(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040438
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】容器の画像取得装置及び画像取得方法、並びにそれらを用いた容器の検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
G01N21/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147391
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕宗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 千代子
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA12
2G051AB11
2G051BA06
2G051BA08
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB02
2G051CC15
2G051DA06
2G051EA08
(57)【要約】
【課題】容器内の水滴等の影響を抑えて検査対象とそれ以外の部分との明暗差が十分に生じる検査用画像を取得する。
【解決手段】可視光に対する遮光性が高い検査対象3を含む対象領域TAに対して、近赤外光の波長域の第1照明光と、前記可視光の波長域の第2照明光とを照射し、容器2を通過した第1照明光の波長域における対象領域TAの第1画像と、容器2を通過した第2照明光の波長域における対象領域TAの第2画像とを撮像し、第1画像と第2画像との間の明暗に関する差分の画像を検査用画像として生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光に対する透光性を有する透光部に、前記可視光に対する遮光性が前記透光部よりも高い検査対象が設けられ、内部には液体が充填された容器における前記検査対象の良否を検査するための検査用画像を取得する画像取得装置であって、
前記検査対象を含む対象領域に対して、近赤外光の波長域の第1照明光と、前記可視光の波長域の第2照明光と、を照射することが可能な照明手段と、
前記容器を通過した前記第1照明光の波長域における前記対象領域の第1画像と、前記容器を通過した前記第2照明光の波長域における前記対象領域の第2画像とを撮像する撮像手段と、
前記第1画像と前記第2画像との間の明暗に関する差分の画像を前記検査用画像として生成する画像処理手段と、
を備えた容器の検査用の画像取得装置。
【請求項2】
前記照明手段は、所定の搬送経路上の第1位置の容器に前記第1照明光を照射するように設けられた第1照明手段と、前記搬送経路上の前記第1位置とは異なる第2位置の容器に前記第2照明光を照射するように設けられた第2照明手段とを備え、
前記撮像手段は、前記第1位置の容器を通過した第1照明光が入射するように設けられた第1カメラと、前記第2位置の容器を通過した第2照明光が入射するように設けられた第2カメラとを備えている請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記照明手段は、同一の検査位置にある前記容器に対して前記第1照明光及び前記第2照明光の両者を照射できるように構成され、
前記撮像手段は、第1撮像素子及び第2撮像素子と、前記第1撮像素子が前記第1照明光の波長域の前記第1画像を撮像し、前記第2撮像素子が前記第2照明光の波長域の前記第2画像を撮像するように、各撮像素子の撮像対象となる波長域を選別する波長域選別手段と、を備えた請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記波長域選別手段は、前記検査位置の容器を通過した第1照明光及び第2照明光を、前記第1撮像素子及び前記第2撮像素子のそれぞれに向かうように分割する分割手段と、
前記第1撮像素子に対しては前記第1照明光が導かれ、前記第2撮像素子に対しては前記第2照明光が導かれるように、分割された第1照明光及び第2照明光を波長域に応じて選択的に通過させるフィルタ手段と、を備えている請求項3に記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記第1撮像素子及び前記第2撮像素子が互いに異なるカメラに設けられ、前記分割手段は前記カメラ外に設けられている請求項4に記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記波長域選別手段は、前記検査位置の容器を通過した第1照明光及び前記第2照明光を、前記第1照明光が前記第1撮像素子に向かい、前記第2照明光が前記第2撮像素子に向かうように、波長域に応じて分光する分光手段を備えている請求項3に記載の画像取得装置。
