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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039992
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20230314BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198789
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2017113113の分割
【原出願日】2017-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 達矢
(57)【要約】
【課題】複数の奥行きを有する虚像を表示可能でありかつ、構成を小型化かつ簡素化することが可能な表示装置を提供することを課題の1つとしている。
【解決手段】
本発明の表示装置は、1の面を有する1の透過型スクリーンと、前記透過型スクリーンの前記1の面の面上に設けられ、かつ前記1の透過型スクリーンの前記1の面の面内方向において屈折率の異なる複数の透光性媒体を含む透光性媒体部と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の面を有しかつ光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な1の透過型スクリーンと、
前記1の透過型スクリーンの前記1の面側に配され、前記1の透過型スクリーンの前記1の面に対向する第1の面を有しかつ光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な他の透過型スクリーンと、
前記他の透過型スクリーンの前記第1の面または前記第1の面と反対側の第2の面上の1の領域にのみ配された1の透光性部材と、を有し、
前記他の透過型スクリーンの前記第1の面または前記第2の面の前記1の透光性部材が配された前記1の領域以外の他の領域は露出しており、
前記1の領域を透過する光が光散乱状態の前記1の透過型スクリーンまたは光散乱状態の前記他の透過型スクリーンを透過することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記1の透光性部材は、前記1の透過型スクリーンの前記1の面の面上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記1の透光性部材は、前記1の透過型スクリーンと前記他の透過型スクリーンに挟持されていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
所定の照射方向に光を照射する光源と、
前記照射方向に配され、前記光が入射する光入射面及び透過した前記光を出射する光出射面を有しかつ光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な1の透過型スクリーンと、
前記1の透過型スクリーンの前記光出射面側に配され、前記1の透過型スクリーンの前記光出射面に対向する第1の面を有しかつ光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な他の透過型スクリーンと、
前記他の透過型スクリーンの前記第1の面または前記第1の面と反対側の第2の面上の1の領域にのみ配された1の透光性部材と、
前記1の透過型スクリーンの前記光出射面側の領域に設けられた凹面状の反射面を有する光学部材と、を有し、
前記1の透光性部材が前記第1の面上に配されている場合、前記1の領域を介して前記他の透過型スクリーンから出射される光は、光散乱状態の前記1の透過型スクリーン、又は光散乱状態の前記他の透過型スクリーンを透過した光であり、
前記1の透光性部材が前記第2の面上に配されている場合、前記1の領域を介して前記1の透光性部材から出射される光は、光散乱状態の前記1の透過型スクリーン、又は光散乱状態の前記他の透過型スクリーンを透過した光であることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車両の運転席付近にいわゆるヘッドアップディスプレイが搭載され始めている。ヘッドアップディスプレイは、例えば、イメージコンバイナ(以下、単にコンバイナとも称する)と呼ばれる透光性の表示部材に、自車情報や道路情報、ナビゲーション情報等の運転支援情報を画像表示する表示装置である。
【0003】
