能に設け、前記内方皮むき用ロールブラシおよび前記外方皮むき用ロールブラシに、刷毛を前記じゃがいもが進む方向に傾けて植毛して、前記じゃがいもの皮むき時に前記じゃがいもの表面に前記刷毛の先端部分を傷つき防止用の水膜を発生させることなく当接させて前記じゃがいもを回転させながら前記入口シュートから前記出口シュートへ向かって移動させ、前記じゃがいもの前記皮の一部を残して前記皮を薄くむくことを特徴とする。
このような構成により、内方皮むき用ロールブラシ、外方皮むき用ロールブラシに植毛されている刷毛は、じゃがいもが進む方向に傾けて植毛されているので、じゃがいもの皮むき時にじゃがいもの進行方向への運搬を促進することができる。
また、じゃがいもの表面に刷毛を傷つき防止用の水膜を発生させることなく当接させるため、この水膜により大根等の傷つきを防止しながら洗浄する上記の特許文献3に開示される技術(単純に刷毛を傾けて植毛すれば必ず水膜が形成されるものではない。)とは異なり、じゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことが可能となっている。
また、じゃがいもが進む方向に傾けて植毛されているが、皮をむく際にじゃがいもの表面に当接するのは刷毛の先端部分(刷毛の太さや材質や植毛深さ等に基づく「こし(可撓性が低い)」があるため)であり、大根等の傷つきを防止するために刷毛の側面を当接させながら洗浄する上記の特許文献3に開示される技術とは異なり、じゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむく作用を奏することとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、じゃがいもの進行方向への運搬を促進しつつ、効果的かつ効率的にじゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむく技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るじゃがいもの皮むき機の概略斜視図である。
図2】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機の内部構成を示した斜視図である。
図3】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機のブラシの配置状況を示した正面図である。
図4】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機の内方皮むき用ロールブラシ及び外方皮むき用ロールブラシの一部を示す側面断面図、並びにロールブラシに植毛されている刷毛の状態を図示した概略図、皮むき時の作用の概略図である。
図5】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機の高圧水噴射装置を上下動させた場合の作用を示す概略側面図及び正面図である。
図6】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機に投入されたじゃがいもの動きを示した説明図である。
図7】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機の高圧水噴射装置によって噴射される水の状態を示す説明図である。
図8】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機の飛びはね防止用ロールブラシの作用を示す説明図である。
図9】本実施形態におけるじゃがいもの皮むき機によるじゃがいもの皮の剥き方を説明する図である。
図10】変形例におけるじゃがいもの皮むき機のブラシの配置状況を示した図である。
図11】変形例におけるロールブラシに植毛されている刷毛の状態を図示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るじゃがいもの皮むき機の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る皮むき機の概略斜視図、図2は皮むき機の内部構成を示した斜視図、図3は皮むき機の要部であるブラシの配置状況を示した正面図である。図1及び図2に示されるように、皮むき機10は、フレーム本体12と、上部フレーム14と、内方皮むき用ロールブラシ16と、外方皮むき用ロールブラシ18と、飛びはね防止用ロールブラシ20と、高水圧噴射装置22等とから構成され、本実施形態の皮むき機10では右方皮むき機10A、及び左方皮むき機10Bの2列の皮むきラインを備えている。
