(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004000
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230110BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105449
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】小野 謙次
(72)【発明者】
【氏名】重松 宗一郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】実需要データなしで適切な需給調整を行う。
【解決手段】情報処理装置は、参照需要家の特徴量に評価対象需要家の情報を加味することにより、前記特徴量に基づいて計算されたデマンドレスポンスに対する第1成功率の変動量を計算する変動量計算部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照需要家の特徴量に評価対象需要家の情報を加味することにより、前記特徴量に基づいて計算されたデマンドレスポンスに対する第1成功率の変動量を計算する変動量計算部を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記特徴量に基づいて前記第1成功率を計算する第1成功率計算部を備え、
前記評価対象需要家の情報は、前記評価対象需要家の特徴量である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1成功率計算部は、電力の需要削減要求に応じる際の前記第1成功率を計算する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記参照需要家は、前記特徴量が既知の需要家、又は前記特徴量が既知の複数の需要家からなる需要家群である、請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
複数の前記参照需要家のそれぞれと、対応する参照需要家の特徴量とを対応づけて記憶する参照需要家情報記憶部を備え、
前記第1成功率計算部は、前記参照需要家情報記憶部から取得された少なくとも一部の前記参照需要家の特徴量に基づいて前記第1成功率を計算する、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記評価対象需要家の特徴量と前記参照需要家の特徴量とに基づいて、前記参照需要家に前記評価対象需要家を加えて第2成功率を計算する第2成功率計算部を備え、
前記変動量計算部は、前記第1成功率と前記第2成功率との差分を前記変動量として計算する、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記評価対象需要家の特徴量を取得する特徴量取得部を備え、
前記第2成功率計算部は、前記特徴量取得部で取得された前記評価対象需要家の特徴量と前記参照需要家の特徴量とに基づいて前記第2成功率を計算する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記変動量計算部は、前記評価対象需要家の実需要データを取得することなく、前記特徴量取得部で取得された前記評価対象需要家の特徴量と前記参照需要家の特徴量とに基づいて前記変動量を計算する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第1成功率計算部は、複数の前記参照需要家の特徴量に基づいて複数の前記第1成功率を計算し、
前記変動量計算部は、前記第1成功率計算部で計算された前記複数の第1成功率と、前記評価対象需要家の特徴量と前記複数の参照需要家のそれぞれの特徴量とに基づいて前記第2成功率計算部で計算された複数の前記第2成功率との前記差分をそれぞれ計算する、請求項7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第1成功率計算部は、前記参照需要家の特徴量に関する項を含む集中不等式に基づいて前記第1成功率を計算し、
前記第2成功率計算部は、前記参照需要家及び前記評価対象需要家の特徴量に関する項を含む集中不等式に基づいて前記第2成功率を計算する、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記変動量計算部で計算された前記変動量を、前記参照需要家と対応づけて出力する差分出力部を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記変動量計算部で計算された前記変動量を、前記参照需要家と対応づけて記憶する変動量記憶部を備え、
前記差分出力部は、前記変動量記憶部に記憶された前記変動量を前記参照需要家と対応づけて出力する、請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記評価対象需要家の特徴量を入力する特徴量入力部と、
