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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004001
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム及び被服
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20230110BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230110BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
C08G18/42 088
C08G18/00 F
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105450
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】篠原 和也
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB05
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF20
4J034DF27
4J034DG03
4J034DG04
4J034DQ05
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HA09
4J034HB07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA03
4J034NA08
4J034QA03
4J034QB14
4J034QB17
4J034RA02
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】変色し難いポリウレタンフォーム及び被服を提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォームは、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む組成物から得られる。ポリオール類は、石油由来ポリオール及び植物由来ポリオールを含有する。植物由来ポリオールは、ヒマシ油を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール類は、石油由来ポリオール及び植物由来ポリオールを含有し、
前記植物由来ポリオールは、ヒマシ油を含有する、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記石油由来ポリオールは、前記ポリオール類の全体を100質量部とした際に、40質量部以上80質量部以下であり、
前記植物由来ポリオールは、前記ポリオール類の全体を100質量部とした際に、20質量部以上60質量部以下である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
JIS L 0855準拠のNOx弱試験前後のΔYI値が0以上20未満である、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記植物由来ポリオールは、前記ヒマシ油を二塩基酸にて架橋して得られる変性ヒマシ油を含有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記植物由来ポリオールにおける前記変性ヒマシ油の含有率が0質量%より大きく95質量%以下である、請求項4に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記二塩基酸には、セバシン酸が含まれる、請求項4又は請求項5に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
反発弾性率が5%以上35%以下である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項8】
アスカーF硬度が15度以上60度以下である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームを備える被服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォーム及び被服に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クッション性を有するポリウレタンフォームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/038678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリウレタンフォームは、変色することで黄色みがかったりするため、見た目の清潔性等に欠けてしまう。そのため、変色し難いポリウレタンフォームが求められている。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、変色し難いポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール類は、石油由来ポリオール及び植物由来ポリオールを含有し、
前記植物由来ポリオールは、ヒマシ油を含有する、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0006】
本開示のポリウレタンフォームは、変色し難い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
【0008】
〔2〕前記石油由来ポリオールは、前記ポリオール類の全体を100質量部とした際に、40質量部以上80質量部以下であり、
前記植物由来ポリオールは、前記ポリオール類の全体を100質量部とした際に、20質量部以上60質量部以下である、ポリウレタンフォーム。
〔3〕JIS L 0855準拠のNOx弱試験前後のΔYI値が0以上20未満である、ポリウレタンフォーム。
