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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004035
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】連続式蒸熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/16 20060101AFI20230110BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20230110BHJP
【FI】
A47J27/16 G
A23L19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105494
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000176051
【氏名又は名称】三州産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100133271
【弁理士】
【氏名又は名称】東 和博
(72)【発明者】
【氏名】坂元 泉
(72)【発明者】
【氏名】古垣 洋次
【テーマコード(参考)】
4B016
4B054
【Fターム(参考)】
4B016LG01
4B016LG05
4B016LP06
4B016LT09
4B054AA17
4B054AB03
4B054AC08
4B054BA01
4B054CG01
(57)【要約】
【課題】青果物を連続的に蒸熱処理することができ、青果物の処理量に応じた蒸熱処理が可能で、蒸熱処理に携わる作業者の労力の軽減を図ることが可能な、蒸熱処理装置を提供する。
【解決手段】箱形のケーシング10の内部に蒸気発生室11と蒸気処理室12を備え、蒸気発生室11で発生させた蒸気を、循環装置20により、蒸気処理室12を上下方向に通過して蒸気発生室11に戻るように循環させ、蒸気処理前の青果物Bを収容したトレイTを、蒸気循環中の蒸気処理室12に通過させる搬送手段30を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形のケーシングの内部に蒸気発生室と蒸気処理室を備え、蒸気発生室で発生させた蒸気を、循環装置により、蒸気処理室を上下方向に通過して蒸気発生室に戻るように循環させ、処理対象の青果物を、蒸気循環中の蒸気処理室に通過させる搬送手段を備えることを特徴とする連続式蒸熱処理装置。
【請求項2】
前記搬送手段が、ローラ式コンベアまたはベルト式コンベアであることを特徴とする請求項1に記載された連続式蒸熱処理装置。
【請求項3】
蒸気処理室の入口および出口に、それぞれ、蒸気処理室内の蒸気の外部への漏洩を抑制する第1のカーテンを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された連続式蒸熱処理装置。
【請求項4】
蒸気処理室の入口および出口に、蒸気処理直前の青果物が位置する箱状の搬入用ダクトおよび蒸気処理直後の青果物が位置する箱状の搬出用ダクトを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載された連続式蒸熱処理装置。
【請求項5】
箱状の搬入用ダクトの入口および搬出用ダクトの出口に、それぞれ、蒸気処理室内の蒸気の外部への漏洩を抑制する第2のカーテンを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された連続式蒸熱処理装置。
【請求項6】
ケーシング内を循環する蒸気の温度および湿度を設定する制御装置を備え、制御装置は、ケーシングの内部に設置された温度および湿度を検出する検出器により検出された信号により、加湿装置および/または加熱装置を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載された連続式蒸熱処理装置。
【請求項7】
制御装置が、搬送装置による青果物の搬送速度を可変制御し、当該搬送速度について、搬送装置により搬送中の青果物が蒸気処理室を通過する時間が、青果物の蒸気処理に要する時間と同じになるように設定することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載された連続式蒸熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実、野菜、根菜等の青果物に対して、設定された温度で連続的に蒸熱処理を行うことのできる連続式蒸熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青果物を殺菌処理する方法として、薬液を用いた洗浄処理が従来から行われてきたが、食品に対する安全性の確保から、より安全性の高いオゾン水を用いた洗浄処理や、比較的安価な設備を用いて青果物を温湯に浸漬する温湯処理の方法が知られている。
