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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040320
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】動力伝達機構
(51)【国際特許分類】
   B63H 23/26 20060101AFI20230315BHJP
   B63H 1/10 20060101ALI20230315BHJP
   B63H 3/00 20060101ALI20230315BHJP
   B63H 1/14 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B63H23/26
B63H1/10
B63H3/00 Z
B63H3/00
B63H1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020033162
(22)【出願日】2020-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】横引 貴史
(57)【要約】
【課題】 より容易に駆動部への液体の流入を抑制することができる動力伝達機構を提供する。
【解決手段】 動力伝達機構1は、海水2内で稼働する動力伝達機構1であって、動力を発生させる駆動部10と、駆動部10を収容し、動力伝達機構1が海水2内で稼働する場合に駆動部10より上方に位置する開口部22が設けられる容器20と、容器20に収容され、海水2より比重が大きく、非電気伝導性の性質を有し、海水2と互いに混ざり合わない液体であって、動力伝達機構1が海水2内で稼働する場合に駆動部10全体が浸かるように設けられる電気絶縁油30と、開口部22を通って容器20の外部に突出し、駆動部10によって発生する動力又は動力によって動く物質を当該外部に伝達する突出部40と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体内で稼働する動力伝達機構であって、
動力を発生させる駆動部と、
前記駆動部を収容し、前記動力伝達機構が前記第1液体内で稼働する場合に前記駆動部より上方に位置する開口部が設けられる容器と、
前記容器に収容され、前記第1液体より比重が大きく、非電気伝導性の性質を有し、前記第1液体と互いに混ざり合わない液体であって、前記動力伝達機構が前記第1液体内で稼働する場合に前記駆動部全体が浸かるように設けられる第2液体と、
前記開口部を通って前記容器の外部に突出し、前記駆動部によって発生する動力又は動力によって動く物質を当該外部に伝達する突出部と、
を備える、動力伝達機構。
【請求項2】
前記第1液体内で推進力を発生させる推進部をさらに備え、
前記突出部は、前記駆動部によって発生する動力により回転する回転軸を有し、
前記推進部は、前記容器の外部に設けられると共に前記回転軸に接続されるシュナイダープロペラ及びスクリュープロペラを有する、請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項3】
前記シュナイダープロペラは、角度を変更可能な複数の第1回転翼を有し、
前記スクリュープロペラは、角度を変更可能な複数の第2回転翼を有し、
それぞれ互いに対応する前記第1回転翼の端部と前記第2回転翼の端部とは、それぞれ角度を変更可能に嵌合している、請求項2に記載の動力伝達機構。
【請求項4】
前記突出部は、
前記回転軸に対して移動可能なように設けられる第1部材と、
前記第1部材の動きに合わせて前記回転軸に対して前記回転軸の径方向に移動可能なように前記第1部材に連結された第1調整部と、
前記第1部材の動きに合わせて前記回転軸に対して前記回転軸の軸方向に移動可能なよう前記第1部材に連結された第2調整部と、
をさらに有し、
前記シュナイダープロペラは、前記第1調整部の移動に応じて角度を変更可能なように前記第1調整部と連結された第1回転翼を有し、
前記スクリュープロペラは、前記第2調整部の移動に応じて角度を変更可能なように前記第2調整部と連結された第2回転翼を有する、請求項2又は3に記載の動力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体内で稼働することができる動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、推進力を3次元方向に調節することを目的とした、可変ピッチプロペラが知られている。例えば、特許文献1には、ハブを介してプロペラ翼が配置されているプロペラ回転軸と、プロペラ回転軸を回転させる原動機(駆動部)とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-265096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に記載の可変ピッチプロペラを水の中を推進する水中ロボットへ適用した場合、駆動部が水中ロボットの収容部内に設けられることが考えられる。推進力を生むプロペラ翼は収容部外の水の中に位置する必要があるため、プロペラ翼と駆動部とを接続する回転軸は、収容部に設けられた開口部を通るようにして設けられる。収容部内への水の流入に伴って発生する駆動部の機能不全を抑制するため、開口部において回転軸と収容部との間に生じた隙間は、シール部材等により塞がれる必要がある。
【0005】
しかしながら、収容部に設けられた開口部及び回転軸の加工精度によっては、開口部において回転軸と収容部との間に生じた隙間の大きさ又は形状にばらつきがある。このため、シール部材により当該隙間を塞ぐ場合、シール部材の大きさ、形状、数量等を可変ピッチプロペラごとに変更する必要があり、シール部材に係る設計工数及び施工工数が増大する可能性がある。回転軸と収容部との間に生じた隙間がシール部材により適切に塞がっていないとき、水が容易に収容部内に流入し、駆動部が適切に機能しなくなることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、より容易に駆動部への液体の流入を抑制することができる動力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る動力伝達機構は、第1液体内で稼働する動力伝達機構であって、動力を発生させる駆動部と、駆動部を収容し、動力伝達機構が第1液体内で稼働する場合に駆動部より上方に位置する開口部が設けられる容器と、容器に収容され、第1液体より比重が大きく、非電気伝導性の性質を有し、第1液体と互いに混ざり合わない液体であって、動力伝達機構が第1液体内で稼働する場合に駆動部全体が浸かるように設けられる第2液体と、開口部を通って容器の外部に突出し、駆動部によって発生する動力又は動力によって動く物質を当該外部に伝達する突出部と、を備える。
【0008】
本発明に係る動力伝達機構が第1液体内に配置された場合、駆動部は第2液体に浸かり、容器の開口部は駆動部より上方に位置する。動力伝達機構が第1液体内で稼働しているとき、容器の開口部を通る突出部と容器との間に隙間が生じている場合、当該隙間より第1液体が流入する可能性がある。このとき、第2液体は、第1液体より比重が大きく、第1液体と混ざり合わないため、第2液体は容器に流入した第1液体の下方に位置し続ける。駆動部は、非電気伝導性の性質を有する第2液体に浸かっているため、駆動部は第1液体の影響を受けることなく駆動することができる。よって、本発明に係る動力伝達機構によれば、より容易に駆動部への第1液体の流入を抑制することができる。
【0009】
動力伝達機構は、第1液体内で推進力を発生させる推進部をさらに備え、突出部は、駆動部によって発生する動力により回転する回転軸を有し、推進部は、容器の外部に設けられると共に回転軸に接続されるシュナイダープロペラ及びスクリュープロペラを有することとしてもよい。この構成によれば、シュナイダープロペラ及びスクリュープロペラはそれぞれ回転軸に接続されるため、シュナイダープロペラ及びスクリュープロペラは、回転軸の回転に伴い、推進力を発生させることができる。このように、シュナイダープロペラ及びスクリュープロペラが同一の回転軸を中心に回転するため、動力伝達機構において少なくとも回転する方向の力を発生させる駆動部を備えるだけで3次元的な動きを実現することができる。
【0010】
シュナイダープロペラは、角度を変更可能な複数の第1回転翼を有し、スクリュープロペラは、角度を変更可能な複数の第2回転翼を有し、それぞれ互いに対応する第1回転翼の端部と第2回転翼の端部とは、それぞれ角度を変更可能に嵌合していることとしてもよい。この構成によれば、第1回転翼の端部と第2回転翼の端部とがそれぞれ角度を変更可能に嵌合する。第1回転翼及び第2回転翼がシュナイダープロペラ及びスクリュープロペラによって発生した推進力の影響を受けた場合であっても、当該嵌合により、より強固に第1回転翼及び第2回転翼を支持することができる。よって、この構成によれば、シュナイダープロペラとスクリュープロペラとが同一の回転軸を用いて同一の回転軸を中心に回転した場合であっても、安定した推進力を得ることができる。
【0011】