【0013】
図1及び図2に示されるように、フレーム本体12は、鉄材で製作された前部側一対の支脚12A,12Aと、後部側一対の支脚12B,12B等とを備え、これらの支脚のうち、前部側の支脚12Aは、後部側の支脚12Bよりも高く形成されている。上部フレーム14は、前部側の支脚12A、及び後部側の支脚12Bの上端間を前後方向に連結する前後枠14A,14Aと、前後枠14Aの前端部同士を横方向に連結する前部側横枠14Bと、前後枠14Aの後端部同士を横方向に連結する後部側横枠14Cとを有し、平面視矩形状に形成されている。上部フレーム14は、支脚12A及び12Bの高低差によってフレーム本体12に対し、0°~30の角度で前部側が高くなるように傾斜して支持されている。また、図3に示されるように、上部フレーム14の前部側は、前部側横枠14Bを上辺とする正面視矩形状の枠体24が取り付けられている。
【0014】
前部側横枠14A、並びに後部側横枠14Bには、各ブラシの回転軸を軸支する支持部材26,26…が左右一対ずつ起立するように立設され、それぞれ正面から視ると略コ字状をなしている。各支持部材26には、内方皮むき用ロールブラシ16の回転軸を軸支する支持片26Aと、飛びはね防止用ロールブラシ20の回転軸を軸支する支持片26Bがそれぞれ設けられている。また、前部側横枠14B、及び後部側横枠14Cには、外方皮むき用ロールブラシ18の回転軸を軸支する支持片28が設けられている。
【0015】
図2及び図3に示されるように、内方皮むき用ロールブラシ16、並びに外方皮むき用ロールブラシ18、飛びはね防止用ロールブラシ20(必須ではない)は相互に平行となるよう上部フレーム14上に配設され、各ブラシのうち、内方皮むき用ロールブラシ16、外方皮むき用ロールブラシ18及び飛びはね防止用ロールブラシ20は、円柱状に形成されているとともに、このうち、内方皮むき用ロールブラシ16と外方皮むき用ロールブラシ18は同一寸法を有している。図2に示されるように、内方皮むき用ロールブラシ16と、外方皮むき用ロールブラシ18には、各ロールブラシよりも大径のリングブラシ32(必須ではない)が、前後方向に所定の間隔を隔てて取り付けられている。内方皮むき用ロールブラシ16、外方皮むき用ロールブラシ18は、一定間隔を隔てて平行に配設されているが、各ロールブラシ16,18に取り付けられているリングブラシ32は、前後方向に交互に位置するように配置され、隣接する各ロールブラシ16,18の毛先に接触するように配設されている。また、外方皮むき用ロールブラシ18及び飛びはね防止用ロールブラシ20は、所定の間隔を隔てて配設されている。
なお、内方皮むき用ロールブラシ16、並びに外方皮むき用ロールブラシ18は、中心が同一の高さとなるように設置してもよいし、或いは図3に示すように、ある程度段違いとなる高さで設置してもよい。
【0016】
外方皮むき用ロールブラシ18,18間には、仕切部30が外方皮むき用ロールブラシ18,18の前後に沿って、やはり各ブラシと平行となるように取り付けられ、右方皮むき機10A、及び左方皮むき機10Bとの間を仕切っている。また、図3に示されるように、枠体24の下部には、駆動モータ34,34が配設され、歯車とチェーンによって、内方皮むき用ロールブラシ16、外方皮むき用ロールブラシ18、飛びはね防止用ロールブラシ20を、それぞれ回転(回動可能)させるようになっている。内方皮むき用ロールブラシ16、外方皮むき用ロールブラシ18及び飛びはね防止用ロールブラシ20は、上部フレーム14上に設置されたカバー部31によって覆われている。
【0017】
図1に示されるように、カバー部31は、上部フレーム14上に取り付けられ、このカバー部31は、骨枠31Aと、カバー31Bとで構成されている。骨枠31Aは、上部フレーム14の上面に配置された右方皮むき機10A、及び左方皮むき機10Bを上方から覆うように構成された枠からなっている。カバー部31Bは、骨枠31Aの全面を覆うように張設されたビニールなどからなるシートで構成されている。カバー部31の前部側にはじゃがいもが投入される入口シュート29Aが設けられているとともに、後部側にはじゃがいもの出口シュート29Bが設けられている。
