(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039989
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】テトラフルオロプロペンをベースにした組成物の使用
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20230314BHJP
C10M 105/38 20060101ALI20230314BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230314BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20230314BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C10M105/38
F25B1/00 396Z
C10N40:30
C10N30:00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198670
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2019540710の分割
【原出願日】2017-10-09
(31)【優先権主張番号】1659747
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ラシェド,ウィザム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地球温暖化係数が低く、京都議定書で設定された目標を達成できる等の利点を有する、冷凍、空調およびヒートポンプで使用する新規な組成物を提供する。
【解決手段】ポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも一種のテトラフルオロプロペンと少なくとも一種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含む組成物の、オイルセパレータを有する蒸気圧縮回路を有する熱伝達システムでの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも1種のテトラフルオロプロペンと少なくとも1種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含む組成物の、オイルセパレータを有する蒸気圧縮回路を有する熱伝達システムでの使用。
【請求項2】
ポリオールエステルが下記の式(I)に対応する請求項1に記載の使用:
R1[OC(O)R2]n (I)
(ここで、
R1は直鎖または分枝鎖の炭化水素基で、必要に応じて少なくとも1つのヒドロキシル基で置換され、および/または-O-、-N-および-S-からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
各R2は下記i)~iv)の群から互いに独立して選択され:
i) H
ii)脂肪族炭化水素基
iii)分岐鎖炭化水素基
iv)上記ii)および/またはiii)と、8~14個の炭素原子を有する志望属炭化水素基との混合物
nは少なくとも2の整数)
【請求項3】
ポリオールエステルがネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびこれらの混合物から成る群から選択されるポリオールから得られる請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ポリオールエステルが少なくとも一種の5~8個の炭素原子を有する分岐したカルボン酸から得られる請求項1または3に記載の使用。
【請求項5】
ポリオールエステルが下記で得られるポリ(ネオペンチルポリオール)のエステルである請求項1に記載の使用:
i)下記式(V)を有するネオペンチルポリオール:
(ここで、
各Rは互いに独立してCH
3、C
2H
5またはCH
2OHを表し、
pは1から4の整数である)
を、酸触媒の存在下で、カルボキシル基とヒドロキシル基とのモル比を1:1以下にして、2~15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸はと反応させて、部分的にエステル化されたポリ(ネオペンチル)ポリオールの組成物を形成し、
ii)上記i)で得られた部分的にエステル化されたポリ(ネオペンチル)ポリオール)を2~15個の炭素原子を有する他のカルボン酸と反応させてポリ(ネオペンチルポリオール)のエステルの組成物を形成する。
【請求項6】
ポリオールエステルが下記の式(VIII)または(IX)の一つを有する請求項1に記載の使用:
(ここで、
R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12は互いに独立してHまたはCH
3であり、
a、b、c、y、xおよびzは互いに独立して整数であり、
a+x、b+yおよびc+zは互いに独立して1から20の範囲の整数であり、
R
13は、R
14およびR
15は互いに独立して脂肪族または分岐鎖アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールシクロアルキル、アルキルシクロアルキルのアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキルから選択され、
R
13、R
14およびR
15は1~17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)
または
(ここで、
各R
17およびR
18は互いに独立してHまたはCH
3であり、
mおよびnは互いに独立して整数であり、m+nは1~10の範囲の整数であり、
R
16とR
19は互いに独立して脂肪族または分枝鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキルからなる群から選択され、
R
16およびR
19は1~17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)
【請求項7】
冷媒Fが、HFO-1234yfおよびHFO-1234zeから選択される少なくとも一種のテトラフルオロプロペンと、ジクロロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1、1、2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1、1、1、2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1、1、1、2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1、1、1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)およびこれらの混合物なる群より選択される少なくとも一種ハイドロフルオロカーボンとを含む請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
冷媒Fが下記の混合物の1つを含む請求項1~7のいずれか一項に記載の使用:
HFO-1234yfとHFC-32、
HFO-1234yfとHFC-152a、
HFO-1234yfとHFC-134a、
HFO-1234yfとHFC-125、
HFO-1234zeとHFC-32、
HFO-1234zeとHFC-152a
HFO-1234zeとHFC-134a
HFO-1234zeとHFC-125
HFO-1234yfとHFC-32とHFC-125
HFO-1234yfとHFC-152aとHFC-125
HFO-1234yfとHFC-152aとHFC-32
HFO-1234yfとHFC-134aとHFC-152a
HFO-1234yfとHFC-134aとHFC-32
HFO-1234yfとHFC-134aとHFC-125
HFO-1234zeとHFC-134aとHFC-152a
HFO-1234zeとHFC-134aとHFC-32
HFO-1234zeとHFC-134aとHFC-125
HFO-1234zeとHFC-152aとHFC-32
HFO-1234zeとHFC-152aとHFC-125
HFO-1234zeとHFC-32とHFC-125
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-134a
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-152a
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-134
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-32
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-125
HFO-1234yfとHFC-134aとHFC-152aとHFC-32
HFO-1234yfとHFC-134aとHFC-152aとHFC-125
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-134aとHFC-32
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-134aとHFC-152a
HFO-1234yfとHFO-1234zeとHFC-134aとHFC-125
HFO-1234zeとHFC-134aとHFC-152aとHFC-32
HFO-1234zeとHFC-134aとHFC-152aとHFC-125
HFO-1234yfとHFC-134aとHFC-152aとHFC-125とHFC-32
HFO-1234zeとHFC-134aとHFC-152aとHFC-125とHFC-32
【請求項9】
冷媒Fが75.5~79.5重量%のHFO-1234yfと、12~16重量%のHFC-152aと、6.5~10.5重量%のHFC-134aとを含む請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
冷媒Fが77.5重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、14%(±0.2%)のHFC-152aと、8.5重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含み、この組成物が0.5~21.0絶対バール(±0.5%)の圧力下で-40,00℃~70.00℃の沸騰温度、特に7.3絶対バール(±0.5%)の圧力下で26.97℃(±0.50℃)の沸点を有するでは共沸である請求項1~9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