前記特徴量入力部で入力された特徴量に基づいて、前記複数の参照需要家のそれぞれごとに前記変動量計算部で計算された前記変動量を、対応する前記参照需要家の情報とともに出力する差分出力部と、を備え、
前記特徴量取得部は、前記特徴量入力部で入力された前記特徴量を取得する、請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項14】
第1表示領域及び第2表示領域を同一画面上に表示する表示部を備え、
前記特徴量入力部は、前記第1表示領域内に設けられる入力欄にて前記評価対象需要家の特徴量を入力し、
前記差分出力部は、前記複数の参照需要家のそれぞれごとに前記変動量計算部で計算された前記差分を、対応する前記参照需要家の情報とともに前記第2表示領域に表示する、請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記表示部は、前記複数の参照需要家の特徴量を表示させる第3表示領域を、前記第1表示領域及び前記第2表示領域とともに同一画面上に表示し、
前記第3表示領域は、前記複数の参照需要家のうち、前記変動量計算部による前記変動量の計算を行う参照需要家を任意に選択可能な選択ボタンを含み、
前記差分出力部は、前記選択ボタンで選択された参照需要家について前記変動量計算部で計算された前記差分を、対応する前記参照需要家の情報とともに前記第2表示領域に表示する、請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
評価対象需要家の特徴量の範囲を決定する特徴量範囲決定部と、
前記変動量計算部で計算された前記変動量の中から、予め指定されたデマンドレスポンスに対する成功率を得るための前記評価対象需要家の特徴量の条件を抽出する抽出部と、を備え、
前記変動量計算部は、前記特徴量範囲決定部で決定された特徴量の範囲内の特徴量を持つ前記評価対象需要家を前記参照需要家に加えて前記変動量を計算する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記抽出部で抽出された前記評価対象需要家の特徴量の条件を出力する需要家条件出力部を備える、請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記特徴量は、デマンドレスポンスに対する電力削減量と、実需要とベースラインとの差分の時間によるバラツキ度と、実需要とベースラインとの最大乖離量との少なくとも一つを含む、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項19】
参照需要家の特徴量に基づいて、デマンドレスポンスに対する第1成功率を計算するステップと、
前記参照需要家に評価対象需要家を加えて前記第1成功率の変動量を計算するステップと、を備える、情報処理方法。
【請求項20】
コンピュータに、
参照需要家の特徴量に基づいて、デマンドレスポンスに対する第1成功率を計算するステップと、
前記参照需要家に評価対象需要家を加えて前記第1成功率の変動量を計算するステップと、を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本提案の一実施形態は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
事業所や家庭などの電力需要家に対して電力需要を下げるよう要請及び制御することで、実質的な電力供給を行うデマンドレスポンス技術が注目されている。本技術において、アグリゲータは、電力供給業者からの指令に従って、複数の電力需要家をとりまとめる役割を担う。アグリゲータは、電力供給業者から電力需要の抑制要求を受けた場合、この要求に応じる電力需要家をアグリゲータと契約関係にある電力需要家の中から選定する。契約する電力需要家を収集する際、電力供給業者等の取り決めに応じたデマンドレスポンスのアセスメントに適合する電力需要家かどうかを評価する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本提案の一実施形態では、適切な需給調整を行う需要家を判別できる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本提案の一実施形態によれば、参照需要家の特徴量に評価対象需要家の情報を加味することにより、前記特徴量に基づいて計算されたデマンドレスポンスに対する第1成功率の変動量を計算する変動量計算部を備える、情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態に係る情報処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】参照需要家情報記憶部に記憶されている特徴量の一例を示す図。
【
図3】第1成功率計算部及び第2成功率計算部の処理動作の一例を示すフローチャート。
【
図4】変動量計算部の処理動作の一例を示すフローチャート。
【
図5】第1の実施形態の有効性実証実験の結果を示す図。
【