突出部は、回転軸に対して移動可能なように設けられる第1部材と、第1部材の動きに合わせて回転軸に対して回転軸の径方向に移動可能なように第1部材に連結された第1調整部と、第1部材の動きに合わせて回転軸に対して回転軸の軸方向に移動可能なよう第1部材に連結された第2調整部と、をさらに有し、シュナイダープロペラは、第1調整部の移動に応じて角度を変更可能なように第1調整部と連結された第1回転翼を有し、スクリュープロペラは、第2調整部の移動に応じて角度を変更可能なように第2調整部と連結された第2回転翼を有することとしてもよい。この構成によれば、第1部材を回転軸に対して回転軸の径方向に移動させることにより、第1回転翼が角度を変更することができる。第1部材を回転軸に対して回転軸の軸方向に移動させることにより、第2回転翼が角度を変更することができる、よって、この構成よれば、より簡易な構成でシュナイダープロペラ及びスクリュープロペラのそれぞれの回転翼の角度を制御できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より容易に駆動部への液体の流入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る動力伝達機構を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る動力伝達機構の突出部及び推進部の上方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る動力伝達機構の突出部及び推進部の下方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る動力伝達機構の突出部及び推進部の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る動力伝達機構の突出部及び推進部の分解図である。
図6図6の(A)は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構が設けられた水中ロボットの概略正面図である。図6の(B)は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構が設けられた水中ロボットの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面と共に本発明に係る動力伝達機構の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
本実施形態に係る動力伝達機構は、第1液体内で稼働すると共に動力を発生させる機構である。動力伝達機構は、本実施形態に係る動力伝達機構は、例えば、海水(第1液体の一例)中を航行する水中ロボットにおいて推進力となる動力(例えば、プロペラ等を動かす力)を発生させる機構である。水中ロボットは、例えば、自律航行型水中多目的ロボット(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)、又は水中TVカメラロボット(ROV/ROVS:Remotely Operated Vehicle)である。図1に、本実施形態に係る動力伝達機構1を模式的に示す。動力伝達機構1は、動力伝達機構1が設けられた水中ロボット(不図示)が海水2内(海中)を航行できるように海水2内で稼働する。図1に示すように、動力伝達機構1が稼働する際には、動力伝達機構1の外部には海水2がある。以降の説明では、上下の方向については、動力伝達機構1が海水2内で稼働する場合であって、図1に示す姿勢を基準に説明する。なお、下方は、重力がかかる方向である。以下、上下方向に直交する方向を水平方向と記載する場合がある。
【0016】
動力伝達機構1は、駆動部10と、容器20と、電気絶縁油30(第2液体の一例)と、突出部40と、推進部80とを備える。
【0017】
駆動部10は、動力を発生させる装置である。駆動部10は、例えば、モータ又はポンプである。本実施形態では、駆動部10は電動モータであるとして説明する。駆動部10は、例えば、メインモータ11、第1モータ12、第2モータ13、及び第3モータ14を有する。メインモータ11、第1モータ12、第2モータ13、及び第3モータ14は、例えば、従来の水中ロボット等に用いられる電動モータと同一の構成及び機能を有する。メインモータ11が発生させる動力の大きさは、例えば、第1モータ12、第2モータ13、及び第3モータ14のそれぞれが発生させる動力の大きさより大きい。メインモータ11、第1モータ12、第2モータ13、及び第3モータ14の詳細については後述する。動力伝達機構1は、駆動部10を稼働させるため、駆動部10に接続される電源(不図示)を備えていてもよい。
【0018】
容器20は、駆動部10及び電気絶縁油30を収容する。容器20は、突出部40の一部を収容する。容器20は、例えば直方体の箱状の部材である。容器20は、例えば、海水2中の水圧に耐えられるような十分な厚さの壁面で覆われている。容器20の内部には、空間21が形成されている。空間21には、駆動部10及び電気絶縁油30が収容される。駆動部10は、例えば、空間21内における容器20の底部上に配置される。
【0019】
容器20には、空間21内に配置された駆動部10より上方に位置する1又は複数の開口部22が設けられる。本実施形態における容器20には、1つの円形の開口部22が設けられている。開口部22は、突出部40を通す開口である。開口部22は、例えば、容器20の上面に設けられる。容器20に設けられる開口部22の数及び形状は、それぞれ突出部40の数及び形状に応じて変えられてもよい。容器20は、開口部22以外の部分から海水2が容器20の空間21内に流入せず、かつ、電気絶縁油30が容器20の外部には流出しないようになっている。
【0020】
電気絶縁油30は、駆動部10を海水2に接触させないために用いられる液体である。電気絶縁油30は、容器20の空間21内に収容される。電気絶縁油30は、海水2より比重が大きく、非電気伝導性の性質を有し、海水2と混ざり合わない液体である。電気絶縁油30は、海水2より比重が大きく、海水2と混ざり合わない液体であるため、海水2と電気絶縁油30とが同一の容器内に存在する場合、電気絶縁油30は、海水2より下方に位置することになる。海水2が海水である場合、電気絶縁油30は疎水性の性質を有する。電気絶縁油30は、例えば、JIS C 2320において規格化されている油である。電気絶縁油30は、信越化学工業株式会社が製造するシリコンオイル「HIVAC F-4」が一例として挙げられる。1気圧かつ4℃の純水を基準としたとき、当該シリコンオイルは、1気圧かつ25℃における比重が1.065である。当該シリコンオイルは、絶縁破壊強さが50kV以上/2.5mmである。なお、1気圧かつ4℃の純水を基準としたとき、1気圧かつ24℃の海水2の比重は、例えば、1.024である。
【0021】
電気絶縁油30は、動力伝達機構1が海水2内で稼働する場合に駆動部10全体が浸かるように設けられる。電気絶縁油30の液面は、駆動部10より上方に位置する。電気絶縁油30の液面は、例えば、駆動部10より上方であって、かつ、開口部22と同一の位置又は開口部22より下方に位置する。駆動部10が容器20の底部上に設けられることから、電気絶縁油30は、容器20の空間21を底部から駆動部10の上方まで少なくとも満たす。電気絶縁油30は、例えば、容器20の空間21内をすべて満たしてもよい。動力伝達機構1が傾斜し、電気絶縁油30の液面が傾斜した場合であっても、駆動部10が電気絶縁油30の液面の下方に位置するように、電気絶縁油30は容器20内に収容される。電気絶縁油30が非電気伝導性の性質を有することから、電動の駆動部10は電気絶縁油30に浸かっている状態であっても動力を発生することができる。なお、電動の駆動部10は、海水2に浸かると動力を発生させることができない。
【0022】
突出部40は、開口部22を通って容器20の外部に突出する。突出部40は、駆動部10によって発生する動力を容器20の外部に伝達する。突出部40は、容器20の空間21内における駆動部10に接続する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構1の突出部40及び推進部80の上方から見た斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構1の突出部40及び推進部80の下方から見た斜視図である。なお、図3では後述のガイド63の記載を省略している。突出部40は、駆動部10において発生した動力を推進部80の各部位に伝達する機能を有する。突出部40は、回転軸部41(回転軸の一例)、第1部材50、第1調整部60及び第2調整部70を有する。推進部80は、海水2内で推進力を発生させる。推進部80は、突出部40を通じて伝達された、駆動部10において発生した動力を水中ロボットの推進力に置換する機能を有する。推進部80は、例えば、水中ロボットを3次元方向に推進させる力を発生させる。
【0024】
まず、推進部80の推進力を発生させる回転軸部41ついて説明する。回転軸部41は、駆動部10のメインモータ11に接続する。回転軸部41は、例えば、メインモータ11によって発生する動力により回転する。回転軸部41は、上下方向に延在する。回転軸部41は、例えば、メインモータ11から上方に向かって延在する。回転軸部41は、開口部22を通って容器20の外部に突出する。
【0025】