熱伝達組成物としてポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも1種のテトラフルオロプロペンと少なくとも一種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含む組成物を収容した蒸気圧縮回路を有し、蒸気圧縮回路がオイル分離器を含むことを特徴とする熱伝達設備。
【請求項12】
可動式または据付け型のヒートポンプ、空調、冷蔵、冷凍、コジェネレーションおよび熱機関の中から選択される請求項11に記載の設置。
【請求項13】
熱機関を用いて電気を発生する方法であって、この方法は熱伝達組成物の蒸発と、タービン中での熱伝達組成物の放圧による電気の生成と、熱伝達組成物の凝縮と、熱伝達組成物の圧縮とを順次有し、この方法は油分離器を使用し、熱伝達組成物はポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも一種のテトラフルオロプロペンと少なくとも一種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
熱伝達組成物を収容した蒸気圧縮回路によって流体または物品の加熱または冷却方法であって、この方法は熱伝達組成物の蒸発、熱伝達組成物の圧縮、熱伝達組成物の凝縮および熱伝達組成物の膨張を順次有し、上記圧縮回路はオイルセパレータを有し、熱伝達組成物はポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも1つのテトラフルオロプロペンと少なくとも一種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロプロペンと少なくとも一種の潤滑剤とをベースにした組成物の冷凍、空調およびヒートポンプでの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中のオゾン層を破壊する物質に関する問題がモントリオールで議論され、クロロフルオロカーボン(CFC)の製造と使用を減らすための議定書が署名された。この議定書がさらに改正されてフロンの放棄とヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を含む他の製品に対する規制が行なわれた。
【0003】
冷媒および冷凍空調の業界はこれら冷媒の代替に多額の投資をしており、ハイドロフルオロカーボン(HFC)が販売されている。
【0004】
自動車業界では多くの国で車両の空調システムがクロロフルオロカーボン冷媒(CFC-12)からオゾン層に対して有害性の低いハイドロフルオロカーボン(1、1、1、2-テトラフルオロエタン:HFC-134a)に移行した。しかし、このHFC-134a(GWP=1430)は京都議定書で規定された目標に対して地球温暖化係数が高いものと考えられている。流体の温室効果への寄与は二酸化炭素の場合を基準値1として加熱能力をまとめたGWP(地球温暖化係数)を基準にして定量化される。
【0005】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は地球温暖化係数が低く、京都議定書で設定された目標を達成できるものとされている。
【0006】
[特許文献1](特開平4-110388号公報)には熱伝達材料としてのヒドロフルオロプロペンが開示されている。
【0007】
工業的に最も一般的に使用されている冷凍機械は液体冷媒の蒸発による冷却をベースにしたものである、この流体は蒸発後に圧縮され、冷却に使用されて液体状態に戻り、このサイクルを繰り返す。
【0008】
可動機械部品の円滑な運転を確保するため、特に、圧縮機の軸受を潤滑するために潤滑油は必須である。
【0009】
潤滑剤(オイル)は圧縮機を通る毎に可動部品上に存在する冷媒と接触し、その一定量を取り去り、サイクル中に冷媒が潤滑剤を随伴して蒸発器中に運ぶ傾向がある。オイルのこの移行問題を克服するために、(圧縮機出口の)高圧部から低圧部(圧縮機入口)へ運ばれる潤滑剤をパージすることができるオイル分離システムを使用することは公知である。
【0010】
POEオイルは熱安定性に優れ、HFO、特にHFO-1234との混和性に優れているので、冷凍および/またはエアコンなどの熱伝達システムで一般的に使用されている。
【0011】
しかし、HFO-1234はPOEオイル中への溶解性が良いため、オイル分離器を有する熱伝動システムで比較的大量の冷媒がオイルに捕捉されるという問題が生じる。オイルをパージすると圧縮機出口で捕捉された冷媒がその入力側に直接戻ることになる。これは全ての冷媒が冷凍サイクルで使われないということであり、設備の効率がネットで損失することを意味し、しかも、圧縮機、特にオイルの量が少ないスクリュー圧縮機の潤滑不足にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、上記欠点の少なくとも一つを解決することができる新規な組成物を提供するというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の対象は、ポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも1種のテトラフルオロプロペンと少なくとも一種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含む組成物の、オイル分離器を有する蒸気圧縮回路を有する熱伝達システムでの使用にある。
【0015】
本明細書全体で、特に明記しない限り、化合物の割合は重量パーセントを表す。
【0016】
本発明組成物はオイルセパレータ(油分離器)を有する伝熱システムの効率を向上させることができるという利点、特に、ハイドロフルオロカーボンを含まないHFO-1234/POEオイルの組成物に対して効率を向上させることができるという利点がある。
【0017】
本発明の組成物はさらに、HFO-1234yf単独の場合に比べて、潤滑油をセパレータ中により多量に回収できるので、圧縮機潤滑油の劣化を低減させることができるという利点がある。
【0018】
本明細書で「本発明組成物」という用語は、ポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも1種のテトラフルオロプロペンと少なくとも一種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含む組成物を意味する。
以下、本発明組成物中の種々の化合物とその比率を詳細に説明する。
【0019】
冷媒
本発明の冷媒流体Fは、少なくとも一種のテトラフルオロプロペン(HFO-1234)と、少なくとも1種のハイドロフルオロカーボンとを含む。
【0020】
テトラフルオロプロペンの中では、1、3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)および1、2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)を挙げることができる。
【0021】
好ましいのはテトラフルオロプロペンHFO-1234yfとHFO-1234zeである。
【0022】
本発明の冷媒流体Fは公知の任意の方法、例えば各成分を単に混合することで製造することができる。
【0023】
本明細書で「HFO-1234ze」はシス(Z)またはトランス(E)とは無関係に1、3,3,3-トリフルオロプロペンを意味する。従って、
「HFO-1234ze」という用語にはシスHFO-1234ze、トランスHFO-1234ze、および、これら2つの異性体の任意の比率の全ての混合物が含まれる。
【0024】
本明細書で「HFO-1234yf」は2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを意味する。
【0025】
本明細書で「HFO-1234ye」は、シス(Z)またはトランス(E)とは無関係に、1、2,3,3-テトラフルオロプロペンを意味する。従って、本明細書で「HFO-1234ye」という用語はシスHFO-1234ye、トランスHFO-1234yeおよび2つの異性体の任意の割合の全ての混合物をカバーする。
【0026】
本発明の一つの実施形態では、ハイドロフルオロカーボンはジクロロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1、1、2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1、1、1、2-テトラフルオロエタン(HFC-134A)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152A)、フルオロエタン(HFC-161)、1、1、1、2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1、1、1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)およびこれらの混合物からなる群の中から選択される。
【0027】
本発明の一つの実施形態では、本発明冷媒FはHFO-1234yfおよびHFO-1234zeから選択される少なくとも一種のテトラフルオロプロペン(HFO-1234)と、ジクロロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1、1、2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1、1、1、2-テトラフルオロエタン(HFC-134A)、1,1ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1、1、1、2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1、1、1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)およびこれらの混合物からなる群から選択さる少なくとも1種のハイドロフルオロカーボンとを含む。
【0028】
本発明の一つの実施形態では、冷媒Fは2つのテトラフルオロプロペン、特にHFO-1234yfとHFO-1234zeとを含む。
【0029】
特定実施形態では、本発明冷媒Fは二元組成物(2つの熱伝達化合物からなる)、三元組成物(3つの熱伝達化合物からなる)、四元組成物(4つの熱伝達化合物からなる)または五元組成物(5つの熱伝達化合物からなる)である。
【0030】
冷媒Fに不純物が存在していても、いなくてもよい。不純物が存在する場合、その量は1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下、好ましくは0.01%以下である。
【0031】
本発明の一つの実施形態では、冷媒Fは基本的に二つ、三つ、四つまたは五つの熱伝達化合物から成る。
【0032】
本発明の好ましい冷媒組成物Fは以下の混合物を含むか、好ましくは以下の混合物で構成される。
【0033】
本発明の好ましい冷媒組成物Fは以下の混合物を含むか、好ましくは以下の混合物で構成される。
【0034】
本発明の好ましい冷媒組成物Fは以下の混合物を含むか、好ましくは以下の混合物で構成される。
