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特開2023-40252疾患の検出及び診断のための血液中の循環細胞バイオマーカーの使用並びにそれらを単離する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040252
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】疾患の検出及び診断のための血液中の循環細胞バイオマーカーの使用並びにそれらを単離する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230314BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230314BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230314BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230314BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230314BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230314BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20230314BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/68
G01N33/50 P
C07K16/28
C07K16/30
C12Q1/02
C12Q1/6841 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003897
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2021107492の分割
【原出願日】2015-08-25
(31)【優先権主張番号】62/041,540
(32)【優先日】2014-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/131,051
(32)【優先日】2015-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/138,744
(32)【優先日】2015-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/166,492
(32)【優先日】2015-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514294164
【氏名又は名称】クリエイティブ マイクロテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREATV MICROTECH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】タン, チャ-メイ
(72)【発明者】
【氏名】アダムス, ダニエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固形腫瘍及びウイルス感染の新しい高感度の細胞バイオマーカーが、血液で同定され、癌腫、肉腫及びウイルスの存在を判定するために、治療応答の迅速な判定、癌の早期検出、癌再発の早期検出のために使用することができ、療法を決定するために使用することができる。
【解決手段】薬物標的マーカーを循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)及び/又は循環腫瘍細胞(CTC)においてスクリーニングするためのコンパニオン診断方法のためのデータを収集する方法であって、対象からの生物学的試料からCAML及び/又はCTCを収集するステップ、及び前記CAML及び/又はCTCが薬物標的マーカーを発現又は保有するかどうか判定するステップを含む方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物標的マーカーを循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)及び/又は循環腫瘍細胞(CTC)においてスクリーニングするためのコンパニオン診断方法のためのデータを収集する方法であって、対象からの生物学的試料からCAML及び/又はCTCを収集するステップ、及び前記CAML及び/又はCTCが薬物標的マーカーを発現又は保有するかどうか判定するステップを含む方法。
【請求項2】
前記薬物標的マーカーが細胞表面マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞表面マーカーがPD-L1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬物標的マーカーがポリヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物標的マーカーが、遺伝子の突然変異、増幅又は転座である、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
[発明の分野]
[0001]本発明は、他の重要な目標の中でも、対象を固形腫瘍の存在についてスクリーニングするため、癌療法のクールの選択を助けるため、癌治療の有効性をモニタリングするため、並びに対象でウイルス感染を検出及びモニタリングするために、癌スクリーニング、癌再発の早期検出のために使用することができる、血液及び他の体液中のバイオマーカーの発見及び特徴付けに一般に関する。本発明のバイオマーカーは、単独で、又は循環腫瘍細胞、遊離の血漿及び血清DNA癌マーカー、癌関連タンパク質マーカー並びに他のバイオマーカーと組み合わせて使用されてもよい。
[関連技術]
【0002】
[0002]腫瘍細胞が原発固形腫瘍から離脱するとき、それらは血液又はリンパ循環に侵入し、最終的には血流を去り、他の器官又は組織に入って転移を形成する。癌関連死の90%は、転移過程によって引き起こされる。最も一般的な転移部位は、肺、肝臓、骨及び脳である。循環中に見出される腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)と呼ばれる。多くの研究刊行物及び臨床治験は、CTCが、(i)血流中のCTCの計数を通して予後生存及び癌再発に関する情報を提供すること、並びに(ii)CTCでのタンパク質発現レベル、及び遺伝子突然変異及び転座の出現の検査を通した治療情報を提供することにおいて、臨床有用性を有することを示す。しかし、ステージIV癌の患者においてさえ、CTCは対象で癌の発達及び/又は存在と一貫して関連するとは限らない。
【0003】
[0003]体液中のある特定の細胞型の検出を通して診断することができる医学的状態が癌の他にある。特に、ある特定の医学的状態の兆候又は特徴である細胞は、選択された体液で見出される他の細胞より大きく、及び/又はより柔軟でないことがある。したがって、体液試料からそのようなより大きな及び/又はより柔軟でない細胞を収集することによって、収集された細胞に基づいて医学的状態を診断することが可能なことがある。
【0004】
[0004]医学的状態について対象をスクリーニングするために使用することができる、血液及び他の体液中のバイオマーカーの同定及び特徴付けは、臨床医に追加のツールを提供するだろう。本発明は、上述及び他の重要な目標に関する。
[概要]
【0005】
[0005]本発明は、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫及び黒色腫を含む固形腫瘍を有する癌患者の血液で見出される、特異な特性を有するある種の細胞に関し、それを開示する。「循環癌関連マクロファージ様細胞」(CAML)と命名される細胞が本明細書に記載され、患者における固形腫瘍の存在と関連することが示されている。CAMLと関連する5つの形態が特徴付けられ、記載されている(Adams、D.ら、Circulating giant macrophages as a potential biomarker of solid tumors.PNA 2014、111(9):3514~3519頁及び国際公開第2013/181532号)。本明細書に提示されるデータを通して、CAMLは、それらが様々な医学的適用のためのバイオマーカーとして使用することができるという点で、臨床有用性を有することが示されている。精密マイクロフィルターを使用した精密濾過によって上皮起源のステージIからステージIVの癌を有する対象の末梢血で、CAMLが一貫して見出されている。癌患者の血液で見出されるさらなるCAML形態が、本明細書で提示される。
【0006】
[0006]CAMLに関連する医学適用には、これらに限定されないが、特に、癌の早期検出、癌の再燃又は再発の早期検出、及び癌突然変異の判定において、癌の診断を提供するバイオマーカーとしての細胞の使用が含まれる。CAMLは、療法の適当なクールを決定する際にバイオマーカーとして使用することもでき、特に、化学療法及び放射線療法の治療応答の有効性の迅速な判定で細胞を使用することができる。
【0007】
[0007]CAMLは、癌マーカーとして独立して、又は、患者の疾患のより完全な理解を提供するために、CTC、無細胞DNA、タンパク質及び他のバイオマーカーと組み合わせて使用することができる。
【0008】
[0008]より具体的には、第1の実施形態では、本発明は、対象からの生物学的試料中でCAMLを検出するステップを含む、癌について対象をスクリーニングする方法に関する。特定の態様では、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、対象は、中でも、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫又は黒色腫などの固形腫瘍を潜在的に有すると同定される。他の態様では、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、対象は、中でも、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫又は黒色腫などの固形腫瘍を有すると同定される。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。CAMLの有益な属性の1つは、それらがクエンチング及び再染色を受けることができるということであり、したがって、細胞の同じ試料を使用して多数の癌細胞マーカーを分析することができる。したがって、特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中で循環腫瘍細胞(CTC)及び/又はCTCに結合した白血球(WBC)を検出するステップも含む。この実施形態の特定の態様では、対象は、癌を有することが疑われる対象である。この実施形態の特定の態様では、治療決定は、方法の成果に基づいて下される。この実施形態の特定の態様では、対象が固形腫瘍を有すると特定されるときには、方法は、対象に抗癌治療薬を投与するステップをさらに含む。
【0009】
[0009]第2の実施形態では、本発明は、対象における癌を診断するための方法であって、対象からの生物学的試料中でCAMLを検出するステップを含む方法に関し、ここで、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、対象は癌と診断される。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中でCTC及び/又はCTCに結合したWBCを検出するステップも含み、ここで、CAML、CTC及びCTCに結合したWBCのうちの1つ又は複数が生物学的試料中で検出されるときは、対象は癌と診断される。この実施形態の特定の態様では、治療決定は、方法の成果に基づいて下される。この実施形態の特定の態様では、対象が癌と診断されるときには、方法は、対象に抗癌治療薬を投与するステップをさらに含む。
