(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040339
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】気化式石油給湯機
(51)【国際特許分類】
F24H 15/212 20220101AFI20230315BHJP
F23N 5/14 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
F24H1/10 302F
F23N5/14 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147276
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】内山 高志
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 克則
【テーマコード(参考)】
3K005
3L034
【Fターム(参考)】
3K005AB03
3K005AC06
3K005BA05
3K005CA05
3K005DA02
3L034DA02
(57)【要約】
【課題】燃焼停止状態での気化器の温度保持のための消費電力を低減できる気化式石油給湯機を提供する。
【解決手段】気化器19の気化器温度を最大油量を気化できる最大油量気化可能温度に保持する通常待機制御と、気化器19の気化器温度を最大油量気化可能温度より低い省電力気化温度に保持する省電力待機制御とを行う制御部32を備え、省電力待機制御中に出湯要求があったとき、油量を省電力気化温度で気化可能な油量に制限して燃焼を開始して給湯運転を行うので、燃焼停止状態の省電力待機制御中の消費電力を小さくしつつ、シャワーを使用するくらいの通常使用する範囲の給湯量であれば、省電力待機制御中でも給湯栓17が開かれて出湯要求があると、直ちに再燃焼を開始して、設定温度のお湯を給湯することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化ヒータ及び気化器温度センサを備え燃油を気化する気化器と、給湯温度設定スイッチを備えた操作部と、時間を計時するタイマと、給湯量を調整する水比例弁と、前記気化器に燃油を供給する燃料ポンプと、給水の温度を検知する給水サーミスタと、前記気化器の気化器温度を最大油量を気化できる最大油量気化可能温度に保持する通常待機制御と、前記気化器の気化器温度を前記最大油量気化可能温度より低い省電力気化温度に保持する省電力待機制御とを行う制御部とを備えた気化式石油給湯機に於いて、前記制御部は、前記省電力待機制御中に出湯要求があったとき、油量を前記省電力気化温度で気化可能な所定油量に制限して燃焼を開始すると共に、前記給湯温度設定スイッチにより設定された給湯設定温度になるように前記水比例弁を制御して給湯運転を行うことを特徴とする気化式石油給湯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記省電力待機制御中に前記出湯要求があったとき、前記気化器を前記気化ヒータにて昇温し、前記気化器の気化器温度が前記最大油量気化可能温度以上になったとき、前記油量の制限を解除して給湯運転を行うと共に、前記気化器の待機制御を前記省電力待機制御から前記通常待機制御に変更することを特徴とする請求項1記載の気化式石油給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気化式石油給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものに於いては、燃焼停止後、タイマ手段で計測された所定時間内は温度検出器により気化室を燃焼開始するに十分な定常スタンバイ温度に制御して再燃焼が直ちに行われるようにし、所定時間経過後は温度検出器の制御温度が変更されて気化室を定常スタンバイ温度より低く、かつ、燃油の気化限界温度より高い温度に制御することで、スタンバイ中の消費電力を低減しつつ、再燃焼時の気化室の定常スタンバイ温度への到達を早くして再燃焼が速やかに行われるものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来のものでは、燃焼停止後、所定時間経過して気化室の温度を定常スタンバイ温度より低い温度に変更された状態で再燃焼要求があった場合、気化室の温度が定常スタンバイ温度に上昇するまで再燃焼を開始しない。