ヘッドアップディスプレイは、例えば、上記したような運転支援情報を、フロントガラスの前方に虚像として表示する。当該運転支援情報は、運転者からは車両前方の景色に重なって視認される。従って、ヘッドアップディスプレイは、運転者の視線をほとんど移動させることなく、運転者に当該運転支援情報を提供することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、第一スクリーン及び第二スクリーンに向けて投影光を出射する投影装置を有するヘッドアップディスプレイ装置が開示されている。また、第一スクリーンと第二スクリーンとを用いて奥行きの異なる2つの虚像を表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5930231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなヘッドアップディスプレイ装置では、2つの異なった奥行きを有する虚像を表示するために2つの異なったスクリーンを設ける必要がある。すなわち、表示する虚像の奥行きの種類の数だけスクリーンを設ける必要がある。このため、複数の奥行きを有する虚像を表示するためには、スクリーン部分が複雑化かつ大型化してしまうことが課題の一例としてあげられる。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、複数の奥行きを有する虚像を表示可能でありかつ、構造を小型化かつ簡素化することが可能な表示装置を提供することを課題の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、所定の照射方向に光を照射する光源と、前記照射方向に配され、前記光が入射する光入射面及び透過した前記光を出射する光出射面を有しかつ光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な1の透過型スクリーンと、前記1の透過型スクリーンの前記光出射面側に配され、前記1の透過型スクリーンの前記光出射面に対向する第1の面を有しかつ光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な他の透過型スクリーンと、前記他の透過型スクリーンの前記第1の面または前記第1の面と反対側の第2の面上の1の領域にのみ配された1の透光性部材と、前記1の透過型スクリーンの前記光出射面側の領域に設けられた凹面状の反射面を有する光学部材と、を有し、前記1の透光性部材が前記第1の面上に配されている場合、前記1の領域を介して前記他の透過型スクリーンから出射される光は、光散乱状態の前記1の透過型スクリーン、又は光散乱状態の前記他の透過型スクリーンを透過した光であり、 前記1の透光性部材が前記第2の面上に配されている場合、前記1の領域を介して前記1の透光性部材から出射される光は、光散乱状態の前記1の透過型スクリーン、又は光散乱状態の前記他の透過型スクリーンを透過した光であることを特徴とする表示装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る表示装置の概要を示す側面図である。
図2】実施例1に係る表示装置のスクリーン部の斜視図である。
図3】実施例2に係る表示装置の概要を示す側面図である。
図4】実施例2に係る表示装置のスクリーン部の斜視図である。
図5】実施例3に係る表示装置の概要を示す側面図である。
図6】実施例3に係る表示装置のスクリーン部の斜視図である。
図7】変形例に係る表示装置のスクリーン部の斜視図である。
図8】変形例に係る表示装置のスクリーン部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。以下の説明においては、表示装置として、例えば表示部としてコンバイナまたは自動車等のフロントガラスを用いるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)を例に説明する。
【実施例0011】
以下、図1を参照して、本願の実施例1に係る表示装置10の構成を説明する。図1は、実施例1に係る表示装置10の概要を示す側面図である。表示装置10は、例えば、凹面鏡反射部を有するイメージコンバイナまたは自動車等のフロントガラスに虚像Vを表示するヘッドアップディスプレイである。なお、図1には、表示装置10が表示する虚像Vを破線で示している。また、図1には、虚像Vを観察する観察者、例えば車両の運転者の目の位置を視点EYとして示している。
【0012】
光源11は、例えば、照射部11Aから照射光ELとしてレーザ光を出射し、当該照射光ELによる走査をして画像または映像(以下、単に画像と称する)を投影することが可能であるレーザ光源、すなわちレーザプロジェクタ装置である。光源11は、光軸AXに沿った方向に画像の色表現及び階調表現を行う光を照射光ELとして照射する。言い換えれば、光源11は、所定の照射方向に向かって照射光ELを照射する光源である。
【0013】
以下の説明において、光軸AXに沿った方向を前後方向(X軸方向)として説明する。また、照射光ELの照射方向を前方として説明する。また、図1の紙面に垂直な方向を幅方向(Y軸方向)とし、前後方向及び幅方向と垂直な方向を高さ方向(Z軸方向)とする。