【0010】
[0010]第3の実施形態では、本発明は、対象における癌の再発を検出するための方法であって、癌について以前に治療した対象からの生物学的試料中でCAMLを検出するステップを含む方法に関し、ここで、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、癌の再発が検出される。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中でCTC及び/又はCTCに結合したWBCを検出するステップも含み、ここで、CAML、CTC及びCTCに結合したWBCのうちの1つ又は複数が生物学的試料中で検出されるときは、癌の再発が検出される。この実施形態の特定の態様では、治療決定は、方法の成果に基づいて下される。この実施形態の特定の態様では、癌の再発が検出されるときには、方法は、対象に抗癌治療薬を投与するステップをさらに含む。
【0011】
[0011]第4の実施形態では、本発明は、対象における癌の診断を確認するための方法であって、癌と診断された対象からの生物学的試料中でCAMLを検出するステップを含む方法に関し、ここで、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、癌の診断が対象で確認される。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中でCTC及び/又はCTCに結合したWBCを検出するステップも含み、ここで、CAML、CTC及びCTCに結合したWBCのうちの1つ又は複数が生物学的試料中で検出されるときは、癌の診断が対象で確認される。特定の態様では、最初の癌診断は、マンモグラフィー、PSA検査、CA125の存在、CT、MRI又はPET画像化によるものである。特定の態様では、対象は、癌を有することが疑われる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。この実施形態の特定の態様では、治療決定は、方法の成果に基づいて下される。この実施形態の特定の態様では、癌の診断が対象で確認されるときには、方法は、対象に抗癌治療薬を投与するステップをさらに含む。
【0012】
[0012]本発明の第1から第4の実施形態では、CTCに結合したWBCを検出することは、CTCに結合したWBCの数を判定することである。CTCが循環中に浸透するときは、免疫細胞(T細胞、白血球のサブタイプ)がCTCに結合することによってそれらを認識することができる。免疫細胞は、CTCを死滅させることもできる。血液の濾過は、CTCに結合した白血球(WBC)を捕捉することができる。CTCは分解されることもある。生物学的試料中のCTCに結合したWBCの存在及び/又は数は、このように、固形腫瘍の存在及びさらに固形腫瘍を排除する体の能力の指標である。ある特定の態様では、生物学的試料中でCTCに結合したWBCは、T細胞である。
【0013】
[0013]第5の実施形態では、本発明は、対象における癌のステージを判定するための方法であって、癌を有する対象からの生物学的試料中のCAMLを特徴付けるステップを含む方法に関し、ここで、CAMLの選択される特性は、対象における癌のステージを示す。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生体試料でCTCを特徴付けるステップも含み、ここで、CAML及びCTCの選択される特性は、対象での癌のステージを示す。ある特定の態様では、CAML及び/又はCTCは、特徴付けの前に生体試料から収集される。この実施形態の特定の態様では、治療決定は、方法の成果に基づいて下される。この実施形態の特定の態様では、方法は、対象における癌のステージを判定した後に、対象に抗癌治療薬を投与するステップをさらに含む。
【0014】
[0014]第6の実施形態では、本発明は、癌治療の効力をモニタリングする方法であって、(a)癌治療を受けている対象からの生物学的試料中のCAMLの1つ又は複数の選択される特性を検査すること、及び(b)治療の前、その間又は完了の後の1つ又は複数の時点で、(a)で判定される1つ又は複数の選択される特性の検査値を、同じ対象からの類似の生物学的試料で検査される同じ特性の検査値と比較すること、を含む方法に関し、ここで、1つ又は複数の検査値の変化は、対象での癌治療の効力を示す。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、(a)生物学的試料中のCTCの1つ又は複数の選択される特性を検査すること、及び(b)治療の前、その間又は完了の後の1つ又は複数の時点で、(a)で判定される1つ又は複数の選択される特性の検査値を、同じ対象からの類似の生物学的試料で検査される同じ特性の検査値と比較するステップも含む。ある特定の態様では、CAML及び/又はCTCは、特徴付けの前に生物学的試料から収集される。この実施形態の特定の態様では、治療決定は、方法の成果に基づいて下される。
【0015】
[0015]第5及び第6の実施形態では、試料中のCAMLの選択される特性は、以下からなる群から選択される1つ又は複数の特性である:
(i)CAMLの数;
(ii)CAMLの平均サイズ(CAML細胞のサイズは直径約20ミクロン~約300ミクロンの範囲);
(iii)CAMLの核の平均サイズ(CAMLは、直径約14~64μmのサイズを有する大きな非定形的核を有する);
(iv)CAMLの形態学的形状(CAML形状には、紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長方形、2脚形、2本を超える脚形、細い脚形又は無定形が含まれる);
(v)CD14陽性表現型;
(vi)CD45発現の程度;
(vii)EpCAM発現の程度;
(viii)ビメンチン発現の程度;
(ix)PD-L1発現の程度;
(x)単核球CD11Cマーカー発現の程度;
(xi)内皮CD146マーカー発現の程度;
(xii)内皮CD202bマーカー発現の程度;
(xiii)内皮CD31マーカー発現の程度;
(xiv)マーカーの位置(CAMLでマーカーが出現する位置、例えば、細胞質対核は、異なる時点で変化することがある);
(xv)CAMLでの、拡散しているか又は空胞及び/若しくは摂取物と会合している、癌と関連した1つ又は複数のマーカーの存在(例えば、上皮癌の場合、マーカーはサイトケラチン8、18及び19である);並びに
(xvi)マーカー染色の強度。
【0016】
[0016]第5及び第6の実施形態では、試料中のCTCの選択される特性は、以下からなる群から選択される1つ又は複数の特性である:
(i)CTCの数;
(ii)CTCと結合したWBCの数;
(iii)核の状態;
(iv)サイトケラチン8発現の程度;
(v)サイトケラチン18発現の程度;
(vi)サイトケラチン19発現の程度;
(vii)EpCAM発現の程度;
(viii)ビメンチン発現の程度;
(ix)PD-L1発現の程度;
(x)ウロプラキン発現の程度;
(xi)サイトケラチン形態;
(xii)マーカーの位置(CTCでマーカーが出現する位置、例えば、細胞質対核は、異なる時点で変化することがある);並びに
(xiii)マーカー染色の強度。
【0017】
[0017]第5及び第6の実施形態では、CAML、CTC及び/又はCTCに結合したWBCの数は、マイクロフィルターを使用して同時に判定される。適するマイクロフィルターは、様々な孔径及び形状を有することができる。一態様では、マイクロフィルターはサイズが約5ミクロン~約10ミクロンの範囲のサイズの孔を有し、円形、トラック形状、卵形、四角形及び長方形の孔形状を含むことができる。好ましい態様では、マイクロフィルターは精密孔配置及び均一な孔分布を有する。
【0018】
[0018]本発明は、生物学的試料からCAML及び/又はCTCを単離し、単離した細胞を、カメラ、例えば携帯電話カメラ又は白色光顕微鏡又は白色光顕微鏡に取り付けたカメラを使用して数える方法にも関する。したがって、第7の実施形態では、本発明は、生物学的試料におけるCAML及び/又はCTCを検出するための方法であって、対象から生物学的試料を得るステップ、及び試料でCAML及び/又はCTCを検出するステップを含む方法に関し、ここで、検出は、カメラ又は白色光顕微鏡又は白色光顕微鏡に取り付けたカメラによるものである。ある特定の態様では、カメラは携帯電話カメラである。ある特定の態様では、白色光顕微鏡は、10倍(10×)以下の倍率を有する。他の態様では、細胞は低費用のフィルターによって生物学的試料から収集され、及び/又は生物学的試料は対象からの手動引き抜きによって、若しくは低費用のポンプによって得られる。さらなる態様では、CAML及び/又はCTCを可視化するために、比色染色が使用される。
【0019】
[0019]本発明はさらに、CAML及び/又はCTCをコンパニオン診断薬として使用する方法に関する。コンパニオン診断薬は、薬物標的のマーカーの染色を評価することによって薬物を特定の治療に整合させる際に、FISHによって遺伝子増幅又は転座を評価する際に、及び薬物などと関連した特定の遺伝子突然変異のための他の分子アッセイを使用する際に、有益なツールである。癌などの疾患を有する対象の治療である特定の療法が有効かどうか判定する際に、これらの細胞は組織生検の代わりの役目をすることができる。例えば、癌が所与の免疫療法(例えば、抗体)によって認識されるタンパク質を発現するかどうか判定するために、免疫療法のスクリーニングでこれらの細胞を使用することができる。細胞がある特定のポリヌクレオチドを発現するかどうか、又は選択される突然変異が細胞性DNAに見出されるかどうか判定するために、これらの細胞を検査することもできる。本明細書に記されるように、CAML及びCTCは、それらが由来する癌と同じ癌マーカーをしばしば発現又は保有する。したがって、第8の実施形態では、本発明は、選択される薬物標的マーカーをCAML及び/又はCTCにおいてスクリーニングするためのコンパニオン診断方法であって、対象からの生物学的試料からCAML及び/又はCTCを収集するステップ、及びCAML及び/又はCTCが選択される薬物標的マーカーを発現又は保有するかどうか判定するステップを含む方法に関する。ある特定の態様では、薬物標的マーカーは細胞表面マーカーであり、判定は、例えば、マーカーの染色によるものであり得る。一例として、免疫療法のための細胞表面マーカーとして、PD-L1が使用されてもよい。他の態様では、薬物標的マーカーは、ポリヌクレオチドである。さらなる態様では、薬物標的マーカーは遺伝子の突然変異、増幅又は転座であり、判定は、例えば、FISHによるものであり得る。
【0020】
[0020]血液中のウイルスの検出の伝統的方法は、抗体又はウイルス感染細胞の存在に基づく。CAMLは免疫細胞の1種であるので、それらは、様々なウイルス感染、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)及びその他多数の検出のための診断薬で使用することもできる。実際、CAMLは、活動的ウイルス感染症を有する対象の血液で見出されている。CAMLは、ウイルスのデブリ、ウイルスに感染した細胞又はウイルスを含有する細胞性デブリを呑食する。CAMLでウイルスのマーカー(複数可)を直接的に染色することができるか、又はウイルスに関連したCAMLでDNA若しくはRNAの分子分析を実行することができる。したがって、CAMLは、活動的ウイルス感染の検出及び診断を提供するバイオマーカーとして、並びに療法の適当なクールを判定する際に使用することもできる。
【0021】
[0021]さらに、HIV及びHBVなどの一部のウイルス感染症は、癌につながることがある。それらの患者の血液で見出されるCAMLは、ウイルス感染又は癌自体によって引き起こされることがある。癌マーカー又はウイルスのマーカー(複数可)のための染色は、診断情報を提供するために使用されてもよい。これは、ウイルス起因の癌の早期検出のための有益な方法であり得る。
【0022】
