(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040249
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】改善されたプロセス強化フローリアクタ
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20230314BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
B01J19/00 321
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003761
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2020505369の分割
【原出願日】2018-07-31
(31)【優先権主張番号】62/539,541
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】エレナ ダニエラ ラヴリック
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジャン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】最適化されたチャネル構造を有するフローリアクタを提供する。
【解決手段】フローリアクタが、内表面を備えたプロセス流体通路を有するモジュールと、通路の部分30とを有していて、前記通路は前記部分に沿った断面を含み、この断面は、断面形状と、前記通路に沿って複数の最小部を有する断面積とを有している。断面形状は、前記部分に沿って継続的に変化し、前記部分の内表面は、前記部分に沿って、対向する平坦な平行側面の対を有していない、または、前記対向する平坦な平行側面の間の距離の4倍以下の長さで延在する対向する平坦な平行側面の対しか有しておらず、前記部分は、前記部分に沿って分布する複数の障害物50を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローリアクタであって、
内部にプロセス流体通路を有するモジュールを備え、前記プロセス流体通路は内表面を備え、前記プロセス流体通路はさらに、前記プロセス流体通路の部分を備え、前記部分はさらに
(1)使用中にプロセス流体が前記部分内へと流入する流入端部と、
(2)使用中にプロセス流体が前記部分外へと流出する流出端部と、
(3)前記部分に沿った前記通路の前記内表面によって画定される、前記部分に沿った断面と、を備え、前記断面は、断面積と断面形状とを有し、前記断面積は、前記流入端部と前記流出端部との間の前記通路に沿って複数の最小部を有し、前記通路は、(1)前記部分の前記断面形状が、前記部分に沿って連続的に変化すること、(2)前記部分の前記内表面が、前記部分に沿って、対向する平坦な平行側面の対を含まない、または前記対向する平坦な平行側面の間の距離の4倍以下の長さで延在する対向する平坦な平行側面の対しか含まないこと、(3)前記部分が、前記流入端部と前記流出端部との間の前記部分に沿って位置する複数の障害物を有し、
前記部分は、それぞれノズル状の入口と狭められている出口とを備える連続するチャンバをさらに備え、
前記複数の障害物少なくとも1つは、第1のチャンバ内に位置し、前記第1のチャンバの高さの一部にわたってのみ延在することを特徴とする、
フローリアクタ。
【請求項2】
前記フローリアクタは、さらに1つのチャンバ内に前記複数の障害物の2つ以上を含み、前記2つ以上の障害物は、前記チャンバの高さの一部にわたってのみ延在することを特徴とする、請求項1記載のフローリアクタ。
【請求項3】
前記複数の障害物のうちの少なくとも1つは、下流方向に向かって先細りする延長端部を備えることを特徴とする、請求項1または2記載のフローリアクタ。
【請求項4】
前記複数の障害物のうちの少なくとも1つは、前記第1のチャンバの前記入口の中央に位置する第1の端点と前記第1のチャンバの前記出口の中央に位置する第2の端点とを有する直線に交差している、請求項1~3のいずれか1項に記載のフローリアクタ。
【請求項5】
前記複数の障害物のうちの前記少なくとも1つは、(1)丸められた先端と該丸められた先端と前記第1のチャンバの内面との間に位置する少なくとも1つのバイパス路を有すること、及び/又は、(2)前記第1のチャンバの前記高さに沿って変化する断面積を有すること、を特徴とする請求項1記載のフローリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもとで、2017年7月31日に出願された米国仮出願第62/539541号の優先権の利益を主張し、その内容全体を参照することにより本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、フローリアクタに関し、特に、最適化されたチャネル構造を有するフローリアクタに関する。
【背景技術】
【0003】