【0014】
スクリーン部13は、光源11からみて照射光ELの出射方向に配されている。すなわち、スクリーン部13は、光源11の前方おいて、光軸AX上に配されている。スクリーン部13は、光軸AX上に配された板状のスクリーンSを有している。
【0015】
スクリーンSは、照射光ELを散乱する拡散板等の板状の透過型スクリーンである。スクリーンSは、光源11と対向した面、すなわち照射光ELが入射する面が光入射面としての入射面ISとなっている。また、スクリーンSは、入射面ISと反対側の面、すなわちスクリーンSを通過した照射光ELが出射する面が光出射面としての出射面ESとなっている。光源11から照射された光は、スクリーンSによって散乱され、画像を含む投影光が生成される。
【0016】
なお、スクリーンSは、光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な板状の透過型スクリーンであってもよい。この場合、例えば、スクリーンSとして、ガラス基板等の透明基板に、電圧の印加によって光透過状態と光散乱状態との間で状態を変化させることが可能ないわゆる機能性液晶フィルムを貼り付けたものを用いることが可能である。
【0017】
具体的には、ガラス基板等の透明基板に配線を施し、当該ガラス基板に、当該配線に電気的に接続するように、機能性液晶フィルムを貼付したものをスクリーンSとして用いることが可能である。機能性液晶フィルムとしては、例えば、株式会社正興電機製作所製の「SILF(登録商標)」または九州ナノテック光学株式会社製のMIYO-フィルムを用いることが可能である。
【0018】
スクリーン部13は、スクリーンSの下部において、スクリーンSの出射面ESに固定されておりかつガラス又は透光性樹脂等の透光性を有する材料からなる透明部材TMを有している。透明部材TMは、光軸AXに沿った方向から見てスクリーンSの出射面ESよりも小さい平面形状を有しており、光軸AXに沿った厚さがTとなっている直方体形状を有している。
【0019】
透明部材TMは、例えば、可視光に対して透光性を有する部材であるガラス基板またはアクリル基板等の透光性基板であってもよい。透明部材TMの材料となる透光性樹脂としては、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂等を用いることが可能である。
【0020】
図2にスクリーン部13の斜視図を示す。図2に示すように、透明部材TMは、出射面ES上において光軸AXに沿った方向、すなわちX軸に沿った方向からみてスクリーンSの出射面ESの1の辺の中央部に接して配されている。また、透明部材TMは、スクリーンSの出射面ESの他の辺とは接していない。すなわち、X軸に沿った方向から見て、スクリーンSの一部が透明部材TMと重なっている。
【0021】
スクリーンSの出射面ES上の領域のうち透明部材TMが存在しない領域には、透明部材TMの屈折率より低い屈折率を有する空気が存在している。すなわち、出射面ES上の領域のうちの透明部材TMが存在しない領域には、空気層ALが存在している。すなわち、出射面ES上には、光を伝播する媒体として互いに屈折率の異なる2つの透光性媒体である透明部材TM及び空気層ALを含む透光性媒体部TPが形成されている。従って、スクリーンSの出射面ESから出射する投影光には、空気層ALを伝播する投影光PL1及び透明部材TMを伝播する投影光PL2が存在する。
【0022】
コンバイナ15は、スクリーン部13からみて光源11と反対側にかつ光軸AX上に配されている透光性を有する板状の部材である。コンバイナ15は、その板面が一方の方向に凸に湾曲している。すなわち、コンバイナ15は、スクリーン部13に対向した反射面である凹面15Sを有している。凹面15Sに入射した投影光PL1及び投影光PL2は、反射して運転者の視点EYに到達する。
【0023】
この場合、視点EYから見ると、コンバイナ15を通してコンバイナ15の反対側の空間領域に虚像Vが視認される。すなわち、コンバイナ15は、凹面15S側から投影光PL1及び投影光PL2が入射すると凸面側の空間領域に虚像を形成するように構成されている。
【0024】
上述のように、スクリーンSに到達した照射光ELは、スクリーンSによって散乱され、スクリーンSの出射面ESから投影光PL1及びPL2が出射される。投影光PL1は、スクリーンSから出射して、透明部材TMを通過せずに空気層ALを通過する投影光である。また、投影光PL2は、スクリーンSから出射して、透明部材TMを通過する投影光である。
【0025】
上述のように、出射面ES上の領域においては、投影光PL1及び投影光PL2を伝播する媒体として、透明部材TM及び空気層ALが存在している。また、投影光PL2が伝播する透明部材TMは、投影光PL1が伝播する空気より屈折率が高い。
