(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040336
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
B25B21/00 530Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147273
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大島 英司
(57)【要約】
【課題】締結箇所の上方の空間が狭い場合でも締結作業を行えるねじ締め機の提供。
【解決手段】本発明のねじ締め機1はモータMに接続され回転伝達可能な伝達機構10と、この伝達機構10を回転可能に内装した板状のケース部材20と、このケース部材20の延びる方向に対して直交し伝達機構10に取り付け可能な締結工具Bとを備える。伝達機構10は、その後端側にモータMを接続して成る駆動源連結部11と、その前端側に締結工具Bを着脱して成る工具連結部13とを備え、駆動源連結部11および工具連結部13は、それぞれの回転軸線を平行にかつ所定距離オフセットさせて配置して成る。これにより、断面コ字状の狭い締め付け箇所へも侵入できかつモータMを垂直に配置できるので、従来に比べて平面的なスペースが確保可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源に接続され回転伝達可能な伝達機構と、この伝達機構を回転可能に内装した板状のケース部材と、このケース部材の延びる方向に対して直交し前記伝達機構に取り付け可能な締結工具とを備えて成るねじ締め機において、
前記伝達機構は、その後端側に前記回転駆動源を接続して成る駆動源連結部と、その前端側に前記締結工具を着脱して成る工具連結部とを備えて成り、
前記駆動源連結部および工具連結部は、それぞれの回転軸線を平行にかつ所定距離オフセットさせて配置して成ることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記伝達機構は、前記工具連結部および駆動源連結部に噛合する外歯を成形した中間歯車を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭い箇所でのねじ締めを可能とするねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじ締め機は、特許文献1に示すように、ボルト等の締結部品を狭い箇所でも締結可能に構成されており、板状のケース部材と、このケース部材の延びる方向に沿って回転自在に軸支された回転ロッドと、この回転ロッドに回転を付与する回転駆動源と、前記回転ロッドの先端に固定され当該回転ロッドと一体に回転可能な駆動かさ歯車と、この駆動かさ歯車にかみ合い回転軸を90度変更して従動回転する従動かさ歯車と、この従動かさ歯車に着脱可能な締結工具とを備える。
【0003】
前記回転駆動源の回転軸は、これに接続された回転ロッドの軸線上に位置しているため、従来のねじ締め機は、略L字形状を成しているため、ワークの締結位置の上方に張り出す壁のような断面コ字状の狭い空間を有するワークに対しても所定の締結位置まで侵入できる。よって、従来のねじ締め機は、特に狭い箇所でのねじ締め作業を可能にするという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の従来のねじ締め機は、ワークに侵入するものであるため、ケース部材から回転駆動源に至る全長が長く、平面的な設置スペースを要するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転駆動源に接続され回転伝達可能な伝達機構と、この伝達機構を回転可能に内装した板状のケース部材と、このケース部材の延びる方向に対して直交し前記伝達機構に取り付け可能な締結工具とを備えて成るねじ締め機において、前記伝達機構は、その後端側に前記回転駆動源を接続して成る駆動源連結部と、その前端側に前記締結工具を着脱して成る工具連結部とを備えて成り、前記駆動源連結部および工具連結部は、それぞれの回転軸線を平行にかつ所定距離オフセットさせて配置して成ることを特徴とする。なお、前記伝達機構は、前記工具連結部および駆動源連結部に噛合する外歯を成形した中間歯車を備えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るねじ締め機は、回転駆動源を締結工具に対して平行にオフセットさせて配置できるので、狭い箇所へのねじ締め作業を可能にながらもその全長を高さ方向へ延ばすことができる。これにより、従来に比べて平面的に小さな設置スペースで使用することができるという利点がある。