【0035】
本発明の好ましい冷媒組成物Fは以下の混合物を含むか、好ましくは以下の混合物で構成される。
【0036】
本発明の冷媒流体Fの中で、テトラフルオロプロペン、特にHFO-1234yfおよび/またはHFO-1234zeの質量割合は例えば流体の1~5%または流体の5~10%または流体の10~15%または流体の15~20%または流体の20~25%または流体の25~30%または流体の30~35%または流体の35~40%または流体の40~45%または流体の45~50%または流体の50~55%または流体の55~60%または流体の60~65%または流体の65~70%または流体の70~75%または流体の75~80%または流体の80~85%または流体の85~90%または流体の90~95%または流体の95~99%または流体の99~99.5%または流体の99.5~99.9%または流体の全質量に対して流体の99.9%以上にすることができる
【0037】
冷媒F中のテトラフルオロプロペン、特にHFO-1234yfおよび/またはHFO-1234zeの含有量は上記の複数の範囲の間、例えば50~55%と55~60%の間の50~60%にすることができる。
【0038】
好ましい実施形態では、冷媒F中のテトラフルオロプロペン、特にHFO-1234yfおよび/またはHFO-1234zeの質量割合は70%以上、好ましくは70%~95%の間、特に75%と90%の間、特に75%~78%の間である。
【0039】
本発明の冷媒野中で、ハイドロフルオロカーボンの量比率は流体の1~5%または流体の5~10%または流体の10~15%または流体の15~20%または流体の20~25%または流体の25~30%または流体の30~35%または流体の35~40%または流体の40~45%または流体の45~50%または流体の50~55%または流体の55~60%または流体の60~65%または流体の65~70%または流体の70~75%または流体の75~80%または流体の80~85%または流体の85~90%または流体の90~95%または流体の95~99%または流体の99~99.5%または流体の全質量に対して流体の99.5~99.9%にすることができる。また、冷媒F中のハイドロフルオロカーボンの含有量は上記の複数の範囲で変えることができ、例えば50~55%と55~60%から50~60%にすることができる。
【0040】
好ましい実施形態では、冷媒F中のハイドロフルオロカーボンの重量割合は流体の総重量に対して70%以下、好ましくは50%以下、好ましくは10%~30%、特に18%~27%である。
【0041】
【0042】
好ましい冷媒F流体は上記の表に記載の濃度で上記混合物を含むものである。
【0043】
本発明の一つの実施形態で好ましい冷媒組成物は下記である:
HFO-1234yfとHFC-134a
HFO-1234zeとHFC-134a
HFO-1234yfとHFC-152aとHFC-134a
【0044】
本発明の一つの実施形態で好ましい冷媒は下記のものである:
HFO-1234yfとHFC-134a
HFO-1234zeとHFC-134a
HFO-1234yfとHFC-152aとHFC-134a
【0045】
好ましい実施形態では、冷媒Fは75.5~79.5重量%のHFO-1234yfと、12~16重量%のHFC-152aと、6.5~10.5重量%のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。特に、冷媒Fは流体Fの総量に対して77.5重量%のHFO-1234yfと、14重量%のHFC-152aと、8.5重量%のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。
【0046】
好ましい実施形態では、冷媒Fは流体Fの総重量に対して74~81.5重量%のHFO-1234yfと、6.5~10.5重量のHFC-134aと、12~16重量%のHFC-152aとを含む(好ましくは成る)。
【0047】
共沸混合物か共沸様(近共沸)混合物であるか否は所定温度での液体と蒸気の飽和圧力から同定できる。
【0048】
本願明細書で「蒸気飽和圧力」または「PSAT VAP」という用語は液体の一滴が最初に蒸気状態の流体を形成し始める圧力を意味する。この圧力はデュー圧力とも呼ばれる。
【0049】
本願明細書で「液体飽和圧力」または「PSAT LIQ」という用語は蒸気のバブルが最初に液体状態の流体を形成し始める圧力をいう。この圧力は気泡圧力とも呼ばれる。
【0050】
本願明細書で蒸気および液体の飽和蒸気圧から計算されるパーセントR
Pは下記の式に対応する:
【0051】
本発明では、上記定義の比RPが0~0.5%の間にある場合に混合物は共沸であるという。
【0052】
本発明で「XとYとの間」とは両端のXおよびYを含む。例えば「0と0.50%との間」の範囲は値0と0.5%を含む。
【0053】
本願明細書で、上記定義の比Rpが0.5%よりも厳密に大きく且つ10.0%よりも厳密に小さい場合、その混合物は共沸様混合物である。
【0054】
例えば、ASHRAE 34-2013の「冷媒の指定および安全分類」に従った規格では下記の表の混合物は共沸混合物として分類される。この規格では成分、組成および温度が同じ規格で示され、圧力はRefrop 9(参照流体特性):冷媒の性質を計算するためにNIST(アメリカ国立標準技術研究所)によって開発されたソフトウェア)で計算される(Rpは2桁近似値)。
【0055】
【0056】
この表は特に飽和圧力の相対差が0.5%以下の共沸冷媒に分類されたものを示している。
【0057】
本発明の冷媒Fのいくつかは共沸または近共沸混合物であるという利点を有する。特に下記の混合物を挙げることができる。
【0058】
【0059】
好ましい実施形態では、組成物の総重量に対して74~81.5重量%のHFO-1324yfと、6.5~10.5重量%のHFC-134aと、12~16重量%のHFC-152aとを含む(好ましく成る)冷媒流体Fは、-40,00~70,00℃の間の温度、0.5~21.0バール(±0.5%)の間の圧力で共沸組成物である。
【0060】
好ましい実施形態では、組成物の総重量に対して75.5%~79.5重量%のHFO-1324yfと、6.5~10.5重量%のHFC-134aと、12~16重量%のHFC-152aとを含む(好ましくは成る)冷媒Fは、-40,00~70,00℃の間の温度、0.5~21、0バール(±0.5%)の間の圧力で共沸組成物である。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して77.5重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、14重量%(±0.2%)重量%のHFC-152aと、8.5重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含み(好ましくは成り)、この組成物は0.5~21.0絶対バール(±0.5%)の間の圧力で-40,00℃~70.00℃の間に沸点を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して77.5重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、14重量%(±0.2%)のHFC-152aと、8.5重量%(±0.2%)HFC-134aとを含み(好ましくは成り)、この組成物は7.3絶対バール(±0.5%)の圧力で26.97℃(±0.50℃)の沸点を有する。
【0068】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して77.5重量%のHFO-1234yfと、16重量%のHFC-152aと、6.5重量%のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は0.5~21、0(絶対バール)の間の圧力、好ましくは0.6~20.9(絶対バール)(±0.5%)の間の圧力で-40,00℃~70.00℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して77.5重量%のHFO-1234yfと、16重量%のHFC-152aと、6.5重量%のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は7.3(絶対バール)(±0.5%)の間の圧力で26.97℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0070】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して77.5重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、15.8重量%(±0.2%)のHFC-152aと、6.7重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は0.5~21.0(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力、好ましくは0.6~20.9(絶対バール)(±0.5%)の間の圧力で-40,00℃~70.00℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0071】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して77.5重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、15.8重量%(±0.2%)のHFC-152aと、6.7重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は7.3(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力26.97℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して81、5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、12重量%(±0.2%)のHFC-152aと、6.5重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は0.5~21.0(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力、好ましくは0.6~20.9(絶対バール)(±0.5%)の間の圧力で-40,00℃~70.00℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して81、5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、12重量%(±0.2%)のHFC-152aと、6.5重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は7.3(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力で26.97℃ (±0.50%)の沸点を有する。