【0026】
よって、スクリーンSの出射面ESからコンバイナ15の凹面15Sまでの距離は、出射面ESのどの領域でもほぼ変わらないが、出射面ESから凹面15Sに到達するまでの光学的距離は投影光PL1と投影光PL2で異なる。具体的には、出射面ESから凹面15Sに到達するまでの投影光PL2の光学的距離の方が投影光PL1の光学的距離よりも長くなる。
【0027】
より詳細説明すると、透明部材TMの材料にガラスを用い、空気の屈折率を1.0として透明部材TMに用いるガラスの屈折率を1.5とする。そうすると、スクリーンSの出射面ESからコンバイナ15の凹面15Sまでの光学的距離は、投影光PL1に比べて投影光PL2の方が、1.5T-1.0T=0.5T長くなる。
【0028】
見かけの距離の観点でいうと、コンバイナ15からの見かけの距離は、スクリーンSの出射面ELの投影光PL1が出射する領域からよりも投影光PL2が出射する領域からの方が1.0T-1.0/1.5・T≒0.33Tだけ短くなる。よって、この0.33Tの見かけの距離の差分に基づいた距離だけ虚像V2の方が虚像V1よりコンバイナ15の近くに形成される。
【0029】
従って、投影光PL2によって形成される虚像V2は、投影光PL1によって形成される虚像V1より、視点EYから見て近くに形成される。なお、虚像V1の形状は、光軸AXに沿った方向から見たスクリーンSの平面形状から透明部材TMの部分を除いた形状に基づいた形状となる。また、虚像V2の形状は、光軸AXに沿った方向から見た透明部材TMの形状に基づいた形状になる。
【0030】
実施例1の表示装置10によれば、1のスクリーンによって2種類の奥行きを有する虚像を形成することが可能である。このことにより、スクリーンの枚数以上の種類の奥行きの虚像を形成することが可能となる。よって、所定数の奥行きの虚像を形成するために必要なスクリーンの数を減らすことが可能となり、装置の構造の小型化及び簡略化を達成することが可能となる。
【実施例0031】
以下、本願の実施例2の表示装置20について図3及び図4を用いて説明する。実施例2の表示装置20においては、スクリーン部23の構成が実施例1のスクリーン部13と異なる以外は同一の構成を有している。従って、以下、主にスクリーン部23の構成及び形成される虚像について説明する。
【0032】
図3は、実施例2に係る表示装置20の概要を示す側面図である。表示装置20においては、実施例1の表示装置10とは異なり、スクリーン部23が第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2の2つのスクリーンを含む。第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2は、光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な板状の透過型スクリーンである。
【0033】
上述のように、例えば、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2として、ガラス基板等の透明基板に、電圧の印加によって光透過状態と光散乱状態との間で状態を変化させることが可能ないわゆる機能性液晶フィルムを貼り付けたものを用いることが可能である。
【0034】
具体的には、ガラス基板等の透明基板に配線を施し、当該ガラス基板に、当該配線に電気的に接続するように、機能性液晶フィルムを貼付したものを第1の及び第2のスクリーンS1及びS2として用いることが可能である。機能性液晶フィルムとしては、例えば、株式会社正興電機製作所製の「SILF(登録商標)」または九州ナノテック光学株式会社製のMIYO-フィルムを用いることが可能である。
【0035】
表示装置20においては、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2の一方を散乱状態にして他方を光透過状態とすることで、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2のいずれかにおいて選択的に照射光ELを散乱させることが可能である。
【0036】
図4に、スクリーン部23の斜視図を示す。図4に示すように、具体的には、スクリーン部23は、実施例1の表示装置10のスクリーン部13の透明部材TMのコンバイナ15と対向する面に第2のスクリーンS2を取り付けた構造となっている。言い換えれば、スクリーン部23は、厚さTの透明部材TMを2つのスクリーンS1及びS2で挟持した構造を有している。
【0037】
このように、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2で透明部材TMを挟持しているので、自動車等への搭載時に発生する強い振動を受けた場合に、第1のスクリーンS1と第2のスクリーンS2の相対的位置が変化することを防止することが可能である。