【請求項7】
前記分光手段、前記第1撮像素子及び前記第2撮像素子が同一のカメラ内に設けられている請求項6に記載の画像取得装置。
【請求項8】
前記対象領域が、前記容器内の前記液体の液面よりも上方となる位置に設けられた検査対象を含むように設定されている請求項1~7のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の画像取得装置と、
前記画像処理手段にて生成された前記検査用画像中の明暗差に基づいて前記検査対象の良否を判別する判別手段とを備えた容器の検査装置。
【請求項10】
可視光に対する透光性を有する透光部に、前記可視光に対する遮光性が前記透光部よりも高い検査対象が設けられ、内部には液体が充填された容器における前記検査対象の良否を検査するための検査用画像を取得する画像取得方法であって、
前記検査対象を含む対象領域に対して、近赤外光の波長域の第1照明光と、前記可視光の波長域の第2照明光と、を照射する手順と、
前記容器を通過した前記第1照明光の波長域における前記対象領域の第1画像と、前記容器を通過した前記第2照明光の波長域における前記対象領域の第2画像とを撮像する手順と、
前記第1画像と前記第2画像との間の明暗に関する差分の画像を前記検査用画像として生成する手順と、
を含む容器の検査用の画像取得方法。
【請求項11】
請求項10の画像取得方法によって検査用画像を取得する手順と、
取得された前記検査用画像中の明暗差に基づいて前記検査対象の良否を判別する手順と、を含む容器の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光に対して透光性を有する透光部に、遮光性のマーキング等の検査対象が設けられた容器を検査するための画像を取得する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
透明又は半透明の樹脂製容器の表面に設けられた文字列等を検査する手法として、PET(ポリエチレンテレフタレートの略。以下、同様である。)樹脂製のプリフォームに凹凸模様として刻印された金型番号の検査を目的として、プリフォームをその背後から照明し、正面側からプリフォームを観察した画像を撮像し、得られた画像に基づいて刻印部分の適否を検査する検査方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査方法を、液体が充填された容器の検査に適用した場合、容器の背面側から入射した照明光が容器の内部を通過して正面側から出射し、カメラに入射する。そのため、容器の内壁に付着した水滴や泡等(以下、水滴等と呼ぶことがある。)が画像中に暗部として出現し、刻印等の検査対象の検出精度が劣化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、容器内の水滴等の影響を抑えて検査対象とそれ以外の部分との明暗差が十分に生じる検査用画像を取得するための画像取得装置及び方法、並びにそれらを用いて検査精度を高めることが可能な容器の検査装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像取得装置は、可視光に対する透光性を有する透光部に、前記可視光に対する遮光性が前記透光部よりも高い検査対象が設けられ、内部には液体が充填された容器における前記検査対象の良否を検査するための検査用画像を取得する画像取得装置であって、前記検査対象を含む対象領域に対して、近赤外光の波長域の第1照明光と、前記可視光の波長域の第2照明光と、を照射することが可能な照明手段と、前記容器を通過した前記第1照明光の波長域における前記対象領域の第1画像と、前記容器を通過した前記第2照明光の波長域における前記対象領域の第2画像とを撮像する撮像手段と、前記第1画像と前記第2画像との間の明暗に関する差分の画像を前記検査用画像として生成する画像処理手段と、を備えたものである。
【0007】
本発明の一態様に係る画像取得方法は、可視光に対する透光性を有する透光部に、前記可視光に対する遮光性が前記透光部よりも高い検査対象が設けられ、内部には液体が充填された容器における前記検査対象の良否を検査するための検査用画像を取得する画像取得方法であって、前記検査対象を含む対象領域に対して、近赤外光の波長域の第1照明光と、前記可視光の波長域の第2照明光と、を照射する手順と、前記容器を通過した前記第1照明光の波長域における前記対象領域の第1画像と、前記容器を通過した前記第2照明光の波長域における前記対象領域の第2画像とを撮像する手順と、前記第1画像と前記第2画像との間の明暗に関する差分の画像を前記検査用画像として生成する手順と、を含むものである。
【0008】