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して75.5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、14.5重量%(±0.2%)のHFC-152aと、10重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は0.5~21.0(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力、好ましくは0.78~20.98(絶対バール)(±0.5%)の間の圧力で-40,00℃~70.00℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して75.5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、14.5重量%(±0.2%)のHFC-152aと、10重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は7.3(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力で26.97℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して75.5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、12重量%(±0.2%)のHFC-152aと、10.5重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は0.5~21.0(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力、好ましくは0.61~21.00(絶対バール)(±0.5%)の間の圧力で-40,00℃~70.00℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して75.5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、12重量%(±0.2%)のHFC-152aと、10.5重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は7.3(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力で26.97℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して75.5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、12.2重量%(±0.2%)のHFC-152aと、10.3重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は0.5~21.0(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力、好ましくは0.61~21.00(絶対バール)(±0.5%)の間の圧力で-40,00℃~70.00℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明の共沸組成物は組成物の総重量に対して75.5%重量%(±0.2%)のHFO-1234yfと、12.2重量%(±0.2%)のHFC-152aと、10.3重量%(±0.2%)のHFC-134aとを含む(好ましくは成る)。この組成物は7.3(±0.5%)(絶対バール)の間の圧力で26.97℃(±0.5%)の沸点を有する。
【0080】
潤滑剤
本明細書では「潤滑剤」「潤滑オイル」および「潤滑油」は同じ意味を有する。
【0081】
本発明の潤滑剤は一つまたは複数のポリオールエステルを含む。
本発明の一つの実施形態では、ポリオールエステルはカルボン酸またはカルボン酸の混合物と、少なくとも1種のポリオールとを反応させて得られる。
本発明では、特に明記しない限り、「ポリオール」という用語は少なくとも2個のヒドロキシル基(-OH)を含む化合物を意味する。
【0082】
エステルドポリオール(A)
本発明の一つの実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記式(I)に対応する:
R1[OC(O)R2]n (I)
(ここで、
R1は直鎖または分枝鎖の炭化水素基で、必要に応じて少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されていてもよく、および/または、-O-、-N-および-S-からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよく、
各R2は下記からなる群から互いに独立して選択され:
i) H
ii)脂肪族炭化水素基
iii)分枝鎖炭化水素基。
iv) 上記のii)および/またはiii)と8~14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素との混合物、
nは少なくとも2の整数)
本明細書で「炭化水素基」とは炭素と水素の原子からなる基を意味する。
【0083】
本発明の一つの実施形態では、ポリオールは下記一般式(II)を有する:
R1(OH)n (II)
(ここで、
R1は直鎖または分枝鎖の炭化水素基で、必要に応じて少なくとも1つのヒドロキシル、好ましくは2つのヒドロキシル基で置換されていてもよく、および/または、-O-、-N-および-S-からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むことができ、
nは少なくとも2の整数)
【0084】
好ましくは、R1は4~40個の炭素原子、好ましくは4~20個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素基である。
好ましくは、R1は少なくとも1個の酸素原子を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素基である。
好ましくは、R1は2個のヒドロキシル基で置換された4~10個の炭素原子、好ましくは5個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素基である。
【0085】
好ましい実施形態では、ポリオールは2~10個のヒドロキシル基、好ましくは2~6個のヒドロキシル基を含む。
本発明のポリオールは一つまたは複数のオキシアルキレン基を含むことができ、この特定の場合がポリエーテルポリオールである。
【0086】
本発明のポリオールは1つまたは複数の窒素原子を含んでいてもよい。例えば、ポリオールは3~6つのOH基を有するアルカノールアミンでもよい。好ましくは、ポリオールは少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのOH基を含むアルカノールアミンである。
【0087】
本発明で好ましいポリオールはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ネオペンチルグリコール、1,2ブタンジオール、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ヘキサグリセロールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
本発明のカルボン酸は下記の一般式(III)を有することができる:
R2COOH (III)
(ここで:
R2は下記の群から選択される:
i) H
ii)脂肪族炭化水素基
iii)分枝鎖炭化水素基。
iv) 上記のii)および/またはiii)と8~14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素との混合物、
【0089】
好ましくは、R2は1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基である。
好ましくは、R2は5~14個の炭素原子、好ましくは6~8個の炭素原子、特に4~20個の炭素原子を有する分岐鎖の炭化水素基である。
【0090】
好ましい実施形態では、分岐鎖の炭化水素基は下記の式(IV)を有する:
-C(R3)R4)(R5) (IV)
(ここで、
R3、R4およびR5は互いに独立してアルキル基であり、アルキル基の少なくとも一つは少なくとも2個の炭素原子を含む)
このような分枝鎖アルキル基はカルボキシル基に結合したときに「ネオ基」とよばれ、対応する酸はネオ酸とよばれる。好ましくは、R3およびR4はメチルであり、R10は少なくとも2個の炭素原子を含むアルキル基である)
【0091】
本発明では、基R2は一つまたは複数のカルボキシまたは-COOR6のようなエステル基を含む。このR6はアルキル、ヒドロキシアルキルまたはヒドロキシアルキルアルキル基を表す。
好ましくは、式(III)の酸R2COOHはモノカルボン酸である。
【0092】
炭化水素基が脂肪族であるカルボン酸の例としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸およびヘプタン酸が挙げられる。
炭化水素基が分岐鎖であるカルボン酸の例としては2-エチル-n-酪酸、2-ヘキシルデカン酸、イソステアリン酸、2-メチルヘキサン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘプタン酸およびネオデカン酸が挙げられる。
【0093】
式(I)のポリオールエステルの製造で使用できるカルボン酸の第三のタイプは8~14個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸であるその例としてはデカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸が挙げられる。ジカルボン酸の中ではマレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が挙げられる。
【0094】
好ましい実施形態では、式(I)のポリオールのエステルを製造るために使用されカルボン酸はモノカルボン酸とジカルボン酸の混合物であり、モノカルボン酸が主である。ジカルボン酸が存在すると高粘度のポリオールエステルが形成される。
【0095】
特に、カルボン酸とポリオールとの反応で式(I)のポリオールエステルを生成する反応は酸によって触媒される反応である。これは可逆反応で、多量の酸を使用するか、反応中に形成される水を除去することで完成できる。
【0096】
エステル化反応は硫酸、リン酸のような有機または無機酸の存在下で行うことができまる。反応は触媒の不存在下で行うのが好ましい。
【0097】