[0022]したがって、第9の実施形態では、本発明は、対象におけるウイルス感染を診断するための方法であって、対象から得た生物学的試料からCAMLを収集するステップ、及び収集したCAMLをウイルスについてスクリーニングするステップを含む方法に関する。ある特定の態様では、スクリーニングは、ウイルスマーカーについてCAMLを染色することによるものである。追加のウイルスマーカーについて、同じ細胞を再染色することもできる。さらなる態様では、スクリーニングは、CAMLからのDNA又はRNAの分子分析によるものである。この実施形態の特定の態様では、治療決定は、方法の成果に基づいて下される。この実施形態の特定の態様では、ウイルス感染症が診断されるときには、方法は、対象に抗ウイルス治療薬を投与するステップをさらに含む。
【0023】
[0023]追加の実施形態では、本発明は、CAMLの分子分析の方法であって、単一のCAML細胞を得るステップ、及び単一細胞で分子分析を実行するステップを含む方法を含む。単一細胞で実行することができる分子分析の特定のタイプに関して制限はなく、そのような手段には、これらに限定されないが、核酸配列決定、ノーザンブロット分析及びサザンブロット分析が含まれる。
【0024】
[0024]本発明の関連する態様及び実施形態では、生物学的試料は、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織及び尿からなる群から選択される1つ又は複数である。試料は、新鮮な試料又は解凍される低温保存試料であってもよい。好ましい態様では、生物学的試料は、末梢血である。他の態様では、血液は、前肘静脈血、下大静脈血又は頸静脈血である。
【0025】
[0025]本発明の関連する態様及び実施形態では、癌は、固形腫瘍、ステージI癌、ステージII癌、ステージIII癌、ステージIV癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵癌、結腸直腸癌及び他の固形腫瘍癌のうちの1つ又は複数である。
【0026】
[0026]本発明の関連する態様及び実施形態では、抗癌治療薬は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ワクチン療法、標的療法及び/又は療法の組合せのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0027】
[0027]本発明の関連する態様及び実施形態では、CAMLは、サイズ排除方法、免疫捕捉、赤血球溶解、白血球消失、FICOLL、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー及びマイクロ流体チップ、又はこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の手段を使用して検出及び/又は収集される。特定の態様では、サイズ排除方法は、マイクロフィルターの使用を含む。適するマイクロフィルターは、様々な孔径及び形状を有することができる。CAMLだけが検出及び/又は収集されるときは、孔径は約15ミクロン~約20ミクロンの範囲内であってもよい。CAMLとCTCの両方が検出及び/又は収集されるときは、孔径は約5ミクロン~約10ミクロンの範囲内であってもよい。大きな方の孔径は、フィルター上の大部分のWBC汚染を排除する。孔は、円形、レーストラック形、卵形、四角及び長方形の孔形状を有することができる。好ましい態様では、マイクロフィルターは精密孔配置及び均一な孔分布を有する。特定の態様では、CAMLは、物理的サイズに基づく選別、流体力学的サイズに基づく選別、グループ分け、トラッピング、免疫捕捉、大細胞の濃縮、又はサイズに基づく小細胞の排除、に基づいてマイクロ流体チップを使用して、検出及び/又は収集される。特定の態様では、CAMLは、セルシーブ(CellSieve)(商標)低圧精密濾過アッセイを使用して検出及び/又は収集される。
【0028】
[0028]本発明及びその付随する利点の多くのより完全な評価は、付随する図面に関連して考慮するとき、それが以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるので、容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1A~1Iは、癌患者の血液で見出された循環癌関連マクロファージ様細胞のギャラリーを示す図。併合された色画像は、DAPI(青色)、CK8、18と19(緑色)、EpCAM(赤色)及びCD45(バイオレット)によって生成される。
図2-1】図2A~2Fは、テールでのCAMLを呑食されたDNA断片と示す図。
図2-2】図2A~2Fは、テールでのCAMLを呑食されたDNA断片と示す図。
図3-1】図3A~3Fは、DNA断片を呑食する過程のCAMLを示す図。
図3-2】図3A~3Fは、DNA断片を呑食する過程のCAMLを示す図。
図4-1】図4A~4Fは、細胞質断片を呑食する過程のCAMLを示す図。
図4-2】図4A~4Fは、細胞質断片を呑食する過程のCAMLを示す図。
図5-1】図5A~5Fは、CAMLを4つの呑食された白血球と示す図。
図5-2】図5A~5Fは、CAMLを4つの呑食された白血球と示す図。
図6-1】図6A~6Fは、CAMLを2つの呑食された白血球と示す図。
図6-2】図6A~6Fは、CAMLを2つの呑食された白血球と示す図。
図7図7A~7Fは、分裂中のCAMLを示す図。
図8-1】図8A~8Fは、分裂後の2つのCAMLを示す図。
図8-2】図8A~8Fは、分裂後の2つのCAMLを示す図。
図9-1】図9A~9Fは、分裂後の2つのCAMLを示す図。
図9-2】図9A~9Fは、分裂後の2つのCAMLを示す図。
図10-1】図10A~10Fは、2つの小さいアームを有するCAMLを示す図。
図10-2】図10A~10Fは、2つの小さいアームを有するCAMLを示す図。
図11-1】図11A~11Fは、同じ側に2つの脚を有するCAMLを示す図。
図11-2】図11A~11Fは、同じ側に2つの脚を有するCAMLを示す図。
図12-1】図12A~12Fは、同じ側に2つの脚を有するCAMLを示す図。
図12-2】図12A~12Fは、同じ側に2つの脚を有するCAMLを示す図。
図13-1】図13A~13Fは、非常に細い脚及び比較的通常の核を有するCAMLを示す図。
図13-2】図13A~13Fは、非常に細い脚及び比較的通常の核を有するCAMLを示す図。
図14-1】図14A~14Fは、ウイルス感染症を有する対象から単離されたCAMLを示す図。
図14-2】図14A~14Fは、ウイルス感染症を有する対象から単離されたCAMLを示す図。
図15図15A~15Fは、乳癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図16図16A~16Fは、乳癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図17図17A~17Fは、乳癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図18図18A~18Fは、乳癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図19図19A~19Fは、膀胱癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図20図20A~20Fは、膀胱癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図21図21A~21Fは、膀胱癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図22図22A~22Fは、腎臓癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図23図23A~23Fは、腎臓癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図24図24A~24Fは、腎臓癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図25図25A~25Fは、腎臓癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図26図26A~26Fは、腎臓癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図27図27A~27Fは、腎臓癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図28図28A~28Fは、腎臓癌患者からのCTCに結合したWBCを示す図。
図29図29は、105人の乳癌、前立腺癌、膵臓癌及び肺癌患者並びに30人の健康対照でのCTC及びCAMLの頻度を示す図。
図30図30は、105人の乳癌、前立腺癌、膵臓癌及び肺癌患者からの異なるステージの癌でのCAMLの頻度を示す図。
図31図31は、治療後のCAMLの数を示す図。
図32図32は、手術前臨床評価のCAMLの数を示す図。
図33A】病理評価に基づくCAMLの数を示す図であり、図33Aは病理的確認の数を示し、図33Bは癌の4つの異なるステージについての細胞サイズの変動を示す。
図33B】病理評価に基づくCAMLの数を示す図であり、図33Aは病理的確認の数を示し、図33Bは癌の4つの異なるステージについての細胞サイズの変動を示す。
図34図34は、CAMLの再染色を示す図。
図35図35は、CAML上の癌マーカーRAD50に対する放射線療法の影響を示す図。
図36図36は、CTC上の癌マーカーRAD50及びPD-L1に対する放射線療法の影響を示す図。
図37図37は、癌治療後のCAMLの数の低下を経時的に示す図。
図38図38は、CAMLのサイズの低下を経時的に示す図。
図39-1】図39A~39Eは、ビメンチンでPD-L1の強力な染色を有するCAMLを示す図(最大S-N=880);PDL1(最大S-N=880);CD45(最大S-N=850);長さ107μm。
図39-2】図39A~39Eは、ビメンチンでPD-L1の強力な染色を有するCAMLを示す図(最大S-N=880);PDL1(最大S-N=880);CD45(最大S-N=850);長さ107μm。
図40-1】図40A~40Eは、ビメンチンでPD-L1の弱い染色を有するCAMLを示す図(最大S-N=500);PDL1(最大S-N=280);CD45(最大S-N=820);長さ62μm。
図40-2】図40A~40Eは、ビメンチンでPD-L1の弱い染色を有するCAMLを示す図(最大S-N=500);PDL1(最大S-N=280);CD45(最大S-N=820);長さ62μm。
図41-1】図41A~41Eは、ビメンチンでPD-L1の非常に弱い染色を有するCAMLを示す図(最大S-N=75);PDL1(最大S-N=100);CD45は弱い(最大S-N=145)明るいPDL1スポットは1000である;CD45は平滑でない;長さ-74μm。
図41-2】図41A~41Eは、ビメンチンでPD-L1の非常に弱い染色を有するCAMLを示す図(最大S-N=75);PDL1(最大S-N=100);CD45は弱い(最大S-N=145)明るいPDL1スポットは1000である;CD45は平滑でない;長さ-74μm。
図42図42A~42Dは、CAMLの比色染色を示す図。
【0030】
[詳細な説明]
[0071]詳細な構築及びエレメントなどの本記載中で規定される事項は、本発明の包括的理解を助けるために提供されるものに他ならない。したがって、本発明の範囲及び精神を逸脱しない範囲で、本明細書に記載される実施形態の様々な変更及び修正を加えることができることを、当業者は認める。
【0031】
[0072]癌は世界で最も恐れられている病気であり、全ての国の全ての集団及び民族に影響する。米国だけでも、12,000,000人を超える癌患者がおり、毎年1,700,000の新しい癌症例があり、ほぼ600,000人の死亡者がいる。世界中で癌による死亡者は毎年約8,000,000人であると推定され、そのうち3,000,000人は患者が有効な治療を有する先進国で発生する。
【0032】
[0073](i)特に、肺癌については喫煙者などの危険がある群のために、全ての固形腫瘍の早期検出を提供すること、(ii)前立腺癌では高いPSAなどの、癌の他の兆候を確認すること、及び/又は(iii)癌再発の早期検出を提供することができるバイオマーカーがあることが理想的である。