図4は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構1の突出部40及び推進部80の回転軸部41の回転軸線を通る平面での断面図である。図5は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構1の突出部40及び推進部80の分解図である。図5の分解図は、突出部40及び推進部80を構成する部材の形状及び配置を説明するための図である。図4及び図5に示すように、回転軸部41は、例えば、段付き円筒状の形状を有する。回転軸部41は、回転下段部42、回転下段部42の上端に接続した回転中段部44、及び回転中段部44の上端に接続した回転上段部46を有する。回転下段部42、回転中段部44及び回転上段部46は、それぞれ円筒状の部位である。回転軸部41は、上下方向に延在し、回転下段部42、回転中段部44及び回転上段部46の径方向の中央を通る回転軸線を中心に回転する。以下、回転軸部41の回転方向を、「回転方向R」と記載する場合がある。回転方向Rは、例えば、水平方向に延びる平面において、回転軸部41の回転軸線を中心とした回転方向を指す。
【0026】
回転下段部42、回転中段部44及び回転上段部46は、それぞれ内部に空間42a,44a,46aを有する。空間42a,44a,46aは、連続した空間である。回転下段部42の内径は、例えば、回転中段部44の内径より小さい。回転中段部44の内径は、例えば、回転上段部46の内径より小さい。回転中段部44は、回転下段部42の上端の外縁から回転中段部44の下端の外縁を覆う底部を有する。回転上段部46は、回転中段部44の上端の外縁から回転上段部46の下端の外縁を覆う底部46bを有する。
【0027】
回転中段部44及び回転上段部46は、例えば、容器20の外部であって、容器20の上方に設けられる。回転下段部42は、例えば、メインモータ11に接続し、開口部22を通って容器20の外部に突出する。回転下段部42における容器20内に位置する部位は、電気絶縁油30に浸かっている。開口部22は、例えば、回転下段部42の外径よりわずかに大きい径を有する円形の開口である。本実施形態では、開口部22において、容器20と回転下段部42との間に隙間が生じていても、当該隙間はシール部材により塞がれていない。すなわち、動力伝達機構1は、シールレスの構造を有する。なお、開口部22における当該隙間はシール部材により塞がれていてもよい。
【0028】
ここで、第1部材50、第1調整部60及び第2調整部70の説明より先に、回転軸部41と共に回転方向Rに回転する推進部80の説明を行う。推進部80は、シュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91を有する。シュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91は、容器20の外部に設けられると共に回転軸部41に接続される。シュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91は、メインモータ11によって発生する動力により回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転する。
【0029】
シュナイダープロペラ81は、海水2内で水平方向への推進力を発生させる。シュナイダープロペラ81は、回転台部82、複数の第1回転翼83、複数の第1係合部材85、及び複数の第1連結部材86(第1回転翼83の端部の一例)を有する。シュナイダープロペラ81は、回転台部82に設けられた第1回転翼83が回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転することで、海水2内で水平方向への推進力を発生させる。以下、シュナイダープロペラ81の回転方向Rの回転に関連する部材を説明する。
【0030】
回転台部82は、回転軸部41の回転の力を第1回転翼83に伝達するための部材である。図4及び図5に示すように、回転台部82は、回転軸部41に固定(接続)される。回転台部82は、回転軸部41の回転軸線を中心に回転軸部41と共に回転方向Rに回転する。回転台部82は、例えば、円盤状の形状である。回転台部82の外径は、回転軸部41の回転上段部46の内径と略同一である。回転台部82は、回転上段部46の上端に固定されて嵌まっており、水平方向に延在する。回転台部82は、例えば、上下方向においてその上面の位置と回転上段部46の上端の位置とが一致するように、回転上段部46の空間46a内に固定される。回転台部82の中央部には、上下方向に貫通する中央開口82aが形成される。中央開口82aは、例えば、上方から見て、例えば円形の形状である。中央開口82aには、第2調整部70の後述の第2部材71が挿入される。
【0031】
回転台部82の円形の面における径方向外側には、上下方向に貫通する複数の軸用開口82bが形成される。各軸用開口82bは、各第1回転翼83の角度を、回転台部82に対して変更できるように回転台部82に固定させるための開口である。詳しくは後述する。各軸用開口82bは、例えば、上方から見て、例えば円形の形状である。
【0032】
図2図4に示すように、複数の第1回転翼83は、回転台部82と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転することで、推進力を発生させる。また、各第1回転翼83は、上下方向に延在しており、回転台部82に対して第1回転翼83の長手方向に延びる回転軸線を中心として角度を変更することで、推進力の大きさ及び向きを変更させる。詳しくは後述する。各第1回転翼83は、例えば、本実施形態で説明する構成を除いて従来のシュナイダープロペラの翼の部位と同様の形状をしている。第1回転翼83の数は、適宜設定されればよく、例えば4枚である。各第1回転翼83は、回転台部82の上側に、回転台部82の回転方向Rにおいて、各軸用開口82bの位置に設けられ、他の第1回転翼83とは間隔を開けて設けられる。なお、第1回転翼83は、シュナイダープロペラ81における翼(羽、羽根、ブレード)を指す。
【0033】
回転台部82と第1回転翼83との接続関係を以下に説明する。各第1回転翼83の基端(根元)側の部位である第1翼軸84は、回転台部82に対して第1回転翼83の長手方向に延びる回転軸線を中心として回転可能に接続される。当該回転によって第1回転翼83の角度が変えられる。各第1翼軸84は、例えば、円柱状の部位である。各第1翼軸84は、上下方向に延在し、回転台部82の軸用開口82bを通って回転台部82の下方まで延在する。各軸用開口82bの径は、各第1翼軸84の径と略同一である。このように、各第1翼軸84が軸用開口82bに挿入されて嵌合することで、各第1回転翼83は、回転台部82と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転することができる。また、各第1回転翼83は、回転台部82に対して各第1翼軸84の上下方向に延在する回転軸線を中心に回転する。以下、当該第1翼軸84の回転方向を、「第1変更方向C1」と記載する場合がある。第1変更方向C1は、例えば、水平方向に延びる平面において、第1翼軸84の回転軸線を中心とした第1回転翼83の角度が変わる方向を指す。
【0034】
このように、シュナイダープロペラ81の第1回転翼83は、第1変更方向C1に角度を変更可能に回転台部82に接続されると共に、回転台部82と共に回転軸部41の回転軸線を中心とした回転方向Rに回転することができる。
【0035】
スクリュープロペラ91は、海水2内で上下方向への推進力を発生させる。スクリュープロペラ91は、例えば、可変ピッチプロペラである。スクリュープロペラ91は、回転棒部92、複数の第2回転翼93、複数の第2係合部材95、及び複数の第2連結部材96(第2回転翼93の端部の一例)を有する。スクリュープロペラ91は、回転棒部92に接続された第1回転翼83が回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転することで、海水2内で水平方向への推進力を発生させる。以下、スクリュープロペラ91の回転方向Rの回転に関連する部材を説明する。
【0036】
回転棒部92は、回転軸部41の回転の力を第2回転翼93に伝達するための部材である。図4及び図5に示すように、回転棒部92は、例えば、上端部を除いて細長い円筒状の形状を有し、上下方向に延在する。回転棒部92は、回転台部82上に固定(接続)される。回転棒部92は、回転軸部41の回転軸線を中心に回転軸部41と共に回転方向Rに回転する。回転棒部92の径方向の中心を通る回転棒部92の回転軸線は、例えば、回転台部82の回転軸線と略一致する。
【0037】
回転棒部92の中央の内部には、上下方向に貫通する中央空間92aが形成される。中央空間92aは、例えば、円柱状の形状である中央空間92aは、中央開口82aと連続している。詳しくは後述する。
【0038】
回転棒部92の上端部は、直方体状の形状である。回転棒部92の上端部の上下方向に延在する複数の面には、それぞれ径方向に貫通する軸用開口92bが形成される。各軸用開口92bは、例えば円形の形状である。各軸用開口92bは、各第2回転翼93を、回転棒部92に固定させるための開口である。詳しくは後述する。
【0039】
図2図4に示すように、複数の第2回転翼93は、回転棒部92と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転することで、推進力を発生させる。また、各第2回転翼93は、水平方向に延在しており、回転棒部92に対して第2回転翼93の長手方向に延びる回転軸線を中心として回転して、角度を変更することで、推進力の大きさ及び向きを変更させる。詳しくは後述する。各第2回転翼93は、例えば、本実施形態で説明する構成を除いて従来のスクリュープロペラの翼の部位と同様の形状をしている。第2回転翼93の数は、適宜設定されればよく、例えば4枚である。各第2回転翼93は、回転棒部92の回転方向Rにおいて、他の第2回転翼93とは間隔を開けて設けられる。なお、第2回転翼93は、スクリュープロペラ91における翼(羽、羽根、ブレード)を指す。