【0003】
これらの方法に対し、本出願人は、先に、飽和蒸気と熱を使って低温(43℃)で青果物を蒸熱処理し、青果物に付着するミカンコミバエやウリミバエを殺虫する装置(特許文献1)、さらには、青果物の表面に発生する細菌類を高温(50℃以上)の蒸気熱で殺菌処理し、病気の発生を抑制する装置(特許文献2)を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭61-1094号公報
【特許文献2】実用新案登録第3153127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、蒸気を横方向に循環流通させる循環室と、循環室内の蒸気熱を縦方向に強制的に流通させる差圧殺虫筒からなり、差圧殺虫筒内にミカンコミバエ、ウリミバエが付着する生果実を格納し、蒸気熱により殺虫するもので、特許文献2の装置は、気密チャンバ内を仕切り板で仕切って蒸気の循環室を形成し、循環室の一部に青果物を収容する処理かごを多段に設置する設置部を設け、送風機により高温の蒸気の循環流を形成し、殺菌処理に必要な温度、湿度および時間を管理しながら、蒸気熱により殺菌処理を行うものである。
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置は、差圧殺虫筒に生果実を格納し、特許文献2の装置は、処理かご設置部に青果物を収容した処理かごを多段に設置し、いずれも扉を閉じて、一定量の青果物を一度に蒸熱処理するようにしているため、定量よりも少量の青果物を蒸熱処理したい場合、蒸熱処理の管理が難しく、また、大量の青果物を蒸熱処理する場合、複数回に分けて蒸熱処理し、その都度、作業者が扉を開けて青果物を出し入れする手間が生じるなど、いくつかの改善すべき課題が生じていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて提案されたもので、青果物を連続的に蒸熱処理することができ、青果物の処理量に応じた蒸熱処理が可能で、蒸熱処理に携わる作業者の労力の軽減を図ることが可能な、連続式蒸熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明に係る連続式蒸熱処理装置は、
箱形のケーシングの内部に蒸気発生室と蒸気処理室を備え、蒸気発生室で発生させた蒸気を、循環装置により、蒸気処理室を上下方向に通過して蒸気発生室に戻るように循環させ、処理対象の青果物を、蒸気循環中の蒸気処理室に通過させる搬送手段を備えることを主要な特徴とする。
【0009】
本発明に係る連続式蒸熱処理装置は、
前記搬送手段が、ローラ式コンベアまたはベルト式コンベアであることを第2の特徴とする。
【0010】
本発明に係る連続式蒸熱処理装置は、
蒸気処理室の入口および出口に、それぞれ、蒸気処理室内の蒸気の外部への漏洩を抑制する第1のカーテンを備えることを第3の特徴とする。
【0011】
本発明に係る連続式蒸熱処理装置は、
蒸気処理室の入口および出口に、蒸気処理直前の青果物が位置する箱状の搬入用ダクトおよび蒸気処理直後の青果物が位置する箱状の搬出用ダクトを備えることを第4の特徴とする。
【0012】
本発明に係る連続式蒸熱処理装置は、
箱状の搬入用ダクトの入口および搬出用ダクトの出口に、それぞれ、蒸気処理室内の蒸気の外部への漏洩を抑制する第2のカーテンを備えることを第5の特徴とする。
【0013】
本発明に係る連続式蒸熱処理装置は、
ケーシング内を循環する蒸気の温度および湿度を設定する制御装置を備え、制御装置は、ケーシングの内部に設置された温度および湿度を検出する検出器により検出された信号により、加湿装置および/または加熱装置を制御することを第6の特徴とする。
【0014】
本発明に係る連続式蒸熱処理装置は、
制御装置が、搬送装置による青果物の搬送速度を可変制御し、当該搬送速度について、搬送装置により搬送中の青果物が蒸気処理室を通過する時間が、青果物の蒸気処理に要する時間と同じになるように設定することを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る連続式蒸熱処理装置によると、処理対象の青果物を、搬送手段により、連続してケーシングの内部に設けた蒸気処理室内を通過させ、蒸気処理室を上下方向に通過してケーシング内を循環する蒸気により連続的に蒸熱処理することができ、蒸熱処理に携わる作業者の労力の軽減を図ることができるという効果を奏する。
【0016】