【0038】
なお、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2と透明部材TMとは、光学接着又は光学貼り合わせされているのが好ましい。すなわち、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2と透明部材TMとを接着または貼り合わせ(以下、接着等という)する際に、当該接着等に使用する接着剤または貼り合わせ材が、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2と透明部材TMを通過する光に対して光学的に影響を与えない態様で接着等がなされるのが好ましい。
【0039】
具体的には、例えば、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2と透明部材TMとは、透明光学粘着(OCA:Optical Clear Adhesive)フィルムを用いて接着するのが好ましい。この透明光学粘着フィルムによる第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2と透明部材TMとの接着においては、大気貼り合わせ装置または真空貼り合わせ装置を用いるのが好ましい。
【0040】
また、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2と透明部材TMとの接着においては、光学樹脂(OCR:Optical Clear Resin)を用いて接着がなされてもよい。
【0041】
第1のスクリーンS1の出射面ES1上の領域、すなわち第1のスクリーンS1と第2スクリーンS2に挟まれている領域のうち透明部材TMが存在しない領域には、透明部材TMの屈折率より低い屈折率を有する空気が存在している。すなわち、出射面ES1上の領域のうちの透明部材TMが存在しない領域には、空気層ALが存在している。
【0042】
言い換えれば、出射面ES1上には、光を伝播する媒体として互いに屈折率の異なる2つの透光性媒体である透明部材TM及び空気層ALを含む透光性媒体部TPが形成されている。従って、スクリーン部23から出射する投影光には、第1のスクリーンS1の出射面ES1から出射し、空気層ALを伝播する投影光PL1及び透明部材TMを伝播する投影光PL2が存在する。
【0043】
またスクリーン部23から出射する投影光には第2のスクリーンS2の出射面ES2から出射する投影光PL3が存在する。
【0044】
実施例1の場合と同様に、第1のスクリーンS1の出射面EL1上には、投影光PL1及び投影光PL2を伝播する媒体として、透明部材TM及び空気層ALが存在している。また、投影光PL2が伝播する透明部材TMは、投影光PL1が伝播する空気より屈折率が高い。
【0045】
よって、第1のスクリーンS1の出射面ES1からコンバイナ15の凹面15Sまでの距離は、出射面ES1のどの領域でもほぼ変わらないが、出射面ES1から凹面15Sに到達するまでの光学的距離は投影光PL1と投影光PL2で異なる。具体的には、出射面ES1から凹面15Sに到達するまでの投影光PL2の光学的距離の方が投影光PL1の光学的距離よりも長くなる。
【0046】
より詳細説明すると、透明部材TMの材料にガラスを用い、空気の屈折率を1.0として透明部材TMに用いるガラスの屈折率を1.5とする。そうすると、第1のスクリーンS1の出射面ES1からコンバイナ15の凹面15Sまでの光学的距離は、投影光PL1に比べて投影光PL2の方が、1.5T-1.0T=0.5T長くなる。
【0047】
言い換えれば、見かけの距離の観点でいうと、コンバイナ15からの見かけの距離が、第1のスクリーンS1の出射面EL1の投影光PL1が出射する領域までよりも投影光PL2が出射する領域までの方が1.0T-1.0/1.5・T≒0.33Tだけ短くなる。よって、この0.33Tの見かけの距離の差分に基づいた距離だけ虚像V2の方が虚像V1よりコンバイナ15の近くに形成される。
【0048】
従って、投影光PL2によって形成される虚像V2は、投影光PL1によって形成される虚像V1より、視点EYから見て近くに形成される。なお、虚像V1の形状は、光軸AXに沿った方向から見た第1のスクリーンS1の平面形状から透明部材TMの部分を除いた形状に基づいた形状となる。また、虚像V2の形状は、光軸AXに沿った方向から見た透明部材TMの形状に基づいた形状になる。
【0049】
さらに、上述のように、実施例2の表示装置20においては、第2スクリーンS2の出射面ES2から出射する投影光PL3が存在する。第2のスクリーンS2の出射面ES2からコンバイナ15までの距離は、第1のスクリーンS1の出射面ES1からコンバイナまでの距離よりも近い。
【0050】
よって、表示装置20によれば、投影光PL3によって、虚像V2よりもコンバイナ15に近い位置に虚像V3が形成される。