【0040】
回転棒部92と第2回転翼93との接続関係を以下に説明する。各第2回転翼93の基端(根元)側の部位である第2翼軸94は、回転棒部92に対して第2回転翼93の長手方向に延びる回転軸線を中心として回転可能に接続される。当該回転によって第2回転翼93の角度が変えられる。各第2翼軸94は、例えば、円柱状の部位である。各第2翼軸94は、水平方向に延在し、回転棒部92の軸用開口92bを通って回転棒部92の中央空間92aに到達しない位置まで延在する。各軸用開口92bの径は、各第2翼軸94の径と略同一である。このように、各第2翼軸94が軸用開口92bに挿入されて嵌合することで、各第2回転翼93は、回転棒部92と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転することができる。また、各第2回転翼93は、回転棒部92に対して各第2翼軸94の長手方向に延在する回転軸線を中心に回転する。以下、当該第2翼軸94の回転方向を、「第2変更方向C2」と記載する場合がある。第2変更方向C2は、例えば、各第2翼軸94の延在方向に直交して上下方向に延びる平面において、第2翼軸94の回転軸線を中心とした第2回転翼93の角度が変わる方向を指す。
【0041】
このように、スクリュープロペラ91の第2回転翼93は、第2変更方向C2に角度を変更可能に回転台部82に接続されると共に、回転棒部92と共に回転軸部41の回転軸線を中心とした回転方向Rに回転することができる。
【0042】
ここで、シュナイダープロペラ81の各第1回転翼83の端部(第1連結部材86)とスクリュープロペラ91の各第2回転翼93の端部(第2連結部材96)とは、それぞれ角度を変更可能に嵌合している。各第1連結部材86は、スクリュープロペラ91の各第2回転翼93に設けられた第2連結部材96と連結するための部材である。各第1連結部材86は、例えば、角部が丸みを帯びた平板状の部材である。回転台部82の径方向が、第1連結部材86の厚み方向である。各第1連結部材86は、各第1回転翼83の上端に設けられる。各第1連結部材86には、回転棒部92から見て各第2回転翼93の延在方向(水平方向)に穴部86aが形成されている。穴部86aは、例えば、当該延在方向から見て円形である。穴部86aは、例えば、内面が球面状に構成されている。穴部86aは、例えば、回転台部82の径方向において、各第1連結部材86の内側と外側とを貫通する。各第1連結部材86の穴部86aは、例えば、上下方向において回転棒部92の軸用開口92bと同一の位置に形成される。
【0043】
各第2連結部材96は、シュナイダープロペラ81の各第1回転翼83に設けられた第1連結部材86と連結するための部材である。各第2連結部材96は、例えば、球状の部材である。各第2連結部材96は、各第2回転翼93の径方向の外側の端部に設けられる。各第2連結部材96は、各第1連結部材86の穴部86a内に入り込むことで、各第1連結部材86と嵌合する。各第2連結部材96の先端部は、例えば、各穴部86aより回転台部82の径方向の外側に突出する。
【0044】
第1連結部材86の穴部86aは、第1回転翼83が第1変更方向C1に回転したときにも、(第1回転翼83及び第1連結部材86の穴部86aの配置によって)球面状の空間の位置が変わらないようにされる。一方で、第2連結部材96は、第2回転翼93が第2変更方向C2に回転したときにも、(第2回転翼93及び第2連結部材96の配置によって)球状の位置が変わらないようにされる。これにより、それぞれ互いに対応する第1回転翼83と第2回転翼93とは、それぞれ角度を変更可能としながらも、連結することができる。なお、上記とは逆に第1回転翼83に球状の連結部材が設けられて、第2回転翼93に球面状の内面を有する連結部材が設けられていてもよい。
【0045】
再び図4及び図5を参照して、シュナイダープロペラ81の第1回転翼83とスクリュープロペラ91の第2回転翼93とのそれぞれの角度を変更させるために設けられた第1部材50、第1調整部60及び第2調整部70の説明を行う。第1部材50は、駆動部10において発生した動力により、第1調整部60を通じて、シュナイダープロペラ81の第1回転翼83の角度を変更する部材である。また、第1部材50は、駆動部10において発生した動力により、第2調整部70を通じて、スクリュープロペラ91の第2回転翼93の角度を変更する部材である。第1部材50は、上下方向に延在する部材である。第1部材50は、例えば、棒状の部材である。
【0046】
第1部材50の下端は、駆動部10の第1モータ12、第2モータ13及び第3モータ14に接続する。ここで、第1モータ12は、第1部材50の下端を、水平方向のうちの一方向(以下、第1方向と記載する)に移動させる力を発生させる。第2モータ13は、第1部材50の下端を、水平方向において第1方向に直交する他方向(以下、第2方向と記載する)に移動させる力を発生させる。第1部材50の下端は、第1モータ12及び第2モータ13によって発生する動力により回転軸部41の径方向に自在に移動することができる。第3モータ14は、第1部材50の下端を、上下方向に移動させる力を発生させる。これにより、第3モータ14は、第1部材50を上下方向に移動させる力を発生させる。第1部材50は、回転軸部41内の空間42a,44a,46aに収容される。第1部材50は、回転軸部41内の空間42a,44a,46aを通って容器20の外部に突出する。
【0047】
図3図5に示すように、第1部材50は、第1延在部52、第1支点部54、第2延在部56、及び第2支点部58を有する。第1延在部52、第1支点部54、第2延在部56、及び第2支点部58は、例えば、上下方向に延在する同一直線上に位置する。第1延在部52は、上下方向に延在する円柱状の部位である。第1延在部52は、その下端において、駆動部10の第1モータ12、第2モータ13及び第3モータ14に接続する。第1延在部52は、例えば、回転下段部42の空間42a内に収容されている。第1支点部54は、第1延在部52の上端に設けられる。第1支点部54は、例えば、球状の部位である。第1支点部54の径は、例えば、第1延在部52の径より大きい。第1支点部54は、例えば、回転下段部42の空間42a内に収容されている。
【0048】
第2延在部56は、上下方向に延在する円柱状の部位である。第2延在部56は、第1支点部54の上端に設けられる。第2延在部56は、回転下段部42の空間42a及び回転中段部44の空間44aの少なくとも一方の内部に収容されている。第2支点部58は、第2延在部56の上端に接続する。第2支点部58は、第1部材50の上端に位置する。第2支点部58は、例えば、球状の部位である。第2支点部58の径は、例えば、第2延在部56の径より大きい。第2支点部58は、例えば、回転中段部44の空間44a及び回転上段部46の空間46aの少なくとも一方の内部に収容されている。
【0049】
ここで、図4及び図5に示すように、第1部材50は、第1軸受部61に支持される。
第1軸受部61は、第1部材50の第1支点部54の中心を回転中心として回転可能に第1支点部54と嵌合する。第1軸受部61は、第1支点部54と嵌合する第1嵌合部材61a、及び第1嵌合部材61aと内部で接合する第1摺動部材61bを有する。第1嵌合部材61aは、例えば、上下方向に開口している円筒状の部材である。第1嵌合部材61aは、例えば、上下方向において、各第1嵌合部材61aの上面から内部の中央、又は各第1嵌合部材61aの下面から内部の中央に向かうにしたがって、内面が第1部材50の第1支点部54の大きさに応じた球面状となるように径が広がるように構成される。第1嵌合部材61aの内部に第1支点部54が回転可能に嵌合する。第1支点部54は球状であるため、第1支点部54は第1嵌合部材61aと嵌合すると共に、第1支点部54の外面と第1嵌合部材61aの内面と当接する位置を変えながら移動する(すなわち、回転する)ことができる。
【0050】
第1摺動部材61bは、例えば、上下方向に開口している円筒状の部材である。第1嵌合部材61aは、第1摺動部材61bの内部に固定されている。第1摺動部材61bの内径は、第1部材50の第1延在部52の外径、第1支点部54の外径及び第2延在部56の外径より大きい。第1摺動部材61bの外径は、回転下段部42の略同一である。これにより、第1摺動部材61bは、回転下段部42に対して水平方向に移動不能に設けられている。また、第1摺動部材61bは、回転軸部41の空間42a内において、回転下段部42の内壁に沿って上下方向に摺動することができる。
【0051】
第1部材50の第1支点部54が上下方向に移動するとき、第1支点部54が第1嵌合部材61aに嵌合していることから、第1摺動部材61bは、第1支点部54及び第1嵌合部材61aと共に上下方向に移動する。このように、第1軸受部61は、回転軸部41の回転下段部42の空間42a内において、上下方向に移動可能に設けられる。
【0052】
第1部材50の第1支点部54が第1嵌合部材61aに嵌合しており、第1摺動部材61bが水平方向に移動不能に設けられているため、第1部材50は、第1支点部54の中心を中心に傾かせることができる。例えば、第1モータ12により第1方向のうち一方向に第1部材50の第1延在部52が移動するとき、第1部材50は第1支点部54を中心として傾き、第2延在部56及び第2支点部58は当該一方向の逆方向に移動する。第2モータ13により第2方向のうち一方向に第1部材50の第1延在部52が移動するとき、第1部材50は第1支点部54を中心として傾き、第2延在部56及び第2支点部58は当該一方向の逆方向に移動する。