また、本発明に係るねじ締め機は、回転駆動源の回転力を入力する駆動源連結部から締結工具を取り付けた工具連結部への回転伝達を中間歯車により伝達しているので、中間歯車の設置個数を変更することで締結工具および回転駆動源の回転軸間距離を容易に変更できるという利点もある。また、このように、前記伝達機構は、歯車の噛合による回転伝達のため、Vベルトなど摩擦による伝達機構を用いた物に比べて確実に回転を伝達できる。よって、回転飛びなどを生じ難く、回転駆動源の回転角度に基づいて締結工具を高精度に回転制御できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るねじ締め機およびワークを示す一部切欠き断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るねじ締め機1は、
図1および
図2に示すように、回転駆動源の一例であるモータMと、このモータMの回転駆動軸Maに接続され当該回転駆動軸Maの回転力を伝達可能な伝達機構10と、この伝達機構10を内装して成る板状のケース部材20と、前記伝達機構10から出力される回転力を付与されるとともに前記ケース部材20の延びる方向に対して直交に配された締結工具Bとを備え、締結部品の一例であるねじSをワークW1に締結可能に構成される。
【0010】
前記ねじSは、大径の頭部および当該頭部よりも小径の軸部を一体に備えて成る。前記頭部は、その頭頂部に締結工具Bの先端部と係合可能な十字穴が成形される一方、前記軸部は、その外周にねじ山が成形されている。また、このねじSの軸部は、
図1示すように、被締結部材W2の下穴W2aを通過可能かつワークW1に設けられためねじW1aに螺合可能に成形されている。
【0011】
前記ワークW1は、前記めねじW1aの上方へ張り出した部位を備える略断面コ字状を成し、ねじ締め箇所の高さ方向を規制する水平に張り出す壁が形成されている。また、前記ねじSの軸部を挿通可能な下穴W2aを成形した被締結部材W2は、ねじSがめねじW1aに螺入されることでワークW1に固定される。
【0012】
前記モータMは、図示しない制御装置に接続されており、当該制御装置の指令を受けて前記回転駆動軸Maを所定の回転速度により回転駆動するよう構成されている。前記回転駆動軸Maは、その下部に当該回転駆動軸Maの軸線に沿って延びるよう成形されたねじ固定部を備えており、当該ねじ固定部は、
図1に示す六角ボルトMbを螺合可能に構成されている。また、モータMは、前記制御装置に予め設定された設定値に基づいて回転駆動軸Maを回転させており、前記制御装置は、前記回転駆動軸Maに生じた負荷トルクを演算可能に構成される。この負荷トルクの演算は、当該回転駆動軸Maの回転駆動に要する前記モータMの負荷電流に基づいて行われており、別途トルクセンサなどを配置しなくても出力するトルクを容易に計算することができる。
【0013】
前記伝達機構10は、
図2に示すように、複数の歯車を直列に接続して後端側に位置する歯車から前端側に位置する歯車へと回転力を伝達可能に構成されている。これら複数の歯車は、前記モータMの前記回転駆動軸Maおよび六角ボルトMbと一体に取り付けられた駆動源連結部11と、この駆動源連結部11の回転を受けて回転する中間歯車12と、この中間歯車12の回転を受けて回転するとともに前記締結工具Bを一体に取り付け可能な工具連結部13とから構成される。
【0014】
前記駆動源連結部11は、その回転中心に配置され前記六角ボルトMaを挿通可能に成形された挿通穴11aと、その外周に渡って成形された外歯11bとを備える。また、この駆動源連結部11は、
図1に示すように、その一端に前記回転駆動軸Maの端面を載置可能であり、前記六角ボルトMbを下方から螺入することで前記回転駆動軸Maに固定される。これにより、前記回転駆動軸Ma、駆動源連結部11、六角ボルトMbの3つの部品が一体になって回転可能になる。
【0015】
前記中間歯車12は、前述した駆動源連結部11の外周に成形された外歯11bと噛み合うように成形された外歯12a1(12b1)と、その回転中心に挿通された支軸12a2(12b2)とを備えて成る。また、前記中間歯車12は、
図2に示すように、前記駆動源連結部11に噛合するよう配された第1中間歯車12aと、この第1中間歯車12aに噛合するよう配された第2中間歯車12bとから構成される。
【0016】
前記工具連結部13は、前記第2中間歯車12bに噛合するよう配されており、その回転中心に前記締結工具Bを挿通して着脱可能に構成されている。これにより、前記ねじSの駆動部に応じた形状の締結工具への交換が容易となっている。
【0017】
このように複数の歯車の噛合によって構成した伝達機構10は、それぞれの歯車の回転中心を