カルボン酸とポリオールの量は所望する結果に応じて混合物内で変えることができる。全てのヒドロキシル基がエステル化されている特殊なケースでは、十分なカルボン酸を全ての水酸基と反応させるために添加する。
【0098】
本発明の一つの実施形態では、カルボン酸の混合物を使用する。この場合にはポリオールと順次反応させることができる。
【0099】
好ましい実施形態では、カルボン酸の混合物を使用する場合、最初に一つのポリオールをカルボン酸、典型的にはより大きな分子量を有するカルボン酸と反応させ、続いて、脂肪族炭化水素鎖を有するカルボン酸と反応させる。
【0100】
本発明の一つの実施形態では、エステルは、高温での酸の存在下で、反応中に形成された水を除去しながら、ポリオールとカルボン酸(又はその無水物又はエステル誘導体)とを反応させて形成することができる。典型的には、反応は75~200℃の温度で行うことができる。
【0101】
別の実施形態では、形成されたポリオールのエステルが完全に反応していないヒドロキシル基を含む。この場合は部分エステル化ポリオールエステルである。
【0102】
好適な実施形態では、ポリオールエステルはペンタエリスリトールアルコールおよびカルボン酸混合物:イソノナン酸、8~10の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を有する少なくとも酸およびヘプタン酸から得られる。好ましいポリオールエステルはペンタエリトリトールと、70%イソノナン酸、15%の8~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を有する少なくとも1つのカルボン酸および15%のヘプタン酸の混合物とから得られる。その例としてはCPIエンジニアリングサービス(株)から市販のオイル:Solest 68が挙げられる。
【0103】
ポリオールエステル(B)
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは、1つまたは複数の最大で8個の炭素原子を有する分枝鎖カルボン酸の少なくとも一種のエステルを含む。このエステルは上記の分枝鎖カルボン酸と1種以上のポリオールとの反応で得ることができる。
【0104】
分枝鎖カルボン酸は少なくとも5個の炭素原子を含むのが好ましい。特に、分枝鎖カルボン酸は5~8個の炭素原子、好ましくは5個の炭素原子を含む。
【0105】
好ましくは、上記分枝鎖カルボン酸は9個の炭素原子を含まない。特に、分枝鎖カルボン酸は3,5,5-トリメチルヘキサン酸ではない。
【0106】
好ましい実施形態では、分岐鎖カルボン酸は2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸およびこれらの混合物から選択される。
【0107】
好ましい実施形態では、ポリオールはネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0108】
好ましい実施形態では、ポリオールエステルは下記から得られる:
i)2-メチルブタン、3-メチルブタン酸およびこれらの混合物から選択されるカルボン酸と、
ii)ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるポリオール。
【0109】
好ましくは、ポリオールエステルは2-メチルブタン酸とペンタエリスリトールとから得られる。
好ましくは、ポリオールエステルは2-メチルブタン酸とジペンタエリスリトールとから得られる。
好ましくは、ポリオールエステルは3-メチルブタン酸とペンタエリスリトールとから得られる。
好ましくは、ポリオールエステルは3-メチルブタン酸とジペンタエリスリトールとから得られる。
好ましくは、ポリオールエステルは2-メチルブタン酸とネオペンチルグリコールとから得られる。
【0110】
ポリオールエステル(C)
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記から得られるポリ(ネオペンチルポリオール)のエステルである:
i)下記式(V)を有するネオペンチルポリオール:
(ここで、
各Rは互いに独立してCH
3、C
2H
5またはCH
2OHを表し、
pは1から4の範囲の整数である)
を、酸触媒の存在下で、ヒドロキシル基とカルボキシル基のモル比を1:1にして、2~15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸と反応させて部分的にエステル化したポリ(ネオペンチル)ポリオール組成物を形成し、
ii)i)の工程の終わりに得られる部分的にエステル化されたポリ(ネオペンチル)ポリオール組成物を2~15個の炭素原子を有する他のカルボン酸と反応させて最終のポリ(ネオペンチルポリオール)エステル組成物を形成する。
【0111】
i)の反応はモル比を1:4~1:2にして行うのが好ましい。
【0112】
好ましくは、ネオペンチルポリオールは下記の式(VI)を有する:
(ここで、
各Rは互いに独立してCH
3、C
2H
5またはCH
2OHである)
【0113】
好ましいネオペンチルポリオールはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコールから選択される。特に、ネオペンチルポリオールはペンタエリトリトールである。
【0114】
POEベースの潤滑油を製造するためには単一のネオペンチルポリオールを使用するのが好ましい。いくつかの場合には、2つ以上のネオペンチルポリオールが使用される。これは特に、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびテトラエリスリトールを少量含む商用製品のペンタエリトリトールの場合である。
【0115】
好ましい実施形態では、上記のモノカルボン酸は5~11の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を含む。
【0116】
モノカルボン酸は特に下記一般式(VII)を有する:
R'C(O)OH (VII)
(ここで、
R'は直鎖または分枝鎖のC1-C12アルキル基、C6-C12アリール、C6-C30アラルキル基である。好ましくは、R'はC4-C10アルキル基、好ましくはC5-C9アルキル基である)
【0117】
モノカルボン酸は特に、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、3-メチルブタン酸、2-メチルブタン酸、2,4-ジメチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチル酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0118】
好ましい実施形態では、上記モノカルボン酸はn-ヘプタン酸か、n-ヘプタン酸と他の線形モノカルボン酸、特に、n-オクタン酸および/またはn-デカン酸との混合物である。このモノカルボン酸の混合物は15~100モル%のヘプタン酸と、85~0モル%のモノカルボン酸とを含むことができる。特に、この混合物は75~100モル%のヘプタン酸と、25~0モル%のオクタン酸およびデカン酸の混合物(モル比3:2)である。
【0119】
好ましい実施形態では、ポリオールエステルは下記から成る:
i)45重量%~55重量%のモノペンタエリスリトールと、2~15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸のエステル、
ii)少なくとも13重量%のジペンタエリスリトールと、2~15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸のエステル、
iii)10重量%以下のトリペンタエリスリトールと、2~15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸のエステル、
iv)少なくとも25重量%のテトラエリスリトールおよびペンタエリスリトールの他のオリゴマーと、2~15個の炭素原子を有する少なくとも1種のモノカルボン酸のエステル。
【0120】
ポリオールエステル(D)
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記の式(VIII)を有する:
【0121】
(ここで、
R7、R8、R9、R10、R11およびR12は互いに独立してHまたはCH3であり、
a、b、c、y、xおよびzは互いに独立して整数で、a+x、b+yおよびc+zは互いに独立して1~20の範囲の整数であり、
R13、R14およびR15は互いに独立して脂肪族または分岐鎖アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキルのアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキルから選択され、
R13、R14およびR15は1~17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)
【0122】
好ましい実施形態では、R13、R14およびR15の各々は直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基で、これらのアルキル、アルケニルまたはシクロアルキル基はN、O、Si、FまたはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、好ましくは、R13、R14およびR15の各々は互いに独立して3~8個の炭素原子、好ましくは5~7個の炭素原子に有している。
【0123】
好ましくは、a+x、b+yおよびc+zは互いに独立に1~10、好ましくは2~8、より好ましく2~4の範囲の整数である。
R7、R8、R9、R10、R11およびR12はHであるのが好ましい。
【0124】
上記式(VIII)のポリオールエステルは一般に国際出願WO2012/177742号公報の[0027]~[0030]に記載の方法で製造することができる。
【0125】
特に、式のポリオールエステル(VIII)は(国際出願WO2012/177742号の[0027]に記載のように)グリセロールアルコキシレートと2~18個の炭素原子を有する一種または複数のモノカルボン酸とのエステル化によって得られる。
【0126】
好ましい実施形態では、モノカルボン酸は下記の式の1つを有する:
R13-COOH
R14COOH
R15COOH
(ここで、R13、R14およびR15は上記定義のもの)
また、カルボン酸の誘導体、無水物、エステルおよびアシルハライドを使用することもできる。
【0127】
エステル化は一種または複数のモノカルボン酸を用いて行うことができる。好ましいモノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソブタン酸、ピバル酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチル酸、ノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、蓚酸、アビエチン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、テトラヒドロ安息香酸、2-エチルヘキサン酸、フロ酸、安息香酸、4-アセチル安息香酸、ピルビン酸、4-tert-ブチル安息香酸、ナフテン酸、2-メチル安息香酸、サリチル酸、これらの異性体、メチルエステルおよび混合物を挙げることができる。
