(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040196
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01V 8/20 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01V8/20 P
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002248
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2021077337の分割
【原出願日】2012-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】手の動きに対応して適切に手を検出できると共に、手が検出不要な位置にある場合にはそれを誤検出することを効果的に防止することが可能な物体検出装置を提供する。
【解決手段】手を空間的に検出するための領域をそれぞれ有し、対応する領域内において手との距離が閾値距離以下となったとき、手が領域内に存在するとそれぞれ検出する第1発光部1A1、第2発光部1A2及び受光部1Bと、領域A及び領域B内に手が存在すると検出されたとき、領域Cについての閾値距離を、手の既定のワイプ動作に対応した閾値距離に設定するセンサドライバ10と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体との距離が閾値距離以下となったとき前記物体を検出する検出領域をそれぞれ有し、且つ直線状に並べられた複数の検出手段と、
一の前記検出領域に前記物体が検出されたとき、設定された前記物体の動きの方向に前記直線状に並べられた他の前記検出領域の前記閾値距離を、前記一の前記検出領域の前記閾値距離より長く設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、物体検出装置、物体検出方法、物体検出用プログラム及び情報記録媒体の技術分野に属する。より詳細には、複数の検出手段を備えて物体を検出する物体検出装置及び物体検出方法、並びに当該物体検出装置用のプログラム及び当該プログラムが記録された情報記録媒体の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載されている車載装置を操作する場合、車内が広くないことや運転上の安全等を考慮して、人の手の動きを赤外線センサ等のいわゆる近接センサにより検出し、当該検出した内容に応じて車載装置を制御することが行われている。この場合の車載装置としては、例えばナビゲーション装置やオーディオ装置などが挙げられる。
【0003】
より具体的に従来では、例えば近接センサを一列に複数個並べ、その並べられた近接センサに対して人の手を翳しながらその並べられている方向に当該手が移動されたことを各近接センサで検出することにより、その移動に予め対応付けられている特定の動作を実行させることが行われていた。
【0004】
なお、従来の近接センサの構成を示す他の例としては、例えば下記特許文献1に開示されている近接センサがある。
【0005】
ここで一般に、人が手を翳しながら、例えば左右方向へその手を動かす場合、手の動きとしては通常、人の体を中心として円弧状になり易いといえる。例えば、近接センサにより手の動きを検出して上記車載装置を操作しようとする際、上記近接センサに対して斜めの位置にいる人が当該斜めの方向から手を動かす場合、その動きは、近接センサから見て近い位置から徐々に遠ざかるような動きになり易いといえる。また、例えば上記近接センサに対して正面の位置にいる人がその位置から手を動かす場合には、その動きは、近接センサから見て、遠い位置→近い位置→遠い位置と移動する動きになり易いといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の近接センサでは、人の手があると検出する際の基準となる閾値距離は、並べられた各近接センサのそれぞれについて同一とされていた。従って、例えば並べられた近接センサに対して等距離を保ちながら手を移動させるといった不自然な場合にしか、近接センサとして正確な検出ができないという問題点があった。
【0008】
一方、上述したように、並べられた近接センサに対して等距離でない軌跡で移動される手の存在を検出する場合に、より遠い位置にある手を検出すべく上記閾値距離を長くすると、本来検出されることが望まれない位置にある手まで誤って検出してしまうといった問題点があった。
【0009】