【0033】
[0074]腫瘍学者は、新たに診断された癌患者を最も良好に治療する方法を知る必要がある。現行の検査標準は組織生検であり、それは癌サブタイプを判定するために使用されるが、その理由は、治療薬物が特異サブタイプにだけ有効であることが頻繁に起こるからである。生検方法は位置によって異なるが、侵襲的であり、危険を伴う可能性がある。
【0034】
[0075]治療をモニタリングするために、薬物が患者のためにどれくらい良好に作用しているか、用量を調整すべきかどうか、及び疾患が拡散しているか又は薬物に応答しているかどうかについて、腫瘍学者は知る必要がある。これらの疑問に答えるための一般的な方法は、X線断層撮影(CT)スキャン及び磁気共鳴画像化(MRI)であり、その両方は高価である。さらに、これらの方法は、腫瘍サイズが知覚できるほどに変わるまで、必要な情報を提供することができない。
【0035】
[0076]癌患者の90パーセントは、原発腫瘍からでなく、転移から死ぬ。転移過程は、原発癌腫(上皮細胞の固形腫瘍)から自由になって血流に入る腫瘍細胞が関与する。これらの離脱した癌細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)として知られる。CTCは、療法を判定し、治療をモニタリングし、再発を判定し、生存の予後情報を提供するツールとして有益な潜在能力を有する。しかし、CTCは、ステージIII及びIVの癌でさえ血液から一貫して収集することができない。
【0036】
[0077]この開示では、ステージI~IVの固形腫瘍患者の血液でより一貫して見出される細胞型が提示される。これらの細胞は原発腫瘍と同じ腫瘍マーカーを含有するマクロファージ様細胞であり、それらは本明細書において循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)と呼ばれる。
【0037】
[0078]CTC及びCAMLは、サイズ排除方法、例えば精密濾過方法によって同じ患者試料から同時に見出すことができる。マイクロフィルターは、全ての赤血球及び白血球の大半を通過させ、CTC及びCAMLなどのより大きな細胞を保持するのに十分大きい孔で形成することができる。サイズ排除方法は、マイクロ流体チップによっても実行されている。
【0038】
[0079]単独で使用されるときにも、CAMLは多くの臨床有用性を有する。さらに、診断の感度及び特異性をさらに改善するために、CAMLは、他のマーカー、例えばCTC、血液中の遊離DNA及び血液中の遊離タンパク質と組み合わせることができる。これは特にCAML及びCTCにあてはまるが、その理由は、それらを同時に単離し、同定することができるからである。
【0039】
循環腫瘍細胞
[0080]多くの固形腫瘍のCTCは、いくつかのサイトケラチン(CK)を発現する。CK8、18と19は診断薬で最も一般的に使用されるが、調査はこれらのマーカーに限定する必要はない。固形腫瘍CTCの表面は、上皮細胞接着分子(EpCAM)を通常発現する。しかし、この発現は均一でもなく、一貫してもいない。CD45は白血球マーカーであるので、CTCはいかなるCD45も発現しないはずである。CTC及びCAMLなどの腫瘍関連細胞を同定するアッセイでは、CK8、18と19などの固形腫瘍に関連したマーカーに対する抗体又はCD45若しくはDAPIに対する抗体を使用するのに十分である。染色の存在を形態と組み合わせて、病理学的に定義可能なCTC(PDCTC)、アポトーシス性CTC及びCAMLを同定することができる(Adams,D.L.ら、Cytometric characterization of Circulating Tumor Cells captured by microfiltration and their correlation to the CellSearch(登録商標)CTC test.Cytometry PartA 2015;87A:137~144頁)。
【0040】
[0081]固形腫瘍のPDCTCは、CK8、18と19を発現し、以下の特性によって同定することができる:
DAPIによって染色される「癌様」核。核は通常大きく、ドットパターンを有する。例外は、細胞が分裂中であるときである。核は、凝縮されることもある。
CK8、18及び19のうちの1つ又は複数の発現;上皮癌からのCTCは、少なくともCK8、18及び19を通常発現する。サイトケラチンは、糸状のパターンを有する。
CD45発現の欠如。
【0041】
[0082]CK8、18と19を発現する癌からのアポトーシス性CTCは、以下の特性によって同定される:
分解する核。
CK8、18及び19のうちの1つ又は複数の発現;サイトケラチンは糸状のパターンではなく、スポットの形で断片化したように見える。
CD45発現の欠如。
【0042】
[0083]したがって、サイトケラチンを発現する固形腫瘍の本発明のアポトーシス性CTCには、以下の特性のうちの1つ、2つ又は3つを有するCTCが含まれる:(a)分解する核;(b)サイトケラチン8、18及び19のうちの1つ又は複数の発現であって、サイトケラチンはスポットの形で断片化している;並びに(c)CD45陰性の表現型。
【0043】
[0084]多くの癌腫、肉腫及び黒色腫の検出は、様々な他のマーカーの同定によってもよい。例えば、腎細胞癌(RCC)及び肉腫からのCTCは、ビメンチンを発現する。膀胱癌からのCTCはウロプラキンを通常発現し、CK8、18と19は弱い。多くの異なる目的のマーカーについて、細胞を染色することが可能である。
【0044】
[0085]本発明のCTCは、以下の特性のうちの1つ又は複数に基づいて特徴付けることもできる:(i)CTCの数;(ii)CTCと結合したWBCの数;(iii)核の状態;(iv)サイトケラチン8発現の程度;(v)サイトケラチン18発現の程度;(vi)サイトケラチン19発現の程度;(vii)EpCAM発現の程度;(viii)ビメンチン発現の程度;(ix)PD-L1発現の程度;(x)ウロプラキン発現の程度;(xi)サイトケラチン形態;(xii)マーカーの位置(CTCでマーカーが出現する位置、例えば、細胞質対核は、異なる時点で変化することがある);及び(xiii)マーカー染色の強度。本発明の方法で使用されるCTC特性の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は全13であってもよい。
【0045】
循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)
[0086]CAMLは、以下の特色のうちの1つ又は複数を有することを特徴とする:
CAMLは、大きな非定型核を有する;複数の個々の核をCAMLで見出すことができるが、拡大した融合核小体が一般的である。CAML核は、サイズが一般に直径約10μm~約70μmの範囲内であり、直径約14μm~約64μmがより一般的である。
多くの癌について、CAMLは疾患の癌マーカーを発現する。例えば、上皮癌に関連したCAMLは、CK8、18又は19、ビメンチンなどを発現することができる。マーカーは一般的に拡散しているか、又は空胞及び/若しくは摂取物と会合している。任意のマーカーの染色パターンは、細胞全体にほとんど均一に拡散している。肉腫、神経芽細胞腫及び黒色腫の場合、癌に関連した他のマーカーをCK8、18、19の代わりに使用することができる。
CAMLは、CD45陽性であってもよい。
CAMLは大きく、サイズが直径概ね20ミクロン~概ね300ミクロンである。
CAMLは、紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長方形、2脚形、2本を超える脚形、細い脚形又は無定形を含む、多くの異なる形態学的形状で見出される。
CAMLは、拡散したサイトケラチンを一般的に有する。
CAMLがEpCAMを発現する場合は、EpCAMは一般的に細胞全体に拡散しているか、又は空胞及び/若しくは摂取物と会合し、細胞全体でほとんど均一であるが、一部の腫瘍はEpCAMをほとんど発現しない、又は全く発現しないので全てのCAMLがEpCAMを発現するとは限らない。
CAMLがマーカーを発現する場合は、マーカーは一般的に細胞全体に拡散しているか、又は空胞及び/若しくは摂取物と会合し、細胞全体でほとんど均一であるが、全てのCAMLが同じマーカーを同等の強度で発現するとは限らない。
CAMLは、腫瘍起源のマーカーに関連したマーカーを発現する;例えば、腫瘍が前立腺癌起源であり、PSMAを発現するならば、この患者からのCAMLもPSMAを発現する。別の例として、原発腫瘍が膵臓起源であり、PDX-1を発現するならば、この患者からのCAMLもPDX-1を発現する。原発腫瘍又は癌起源のCTCがCXCR-4を発現するならば、患者からのCAMLもCXCR-4を発現する。
原発腫瘍又は癌起源のCTCが薬物標的のバイオマーカーを発現するならば、CAMLは薬物標的のマーカーに関連したマーカーを発現する。免疫療法のバイオマーカーの1つの例は、PD-L1である。
CAMLは、単核球マーカー(例えば、CD11c、CD14)及び内皮マーカー(例えば、CD146、CD202b、CD31)を発現する。CAMLは、Fc断片に結合する能力も有する。
【0046】
[0087]したがって、本発明のCAMLには、以下の特性のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は5つを有するCAMLが含まれる:(a)約14~64μmのサイズを有する大きな非定型核;(b)拡散しているか、又は空胞及び/若しくは摂取物と会合している、腫瘍と関連した癌マーカーのうちの1つ又は複数の発現;(c)細胞のサイズは約20ミクロン~約300ミクロンの範囲である;(d)形態学的形状は、紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長方形、1つ又は複数の脚形、細い脚形及び無定形からなる群から選択される;並びに(e)CD45陽性表現型。本発明のCAMLには、以下の追加の特性のうちの1つ、2つ、3つ又は4つを有するCAMLも含まれる:(f)ほとんど均一に分布した拡散性のEpCAM又はビメンチンの発現;(g)原発腫瘍の1つ又は複数のマーカーの発現;(h)骨髄性のCD14マーカーの発現;(i)単核球CD11Cマーカーの発現;及び(j)内皮CD146、CD202b及びCD31マーカーの発現。特定の態様では、本発明のCAMLは、追加の特性(f)~(j)の各々を有する。
【0047】
[0088]本発明のCAMLは、以下の特性のうちの1つ又は複数に基づいて特徴付けることもできる:(i)CAMLの数;(ii)CAMLの平均サイズ(CAML細胞のサイズは直径約20ミクロン~約300ミクロンの範囲);(iii)CAMLの核の平均サイズ(CAMLは、直径約14~64μmのサイズを有する大きな非定形的核を有する);(iv)CAMLの形態学的形状(CAML形状には、紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長方形、2脚形、2本を超える脚形、細い脚形又は無定形が含まれる);(v)CD14陽性表現型;(vi)CD45発現の程度;(vii)EpCAM発現の程度;(viii)ビメンチン発現の程度;(ix)PD-L1発現の程度;(x)単核球CD11Cマーカー発現の程度;(xi)内皮CD146マーカー発現の程度;(xii)内皮CD202bマーカー発現の程度;(xiii)内皮CD31マーカー発現の程度;(xiv)マーカーの位置(CAMLでマーカーが出現する位置、例えば、細胞質対核は、異なる時点で変化することがある);(xv)CAMLでの、拡散しているか又は空胞及び/若しくは摂取物と会合している、癌と関連した1つ又は複数のマーカーの存在(例えば、上皮癌の場合、マーカーはサイトケラチン8、18及び19である);並びに(xvi)マーカー染色の強度。本発明の方法で使用されるCAML特性の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は全16であってもよい。
【0048】
[0089]ある特定の状況の下では、H&E又は他の比色染色法によってCAMLを染色することが最適であり得る。
【0049】