そのため、お湯を使用しようとして給湯栓を開いても、すぐ再燃焼が開始されず、まず水が出る状態から再燃焼が開始されたあとに水からだんだんお湯になって、気化室の温度が定常スタンバイ温度に上昇した状態で設定温度のお湯が給湯栓の開き具合に応じて給湯されるものであった。
【0005】
そこで燃焼停止状態から再燃焼開始までの時間を短くするために、燃焼停止後、所定時間経過した後の気化室の温度を定常スタンバイ温度に近づけると、燃焼停止状態のスタンバイ中の消費電力が大きくなり、逆に燃焼停止状態のスタンバイ中の消費電力を小さくするために、燃焼停止後、所定時間経過した後の気化室の温度を定常スタンバイ温度よりもより低い温度にすると、燃焼停止状態から再燃焼開始までの時間が長くなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、気化ヒータ及び気化器温度センサを備え燃油を気化する気化器と、給湯温度設定スイッチを備えた操作部と、時間を計時するタイマと、給湯量を調整する水比例弁と、前記気化器に燃油を供給する燃料ポンプと、給水の温度を検知する給水サーミスタと、前記気化器の気化器温度を最大油量を気化できる最大油量気化可能温度に保持する通常待機制御と、前記気化器の気化器温度を前記最大油量気化可能温度より低い省電力気化温度に保持する省電力待機制御とを行う制御部とを備えた気化式石油給湯機に於いて、前記制御部は、前記省電力待機制御中に出湯要求があったとき、油量を前記省電力気化温度で気化可能な所定油量に制限して燃焼を開始すると共に、前記給湯温度設定スイッチにより設定された給湯設定温度になるように前記水比例弁を制御して給湯運転を行うものである。
【0007】
又、請求項2では、前記制御部は、前記省電力待機制御中に前記出湯要求があったとき、前記気化器を前記気化ヒータにて昇温し、前記気化器の気化器温度が前記最大油量気化可能温度以上になったとき、前記油量の制限を解除して給湯運転を行うと共に、前記気化器の待機制御を前記省電力待機制御から前記通常待機制御に変更するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、省電力待機制御中に出湯要求があったとき、油量を省電力気化温度で気化可能な油量に制限して燃焼を開始すると共に、前記給湯温度設定スイッチにより設定された給湯設定温度になるように前記水比例弁を制御して給湯運転を行うので、燃焼停止状態で省電力待機制御中の気化器の消費電力を小さくしつつ、シャワーを使用するくらいの使用頻度の高い範囲の給湯量であれば、省電力待機制御中でも給湯栓が開かれて給湯要求があると、直ちに再燃焼を開始して給湯運転を行うので、設定温度のお湯を直ぐに給湯することができ、使い勝手がよいものである。
【0009】
又、請求項2によれば、省電力待機制御中に出湯要求があったとき、前記気化器を前記気化ヒ-タにて昇温し、前記気化器の気化器温度が最大油量気化可能温度以上になったとき、前記油量の制限を解除して通常の給湯運転を行うと共に、気化器の待機制御を省電力待機制御から通常待機制御に変更するので、燃焼停止状態の省電力待機制御のときに、気化器の温度が最大油量気化可能温度であることが必要な大きい出湯要求があったときでも、給湯量を制限することで直ちに給湯を開始することができる。
【0010】
又、省電力待機制御中に出湯要求があったとき、気化器の待機制御を省電力待機制御から通常待機制御に変更することで、再燃焼後に気化器の温度が最大油量気化可能温度であることが必要な大きい出湯要求が断続的に行われても、直ちに気化器の温度を最大油量気化可能温度で給湯運転を開始でき、使い勝手がよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】同燃焼停止状態での気化器の待機制御を説明するフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を適用した一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は気化式石油給湯機で、熱交換器2が設けられている。
3は前記熱交換器2の下部に備えられた燃焼部で、石油気化式のバーナ部4に燃焼ファン(図示せず)により燃焼用空気を送風すると共に、燃料ポンプ5により燃油を供給することにより燃焼を行うものである。
【0013】