【0053】
第1軸受部61は、回転軸部41と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転するように(すなわち、第1軸受部61は、回転軸部41に対して上下方向にのみ動けるように)なっていてもよい。この場合、第1支点部54は第1支点部54の中心を回転中心として回転可能に第1嵌合部材61aと嵌合しているため、第1支点部54は回転軸部41と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転しない。あるいは、第1軸受部61は、回転軸部41と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転しないように(すなわち、第1軸受部61は、回転軸部41に対して上下方向及び回転方向Rに動けるように)なっていてもよい。
【0054】
第1調整部60は、第1部材50の動きに合わせてシュナイダープロペラ81の第1回転翼83の角度を第1変更方向C1に変更させる機能を有する。第1調整部60は、第1部材50の動きに合わせて回転軸部41及び回転台部82に対して回転軸部41の径方向に移動可能なように第1部材50に連結されている。第1部材50が第1モータ12及び第2モータ13によって発生する動力により回転台部82の径方向に移動するため、第1部材50に連結された第1調整部60は、回転軸部41の径方向に移動することができる。以下、第1調整部60における第1部材50とシュナイダープロペラ81との連結の詳細を説明する。第1調整部60は、第2軸受部62、ガイド63、第1移動部材64、複数の突起部材65及び第2移動部材66を有する。
【0055】
第2移動部材66は、第1移動部材64と共に、第2変更方向C2に第2回転翼93の角度を変更させる機能を有する。第2移動部材66は、例えば、その中央部において上下方向に開口している円盤状の部材である。第2移動部材66は、回転軸部41の回転上段部46の空間46a内に、回転台部82の下方に回転台部82の下面と第2移動部材66の上面とが接するように収容される。第2移動部材66の径は、例えば、回転上段部46の内径より小さい。第2移動部材66は、例えば、第1部材50の移動に合わせて、回転台部82に対して、径方向のうち一方向(以下、第3方向と記載する)に移動する部材である。配置及び移動の詳細は後述する。
【0056】
回転台部82は、下部において、第3方向に延びる1対の凸部82cを有する。各凸部82cは、例えば、第3方向から見て矩形状の凸部である。各凸部82cは、例えば、水平方向において、中央開口82aを挟んで、回転台部82の下面の中心を通る直線上にそれぞれ設けられる。
【0057】
第2移動部材66は、上部において、第3方向に延びる1対の溝部66bを有する。各溝部66bは、例えば、第3方向から見て矩形状の溝である。各溝部66bは、例えば、水平方向において、第2移動部材66に設けられた開口を挟んで、第2移動部材66の上面の中心を通る直線上にそれぞれ設けられる。各溝部66bは、回転台部82の各凸部82cと嵌合する。これにより、各溝部66bと各凸部82cとは、第3方向に相対的に移動可能に嵌合する。これにより、第2移動部材66は、回転台部82に対して第3方向に移動することができる。また、回転台部82の各凸部82cが第2移動部材66の各溝部66bを構成する壁面を回転方向Rに押すことにより、第2移動部材66は、回転台部82と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転する。
【0058】
第1移動部材64は、第2移動部材66と共に、第2翼軸94周りに第2変更方向C2に第2回転翼93の角度を変更させる機能を有する。第1移動部材64は、例えば、その中央部において上下方向に開口している円盤状の部材である。第1移動部材64に設けられた開口の径は、例えば、第2移動部材66に設けられた開口の径と略同一である。第1移動部材64は、回転軸部41の回転上段部46の空間46a内に、第2移動部材66の下側に第2移動部材66の下面と第1移動部材64の上面とが接するように収容される。第1移動部材64の径は、例えば、回転上段部46の内径より小さい。第1移動部材64は、例えば、回転軸部41に対する回転軸部41の径方向への第1部材50の移動に合わせて、回転台部82に対して、第3方向に直交する他方向(以下、第4方向と記載する)に移動する部材である。配置及び移動の詳細は後述する。
【0059】
第2移動部材66は、下部において、それぞれ第4方向に延びる1対の凸部66aを有する。各凸部66aは、例えば、第4方向から見て矩形状の凸部である。各凸部66aは、例えば、水平方向において、第2移動部材66に設けられた開口を挟んで、第2移動部材66の下面の中心を通る直線上にそれぞれ設けられる。
【0060】
第1移動部材64は、上部において、第4方向に延びる1対の溝部64bを有する。各溝部64bは、例えば、第4方向から見て矩形状の溝である。各溝部64bは、例えば、水平方向において、第1移動部材64に設けられた開口を挟んで、第1移動部材64の上面の中心を通る直線上にそれぞれ設けられる。各凸部66aは、第1移動部材64の各溝部64bと嵌合する。各溝部64bと各凸部66aとは、第4方向に相対的に移動可能に嵌合する。これにより、第1移動部材64は、第2移動部材66に対して第4方向に移動することができる。また、上述したように第2移動部材66は、回転台部82に対して第3方向に移動することができるため、第1移動部材64は、回転台部82に対して水平方向の任意の方向に移動することができる。また、第2移動部材66の各凸部66aが第1移動部材64の各溝部64bを構成する壁面を回転方向Rに押すことにより、第1移動部材64は、第2移動部材66及び回転台部82と共に回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転する。
【0061】
各突起部材65は、第1部材50から伝達された力を各第1係合部材85に伝達する。各突起部材65は、例えば円柱状である。各突起部材65は、例えば、第1移動部材64の下面に固定されて設けられ、下方に延在する部材である。各突起部材65は、例えば、第1移動部材64の径方向において、第1移動部材64の下面の中央と第1翼軸84とを結ぶ直線上に設けられる。各突起部材65は、第1移動部材64の径方向への移動と共に径方向へ移動する。
【0062】
ここで、各突起部材65と連結する各第1係合部材85を説明する。各第1係合部材85は、各第1回転翼83の第1翼軸84を第1変更方向C1に回転させる機能を有する。各第1係合部材85は、細長い部材である。各第1係合部材85の一端部は、各第1翼軸84の下端部に固定される。各第1係合部材85の長手方向は、各第1翼軸84の軸方向に対して直交する。各第1係合部材85は、例えば、回転台部82の回転軸線に対して、各第1翼軸84から径方向の内側に延在する。各第1係合部材85の径方向の他端部は、回転台部82の中央開口82aより径方向の外側に位置する。各第1係合部材85は、各第1翼軸84の回転軸線を中心に第1変更方向C1に回転することができる。
【0063】
各第1係合部材85には、上下方向に貫通する穴部85aが形成される。各穴部85aは、例えば、各第1翼軸84と各第1係合部材85とが固定された位置より径方向の内側に位置する。各穴部85aは、各第1係合部材85の長手方向に延びるように形成された細長い穴である。
【0064】
続いて、第1移動部材64、各突起部材65、第2移動部材66及び各第1係合部材85の配置関係を説明する。第1係合部材85は、回転軸部41の回転上段部46の底部46b上に設けられる。各突起部材65は、各第1係合部材85の穴部85aに挿入される。第1移動部材64は第1係合部材85の上方に設けられ、例えば、第1移動部材64の下面は第1係合部材85の上面に接する。上記のように第2移動部材66は第1移動部材64と嵌合すると共に、例えば、第2移動部材66の下面は第1移動部材64の上面と接している。第2移動部材66は回転台部82に嵌合すると共に、例えば、第2移動部材66の上面は回転台部82の下面と接している。このように、第1移動部材64、各突起部材65、第2移動部材66及び各第1係合部材85は、回転軸部41の回転上段部46の底部46bに支持される。
【0065】
なお、各突起部材65は、第1係合部材85に設けられた穴部85a内に挿入されるため、各突起部材65は、穴部85aを形成する第1係合部材85の壁面に当接する。第1係合部材85は、回転台部82に対しては第1翼軸84の回転軸線を中心とした第1変更方向C1への回転しかできないため、各突起部材65が設けられる第1移動部材64が回転台部82に対して水平方向に移動するとき、移動方向によっては、各突起部材65は対応する第1係合部材85の壁面を押す。各突起部材65が各第1係合部材85の壁面を押すことで、第1係合部材85は、第1翼軸84を第1翼軸84の回転軸線を中心に第1変更方向C1に回転させる。
【0066】
再び、第1調整部60の説明を行う。ガイド63は、第1移動部材64に第1部材50の径方向への動きを伝達する。ガイド63は、例えば、円筒状の形状である。ガイド63は、第1移動部材64の下面に固定されて設けられ、下方に延在する。従って、ガイド63は、回転軸部41による回転によって第1移動部材64と共に回転する。ガイド63は、第1移動部材64の下面において、各突起部材65より径方向の内側に設けられる。ガイド63の内部の空間は、第1移動部材64に設けられた開口と第2移動部材66に設けられた開口と連続している。