〔4〕前記植物由来ポリオールは、前記ヒマシ油を二塩基酸にて架橋して得られる変性ヒマシ油を含有する、ポリウレタンフォーム。
〔5〕前記植物由来ポリオールにおける前記変性ヒマシ油の含有率が0質量%より大きく95質量%以下である、ポリウレタンフォーム。
〔6〕前記二塩基酸には、セバシン酸が含まれる、ポリウレタンフォーム。
〔7〕反発弾性率が5%以上35%以下である、ポリウレタンフォーム。
〔8〕アスカーF硬度が15度以上60度以下である、ポリウレタンフォーム。
〔9〕上記のポリウレタンフォームを備える被服。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む組成物から得られる。ポリオール類は、石油由来ポリオール及び植物由来ポリオールを含有する。
【0011】
[石油由来ポリオール]
石油由来ポリオールは、特に限定されない。石油由来ポリオールは、ポリオール類の全体を100質量部とした際に、強度の確保、黄変防止の観点から、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましい。石油由来ポリオールは、ポリオール類の全体を100質量部とした際に、環境対応の観点から、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、65質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、石油由来ポリオールは、ポリオール類の全体を100質量部とした際に、40質量部以上80質量部以下が好ましく、45質量部以上70質量部以下がより好ましく、50質量部以上65質量部以下が更に好ましい。
【0012】
石油由来ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエステルポリオール等が例示される。ポリエーテルポリオールは、重量平均分子量1500~8000(好ましくは2000~7500)、官能基数2又は3のポリエーテルポリオールであることが好ましい。ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイド単位(AO単位)としてプロピレンオキサイド単位(PO単位)のみを含むポリエーテルポリオールAと、AO単位としてPO単位とエチレンオキサイド単位(EO単位)を含むポリエーテルポリオールBが併用されることが好ましい。以下の説明では、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のプロピレンオキサイド単位の含有率をPO含有率、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のエチレンオキサイド単位の含有率をEO含有率と称する場合がある。
【0013】
ポリエーテルポリオールAの含有量は特に限定されない。ポリエーテルポリオールAの含有量は、ポリオール類全体を100質量部とした場合に、1質量部以上50質量部以下が好ましく、3質量部以上45質量部以下がより好ましく、5質量部以上40質量部以下が更に好ましい。
【0014】
ポリエーテルポリオールBにおけるEO単位とPO単位の質量比(EO単位:PO単位)は、好ましくは1:99~40:60であり、より好ましくは5:95~30:70であり、更に好ましくは10:90~20:80である。ポリエーテルポリオールBは、ポリウレタンフォームのセルを微細化及び均一化する作用を有している。
【0015】
ポリエーテルポリオールBの含有量は特に限定されない。ポリエーテルポリオールBの含有量は、ポリオール類全体を100質量部とした場合に、20質量部以上80質量部以下が好ましく、30質量部以上70質量部以下がより好ましく、40質量部以上60質量部以下が更に好ましい。
【0016】
ポリマーポリオールとしては、例えば、ベースポリオールとしての官能基数2又は3のポリエーテルポリオール中でアクリロニトリル及びスチレン等のビニルモノマーをグラフト共重合させてなるポリマーポリオールを好適に用いることができる。上記ベースポリオールとしては、例えば、AO単位としてPO単位とEO単位を含むポリエーテルポリオールが挙げられる。なお、ポリマーポリオールの重量平均分子量は、ベースポリオールの重量平均分子量を意味する。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール、アジペート系ポリエステルポリオール等を用いることができる。ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を開環付加重合させて得たポリエステルポリオールが挙げられる。アジペート系ポリエステルポリオールとしては、例えば、多官能カルボン酸と多官能ヒドロキシ化合物との重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールは、ポリウレタンフォームのセルを微細化及び均一化する作用も有している。
【0018】
[植物由来ポリオール]
植物由来ポリオールは、ヒマシ油を含有する。本開示における「ヒマシ油」には、変性ヒマシ油および脱水ヒマシ油が含まれない。本開示における「ヒマシ油」は、未変性ヒマシ油を意味する。ヒマシ油は、脂肪酸とグリセリンとのエステルである。ヒマシ油は、リシノレイン酸を主成分とし、その他の成分として、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸などを含有している。
【0019】
植物由来ポリオールは、植物由来油脂を用いた成分として変性植物由来油脂を含み得る。変性植物由来油脂として、変性ヒマシ油が挙げられる。
【0020】
変性植物由来油脂の一例の変性ヒマシ油は、ヒマシ油を二塩基酸にて架橋して得られる。植物由来ポリオールにおける変性ヒマシ油の含有率は、0質量%より大きく95質量%以下であることが好ましく、10質量%より大きく90質量%以下であることがより好ましく、20質量%より大きく80質量%以下であることが更に好ましい。
【0021】