本発明の一態様に係る容器の検査装置は、上記態様に係る画像取得装置と、その画像処理手段にて生成された前記検査用画像中の明暗差に基づいて前記検査対象の良否を判別する判別手段とを備えたものである。また、本発明の一態様に係る容器の検査方法は、上記態様に係る画像取得方法によって検査用画像を取得する手順と、取得された前記検査用画像中の明暗差に基づいて前記検査対象の良否を判別する手順と、を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一形態に係る容器の検査装置に関する基本構成の一例を示す図。
【
図2】照明装置及び撮像装置の構成の一例を示す図。
【
図3】照明装置及び撮像装置の構成の他の例を示す図。
【
図4】照明装置及び撮像装置の構成のさらに他の例を示す図。
【
図5】
図2及び
図3の例で使用可能なカメラの分光感度特性の一例を示す図。
【
図6】
図4の例で使用可能なカメラの分光感度特性の一例を示す図。
【
図9】
図7の第1画像と
図8の第2画像との差分の画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[基本構成]
まず、本発明の一形態に係る容器の検査装置における基本構成を説明する。
図1は検査装置1の基本構成の一例を示している。検査装置1は、容器の一例としてのPET樹脂製のボトル2を検査するように設けられている。ボトル2には、検査対象の一例として、サポートリング2aの幾らか下方に印字部3が設けられている。ボトル2には液体の一例としての飲料が充填されている。ボトル2の上端の口部はキャップ4で封止されている。印字部3は内容物の液面Lに対して幾らか上方に位置している。ボトル2の内壁には、飲料の水滴等が付着している場合がある。
図1では、印字部3の一部の背後に水滴Dが付着している様子が示されている。なお、
図1では、印字部3に「123」の数字列が記された状態が示されているが、これは一例である。印字部3は、一例として液体を充填して封印した製造日付等の情報を、インクジェットプリンタにて印刷して形成される。ただし、印字部3の内容及びその形成方法は適宜に変更されてよい。
【0011】
ボトル2の素地は、可視光に対して透光性を有する透光部とされている。透光性は、透明及び半透明のいずれも含む概念である。印字部3は、可視光に対する遮光性が透光部としてのボトル2の素地部分(透明又は半透明な部分)よりも高い。検査装置1は、印字部3の可視光に対する遮光性と、近赤外光に対する透光性とを利用して、水滴等の影響を抑えつつ印字部3とそれ以外の部分との間の明暗差を十分に確保した検査用画像を取得し、得られた検査用画像を利用して印字部3の良否を高精度に検査することを意図したものである。
【0012】
すなわち、印字部3はその目的から見て可視光の波長域ではボトル2の素地に対して明確に区別して視認できるように設けられる。そのため、ボトル2の素地が可視光の波長域にて透光性を有する透光部である場合、印字部3はその素地部分よりも遮光性が高くなるように形成される。一方、近赤外光は、ボトル2の素地部分のみならず印字部3も透過する。したがって、ボトル2の印字部3を含む所定領域の近赤外光の波長域における第1画像と、同一領域の可視光の波長域における第2画像とを撮像し、両画像の差分の画像を検査用画像として生成すれば、得られる検査用画像にて印字部3とそれ以外の部分(水滴等が付着した部分も含む。)との間に十分な明暗差を生じさせることができる。その検査用画像にて特定される印字部3を正常な印字部3と比較する等して、印字部3の良否を高精度に検査することができる。
【0013】
検査装置1は、上記の検査用画像を取得するための画像取得装置10を含む。画像取得装置10は、ボトル2を照明する照明手段の一例としての照明装置11と、そのボトル2を撮像する撮像手段の一例としての撮像装置12とを含んでいる。照明装置11及び撮像装置12は適宜の構成が可能である。それらの例は後述する。
図1では、照明装置11が、印字部3の側方からボトル2を照明し、撮像装置12がその反対側からボトル2を撮像するかのごとく描かれているが、これは理解を助けるために構図を変更したものであって、実際の配置を示すものではない。実際の検査では、印字部3等の検査対象が撮像装置12と正対し、照明装置11はその反対側からボトル2を照明するように設けられる。
【0014】
照明装置11は、ボトル2の印字部3を含む対象領域TAに対して近赤外光の波長域の第1照明光と、可視光の波長域の第2照明光とを照射可能である。上記のように、ボトル2の素地部分は第2照明光に対して透光性を有し、印字部3は、第2照明光に対する遮光性がボトル2の素地部分よりも高い。一方、第1照明光に対しては、ボトル2の透明部、及び印字部3のいずれも透光性を有する。
【0015】