【0051】
実施例2の表示装置20によれば、実施例1と同様に、1のスクリーンによって2種類の奥行きを有する虚像を形成することが可能である。このことにより、スクリーンの枚数以上の種類の奥行きの虚像を形成することが可能となる。よって、所定数の奥行きの虚像を形成するために必要なスクリーンの数を減らすことが可能となり、装置の構造の小型化及び簡略化を達成することが可能となる。
【0052】
また、実施例20の表示装置20によれば、振動等の外部からの力によって、第1のスクリーンS1と第2のスクリーンS2の相対的位置関係が変化しにくくなっている。よって、振動等が発生しても形成される虚像Vの各々同士の相対的位置関係を保つことができ、高品質な虚像表示をもたらすことが可能である。
【実施例0053】
以下、本願の実施例3の表示装置30について図5及び6を用いて説明する。実施例3の表示装置30においては、スクリーン部33の構成が実施例1のスクリーン部13と異なる以外は同一の構成を有している。従って、以下、主にスクリーン部33構成及び形成される虚像について説明する。
【0054】
図5は、実施例3に係る表示装置30の概要を示す側面図である。表示装置30においては、実施例1の表示装置10とは異なり、スクリーン部33が第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2の2つのスクリーンを含む。第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2は、光透過状態と光散乱状態との間で状態変化可能な板状の透過型スクリーンである。
【0055】
上述のように、例えば、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2として、ガラス基板等の透明基板に、電圧の印加によって光透過状態と光散乱状態との間で状態を変化させることが可能ないわゆる機能性液晶フィルムを貼り付けたものを用いることが可能である。具体例については、実施例1及び2において説明したので省略する。
【0056】
実施例2の表示装置20と同様に、表示装置30においては、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2の一方を散乱状態にして他方を光透過状態とすることで、第1のスクリーンS1及び第2のスクリーンS2のいずれかにおいて選択的に照射光ELを散乱させることが可能である。
【0057】
図6に、スクリーン部33の斜視図を示す。図6に示すように、スクリーン部33は、実施例1の表示装置10のスクリーン部13のスクリーンSの入射面IS(図1参照)側の領域に、第2のスクリーンS2を配置した構造となっている。
【0058】
第1のスクリーンS1の出射面ES1上の領域のうち透明部材TMが存在しない領域には、透明部材TMの屈折率より低い屈折率を有する空気が存在している。すなわち、出射面ES1上の領域のうちの透明部材TMが存在しない領域には、空気層ALが存在している。
【0059】
言い換えれば、出射面ES1上には、光を伝播する媒体として互いに屈折率の異なる2つの透光性媒体である透明部材TM及び空気層ALを含む透光性媒体部TPが設けられている。従って、スクリーン部33から出射する投影光には、第1のスクリーンS1の出射面ES1から出射し、空気層ALを伝播する投影光PL1及び透明部材TMを伝播する投影光PL2が存在する。
【0060】
またスクリーン部33から出射する投影光には第2のスクリーンS2の出射面ES2から出射して、空気層ALを伝播する投影光PL3及び透明部材TMを伝播する投影光PL4が存在する。
【0061】
実施例1の場合と同様に、第1のスクリーンS1の出射面EL1上には、投影光PL1及び投影光PL2を伝播する媒体として、透明部材TM及び空気層ALが存在している。また、投影光PL2が伝播する透明部材TMは、投影光PL1が伝播する空気より屈折率が高い。
【0062】
よって、第1のスクリーンS1の出射面ES1からコンバイナ15の凹面15Sまでの距離は、出射面ES1のどの領域でもほぼ変わらないが、凹面15Sまでの見た目の距離は、出射面ES1の投影光PL1を出射する領域と投影光PL2を出射する領域で異なる。具体的には、凹面15Sまでの見た目の距離は、出射面ES1の投影光PL2を出射する領域からの方が、出射面ES1の投影光PL1を出射する領域からよりも短くなる。
【0063】
より詳細説明すると、コンバイナ15の凹面15Sまでの見かけの距離が、出射面ES1の投影光PL1が出射する領域からよりも出射面ES1の投影光PL2が出射する領域からの方が1.0T-1.0/1.5・T≒0.33Tだけ短くなる。よって、この0.33Tの見かけの距離の差分に基づいた距離だけ虚像V2の方が虚像V1よりコンバイナ15の近くに形成される。
【0064】