そこで、本願は上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、人の手等の物体の動きに対応して適切に当該物体を検出できると共に、当該物体が検出不要な位置にある場合にはそれを誤検出することを効果的に防止することが可能な物体検出装置及び物体検出方法、並びに当該物体検出装置用のプログラム及び当該プログラムが記録された情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、物体との距離が閾値距離以下となったとき前記物体を検出する検出領域をそれぞれ有し、且つ直線状に並べられた複数の検出手段と、前記検出領域のうちの第1領域で前記物体が検出された後に、他の前記検出領域である第3領域の前記閾値距離を、前記第1領域の前記閾値距離より長く設定し、前記第1領域と前記第3領域との間の更に他の前記検出領域である第2領域の前記閾値距離を、前記第1領域の閾値距離より長く、且つ前記第3領域の閾値距離より短く設定する設定手段と、を備える。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、物体との距離が閾値距離以下となったとき前記物体を検出する検出領域をそれぞれ有し、且つ直線状に並べられた複数の検出手段を備える物体検出装置において実行される物体検出方法において、前記検出領域のうちの第1領域で前記物体が検出された後に、他の前記検出領域である第3領域の前記閾値距離を、前記第1領域の前記閾値距離より長く設定し、前記第1領域と前記第3領域との間の更に他の前記検出領域である第2領域の前記閾値距離を、前記第1領域の閾値距離より長く、且つ前記第3領域の閾値距離より短く設定する設定工程を含む。
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項8に記載の発明は、物体との距離が閾値距離以下となったとき前記物体を検出する検出領域をそれぞれ有し、且つ直線状に並べられた複数の受光部等の検出手段を備える物体検出装置に含まれるコンピュータを、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記設定手段として機能させる。
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の物体検出用プログラムが前記コンピュータにより読み取り可能に記録されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る物体検出装置の概要構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施例に係る近接センサの概要構成を示すブロック図等であり、(a)は当該ブロック図であり、(b)は検出領域を例示する図である。
【
図3】第1実施例に係る検出処理を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施例に係る検出処理を説明する図であり、(a)は当該説明図(i)であり、(b)は当該説明図(ii)である。
【
図5】第1変形例に係る検出処理を説明する図であり、(a)は当該説明図(i)であり、(b)は当該説明図(ii)である。
【
図6】第2変形例に係る検出処理を説明する図であり、(a)は当該説明図(i)であり、(b)は当該説明図(ii)である。
【
図7】第2実施例に係る近接センサの概要構成を示すブロック図等であり、(a)は当該ブロック図であり、(b)は検出領域を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願を実施するための形態について、
図1を用いて説明する。なお
図1は実施形態に係る物体検出装置の概要構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、実施形態に係る物体検出装置Sは、複数の検出手段1、1と、設定手段10と、により構成されている。
【0017】
この構成において各検出手段1は、物体Hを空間的に検出するための検出領域をそれぞれ有し、対応する検出領域内において物体Hとの距離が閾値距離以下となったとき、当該物体Hが当該検出領域内に存在するとそれぞれ検出する。そして設定手段10は、一の検出領域内に物体Hが存在すると検出されたとき、他の検出領域についての閾値距離を、複数の検出領域に対して予め設定された物体Hの動き(
図1に示す場合は白抜き矢印で示す動き)に対応した閾値距離に設定する。即ち
図1に示す場合、設定手段10は、例えば物体Hの予め設定された
図1中下向きの動きに応じて、例えば
図1中最も上にある検出手段1の検出領域内に物体Hが存在すると検出されたとき、他の検出手段1の検出領域についての閾値距離を、物体Hの下向きの動きに対応した閾値距離に設定する。
【0018】