[0090]図1は、別々の前立腺、乳房及び膵臓の患者試料からの異なるCAML形態の多く及びシグナル変動を示すCAMLのコラージュを含有する(Adams,D.ら、Circulating giant macrophages as a potential biomarker of solid tumors.PNAS 2014、111(9):3514~3519頁):(図1A)膵臓、(図1B)乳房、(図1C)乳房、(図1D)乳房、(図1E)前立腺、(図1F)膵臓、(図1G)膵臓、(図1H)前立腺及び(図1I)前立腺。形態変異形の例は、以下の通りである:無定形(図1A)、長方形(図1B及び1G)、紡錘形(図1C、1F、1I、3、5、6)、円形(図1D)及びオタマジャクシ形(図1Eと1H)。色差は、EpCAM、サイトケラチン及びCD45に対する抗体反応からの様々な程度のタンパク質発現から起こる。
【0050】
[0091]図2~13は、DAPI、CD10、ビメンチン及びCD45で染色したCAMLを示し、ここで、(図2A)フレームは、併合された顕微鏡画像DAPI(青色)、CD10(緑色)、ビメンチン(赤色)及びCD45(バイオレット)を示し、(図2B)フレームは、併合された顕微鏡画像DAPI(白色)、CD10(緑色)、ビメンチン(赤色)及びCD45(バイオレット)を示し、(図2C)フレームはDAPI(白色)を示し、(図2D)フレームはCD10(白色)を示し、(図2E)フレームはビメンチン(白色)を示し、(図2F)フレームはCD45(白色)を示す。核が白色のフレーム(図2B)は、一部の細胞のためにより優れた画質を提供する。それらの細胞は、上の段落に記載されるCAMLの性質を保有する。細胞の供与源が腎臓癌患者であるので、染色法の選択が選択された。
【0051】
[0092]図2A~2Fは、上脚の端で呑食されたDNA物質を示す。図3A~3Fは、細胞を呑食する過程のCAMLを示し、ここで、DNA物質は既にCAML中にあり、一部の分解された細胞質は部分的になおCAMLの外側にある。図4A~4Fは、分解された細胞物質を呑食する過程のCAMLを示す。これは、ビメンチンチャネルで最も可視的である。図5A~5Fは、CAMLを4つの呑食されたCD45陽性白血球と共に示す。図6A~6Fは、CAMLを2つの呑食されたCD45陽性白血球と共に示す。図7A~7Fは、分裂過程のCAMLを示すと考えられる。図8A~8Fは、その2つの細胞が同じ起源に由来している可能性があることを示唆している、2つの類似の並んでいるCAMLを示す。図9A~9Fは、2つの類似の並んでいるCAMLの別の例を示す。
【0052】
[0093]図10~12は、図1で特定されなかったCAMLの追加の形態を示す。図10A~10Fは、細胞の左側に2つの小さい脚を有するCAMLを示す。図11A~11Fは、同じ側に2つの脚を有するCAMLを示す。図12A~12Fは、核の右側に1つの脚及び左側に2つの脚を有するCAMLを示す。図13A~13Fは、非常に細い脚及び大きな単一の核を有するCAMLを示す。図14A~14Fは、HSV-2ウイルス感染患者で見出されたCAMLを示す。
【0053】
CTCに対する体の免疫応答-CTCに結合したT細胞
[0094]腫瘍細胞が血流に入るとき、CTCはT細胞によって攻撃されるはずであり、腫瘍細胞の死をもたらす。これが起こるとき、1つ又は複数のT細胞がCTCに結合し、CTCの死及びCTCの最終的な分解が生じる。T細胞は、白血球のサブタイプである。CD45マーカーはWBCを染色し、T細胞に特異的でない。T細胞は、核の形態によって、顆粒球と区別することができる。T細胞は、概ね丸くて8ミクロンより小さい単一の核を有する。血液の濾過は、CTCに結合した白血球(WBC)を捕捉することができる。血液中のCTCに結合したWBCの存在は、固形腫瘍の存在及び固形腫瘍を排除する体の能力の指標でもある。したがって、CTCに結合したT細胞の数の判定は、診断薬で使用することができる。
【0054】
[0095]腫瘍細胞及びT細胞のマーカーは、それらが接触するときに2つの細胞の間で交換されることがある。図15~18は、乳癌患者の血液で見出されたCTCに結合したWBCを示す。乳癌患者のために使用されるマーカーは、DAPI、CK8、18と19、EpCAM及びCD45である。図15~16は、CTCがアポトーシス性であり、CK8、18及び19がスポットに分解したことを示す。図18は、CK及びEpCAMの両マーカーを失い、細胞質がなく大きく分解されたCTCを示す。WBC及びCTCの核が図16に示すように互いの方へ引かれることがしばしば観察される。
【0055】
[0096]図19~21は、膀胱癌患者の血液で見出されたCTCに結合したWBCを示す。膀胱癌患者のために使用されるマーカーは、DAPI、CK8、18と19、EpCAM及びCD45である。図19Eでは、EpCAMはスポットに分解される。WBC(図19Aでマークされている)及びCTCの細胞質は、WBCの周囲でEpCAMと併合する過程にある。WBCは、CD45をなお発現する。図20A~20Fは、WBCに結合している比較的なおインタクトなCTCを示す。図21A~21Fは細胞質なしの裸のCTC核を示し、WBC(図21Aでマークされている)はCD45をなお発現しているが、CTCに結合していないWBC(図21Aでマークされていない)よりかなり弱い。
【0056】
[0097]図22~28は、腎臓癌患者の血液で見出されたCTCに結合したWBCを示す。これらの患者試料のために使用されるマーカーは、DAPI、CD10、ビメンチン及びCD45である。図22A~22Fは、ビメンチンの発現が高い、間葉性腎臓癌からのCTCを示す。それは、WBCにタイトに結合している。図23~28は、図22に示すものより低いレベルのビメンチンを発現している非間葉性腎臓癌患者の血液で見出された、CTCに結合したWBCを示す。WBC及びCTCの核及び細胞質は、お互いの方へ引かれる。CD10、ビメンチン及びCD45マーカーの全ては、WBCがCTCに結合した後に非常に弱くなる。細胞質の量が減少し、最終的に全く失われることがある。
【0057】
癌患者の血液でのCTC及びCAMLの頻度
[0098]PDCTCは、癌の初期ではめったに見出されない。PDCTCがステージIII及びIVの乳房及び前立腺の癌患者でより頻繁に見出されるとしても、それらはほとんどの他の固形腫瘍では低い頻度で見ることができる。一例として、105人の癌患者(乳癌(n=34)、前立腺癌(n=25)、膵臓癌(n=39)及び肺癌(n=7))、及び30人の健康対照を分析した。図29は、健康対照の血液で、PDCTC及びCAMLを見出すことができなかったことを示す。対照的に、CAMLは105人の癌患者のうちの98人で見出された。PDCTC及びCAMLを有する患者の百分率は、それぞれ、53%及び93%である。105人の癌患者についての癌のステージは、以下の通りだった:ステージI(n=46)、ステージII(n=18)、ステージIII(n=11)、及びステージIV(n=30)。図30は、ステージI、II、III及びIVのCAMLを有する患者の百分率が、それぞれ87%、100%、91%及び97%であることを示す。CAMLは、PDCTCより一般的であることが見出された。12個の異なる固形腫瘍からの患者試料を分析した:乳房、前立腺、膵臓、肺、結腸直腸、子宮、神経芽細胞腫、食道、腎臓、膀胱、肉腫及び卵巣。それらの全ての種類の癌で、CAMLが見出された(データは示さず)。
【0058】
CAMLの数は、療法に基づいて異なる
[0099]上記の105人の患者のうち、44人の患者は療法を受けず、12人は標的療法を受け、49人は化学療法を受けた。療法の完了後に患者でCAMLを検出するために、追跡調査スクリーニングを実行した。図31に示すように、CAMLの数は、療法のタイプに依存すると考えられる。化学療法を受ける患者でのCAMLの数は、療法を受けないか又は標的療法を受ける患者でのCAMLの数よりかなり多い。
【0059】
ステージング及び疾患進行とのCAMLの数の関係
[00100]化学療法を受ける患者でのCAMLの数は、治療前臨床評価の時点の癌ステージと弱く関連するにすぎず(図32)、病理学的確認の後のステージと高い相関がある(図33A)。化学療法を受ける患者の場合、CAMLの数は、最終病理学的確認と指数関数的に相関していた:ステージI(3.2)、ステージII(7.1)、ステージIII(14.6)、ステージIV(35.1);R=0.99。
【0060】
[00101]図33Bは、異なるステージ毎にサイズに基づいてCAMLの数を分類する。後期ステージでのCAMLは、より大きなサイズのより多くのCAMLを有する。
【0061】
乳癌スクリーニング
[00102]CAMLは固形腫瘍の全てのステージで高い百分率で見出すことができるので、癌スクリーニングマーカーとしてのCAMLを、乳癌について評価した。マンモグラフィーが異常と判断された41人の対象について、二重盲検前向き試験を実行した。二重盲検試験を実行した:(i)CAMLについて試験するために、7.5mLの末梢血試料を取り、(ii)コア針生検による組織診断を実行した。マンモグラフィーはこの群で亜集団を区別できなかったが、CAMLの存在は90%の感度及び72%の特異性で良性と悪性の乳房疾患を区別した(データは示さず)。
【0062】
抗体染色及び単離細胞の再染色
[00103]一般的な蛍光顕微鏡は、予想外の蛍光チャネルへの蛍光放出のブリードスルーを最小にするために、4つ又は5つの蛍光チャネルを通常使用する。1つのチャネルは、核を画像化するためにDAPIによって取られる。しばしば、3つを超えるマーカーを評価する必要性がある。これらの欠点を考慮して、本開示で開示される方法の各々と併用することができる、同じ細胞の上の最高概ね12個の異なるマーカーの分析を可能にする方法が開発された。濾過及びマーカーの第1セットによるフィルター上の細胞の染色の工程の後に、目的の細胞が同定され、画像化される。同じ細胞の上のより多くのマーカーを評価するために、クエンチング/ストリッピング工程が再染色技術の前に開発された。同じ細胞の再画像化を可能にするために、これは細胞が同じ位置にとどまることを必要とした。これは、数回繰り返すことができる。図34の最上列は、標準のCTC染色法:DAPI、CK8、18、19、EpCAM及びCD45によるCAML Aを示す。第2の列は、クエンチングの後の同じ細胞の再染色を示し、目的のマーカー:PD-L1、CCR及びPD-1のために再染色した。図34の第3の列は、標準のCTC染色法によるCAML Bを示す。第4の列は、目的のマーカー:PD-L1、CCR及びPD-1のための、クエンチングの後の同じCAML Bの再染色を示す。この再染色方法は、マイクロフィルターの上に固定された細胞に特に適する。それらの位置は、異なるマーカーを評価するためにそれらを再画像化することができるように固定される。フィルター上のCTC及び他の細胞も、この技術を使用して再染色することができる。この再染色方法は、癌タイプ、コンパニオン診断薬、療法応答、癌スクリーニング及び様々な研究用途を分析するために非常に有益である。
【0063】
CAML及びCTCを使用する単一細胞分子アッセイ
[00104]様々なPCRアッセイ、マイクロアレイ、FISHアッセイ及び配列決定によって、遺伝子の突然変異、転座及び増幅のために癌細分類を判定するために、CAML及びCTCの分子分析を潜在的に使用することができる。単一細胞分子分析は一般的になっており、CAMLの単一細胞分析は特に興味深い。一部のアッセイは、エラーを低減するために1つを超える核及び/又は細胞を必要とする。したがって本発明は、単一のCAML細胞を得て単一細胞で分子分析を実行する、単一のCAML細胞の分子分析の方法を含む。単一細胞で実行することができる分子分析の特定のタイプに関して制限はなく、そのような手段には、これらに限定されないが、核酸配列決定、ノーザンブロット分析及びサザンブロット分析が含まれる。
【0064】