6は給水配管接続口7に接続した給水管8から熱交換器2を経て給湯管9を介して給湯配管接続口10に至る給湯回路で、水道管11に直結している給水配管接続口7から給水された水道水を給水フローセンサ12により通水を検知し、給水サーミスタ13にてその温度を検知し、更に給水流量センサ14にて給水管8を流動する水の流量を検出し、熱交換器2にて熱交換した後、設定温度になるようにミキシング弁15にて給水管8を流れる給水の一部を混合し、給湯サーミスタ16で出湯水の温度を検知して、給湯管9から給湯配管接続口10に接続されている給湯栓17に向けて出湯するもので、更にミキシング弁15の下流側には給湯量を調整するための水比例弁18を設けたものである。
【0014】
19は気化器で、気化器19を加熱する気化ヒータ20と、気化器19の温度を検知する気化器温度センサ21とを備え、気化ヒータ20により燃油の気化可能温度まで加熱されて気化ガスと一次空気による予混合ガスを形成し、連通するバーナ部4にて予混合ガスを燃焼させる。
又、気化器温度センサ21を介して気化器19の温度を検知し、気化ヒータ20のオンオフにより気化器19を所定の温度に保持するものである。
【0015】
?22は定油面器で、燃料ポンプ5と、送油ポンプ24と、フロートセンサ25とを備え、屋外に設置された燃油タンク(図示せず)から送油管23を介して送油ポンプ24により燃油が供給される。
又、定油面器22内のフロートセンサ25が、定油面器22内の燃油の油面高さを検知し、それにより送油ポンプ24を駆動することで、定油面器22内の燃油を一定レベルに保持する。
又、燃料ポンプ5により定油面器22内の燃油を、給油管26を介して気化器19に給油する。
【0016】
27は外部入力装置で、表示部28と、操作部29とを備え、操作部29には給湯栓17が開かれて出湯要求があると、直ちに燃焼が開始できるように気化器19を所定の温度に保持する給湯運転スイッチ30と、給湯温度を設定する給湯温度設定スイッチ31とを備えるものである。
【0017】
32は制御部で、マイコンを主体として構成され、燃焼部3での燃焼動作及びそれによる給湯運転を制御するものである。
【0018】
33はタイマで、制御部32からの計時開始信号の入力により計時を開始すると共に、制御部32からの計時停止信号の入力により計時を停止し、計時を開始して所定時間を計時すると制御部32に計時信号を出力し、制御部32からのリセット信号の入力又は、計時を開始して所定時間を計時したとき、計時時間をリセットするものである。
【0019】
次にこの気化式石油給湯機の給湯運転の待機時の制御について
図3のフローチャート図に基づいて説明する。
まず外部入力装置27の給湯運転スイッチ30がオンON操作されると(S1)、制御部32は通常待機制御を開始し(S2)、気化ヒータ20への通電をON制御する(S3)。
【0020】
そして、制御部32は、気化器温度センサ21が検知する気化器温度が、最大油量を気化できる最大油量気化可能温度以上になったら(S4)、気化器温度が最大油量気化可能温度、本実施形態では、220℃から225℃の間に保持されるように、気化ヒータ20への通電をONOFF制御すると共に(S5)、タイマ33に計時開始信号を出力し、タイマ33は計時を開始する(S6)。
【0021】
そして、給湯栓17が開かれて給水フローセンサ12により通水を検知して出湯要求があると判断すると(S7)、制御部32は、タイマ33に計時停止信号及びリセット信号を出力して、タイマ33の計時停止及びリセットを行う(S8)。
そして、制御部32は、燃焼を開始して(S9)、給湯運転を実施する(S10)。
【0022】
そして、給湯栓17が閉じられて給水フローセンサ12により通水が検知されなくなると、燃焼を停止して給湯運転を停止し(S11)、(S2)へと戻る。
【0023】
又、(S7)で出湯要求がなかった場合、タイマ計時時間が省電力移行時間以上になると、タイマ33は制御部32に省電力移行時間計時信号を出力する(S12)。
省電力移行時間計時信号を入力した制御部32は、タイマ33に計時停止信号及びリセット信号を出力して、タイマ33の計時停止及びリセットを行う(S13)。
【0024】
そして、制御部32は、通常待機制御から省電力待機制御に移行する(S14)。
そして、制御部32は、気化器温度と省電力気化温度を比較し、気化器温度が省電力気化温度に保持されるように気化ヒータ20への通電をONOFF制御する(S15)。
尚、本実施形態では、省電力気化温度は190℃から195℃に設定されている。
【0025】