以上説明したように、実施形態に係る物体検出装置Sの動作によれば、一の検出領域内において物体Hの存在が検出されたとき、他の検出領域についての閾値距離を、既定の物体Hの動きに対応した閾値距離に変更するので、その動きに対応して適切に物体Hを検出できると共に、検出不要な位置にある物体Hを誤検出することを効果的に防止できる。
【実施例0019】
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、
図2乃至
図7を用いて説明する。なお以下に説明する各実施例は、本願を、物体としての人の手の動きを検出する近接センサに適用した場合の実施例である。
【0020】
(1)
第1実施例
先ず、実施形態に対応する第1実施例について、
図2乃至
図4を用いて説明する。なお、
図2は第1実施例に係る近接センサの概要構成を示すブロック図等であり、
図3は第1実施例に係る検出処理を示すフローチャートであり、
図4は第1実施例に係る検出処理を説明する図である。このとき
図2では、
図1に示した実施形態に係る物体検出装置Sにおける各構成部材に対応する実施例の構成部材それぞれについて、当該物体検出装置Sにおける各構成部材と同一の部材番号を用いている。
【0021】
図2(a)に示すように、第1実施例に係る近接センサS1は、赤外線により物体としての人の手を検出する近接センサである。なお検出用に超音波を用いる近接センサであっても、実施例としては適切である。具体的に第1実施例に係る近接センサS1は、検出用の赤外線を時分割的に交互にそれぞれ出射する第1発光部1A1及び第2発光部1A2と、第1発光部1A1及び第2発光部1A2から交互に出射されて物体Hにより反射された赤外線を受光する受光部1Bと、第1発光部1A1並びに第2発光部1A2及び受光部1Bを駆動すると共に第1実施例に係る閾値距離を設定する実施形態に係る設定手段の一例としてのセンサドライバ10と、第1実施例に係る近接センサS1による手の移動状態の検出結果に対応した例えば所定のコマンドを出力する本願に係る出力手段の一例としてのCPU20と、により構成されている。このとき、第1発光部1A1が実施形態に係る検出手段1の一つの一例であり、第2発光部1A2が実施形態に係る検出手段1の他の一つの一例である。
【0022】
この構成において、第1発光部1A1及び第2発光部1A2と受光部1Bとは、具体的には
図2(b)に示すように、平面状の基台B上に配置されている。この配置により、第1発光部1A1と受光部1Bとにより、近接センサS1としての検出領域A1が形成され、また受光部1Bと第2発光部1A2とにより、近接センサS1としての検出領域A2が形成される。このときセンサドライバ10は上述したように、検出用の赤外線を、第1発光部1A1及び第2発光部1A2から時分割的に交互にそれぞれ出射させる。そして、受光部1Bをも駆動させるセンサドライバ10において、第1発光部1A1及び第2発光部1A2それぞれの出射タイミングに対応したタイミングで受光部1Bに赤外線の受光があったか否かを検出することにより、検出すべき手が、検出領域A1又は検出領域A2のいずれに存在するか(即ち、手の左右方向の動きの有無)を検出する。
【0023】
ここで、
図2(b)に例示するように、検出領域A1と検出領域A2とは、それぞれの一部が重複するように形成される。従って、例えば
図2(b)に例示する領域Aは、
図2(b)の第1発光部1A1と受光部1Bとにより手が検出され得る領域であり、また
図2(b)に例示する領域Cは、
図2(b)中の第2発光部1A2と受光部1Bとにより手が検出され得る領域である。そして
図2(b)における中央の領域Bは、第1発光部1A1及び第2発光部1A2と受光部1Bとにより手が検出され得る領域である。よってこれらにより、第1発光部1A1並びに第2発光部1A2及び受光部1Bの前面が領域A乃至領域Cの三つに分割され、これらの領域については、その領域内に手があるか否かが別個に検出される。具体的には、領域A乃至領域Cのそれぞれについて設定された閾値距離を用いて、第1発光部1A1等が配置された基台Bから見て当該閾値距離より近い位置に手があるか否かを、当該領域ごとに検出する。この領域ごとの手の検出動作については、後ほど詳述する。そして、領域A乃至領域Cのそれぞれにおいて閾値距離より近い位置に手があると検出された場合、センサドライバ10は、当該手が検出されることを示す検出信号をCPU20に出力する。これによりCPU20は、当該検出信号に基づき、検出された手の位置及びその移動に対応する例えばコマンドを出力する。
【0024】
次に、第1実施例に係る近接センサS1の動作について、具体的に
図2乃至
図4を用いて説明する。なお以下に説明する各実施例においては、人から見て右側に実施例に係る近接センサS1が存在する場合には、例えば右手が領域Aから領域Cに向けてはらうように移動されること(いわゆるワイプ動作)を検出する(例えば