変性ヒマシ油のような変性植物由来油脂は、目的とする性状となるよう二塩基酸と植物由来油脂を混合し、脱水縮合反応させたものである。この変性植物由来油脂の合成には、公知の方法を用いることができる。例えば、植物由来油脂を任意の溶媒に溶解させた後、二塩基酸を添加する。この反応液をディーン・スタークトラップにより還流を行い、脱水縮合反応を行ないつつ、系外へと反応により生じる水を除去する。反応が完結した後に、溶媒を減圧除去することにより目的とする化合物を得ることができる。
【0022】
二塩基酸としては、例えば脂肪族二塩基酸、脂環族二塩基酸、芳香族二塩基酸、またはこれらの混合物が挙げられる。脂肪族二塩基酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプシン酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ヘキサコサン二酸、オクタコサン二酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸、ムコン酸、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
脂環族二塩基酸としては、例えばシクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ハイミック酸、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
芳香族二塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ビ安息香酸、トリレンジカルボン酸、キシリンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
また、二塩基酸としては、分子中に水酸基を含むヒドロキシ二塩基酸を用いることもできる。ヒドロキシ二塩基酸としては、例えばタルトロン酸、イソリンゴ酸、ヒドロキシメチルマロン酸、ジヒドロキシマロン酸、リンゴ酸、イタマル酸、シトラマル酸、メチルリンゴ酸、エチルリンゴ酸、ジメチルリンゴ酸、トリメチルリンゴ酸、酒石酸、2 , 2- ジヒドロキシ琥珀酸、メチル酒石酸、ジメチル酒石酸、ヒドロキシグルタル酸、ジヒドロキシグルタル酸、トリヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシアジピン酸、ジヒドロキシアジピン酸、ヒドロキシピメリン酸、ジヒドロキシピメリン酸、ヒドロキシスベリン酸、ヒドロキシアゼライン酸、ジヒドロキシアゼライン酸、ヒドロキシセバシン酸、ジヒドロキシセバシン酸、ヒドロキシドデカン二酸、ジヒドロキシドデカン二酸、ヒドロキシブラシル酸、ヒドロキシテトラデカン二酸、ジヒドロキシヘキサデカン二酸、ヒドロキシオクタデカン二酸、ジヒドロキシオクタデカン二酸、フロイオン酸、ヒドロキシエイコサン二酸、ジヒドロキシエイコサン二酸、ジヒドロキシフマル酸、ジヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシシトラコン酸、ヒドロキシムコン酸、ヒドロキシンクロペンタンジカルボン酸、ヒドロキシシクロヘキサンジカルボン酸、ヒドロキシテトラヒドロフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキフタル酸、ジヒドロキシフタル酸、コクシン酸、ヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ヒドロキシジフェニルスルホンジカルボン酸、メコン酸またはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
二塩基酸には、セバシン酸が含まれることが好ましい。セバシン酸は、植物由来二塩基酸である。
【0027】
植物由来ポリオールは、ポリオール類の全体を100質量部とした際に、環境対応の観点から、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、35質量部以上が更に好ましい。植物由来ポリオールは、ポリオール類の全体を100質量部とした際に、強度確保、黄変防止の観点から、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、植物由来ポリオールは、ポリオール類の全体を100質量部とした際に、20質量部以上60質量部以下が好ましく、30質量部以上55質量部以下がより好ましく、35質量部以上50質量部以下が更に好ましい。
【0028】
[その他のポリオール]
また、ポリオール類として、上記のポリオール以外のその他のポリオールを含有してもよい。その他のポリオールとしては、ポリウレタンフォームに一般に用いられるポリオールであれば特に限定されることなく用いることができる。
【0029】
本開示において、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量の多価アルコールが用いられる場合には、これらの多価アルコールについてもポリオール類に含まれるものとする。
【0030】
[ポリイソシアネート類]
ポリイソシアネート類は、イソシアネート基を複数有する化合物であり、例えば、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族イソシアネート類、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族イソシアネート類、又はこれらとポリオールとの反応による遊離イソシアネートプレポリマー類、カルボジイミド変性イソシアネート類等の変性イソシアネート類を用いることができる。また、これらのポリイソシアネート類は、1種のみ含有されていてもよいし、2種以上が組み合わされて含有されていてもよい。
【0031】