図7】第2の実施形態に係る情報処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図8】第2の実施形態に係る情報処理装置の処理動作を示すフローチャート。
【
図9】AとBは第2の実施形態に係る情報処理装置が処理動作を行った結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムの実施形態について説明する。以下では、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムの主要な構成部分を中心に説明するが、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムには、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0008】
(本技術の概要)
電力の需要抑制を促し、ピーク利用時の電力消費を抑制して、電力の安定を図るための技術としてデマンドレスポンスが提唱されている。デマンドレスポンスにより、電力を消費する需要家の実需要を電力系統の需給状況に合わせて変化させることができ、非効率な火力発電の維持、ピーク電源の新設が不要となり、中長期的に発電容量の合理化が期待される。本技術においては、アグリゲート事業者(以下、アグリゲータ)が複数の需要家の統合制御を行う事により、効率的にデマンドレスポンスを実施することが考えられている。
【0009】
このようなネガワット(NegativeWatt)アグリゲーション事業においては、アグリゲータが、料金設定を行ったり、ピーク時に使用を控えた需要家に対して対価を支払ったりするなどの方法で、ネガワットを需要家から収集して、需要の削減を促している。ここで、ネガワットとは、通常の電力需要(正の電力)と対比する意味で、電力需要の減少分(負の電力)をいう。
【0010】
ネガワットアグリゲーション事業において、収集したネガワットを活用するための仕組み(ネガワット取引)が複数用意または準備されている。代表的な仕組みとして調整力公募、容量市場、及び需給調整市場が存在するが、本技術において想定するネガワット取引はこれに限るものではない。これらネガワット取引に共通する特徴として、デマンドレスポンスが発動された際、収集したネガワットの量が対象のネガワット取引に対応するアセスメントに適合した場合に報酬が得られ、そうでない場合はペナルティが与えられる。アセスメントは対象のネガワット取引に対応した時間コマの粒度毎に行われ、総時間コマに対してアセスメントに適合した場合の割合をデマンドレスポンス成功率と呼ぶ。アセスメントの代表例として、デマンドレスポンスが発動された際の実需要が、通常の実需要として想定される電力量(ベースライン)に対してデマンドレスポンスが発動されたときに要請される削減量を中心とした上下制約の領域に滞在するかを評価するものがある。
【0011】
ネガワットアグリゲーション事業においては、需要家の実需要に含まれるノイズにより、実需要がベースラインに対して変動し、デマンドレスポンスが失敗と判定されるおそれがある。よって、アグリゲータは、デマンドレスポンス成功率が向上するような実需要に関する特性を持つ需要家を多く収集して束ねることで、デマンドレスポンス成功率の向上を図ることが重要となる。
【0012】
このように、アグリゲータは、デマンドレスポンス成功率が向上する特性をもつ需要家を多く収集する必要がある。デマンドレスポンス成功率が向上する需要家か否かの判断は、需要家の実需要に関する時系列データを取得した上で解析を行って判断する以外の手法は今までなかった。
【0013】
個々の電力需要家から実需要データを取得できれば電力需要家の適切な評価が可能であるが、実需要データは一般的に機密情報であることから、実際には、個々の電力需要家から実需要データを取得するのは容易ではない。このため、アグリゲータは、デマンドレスポンス成功率が向上する特性を持つ需要家を収集できないという問題が生じていた。
【0014】
ネガワットを収集する需要家の評価手法として、上述した特許文献1には、需要家に付随した電気機器の中で、デマンドレスポンスへの応答が不可能な電気機器を診断した結果を含む応答を返す診断装置が記載されている。
【0015】
一方、特許文献1では、既にネガワット取引に参入した需要家に付随する電気機器の評価が主眼となっており、ネガワット取引に参入する前段階に、実需要データなしにネガワット需要家として適切な需要家であるか否かを評価、選別するような技術とはなっていない。
【0016】
これに対して、本提案は、ネガワットアグリゲーション事業においてデマンドレスポンス成功率が向上するような需要家を、需要家から実需要データを取得することなしに選定できるようにすることを特徴とする。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る情報処理装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1の情報処理装置1内の各ブロックは、例えば汎用のPC(パーソナルコンピュータ)上でプログラムを実行することにより機能するソフトウェアモジュールである。あるいは、