図4(a)参照)。また人から見て左側に実施例に係る近接センサS1が存在する場合には、例えば左手が領域Cから領域Aに向けてはらうように移動されることを検出する(例えば
図4(b)参照)。
【0025】
第1実施例に係る近接センサS1においては、
図4に例示するように、
図2(b)に例示する領域A乃至領域Cのそれぞれについて、センサドライバ10により、三通りの閾値距離が設定されている。このとき、第1閾値距離が基台Bに最も近く、以下第2閾値距離、第3閾値距離の順に基台Bからの距離が長くなるように設定されている。これら閾値距離のデータは、センサドライバ10内に不揮発性に記憶されていても良いし、或いはCPU20内に不揮発性に記憶されているものをセンサドライバ10が読み出すように構成されていても良い。また、第2閾値距離と第3閾値距離との間隔は、
図4に例示するように、第1閾値距離と第2閾値距離との間隔よりも長くなるように設定されている。そして、各領域において、いずれかの閾値距離より基台Bに対して近い位置に手の存在を示す反応があった場合、それがセンサドライバ10により検出される。
【0026】
このような状態においてセンサドライバ10は、
図3に示すように、近接センサS1の電源がオンとされたか否かを監視する(ステップS1)。ステップS1の監視において電源がオンとされない場合(ステップS1;NO)、センサドライバ10はそのまま監視を継続する。一方ステップS1の監視において電源がオンとされた場合(ステップS1;YES)、センサドライバ10は第1発光部1A1並びに第2発光部1A2及び受光部1Bを駆動し(ステップS2)、更に領域Aから領域Cのいずれかにおいて、手Hの存在を示す反応があったか否かを確認する(ステップS3)。ステップS3の確認においていずれの領域においても反応がない場合(ステップS3;NO)、センサドライバ10は引き続き当該反応を監視する。
【0027】
ここで、ステップS3の確認動作についてより具体的には、例えば、センサドライバ10が第1受光部1A1からの赤外線を受光部1Bにおいて受光した際の受光強度(又は受光量)を、当該受光したタイミングから、続いて第2発光部1A2が発光し始めるタイミングまでの時間よりも長く且つ次に第1受光部1A1が再び発光し始めるタイミングまでの時間より短い所定期間だけ図示しないメモリに記憶しておく。このとき第1受光部1A1からの赤外線を受光部1Bにおいて受光した際の受光強度を、以下単に第1受光強度と称する。また同様に、第2発光部1A2からの赤外線を受光部1Bにおいて受光した際の受光強度(又は受光量)を、当該受光したタイミングから、続いて第1発光部1A1が発光し始めるタイミングまでの時間よりも長く且つ次に第2発光部1A2が再び発光し始めるタイミングまでの時間より短い所定期間だけ上記メモリに(第1受光強度とは別個に)記憶しておく。このとき第2発光部1A2からの赤外線を受光部1Bにおいて受光した際の受光強度を、以下単に第2受光強度と称する。そして、ステップS3のタイミングにおいて、記憶されている第1受光強度が領域Aについて設定されたいずれかの上記閾値距離に対応する所定値以上の値であり(即ち、領域Aについて設定されたいずれかの上記閾値距離より近接センサS1に近い位置に手が存在し)、且つ第2受光強度がゼロ又はゼロに近い値である場合に、領域A内に手が存在すると検出される。これに対し、記憶されている第2受光強度が領域Cについて設定されたいずれかの上記閾値距離に対応する所定値以上の値であり(即ち、領域Cについて設定されたいずれかの上記閾値距離より近接センサS1に近い位置に手が存在し)、且つ第1受光強度がゼロ又はゼロに近い値である場合には、領域C内に手が存在すると検出される。更に第1受光強度及び第2受光強度が、共に領域Bについて設定されたいずれかの上記閾値距離に対応する所定値以上の値である場合(即ち、領域Bについて設定されたいずれかの上記閾値距離より近接センサS1に近い位置に手が存在する場合)に、領域B内に手が存在すると検出される。
【0028】
そして、上記ステップS3の確認においていずれかの領域において手Hの存在を示す反応があった場合(ステップS3;YES)、センサドライバ10は次に、その反応が、領域A内で第1閾値距離より近い位置に手Hが存在することによるものか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4の判定において、当該反応が領域A内で第1閾値距離より近い位置に手Hが存在することによるものである場合(ステップS4;YES)、手Hは、その時点では