図1では、照明装置11が、印字部3及びその近傍を照明するように描かれているが、その照明範囲は少なくとも印字部3を含むように設定された対象領域TAを検査に適した照明強度で照明できる限りにおいて適宜に変更されてよい。例えば、ボトル2の全体が照明されてもよいし、ボトル2の一部が限定的に照明されてもよい。照明装置11による照明は、検査に必要な明暗差が得られるようにボトル2の対象領域TAに照明光を照射することを意味する。そのような意図でボトル2に照射される照明光は、照明装置11の照明光のみであって、その余の照明光はボトル2に照射されない。一方、ボトル2が置かれた環境における照明光や自然光の存在が排除されるものではない。
【0016】
撮像装置12は、少なくとも一台のカメラ13を含む。カメラ13は、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子14を用いてボトル2の対象領域TAの光学像を光電変換して電子的な画像を生成し、その電子的画像に対応する画像信号を出力する。カメラ13は、ボトル2を通過した照明光を撮像素子14に導くことができるように設けられている。カメラ13の撮像範囲は、少なくとも印字部3を含む対象領域TAの画像を撮像できるように設定されている。カメラ13が撮像する画像は、ボトル2を通過した第1照明光の波長域における対象領域TAの第1画像と、ボトル2を通過した第2照明光の波長域における対象領域TAの第2画像の2種類である。カメラ13は、対象領域TAよりも広い範囲の画像を撮像し、得られた画像から対象領域TAに対応する画像を切り出してその対象領域TAの画像信号を出力するように制御されてもよい。
【0017】
[照明装置及び撮像装置の構成例]
次に、
図2~
図4を参照して、照明装置11及び撮像装置12の構成に関する幾つかの例を説明する。なお、
図2~
図4では照明装置11及び撮像装置12を添え字A、B等を付して適宜に区別するが、いずれの例でも基本構成は
図1にて説明した通りである。
【0018】
(第1の構成例)
図2は第1の構成例を示している。
図2の例では、搬送装置5の搬送経路CPに沿って搬送方向Fに移動するボトル2を検査するように照明装置11A及び撮像装置12Aが構成されている。照明装置11Aは、搬送経路CP上に設定された第1位置P1にてボトル2を照明する第1照明器15Aと、搬送経路CP上の第1位置P1とは異なる第2位置P2にてボトル2を照明する第2照明器15Bとを含んでいる。第1照明器15Aは、光源15aから射出される近赤外光の波長域の第1照明光のみをボトル2に照射し、第2照明器15Bは光源15bから射出される可視光の波長域の第2照明光のみをボトル2に照射する。光源15a、15bは一例としてLEDである。近赤外光を射出するLEDを光源15aとして利用し、可視光、特には近赤外光に対して波長が明確に離れた波長域の可視光を射出する青色LED、緑色LED、白色LED等を光源15bとして利用することが可能である。
【0019】
一方、
図2の撮像装置12Aは、第1照明器15Aに対応して設けられた第1カメラ13Aと、第2照明器15Bに対応して設けられた第2カメラ13Bとを含んでいる。第1カメラ13Aは、第1位置P1のボトル2を挟んで第1照明器15Aと対向するように配置される。それにより、第1カメラ13Aにはボトル2を通過した第1照明光が入射し、その入射光が第1カメラ13Aの第1撮像素子14Aに導かれる。第2カメラ13Bは、第2位置P2のボトル2を挟んで第2照明器15Bと対向するように配置される。したがって、第2カメラ13Bにはボトル2を通過した第2照明光が入射し、その入射光が第2カメラ13Bの第2撮像素子14Bに導かれる。第1撮像素子14Aの感度範囲は、少なくとも第1照明光の波長域、すなわち近赤外光の波長域を含む。第1カメラ13Aからは、第1照明光の波長域における対象領域TAの第1画像に対応した画像信号が出力される。一方、第2撮像素子14Bの感度範囲は、少なくとも第2照明光の波長域、すなわち可視光の波長域を含む。それにより、第2カメラ13Bからは、第2照明光の波長域における対象領域TAの第2画像に対応した画像信号が出力される。
【0020】
図2の例では、第1画像及び第2画像の撮像位置P1、P2が互いに異なるため、一方の画像の撮影時の照明光が他方の画像の撮像時に混入するおそれを抑えることができる。照明装置11Aの照明器15A、15Bとカメラ13A、13Bの対応関係が明確に区別されているため、照明光学系や撮像光学系を簡素化、あるいは単純化できる利点がある。
【0021】
図2の例では、照明器15A、15Bが照射する照明光の波長域が差別化されている。したがって、カメラ13A、13Bの撮像素子14A、14Bの感度範囲は、近赤外光の波長域及び可視光の波長域の両者を含むようにして互いに等しく設定されてもよい。一般に流通しているカメラは、例えば