【0067】
第2軸受部62は、第1部材50から伝達された水平方向の力をガイド63に伝達する部材である。第2軸受部62は、第1部材50の第2支点部58と嵌合する第2嵌合部材62a、及び第2嵌合部材62aと内部で接合する第2摺動部材62bを有する。第2嵌合部材62aは、例えば、上下方向に開口している円筒状の部材である。第2嵌合部材62aは、例えば、上下方向において、各第2嵌合部材62aの上面から内部の中央、又は各第2嵌合部材62aの下面から内部の中央に向かうにしたがって、内面が第1部材50の第1支点部54の大きさに応じた球面状となるように径が広がるように構成される。第2嵌合部材62aの内部に第2支点部58が回転可能に嵌合する。第2支点部58は球状であるため、第2支点部58は第2嵌合部材62aと嵌合すると共に、第2支点部58の外面と第2嵌合部材62aの内面と当接する位置を変えながら移動する(すなわち、回転する)ことができる。
【0068】
第2摺動部材62bは、ガイド63内において上下方向に移動可能(摺動可能)な部材である。第2摺動部材62bは、例えば、上下方向に開口している円筒状の部材である。第2嵌合部材62aは、第2摺動部材62bの内部に固定されている。このため、第2嵌合部材62aが水平方向に移動するとき、第2摺動部材62bも水平方向に移動する。第2摺動部材62bの内径は、第1部材50の第2延在部56の径及び第2支点部58の径より大きい。第2摺動部材62bの外径は、例えば、第1移動部材64に設けられた開口の径より小さい。
【0069】
また、第2摺動部材62bの外径は、ガイド63の内径以下である。すなわち、ガイド63の内面は、第2摺動部材62bの外面に当接又は近接している。これにより、第2摺動部材62bは、ガイド63の内壁に沿って上下方向に摺動することができる。第1部材50の第2支点部58が上下方向に移動するとき、第2支点部58が第2嵌合部材62aに嵌合していることから、第2摺動部材62bは、第2支点部58及び第2嵌合部材62aと共に上下方向に移動する。第2軸受部62は、ガイド63に対して水平方向に回転可能に構成されていても、回転不可能に構成されていてもよい。第2支点部58は第2支点部58の中心を回転中心として回転可能に第2嵌合部材62aと嵌合しているため、第2支点部58は第2軸受部62のガイド63に対する水平方向の回転の影響を受けない。第2軸受部62は、ガイド63が水平方向に移動する場合は、当該移動と同様に移動する。なお、第1部材50の第2支点部58の上部は、第2摺動部材62bの上端から一部突出している。
【0070】
推進部80において、シュナイダープロペラ81の第1回転翼83の角度を変更する過程を説明する。まず、駆動部10の第1モータ12及び第2モータ13により、第1方向への力と第2方向への力とが作用し、第1部材50の第1延在部52の下端が水平方向の一方側に移動する場合を説明する。第1延在部52の下端が水平方向の一方側に移動し、第1部材50が第1支点部54を中心に傾くことで、第2延在部56及び第2支点部58は、第1部材50の傾きの角度の分だけ水平方向の他方側(以下、第5方向と記載する)に移動する。なお、この移動は、回転軸部41の回転とは独立に行われる。第2支点部58と共に第5方向に移動した第2軸受部62は、ガイド63を第5方向に押す。これにより、ガイド63が固定されている第1移動部材64に対して第5方向に力が加わる。
【0071】
第1移動部材64に第5方向に力が加わるとき、第1移動部材64は、各溝部64b,66b及び各凸部66a,82cの作用により、回転台部82に対して水平方向の第5方向に移動する。詳細を説明する。ある時点の第5方向への力は、互いに直交する第3方向及び第4方向にそれぞれ分解される。第1移動部材64の各溝部64bと第2移動部材66の各凸部66aとの延在方向が第4方向であるため、第1移動部材64は、第2移動部材66に対して第4方向に移動する。また、第2移動部材66は、各溝部64bに各凸部66aが押されることで第1移動部材64と共に第3方向に移動する。このとき、第2移動部材66の各溝部66bと回転台部82の各凸部82cとの延在方向が第3方向であるため、第1移動部材64及び第2移動部材66は、回転台部82に対して第3方向に移動する。このように、第1移動部材64及び第2移動部材66が、それぞれある時点の回転台部82に対して第3方向及び第4方向に移動することで、第1移動部材64はある時点の回転台部82に対して第5方向に移動する。
【0072】
当該ある時点において、推進部80の各第1係合部材85における穴部85aが第5方向に延在する場合、第1移動部材64に設けられた各突起部材65は、各第1係合部材85の穴部85a内を第5方向に移動する。当該ある時点において、推進部80の各第1係合部材85における穴部85aが第5方向に延在しない場合、第1移動部材64に設けられた各突起部材65は、穴部85aを形成している各第1係合部材85の壁面を押すことで、各第1係合部材85は各第1翼軸84の回転軸線を中心に第5方向回りで回転させる。当該第1翼軸84が設けられた各第1回転翼83は、各第1翼軸84と同様に回転する。すなわち、各第1回転翼83の角度が、各第1回転翼83の回転に応じて変更される。なお、第3方向及び第4方向は、回転台部82の回転に応じた方向となる。
【0073】
このような構成により、回転台部82が回転軸部41の回転軸線を中心として回転方向Rに回転するときであっても、各溝部64b,66b及び各凸部66a,82cの作用により、突起部材65を水平方向の任意の方向に当該回転の影響を受けずに移動させることができる。すなわち、回転台部82は、第1移動部材64及び第2移動部材66の径方向への移動の影響を受けずに、回転軸線を中心に回転方向Rに回転することができる。径方向への移動の影響を受けないとは、例えば、当該径方向に移動すること又は当該径方向に力が加わることが抑制されることを意味する。また、上述した構成により、第1移動部材64及び第2移動部材66は、回転台部82と共に回転軸部41の回転軸線を中心とした回転方向Rに回転可能に設けられている。第1移動部材64の下面に設けられたガイド63は、第2軸受部62と回転可能に接続する。すなわち、回転台部82が回転するとき、ガイド63、第1移動部材64、複数の突起部材65及び第2移動部材66は、回転台部82と共に回転方向Rに回転し、第2軸受部62は、当該回転の影響を受けない。
【0074】
次に、第2調整部70の説明を行う。第2調整部70は、第1部材50の動きに合わせてスクリュープロペラ91の第2回転翼93の角度を第2変更方向C2に変更させる機能を有する。第2調整部70は、第1部材50の動きに合わせて回転軸部41に対して上下方向に移動可能なように第1部材50に連結されている。第1部材50が第3モータ14によって発生する動力により上下方向に移動するため、第1部材50に連結された第2調整部70は、上下方向に移動することができる。以下、第2調整部70における第1部材50とスクリュープロペラ91との連結の詳細を説明する。
【0075】
図4及び図5に示すように、第2調整部70は、第2部材71、ストッパ72、分岐部材73、複数の第2水平部材74及び複数の第2鉛直部材75を有する。第2部材71は、第1部材50の上下方向の動きを第2調整部70の他の部材に伝達するための部材である。第2部材71は、例えば、上下方向に延在する円柱状の部材である。第2部材71は、第1移動部材64の中央部の開口、第2移動部材66の中央部の開口、回転台部82の中央開口82a及び回転棒部92の中央空間92aを通って、第1調整部60の第2軸受部62から上方に突出している第1部材50の第2支点部58上に設けられている。第2部材71は、回転棒部92の中央空間92a内に上下方向に移動可能に収容される。第2部材71の径は、回転棒部92の内径より小さい。第2部材71の水平方向の周囲には、回転棒部92の内壁があるため、第2部材71は水平方向に移動不能に設けられている。第2部材71は、回転棒部92の上端より上方に突出している。
【0076】
第2部材71は、円盤状の下端部71aを有する。下端部71aは、第2部材71の他の部位に比べて回転台部82の径方向に延在している。下端部71aは、第1調整部60のガイド63内において、第2軸受部62と第1移動部材64との間に設けられる。下端部71aの径の大きさは、第2支点部58がどのように水平方向に移動した場合でも、下端部71aの下側に第2支点部58が位置できるような大きさとされる。下端部71aの径は、例えば、ガイド63の内径より小さく、第1移動部材64の中央部の開口の径より大きい。下端部71aは、例えば、第2支点部58に対して固定されておらず、載置されただけである。第1部材50が第2軸受部62と共に上下方向に移動するとき、下端部71aがガイド63内を上下方向に移動することで第2部材71は上下方向に移動する。
【0077】
ストッパ72は、第2部材71の下端部71aが第1調整部60の第1移動部材64に接触することを抑制する部材である。第2部材71の下端部71aが第1移動部材64に接触すると、回転軸部41の回転の回転に応じた第1移動部材64の回転の際に摩擦が生じるためそれを防止するためのものである。ストッパ72は、例えば、上下方向に貫通している穴部が形成された円筒状の部材である。ストッパ72の外径は、ガイド63の内径より小さく、回転台部82の中央開口82aの径より大きい。ストッパ72の穴部内に、第2部材71が挿入されている。ストッパ72は、第2部材71の下端部71a上に設けられる。すなわち、ストッパ72は、第1調整部60のガイド63内において、第1調整部60の第1移動部材64と第2部材71の下端部71aとの間に位置する。ストッパ72は、例えば、第2部材71の下端部71a上に載置される。ストッパ72は、第2部材71の下端部71aの上下方向の動きに合わせて上下方向に移動する。