[00105]精密濾過デバイスを使用してCTC及びCAMLを収集する方法が、記載される。本出願において、再染色目的のために細胞がフィルターの上にとどまる必要性とは逆に、細胞がフィルターから容易に除去されることが所望される。細胞の除去を可能にする重要な工程は、細胞が粘着するのを防止するためにフィルターをコーティングすること、例えば、ウシ胎児血清(FBS)又はウシ血清アルブミン(BSA)を使用してコーティングすることである。細胞接着を防止する他のコーティングも、適用可能である。試料はフィルターを通過し、孔より大きな細胞が収集される。目的の細胞を収集するための、2つの方法がある。方法1:フィルターホルダーからフィルターを外し、細胞を上にしてシャーレ又はガラススライドに置き、PBSなどの適当な液体で覆う;マイクロマニピュレーターを使用して細胞をフィルターから直接的に採取することができる。方法2:細胞がフィルター上にあるホルダーの底にPBSを充填したシリンジを取り付け、フィルターから細胞を逆洗する。遠心分離及び上清の除去によって細胞を濃縮することができる。顕微鏡の下で可視化を可能にするために、細胞を染色する必要がある。染色法の1つの非限定的な選択は、蛍光挿入色素である。別の例は、EpCAM、CD45及び/又は他のマーカーなどの細胞表面マーカーについて染色することである。マイクロマニピュレーター又は器具、例えばCellColector及び他の器具などの、シャーレから目的の細胞を採取するための様々な方法がある。
【0065】
コンパニオン診断
[00106]患者に処方される特定の薬物を判定するコンパニオン診断のための組織の供与源として、CAMLを使用することができる。現在、コンパニオン診断は、薬物標的のマーカーについて染色するために、FISHアッセイを実行するために、PCR、マイクロアレイ、配列決定などによって遺伝子の突然変異、増幅又は転座を探すために他の分子アッセイを実行するために、組織生検を利用する。組織生検を利用する従来のコンパニオン診断の例は、HER2増幅のためのFISH、ALK転座のためのFISH、組織中のPD-L1、組織中のAR及びERなどである。広範な薬物を評価するために、十分な組織がない又は全く組織がないことがある。CTC及びCAMLは、繰り返し収集すること、及び組織生検の代わりに使用することができる。さらに、複数の薬物の効力を評価するために、同じ試料を繰り返し再染色することができる。
【0066】
治療応答のモニタリング
[00107]液体細胞生検は、患者で治療応答をモニタリングするための、最小限に侵襲的な方法を提供する。癌治療の効力をモニタリングするために、以下を含むアプローチを採択することができる:
(a)同じ対象からのCAML及びCTCの数の変化を治療後の異なる時点でモニタリングすること;
(b)CAML及びCTCのサイズの変化を異なる時点でモニタリングすること;
(c)CAML及びCTCでマーカーの強度の変化を異なる時点でモニタリングすること;並びに
(d)CAML及びCTCで、細胞質対核のマーカーの位置の変化を異なる時点でモニタリングすること。
【0067】
[00108]化学療法に関する1つの例として、図31は、化学療法治療の直後に化学療法応答体はCAMLの増加を示すようであることを示す。対照的に、標的療法からのCAMLの数は、無処置対照を超える増加を示さなかった。
【0068】
[00109]第2の例、放射線療法では、図35の上列は、放射線療法の前の、DAPI、PD-L1、RAD50及びPD-1のために染色した肺癌患者からのCAMLを示す。一番下の2列は、同様にDAPI、PD-L1、RAD50及びPD-1のために染色した放射線療法後の2つの異なるCAMLを示す。RAD50は、核のDNA傷害部位に移動している。
【0069】
[00110]RAD50のこの変化は、CTCでも見られる。第3の例は、放射線療法の有効性を検討するために、再染色を組み合わせる。図36の上列は、標準のCTC染色法:DAPI、CK8、18、19、EpCAM及びCD45を使用した、放射線治療後の肺癌患者からのCTCのクラスタを示す。一番下の列は、放射線療法及び免疫応答に関するマーカー:PD-L1、RAD50及びPD-1のためのクエンチング及び再染色の後の、同じCTCクラスタを示す。
【0070】
[00111]第4の例は、免疫療法に関する。体が腫瘍を死滅させることを可能にする免疫療法は、多くの種類の癌に対して印象的な結果を示している。免疫療法薬物の例は、腫瘍細胞の表面のPD-L1に対する抗体である。免疫療法薬物の別の試料は、キラーT細胞の表面のPD-1に対する抗体である。両タイプの免疫療法薬物は、キラーT細胞が腫瘍細胞を一部の患者で死滅させることを可能にする。図37は、概ね2~3週間離れた4つの期間で収集されたCAMLの数の例を示す。PD-1の治療は、液体細胞生検のために血液試料を提供した後のT1及びT3日目であった。治療後のCAMLの数の低下は、おそらく、患者が治療に応答していないことの指標である。CAMLはサイズでも減少するので、図38は、CAMLのサイズの対応する範囲を示す。この情報は、治療の結果として血液中に腫瘍デブリの減少があり得ることを示唆し、その患者が治療に応答していない可能性を示唆する。図39は、非常に明るいPD-L1を示しているT1の前のCAMLである。バックグラウンドノイズを超えるPD-L1のシグナルは、バックグラウンドノイズの約8倍である。図40は、治療の直前に収集されたT1時のCAMLである。PD-L1シグナルは、ここでは弱い。バックグラウンドノイズを超えるPD-L1のシグナルは、バックグラウンドノイズの2倍未満であり、潜在的な劣る応答を示している。図41は、T3時のCAMLである。PD-L1シグナルは、ここでは非常に弱い。バックグラウンドノイズを超えるPD-L1のシグナルは、バックグラウンドノイズの1倍未満である。これは、PD-L1などの薬物標的の減少の指標である。
【0071】
[00112]第5の例は、手術の奏効のモニタリングに関する。Adamsら(Circulating giant macrophages as a potential biomarker of solid tumors.PNAS 2014、111(9):3514~3519頁)による論文の図S5は、手術がCAMLの数を低減することを示した。患者の血液中のCAMLの連続した存在は、癌が完全に根絶されていない可能性があることを示している可能性がある。
【0072】
CAML及びCTCの捕捉
[00113]体液中に存在する他の細胞より大きな及び/又はより柔軟でない細胞は、体液を濾過することによって収集することができる。例えば、状態の指標となる標的細胞、例えばCAML及びCTCは、標的細胞が通過するためには小さすぎるが、他の細胞が通過するのに十分に大きい開口部を有するフィルターに体液を通すことによって収集することができる。収集されると、標的細胞の任意の数の分析を実行することができる。そのような分析には、例えば、マーカーの発現を同定、計数、特徴付けること、分子分析を得ること、及び/又は収集した細胞を培養することが含まれてもよい。
【0073】
[00114]CAML、病理学的に定義可能なCTC及びアポトーシス性CTCは、赤血球及びほとんどの白血球より大きい。精密孔径及び孔分布を有する精密マイクロフィルターを使用することは、これらの細胞のために高い捕捉効率及び低い標準偏差を提供することが示されている。セルシーブ(商標)マイクロフィルター(Creatv MicroTech)は、精密マイクロフィルターの1つの例である。セルシーブ(商標)マイクロフィルターは透明、非蛍光性であり、それらを顕微鏡画像化分析にとって理想的にしている。7~8ミクロンの孔径は、全ての赤血球及び白血球の99.99%を排除した。均一な孔径及び分布を生むマイクロフィルターを製作する方法は、国際公開第2011/139445及び国際出願PCT/US12/66390に記載され、その両方は参照により完全に本明細書に組み込まれる。トラックエッチング方法によって作製されるマイクロフィルターは、重なり合って効果的に大きな孔をもたらすことができる、ランダムに位置する孔を有する。それらは、一部のCAML及びCTCを失う可能性がある。
【0074】
[00115]精密濾過の他に、多くの他の方法がCTCの捕捉のために存在し、いくつかはCAMLを捕捉するために採択することもできる。それらは、以下のカテゴリーに一般に分類される:
CAMLは血液細胞の大半と比較して大きいので、多くのサイズに基づく方法がCAMLを捕捉するために適する。7~8ミクロン孔のマイクロフィルターが、CAML及びCTCの同時捕捉に理想的である。CTCではなくCAMLだけが目的であれば、孔径はより大きく、概ね15~20ミクロンまでとなってもよい。大きな方の孔径は、フィルター上の大部分のWBC汚染を排除する。
免疫捕捉は、強磁性流体、磁気ビーズ、マイクロ流体チップなどを、CAMLの選択又は他の細胞の排除のための抗体でコーティングして使用する。
CAMLを収集するために、赤血球溶解を使用することもできる。その結果としての試料量は、複数のガラススライドの上へのプレーティングを必要とする。
白血球消失。
FICOLL。
電気泳動。
誘電泳動。
フローサイトメトリー。
様々な生物学的及び物理的原理を利用して、サイズによって大細胞を選別、選択、群分け、捕獲、濃縮する又は小細胞を排除するマイクロ流体チップ技術も適する。
【0075】
[00116]濾過は、CTCに結合したWBCを特定する最良の方法である。WBC及びCTCの両方はそれらのマーカーを失い、細胞質を失うので、免疫捕捉及びフローサイトメトリーはそれらを単離するのにより適していない方法である。
【0076】
[00117]本発明の関連する態様及び実施形態では、CTC及びCTCに結合したWBCは、単独で、又はCAMLの検出と併せて検出することができる。そのような検出は同時の又は逐次的な検出であってもよく、同じ又は異なる手段を利用することができる。例えば、両方の細胞型を選択する孔径を有するマイクロフィルターを使用する同時検出を、使用することができる。適するマイクロフィルターは、様々な孔径及び形状を有することができる。径が約7~8ミクロンの孔を有するマイクロフィルターが許容され、円形、長方形及びレーストラック状の孔形状を含む。ポリマーマイクロフィルターが使用されるとき、径が約7~8ミクロンの円形孔を有するマイクロフィルターが特に最適である。好ましい態様では、マイクロフィルターは精密孔配置及び均一な孔分布を有する。
【0077】
低価格でのCAML単離及び同定
[00118]生体試料からCAML及び/又はCTCを単離し、単離した細胞を、カメラ、例えば携帯電話カメラを使用して数える方法は、本発明の実施形態である。マーカー染色及び可視化を通したCAML及び/又はCTCの詳細な分析のために必要とされる装置及び試薬が利用できない状況で、カメラ、例えば携帯電話のそれらを利用する方法を使用することができる。比色染色に基づいてCAML及び/又はCTCを数える能力は、一部の適用に十分であり得る。コミュニティの資源が欠乏している場合、癌は後期のステージで診断される傾向があり、それは、限られた治療オプション及び鈍い成果を意味する。試料中のCAML及び/又はCTCの数に基づいて低費用の診断を提供する方法は、以下の概念のうちの1つ又は複数を採択することができる。
(i)孔径約15~20ミクロンの低費用フィルターを利用する。
(ii)手動引き抜き又は低費用ポンプによって血液試料を濾過する。
(iii)CAML及び/又はCTCを可視化するために、比色染色を使用する。
(iv)携帯型の小さいレンズがある、又はない携帯電話カメラ又は10×以下の倍率の様々な白色光顕微鏡を使用して細胞を画像化する。
【0078】
[00119]フィルターの大きな孔径は、WBC汚染を低減する。手動引き抜きは、費用を低減する。比色染色法は、低費用である。細胞の大きなサイズにより、携帯電話カメラはCAMLを可視化することができる。
[発明の実施形態]
【0079】
[00120]上で示唆されるように、本明細書に記載されるCAML及びCTCの特異な特性は、癌などの疾患をスクリーニング及び診断する方法、治療をモニタリングする方法、疾患進行及び再発をモニタリングする方法を含む臨床方法で使用するためにそれらを好適にする。
【0080】