ポリイソシアネート類としては、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れのイソシアネートでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネートであっても、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族系のものを挙げることができる。また、2官能以上のイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)を挙げることができる。3官能以上のイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート、等を挙げることができる。また、イソシアネートは、それぞれ一種類に限られず一種類以上であってもよい。例えば、脂肪族系イソシアネートの一種類と芳香族系イソシアネートの二種類を併用してもよい。
【0032】
なお、ポリイソシアネート類のイソシアネートインデックス(INDEX)は80~120の範囲であることが好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリオール類におけるイソシアネートと反応し得る水酸基等の反応基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比である。従って、その値が100未満の場合には水酸基等の反応基がイソシアネート基より過剰であることを意味し、100を越える場合にはイソシアネート基が水酸基等の反応基より過剰であることを意味する。
【0033】
[整泡剤]
組成物は、整泡剤を含んでいることが好ましい。整泡剤は、特に限定されない。整泡剤は、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン、シリコーン-グリース共重合体等のシリコーン系化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が好ましい。これらの整泡剤は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。整泡剤の配合量は、特に限定されない。整泡剤の配合量は、ポリオール類全体を100質量部とした場合に、0.03質量部以上5.0質量部以下が好ましい。
【0034】
[触媒]
組成物は、触媒を含んでいることが好ましい。触媒は主としてポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものであり、組成物は好ましくは触媒を含有する。触媒としては、ポリウレタンフォームに通常使用される公知の触媒、例えば、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´-トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、スタナスオクトエート、オクチル酸スズ(スズオクトエート)等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラートを用いることができる。
【0035】
組成物中における触媒の含有量は、ポリオール類全体を100質量部とした場合に、0.1質量部~5.0質量部であることが好ましい。この含有量が0.1質量部以上であれば、ウレタン化反応を十分に促進できる。5.0質量部以下であれば、ウレタン化反応が過剰に促進されることに起因してセル構造の形成が不均一となることを抑制できる。
【0036】
[その他の成分]
組成物は必要に応じて上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、可塑剤、抗菌剤、及び着色剤が挙げられる。なお、酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられるが、揮発性有機化合物含量の低減という観点から、分子量300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが特に好ましい。増粘剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0037】
2.ΔYI値に関する要件
ポリウレタンフォームにおいて、JIS L 0855準拠のNOx弱試験前後のΔYI値は、0以上20未満であることが好ましく、0以上18未満であることがより好ましく、0以上15未満であることが更に好ましい。
【0038】
3.反発弾性率に関する要件
ポリウレタンフォームにおいて、JIS K6400-3準拠の反発試験に基づく反発弾性率は、0%以上40%以下であることが好ましく、0%以上35%以下であることがより好ましく、0%以上30%以下であることが更に好ましい。
【0039】
4.アスカーF硬度に関する要件
ポリウレタンフォームにおいて、アスカーF硬度は、10度以上60度以下であることが好ましく、15度以上55度以下であることがより好ましく、20度以上50度以下であることが更に好ましい。アスカーF硬度は、アスカーF硬度計を用いてポリウレタンフォームに3秒間接触後の測定値である。
【0040】
5.ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームの製造は、例えば、ポリウレタン原料を成形用型内で発泡させて行う。具体的には、ポリリウレタン原料を開放された成形用型内に供給した後、成形用型を閉じ、ポリウレタン原料を発泡させる。このような方法以外にも、成形用型を閉じた状態でポリウレタン原料を成形用型内に充填して発泡させるクローズド注入を用いてもよい。
【0041】
6.ポリウレタンフォームの適用
ポリウレタンフォームは、被服に好適である。ポリウレタンフォームが用いられる被服としては、ブラパッド、マスクなどが例示される。ポリウレタンフォームは、被服に限らず、マットレス、枕用クッションなどの生活用品、吸血用のスポンジなどの医療用品などにも用いることができる。
【0042】
7.本実施形態の作用及び効果
ポリウレタンフォームは、変色することで黄色みがかったりするため、見た目の清潔性などに欠けてしまう。衣料用途(ブラパッド、マスクなど)、医療用途(吸血用のスポンジなど)では、見た目の清潔性が特に重要である。本実施形態のポリウレタンフォームは、ポリオール類及びポリイソシアネート類を含む組成物から得られる。ポリオール類は、石油由来ポリオール及び植物由来ポリオールを含有する。植物由来ポリオールは、ヒマシ油を含有する。このような構成によって、変色し難いポリウレタンフォーム及び被服を提供できる。