図2に示すように一直線に並ぶよう配されるので、モータMの回転中心軸と締結工具Bの軸線とを所定距離空けてオフセットしてかつ平行に配置することができる。よって、めねじW1aの上方へ張り出す壁などを備えた高さ方向に制限のあるワークW1であっても、当該ワークW1に干渉し難い。
【0018】
前記ケース部材20は、薄板を曲げ加工されて成形されており、駆動源連結部11、中間歯車12、工具連結部13をそれぞれ回転自在に配して成る。また、このケース部材20は、駆動源連結部11および工具連結部13に接続した回転駆動軸Maおよび締結工具Bを挿通可能に構成されており、噛み合って回転する駆動源連結部11、中間歯車12、工具連結部13を覆うように保護して成る。
【0019】
前記締結工具Bは、その後端を前記工具連結部13へ差し込み可能に構成される一方、その前端を締結するねじSの駆動部に係合可能な先端部を備えて成る。これにより、締結工具Bは、工具連結部13と一体回転することができ、モータMの回転を受けて係合するねじSとともに回転することができる。また、締結工具Bは、これと係合するねじSを吸着保持可能にするため、その係合部あるいは全体が磁化されているか、あるいは、前記係合部に通気口を設けてエアを吸引可能なエア吸引手段(図示せず)に接続されている。これにより、前者の磁化された締結工具であれば、磁性体のねじSを吸着させることができ、後者のエア吸引可能な締結工具であれば、磁性体か非磁性体かを問わずねじSを吸着させることができる。
【0020】
このように構成された本発明に係るねじ締め機1は、
図1に示すように、断面コ字状のワークW1と被締結部材W2とを固定するねじSを前記めねじW1aへ螺入するものであり、まず、前記ねじSを締結工具Bの係合部に係合させる。このねじSを締結工具Bに係合させるのは、図示しない作業者が手で供給したり、あるいは、ねじSを1つずつ吊り下げて保持するねじ供給装置(図示せず)へ締結工具Bを接近させたりすることで実現している。なお、ねじ供給装置によるねじSの供給の場合、図示しない多関節ロボットなどに本発明に係るねじ締め機1を取り付け、当該多関節ロボットの動作によってねじSを締結工具Bに係合させる。
【0021】
このように、前記ねじSが締結工具Bに係合すれば、作業者あるいは多関節ロボットがねじ締め機1を
図1に示すねじ締結箇所まで移動させる。この移動した状態において、ワークW1の上部の張り出した部位は、前記ケース部材20の後端に位置するモータMに干渉しない。しかも、前記モータMは、ケース部材20の延びる方向に対して直交するよう配されるので、ねじ締め機1の全長は、従来に比べて短く構成される。
【0022】
次に、ねじ締め機1が
図1に示す位置へ到達すれば、前記制御装置が予め設定された回転速度に基づいて回転駆動軸Maを回転駆動するようモータMへ指令を送る。これを受けてモータMは、回転駆動軸Maに取り付けた駆動源連結部11を反時計回りに逆転させるため、逆転する当該駆動源連結部11から回転伝達される第1中間歯車12aが正転する。また、第1中間歯車12aは、これに噛合する第2中間歯車12bを逆転させるので、、当該第2中間歯車12bは、前記締結工具Bを取り付けた工具連結部13を正転させる。よって、締結工具Bに係合したねじSは、前記めねじW1aへ螺入される方向に回転する。
【0023】
次に、ねじ締め機1は、作業者あるいは多関節ロボットにより
図1に示す方向へ移動を始め、ねじSの軸部を被締結部材W2の下穴W2aへ挿通され、前記軸部の先端がめねじW1aと螺合してねじSの頭部が被締結部材W2の表面に着座する。このねじSの頭部が着座した後においてもモータMが回転駆動制御されているので、ねじSに作用するトルクが高まる。このトルクは、当該ねじSに係合した前記締結工具Bおよび伝達機構10を介して回転駆動軸Maへ伝達され、これを前記制御装置により負荷トルクとして演算されている。また、前記制御装置は、演算した負荷トルクと、予め設定されている設定トルクとを比較し、負荷トルクが設定トルクに達すれば、モータMの回転駆動を停止してねじSの締結を終了する。
【0024】
このモータMの回転駆動停止を受けて、作業者および多関節ロボットは、ねじ締め機1を締結したねじSの上空へ移動させ、その後、水平方向へ移動させて締結工具BをワークW1から離反させる。これにより、ねじSの締め付け作業が完了する。
【0025】
なお、本発明のねじ締め機1は、モータMの回転を上述とは逆方向にすることで、締結工具Bの回転を逆転させることができる。したがって、本発明のねじ締め機1は、ねじSをワークW1に締め付けるだけでなく、ワークに予め締結されているねじを緩める用途にも使用できる。よって、モータMの回転方向を変更するだけで、ねじ締めとねじ緩めの両用途に対応でき、ハード構成の大幅な変更も必要がない。
【符号の説明】
【0026】
1 … ねじ締め機
20 … 検査部
25 … ベース部材
26a… 可動部材
26b… 可動部材
28 … 切欠き部
29 … 磁束
S … ねじ