図1の情報処理装置1内の少なくとも一部のブロックは、IC(Integrated Circuit)などのハードウェア部品で構成することも可能である。
【0018】
図1の情報処理装置1は、必須の構成部分として、変動量計算部3とを備えている。変動量計算部3は、参照需要家の特徴量に評価対象需要家の情報を加味することにより、特徴量に基づいて計算されたデマンドレスポンスに対する第1成功率の変動量を計算する。
【0019】
また、
図1の情報処理装置1は、第1成功率計算部2を備えていてもよい。第1成功率計算部2は、参照需要家の特徴量に基づいて、デマンドレスポンスに対する成功率を計算する。デマンドレスポンスとは、例えば、電力の需要削減要求に応じて電力需要を抑制することを意味する。参照需要家とは、特徴量が既知の需要家を指す。参照需要家は、複数の需要家で構成されることが多いため、以下では、総称して参照需要家群と呼ぶ。また、参照需要家群に含まれる参照需要家をいくつかのグループに分けることができる場合には、各グループを参照需要家群と呼ぶ。以下では主に、複数の参照需要家群が存在する例を説明する。
【0020】
参照需要家群の特徴量は、デマンドレスポンス発動時の各参照需要家の需要抑制量の合計である契約削減量総量と、参照需要家群の電力需要のばらつき度と、参照需要家群の最大乖離量との少なくとも一つを含んでいる。ばらつき度は、各参照需要家の実需要とベースラインの差の時系列データの分散を合計した値である。最大乖離量は、参照需要家群の各参照需要家における実需要とベースラインの差の時系列データの内最も大きい値である。
【0021】
ベースラインは、需要抑制要求がない場合の需要家の想定される電力需要量であり、エネルギ・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドラインの記載に従って計算してもよいし、独自の需要予測に基づいて計算した値でもよい。実需要とベースラインの差分で表される時系列データに基づく諸特徴量の算出に必要な時間の粒度は、各電力市場のアセスメントに沿った手法で決定してもよいし、ユーザが必要な時間粒度を独自に設定してもよい。
【0022】
参照需要家の特徴量は、例えば
図1の参照需要家情報記憶部4から取得される。
図2は参照需要家情報記憶部4に記憶されている特徴量の一例を示す図である。
図2の参照需要家情報記憶部4には、複数の参照需要家群のそれぞれごとに、各参照需要家群を識別する参照需要家IDと、契約削減量総量[kW]と、ばらつき度「kW
2]と、最大乖離量[kW]とが対応づけて記憶されている。
【0023】
図1の第1成功率計算部2は、参照需要家情報記憶部4から参照需要家群の特徴量を取得して、デマンドレスポンスに対する成功率を計算する。第1成功率計算部2は、複数の参照需要家群のそれぞれごとに、デマンドレスポンスに対する成功率(第1成功率)を計算する。デマンドレスポンスに対する成功率の計算の仕方は後述する。
【0024】
図1の変動量計算部3は、参照需要家群のデマンドレスポンスに対する成功率(第1成功率)と、参照需要家に評価対象需要家を加えた状態でのデマンドレスポンスに対する成功率(第2成功率)を用いた、第1成功率と第2成功率の間の成功率変動量を計算する。評価対象需要家は、参照需要家以外の需要家であって、需要削減要求に応じて電力需要を削減することが可能な需要家である。変動量計算部3は、参照需要家に評価対象需要家を加えた場合に、デマンドレスポンスに対する成功率がどのくらい変化するかを計算する。
【0025】
変動量計算部3は、複数の参照需要家群が存在する場合には、参照需要家群ごとに変動量を計算する。また、評価対象需要家が複数存在する場合には、変動量計算部3は、個々の評価対象需要家について、複数の参照需要家群のそれぞれごとに変動量を計算する。本明細書では、評価対象需要家が単一の需要家であっても、複数の需要家で構成されている場合も、評価対象需要家と呼ぶ。
【0026】
図1の情報処理装置1は、第2成功率計算部5を備えていてもよい。第2成功率計算部5は、評価対象需要家の特徴量と参照需要家の特徴量とに基づいて、参照需要家に評価対象評価を加えた状態でのデマンドレスポンスに対する成功率(第2成功率)を計算する。
【0027】
図1の情報処理装置1は、DR成功率記憶部6を備えていてもよい。DRとは、デマンドレスポンスの略称である。DR成功率記憶部6は、複数の参照需要家群のそれぞれに対応づけて、第1成功率計算部2で計算された第1成功率と、第2成功率計算部5で計算された第2成功率とを記憶する。
【0028】
変動量計算部3は、第1成功率計算部2で計算された第1成功率と、第2成功率計算部5で計算された第2成功率を用いて、デマンドレスポンス成功率の変動量を計算する。変動量計算部3は、DR成功率記憶部6に記憶された成功率(第1成功率と第2成功率)を参照して、上述した変動量を計算する。計算方法は後述する。
【0029】
図1の情報処理装置1は、成功率変動量記憶部7を備えていてもよい。成功率変動量記憶部7は、変動量計算部3で計算された変動量を記憶する。変動量は、複数の参照需要家群のそれぞれごとに異なるため、成功率変動量記憶部7は、個々の参照需要家群に対応づけて、変動量を記憶する。