プロセス強化(process intensification)は、リアクタのサイズを大幅に縮小すると同時に、物質移動および熱伝達効率を最大化する構成を使用して、極めて効率的な反応および処理システムを製造することを目的としている。化学工業におけるプロセス強化への関心および適用は、大規模で環境破壊的な工業プロセスを、より小さく、より安全で、よりエネルギ効率よく、環境に優しいプロセスへと変換する可能性ゆえ、継続的に増加している。
【0004】
プロセス強化は、今日一般的に使用されている装置や技術と比較して新規の装置および技術の開発にあり、製造および処理において、機器サイズ/生産量比、エネルギ消費、および/または廃棄物生成の減少の点で極めて著しい数倍もの改善をもたらし、最終的にはより安価で持続可能な技術がもたらすことが期待されている。換言すると、大幅に縮小され、より清浄かつエネルギ効率の高い技術につながるいかなる化学工業の開発も、プロセス強化である。
【0005】
プロセス強化の分野全体は、概して2つの領域、つまり、プロセス強化機器、例えば新規のリアクタ、ならびに集中的な混合、熱伝達および物質移動装置と、プロセス強化方法、例えば新規もしくはハイブリッドの分離、反応と分離の統合、熱交換、または相転移(いわゆる多機能リアクタ)、代替エネルギ源(光、超音波等)を使用する技術、および(意図的な、非定常動作のような)新規のプロセス制御方法とに分けることができる。明らかに、いくつかの重複があり得る。新規の方法は、開発すべき新しい形式の機器を必要とする場合があり、逆も同様で、既に開発された新規の装置は時として、従来のものではない新しい処理方法を利用する。
【0006】
特許文献1には、「マイクロリアクタ」またはマイクロメートルからミリメートルのスケールのフローリアクタが開示されており、このリアクタは、特定のチャネルまたは装置における圧力降下に対して相対的に良好な混合性能をもたらす特徴的なチャネル設計を備えている。しかしながら、より低い圧力降下においても同等以上の混合のような、さらに優れた性能を得られるのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
以下に、詳細な説明に記載したいくつかの実施形態の基本的な理解を提供するために、本開示の簡単な概要を提示する。
【0009】
いくつかの実施形態では、フローリアクタが、内表面を備えたプロセス流体通路を有するモジュールと、この通路の部分とを有していて、この通路の部分はこの部分に沿った断面を含み、この断面は、断面形状と、通路に沿って複数の最小部を有する断面積とを有している。断面形状は、前記部分に沿って継続的に変化し、前記部分の内表面は、前記部分に沿って、対向する平坦な平行側面の対を有していない、または、前記対向する平坦な平行側面の間の距離の4倍以下の長さで延在する対向する平坦な平行側面の対しか有しておらず、前記部分は、前記部分に沿って分布する複数の障害物を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記部分は、それぞれノズル状の入口と狭められている出口とを備える連続するチャンバをさらに備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記連続するチャンバのうちの1つのチャンバは、1つのチャンバの狭められている出口が、次の隣接する後続のチャンバのノズル状の入口を形成するように、前記連続するチャンバの後続のチャンバと入れ子状になっている。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の障害物のうちの少なくとも1つは、第1のチャンバ内に位置していて、第1のチャンバの入口の中央に位置する第1の端点と第1のチャンバの出口の中央に位置する第2の端点とを有する直線に交差している。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数の障害物のうちの少なくとも1つは、第1のチャンバの入口内の第1の端点と第1のチャンバの出口内の第2の端点とを有するすべての直線に交差している。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1のチャンバ内に1つの障害物を有するリアクタは、少なくとも1つの障害物と第1のチャンバの内面との間で、すなわち、複数の障害物のうちの少なくとも1つの障害物の周りに位置する1つ以上のバイパス路を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの障害物は、前記少なくとも1つの障害物を貫通して延在する開口を有さない。
【0016】
障害物のまわりに2つ以上のバイパス路を有するいくつかの実施形態では、これらのバイパス路は、チャンバの出口の最大直径の少なくとも2倍の、または少なくとも2.5倍、3倍、3.5倍、さらには4倍の距離だけ、障害物によって隔てられている。
【0017】
いくつかの実施形態では、フローリアクタは、プロセス流体通路の部分の内表面上に雌ねじ山構造をさらに備える。
【0018】