[00121]したがって本発明は、第1の実施形態では、対象からの生体試料でCAMLを検出するステップを含む、癌について対象をスクリーニングする方法に関する。特定の態様では、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、対象は、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫又は他の固形腫瘍を潜在的に有すると同定される。他の態様では、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、対象は、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫又は他の固形腫瘍を有すると同定される。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中で循環腫瘍細胞(CTC)及び腫瘍細胞に結合したT細胞を検出するステップも含む。この第1の実施形態の特定の態様では、対象は、癌を有することが疑われる対象である。
【0081】
[00122]CAML、CTC又は腫瘍細胞に結合したT細胞が見出された後、染色によって、及び一部の場合には腫瘍タイプと関連したマーカーでこれらの細胞を再染色することによって、腫瘍タイプを同定することができる可能性がある。米国癌研究所腫瘍マーカーFactSheetは、多くの癌マーカーを掲載する(「cancer.gov/cancertopics/factsheet/detection/tumor-markers」及び「cancer.gov/about-cancer/diagnosis-staging/diagnosis/tumor-markers-act-sheet#q5」で終わるURLを有するNCIウェブサイトを参照)。癌マーカーは、このリストに限定されない。癌タイプの最初の指標を提供するためにCAML及びCTCを染色するために、下に掲載したマーカーの少数例を使用することができる:
BRAF突然変異V600E:癌タイプ:皮膚黒色腫及び結腸直腸癌
CA15-3/CA27.29:癌タイプ:乳癌
CA19-9:癌タイプ:膵臓癌、胆嚢癌、胆管癌及び胃癌
CA-125:癌タイプ:卵巣癌
癌胎児性抗原(CEA):癌タイプ:結腸直腸癌及び乳癌
サイトケラチン断片21-1:肺癌
エストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR):癌タイプ:乳癌
HE4:癌タイプ:卵巣癌
HER2/neu:癌タイプ:乳癌、胃癌及び食道癌
キット:癌タイプ:消化管間質腫瘍及び粘膜黒色腫
前立腺特異抗原(PSA)及びPSMA:癌タイプ:前立腺癌
サイログロブリン:癌タイプ:甲状腺癌
5-タンパク質サイン(Ova1):癌タイプ:卵巣癌
マーカーの選択は、このリストに限定されない。
【0082】
[00123]1つの癌タイプを同定するために、1つのマーカーが一部の癌タイプにとって十分であり得る。男性の場合、前立腺、結腸直腸及び肺癌などの同じ血液試料で1つを超える癌タイプについてスクリーニングするために、目的のCAML及びCTCを同定した後に、それらの癌タイプに特異的な癌マーカーによるCAML及びCTCの再染色が必要とされる。以下は、精密濾過方法を使用した、最大4種類の上皮癌の癌スクリーニングのためのCAML及びCTCの分析の例示である:
血液を収集する。
マイクロフィルターでCTC及びCAMLを単離する。
DAPI、CK8、18、19、CD14/CD45によって細胞を染色し、1つの癌タイプのために1つのマーカーで染色する。
蛍光顕微鏡を使用して細胞を画像化して、CAML及びCTCを同定する。
CAML及びCTCの蛍光色素をクエンチングする。
DAPI及び目的の3つの追加のマーカーで細胞を再染色する。
以前に画像化した同じCTC及びCAMLで新しいマーカーを再画像化する。
マーカーに基づいて癌タイプを判定する。
【0083】
[00124]肺のためのCTスキャンは、サイズが4mmと小さい通常でない所見を示すことができる。それは、今では、肺癌のための推奨されたスクリーニング方法である。最初の所見が肺癌であることを立証するために、組織生検が必要である。肺のための組織生検は非常に難しく、それは望ましくない影響を引き起こす高いリスクと関連する。関連する肺癌マーカー、例えばサイトケラチン断片21-1及び他のマーカーを有するCAMLの存在は、肺癌の判定に向けた非侵襲的手段を提供するために使用することができる。
【0084】
[00125]BRAC1及びBRAC2突然変異を有する人々については、彼らは、乳房及び/又は卵巣の癌にかかる確率が高い。卵巣癌についてはCA125、Ova1、並びに乳癌についてはCEA、CA15-3/CA27.29、ER、PR及びHER2のマーカーを含む、CAMLのための血液検査を実行することができる。
【0085】
[00126]男性のトップ4の癌タイプについてスクリーニングするために、マーカーの選択の1つの可能なセットは、前立腺癌についてはPSMA、結腸直腸癌についてはCEA、肺癌についてはサイトケラチン断片21-1及び膵臓癌についてはPDX-1であってもよい。
【0086】
[00127]手法及びマーカーは、CAML及びCTC単離方法、顕微鏡、目的の癌タイプなどによって異なることがある。要約すると、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫及び黒色腫のカテゴリーで1つの特異癌、2、3の癌又は任意の固形腫瘍についてスクリーニングすることが可能である。マーカーは、ここに記載されるものに限定する必要はない。
【0087】
[00128]第2の実施形態では、本発明は、対象における癌を診断するための方法であって、対象からの生物学的試料中でCAMLを検出するステップを含む方法に関し、ここで、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、対象は癌と診断される。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中でCTCを検出するステップも含み、ここで、CAML及びCTCが生物学的試料中で検出されるときは、対象は癌と診断される。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中でWBCに結合したCTCを検出するステップ及び/又はWBCに結合したアポトーシス性CTCを検出するステップも含み、ここで、WBCに結合したCTC及び/又はWBCに結合したアポトーシス性CTCが生物学的試料中で検出されるときは、対象は癌と診断される。
【0088】
[00129]第3の実施形態では、本発明は、対象における癌の再発を検出するための方法であって、癌について以前に治療した対象からの生物学的試料中でCAMLを検出するステップを含む方法に関し、ここで、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、癌の再発が検出される。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中でCTC及び/又はCTCに結合したWBCを検出するステップも含み、ここで、CAML、CTC及びCTCに結合したWBCが生物学的試料中で検出されるときは、癌の再発が検出される。特定の癌の再発を同定するために、染色法は寛解中の癌と関連したマーカーを特に含むべきである。
【0089】
[00130]第4の実施形態では、本発明は、対象で癌の診断を確認するための方法であって、癌と診断された対象からの生物学的試料中でCAMLを検出するステップを含む方法に関し、ここで、CAMLが生物学的試料中で検出されるときは、癌の診断が対象で確認される。ほとんどの患者で、組織生検による侵襲的確認を回避することができる。CAMLが存在するときだけ、組織生検が必要だろう。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中でCTC及び/又はCTCに結合したWBCを検出するステップも含み、ここで、CAML、CTC及びCTCに結合したWBCのうちの1つ又は複数が生物学的試料中で検出されるときは、癌の診断が対象で確認される。特定の態様では、最初の癌診断は、マンモグラフィー、PSA検査、CA125の存在、CT、MRI又はPET画像化によるものである。特定の態様では、対象は、癌を有することが疑われる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。
【0090】
[00131]第5の実施形態では、本発明は、対象における癌のステージを判定するための方法であって、癌を有する対象からの生物学的試料中のCAMLを特徴付けるステップを含む方法に関し、ここで、CAMLの選択される特性は、対象での癌のステージを示す。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色などの標準方法によって実行することができる。特定のタイプの癌の同定は、癌マーカーの染色によって、及びその後の追加のマーカーについての同じ細胞の再染色によって実行することもできる。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、生物学的試料中のCTCを特徴付けるステップも含み、ここで、CAML及びCTCの選択される特性は、対象での癌のステージを示す。ある特定の態様では、CAML及び/又はCTCは、特徴付けの前に生物学的試料から収集される。ステージIII及びIVの癌でのCAMLの数は、7.5mlの量の末梢血試料で一般的に5以上である。直径によるサイズが40ミクロンより大きなCAMLの百分率は、ステージIII患者では約70%であり、ステージIV患者では約80%である。
【0091】
[00132]第6の実施形態では、本発明は、癌治療の効力をモニタリングするための方法であって、(a)癌治療を受けている対象からの生物学的試料中のCAMLの1つ又は複数の選択される特性を検査するステップ、及び(b)治療の前、その間又は完了の後の1つ又は複数の時点で、(a)で判定される1つ又は複数の選択される特性の検査値を、同じ対象からの類似の生物学的試料で検査される同じ特性の検査値と比較するステップを含む方法に関し、ここで、1つ又は複数の検査値の変化は、対象での癌治療の効力を示す。ある特定の態様では、この実施形態によって包含される方法は、(a)生物学的試料中のCTCの1つ又は複数の選択される特性を検査すること、及び(b)治療の前、その間又は完了の後の1つ又は複数の時点で、(a)で判定される1つ又は複数の選択される特性の検査値を、同じ対象からの類似の生物学的試料で検査される同じ特性の検査値と比較するステップも含む。ある特定の態様では、CAML及び/又はCTCは、特徴付けの前に生物学的試料から収集される。
【0092】
[00133]ある特定の態様では、CAMLの選択される特性は、以下のうちの1つ又は複数である:(i)治療後の異なる時点での同じ対象からのCAMLの数の変化;(ii)異なる時点でのCAMLの平均サイズの変化;(iii)異なる時点でのCAMLにおけるマーカーの強度の変化;及び(iv)CAMLにおける核から細胞質又はその逆へのマーカーの位置の変化。
【0093】
[00134]ある特定の態様では、CTCの選択される特性は、以下のうちの1つ又は複数である:(i)治療後の異なる時点での生物学的試料中のCTCの数の変化;(ii)異なる時点でのCTCにおけるマーカーの強度の変化;(iii)核から細胞質又はその逆へのマーカーの位置の変化;(iv)生物学的試料中のCTCに結合したWBCの数の変化;及び(v)治療後の異なる時点での生物学的試料中のCTCに結合したWBCの数の変化。
【0094】
[00135]CAML及び/又はCTC及び/又はCTCに結合したWBCの数の変化が治療的効力の指標となり、その場合、変化は、CAML及び/又はCTC及び/又はCTCに結合したWBCの数の増加又は減少であってもよいことを、当業者は理解する。CAML、CTC及びWBCに結合したCTCに関して集められる情報は、互いとは無関係に使用されてもよい。CAML、CTC及びWBCに結合したCTCに関して集められる情報は、一緒に使用することもできる。
【0095】
[00136]CAML及び/又はCTCのサイズの変化が治療的効力の指標となることができ、その場合、サイズの変化は、CAML及び/又はCTC及び/又はCTCに結合したWBCのサイズの増加又は減少であってもよいことを、当業者は理解する。CAML及びCTCに関して集められる情報は、独立して、又は一緒に使用することができる。
【0096】