図5に示すように400nm~1000nmの波長域にて感度を持ち、波長550nm付近にてピークを示す分光感度特性を有している。この種のカメラをカメラ13A、13Bとして利用し、照明器15A、15Bのそれぞれと組み合わせて使用すれば、第1カメラ13Aにて近赤外光の波長域の第1照明光のみによる第1画像を、第2カメラ13Bにて可視光の波長域の第2照明光のみによる第2画像をそれぞれ撮像することが可能である。
図5の分光感度特性のカメラを利用する場合、第1照明光の波長域は、少なくとも700nm~1000nmの範囲、好ましくは850nm程度に設定し、第2照明光の波長域は400nm~650nmの範囲に設定することができる。ただし、それらの波長域は一例である。第1カメラ13A、第2カメラ13Bのそれぞれが撮像対象とする波長域は、波長域の差に応じた明暗分布の相違を明瞭に生じさせ得る限りにおいて適宜に設定されてよい。
【0022】
また、カメラ13A、13Bの感度範囲が制御可能である場合には、第1カメラ13Aの感度範囲を第1照明光の波長域に設定し、第2カメラ13Bの感度範囲を第2照明光の波長域に設定するようにカメラ13A、13Bを制御してもよい。例えば、近赤外光の波長域の画像と、可視光の波長域の画像とを同時的に又は選択的に撮像可能なカメラを用いる場合にそのような設定が可能である。
【0023】
図2の例において、カメラ13A、13Bは、対をなす照明器15A、15Bと対向するように配置されることを必ずしも要しない。第1照明光が第1カメラ13Aに入射し、かつ第2照明光が第2カメラ13Bに入射する対応関係が維持される限り、ボトル2を通過した照明光の光路上にミラー、プリズムといった光学要素を適宜に設け、図示以外の位置にカメラ13A、13Bを配置してもよい。照明器15A、15Bと第1位置P1、第2位置P2との間も、第1照明光を第1位置P1のボトル2に、第2照明光を第2位置P2のボトル2にそれぞれ導くことができる限り、適宜の光学要素を用いて光路が形成されてよい。
【0024】
(第2の構成例)
図3は第2の構成例を示している。
図3の例では、搬送装置5の搬送経路CPに沿って搬送方向Fに移動するボトル2を検査するように照明装置11B及び撮像装置12Bが構成される点で
図2の例と共通するが、搬送経路CP上の同一の検査位置Piにて第1照明光による第1画像、及び第2照明光による第2画像を撮像する点で
図2の例とは相違する。単一の検査位置Piにて波長域が異なる2種類の画像の撮像を可能とするため、照明装置11Bには単一の照明器15Cが検査位置Piに合わせて設けられている。照明器15Cには、検査位置Piのボトル2に対して第1照明光及び第2照明光の両者を照射できるように、第1照明光の光源15aと、第2照明光の光源15bとが適宜に混ざり合うように設けられている。
【0025】
一方、
図3の撮像装置12Bは、第1カメラ13A及び第2カメラ13Bに加えて、ビームスプリッタ16と、第1及び第2のフィルタ17A、17Bとをさらに含んでいる。第1カメラ13A及び第2カメラ13Bは、
図2の例と同様である。ビームスプリッタ16及びフィルタ17A、17Bは、第1撮像素子14Aによって第1照明光の波長域の第1画像が撮像され、第2撮像素子14Bによって第2照明光の波長域の第2画像が撮像されるように、各撮像素子14A、14Bの撮像対象となる波長域を選別するために設けられている。ビームスプリッタ16は、検査位置Piのボトル2を通過した照明光(第1照明光及び第2照明光の両者を含む。)の光線束を、第1カメラ13Aに向かう直進方向の光線束と、第2カメラ13Bに向かう直交方向の光線束とに分割する。
【0026】
第1フィルタ17Aは、ビームスプリッタ16と第1カメラ13Aとの間に配置され、ビームスプリッタ16を直進方向に通過した第1照明光の波長域の光線束を通過させ、それ以外の波長域(第2照明光の波長域を含む。)の光線束の通過を阻止する。第2フィルタ17Bは、ビームスプリッタ16と第2カメラ13Bとの間に配置され、ビームスプリッタ16にて直交方向に曲げられた第2照明光の波長域の光線束を通過させ、それ以外の波長域(第1照明光の波長域を含む。)の光線束の通過を阻止する。なお、第1フィルタ17Aは第1カメラ13Aの付属部品又は内装部品として設けられ、第2フィルタ17Bは第2カメラ13Bの付属部品又は内装部品として設けられてもよい。
【0027】
図3の例によれば、第1カメラ13Aの撮像素子14Aには近赤外光の波長域の第1照明光のみが導かれ、第2カメラ13Bの撮像素子14Bには可視光の波長域の第2照明光のみが導かれる。したがって、第1カメラ13Aにて第1画像を、第2カメラ13Bにて第2画像をそれぞれ撮像することが可能である。単一の検査位置Piにて第1画像及び第2画像を撮像できるので、照明装置11B及び撮像装置12Bの設置に要するスペースを削減でき、ボトル2の搬送中における姿勢の変化(例えば回転等)の影響を受けない利点がある。
【0028】