上記実施形態は、例であり、単独で、または本開示の範囲を逸脱することなく、本明細書で開示される任意の1つ以上の実施形態と任意に組み合わせて、提供されてよい。さらに、前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、本開示の実施形態を提示しており、説明され、特許請求される実施形態の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付図面は、実施形態のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施形態を例示し、説明と共に、その原理および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の当該および他の特徴、実施形態ならびに利点は、添付の図面を参照して読む場合にさらに良好に理解することができる。
【
図1】(従来技術)従来技術のフローリアクタによるプロセス流体通路の一部を3次元的に示す斜視図である。
【
図2】(従来技術)
図1の通路の個々のチャンバを示す図である。
【
図3】(従来技術)
図2のチャンバの断面を示す斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図7】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図8】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す断面図である。
【
図9】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す断面図である。
【
図10】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す断面図である。
【
図11】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の一部を示す透視斜視図である。
【
図12】
図11の実施形態のような、本開示の実施形態によるプロセス流体通路の一部を示す断面図である。
【
図13】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の一部を示す切り取り斜視図である。
【
図14】
図13の本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す選択的な切り取り斜視図である。
【
図15】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す切り取り斜視図である。
【
図16】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す切り取り斜視図である。
【
図17】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す切り取り斜視図である。
【
図18】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す切り取り斜視図である。
【
図19】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図21】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図23】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図25】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図26】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図27】
図26のプロセス流体通路の部分を示す透過平面図である。
【
図28】
図26のプロセス流体通路の部分を示す透過斜視図である。
【
図29】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す3次元的な斜視図である。
【
図31】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す平面図である。
【
図33】本開示の実施形態によるプロセス流体通路により得られた流量の関数として測定された圧力降下のグラフである。
【
図34】本開示の実施形態によるプロセス流体通路により得られた流量の関数として測定された圧力降下のグラフである。
【
図35】本開示の実施形態によるプロセス流体通路により得られた比消費電力の関数として測定された物質移動容量係数のグラフである。
【
図36】本開示の実施形態によるプロセス流体通路により得られた比消費電力の関数として測定された物質移動容量係数のグラフである。
【
図37】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分の壁をそれぞれ示す切り取り斜視図である。
【