【0018】
次に、各ブラシの詳細な構成について説明する。図4は、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18の一部を示す側面断面図、並びにロールブラシ16,18に植毛されている刷毛の状態を図示した概略図である。図4(A)に示されるように、3種類の内方皮むき用ロールブラシ16、外方皮むき用ロールブラシ18、及び飛びはね防止用ロールブラシ20は、いずれも木製の芯部33と、被覆部35、刷毛部37等とから構成されている。各ロールブラシ16,18の外周面を被覆している被覆部35としては、例えば塩ビ管、樹脂パイプ、ゴム管などが用いられ、この被覆部35によって木製の芯部33を保護している。
【0019】
図4(A)に示されるように、各ロールブラシ16,18の刷毛部37は、ブラシの中心部に対し皮むきを行うじゃがいもの進行方向に傾けて植毛されており、この刷毛部37は獣毛、樹脂系材料の毛、ナイロンの毛など、太さや種類を、1種類だけ又は数種類組み合わせて、数十本から数百本束ねられて構成されている。刷毛部37の太さは、束が例えば円形をなす場合は、数ミリの直径dを有するように形成されている。また、刷毛部37,37・・の一束、一束の間隔Lは、少なくとも一束の太さであるd以上となるように植毛されていてもよい。なお、図4で示した刷毛部37を構成する一束の形状は、円形のほか、楕円形など、用途に応じて適宜選択することができる。
【0020】
また、図4(B)に示されるように、各ロールブラシ16,18を、じゃがいもの投入口側或いは出口側から見た場合に、刷毛部37は束で植毛されている。一方、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18に取り付けられているリングブラシ32の刷毛は、進行方向に対し垂直方向に植毛されていてもよい。
なお、飛びはね防止用ロールブラシ20については、図示していないが、同様に木製の芯部33を被覆部35によって被覆する構造であり、且つ斜め植毛ではなく進行方向に対して垂直に植毛されているが、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18と同様に斜めに傾けて植毛してもよい。
【0021】
図4(C)に示されるように、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18に植毛されている刷毛部37は、じゃがいもが進む方向に傾けて植毛されているので、じゃがいもの皮むき時にじゃがいもの進行方向への運搬を促進することができる。
また、じゃがいもの表面に刷毛部37を傷つき防止用の水膜を発生させることなく当接させる。このため、じゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことが可能となっている。
また、じゃがいもが進む方向に傾けて植毛されているが、皮をむく際にじゃがいもの表面に当接するのは刷毛部37の先端部分(刷毛部37の太さや材質や植毛深さ等に基づく「こし(可撓性が低い)」があるため)であり、じゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむく作用を奏することとなる。
【0022】
高水圧噴射装置22は、昇降手段である上下微動装置22Aと、配管22Bと、噴射管22C等とから構成され、このうち、上下微動装置22Aにはパンタグラフタイプのネジ式ジャッキが2基用いられている。前後の上下微動装置22Aの間は、そのネジ部同士がハンドル19を有する棒材21を介して接続され、ハンドル19を回転させることにより、棒材21に回転力が伝達され、前後の上下微動装置22Aを協働して上下動させ、同じ距離だけ上下動させることができるようになっている。配管22Bは、カバー部31の上面に沿って前後方向に配設された左右一対のパイプからなり、後述するように、上下微動装置22Aと上下動可能に連結されている。
【0023】
図5は昇降手段である上下微動装置22Aによって高圧水噴射装置22を上下動させた場合の作用を示す概略側面図、並びに概略正面図である。図3及び図5に示されるように、上下微動装置22Aの可動部23は、左右の配管22B間に架設された水平軸36の中央部と接続され、上下方向の力を水平軸36に伝達することが可能となっている。また、前後の各水平軸36の端部には、カバー部31の前後に2本ずつ立設された支柱38,38に対し、摺動可能な内径のパイプ材40,40が取り付けられており、上下被動装置22Aの可動部23が上下動することによって水平軸36が両脇の支柱36にガイドされながら上下方向へ移動する。水平軸36は、例えば図5(A)に示される実線の位置から一点