【0078】
分岐部材73は、スクリュープロペラ91の複数の第2翼軸94の角度を調整するために、第1部材50から伝達された力を各第2翼軸94に分岐させて伝達させるための部位である。分岐部材73は、例えば、直方体状の形状である。分岐部材73は、第2部材71の上端に設けられる。分岐部材73は、例えば、第2部材71の上端に固定されていない。第2部材71が上下方向に移動するとき、分岐部材73も第2部材71の動きに合わせて上下方向に移動する。
【0079】
各第2水平部材74は、例えば円柱状の形状である。各第2水平部材74は、水平方向に延在する部材である。各第2水平部材74の基端部は分岐部材73の側面に固定されている。各第2水平部材74は、分岐部材73の側面から回転台部82の径方向の外側に向かって延在している。第2部材71が上下方向に移動するとき、各第2水平部材74も第2部材71の動きに合わせて上下方向に移動する。
【0080】
各第2鉛直部材75は、例えば、板状の部材である。各第2鉛直部材75は、上下方向に延在する。各第2鉛直部材75の上端部は、各第2水平部材74の先端部に固定される。各第2鉛直部材75は、例えば、各第2翼軸94の位置まで下方に延在する。各第2鉛直部材75の主面は、回転棒部92の上端部の上下方向に延在する面に対向するように設けられる。第2部材71が上下方向に移動するとき、各第2鉛直部材75も第2部材71の動きに合わせて上下方向に移動する。
【0081】
各第2鉛直部材75は、下端部において、凸部75aを有する。各凸部75aは、例えば、回転台部82の径方向の内側である各第2水平部材74の主面に設けられ、回転棒部92の上端部の上下方向に延在する面に向かって突出する部位である。
【0082】
ここで、各凸部75aと連結するスクリュープロペラ91の各第2係合部材95を説明する。各第2係合部材95は、各第2回転翼93の第2翼軸94を第2変更方向C2に回転させる機能を有する。各第2係合部材95は、細長い板状の部材である。各第2係合部材95の一端部は、各第2翼軸94に固定される。各第2係合部材95の長手方向は、水平方向に延びると共に各第2翼軸94の軸方向に対して直交する。各第2係合部材95の主面は、回転棒部92の上端部の上下方向に延在する面に対向するように設けられる。各第2係合部材95は、各第2翼軸94の回転軸線を中心に第2変更方向C2に回転することができる。
【0083】
各第2係合部材95には、各凸部75aが挿入される穴部95aが形成される。穴部95aは、主面から背面に向かって貫通している。各穴部95aは、各第2係合部材95の長手方向に延びるように形成された細長い穴である。各穴部95aは、各第2翼軸94と各第2係合部材95の一端部とが固定された位置より他端部側に位置する。各凸部75aは、第2係合部材95に設けられた穴部95a内に挿入され、各凸部75aは、穴部95aを形成する第2係合部材95の壁面に当接する。第2係合部材95は、回転棒部92に対しては第2翼軸94の回転軸線を中心とした第2変更方向C2への回転しかできないため、各凸部75aが設けられる第2鉛直部材75が回転棒部92に対して上下方向に移動するとき、各凸部75aは対応する第2係合部材95の壁面を押す。これにより、第2係合部材95は、第2翼軸94の回転軸線を中心に第2変更方向C2に回転させる。なお、各第2係合部材95は、各第2翼軸94の軸方向において各第2鉛直部材75の各凸部75aと連結しており、かつ、各第2翼軸94に固定されているため、第2係合部材95は、分岐部材73、各第2水平部材74、及び各第2鉛直部材75と共に、回転軸部41の回転軸線を中心とした回転方向Rに回転する。
【0084】
推進部80において、スクリュープロペラ91の第2回転翼93の角度を変更する過程を説明する。駆動部10の第3モータ14により第1部材50の第1延在部52の下端が上下方向のうち上方に移動する場合を説明する。第1延在部52の下端が上方に移動するとき、第1支点部54は、第1軸受部61と共に回転下段部42内を上方に移動する。第2延在部56及び第2支点部58は、第2軸受部62と共にガイド63内を上方に移動する。このとき、第2支点部58の外面が第2部材71の下端部71aに当接することにより、第2部材71は上方に押される。第2部材71は、回転棒部92の中央空間92a内を上方に移動する。回転棒部92の上端部が上方に移動することで、回転棒部92の上端部に設けられた分岐部材73、第2水平部材74及び第2鉛直部材75は、それぞれ上方に移動する。
【0085】
各第2鉛直部材75の凸部75aが上方に移動するとき、各凸部75aは、各第2係合部材95の穴部95a内を上方に移動する。各凸部75aは、穴部95aを形成している各第2係合部材95の壁面を上方に押すことで、各第2係合部材95は各第2翼軸94の回転軸線を中心に上方回りで回転させる。当該各第2翼軸94が設けられた第2回転翼93は、各第2翼軸94と同様に回転する。すなわち、第2回転翼93の角度が、第2回転翼93の回転に応じて変更される。なお、駆動部10の第3モータ14により第1部材50の第1延在部52の下端が上下方向のうち下方に移動する場合は、上述の説明における「上方」を「下方」に置き換えた場合と同様である。
【0086】
上述したような構成により、回転棒部92が回転軸部41の回転軸線を中心として回転方向Rに回転するときであっても、第2部材71と分岐部材73とが固定されていないため、各凸部75aを上下方向の任意の方向に当該回転の影響を受けずに移動させることができる。すなわち、分岐部材73が第2部材71に固定されていないため、回転棒部92は、第2調整部70の各部及び各第2係合部材95の移動の影響を受けずに、回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転することができる。また、上述した構成により、第2部材71は第2支点部58上に載置されており、固定されていないため、第2部材71は、第2支点部58の水平方向の移動に合わせて移動しない。第2支点部58が第2軸受部62内で回転した場合であっても、第2支点部58は球状の形状であるため、第2部材71の下端部71aは、第2支点部58上に載置された状態のままとなる。このため、動力伝達機構1は、上述した第1回転翼83の角度を変更させる処理を実行したときにおいても、第2回転翼93の角度を変更させる処理を共に実行することができる。
【0087】
なお、水中ロボットは、駆動部10を制御する制御部(不図示)を備えていてもよい。制御部は、例えば、コンピュータ等のハードウェアを備えて構成されている。制御部は、水中ロボット3を推進させたい方向及び速度に応じた、シュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91の回転速度及びシュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91の回転翼83,93の角度となるように駆動部10を動作させる。また、制御部は、水中での通信モジュールを備えており、制御に係る制御信号を受信して制御を行ってもよいし、予め記憶されたプログラムに従って制御を行ってもよい。
【0088】
容器20、突出部40及び推進部80(を構成する各部材)は、例えば、海水2及び電気絶縁油30により侵食されない金属又は樹脂等の材質の従来の部材でそれぞれ構成されている。
【0089】
なお、第1調整部60の第1移動部材64及び第2移動部材66における各溝部64b,66bは、凸部であってもよい。このとき、第2移動部材66、及び推進部80の回転台部82における各凸部66a,82cは、溝部であってもよい。また、分岐部材73は、第2部材71に固定されていてもよい。このとき、第2部材71は、回転棒部92の回転軸線を中心に回転方向Rに回転する。第2部材71は、回転棒部92の中央空間92a内に挿入されており、第1部材50の第2支点部58上に載置されているため、第2部材71は、回転方向Rに回転する場合であっても、第1部材50の動きに合わせて上下方向に移動することができる。
【0090】
図6の(A)は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構1が設けられた水中ロボット3の概略正面図である。図6の(B)は、本発明の実施形態に係る動力伝達機構1が設けられた水中ロボット3の概略上面図である。水中ロボット3には、例えば、1対の動力伝達機構1が設けられる。水中ロボット3は、海水2内を航行する。各動力伝達機構1は、例えば、水中ロボット3の重心位置から離れた位置に配置される。各動力伝達機構1は、例えば、水中ロボット3の球状の本体部の両側にそれぞれ設けられる。
【0091】
水中ロボット3は、姿勢制御や方向転換のために、水中ロボット3の本体部の中心周りにロールリング、ピッチング、ヨーイングを行う(回転する)ことがある。例えば、水中ロボット3は、ヨーイング方向の制御を行う4自由度の動きを行う。このとき、各動力伝達機構1は、例えば、水中ロボット3のローリング方向及びピッチング方向への影響がないように、水中ロボット3の浮心と同じ水平面で推進力を発生させるように配置される。メインモータ11が発生する力の回転方向が一方向であるとき、1つの動力伝達機構1は、上下方向のうち一方向、及び水平方向への推進力を発生させる。このため、水中ロボット3に設けられた1対の動力伝達機構1のうち、一方の動力伝達機構1は上方及び水平方向への推進力を発生させ、他方の動力伝達機構1は下方及び水平方向への推進力を発生させる。各動力伝達機構1が推進力を互いに反対方向に発生させることで、水中ロボット3は、その本体部の中心周りにヨーイングを行う(回転する)ことができる。このように、水中ロボット3は、2つの動力伝達機構1を有することで、4自由度の動きを実現できる。例えば、上述のように、水中ロボット3は、1対の動力伝達機構1を有することにより、動力伝達機構1が発生させるモーメントを打ち消し、操縦性が向上する。なお、水中ロボット3は、2つ以上の動力伝達機構1を有することで、4自由度以上の動きを実現してもよい。