【0030】
図1の情報処理装置1は、操作入力部8と、表示部9と、入出力インタフェース(I/F)部10とを備えていてもよい。
【0031】
操作入力部8は、参照需要家群の特徴量や評価対象需要家の特徴量を入力する。ユーザが操作入力部8にて特徴量を入力してもよいし、別の装置から操作入力部8を介して特徴量を入力してもよい。操作入力部8から入力された特徴量は、入出力I/F部10を介して、第1成功率計算部2、第2成功率計算部5、及び参照需要家情報記憶部4などに入力される。入出力I/F部10は、上述した成功率変動量記憶部7に記憶された変動量を受信して、表示部9に送出する。
【0032】
図3は第1成功率計算部2及び第2成功率計算部5の処理動作の一例を示すフローチャートである。まず、評価対象需要家の特徴量を取得する(ステップS1)。第1成功率計算部2は、操作入力部8にて入力された評価対象需要家の特徴量を、入出力I/F部10を介して取得する。ステップS1で第1成功率計算部2により取得される特徴量は、例えば、評価対象需要家の契約削減量総量とばらつき度を含んでいる。
【0033】
ステップS1の処理に前後して、第1成功率計算部2は、参照需要家情報記憶部4から参照需要家の特徴量を取得する(ステップS2)。ステップS2の処理を行うにあたって、第1成功率計算部2は、参照需要家IDを指定して参照需要家情報記憶部4にアクセスし、対応する契約削減量総量と、ばらつき度と、最大乖離量とを取得する。ステップS2では、複数の参照需要家群が存在する場合には、指定した参照需要家群集合Iに含まれるすべての参照需要家群の特徴量を取得する。
【0034】
次に、第1成功率計算部2にて、参照需要家群の特徴量に基づいて個々の参照需要家群のデマンドレスポンスに対する成功率(第1成功率)を計算する(ステップS4)。本明細書では、参照需要家群iの第1成功率をSRref,iと呼ぶ。
【0035】
次に、第2成功率計算部5にて、評価対象需要家の特徴量と個々の参照需要家群の特徴量に基づいて、個々の参照需要家群に評価対象需要家を加えた状態でのデマンドレスポンスに対する成功率(第2成功率)を計算する(ステップS5)。本明細書では、参照需要家群iに評価対象需要家を加えた第2成功率をSRadd,iと呼ぶ。
【0036】
ステップS4とS5の処理は、すべての参照需要家群について行われる(ステップS3~S6)。ステップS4とS5で計算された成功率SRref,iとSRadd,iは、参照需要家群iと対応づけられて出力される(ステップS7)。出力された成功率SRref,iとSRadd,iは、参照需要家群iと対応づけられてDR成功率記憶部6に記憶される。
【0037】
ステップS4とS5でデマンドレスポンスに対する成功率を計算するモデルでは、例えば集中不等式が用いられる。集中不等式には複数のバリエーションが存在するが、以下では、ベルンシュタインの不等式を用いる例を説明する。なお、ベルンシュタインの不等式以外の集中不等式を用いたモデルを用いて、デマンドレスポンスの成功率SRref,i、SRadd,iを計算してもよい。
【0038】
ベルンシュタインの不等式は、互いに独立な確率変数Xiの和が一定の値
よりも大きくなる事象の確率Pの制限を、確率変数の特徴量を用いて表現する不等式である。ベルンシュタインの不等式は、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0039】
式(1)において、cは各々の独立な確率変数が取りうる値の中で最も大きな値、ΣVar[Xj]は確率変数の分散の和である。
【0040】
確率変数Xiを、需要家群の中の各需要家の実需要とベースラインとの差分の時系列データとすることで、確率変数Xiの和、すなわち需要家群の実需要とベースラインの差分が取りうる値の確率の制限式を構築することができる。
【0041】
以下では、需給調整市場を想定した場合のデマンドレスポンス成功率のモデル化を説明する。ベルンシュタインの不等式の左辺に含まれる確率変数の事象の条件式を、各ネガワット取引に適した形式に変更することで、他のネガワット取引にも本実施形態の手法は適用可能である。
【0042】
需給調整市場の評価では、デマンドレスポンス発動の際の需要削減指令値により、デマンドレスポンス成功判定の領域が決定される。現在の仕組みでは、需要削減を行う選択した需要家群総体の実需要を、ベースラインを基準として、デマンドレスポンス発動時に要請される削減量を示す指令値に対して±10%の誤差範囲で滞在させる必要がある。誤差範囲の領域は、今後の制度変更により変更される可能性があるため、上記の誤差領域以外の値を用いてもよい。指令値は、アグリゲータが申請した拠出可能量を最大値として決定される。需要家は、アグリゲータに対して各自の契約削減量
を提示する。よって、デマンドレスポンス成功判定閾値
は、n個の需要家を有する参照需要家群では、以下の式(2)で表される。
【数2】
【0043】
以上の考えを用いると、上下制約のある領域に実需要を滞在させる必要がある需給調整市場でのデマンドレスポンス成功率の制限は、以下の式(3)で表される。