図38】本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分のチャンバを示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本開示の例としての実施形態を示した添付の図面を参照しながら、方法および装置をより詳しく説明する。同じまたは同様の部分を参照するためには、図面全体にわたり、できるだけ同じ参照番号を用いる。ただし、本開示は多くの異なる形態で実施可能であり、本明細書に記載した実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0021】
本開示は、概して、特許文献1に開示されたものと類似のモジュールを使用するフローリアクタに関し、その全体を参照することにより本明細書に援用する。ただし、必要に応じて、本開示のモジュールは、その参照文献のほぼ平面状のジオメトリから逸脱してもよい。
【0022】
本明細書に開示されるような通路を有するフローモジュールは、機械加工、成形、3Dプリント等によって形成することができる。モジュールは、一体型(分解不可)であってもよいし、互いに取り外し可能に機械的に圧縮されたかまたはその他の形式でシールされたプレートまたはその他の部品から構成されてもよい。
【0023】
図1(従来技術)は、従来技術のフローリアクタによるプロセス流体通路の一部を示す3次元的な斜視図であり、
図2(従来技術)は、
図1の通路の個々のチャンバを示す図であり、
図3(従来技術)は、
図2のチャンバの断面を示す斜視図である。
【0024】
図1~
図3によれば、本明細書に開示された一般的な形式のフローリアクタは、内部にプロセス流体通路20を有するモジュールを有しており、このプロセス流体通路は内表面22を有しており、プロセス流体通路20はさらに、プロセス流体通路の部分30を備え、この部分はさらに、使用中にプロセス流体が部分30内へと流入する流入端部32と、使用中にプロセス流体が部分30外へと流出する流出端部34とを備える。
【0025】
部分30はさらに、部分30に沿った通路20の内表面22によって画定された、部分30に沿った断面36を有しており、この断面36は、断面積と断面形状38とを有しており、断面積は、流入端部32と流出端部34との間の通路20に沿って複数の最小部40を有する。
【0026】
図4および
図5はそれぞれ、本開示の実施形態によるプロセス流体通路の一部を示す3次元的な斜視図であり、
図6は、
図5の通路の断面図である。
図4~
図6に示した通路に関して、かつ概して本開示の実施形態に関して、リアクタは、通路20の部分30が、(1)この部分30に沿って連続的に変化する断面形状38と、(2)この部分30(
図12に示す、後述する)に沿って、対向する平坦な平行側面42(
図3参照)の対を含まない、または前記対向する平坦な平行側面42の間の距離dの4倍以下の長さにで延在する対向する平坦な平行側面42の対しか含まない(部分30に沿った)内表面22と、(3)流入端部32と流出端部34との間の部分に沿って(部分内に)位置する複数の障害物50(この場合、上流に面して凹状表面を備えた湾曲壁の形態)と、を有していることを特徴とする。
【0027】
通路20の部分30の内表面22には様々な形態の湾曲が使用されてよい。
図4に示したように、通路20の部分30の高さは、連続する各チャンバは本質的には同じであるように、チャンバ自体によって周期的に変化してよい。選択的に、通路20の部分30の高さにおける変化の周期は、部分30に沿った長さよりも短くてもよく、または
図5の実施形態のように、より長くてもよい。その結果、障害物50は、
図6の断面図に示したように変化する高さを有する。
図8~
図10には、通路20の部分30の付加的な実施形態の断面図が示されており、
図8の連続するチャンバ52は高さの変化する障害物50を備え、
図9の連続するチャンバ52は同じ高さの障害物50を備えている。
図10の実施形態に示したように、障害物50は、チャンバ52の高さの一部にわたってのみ延在していてもよい。(このような障害物は効果的に1つだけのバイパス路しか有していないが、複雑な形状および流れのパターンを有している。)通路20の部分30の高さにおける変化は非対称であってもよく、または連続するチャンバ52の湾曲が非対称であってよい。
図7の実施形態では、図面に示したように、1つおきのチャンバ52が、チャンバの上方の内面に(下方の内面に対して相対的に)大きい「膨らみ」(または、小さい曲率半径)を有しており、その他のチャンバ52は、下方の内面に(上方の内面に対して相対的に)大きい「膨らみ」(または、小さい曲率半径)を有している。
【0028】
障害物50がチャンバ52の高さの一部にわたってのみ延在している
図10の実施形態のような場合には、チャンバ52の入口の中央に位置する第1の端点とチャンバの出口の中央に位置する第2の端点とを有する直線60が、障害物50に交差している。これにより、全長未満しか延在していない障害物が、高さ方向に流れを移動させるのに著しい作用を有する十分な高さであることが保証される。望ましくは、障害物50は、チャンバ52の入口の中心点から出口の中心点まで延びる線60に交差するだけでなく、チャンバの入口内で始まり、チャンバの出口内で終わるすべての線分と交差する。換言すると、望ましくは、障害物がチャンバの高さの一部のみにわたってしか延在していない場合でも、チャンバ52の入口から出口まで延びる「見通し線」は存在しない。