図3の例においては、ビームスプリッタ16が分割手段の一例として機能し、フィルタ17A、17Bがフィルタ手段の一例として機能し、それらの組み合わせが波長域選別手段の一例として機能する。ただし、それらの組み合わせに代えて、近赤外光と可視光とを分光する機能を備えた分光プリズム等の光学要素が分光手段として用いられ、分光手段にて分光された第1照明光を第1カメラ13Aの第1撮像素子14Aに、第2照明光を第2カメラ13Bの第2撮像素子14Bにそれぞれ導いてもよい。その場合はフィルタ17A、17Bを省略してよい。
【0029】
図3の例において、ビームスプリッタ16とカメラ13A、13B及びフィルタ17A、17Bとの位置関係は、図示例に限らず、ビームスプリッタ16にて一方向に分光された照明光が第1フィルタ17Aを経由して第1カメラ13Aに入射し、ビームスプリッタ16にて異なる方向に分光された照明光が第2フィルタ17Bを経由して第2カメラ13Bに入射する関係が維持される限り適宜に変更可能である。ビームスプリッタ16とカメラ13A、13Bとの間の照明光の光路上にミラー、プリズムといった光学要素が適宜に設けられてよい。照明装置11Bと検査位置Piとの間の光路、及び検査位置Piとビームスプリッタ16との間の光路も、照明光を検査位置Piのボトル2に導き、かつボトル2を通過した照明光をビームスプリッタ16に導くことが可能である限り、適宜の変更が可能である。
【0030】
カメラ13A、13Bの感度範囲が制御可能である場合には、第1カメラ13Aの感度範囲を第1照明光の波長域に設定し、第2カメラ13Bの感度範囲を第2照明光の波長域に設定するようにカメラ13A、13Bを制御してもよい。例えば、近赤外光の波長域の画像と、可視光の波長域の画像とを同時的に又は選択的に撮像可能なカメラを用いることにより、そのような構成を実現することが可能である。その場合は、フィルタ17A、17Bを省略しても、第1カメラ13Aにて第1画像を、第2カメラ13Bにて第2画像をそれぞれ撮像することが可能である。このような形態では、ビームスプリッタ16と、カメラ13A、13Bの感度制御との組み合わせが波長域選別手段の一例として機能する。
【0031】
(第3の構成例)
図4は第3の構成例を示している。
図4の例は、搬送経路CP上の同一の検査位置Piにて第1照明光による画像、及び第2照明光による画像をそれぞれ取得する点で
図3の例と共通し、それに用いる照明装置11Bも単一の照明器15Cを利用する点で
図3の例と共通する。一方、撮像装置12Cとして、単一のカメラ13Cが利用される点が
図3の例とは相違する。
【0032】
カメラ13Cは、
図2及び
図3に示した第1撮像素子14A及び第2撮像素子14Bに加えて、分光プリズム18をその内部に含む。分光プリズム18は、カメラ13Cに入射した照明光(第1照明光及び第2照明光を含む。)を第1照明光と第2照明光とに分光し、分光後の第1及び第2照明光を互いに異なる方向に配置された撮像素子14A、14Bに導く。例えば、分光プリズム18は、第1照明光を直進方向に分光して第1撮像素子14Aに導き、第2照明光を斜め方向に分光して第2撮像素子14Bに導く。したがって、分光プリズムは分光手段の一例として機能する。また、分光プリズム18は、第1撮像素子14Aによって第1照明光の波長域の第1画像が撮像され、第2撮像素子14Bによって第2照明光の波長域の第2画像が撮像されるように、各撮像素子14A、14Bの撮像対象となる波長域を選別する波長域選別手段の一例としても機能する。
【0033】
分光プリズム18を利用して撮像素子14A、14Bに撮像対象の波長域の照明光のみを導くことにより、第1撮像素子14Aからは近赤外光の波長域の第1照明光による第1画像に対応した画像信号を、第2撮像素子14Bからは可視光の波長域の第2照明光による第2画像に対応した画像信号をそれぞれ取り出すことが可能である。
【0034】
図4の例でも、単一の検査位置Piにて第1画像及び第2画像を撮像できるので、照明装置11B及び撮像装置12Cの設置に要するスペースを削減でき、ボトル2の搬送中における姿勢の変化(例えば回転等)の影響を受けない利点がある。さらに、単一のカメラ13Cに内蔵された撮像素子14A、14B間では、撮像範囲が厳密に一致していることが通例である。したがって、第1画像と第2画像との間で対象領域TAの位置がずれるおそれがなく、画像処理段階で位置合わせを実施するといった手間を省略することが可能である。
【0035】
カメラ13Cのように、感度範囲が近赤外光の波長域に設定された撮像素子と、感度範囲が可視光の波長域に設定された撮像素子と、それらに撮像対象の波長域の光線束を分光して導くように構成されたカメラは市場に流通している。その一例の分光感度特性を