【数3】
【0044】
ΣVar[Xj]は参照需要家群のばらつき度、
は契約削減量総量の10%、cは最大乖離量を意味する。よって、参照需要家群iのデマンドレスポンス成功率は、対応する特徴量を使用して、以下の式(4)でモデル化される。
【数4】
【0045】
上述したステップS3では、式(4)を計算することにより、実需要データを直接解析することなく、その特徴量のみでデマンドレスポンス成功率(第1成功率)SRref,iを取得できる。
【0046】
上述したステップS4では、参照需要家群iに評価対象需要家を加えた新しい需要家群iのデマンドレスポンス成功率(第2成功率)SRadd,iを計算する。ステップS4で数理モデル化に使用する式はステップS3と同じであるが、評価対象需要家の持つ特徴量として、ばらつき量ΔV、契約削減量
を入力することにより、以下の式(5)にてSRadd,iは計算される。
【数5】
【0047】
式(5)を計算することにより、需要家群iの実需要データを直接解析することなく、需要家群iの特徴量のみで、デマンドレスポンス成功率(第2成功率)SRadd,iを取得できる。
【0048】
図4は変動量計算部3の処理動作の一例を示すフローチャートである。まず、変動量計算部3は、DR成功率記憶部6に記憶されているすべての成功率SRref,i、SRadd,iを取得する(ステップS11)。
【0049】
次に、すべてのiについて、デマンドレスポンス成功率変動量ΔSRiを計算する(ステップS12~S14)。成功率変動量ΔSRiは、最も単純には、以下の式(6)のように、SRref,iとSRadd,iの差分で表される。
ΔSRi=SRadd,i-SRref,i … (6)
【0050】
デマンドレスポンス成功率変動量は、SRref,iとSRadd,iを用いた演算であればよく、式(6)以外の手法で計算してもよい。例えば、式(6)に適切な補正項を加えることや、係数を加えること、または、SRref,iとSRadd,iをパラメタとした任意の関数であってもよい。
【0051】
次に、取得されたデマンドレスポンス成功率変動量ΔSRiを出力して、例えば成功率変動量記憶部7に記憶する。
【0052】
以上の動作により、モデル化により得られたデマンドレスポンス成功率からデマンドレスポンス成功率変動量ΔSRiを計算することができる。
【0053】
(有効性の検証)
次に、第1の実施形態に係る情報処理装置1で計算されたデマンドレスポンス成功率変動量ΔSRiの有効性を実証する実験内容を示す。実証実験では、上下制約のある領域に実需要を滞在させることが要求されるネガワット取引を念頭に、ある期間の需要家の実データを用いて、ベルンシュタインの不等式を用い需要家の特徴量のみを用いて出力したデマンドレスポンス成功率変動量ΔSRbernsteinと、実データの詳細な解析を基に出力したデマンドレスポンス成功率変動量ΔSRdataを比較することを考える。
【0054】
実証実験では、例えば、実際の39の需要家の5分単位の実需要時系列データを用いる。この中から10の需要家を選別して束ね、参照需要家群とする。その他の需要家を個々に参照需要家群に対して束ねて、ΔSRbernstein及びΔSRdataを計算して比較する。
【0055】
データ解析対象日時は2019/10/1から2019/12/25の平日とする。ΔSRbernsteinは、評価日時に対して2ヵ月前の期間の平日のデータを用いて算出する。すなわち、2019/10/1から2019/10/31までの評価には2019/8/1から2019/9/30のデータ、2019/11/1から2019/11/30までの評価には2019/9/1から2019/10/31のデータ、2019/12/1から2019/12/25までの評価には2019/10/1から2019/11/30のデータから算出した需要家の特徴量の値を使用する。
【0056】
ΔSRbernsteinを評価する際には、実需要またはベースラインに含まれる外れ値は除く。評価対象時間帯は15時から18時までとする。電力拠出量は0kWとし、デマンドレスポンス成功判定の領域は需要家群の最大拠出可能量の10%とする。ベースラインとしては、エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドラインに記載されている同等日採用法を用いる。
【0057】
図5は第1の実施形態の有効性実証実験の結果を示す図である。
図5Aのグラフg1、g2はそれぞれ、参照需要家に評価対象需要家を加えた場合の成功率変動量ΔSRbernstein及びΔSRdataの値を折れ線でつないだものである。グラフg1、g2によると、ベルンシュタインの不等式による実需要の特徴量のみを用いたデマンドレスポンス成功率変動量と、実際のデマンドレスポンス成功率変動量がほぼ全ての需要家に対して数%単位で一致していることが確認できる。
図5Bのグラフg3は、グラフg1とg2の差分を示している。グラフg3からわかるように、グラフg1とg2のデマンドレスポンス成功率変動量の差において、標準偏差は2.5となることがわかる。