図4(a)に例示する領域Aにおいて第1閾値距離よりも基台Bに近い位置に存在していることになる。そこでセンサドライバ10は次に、ステップS4の判定において「YES」となったタイミングから所定時間経過した後に領域Bにおける閾値距離を第2閾値距離に切り替え、当該領域B内で第2閾値距離より近い位置に手Hが存在するか否かを判定する(ステップS5)。この場合の所定時間は、例えば実験的或いは経験的に決定される所定時間である(以下、ステップS6、S10及びS11の処理において同様)。ステップS5の判定において、領域B内で第2閾値距離より近い位置に手Hが存在する場合(ステップS5;YES)、手Hは、その時点では
図4(a)に例示する領域Bにおいて第2閾値距離よりも基台Bに近い位置に存在していることになる。そこでセンサドライバ10は次に、ステップS5の判定において「YES」となったタイミングから所定時間経過した後に領域Cにおける閾値距離を第3閾値距離に切り替え、当該領域C内で第3閾値距離より近い位置に手Hが存在するか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の判定において、領域C内で第3閾値距離より近い位置に手Hが存在する場合(ステップS6;YES)、手Hは、その時点では
図4(a)に例示する領域Cにおいて第3閾値距離よりも基台Bに近い位置に存在していることになる。以上のステップS4からステップS6までの判定が全て「YES」となった場合、結果として手Hは、
図4(a)に実線矢印で例示するように、基台Bから遠ざかりながら領域Aから領域Cの方向に移動したことになる。そこでセンサドライバ10は、手Hが
図4(a)に例示するように領域Aから領域Cに向けて(
図4(a)において実線矢印で示す軌跡により)移動したと判定し(ステップS7)、その旨の判定結果をCPU20に出力する。これによりCPU20は、領域Aから領域Cに向けて手Hが移動したことに予め対応付けられている所定のコマンドを出力する等の処理を行う。その後センサドライバ10は、近接センサS1の電源がオフとされたか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8の判定において電源がオフとされない場合(ステップS8;NO)、センサドライバ10は上記ステップS3の監視に移行する。一方ステップS8の判定において電源がオフとされた場合(ステップS8;YES)、センサドライバ10は第1実施例に係る検出処理を終了する。
【0029】
なお、上記ステップS5の判定において領域B内で第2閾値距離より近い位置に手Hが存在しない場合(ステップS5;NO)、又は上記ステップS6の判定において領域C内で第3閾値距離より近い位置に手Hが存在しない場合(ステップS6;NO)には、手Hが近接センサS1から離れていったことになる。そこでセンサドライバ10はこれらの場合、上記ステップS3に戻って当該反応を監視する。
【0030】
一方、上記ステップS4の判定において、ステップS3において確認された反応が領域A内で第1閾値距離より近い位置に手Hが存在することによるものでない場合(ステップS4;NO)、センサドライバ10は次に、その反応が、領域C内で第1閾値距離より近い位置に手Hが存在することによるものか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9の判定において、領域C内で第1閾値距離より近い位置に手Hが存在することによるものである場合(ステップS9;YES)、手Hは、その時点では
図4(b)に例示する領域Cにおいて第1閾値距離よりも基台Bに近い位置に存在していることになる。そこでセンサドライバ10は次に、ステップS9の判定において「YES」となったタイミングから所定時間経過した後に領域Bにおける閾値距離を第2閾値距離に切り替え、当該領域B内で第2閾値距離より近い位置に手Hが存在するか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10の判定において、領域B内で第2閾値距離より近い位置に手Hが存在する場合(ステップS10;YES)、手Hは、その時点では
図4(b)に例示する領域Bにおいて第2閾値距離よりも基台Bに近い位置に存在していることになる。そこでセンサドライバ10は次に、ステップS10の判定において「YES」となったタイミングから所定時間経過した後に領域Aにおける閾値距離を第3閾値距離に切り替え、当該領域A内で第3閾値距離より近い位置に手Hが存在するか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11の判定において、領域A内で第3閾値距離より近い位置に手Hが存在する場合(ステップS11;YES)、手Hは、その時点では
図4(b)に例示する領域Aにおいて第3閾値距離よりも基台Bに近い位置に存在していることになる。以上のステップS9からステップS11までの判定が全て「YES」となった場合、結果として手Hは、
図4(b)に実線矢印で例示するように、基台Bから遠ざかりながら領域Cから領域Aの方向に移動したことになる。そこでセンサドライバ10は、手Hが