図6に示す。この種のカメラを利用すれば第3の構成例を実現することが可能である。なお、単一の撮像素子基板に、近赤外光の波長域に対して感度を持つ光電変換層と、可視光の波長域に対して感度を持つ光電変換層とを積層し、それらの光電変換層からの電荷取り出し動作を制御することにより、近赤外光の波長域の画像と、可視光の波長域の画像とを同時に、又は選択的に撮像可能な撮像素子も存在する。このような撮像素子を利用する場合には、その撮像動作の制御によって単一の撮像素子を第1撮像素子又は第2撮像素子として機能させることが可能である。このような撮像素子を利用する場合には、分光プリズム18をさらに省略し、単一の撮像素子の感度制御によって波長域選別手段を実現することができる。
【0036】
(変形例)
図3及び
図4の例では、撮像装置12B、又は撮像装置12Cにて第1画像及び第2画像を同時に撮像するものとしたが、一回の撮像に要する時間がカメラ13の視野及びボトル2の搬送速度からみて十分に短い場合には、第1画像と第2画像とを交替的(順序は問わない)に撮像するものとしてもよい。例えば、照明装置11Bを第1照明光と第2照明光とで交替的に発光させ、可視光から近赤外光にかけて感度範囲を持つ単一のカメラ13にて発光時期に同期して画像を撮像すれば、第1画像と第2画像とを撮像することが可能である。あるいは、照明装置11Bからは第1照明光及び第2照明光を同時に照射し、カメラ13に入射する照明光の波長域を第1照明光の波長域と第2照明光の波長域とで切り替え、あるいはカメラ13の撮像素子14における感度範囲を近赤外光の波長域と可視光の波長域とで切り替えることによっても、第1画像と第2画像とを撮像することができる。
【0037】
図2~
図4の例では、搬送中のボトル2を対象としたが、静止するボトルが対象とされてもよい。印字部3等の検査対象の向きが不定である場合には、ボトル2をその中心線の回りに自転させ、印字部3等の検査対象が照明装置11及びカメラ13の側に繰り出される時期に合わせてカメラ13にてボトル2を撮像してもよい。照明装置11は常時点灯でもよいし、カメラ13の撮像動作に同期して点灯又は消灯するように制御されてもよい。
【0038】
[制御系]
図1に戻って検査装置1の制御系について説明する。カメラ13にて撮像された画像に基づいて印字部3を検査するため、検査装置1には処理ユニット20が設けられている。処理ユニット20は、一例として、CPU及びその動作に必要な内部記憶装置等を含んだコンピュータユニットとして構成されている。処理ユニット20には、画像処理部21と、検査部22とが設けられている。画像処理部21及び検査部22は、例えば処理ユニット20のハードウエアと、ソフトウエアとしてのコンピュータプログラムとの組み合わせによって実現される論理的装置として設けられてもよいし、LSI等の論理回路を組み合わせた物理的装置として設けられてもよい。
【0039】
画像処理部21は、カメラ13から出力される第1画像及び第2画像のそれぞれの画像信号を受け取り、検査部22における検査にて使用する検査用画像を生成するための画像処理を施す。画像処理部21が実施する画像処理は、第1画像と第2画像との間の明暗に関する差分の画像を検査用画像として生成する処理を含む。すなわち、画像処理部21は第1画像中の各画素と第2画像中の各画素との明度の差を画素ごとに演算することにより、両側の明暗の差に応じた明暗分布を持つ差分画像を検査用画像として生成する。このような処理を実行することにより、画像処理部21は画像処理手段の一例として機能する。その他にも、画像処理部21は、印字部3とそれ以外の部分との明暗差が確保された検査用画像を生成するために適した各種の画像処理を実施してよい。例えば、画像処理部21は、画像の明度、コントラスト等の補正処理等を実施してよい。
【0040】
検査部22は、画像処理部21にて処理された検査用画像に対応する画像信号を受け取り、印字部3の良否を所定のアルゴリズムに従って判別する。その処理は、例えば、印字部3に対応した固有の明度を持つ部分が検査用画像に出現しているか否かを判別する処理である。その処理を実行することにより、検査部22は判別手段の一例として機能する。なお、印字部3の良否を判別するアリゴリズムは、検査用画像中の明暗差を利用する限り、適宜に構成されてよい。例えば、検査部22は、検査用画像を二値化して印字部3を明部として抽出し、得られた印字部3の画像と、良品の印字部3の画像とを比較して印字部3の良否を判別してもよい。
【0041】
検査部22における検査結果を出力するための手段として、処理ユニット20には、検査結果を表示するモニタ23、あるいは検査結果を記憶する記憶装置24等が適宜に接続されてよい。出力手段としてプリンタが接続されてもよい。さらに、処理ユニット20には、検査装置1のオペレータが適宜の指示を入力するためのキーボード、ポインティングデバイスといった各種の入力手段が接続されてよい。
図1では、入力手段の図示が省略されている。
【0042】