【0058】
以上の実証実験により、実需要の特徴量のみを用いて
図3及び
図4の処理手順で計算したデマンドレスポンス成功率変動量は、実需要データそのものを用いた実際のデマンドレスポンス成功率変動量に対して高精度で一致していることが確認できる。
【0059】
図6は表示部9の画面表示例を示す図である。
図6に示すように、表示部9の画面内には、例えば、第1表示領域D1、第2表示領域D2、及び第3表示領域D3が設けられる。
【0060】
第1表示領域D1には、ユーザが入力する入力欄が表示される。入力欄は、評価対象需要家の特徴量を入力する欄である。特徴量として、例えば、契約削減量とばらつき度を入力する欄が設けられる。
【0061】
第2表示領域D2には、ユーザが選択した参照需要家群に評価対象需要家を加えた需要家群のデマンドレスポンス成功率変動量が、参照需要家群の識別情報と対応づけて表示される。
図6の例では、参照需要家群Aを選択したときの成功率変動量が7.2%で、参照需要家群Cを選択したときの成功率変動量が-4.3%である例を示している。
【0062】
第2表示領域D2に表示される参照需要家群の選択は、例えば、第3表示領域D3で行うことができる。第3表示領域D3には、複数の参照需要家群のそれぞれごとに特徴量が表示される。特徴量として、例えば、契約削減量総量、ばらつき度、及び最大乖離量が表示される。また、複数の参照需要家群のいずれかを選択するためのチェックボタンが設けられる。ユーザは、チェックボタンによりいずれかの参照需要家群を任意に選択することができる。
【0063】
第2表示領域D2には、第3表示領域D3でユーザがチェックした参照需要家群ごとに、選択した参照需要家群に評価対象需要家を加えたデマンドレスポンス成功率変動量が表示される。
【0064】
このように、第1の実施形態では、評価対象需要家の実需要データを用いることなく、評価対象需要家の特徴量と参照需要家群の特徴量を用いることで、参照需要家群に評価対象需要家を加えたときのデマンドレスポンス成功率変動量を計算できる。よって、評価対象需要家の実需要データを取得できない場合でも、評価対象需要家がデマンドレスポンス成功率向上に寄与するか否かを判断できるとともに、評価対象需要家をどの参照需要家群と組み合わせるのが最適であるかを迅速に判断できる。
【0065】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、評価対象需要家から特徴量を取得する例を説明したが、評価対象需要家から特徴量を取得できない場合もありうる。以下に説明する第2の実施形態は、評価対象需要家から特徴量を取得できない場合でも、特定の参照需要家群に対するユーザの要望を満たす評価対象需要家の諸条件を出力し、評価対象需要家に提示することで需要家の収集を可能とするものである。
【0066】
図7は第2の実施形態による情報処理装置1aの概略構成を示すブロック図である。
図7の情報処理装置1aは、必須の構成部分として、特徴量範囲決定部11と、変動量分類部12と、抽出部13とを備えている。また、
図7の情報処理装置1aは、特徴量範囲記憶部14と需要家条件記憶部15とを備えていてもよい。
【0067】
特徴量範囲決定部11は、評価対象需要家が取りうる特徴量の範囲を決定する。第2の実施形態では、評価対象需要家から特徴量を取得できない場合を想定している。そこで、特徴量範囲決定部11は、評価対象需要家が取りうる特徴量の範囲を予め想定する。特徴量範囲決定部11は、参照需要家群の規模に応じて特徴量の範囲を決定してもよいし、あるいはユーザが入力した情報に基づいて特徴量の範囲を決定してもよい。特徴量範囲決定部11で決定された特徴量の範囲は、例えば特徴量範囲記憶部14に記憶される。
【0068】
変動量分類部12は、特徴量範囲決定部11で決定された特徴量の範囲内の特徴量を持つ評価対象需要家を、参照需要家情報記憶部4に格納されている参照需要家に加えて変動量を計算する。特徴量の範囲内の特徴量が離散的な複数の特徴量を含んでいる場合には、変動量計算部3の操作を使用し、すべての特徴量の組合せについてデマンドレスポンス成功率変動量を算出し、その量の大小に応じて分類する。特徴量の範囲内の特徴量が連続値の場合には、デマンドレスポンス成功率変動量を計算する関数を解くことで、成功率変動量を計算できる。変動量分類部12は、特徴量範囲記憶部14から評価対象需要家の特徴量の範囲を取得してもよい。
【0069】
抽出部13は、変動量分類部12で計算された変動量の分類の中から、予め指定されたデマンドレスポンス成功率変動量を満たす分類に含まれる評価対象需要家の特徴量の条件を抽出する。抽出された評価対象需要家の特徴量の条件は、例えば需要家条件記憶部15に記憶される。
【0070】
図7の情報処理装置1aは、
図1と同様に、操作入力部8と、表示部9と、入出力I/F部10とを備えていてもよい。操作入力部8は、例えば特徴量の範囲と評価に使用する参照需要家の指定を入力するために用いられる。入出力I/F部10は、操作入力部8で入力された情報を特徴量範囲決定部11や変動量分類部12に送信したり、需要家条件記憶部15に記憶された特徴量の条件を表示部9に送信したりする。