図4(b)に例示するように領域Cから領域Aに向けて(
図4(b)において実線矢印で示す軌跡により)移動したと判定し(ステップS12)、その旨の判定結果をCPU20に出力する。これによりCPU20は、領域Cから領域Aに向けて手Hが移動したことに予め対応付けられている所定のコマンドを出力する等の処理を行う。その後センサドライバ10は上記ステップ8の判定に移行する。
【0031】
なお、上記ステップS9の判定において領域C内で第1閾値距離より近い位置に手Hが存在しない場合(ステップS9;NO)、センサドライバ10は、上記ステップS3に戻って当該反応を監視する。また、上記ステップS10の判定において領域B内で第2閾値距離より近い位置に手Hが存在しない場合(ステップS10;NO)、又は上記ステップS11の判定において領域A内で第3閾値距離より近い位置に手Hが存在しない場合(ステップS11;NO)には、手Hが近接センサS1から離れていったことになる。そこでセンサドライバ10はこれらの場合、上記ステップS3に戻って当該反応を監視する。
【0032】
以上説明したように、第1実施例に係る検出処理によれば、例えば領域A内において手Hの存在が検出されたとき、他の領域B及び領域Cについての閾値距離を、領域A乃至領域Cに対する手Hの既定の動き(即ち、第1実施例の場合は手Hによるワイプ動作)に対応した閾値距離に変更するので、動きに対応して適切に手Hを検出できると共に、検出不要な位置にある手Hを誤検出することを効果的に防止できる。
【0033】
また、第1発光部1A1及び第2発光部1A2と受光部1Bとが直線状に並べられており、手Hの動きが、直線状に並べられた領域A乃至領域Cの位置に沿った既定のワイプ動作であり、領域A(又は領域C。以下同順。)内に手Hが存在していることが検出されたとき、ワイプ動作の方向に並べられた領域B及び領域C(又は領域A)についての閾値距離を、当該領域A(又は領域C)についての閾値距離よりも長く設定するので、当該ワイプ動作に対応してより適切に手Hを検出できると共に、検出不要な位置にある手Hを誤検出することをより効果的に防止できる。
【0034】
更に、検出された手Hの動きに基づいてそれに対応した内容のコマンドをCPU20が出力するので、例えば手Hの動きを正確に検出して他の装置を制御することができる。
【0035】
なお、上記第1実施例は種々の応用が可能である。
【0036】
例えば
図5に例示する第1変形例のように、中央の領域Bについての閾値距離を上記第1閾値距離にて固定とし、更に手Hのワイプ動作に合わせて、領域Cについての閾値距離のみ(
図5(a)に例示するワイプ動作の場合)又は領域Aについての閾値距離のみ(
図5(b)に例示するワイプ動作の場合)を、それぞれ第3閾値距離とするように構成することもできる。このとき、
図5(a)に例示する場合は、結果として領域Aについての閾値距離と領域Bについての閾値距離とがそれぞれ第1閾値距離であることになる。また
図5(b)に例示する場合は、結果として領域Cについての閾値距離と領域Bについての閾値距離とがそれぞれ第1閾値距離であることになる。
【0037】
以上
図5を用いて説明した第1変形例の場合には、中央の領域Bについての閾値距離を一定とするので、閾値距離が設定される領域の数が少なくなることで、センサドライバ10としての処理負荷を少なくすることができる。
【0038】
また、中央の領域Bについての閾値距離を一定とする場合でも、
図6に例示する第2変形例のように、当該中央の領域Bについての閾値距離を第2閾値距離で一定とすると共に、手Hの存在を検出する前の待機時においては、領域Aについての閾値距離及び領域Cについての閾値距離を、それぞれ上記第2閾値距離よりも短い第1閾値距離としておく。そして既定のワイプ動作に合わせて、例えば
図6(a)に例示するワイプ動作に対応するように、領域A及び領域Bにおいて手Hが存在していることが検出されたとき、領域Cについての閾値距離を、領域Bについての第2閾値距離よりも長い第3閾値距離とするように構成することもできる。また例えば
図6(b)に例示するワイプ動作に対応するように、領域C及び領域Bにおいて手Hが存在していることが検出されたとき、領域Aについての閾値距離を、領域Bについての第2閾値距離よりも長い第3閾値距離とするように構成することもできる。
【0039】
以上
図6を用いて説明した第2変形例の場合には、待機時において領域Aについての閾値距離及び領域Cについての閾値距離を領域Bについての第2閾値距離よりも短い第1閾値距離としておき、更に領域A(領域C。以下同順。)及び領域Bにおいて手Hが存在していることが検出されたとき、領域C(領域A)についての閾値距離を領域Bについての第2閾値距離よりも長い第3閾値距離にと設定するので、センサドライバ10としての処理負荷を少なくしつつ、ワイプ動作に対応してより適切に手Hを検出できると共に、検出不要な位置にある手Hを誤検出することをより効果的に防止できる。