【0043】
ポリウレタンフォームは、環境への影響の観点から、バイオマス度(植物化度)の向上が求められている。本実施形態のポリウレタンフォームに用いるポリオール類は、植物由来ポリオールを含有する。このように、バイオマス由来の植物由来ポリオールを用いることで、環境に配慮した(環境循環型の)ポリウレタンフォームを提供できる。
【0044】
本実施形態のポリウレタンフォームは、撥水性に優れるため、洗濯性に優れる。
【実施例0045】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
1.ポリウレタンフォームの製造
各成分を下記表1に示す配合割合で調製し、各実施例及び各比較例の組成物を得た。次いで、組成物を開放された成形用型内に供給した後、成形用型を閉じ、ポリウレタン原料を発泡させた。これにより、ポリウレタンフォームを得た。
【0046】
【表1】
【0047】
表1中におけるINDEXを除く各成分の数値は、質量部を表す。
表1における、触媒、整泡剤、イソシアネートの具体的内容を以下に示す。
触媒:トリメチレンジアミン(EVONIK社製 、33LSI)
整泡剤:シリコーン整泡剤(東レ・ダウコーニング社製、SZ-1698)
イソシアネート:NCO%:33.4%のMDI
【0048】
石油系ポリオール1~3、および植物系ポリオール1~5に関する各種情報を下記表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2中の「OHV」の欄は、水酸基価を示している。「Mw」の欄は、重量平均分子量を示している。
石油系ポリオール1に含まれるポリエーテルポリオールにおけるEO単位とPO単位の重量比(EO単位:PO単位)は、17:83である。
石油系ポリオール2に含まれるポリエーテルポリオールにおけるEO単位とPO単位の重量比(EO単位:PO単位)は、18:82である。
石油系ポリオール3に含まれるポリエーテルポリオールにおけるEO単位とPO単位の重量比(EO単位:PO単位)は、0:100である。
植物系ポリオール2は、植物系ポリオール1:セバシン酸=2mol:1molからなる植物化度100%のヒマシ油ポリオールである。植物系ポリオール2は、攪拌機、温調機などを装備したガラス製反応器に、100重量部の植物系ポリオール1と、10.9重量部のセバシン酸とを仕込み、所定の時間、所定の温度で撹拌しながら反応させ生成した合成物である。
【0051】
2.評価
次に、得られた各実施例及び各比較例のポリウレタンフォームについて、以下のような評価をした。
【0052】
[植物化度]
植物化度は、水を除く原料全体(石油系ポリオール1~3、植物系ポリオール1~5、触媒、整泡剤、及びイソシアネート)の合計質量部に対する、植物系ポリオール1~5の合計質量部の割合である。評価結果を、表1の「植物化度」の欄に示すとともに、以下の基準で評価した。
「A」:25%以上100%以下
「B」:20%以上25%未満
「C」:0%以上20%未満
【0053】
[密度]
ポリウレタンフォームの密度は、ポリウレタンフォームの質量を型(製造に用いた成形用型)の容積(体積)で除して求めた。測定結果を、表1の「密度」の欄に示す。
【0054】
[F硬度]
アスカーF硬度は、アスカーF硬度計を用いてポリウレタンフォームに3秒間接触後の測定値を読み取った。評価結果を、表1の「F硬度」の欄に示すとともに、以下の基準で評価した。
「A」:20度以上50度未満
「B」:10度以上20度未満、又は50度以上60度未満
「C」:10度未満、又は60度以上
【0055】
[反発弾性率]
JIS K6400-3準拠の反発試験に基づいて反発弾性率を測定した。評価結果を、表1の「反発弾性率」の欄に示すとともに、以下の基準で評価した。
「A」:0%以上30%未満
「B」:30%以上40%未満
「C」:40%以上
【0056】
[セル数]
JIS K6400-1準拠の測定方法で、ポリウレタンフォームの表面のセル数を測定した。
【0057】
[ΔYI]
JIS L 0855準拠のNOx弱試験前後のYI値を測定し、試験後のYI値に対する試験前のYI値の差分をΔYI値とした。評価結果を、表1の「ΔYI」の欄に示すとともに、以下の基準で評価した。
「A」:0以上15以下
「B」:15より大きく20以下
「C」:20より大きい
【0058】
[総合評価]
「A」:「変色性評価」が「A」又は「B」、かつ「植物化度評価」「F硬度評価」「反発評価」のいずれも「C」ではない
「B」:「変色性評価」が「A」又は「B」、かつ「植物化度評価」「F硬度評価」「反発評価」のいずれかが「C」である
「C」:「変色性評価」が「C」である
【0059】
3.結果
実施例1~3は、下記要件(a)を満たしている。比較例1~5は、下記要件(a)を満たしていない。
・要件(a):ポリウレタン原料に、ヒマシ油を含有する植物由来ポリオールを含む
実施例1~3は、「総合評価」が「A」であった。比較例1は、「総合評価」が「B」であった。比較例2~5は、「総合評価」が「C」であった。実施例1~3では、比較例1~5とは異なり、変色性評価、植物化度評価、F硬度評価、および反発評価の全てにおいて高い評価となった。実施例1~3では、ポリウレタン原料にヒマシ油を含有する植物由来ポリオールを含むことで、変色し難く、植物化度が高く、F硬度評価が低く、反発弾性率が低かった。
【0060】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、変色し難く、植物化度が高く、F硬度評価が低く、反発弾性率が低いポリウレタンフォームを生成できた。
植物度25%以上で、かつ耐NO変色性能としてΔYI<20の難黄変性のポリウレタンフォームを生成できた。
ユーザのニーズに即した触感(例えば、硬度が低く、低反発の触感)のポリウレタンフォームを生成できた。
【0061】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、本開示の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。