また、処理対象の青果物の蒸熱処理に要する時間に合わせて、搬送手段により搬送される青果物の搬送速度を可変とすることで、処理対象の青果物ごとに適正な蒸熱処理を行なうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る連続式蒸熱処理装置の構造図、
図2図1に示す連続式蒸熱処理装置の平面図、
図3図2に示す連続式蒸熱処理装置のA-A線矢視断面図、
図4図1に示す連続式蒸熱処理装置の側面図、
図5図1に示す連続式蒸熱処理装置の正面図、
図6図1に示す連続式蒸熱処理装置の背面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係る連続式蒸熱処理装置の構造図であり、符号1は連続式蒸熱処理装置を示している。
【0019】
図1ないし図3に示すように、連続式蒸熱処理装置1(以下、「蒸熱処理装置1」という)は、定温の蒸気と熱を利用して青果物の表面を殺菌・殺虫等処理する装置で、箱形のケーシング10の内部に蒸気発生室11と蒸気処理室12を備えている。蒸気発生室11と蒸気処理室12は、仕切り板13によって左右に仕切られている。
【0020】
ケーシング10は、全体が箱形形状をしており、天板パネル10Aと、左右の側板パネル10Bと、前後の側板パネル10Cと、底板パネル10Dを備えている。ケーシング10は、内面に断熱パネルが取付けられた断熱構造とされている。
【0021】
蒸気発生室11は、ケーシング10内を循環させる蒸気を発生させる加湿器14と加熱器15を備えている。加湿器14は電熱式の蒸気加湿器等が用いられている。加熱器15は加湿器14が発生させた蒸気を設定温度になるように加熱する。
【0022】
蒸気発生室11は、下部連通口16を通じて蒸気処理室12の直下の下部連通空間17と繋がっており、蒸気発生室11内で発生させた蒸気を、循環ファン20により、下部連通口16を通じて下部連通空間17に引き込み、下部連通空間17から直上の蒸気処理室12内に流入させるようになっている。
【0023】
蒸気処理室12は、下部連通空間17から上向きに流れる蒸気により、搬送装置30によりトレイTとともに搬送された青果物Bを蒸気処理(蒸熱処理)するところで、蒸気処理室12に青果物Bを収容したトレイTを搬入させる入口18と、蒸気処理室12内で蒸気処理を終えた青果物BをトレイTとともに搬出する出口19を、前後に備えている。
【0024】
蒸気処理室12の直上には、仕切り板21により仕切られた上部循環空間22が設けられており、蒸気処理室12内に流入した蒸気は、仕切り板21に設置された2台の循環ファン20により、蒸気処理室12内を上昇して上部循環空間22に流出し、上部循環口23から蒸気発生室11に戻るようになっている。
【0025】
蒸気処理室12の入口18および出口19には、蒸気処理室12内の蒸気の外部への漏洩を遮断する第1カーテン24がそれぞれ取付けられている。第1カーテン24は、断熱性、耐熱性、可撓性を備える樹脂シートからなり、下端に達する多数のスリットが設けられている。第1カーテン24は、開放自在とされ、入口18および出口19から青果物Bを収容したトレイTをスムーズに搬入および搬出可能とし、また、その際に蒸気処理室12内の蒸気の漏洩をできるだけ遮断するようになっている。
【0026】
上記ケーシング10に対し、処理対象の青果物Bを収容したトレイTを入口18から蒸気処理室12内に水平に搬入させる搬送装置30が配置されている。搬送装置30は、コンベア本体31と、多数の搬送ローラ32と、駆動モータ33と、支柱34を備えており、駆動モータ33により、図示しないチェーンを介して各搬送ローラ32を搬送方向に同期して回転させ、これにより、蒸気処理前の青果物Bを収容したトレイTを一定の低速度で入口18から蒸気処理室12内に搬入させ、蒸気処理後の青果物Bを収容したトレイTを一定の低速度で出口19から水平に搬出するようになっている。
【0027】
上記搬送装置30は、入口18の上流側に位置する搬送部30Aと、入口18および出口19間に位置する搬送部30Bと、出口19の下流側に位置する搬送部30Cから構成されている。
【0028】
蒸気処理室12の入口18および出口19には、搬入用ダクト25および搬出用ダクト26が設けられている。搬入用ダクト25は、上流側の搬送部30Aの上に配置され、蒸気処理直前の青果物Bが収容されたトレイTが位置し、搬出用ダクト26は、下流側の搬送部30Cの上に配置され、蒸気処理直後の青果物Bが収容されたトレイTが位置するようになっている。
【0029】
搬入用ダクト25の入口27および搬出用ダクト26の出口28には、第1カーテン24と同じ構造をもつ第2カーテン29がそれぞれ取付けられている。第2カーテン29は、図5および図6に示すように、第1カーテン24と同じように、下端に達する多数のスリットが設けられている。そして、第1カーテン24から搬入用ダクト25内、搬出用ダクト26内にわずかに漏洩する蒸気を、搬入用ダクト25内、搬出用ダクト26内にそれぞれとどめるべく機能する。