鎖線に示す位置まで配管22B全体を上下に移動させることができるようになっている。このように、上下微動装置22Aであるジャッキの上下動に従って噴射管22C全体が上下動するため、噴射ノズル22Dの上下位置をじゃがいもの種類や、汚れ具合等に応じて微調整することが可能である。
【0024】
噴射管22Cは、配管22Bの下面に、所定間隔をもって複数の噴射管が配設されており、各噴射管22Cは、カバー部31の天井面を上方から貫通する状態で垂下されている。噴射管22Cの先端には噴射ノズル22Dが取り付けられ、噴射ノズル22Dは、じゃがいもの通り道となる内方皮むき用ロールブラシ16と外方皮むき用ロールブラシ18間の上方に位置している。噴射ノズル22Dは、その先端の断面形状が略扇状に形成されているため、噴射される水は、横方向から見ると扇状に噴射され、じゃがいもに対して満遍なく水が噴射されるようになっている。
【0025】
次に、前述した本実施形態の皮むき機10のじゃがいもの皮むき時における作用について説明する。
図6(A)に示されるように、投入シュート29Aから投入されたじゃがいも50は、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18に設けられた刷毛部37の作用によってじゃがいも50の底部と側部から力が働き、無理なく回転しながら皮むき機内を移動していく。この際、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18には、それぞれリングブラシ32が一定間隔毎に前後方向に亘って取り付けられているため、図6(B)に示されるように、じゃがいも50はリングブラシ32によって進行方向に対し横向き、若しくは上向きの力が与えられ、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18との間を蛇行するように移動していく。
また、前述したように、ロールブラシ16,18の刷毛部37は、じゃがいも50の進行方向に傾けて植毛されているため、じゃがいも50の進行方向への運搬を促進しつつ、刷毛部37の先端部分をじゃがいもの表面に当接させて、じゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことができる。
特殊加工ロールブラシ16、18や、高水圧噴射装置22による霧状高圧水等の相乗効果(但し、傷つき防止用の水膜は発生させない。)により、皮の食感が残らない程度にじゃがいもの皮の一部を少し残して薄く剥いた状態とすることができる。
じゃがいもの皮をむく際には、複数(多数)のじゃがいもを同時に投入して、水で湿らせた複数(多数)のじゃがいも同士を混ぜることで、もみ洗いするように、こすり合わせて皮を剥くことであってもよい。じゃがいも同士が互いにぶつかりあって回転したり、位置変更される作用が増加して様々な面の皮むきを促進する効果を生じる。
なお、じゃがいもが土付きの状態でもそのまま皮むきが可能である。移動中において、高圧水噴射装置22の噴射ノズル22Dから噴射される水によって泥や汚れなどの洗浄効果も奏するためである。
【0026】
図7に示されるように、皮むき中における内方皮むき用ロールブラシ16、外方皮むき用ロールブラシ18、飛びはね防止用ロールブラシ20の回転方向は同一であり、本実施形態では右方皮むき機10Aの場合は左回りであり、一方、左方皮むき機10Bでは右回りに回転するようになっている。図8に示されるように、移動中のじゃがいも50が二点鎖線に示すように跳ね上がった場合には、飛びはね防止用ロールブラシ20によって回転力が作用し、じゃがいも50を元の位置に戻すように働く。これによって、じゃがいも50が飛び跳ねて皮むきが行われなくなるという事態を防止することができる。
【0027】
そして、図9に示されるように、じゃがいもの皮の食感が残らない(気にならない)程度に皮の一部を少し残して薄くむいた状態が実現される。