そして、制御部32は、給湯栓17が開かれて給水フローセンサ12により通水を検知して出湯要求があると(S16)、気化器温度センサ21が検知する気化器温度、つまり省電力気化温度により気化可能な最大油量に油量を制限すると共に(S17)、その最大油量と、給水サーミスタ13にて検知される給水温度と、給湯温度設定スイッチ31により設定されている給湯設定温度とにより、現状の気化器温度で給湯できる最大給湯量を算出する(S18)。
【0026】
そして、制御部32は、燃焼を開始して(S19)、給湯運転を実施する(S20)。
このとき、制御部32は、給湯量が(S18)で算出した最大給湯量を超えないように水比例弁18を制御する(S21)。
【0027】
そして、制御部32は、気化ヒータ20への通電をON制御し(S22)、気化器温度と最大油量気化可能温度を比較し(S23)、気化器温度が最大油量気化可能温度以上であれば、油量制限を解除すると共に(S24)、水比例弁18による給湯量の制限を解除して(S25)、給湯運転を継続する。
【0028】
そして、制御部32は、給湯栓17が閉じられて給水フローセンサ12により通水が検知されなくなると、燃焼を停止して給湯運転を停止し(S26)、(S2)へと戻る。
【0029】
このように、シャワーのみの給湯や台所での給湯のみのような使用頻度の高い範囲の出湯要求であれば、気化器温度が省電力気化温度であっても直ちに給湯設定温度のお湯を必要とする給湯量で給湯運転できるので、使い勝手を悪くすることなく、待機時の消費電力を抑えることができる。
【0030】
又、(S16)で、出湯要求が最大給湯量を超える場合、たとえば冬に浴槽の湯張りをしつつシャワーと台所での給湯を行うような出湯要求であれば、油量を制限すると共に、水比例弁18により給湯量を制限しているものの、給湯設定温度のお湯が供給され、気化器温度が最大油量気化可能温度以上になれば、油量制限を解除して給湯運転を行うので、気化器温度が省電力気化温度で、出湯要求が前記最大給湯量を超える場合でも、使い勝手が悪くなるのを最小限に留めることができる。
【0031】
以上のように、省電力待機制御中に出湯要求があったとき、省電力気化温度で保持されている気化器19で気化可能な最大油量に油量を制限し、給湯設定温度で給湯するように水比例弁18を制御して給湯運転を行うので、燃焼停止状態の省電力待機制御中の消費電力を小さくしつつ、シャワーを使用するくらいの使用頻度の高い通常使用する範囲の給湯量であれば、省電力待機制御中でも給湯栓17が開かれて出湯要求があると、直ちに再燃焼を開始して給湯運転を行い、設定温度のお湯を直ぐに給湯することができ、使い勝手がよいものである。
【0032】
又、省電力待機制御中に出湯要求があったとき、前記気化器19を前記気化ヒータ20にて昇温し、前記気化器19の気化器温度が最大油量気化可能温度以上になったとき、油量の制限を解除して通常の給湯運転を行うと共に、気化器19の待機制御を省電力待機制御から通常待機制御に変更するので、燃焼停止状態の省電力待機制御のときに、気化器19の温度が最大油量気化可能温度であることが必要な大きい出湯要求があったときでも、給湯量を制限することで直ちに給湯を開始することができる。
又、燃焼停止状態の省電力待機制御から給湯栓17が開かれて出湯要求があると、気化ヒータ20で気化器19を加熱して、気化器温度を最大油量気化可能温度まで素早く昇温させることができる。
【0033】
又、省電力待機制御中に出湯要求があったとき、気化器19の待機制御を省電力待機制御から通常待機制御に変更することで、再燃焼後に気化器19の温度が最大油量気化可能温度であることが必要な大きい出湯要求が断続的に行われても、直ちに気化器19の温度を最大油量気化可能温度で給湯運転を開始でき、使い勝手がよいものである。
【0034】
尚、実施形態では、省電力気化温度により気化可能な最大油量と、給水サーミスタ13にて検知される給水温度と、給湯温度設定スイッチ31により設定されている給湯設定温度とにより、現状の気化器温度で給湯できる最大給湯量を算出し、その最大給湯量を超えないように水比例弁18を制御するがこれに限定されず、例えば給湯温度をフィードバックして、給湯温度が給湯設定温度になるように水比例弁18を制御してもよいものである。
【符号の説明】
【0035】
1 気化式石油給湯機
5 燃料ポンプ
18 水比例弁
19 気化器
20 気化ヒータ
21 気化器温度センサ
29 操作部
31 給湯温度設定スイッチ
32 制御部
33 タイマ