【0030】
蒸気発生室11の下部には、図3に示すように、加湿器14と加熱器15により発生および加熱させた蒸気の温度・湿度を検出する温湿度検出器41が配置されている。温湿度検出器41は、乾球温度と湿球温度を計測できる乾湿計からなり、発生させた蒸気の温度(乾球温度)と湿度(乾球温度と湿球温度の差から算出される)を検出する。
【0031】
ケーシング10には、制御装置40が取付けられている。制御装置40は、操作パネルの操作入力により、循環ファン20、加湿器14、加熱器15、駆動モータ33のオンオフ、出力調整、タイマー運転を行なう。また、制御装置40は、温湿度検出器41からの検出信号により、加湿器14と加熱器15の一方又は両方の出力を制御し、ケーシング10内を循環する蒸気(すなわち、蒸気処理室12内を上昇する蒸気)の温度・湿度を設定状態に維持する。さらに、蒸気処理室12の上流側の圧力を検出する圧力検出器を設け、圧力検出器からの検出信号により、循環ファン20の出力を制御してよい。
【0032】
また、制御装置40は、搬送装置30の駆動モータ33を可変制御して、各搬送ロール32の回転数を調整し、搬送装置30における青果物Bの搬送速度を設定値に維持し、さらに、設定値を可変する。設定値は、トレイT内の青果物Bが蒸気処理室12の入口18から出口19までの間を通過する時間が、青果物Bの表面の殺菌処理に要する時間と同じになるように設定される。例えば、青果物Bの表面の殺菌処理に要する時間を2分間、3分間に設定する場合、トレイT内の青果物Bが蒸気処理室12の入口18から出口19まで通過する時間がそれぞれ2分間、3分間となるように、搬送速度を可変調整する。
【0033】
青果物Pが収容されるトレイTは、ケーシング10の蒸気処理室12内で蒸気の循環流が十分通過できる通気性が確保されていればよく、底板に孔の開いた収穫物の搬送用トレイなどを代用することができる。
【0034】
次に、上記構成の蒸熱処理装置1を用いて、青果物を殺菌処理する手順について説明する。
【0035】
まず、操作パネルの操作入力により、加湿器14、加熱器15を作動させ、蒸気を発生させるとともに、2台の循環ファン20を作動させ、発生した蒸気を図3の矢印のように強制循環させ、温湿度検出器41からの検出信号により、ケーシング10内を循環する蒸気の温度・湿度を設定状態に維持する。
【0036】
例えば、マンゴーの炭疽病様黒色斑点の発生抑制を目的とした殺菌処理を行なう場合、温度48~52℃、湿度90~100%、処理時間2~3分間に設定する(蒸気処理室12の室内長が1.5mで、処理時間2分間の場合、搬送速度は0.75m/分、処理時間3分間の場合、搬送速度は0.5m/分となる)。また、オクラのはい色かび病菌による腐敗や切り口褐変の発生抑制を目的とした殺菌処理を行なう場合、温度48~52℃、湿度90~100%、処理時間3~5分間に設定する。
【0037】
次に、図1に示すように、搬送装置30の上流側の搬送部30Aの上に、処理対象の青果物Bを収容したトレイTを一列に載置し、操作パネルの操作入力により、駆動モータ33を作動させ、搬送部30Aの上の青果物Bを収容したトレイTをケーシング10の蒸気処理室12に向けて設定速度で搬送させる。
【0038】
先頭のトレイTは、最初に第2カーテン29を通過して、搬入用ダクト25の入口27から搬入用ダクト25内に入り、搬入用ダクト25から第1カーテン24を通過して、入口18から中間の搬送部30Bの上を蒸気処理室12に入る。蒸気処理室12内に入ったトレイT上の青果物Bは、蒸気処理室12内を矢印のように上昇する蒸気により表面が殺菌処理され、その後、出口19から第1カーテン24を通過して搬送部30Cの上を搬出用ダクト26に移動し、搬出用ダクト26の出口28から第2カーテン29を通過し、下流側の搬送部30Cの上に搬出される。
【0039】
同様に、2番目以降のトレイTが、順次、第2カーテン29を通過して、搬送用ダクト25の入口27から搬入用ダクト25内に入り、搬入用ダクト25から第1カーテン24を通過して、入口18から搬送部30Bの上を蒸気処理室12に入り、トレイT上の青果物Bが蒸気により殺菌処理され、出口19から第1カーテン24を通過して搬送部30Cの上を搬出用ダクト26に移動し、搬出用ダクト26の出口28から第2カーテン29を通過して、搬送部30Cの上に搬出される。
【0040】
蒸気処理室12の前後の入口18および出口19は、それぞれ第1カーテン24で閉じられており、ケーシング10内を循環する蒸気が外部に漏れることが防止または抑制される。また、入口18および出口19に設けられた搬入用ダクト25の入口27および搬出用ダクト26の出口28も、それぞれ第2カーテン29で閉じられており、搬入用ダクト25内のトレイTが蒸気処理室12に進入する際に、また、蒸気処理室12内のトレイTが搬出用ダクト26に退出する際に、第1カーテン24のスリットが部分的に開いて、蒸気処理室12内から少量の蒸気が搬入用ダクト25内あるいは搬出用ダクト26内に漏れ出すことがあっても、それぞれ第2カーテン29によって、搬入用ダクト25あるいは搬出用ダクト26から外部への漏れが防止される。