じゃがいもの皮を全部むくことと比較して、皮を薄くむく(薄皮一枚むく)ことにより、皮むき後の歩留まりが高く、肉(実)が多く残ることとなる。例えば、図9に示すように、じゃがいもの皮が、まだらに全体の1/6乃至1/8程度の割合で残った状態であってよい。なお、皮が残る割合は必ずしも1/6乃至1/8に限定されない。
じゃがいもの旨味成分や栄養素は皮と肉(実)の間に多くあるので、皮付近の肉(実)をしっかり残して皮ぎし(皮のすぐ内側)の旨味成分や栄養素を多く残すことで、需要者のメリットを増大させることができる。
【0028】
上記の本実施の形態によれば、じゃがいもの進行方向への運搬を促進しつつ、効果的かつ効率的にじゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむく技術を実現することができる。
また、内方皮むき用ロールブラシ16、外方皮むき用ロールブラシ18、飛びはね防止用ロールブラシ20は、その外側を塩ビなどの被覆部35で覆っているため、木製の芯部33のブラシの場合、冬季間の乾燥や凍結から芯部33を保護することができ、ブラシの交換サイクルを長期化することが可能なため、その結果、維持コスト、交換作業に要する作業手間等を低減することが可能である。
加えて、皮むき機そのものの構造がシンプルなため、組立作業が容易で使用者である農家等自身がメンテナンスを行うことができると言う利点を有する。
【0029】
〔変形例〕
図10に示されるように、皮むき機10は、内方皮むき用ロールブラシ16および外方皮むき用ロールブラシ18に相当する、ロールブラシが複数、略U字状に配置されて、複数(多数)のじゃがいもを同時に投入して、水で湿らせた複数(多数)のじゃがいも同士を混ぜることで、もみ洗いするように、こすり合わせて皮を剥くことであってもよい。なお、図10はロールブラシの配置を説明するための模式図であり、上述した高圧水噴射装置等の図示は省略している。
【0030】
また、図11(a)に示されるように、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18に植毛されている刷毛部37は、じゃがいもが進む方向に傾けて植毛されていること(進行方向へ運搬促進+最も軽く皮をむく作用)でも、図11(b)に示されるように、垂直方向(相対的に普通程度に皮をむく作用)やじゃがいもが進む方向とは逆の方向に傾けて植毛されること(最もしっかり皮をむく作用)が混在していても、図11(c)に示されるように、内方皮むき用ロールブラシ16及び外方皮むき用ロールブラシ18に植毛されている刷毛部37は、じゃがいもが進む方向とは逆の方向に傾けて植毛されていることでもよい。
なお、これらの進行方向傾斜、垂直方向、進行逆方向傾斜の刷毛部37を備えるブラシを1台の皮むき機10内において組み合わせて装着する態様や、これらの異なるタイプのブラシを装着した複数台の皮むき機10を高さ位置・傾斜角度がうまく連接するように連結させて使用する態様であってもよい。但し、最後の磨き仕上げ的な作業は、図11(a)に示される進行方向傾斜の刷毛部37を備えるブラシを用いなければ、効果的かつ効率的にじゃがいもの皮の一部を残して皮を薄くむくことはできない。
【0031】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されてよい。各構成部材の大きさ・数・材質・位置などは本発明の効果を奏する限り適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 じゃがいもの皮むき機
10A 右方皮むき機
10B 左方皮むき機
12 フレーム本体
12A 支脚(前部側)
12B 支脚(後部側)
14 上部フレーム
14A 前後枠
14B 前部側横枠
14C 後部側横枠
16 内方皮むき用ロールブラシ
18 外方皮むき用ロールブラシ
20 飛びはね防止用ロールブラシ
22 高圧水噴射装置
22A 上下微動装置
22B 配管
22C 噴射管
22D 噴射ノズル
23 可動部
24 枠体
26 支持部材
26A、26B、28 支持片
29A 入口シュート
29B 出口シュート
30 仕切部
31 カバー部
31A 骨枠
31B カバー
32 リングブラシ
33 芯部
34 駆動モータ
35 被覆部
36 水平軸
37 刷毛部
38 支柱
40 パイプ材
50 じゃがいも
図1
図2
図3
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図11