【0040】
(2)
第2実施例
次に、実施形態に対応する他の実施例である第2実施例について、
図7を用いて説明する。なお
図7は、第2実施例に係る近接センサの概要構成を示すブロック図等である。このとき
図7では、
図1に示した実施形態に係る物体検出装置Sにおける各構成部材に対応する実施例の構成部材それぞれについて、当該物体検出装置Sにおける各構成部材と同一の部材番号を用いている。
【0041】
上述した第1実施例では、第1発光部1A1及び第2発光部1A2と受光部1Bとにより三つの領域A乃至領域Cを形成する近接センサS1について説明した。これに対して第2実施例に係る近接センサは、一組の発光部及び受光部を二組備えることにより、第1実施例と同様の三つの領域A乃至領域Cを形成する。
【0042】
即ち
図7(a)に示すように、第2実施例に係る近接センサS2は、それぞれに検出用の赤外線を出射する発光部1A及び発光部2Aと、発光部1Aに隣接して設けられる受光部1Bと、発光部2Aに隣接して設けられる受光部2Bと、発光部1A及び受光部1Bを駆動すると共に第2実施例に係る閾値距離を設定するセンサドライバ10と、発光部2A及び受光部2Bを駆動すると共に第2実施例に係る閾値距離を設定するセンサドライバ11と、第2実施例に係る近接センサS2による手Hの移動状態に対応した例えば所定のコマンドを出力するCPU20と、により構成されている。
【0043】
この構成において、発光部1Aと受光部1Bとは、具体的には
図7(b)に示すように隣接した位置に設置され、更に発光部2Aと受光部2Bとも隣接した位置に設置され、これらが平面状の基台B上に配置されている。この配置により、発光部1Aと受光部1Bとにより近接センサS2としての検出領域A1が形成され、また発光部2Aと受光部2Bとにより近接センサS2としての検出領域A2が形成される。そして、
図7(b)に例示するように、検出領域A1と検出領域A2とは、第1実施例と同様に一部が重複するように形成される。これにより第2実施例に係る近接センサS2では、第1実施例に係る近接センサS1と同様の領域A乃至領域Cが形成される。そして各センサドライバ10及び11は、第1実施例と同様に各領域についての閾値距離を、手Hによる既定のワイプ動作に対応するようにそれぞれ制御し、当該手Hの動きに合わせた検出信号をCPU20に出力する。そしてCPU20は、当該検出信号に基づき、第1実施例と同様に、検出された手Hの位置及びその移動に対応する例えばコマンドを出力する。
【0044】
以上説明した第2実施例に係る検出処理によっても、第1実施例に係る検出処理と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
なお、上記各実施例では、手Hが基台Bから遠ざかりつつ一方向に移動していくワイプ動作を行う場合について説明した(
図4乃至
図6参照)。これに対して、例えば、基台Bを含む平面内で基台Bから見て円弧状に移動する手H(即ち、例えば検出領域A1の外側から手Hが近づいてきて近接センサS1又は近接センサS2によりその存在が検出され、更に近接センサS1又は近接センサS2の正面を横切って検出領域A2の外側に向けて遠ざかりつつ移動する手H)の移動を検出するように構成することもできる。この場合には、領域A及び領域Cにそれぞれ対応する閾値距離が領域Bについての閾値距離よりも長く設定されることになる。この場合にも、円弧状の手Hの動きに合わせた閾値距離とすることで、より確実に手Hの誤検出を防止できることになる。
【0046】
また、上記の各実施例等においては、赤外線により無接触で手Hの存在を検出する場合について説明したが、これ以外に、抵抗膜式以外のタッチセンサにより手(指)の動きを検出する場合に本願を適用することもできる。この場合には、予想される指の動きに合わせて、指の接触を検出する際の閾値をタッチセンサの所定領域ごとに可変とすることで、各実施例と同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
更に、
図3に示したフローチャートに相当するプログラムを、フレキシブルディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して取得しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等に読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータ等を実施例に係るセンサドライバ10及びCPU20として機能させることも可能である。