【0041】
このように、搬送手段30上のトレイTに収容された青果物Bは、先頭のトレイTから連続的にケーシング10内に搬送され、蒸気処理室12内を蒸気処理に必要な所定の時間を掛けて順次通過し、ケーシング10を出て行く。このとき、ケーシング10内を循環する蒸気は、前後の入口18および出口19に垂れ下がる第1カーテン24と、さらには、その両外側の搬入用ダクト25の入口27および搬出用ダクト28に垂れ下がる第2カーテン29により、外部への漏洩が抑止されるので、設定された温度・湿度の蒸気により、安定した殺菌処理が行なわれる。
【0042】
上記実施形態によると、ケーシング10内を処理対象の青果物Bごとの殺菌処理に適する温度及び湿度に保ちながら、加湿器14で発生させた蒸気を循環ファン20で強制循環させ、搬送装置30により、青果物Pが収容されたトレイTを、連続的にケーシング10内の蒸気処理室12を通過させ、トレイTに収容した青果物Bを効率よく、また、安定して殺菌処理することができる。
【0043】
従来のように多数のトレイに収容された青果物を処理室に多段に収容し、扉を密閉し、殺菌処理後に扉を開放して、多数のトレイに収容された青果物を搬出するバッチ処理に比べて、収容および搬出に伴う作業者の作業負担が大きく減り、多数のトレイに収容された青果物の殺菌処理を効率よく行なうことができる。
【0044】
また、従来のように殺菌処理前後に扉を開放することがなく、また、上記したように第1カーテン24および第2カーテン29による2段階の漏洩防止効果によりケーシング10内を循環する蒸気の温度・湿度を一定の設定状態に維持し、これにより、上述したように、青果物の殺菌処理、蒸熱処理を安定して行なうことができる。
【0045】
本実施形態の蒸熱処理装置1は、青果物の殺菌処理をバッチ処理ではなく、連続処理で行えるから、処理量に合わせた適正使用が可能である。バッチ処理の場合、多段の棚に定量の青果物を収容することが望ましく、定量に満たない少量の青果物を処理する場合は、蒸気の利用効率の低下を招き、また、蒸気の通過条件の変更による調整が必要になるが、連続処理の場合、少量の処理にも適しており、一日の収穫実績に応じた処理をより行いやすくなる。
【0046】
本実施形態の蒸熱処理装置1は、青果物をトレイに収容して蒸気処理室に搬送したが、トレイは必ずしも必要とされない。通気性のあるメッシュ素材のベルトコンベアを使用した場合、トレイを使用せずに直接、処理対象の青果物をベルトコンベア上に移して流し、同様に蒸熱処理することも可能である。
【0047】
以上説明したように、本発明によると、搬送手段上の青果物を、蒸気を循環させているケーシング内に所定の時間で通過させることにより、処理対象の青果物を、連続的に蒸熱処理することができる。また、青果物の搬送速度を可変とすることで、処理対象の青果物に応じて処理時間を容易に最適化することができ、例えば、同じ日に異なる種類の青果物を同一のラインに搬送して蒸気処理するような使い方も可能である。搬送と停止を繰り返し、断続的に蒸熱処理する使い方も可能である。
【0048】
本発明で処理可能な青果物の例としては、マンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツなどの果実、オクラ、ブロッコリーなどの野菜、根菜が挙げられるが、これに限定されない。また、青果物または青果物を収容するトレイは、サイズに応じて、一列に並べて搬送してもよいし、2列以上に並べて搬送してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、青果物を連続的に搬送して蒸熱処理を行う蒸熱処理装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 蒸熱処理装置
10 ケーシング
10A 天板パネル
10B,10C 側板パネル
10D 底板パネル
11 蒸気発生室
12 蒸気処理室
13,21 仕切り板
14 加湿器
15 加熱器
16 下部連通口
17 下部連通空間
18,27 入口
19,28 出口
20 循環ファン(循環装置)
22 上部循環空間
23 上部循環口
24 第1カーテン
25 搬入用ダクト
26 搬出用ダクト
29 第2カーテン
30 搬送装置
30A,30B,30C 搬送部
31 コンベア本体
32 搬送ローラ
33 駆動モータ
40 制御装置
41 温湿度検出器
B 青果物
F 床面
T トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6