【0128】
好ましくは、エステル化はペンタン酸、2-メチルブタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、3,3、5-トリメチル、2-エチルヘキサン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸およびイソノナン酸からなる群から選択される1つのまたは複数のモノカルボン酸を用いて行われる。
【0129】
好ましくは、エステル化は酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、n-ヘキサン、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,3,5-トリメチル酸、n-ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ウンデセレン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される一つまたは複数のモノカルボン酸を用いて行われる。
【0130】
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記の式(IX)を有する:
【0131】
(ここで、
R17およびR18の各々は互いに独立してHまたはCH3であり、
mおよびnの各々は互いに独立して整数であり、m+nは1~10までの範囲の整数であり、
R16およびR19は互いに独立して脂肪族または分枝鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキルからなる群から選択され、
R16およびR19は1~17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)
【0132】
好ましい実施形態では、R16およびR19のそれぞれは互いに独立して直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基を表し、これらのアルキル、アルケニルまたはシクロアルキル基はN、O、Siの、FまたはSから選択される少なくとも一種のヘテロ原子含むことができる。好ましくは、R16およびR19のそれぞれは互いに独立して3~8個の炭素原子、好ましくは、5~7個の炭素原子を有する。
【0133】
好ましい実施形態では、R17およびR18のそれぞれはHであり、および/またはは、m+nは2~8、4~10、2~5または3~5の整数であり、特に、m+nは2,3または4である。
【0134】
好ましい実施形態では、式(IX)のポリオールエステルはトリエチレングリコールのジエステル、テトラエチレングリコールのジエステル、特に4~9個の炭素原子を有する一つまたは2つのモノカルボン酸とのジエステルである。
【0135】
上記式(IX)のポリオールエステルは、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはオリゴ-またはポリアルキレングリコール(これはオリゴまたはポリエチレングリコール、オリゴ-またはポリプロピレングリコールまたはエチレングリコール-プロピレングリコールブロックを有するコポリマーにすることができる)と、2~18個の炭素原子を有する一つまたは二つのモノカルボン酸とのエステル化で製造することができる。このエステル化反応は上記一般式(VIII)のポリオールエステルを製造するためのエステル化反応と同様に行うことができる。
【0136】
特に、式(IX)のポリオールエステルの製造では、上記式(VIII)のポリオールエステルを製造で使用されるものと同じモノカルボン酸を使用することができる。
【0137】
本発明の一つの実施形態では、本発明のポリオールエステルをベースにした潤滑剤は、20~80重量%、好ましくは30~70重量%、好ましくは40~60重量%の少なくとも一種の式(VIII)のポリオールエステルと、80~20%、好ましくは70~30重量%、好ましくは60~40重量%の少なくとも1つの式(IX)のポリオールエステルとを含む。
【0138】
一般的に、エステル化反応時にいくつかのアルコール官能基はエステル化できないが、その割合は低い。従って、PEOは-CH2-O-C(=O)-単位に対してモル単位で0~5%のCH2OHを含むことができる。
【0139】
本発明の好ましいPOE潤滑剤は40℃での粘度が1~1000センチストークス(cSt)、好ましくは10~200cSt、より好ましくは20~100cSt、好ましくは30~80cStのものである。
【0140】
オイルの国際分類はIS0規格3448-1992(NF T60-141)によって与えられ、各オイルは40℃の温度で測定した平均粘度クラスによって指定される。
【0141】
組成物
本発明組成物において冷媒Fの質量割合は組成物の1~5%または組成物の5~10%または組成物の10~15%または組成物の15~20%または組成物の20~25%または組成物の25~30%または組成物の30~35%または組成物の35~40%または組成物の40~45%または組成物の45~50%または組成物の50~55%または組成物の55~60%または組成物の60~65%または組成物の65~70%または組成物の70~75%または組成物の75~80%または組成物の80~85%または組成物の85~90%または組成物の90~95%または組成物の95~99%または組成物の99~99.5%または組成物の99.5~99.9%または組成物の99.9%以上にすることができる。媒量Fの含有量は上記範囲の複数の間、例えば50~55%と55~60%の間すなわち50~60%にすることができる。
【0142】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は冷媒Fを組成物の総重量に対して50重量%以上、特に50重量%~99重量%含む。
【0143】
本発明の組成物において、ポリオールエステル系潤滑油(POE)の重量割合は組成物の1~5%または組成物の5~10%または組成物の10~15%または組成物の15~20%または組成物の20~25%または組成物の25~30%または組成物の30~35%または組成物の35~40%または組成物の40~45%または組成物の45~50%または組成物の50~55%または組成物の55~60%または組成物の60~65%または組成物の65~70%または組成物の70~75%または組成物の75~80%または組成物の80~85%または組成物の85~90%または組成物の90~95%または組成物の95~99%または組成物の99~99.5%または組成物の99.5~99.9%または組成物の99.9%以上にすることができる。潤滑剤の含有量は上記範囲の複数の間、例えば50~55%と55~60%の間すなわち50~60%にすることができる。
【0144】
本発明の一つの実施形態では、本発明の組成物は下記(1)と(2)で構成できる:
(1) 下記の群から選択される冷媒F:
HFO-1234yf/HFC-134a、
HFO-1234ze/HFC-134a、
HFO-1234yf/HFC-134a/HFC-152a
(2)少なくとも一種のポリオールエステル(POE)をベースにした潤滑剤、特に、上記ポリオールエステルA)、B)、C)またはD)から選択されるポリオールエステル、特に、式(I)(VIII)または(XI)のポリオールエステル
【0145】
本発明の一つの実施形態では、本発明の組成物は下記(1)と(2)で構成できる:
(1) 下記混合物の1つを含む冷媒F:
HFO-1234yf/HFC-134a
HFO-1234ze/HFC-134aまたは
HFO-1234yf/HFC-134a/HFC-152a
(2)少なくとも一種のポリオールエステル(POE)をベースにした潤滑剤、特にポリオールエステルA)B)、C)またはD)から選択されるか、特に式(I)(VIII)または(XI)のポリオールエステル
【0146】
本発明の一つの実施形態では、本発明組成物は下記(1)と(2)から成る:
(1)HFO-1234yf/HFC-134A/HFC-152a混合物を含む(好ましくは成る)冷媒F、特に75.5~79.5重量%のHFO-1234yfと、12~16重量%のHFC-152aと、6.5~10.5重量%のHFC-134a、好ましくは重量77.5重量%のHFO-1234yfと、14重量%のHFC-152aと、8.5重量%のHFC-134aとを含む冷媒Fと、
(2)少なくとも一種のポリオールエステル(POE)をベースにした潤滑剤、特にポリオールエステルA)B)、C)またはD)から選択されるか、式(I)(VIII)または(XI)のポリオールエステル。
【0147】
本発明の組成物は(意図された用途で本質的に熱伝達化合物ではない)1つまたは複数の添加剤を含むことができる。
この添加剤はナノ粒子、安定剤、界面活性剤、トレーサー剤、蛍光剤、付香剤および可溶化剤から選択することができる。添加剤は潤滑剤ではないのが好ましい。
【0148】
本発明の一つの実施形態では、発明の組成物は熱伝達組成物である。
安定剤は、それが存在する場合、熱伝達組成物中の質量は最大で5%である。安定剤の中ではニトロメタン、アスコルビン酸、テレフタル酸、アゾール類、例えばトリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、フェノール化合物、例えばトコフェロール、ヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジtert-ブチル-4-メチルフェノール、(フッ素化または過フッ素化アルキルまたはアルケニルまたは芳香族)エポキシド、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ホスファイト、ホスホネート、チオールおよびラクトンを挙げることができる。
【0149】
ナノ粒子としては特にカーボンナノ粒子、金属酸化物(銅、アルミニウム)、ΤiΟ2、Al2O3、MoS2を使用することができる。
【0150】
トレーサー剤(検出可能なもの)としては、重水素化した(またはしない)ハイドロフルオロカーボン、重水素化炭化水素、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、亜酸化窒素およびこれらの組み合わせが挙げられる。トレーサー剤は熱伝達流体(冷媒F)を含む熱伝達成分とは異なる。
【0151】
可溶化剤としては、炭化水素、ジメチルエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル、アミド、ケトン、ニトリル、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、1、1、1-トリフルオロアルカンを挙げることができる。可溶化剤は伝熱流体(冷媒F)を含む伝熱成分の化合物特許は異なる。