【0029】
本明細書では通路20の部分30は、例えば
図4および
図5に示したように1つ以上のバイパス路64を含む。バイパス路64は、障害物50と対応するチャンバ52の内側面との間に位置する通路であって、障害物50の周りに通じている。このようなバイパス路64は、障害物50を貫通して延在する開口とは区別される。このような開口70は、
図21~
図22の実施形態に示されている。実施形態では、より一般的には、本明細書のその他殆どの図面に示したように、障害物50は、障害物50を貫通して延在する開口を有さない。実施形態によれば、
図5に示したように、1つ以上のバイパス路64は、対応するチャンバの出口における総断面積68よりも大きな総断面積66を有している。
【0030】
図11は、本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分を示す透視斜視図であり、
図12は、
図11の実施形態の形式の、本開示の実施形態によるプロセス流体通路の部分の断面図である。本明細書に示した実施形態では、1つ以上のチャンバ52が、同じチャンバ52内に障害物50と第2の障害物51との両方を有している。望ましくは、障害物50と第2の障害物51とは、(
図12に最も明瞭に示されているように)チャンバ52の高さの一部のみにわたって延在しており、望ましくはこれらの障害物は、交互にチャンバ52の「床」と「天井」とに取り付けられている。このような実施形態では、障害物または第2の障害物51は、各チャンバの入口と出口との間のすべての見通し線に(またはこれらの間の中心線にすら)単独では交差していなくてよいが、まとめて考慮した場合には交差しているのが望ましい。
【0031】
いくつかの実施形態では、チャンバ52は回転対称であってよく、またはほぼ回転対称であってよく、これによりチャンバの高さと幅とは両方とも、高さと幅としてではなく、直径としてみなされる。
図13~
図18はそれぞれ、プロセス流体通路の一部の切り取り斜視図を示しており、この通路では、通路20の部分30および連続するチャンバ52は回転対称性を有している。これらのような実施形態では、3つ以上のバイパス路が使用されてよい。実施形態では、障害物50は、プロセス流体通路20の部分30に対してほぼ垂直に整列された、平坦なまたは凹状の面72を備える。面72は好適には、
図15、
図16、および
図18の実施形態で示されたように上流方向に面していてよいが、代替的な実施形態では、
図17の実施形態のように下流方向に面していてよい。
【0032】
図19~
図32には、製作されて、参照実施形態(
図1~
図3の実施形態)と比較して性能試験された実施形態が示されている。
図25の実施形態は、
図19の実施形態に対して相対的に上昇させられた「天井」および下降させられた「床」78以外、
図19の実施形態のチャンバと類似のチャンバ52を有している。結果は、
図33~
図36に示されている。
【0033】
図33および
図34は、測定された圧力降下を示すグラフである。
図33の結果は、比較的大きなサイズの通路のものであり、
図34の結果は、比較的小さなサイズの通路のものである。記号表内の番号は、
図19~
図32の各実施形態に付与された番号に対応する。
図33および
図34に示したように、試験したすべての実施形態は、より低い圧力降下を達成する点で、参照実施形態よりも優れていた。
【0034】
図35および
図36は、比消費電力の関数としての、測定された物質移動容量係数を示すグラフであり、
図35の結果は、比較的大きなサイズの通路のものであり、
図36の結果は、比較的小さなサイズの通路のものである。
図35に示したように、番号2および5以外の試験されたすべての実施形態は、参照実施形態よりも優れており、
図36では、番号2以外のすべての実施形態が参照実施形態よりも優れていた。したがって、(実施形態番号2のような)障害物を貫通して延在する開口を有さない方が望ましいと思われる。同様に、バイパス路を有することは、バイパス路が1つのチャンバ内に2つ(または、場合によってはそれ以上)設けられており、実施形態番号5のように、ポストまたは楔80が2つのバイパス路を短い距離しか隔てていないのではなく、バイパス路がチャンバの出口の最大直径の少なくとも2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、または4倍もの距離だけ障害物によって隔てられているならば、望ましいと思われる。
【0035】
実施形態によれば、通路20(の部分30の)内表面22は、通路の部分において流体の動きに付加的な螺旋運動を与えるための雌ねじ山構造76を有していてよい。
【0036】
開示された様々な実施形態は、その特定の実施形態に関連して説明される特定の特徴、要素、またはステップを含むことができることが理解されるだろう。特定の特徴、要素、またはステップは、1つの特定の実施形態に関連して説明されているが、図示されていない様々な組み合わせまたは置換で代替的な実施形態と交換または組み合わせることができることも理解されるだろう。
【0037】