【0092】
ここで、本実施形態の動力伝達機構1が設けられた水中ロボット3と従来の水中ロボットとの比較を行う。海水2内を移動する水中ロボットには、移動のために、海水2の上下方向、水平方向、及び各方向の回転方向の動きを生み出す必要があった。従来の技術では、シュナイダープロペラを適用することで水平方向への移動することが可能となっていた。しかしながら、1つのシュナイダープロペラが設けられていた水中ロボットでは、上下方向の移動を実現することができなかったため、シュナイダープロペラとは別の回転軸部を設けた上でスクリュープロペラを設けることが考えられた。
【0093】
このとき、駆動部から突出する回転軸部が多くなる場合、駆動部に海水2が流入する可能性が高まるため、流入する箇所を減少させる必要があった。そのため、シュナイダープロペラ及びスクリュープロペラの各回転軸を同一の1つの回転軸にまとめることが考えられるが、各プロペラの翼角を制御する構造も同一の回転軸内で実現させることが困難であった。
【0094】
また、水中ロボットは、上下方向の推進力を最小にして電力の消費を抑えるため、水中での重量が0kg又は0kgよりわずかに軽い重量になるように設計されている。従来の水中ロボットには、各プロペラに対して回転軸部及び駆動部のメインモータが設けられるため、重量が増大する。水中ロボットは、各回転軸及び各メインモータの加重に対して浮力を得るため、浮力を調節するための浮力材をさらに有する必要があった。従来の水中ロボットにおいては、2以上の回転軸、2以上の駆動部のメインモータ及び浮力材が設けられるため、水中ロボットの容易な運用が妨げられると共に、コストが増大していた。また、浮力材は、水中ロボットが水中を移動するときの抵抗となるため、水中ロボットの推進効率が低下し、水中ロボットの電源を増設する原因となっている。
【0095】
本実施形態の突出部40及び推進部80によれば、1つの突出部40に対して、シュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91における各プロペラの回転及び各プロペラの翼角の制御を行うことができる。これにより、突出部40の回転軸部41の数を最小限に抑えることができ、容器20に設けられる開口部22の数を最小限に抑えられるため、駆動部10に対して海水2が流入する可能性を低減させることができる。
【0096】
また、メインモータ11で回転する回転軸部41の数が最小限に抑えられることで、他の第1モータ12、第2モータ13及び第3モータ14より発生させる動力の大きさが大きいメインモータの数を最小限に抑えられる。このとき、水中ロボット3が有する電源についても最小限の規格の電源にすることができ、水中ロボット3が有する浮力材の数も最小限に抑えられる。これらにより、動力伝達機構1を有する水中ロボット3は、従来の水中ロボットに比べて、軽量化、低コスト化、及び小型化を実現できる。また、動力伝達機構1を有する水中ロボット3は、従来の水中ロボットに比べて、高効率な推進力を発生させることができる。
【0097】
以上のように、本実施形態の動力伝達機構1が海水2(第1液体)内に配置された場合、駆動部10は電気絶縁油30(第2液体)に浸かり、容器20の開口部22は駆動部10より上方に位置する。動力伝達機構1が海水2内で稼働しているとき、容器20の開口部22を通る突出部40と容器20との間に隙間が生じている場合、当該隙間より海水2が流入する可能性がある。このとき、電気絶縁油30は、海水2より比重が大きく、海水2と混ざり合わないため、電気絶縁油30は容器20に流入した海水2の下方に位置し続ける。駆動部10は、非電気伝導性の性質を有する電気絶縁油30に浸かっているため、駆動部10は海水2の影響を受けることなく駆動することができる。よって、本実施形態に係る動力伝達機構1によれば、動力伝達機構1が位置する海水2内の深度に依存せず、より容易に駆動部10への海水2の流入を抑制することができる。
【0098】
また、動力伝達機構1におけるシュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91はそれぞれ回転軸部41(回転軸)に接続されるため、シュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91は、回転軸部41の回転に伴い、推進力を発生させることができる。このように、シュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91が同一の回転軸部41の回転軸線を中心に回転方向Rに回転するため、動力伝達機構1において少なくとも回転する方向の力を発生させる駆動部10を備えるだけで3次元的な動きを実現することができる。
【0099】
また、第1連結部材86(第1回転翼83の端部)と第2連結部材96(第2回転翼93の端部)とがそれぞれ角度を変更可能に嵌合する。このため、第1回転翼83及び第2回転翼93がシュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91によって発生した推進力の影響を受けた場合であっても、当該嵌合により、より強固に第1回転翼83及び第2回転翼93を支持することができる。よって、この構成によれば、シュナイダープロペラ81とスクリュープロペラ91とが同一の回転軸部41を用いて同一の回転軸線を中心に回転方向Rに回転した場合であっても、安定した推進力を得ることができる。
【0100】
また、第1部材50を回転軸部41に対して回転軸部41の径方向(水平方向)に移動させることにより、第1回転翼83が角度を変更することができる。第1部材50を回転軸部41に対して回転軸部41の軸方向(上下方向)に移動させることにより、第2回転翼93が角度を変更することができる、よって、この構成よれば、より簡易な構成でシュナイダープロペラ81及びスクリュープロペラ91のそれぞれの回転翼の角度を制御できる。
【0101】
なお、動力伝達機構は、必ずしも上記の構成を取る必要はなく、より容易に駆動部10への海水2の流入を抑制する構成であればどのようなものであってもよい。動力伝達機構が備える推進部は、必ずしも上記の構成を取る必要はなく、任意のプロペラ等(例えば、1つのプロペラ)の構成であってもよい。動力伝達機構1が推進部80を備える場合、シュナイダープロペラ81の各第1回転翼83とスクリュープロペラ91の各第2回転翼93とは互いに嵌合していなくてもよい。シュナイダープロペラ81の各第1回転翼83とスクリュープロペラ91の各第2回転翼93とは、それぞれ角度を変更可能な構成を取らなくてもよい。動力伝達機構1が、シュナイダープロペラ81とスクリュープロペラ91とを含む推進部80を備える場合、本実施形態のような1つの部材(第1部材50)でそれぞれのプロペラ81,91の回転翼83,93の角度を変更可能な構成を取らなくてもよい。すなわち、それぞれのプロペラ81,91毎に回転翼83,93の角度を変更する構成となっていてもよい。
【0102】
水中ロボット3は、例えば、海、川、池又は湖沼において稼働する。すなわち、第1液体の一例である海水2の代わりに、例えば、川、池又は湖沼における水であっても、水中ロボット3は当該水中で稼働する。第1液体は、川、海、池又は湖沼における水に限定されない。第1液体及び第2液体は、第1液体より比重が大きく、非電気伝導性の性質を有し、第1液体と互いに混ざり合わない液体であれば上記以外のものであってもよい。
【0103】
また、動力伝達機構は、水中ロボット以外に用いられてもよい。また、動力伝達機構は、推進部が設けられた推進機構以外の機構として用いられてもよい。例えば、動力伝達機構は、第1液体内において、何らかの流体(例えば、水等の液体)等の物質を動力伝達機構によって発生させられた動力で伝達するものであってもよい。この場合、動力伝達機構の駆動部10はポンプであってもよい。駆動部10は、サーボ機構であってもよい。駆動部10の各モータは、油圧モータであってもよい。
【0104】
また、突出部40は、例えば、駆動部10に接続して容器20の外部に通じる配管であってもよい。このとき、駆動部10は、動力によって動く水等の物質を突出部40の配管を通じて外部に伝達(送出)する機能を有していてもよい。容器20には複数の開口部22が設けられてもよい。例えば、伝達する物質を入力する配管が、物質を伝達するための配管とは別の開口部を通って設けられていてもよい。この場合、容器20の上方に少なくとも1つ設けられていればよい。このとき、開口部22が容器20の下部に設けられた場合にはシール部材により電気絶縁油30が流出しないようにされていればよい。
【符号の説明】
【0105】
1…動力伝達機構、2…海水(第1液体)、3…水中ロボット、10…駆動部、20…容器、22…開口部、30…電気絶縁油(第2液体)、40…突出部、41…回転軸部(回転軸)、50…第1部材、60…第1調整部、70…第2調整部、80…推進部、81…シュナイダープロペラ、83…第1回転翼、91…スクリュープロペラ、93…第2回転翼。
図1
図2
図3
図4
図5
図6