【0152】
蛍光剤としては、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセインおよびこれらの誘導体および組合せを挙げることができる。
【0153】
付香剤としては、アルキルアクリレート、アリルアクリレート、アクリル酸、アクリルエステル、アルキルエーテル、アルキルエステル、アルキン、アルデヒド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、アリルイソチオシアネート、アルカン酸、アミン類、ノルボルネン誘導体、ノルボルネン、シクロヘキセン、芳香族複素環式化合物、アスカリドール、O-メトキシ(メチル)フェノールおよびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0154】
「熱伝達化合物」「伝熱流体」または「冷媒」とは蒸気圧縮回路中で低温低圧で蒸発することによって熱を吸収でき、高温高圧で凝縮によって熱を放出できる化合物、流体を意味する。一般的に、熱伝達流体は1種、2種、3種またはそれ以上の熱伝達化合物を含むことができる。特に、冷媒Fは熱伝達流体である。
【0155】
「熱伝達組成物」とは熱伝達流体と、意図した用途では熱伝達化合物ではない1つまたは複数の添加剤とを含む組成物を意味する。本発明の組成物は熱伝達組成物である。
【0156】
用途
本発明はさらに、熱伝達組成物として本発明の組成物を収容した蒸気圧縮回路(上記回路はオイルセパレータを有する)を含む熱伝達装置を利用した熱伝達方法にも関するものである。この熱伝達方法は流体または物体の加熱または冷却方法にすることができる。
【0157】
本発明はさらに、オイル分離器を含む蒸気圧縮システムにおける熱伝達流体としての上記組成物の使用にも関するものである。蒸気圧縮システムはスクリュー圧縮機を含むのが好ましい。
【0158】
本発明の一つの実施形態では、蒸気圧縮システムは下記のいずれかである:
(1)空調システム、または
(2)冷凍システム、または
(3)冷凍システム、または
(4)ヒートポンプシステム。
【0159】
本発明の組成物はさらに、機械的動作または電気を生成するため、特に、ランキンサイクルによって電気を生成するプロセスで使用できる。
【0160】
発明はさらに、熱伝達組成物として本発明組成物を収容した蒸気圧縮回路を含む熱伝達設備にも関するものである。この圧縮回路はオイルセパレータを含み、好ましくはスクリュー圧縮機を含む。
【0161】
本発明の一つの実施形態では、上記設備は可動式または固定式の冷凍、加熱(ヒートポンプ)、エアコン、冷凍および燃機関の中から選択される。
【0162】
上記設備はヒートポンプシステムにすることができる。この場合には、加熱される物品または流体(一般には空気、場合によっては1つまたは複数の製品、物体または有機物)が室内または車の車内(可動式の場合)に配置される。好ましい実施形態では、上記設備は空調システムである、この場合には、冷却される流体または物品(一般には空気、場合によっては1つまたは複数の製品、物体または有機物)は室内または車室(可動式の場合)に位置している。設備は冷凍システムまたは冷凍プラント(または極低温プラント)にすることができる。この場合には、冷却される流体または本体は一般に空気であるか、室内またはコンテナ中に配置された1つまたは複数の製品、物品または物体である。
【0163】
熱伝達設備は特に、ヒートポンプまたは空調システム、例えばチラー(冷却装置)である。
【0164】
本発明はさらに、熱伝達組成物を収容した蒸気圧縮回路によって流体または物品を加熱または冷却するための方法にも関するものである。この方法では熱伝達組成物の蒸発、熱伝達組成物の圧縮、熱伝達組成物の凝縮、熱伝達組成物の膨張を順次含む。熱伝達組成物は上記の本発明組成物であり、蒸気圧縮回路はオイルセパレータを含み、特にスクリュー圧縮機を含む。
【0165】
発明はさらに、熱機関を用いた発電方法にも関する。この方法は熱伝達組成物の蒸発、電気を生成するタービン内での熱伝達組成物の膨張、熱伝達組成物の凝縮、熱伝達組成物の圧縮を順次含み、熱組成物は上記組成物であり、この方法はオイル分離器を使用する。
【0166】
熱伝達組成物を収容した蒸気圧縮回路は、少なくとも1つの蒸発器と、圧縮機、好ましくはスクリュー圧縮機と、オイル分離器と、凝縮器と、膨張弁と、これら部材間で熱伝達組成物の輸送管路とを含む。蒸発器と凝縮器は熱伝達組成物と他の流体または物品との間で熱交換する熱交換器を備えている。
【0167】
本発明で使用する蒸発器は過熱蒸発器または浸水蒸発器(evaporateur noye)でもよい。過熱蒸発器では全ての熱伝達組成物が蒸発器の出口で蒸発し、蒸気相が過熱される。
【0168】
浸水蒸発器では、液体状態の熱伝達組成物は完全には蒸発しない。浸水蒸発器は液体相と蒸気相の分離器を含む。
【0169】
圧縮機としては1段または多段の遠心圧縮機またはミニ遠心圧縮機を使用することができる。ピストンを有するロータリー圧縮機またはスクリュー圧縮機を使用することもできる。
【0170】
本発明の一つの実施形態では、蒸気圧縮回路は遠心圧縮機、好ましくは遠心圧縮機と浸水蒸発器を含む。
【0171】
別の実施形態では、蒸気圧縮回路はスクリュー圧縮機、好ましくは二軸または単軸のスクリュー圧縮機を含む。特に、蒸気圧縮回路はオイルの実質的な流れ、例えば、6.3L/sを作ることができる二軸スクリュー圧縮機にすることができる。
【0172】
遠心圧縮機は熱伝達組成物を半径方向に加速させるために回転要素を使用することを特徴としており、典型的には少なくともローターと、エンクロージャ内に収容されたディフューザとを含む。熱伝達組成物はローターの中心に導入され、加速度を受けることによってローターの周囲へ流れる。従って、一つはローターによって、他方では拡散によって静圧が上昇する。速度は静圧の増加に変換される。ローター/ディフューザのセットが圧縮機の1段を構成する。遠心圧縮機は処理すべき流体の所望最終圧力と容積に応じて1~12段を有することができる。
【0173】
圧縮比は熱伝達組成物の入口に絶対圧に対する出力での絶対圧の比として定義される。
【0174】
大型遠心圧縮機の回転速度は3000~7000回転/分である。小型遠心圧縮機(ミニ遠心圧縮機又は)は一般に40,000~70,000回転/分の回転速度で運転され、小型のローター(一般に0.15m以下)を有している。
【0175】
圧縮機の効率を改善し、エネルギーコストを削減する(1段ローターと比較して)ために多段のローターを使用することができる。2段システムでは、ローターの第一段の出力で第2ローターの入力へ供給される。両方のローターを単一の軸に取り付けることができる。各段で流体の圧縮率を約4対1にすることができる。すなわち、出力の絶対圧力を入口の絶対圧力の4倍にすることができる。2段遠心圧縮機、特に自動車用2段遠心圧縮機の例は米国特許第US5065990号明細書および米国特許第US5363674号明細書に記載されている。
【0176】
遠心圧縮機は電動機またはガスタービン(例えば、自動車用途では車両の排気ガスによって駆動される)または伝動装置によって駆動できる。
【0177】
上記設備は電気を生成するためのタービン付き膨張機のカップリングを含むことができる(ランキンサイクル)。
【0178】
上記設備はさらに、熱伝達組成物と加熱または冷却される流体または物品との間で熱を伝達する(状態変化有り、または、無しで)ために使用される少なくとも1つの伝熱流体回路を含むことができる。
【0179】
上記設備はさらに、同一または異なる熱伝達組成物を収容した2つ(またはそれ以上)の蒸気圧縮回路を含むこともできる。これらの蒸気圧縮回路は例えば一緒に結合することができる。
【0180】
蒸気圧縮回路は従来の蒸気圧縮サイクルに従って動作する。このサイクルは熱伝達組成物の液相(または液体/蒸気二相)から相対的に低い圧力の気相への状態変化と、その後の相対的に高い圧力の気相への組成物の圧縮、気相の相対的に高い圧力の液相への熱伝達組成物の状態の変化(凝縮)、圧力を低下させるサイクルの繰り返しを含む。
【0181】
冷房モードの場合には、冷却される流体または物品からの熱(直接的または熱交換流体を介した間接的な熱)は熱伝達組成物の蒸発時に熱伝達組成物によって吸収され、環境下に比べて相対的に低い温度になる。冷却プロセスには空調)(車両のような可動設備または固定設備)、冷凍および凍結または極低温プロセスが含まれる。空調の分野では家庭用、商業用、工業用のエアコンが挙げられ、そこで使用される機器はチラーまたは直接膨張装置が含まれる。冷凍の分野では地域、商業用の冷凍、冷蔵、食品加工、冷蔵輸送(トラック、船舶)が挙げられる。
【0182】
加熱プロセスの場合には、熱伝達組成物の凝縮によって、熱伝達組成物の熱が(直接的または熱伝達流体を介して間接的に)環境に対して相対的に高い温度で加熱される液体または物体に伝達される。この場合は「ヒートポンプ」とよばれる。これは特に中温・高温のヒートポンプにすることができる。
【0183】
本発明の熱伝達組成物は任意タイプの熱交換器、特に並流熱交換器または好ましくは逆流熱交換器で使用することができる。
【0184】
好ましい実施形態では、本発明は、逆流熱交換器、凝縮器または蒸発器を含む冷却プロセスおよび加熱プロセスと、関連する設備とを提供する。すなわち、本発明の熱伝達組成物は逆流の熱交換器に特に有効である。蒸発器と凝縮器の両方で逆流の熱交換器を備えているのが好ましい。
【0185】
本発明で「逆流熱交換器」とは、熱が第1流体と第2流体との間で交換される熱交換器で、交換器の入口の第1流体の熱が熱交換器の出口の第2流体と交換され、熱交換器の出口で第1流体がる熱交換器の入口で第2流体と熱交換するものである。
【0186】
逆流熱交換器は例えば、第1流体の流れと第2流体の流れが反対方向であるか、ほぼ反対である装置を含む。逆流傾向で動作する交差モードの交換器は本出願の意味では逆流熱交換器の中に含まれる。
【0187】
本発明の組成物は、種々の運転条件(空調、冷却、ヒートポンプ、・・・)において圧縮機の出力でHFO-1234yfおよび/またはHFO-1234zeをよりも大きな過熱となるのが有利である(セパレータの温度と凝縮器の温度と差)
【0188】
「低温冷却」プロセスでは、蒸発器での熱伝達組成物の入口温度は-45℃~-15℃、特に-40℃~-20℃、好ましくは-35℃~-25℃、例えば約-30℃であり、凝縮器での熱伝達組成物の凝縮開始温度は25℃~80℃、特に30℃~60℃、より好ましくは35℃~55℃、例えば約40℃であるのが好ましい。
【0189】
「中温度冷却」プロセスでは、蒸発器での熱伝達組成物の入口温度は-20℃~10℃°、特に-15℃~5℃、より好ましくは-10℃~0℃、例えば約-5℃であり、凝縮器での熱伝達組成物の凝縮開始温度は25℃~80℃、特に30℃~60℃、より好ましくは35℃~55℃、例えば約50℃であるのが好ましい。このプロセスは冷凍または空調プロセスにすることができる。
【0190】