【0071】
図8は第2の実施形態に係る情報処理装置1aの処理動作を示すフローチャートである。まず、評価対象需要家の特徴量の範囲を決定する(ステップS21)。ここでは、例えば操作入力部8にて入力された特徴量の範囲に基づいて、特徴量範囲決定部11が特徴量の範囲を決定する。
【0072】
次に、決定された特徴量の範囲内で、変動量分類部12にて、参照需要家群に対するデマンドレスポンス成功率変動量を計算し分類する(ステップS22)。
【0073】
特徴量の範囲内の特徴量が連続値の場合には、デマンドレスポンス成功率変動量を表す関数を用いて分類を行う。デマンドレスポンス成功率変動量を表す関数は種々変更できるが、例えばデマンドレスポンス成功率変動量を表す式(6)を用いて、評価対象需要家の特徴量について展開して一次近似を行うことで、以下の式(7)で表すことができる。式(7)中のαは、ユーザが指定するデマンドレスポンス成功率変動量の条件であり、この量に基づいて分類を行う。
【数6】
【0074】
次に、計算されたデマンドレスポンス成功率変動量に基づいて、抽出部13にて、予め指定された成功率を満たす分類の評価対象需要家の特徴量の条件を抽出する(ステップS23)。ここで、ユーザは、成功率を一つだけ指定してもよいし、複数指定してもよい。
【0075】
以上の処理動作により、ユーザが指定するデマンドレスポンス成功率変動量を満たすような評価対象需要家の特徴量の条件を取得することができる。ステップS23で抽出された特徴量の条件は、例えば表示部9に表示される。
【0076】
図9は第2の実施形態に係る情報処理装置1aが処理動作を行った結果の一例を示す図である。
図9Aは参照需要家群Pに付加される評価対象需要家の特徴量の条件を示す図、
図9Bは参照需要家群Qに付加される評価対象需要家の特徴量の条件を示す図である。
【0077】
図9Aと
図9Bには、デマンドレスポンス成功率変動量が0の直線gr4と、1%アップする直線gr5と、1%ダウンする直線gr6とが図示されている。
図9Aと
図9Bの横軸は評価対象需要家の特徴量の一つであるばらつき度、縦軸は特徴量の他の一つである契約削減量である。
図9Aと
図9Bには、特徴量範囲決定部11で決定された特徴量の条件を満たす複数の評価対象需要家がプロットされている。
【0078】
図9Aの参照需要家群Pに対しては、評価対象需要家Aだけがデマンドレスポンス成功率変動量が1%以内の上昇を達成できるが、他の評価対象需要家B、C、Dは、デマンドレスポンス成功率変動量が1%以上低下する。
【0079】
図9Bの参照需要家群Qに対しては、評価対象需要家AとBはデマンドレスポンス成功率変動率が1%以内の上昇を達成できるが、デマンドレスポンス成功率変動率が1%以内の低下まで許容するのであれば、評価対象需要家CとDも候補に含めることができる。
【0080】
このように、第2の実施形態では、評価対象需要家の特徴量を取得できない場合であっても、評価対象需要家の特徴量の範囲を決定することで、デマンドレスポンス成功率変動量の条件に合致する評価対象需要家を選定できる。
【0081】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、評価対象需要家の実需要データは完全には使用できず、参照需要家群の実需要データは使用できることを前提としていたが、評価対象需要家の実需要データを使用できる場合がある。この場合、各評価対象需要家の実需要データを特徴量に変換して、デマンドレスポンス成功率変動量を計算できることを利用することで、多数の需要家を含む大規模な評価対象需要家群に対しても、参照需要家群との複雑な組合せ最適化問題を短時間で解くことができる。
【0082】
(第4の実施形態)
これまで述べてきた実施形態とは逆に、参照需要家群の実需要データを使用できない場合には、評価対象需要家の特徴量に基づいてデマンドレスポンス成功率変動量が向上するような参照需要家群の特徴量を取得することで、評価対象需要家と参照需要家群との最適な組合せを選定できる。
【0083】
上述した各実施形態で説明した情報処理装置1、1aの少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、情報処理装置1、1aの少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0084】
また、情報処理装置1、1aの少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0085】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 情報処理装置、1a 情報処理装置、2 第1成功率計算部、3 変動量計算部、4 参照需要家情報記憶部、5 第2成功率計算部、6 DR成功率記憶部、7 成功率変動量記憶部、8 操作入力部、9 表示部、10 入出力I/F部、10 入出力インタフェース(I/F)部、11 特徴量範囲決定部、12 変動量分類部、13 抽出部、14 特徴量範囲記憶部、15 需要家条件記憶部