本明細書で使用された用語「その(the)」、「1つの(aまたはan)」は、「少なくとも1つ」を意味しており、明記されない限りは、「1つだけ」の意味に限定されるものではない。したがって、例えば「1つの構成要素」という記載は、明記されない限りは、2つ以上のそのような構成要素を有した実施形態も含む。
【0038】
本明細書では、範囲は「約」1つの特定の値から、かつ/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表されるとき、実施形態は、1つの特定の値から、かつ/または別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により値が近似値として表現されるときは、特定の値が別の対応をなすことが理解されるだろう。さらに、各範囲の終端点は、他の終端点と関連して、かつ他の終端点とは独立して、重要であることが理解される。
【0039】
特に明記されない限り、本明細書に記載されているどの方法も、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることを意図していない。したがって、方法請求項が、それらのステップが従うべき順序を実際に示していない場合、またはそれらのステップを特定の順序に限定することが請求項または詳細な説明において具体的に言及されていない場合には、特定の順序を推定することは意図されていない。
【0040】
特定の実施形態の様々な特徴、要素、またはステップを、「備える(comprising)」という移行句を使用して開示することができるが、これは「から成る(consisiting)」または「本質的に・・・から成る(consisting essentially of)」という移行句を使用して説明することができる実施形態を含む選択的な実施形態を包含することが理解される。したがって、例えば、A+B+Cを備える装置に対して包含される代替的な実施形態は、A+B+Cから成る装置の実施形態および本質的にA+B+Cから成る装置の実施形態を含む。
【0041】
当業者には、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正および変更を行うことができることは明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれと同等なものの範囲内にある限り、本開示の修正および変形を包含することが意図されている。
【0042】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0043】
実施形態1
フローリアクタであって、
内部にプロセス流体通路を有するモジュールを備え、前記プロセス流体通路は内表面を備え、前記プロセス流体通路はさらに、前記プロセス流体通路の部分を備え、前記部分はさらに
(1)使用中にプロセス流体が前記部分内へと流入する流入端部と、
(2)使用中にプロセス流体が前記部分外へと流出する流出端部と、
(3)前記部分に沿った前記通路の前記内表面によって画定される、前記部分に沿った断面と、を備え、前記断面は、断面積と断面形状とを有し、前記断面積は、前記流入端部と前記流出端部との間の前記通路に沿って複数の最小部を有し、前記通路は、(1)前記部分の前記断面形状が、前記部分に沿って連続的に変化すること、(2)前記部分の前記内表面が、前記部分に沿って、対向する平坦な平行側面の対を含まない、または前記対向する平坦な平行側面の間の距離の4倍以下の長さで延在する対向する平坦な平行側面の対しか含まないこと、(3)前記部分が、前記流入端部と前記流出端部との間の前記部分に沿って位置する複数の障害物を有することを特徴とする、
フローリアクタ。
【0044】
実施形態2
前記部分は、それぞれノズル状の入口と狭められている出口とを備える連続するチャンバをさらに備える、実施形態1記載のフローリアクタ。
【0045】
実施形態3
前記連続するチャンバのうちの1つのチャンバは、前記1つのチャンバの前記狭められている出口が、次の隣接する後続のチャンバの前記ノズル状の入口を形成するように、前記連続するチャンバの前記後続のチャンバと入れ子状になっている、実施形態2記載のフローリアクタ。
【0046】
実施形態4
前記複数の障害物のうちの少なくとも1つは、第1のチャンバ内に位置していて、前記第1のチャンバの前記入口の中央に位置する第1の端点と前記第1のチャンバの前記出口の中央に位置する第2の端点とを有する直線に交差している、実施形態2または3記載のフローリアクタ。
【0047】
実施形態5
前記複数の障害物のうちの前記少なくとも1つは、前記第1のチャンバの前記入口内の第1の端点と前記第1のチャンバの前記出口内の第2の端点とを有するすべての直線に交差している、実施形態4記載のフローリアクタ。
【0048】
実施形態6
前記複数の障害物のうちの前記少なくとも1つの障害物の周りで、前記少なくとも1つの障害物と前記第1のチャンバの内面との間に位置する1つ以上のバイパス路を有する、実施形態4または5記載のフローリアクタ。
【0049】
実施形態7
前記1つ以上のバイパス路は、前記第1のチャンバの前記出口における総断面積よりも大きな総断面積を有する、実施形態6記載のフローリアクタ。