「中温度加熱」プロセスでは、蒸発器での熱伝達組成物の入口温度は-20C~10℃に°、特に-15℃~5℃に、より好ましくは-10℃~0℃、例えば約-5℃であり、凝縮器での熱伝達組成物の凝縮開始温度は25℃~80℃、好ましく30℃~60℃、より好ましくは35℃~55℃、例えば約50℃である。
【0191】
「高温加熱」プロセスでは、蒸発器での熱伝達組成物の入口温度は-20~90℃、好ましくは10℃~90℃、より好ましくは50℃~90℃、例えば約80℃であり、凝縮器での熱伝達組成物の凝縮開始温度は70℃~160℃、好ましくは90℃~150℃、より好ましくは110℃~140℃、例えば約135℃である。
【0192】
本発明の組成物は冷蔵輸送に特に有利である。
【0193】
これは生鮮品を冷蔵空間中入れて移送する冷蔵輸送を意味する。食品およびや医薬品は生鮮品の重要な部分である。
【0194】
冷蔵輸送はトラック、鉄道、船舶や、トラック、鉄道および船に適用可能なマルチプラットフォームのコンテナを使用して行うことができる。
【0195】
冷蔵輸送時の冷蔵空間内の温度は-30℃~16℃の間である。トラック、レールまたはマルチプラットフォームコンテナによる輸送時に充填される冷媒の量は4~8kgである。船舶設備の場合には100~500kgである。
【0196】
現在最も使用されている冷媒はR404Aである。
【0197】
冷凍設備の作動温度は要求される冷凍温度と外部の気候条件との関数である。同じ冷凍結尾で-30℃~16℃の広範囲をカバーすることができなければならず、寒冷地でも熱帯でも同様に動作しなければならない。
最も厳しい蒸発温度条件は-30℃である。
【0198】
オイル分離器
本発明では蒸気圧縮回路がオイルセパレータを有している。
【0199】
本発明の一つの実施形態では、オイルセパレータは圧縮機と凝縮器との間に配置される。
【0200】
本発明では、オイルセパレータは容器またはオイルを回収するための少なくとも一つの偏向板またはスクリーンを有する円筒管にすることができる。
【0201】
本発明の一つの実施形態では、オイルセパレータがフロート機構/バルブ/ポインを含む。この特定ケースでは、セパレータによって回収されたオイルはフロート機構/バルブ/ポインタを含む下が方法和部分に収容される。オイルレベルがフロート機構を上昇させるのに十分に高い場合には、バルブ/ポインタシステムが開いてオイルが圧縮機のハウジングに再導入される。このオイルの戻しはオイル分離器と圧縮機ハウジングとの間の圧力差で行なわれる。
【0202】
オイルセパレータは圧縮機から来る冷媒と潤滑油のガス状混合物中の冷媒から潤滑油(潤滑剤)を分離できるのが有利である。特に、オイル分離器によって冷媒を凝縮器へ送り、分離した潤滑油を圧縮機へ戻すことができるのが有利である、
【0203】
本発明の圧縮回路には、オイル分離器と圧縮機入口との間にオイル戻りラインを有している。
【0204】
特に、オイル分離器は入口弁(本発明組成物の進入を可能にする)と、セパレータ上部の出口弁(凝縮器へ向かう冷媒の一部を回復することができる)と、セパレータの下部に出口弁(圧縮機へ戻すオイルの排出を可能にする)とを有する。
【0205】
オイル分離器は、典型的には下記の技術の少なくとも一つによって実施できる:
(1)粗粒化(コアレセンス):同一ではあるが2つに分散している物質を一体化させる現象。
(2)遠心分離:この技術は異なる密度の液体を分離するために遠心力を使用する。
(3)減速:この技術では最も重い分子がその慣性によってその経路を継続できるようにし、より軽い分子はオイルセパレータの内部容積中に分散できるようにする。
(4)方向転換:この技術は蒸気(軽い小分子)中に存在する油滴(重い分子)の分離効率を増大させことに関連付けられる。蒸気が分離器の出口に向けている間に、油滴はその質量および初期速度によって元の軌道を維持する。
【0206】
粗粒化(コアレセンス)は金属スクリーンまたは粗粒化カートリッジを用いて行うことができる。
遠心分離はタービュレータ、螺旋システムまたは特定分離構成(サイクロン)を用いて行うことができる。
【0207】
オイルセパレータは上記技術の複数を含むことができる。
【0208】
本発明の有用なオイルセパレータの中ではCarlyのTURBOI、DanfossのOUB、EmersonのOS、Castelの5520および5540シリーズ、Tempriteの分離器、AC&Rの分離器、スクリュー圧縮機用のBitzerのOASを例として挙げることができる。
【0209】
蒸気圧縮回路はオイル冷却システムを備えることができ、必要に応じてオイルポンプおよび/またはオイルセパレータと圧縮機入口との間のオイル供給システムさらに備えることができる。
【0210】
オイルポンプは圧力損失を補うため、および/または、オイルを圧縮機吐出圧力よりも高い圧力に到達させるために使用することができる。オイル冷却システムは圧縮機およびオイル分離装置からのオイルを冷却するために使用できまる。
【0211】
可燃性
本発明の好ましい冷媒流体FはJabbour T-2004によって開発された測定方法での火炎伝播速度が10cm/秒以下、好ましくは7cm/秒以下、さらには3cm/秒以下であるという利点を有する。いくつかの組成物は不燃性である。
【0212】
この実験は垂直ガラス管法(チューブの数2、長さ150cm、直径40cm)を使用する。2つのガラス管を使用することで同じ濃度を有する2つのテストを同時に実施可能になる。ガラス管にタングステン電極を配置する。電極は各チューブの底部から6.35mm(1/4in)離して配置され、15kV、30mmAの発電機に接続される。
【0213】
この方法はT.Jabbourの論文「火炎の基本的な速度に基づいた冷媒の可燃性分類」デニスClodic編、パリ、2004年)のテーゼで開発された。
【0214】
例えば、HFO-1234yf/R134a/R152a(質量比78.9/7.0/14.1%)組成物の火炎伝播速度は4.75cm/秒であり、HFO-1234yf/R134a/R152a(質量比74.2/7.7/18.1%)組成物では6cm/秒である。
【0215】
上記の全ての実施形態は互いに組み合わせることができる。すなわち、好ましい各冷媒組成物を上記とは異なる割合で好ましいポリオールエステル(エステルA、B、CまたはD)の各々と組み合わせることができる。別の好ましい組成物は上記の別の用途で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【
図1】R134a/Triton SE55オイル混合物の下記運転条件で得られた温度(℃、横軸)と圧力(バール、縦軸)のダイヤグラム。0%オイルはR134aが100%の場合であり、70%オイルは30%のR134aを含む混合物の場合である。この図は、一定圧力下では混合物の温度Tsが上昇するとオイル中の冷媒濃度が低下することを示している。
【実施例0217】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0218】
POE Triton SE55オイル、サプライヤー:FUCHS
オイルはスクリュー圧縮機と一体なオイルセパレータ(オイル分離器)の下部に回収される。この実施例ではオイルセパレータに閉じ込められた冷媒の量を分析する。
オイルセパレータ中の冷媒/オイル混合物は温度TS(これは圧縮機の出口における冷媒の温度でもある)を有し、オイルセパレータ内の圧力は凝縮器入口の冷媒の蒸気飽和圧力(P
COND)に等しい。従って、これは凝縮温度(T
cond)で動作するシステムになる。この温度は対応する圧力P
CONDでの冷媒単独の飽和温度である。
一般に、典型的な冷媒/オイルのダイヤグラムの分析([
図1]には例としてR134aの場合を示す)は、一定圧力(P
COND)で、混合物(オイル/冷媒)の温度(Ts)が冷媒単独(T
cond)での飽和温度よりも増加したときに、オイル中の冷媒の濃度が減少することを示す。TsとT
condとの差は圧縮機出口における過熱を表す。
オイルセパレータ内の温度T
cond、圧力P
CONDおよび温度Tsはシステムの運転ニーズに従って定義される。冷媒中のオイルの百分比は圧力P
CONDおよび温度Tsでの対応する冷媒/オイルダイヤグラムから得られる。
この方法を用いることで圧縮機出口での過熱を観察することで冷媒を間接的に比較することができる。
【0219】
以下の条件下で暖房(ヒートポンプ)運転される空調システムを考える。
凝縮温度Tcond=70℃、
蒸発温度:0℃
蒸発器の過熱:0℃
冷却:0℃
圧縮機効率:75%
参照ケース:R134aとPOE Triton SE5
【0220】
[
図1]のダイヤグラムから、セパレータ中の温度(TS)87℃、圧力21絶対バールでの圧縮機出口における過熱は17℃であり、オイルの百分率は75質量%(オイル中に25重量%のR134a)である。
HFO-1234yf/POEオイルTriton SE55混合物の場合には、上記と同じ運転条件下で、凝縮器内の圧力は約20.5絶対バールであり、圧縮機出口での過熱は約4.8℃である。
飽和圧力のHFO-1234yfはR134aに極めて近いが、過熱は低い。従って、オイル分離器の液相中の冷媒の濃度は30質量%以上、さらには35質量%以上になる。
【0221】
その結果、オイル/冷媒流体の流速が同じ場合、オイルセパレータの潤滑オイル中の冷媒の比率の増加は、圧縮機中を循環する潤滑オイルの量の減少およびオイル/冷媒の粘度の低下につながる。そのため、HFO-1234yfを介してR134aを直接交換すると、圧縮機を損傷し(潤滑不良と低粘度化の問題)、パフォーマンスが低下する。
【0222】
下記の表は、R134aとHFO-1234yfに対して、異なる混合物での上記と同じ運転条件下での凝縮温度に対する圧縮機出力での過熱値を示す。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
本発明の混合物はHFO-1234yf単独に比べて上記定義の圧縮機の過熱が高く、HFO1234yfに対して50%以上、好ましくは80%以上高いという有利な利点がある。
【0227】
従って、本発明による混合物はHFO-1234yf単独の場合に対して潤滑油中に捕捉される冷媒の量を減少させる(および/または防止)ことができ、システム中を循環する冷媒の量を増加させ、設備の効率を有利に向上させることができる。それに加えて、本発明の混合物ではオイル分離器で回収する潤滑油の量がHFO-1234yfよりも多くなり、圧縮機をより良く潤滑することができる。
ポリオールエステルをベースにした潤滑剤と、少なくとも1種のテトラフルオロプロペンと少なくとも1種のハイドロフルオロカーボンとを含む冷媒流体Fとを含む組成物を収容した、オイルセパレータを有する蒸気圧縮回路を有する熱伝達システムであって、
上記冷媒流体Fが下記の(1)~(4)の混合物の1つを含むいずれか一つであることを特徴とする熱伝達システム:
(1)40~56重量%のHFO-1234yfと、44~60重量%のHFC-134aとの混合物、
(2)40~58重量%のHFO-1234zeと、60~42重量%のHFC-134aとの混合物、
(3)80重量%のHFO-1234yfと、20重量%のHFC-152aとの混合物、
(4)90~75重量%のHFO-1234zeと、25~10重量%のHFC-152aの混合物。