従って、投影光PL2によって形成される虚像V2は、投影光PL1によって形成される虚像V1より、視点EYから見て近くに形成される。なお、虚像V1の形状は、光軸AXに沿った方向から見た第1のスクリーンS1の平面形状から透明部材TMの部分を除いた形状に基づいた形状となる。また、虚像V2の形状は、光軸AXに沿った方向から見た透明部材TMの形状に基づいた形状になる。
【0065】
さらに、上述のように、実施例3の表示装置30においては、第2スクリーンS2の出射面ES2から出射して空気層ALを通過する投影光PL3及び透明部材TMを通過する投影光PL4が存在する。第2のスクリーンS2の出射面ES2からコンバイナ15までの距離は、第1のスクリーンS1の出射面ES1からコンバイナ15までの距離よりも近い。
【0066】
よって、表示装置30によっては、虚像V2よりもコンバイナ15に近い位置に虚像V3及びV4が形成される。
【0067】
第1のスクリーンS1の出射面ES1とコンバイナ15の凹面15Sとの見た目の距離と同様に、第2のスクリーンS2の出射面ES2の領域によってコンバイナ15の凹面15Sとの見た目の距離が異なる。そのため、虚像V3よりもコンバイナ15に近い位置に虚像V4が形成される。
【0068】
実施例3の表示装置30によれば、実施例1と同様に、1のスクリーンによって2種類の奥行きを有する虚像を形成することが可能である。このことにより、スクリーンの枚数以上の種類の奥行きの虚像を形成することが可能となる。よって、所定数の奥行きの虚像を形成するために必要なスクリーンの数を減らすことが可能となり、装置の小型化及び簡略化を達成することが可能となる。
【0069】
[変形例]
上記実施例においては、透光性媒体部TPを透明部材TM及び空気層ALによって形成する例について説明した。透光性媒体部TPを複数の透光性部材によって形成してもよい。
【0070】
図7に透光性媒体部TPを複数の透光性部材によって形成する場合のスクリーン部43の斜視図を示す。図7に示すように、実施例1のスクリーン部13の空気層ALに代えて、例えば、アクリル樹脂またはガラス等の透光性固体材からなる第2の透明部材TM2を用いてもよい。すなわち、透光性媒体部TPを、第1の透明部材TM1及び第1の透明部材TM1と屈折率の異なる第2の透明部材TM2によって形成してもよい。
【0071】
この場合、第1の透明部材TM1と第2の透明部材TM2との屈折率の大小によって、虚像V1とV2のどちらがコンバイナ15により近い位置に形成されるかが決まることとなる。
【0072】
この図7に示す変形例の態様に従って、実施例2及び3の空気層ALに代えて透光性固体材を用いることも可能である。
【0073】
また、図8に示すように、実施例1の表示装置10において、スクリーン部13の透明部材TMをスクリーンSの入射面側に設けてもよい。このようにすることで、出射光ELが透明部材TMを通過する際に僅かに屈折し、スクリーンSへの入射角度が変化する。そのため、スクリーンSから出射した投影光PL2によって表示される虚像を縮小することが可能である。
【0074】
上記実施例においては、スクリーンS、S1及びS2が拡散板または機能性液晶フィルムであるとした。しかし、スクリーンS、S1及びS2は、マイクロレンズ等を有する透過型のスクリーンまたはホログラフィックディフューザであってもよい。例えば、スクリーンS、S1及びS2は、液晶マイクロレンズ等を有する透過型の拡散スクリーンであってもよい。
【0075】
また、上記実施例においては、光源11がレーザプロジェクタである場合を例に説明したが、光源11は、DMD(Digital Mirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)プロジェクタからなる光源であってもよい。また、光源11は、液晶プロジェクタからなる光源であってもよい。
【0076】
また、スクリーンSまたはS1の出射面SまたはS1における透明部材TMを設ける位置または透明部材TMの形状は、上記説明において例示した位置に限られない。例えば、透明部材TMの位置を変更することで、虚像の位置及び形状を自在に変更することが可能である。また、透明部材TMの屈折率及び厚さを変更することで、虚像の奥行き位置を変更することも可能である。
【0077】
上述した実施例における種々の構成等は、例示に過ぎず、用途等に応じて、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0078】
10、20、30 表示装置
11 光源
13、23、33、43 スクリーン部
15 コンバイナ
15S 凹面
S スクリーン
S1 第1のスクリーン
S2 第2のスクリーン
TP 透光性媒体部
TM 透明部材
AL 空気層
IS 入射面
ES 出射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8