[00137]CAMLを追跡する能力は、壊死及び化学療法又は放射線療法への応答を日常的にモニタリングする新規機会を提供する。化学療法が効いていない場合は、CAML数は増加しない。これは、CTC検出と並行して使用することができる。治療が効いている場合は、病理学的に定義可能なCTCの数は減少し、アポトーシス性CTCの数は増加する。しかし、CTCは必ずしも検出されるとは限らない。CTCがCAMLと同時に検出される場合は、感度及び特異性が改善されることがある。多くの癌について、多数の化学療法剤がある。患者が1つのタイプの化学療法に応答していない場合は、患者は別のものに速やかに変えることができる。
【0097】
[00138]本発明は、生物学的試料からCAML及び/又はCTCを単離し、単離した細胞を、カメラ、例えば携帯電話カメラ又は白色光顕微鏡又は白色光顕微鏡に取り付けたカメラを使用して数える方法にも関する。したがって、第7の実施形態では、本発明は、生物学的試料におけるCAML及び/又はCTCを検出するための方法であって、対象から生物学的試料を得るステップ、及び試料でCAML及び/又はCTCを検出するステップを含む方法に関し、検出は、カメラ、白色光顕微鏡又は白色光顕微鏡に取り付けたカメラによるものである。ある特定の態様では、カメラは携帯電話カメラである。ある特定の態様では、白色光顕微鏡は、10×以下の倍率を有する。他の態様では、細胞は低費用のフィルターによって生物学的試料から収集され、及び/又は生物学的試料は対象からの手動引き抜きによって、若しくは低費用のポンプによって得られる。さらなる態様では、CAML及び/又はCTCを可視化するために、比色染色が使用される。
【0098】
[00139]第8の実施形態では、本発明は、選択される薬物標的マーカーをCAML及び/又はCTCにおいてスクリーニングするためのコンパニオン診断方法であって、対象からの生物学的試料からCAML及び/又はCTCを収集するステップ、及びCAML及び/又はCTCが選択される薬物標的マーカーを発現又は保有するかどうか判定するステップを含む方法に関する。ある特定の態様では、薬物標的マーカーは細胞表面マーカーであり、判定は、例えば、マーカーの染色によるものであり得る。一例として、免疫療法のための細胞表面マーカーとして、PD-L1が使用されてもよい。他の態様では、薬物標的マーカーは、ポリヌクレオチドである。さらなる態様では、薬物標的マーカーは遺伝子の突然変異、増幅又は転座であり、判定は、例えば、FISHによるものであり得る。
【0099】
[00140]第9の実施形態では、本発明は、対象におけるウイルス感染を診断するための方法であって、対象から得た生物学的試料からCAMLを収集するステップ、及び収集したCAMLをウイルスについてスクリーニングするステップを含む方法に関する。ある特定の態様では、スクリーニングは、ウイルスマーカーについてCAMLを染色することによるものである。さらなる態様では、スクリーニングは、CAMLからのDNA又はRNAの分子分析によるものである。
【0100】
[00141]ウイルスの検出の伝統的方法は、血液中の抗体又はウイルス粒子の存在に基づく。CAMLはウイルスのデブリ、ウイルス感染細胞、及びウイルスを含有する細胞片を呑食するので、この方法でのCAMLの使用は、ウイルス感染を検出し、診断する際の有益なツールを提供することができる。これらの方法を用いて診断することができるウイルス感染の供与源は、これらに限定されないが、例えば、中でも、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)が含まれる。
【0101】
[00142]HIV及びHBVなどの一部のウイルス感染症は、癌につながることがある。そのような感染症を有する対象の血液で見出されるCAMLは、ウイルス感染又は癌自体によって引き起こされることがある。癌マーカー又はウイルスマーカーの染色は、診断情報を提供するために使用されてもよい。これは、ウイルス起因の癌の早期検出のための有益な方法であり得る。
【0102】
[00143]本発明の関連する態様及び実施形態では、療法は、ワクチン接種、化学療法、放射線療法、免疫療法、標的化療法及びこれらの組合せを含む。
【0103】
[00144]本発明の関連する態様及び実施形態では、生物学的試料は、CTC、CTCに結合したWBC及び/又はCAMLを含有することが疑われるいかなるものであってもよい。ある特定の態様では、生物学的試料は、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織及び尿からなる群から選択される1つ又は複数である。試料は、新鮮な試料又は解凍される低温保存試料であってもよい。好ましい態様では、生物学的試料は、末梢血である。他の態様では、血液は、前肘静脈血、下大静脈血又は頸静脈血である。
【0104】
[00145]循環単球は、リンパ節、骨髄、ほとんどの器官を含む体の任意の組織コンパートメントに入る能力を有し、脳血液関門さえ通過する。したがって、CAMLの検出は血液に限定されず、細胞は、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、ほとんどの器官及び尿で見出すこともできる。
【0105】
[00146]本発明の関連する態様及び実施形態では、癌は、固形腫瘍、ステージI癌、ステージII癌、ステージIII癌、ステージIV癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵癌、結腸直腸癌及び他の固形腫瘍癌のうちの1つ又は複数である。本発明の方法が癌の特定の型にもタイプにも限定されず、様々な癌に関連してそれらを実施することができることを、当業者は理解する。
【0106】
[00147]CAMLは癌のステージI及びIIで見出すことができるので、CAMLは、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫及び黒色腫の早期検出のためのスクリーニングとして使用することができる。癌腫は、特に乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌及び他の癌のリスクが高い患者にとっての、上皮起源の癌である。癌のタイプの特異性は、マイクロフィルターの上で捕捉される同じ細胞での、様々な癌部位特異的マーカーの再染色によって判定することができる。一部の例は、(i)前立腺癌を特異的に同定するためのPSMAに対する抗体の使用、(ii)肺癌を特異的に同定するためのPDX-1に対する抗体の使用、(iii)卵巣癌のためのCA125に対する抗体、及び(iv)神経膠腫を同定するためのクロロトキシンである。
【0107】
[00148]同様に、癌が寛解中のときに癌の早期再発を判定するために、CAMLを使用することができる。現在、CT、MRI及びPET画像化が患者の腫瘍をモニタリングするために使用されているが、差に注目するために腫瘍のサイズがかなり変化することを必要とする。したがって、かすかなサイズの変化だけが起こるときには、患者は治療を開始するにあたって貴重な時間を浪費する可能性がある。CAMLは、単独で又はCTCと組み合わせて、癌の再発の早期検出を提供することができる。CAML及びCTCの非侵襲的血液検査は、CT、MRI及びPET画像化より費用面でかなり低い。
【0108】
[00149]癌細分類又は遺伝子の突然変異、転座若しくは増幅を判定するために、CAMLを潜在的に使用することもできる。各CAMLに、いくつかの癌性の核がある。したがって、遺伝子突然変異、遺伝子欠損及び遺伝子転座のための核の分子分析は、治療を判定するための情報を提供することができる。ある特定の遺伝子突然変異、転座又は増幅を特異的に標的にする薬物がある。CAMLは、分子分析のために、CTCと一緒に、又はそれと並行して使用することができる。
【0109】
[00150]本発明の関連する態様及び実施形態では、生物学的試料の量は、試料の供与源及び/又はアイデンティティに基づいて異なる。しかし、末梢血の場合、血液の量は、約0.5ml~約50ml、約1ml~約40ml、約2ml~約30ml、約3ml~約25ml、約4ml~約20ml、約5ml~約15ml、約6ml~約10ml又は約7ml~約8mlの範囲内であってもよい。適する量は、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10mlも含む。CTCの検出のために一般的に使用される血液量は、7.5mLである。より大きな血液量はより多くの感度及び一貫性を提供するが、3.5mLなどのより小さい量で十分であり得る。多くのCTC検出方法のためには、様々な理由のために、より大きな血液量は実際的でない。しかし、CTC及び/又はCAMLを捕捉するための血液の精密濾過は、試料サイズを増加させるためにより多くの柔軟性を可能にする。160,000個の孔を有するセルシーブ(商標)マイクロフィルターを使用して、50mLの血液量のスクリーニングに成功を収めたことが示されている。CAMLを捕捉するのに適する血液量は、7.5mlであろう。
【0110】
[00151]本発明の関連する態様及び実施形態では、抗癌治療薬は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ワクチン療法、標的療法及び/又は療法の組合せのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0111】
[00152]本発明の関連する態様及び実施形態では、CAMLは、サイズ排除方法、免疫捕捉、赤血球溶解、白血球消失、FICOLL、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー及びマイクロ流体チップ、又はこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の手段を使用して検出及び/又は収集される。特定の態様では、サイズ排除方法は、マイクロフィルターの使用を含む。適するマイクロフィルターは、様々な孔径及び形状を有することができる。CAMLだけが検出及び/又は収集されるときは、孔径は約15ミクロン~約20ミクロンの範囲内であってもよい。CAMLとCTCの両方が検出及び/又は収集されるときは、孔径は、約5ミクロン~約10ミクロン、好ましくは7~8ミクロンの範囲内であってもよい。大きな方の孔径は、フィルター上の大部分のWBC汚染を排除する。孔は、円形、レーストラック形、卵形、四角及び長方形の孔形状を有することができる。好ましい態様では、マイクロフィルターは精密孔配置及び均一な孔分布を有する。特定の態様では、CAMLは、物理的サイズに基づく選別、流体力学的サイズに基づく選別、グループ分け、トラッピング、免疫捕捉、大細胞の濃縮、又はサイズに基づく小細胞の排除に基づくマイクロ流体チップを使用して、検出及び/又は収集される。特定の態様では、CAMLは、セルシーブ(商標)低圧精密濾過アッセイを使用して検出及び/又は収集される。
【0112】
[00153]本明細書に報告される結果は、CAMLが癌存在の確固とした指標を提供するという考えを裏付ける。CAMLの有用性の感度及び特異性は、CTC及びWBCに結合したCTCの同時検出と組み合わせてさらに改善することができる。癌スクリーニングは、徴候も症状もないが、前症候的又は無認識症候的疾患を有する個体で、無認識疾患を同定するために集団で使用される戦略である。このように、スクリーニング検査はそれらが見かけ上健康な者で実行されるという点で、若干特異である。スクリーニング検査は、診断検査でない。診断検査は、その疾患を有することが疑われる個体で疾患の存在を確認又は判定するために実行される手法である。CAMLは、他のスクリーニング技術、例えばマンモグラフィー、PSA検査、CA125の存在、CT、MRI又はPET画像化を確認するために、追加の非侵襲的診断を提供する癌診断として使用することができる。
図1
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図7
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図33B
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図42
【外国語明細書】