【0050】
実施形態8
前記少なくとも1つの障害物は、前記少なくとも1つの障害物を貫通して延在する1つ以上の開口を有する、実施形態6記載のフローリアクタ。
【0051】
実施形態9
前記少なくとも1つの障害物は、前記少なくとも1つの障害物を貫通して延在する開口を有さない、実施形態6記載のフローリアクタ。
【0052】
実施形態10
前記複数の障害物は、少なくとも3つ以上の障害物を含む、実施形態4から9までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0053】
実施形態11
前記複数の障害物のうちの前記少なくとも1つの障害物は、1つのチャンバにつき少なくとも1つの障害物を含む、実施形態4から9までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0054】
実施形態12
単一のチャンバに2つ以上の障害物をさらに備える、実施形態4から9までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0055】
実施形態13
前記少なくとも1つの障害物は、2つ以上のバイパス路を有する、実施形態4から9までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0056】
実施形態14
前記少なくとも1つの障害物は、3つ以上のバイパス路を有する、実施形態13記載のフローリアクタ。
【0057】
実施形態15
前記バイパス路は、前記チャンバの前記出口の最大直径の少なくとも2倍の距離だけ、前記障害物によって隔てられている、実施形態13または14記載のフローリアクタ。
【0058】
実施形態16
前記少なくとも1つの障害物は、単一のバイパス路を備える、実施形態4から9までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0059】
実施形態17
前記少なくとも1つの障害物は、2つのバイパス路を有し、前記2つのバイパス路は、前記プロセス流体通路の互いに対向する側に位置している、実施形態4から9までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0060】
実施形態18
前記複数の障害物のうちの前記少なくとも1つは、前記プロセス流体通路に対して概して垂直に向けられた平坦面または凹状面を備える、実施形態1から17までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0061】
実施形態19
前記平坦面または凹状面は、下流方向に面している、実施形態18記載のフローリアクタ。
【0062】
実施形態20
前記平坦面または凹状面は、上流方向に面している、実施形態18記載のフローリアクタ。
【0063】
実施形態21
前記複数の障害物のうちの前記少なくとも1つは、下流方向に向かって先細りする延長端部を備える、実施形態1から18までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0064】
実施形態22
前記複数の障害物のうちの前記少なくとも1つの障害物は、上流方向に向かって先細りする延長端部を備える、実施形態1から18までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0065】
実施形態23
前記プロセス流体通路の内表面上に雌ねじ山構造をさらに備える、実施形態1から22までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0066】
実施形態24
前記プロセス流体通路の前記部分の内表面上に雌ねじ山構造をさらに備える、実施形態1から23までのいずれか1つ記載のフローリアクタ。
【0067】
実施形態25
フローリアクタであって、
内部に含まれるプロセス流体通路を有する本体を備え、前記プロセス流体通路は、前記プロセス流体通路の部分を有し、前記部分は、流体流入端部と、流体流出端部と、前記流入端部と前記流出端部との間に連続する断面積最小部とを備え、前記部分はさらに、前記部分に沿った任意の位置において、前記プロセス流体通路の断面として規定された断面形状であって、前記部分の前記位置において、前記部分の前記流入端部から前記流出端部へと流れる流体に関して、前記断面を通る正味の流体流が最大化されるような角度を成すように前記断面が向けられている、断面形状を有し、
前記部分はさらに、前記部分に沿った任意の位置において、前記位置で優勢的な流れ方向に対して垂直な平面で前記位置において断面されたプロセス流体通路の平坦な断面として規定された通路形状を有し、
前記通路形状は、前記流れ通路に沿った位置で連続的にそれぞれ変化する幅と、前記幅に対して垂直な高さとの両方を有し、
前記流れ通路は、連続するチャンバを備え、前記チャンバはそれぞれ、狭い入口と、(存在する場合には)次の隣接するチャンバ内へと突入して前記隣接するチャンバの前記狭い入口を形成する狭められている出口と、前記プロセス流体通路の前記部分の内表面上における雌ねじ山構造とを有する、
フローリアクタ。