以上のように構成された画像取得装置10によれば、印字部3の可視光に対する遮光性、及び近赤外光に対する透光性を利用して、水滴等の影響を抑えつつ印字部3とそれ以外の部分との間の明暗差を十分に確保した検査用画像を取得することができる。また、検査装置1によれば、その検査用画像を利用して印字部3の良否を精度よく検査することが可能である。
【0043】
上述した画像取得装置10を用いて取得した対象領域TAの画像の例を
図7~
図9に示す。
図7は所定の条件下でボトル2の対象領域TAを撮像した第1画像の例、
図8は同一の対象領域TAを同一条件下で撮像した第2画像の例、
図9は
図7及び
図8の画像の差分の画像である。
図7の第1画像では、近赤外光が印字部(
図8及び
図9にて「20.05.09」と読み取れる部分)を透過するために映っていない。印字部付近に付着した水滴部分は、近赤外光の散乱が生じることにより相対的に暗部として出現している。一方、
図8の第2画像では印字部が暗部として出現し、それ以外の部分は第1画像と似通った明暗分布が見られる。
図9の画像では、ボトルの影や水滴等がすべて相殺されて印字部のみが明るく残っていることが確認できる。
【0044】
なお、ボトルに充填した液体は黒色に近いので、可視光による第2画像(
図8)ではボトル内の液体によって照明光が減衰されて暗く映るのに対し、近赤外光による第1画像(
図7)では可視光よりも相対的に透光率が高いため明るく映っている。
図9の画像では、液体部分の明度差の影響で液体部分が幾らか明るく残るが、印字部の検査には何ら支障がない。
【0045】
本発明は上述した形態に限定されず、適宜の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。例えば、検査対象の容器はPET樹脂製のボトルに限らず、近赤外光及び可視光のそれぞれに対して透光性を有する容器であれば本発明を適用することが可能である。例えば、ポリプロピレン樹脂、あるいはポリエチレン樹脂製の容器に対して本発明が適用されてもよい。検査対象は印字部に限らず、容器の透光部との比較において、可視光の波長域で遮光性が高いものであれば検査対象として設定されてよい。透光部は容器の少なくとも一部にあればよく、検査対象はその透光部に設けられていればよい。
【0046】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0047】
本発明の一態様に係る画像取得装置(10)は、可視光に対する透光性を有する透光部に、前記可視光に対する遮光性が前記透光部よりも高い検査対象(3)が設けられ、内部には液体が充填された容器(2)における前記検査対象の良否を検査するための検査用画像を取得する画像取得装置であって、前記検査対象を含む対象領域(TA)に対して、近赤外光の波長域の第1照明光と、前記可視光の波長域の第2照明光と、を照射することが可能な照明手段(11;11A;11B)と、前記容器を通過した前記第1照明光の波長域における前記対象領域の第1画像と、前記容器を通過した前記第2照明光の波長域における前記対象領域の第2画像とを撮像する撮像手段(12;12A;12B;12C)と、前記第1画像と前記第2画像との間の明暗に関する差分の画像を前記検査用画像として生成する画像処理手段(21)と、を備えたものである。
【0048】
本発明の一態様に係る画像取得方法は、可視光に対する透光性を有する透光部に、前記可視光に対する遮光性が前記透光部よりも高い検査対象(3)が設けられ、内部には液体が充填された容器(2)における前記検査対象の良否を検査するための検査用画像を取得する画像取得方法であって、前記検査対象を含む対象領域(TA)に対して、近赤外光の波長域の第1照明光と、前記可視光の波長域の第2照明光と、を照射する手順と、前記容器を通過した前記第1照明光の波長域における前記対象領域の第1画像と、前記容器を通過した前記第2照明光の波長域における前記対象領域の第2画像とを撮像する手順と、前記第1画像と前記第2画像との間の明暗に関する差分の画像を前記検査用画像として生成する手順と、を含むものである。
【0049】
本発明の一態様に係る容器の検査装置(1)は、上記態様に係る画像取得装置(10)と、その画像処理手段(21)にて生成された前記検査用画像中の明暗差に基づいて前記検査対象の良否を判別する判別手段(22)とを備えたものである。また、本発明の一態様に係る容器の検査方法は、上記態様に係る画像取得方法によって検査用画像を取得する手順と、取得された前記検査用画像中の明暗差に基づいて前記検査対象の良否を判別する手順と、を含むものである。
【0050】
上記態様においては、近赤外光の波長域の第1照明光は容器の透光部のみならず検査対象も透過するため、第1画像では検査対象が暗部として出現しない。一方、可視光の波長域の第2照明光は容器の透光部を透過し、検査対象では遮光されるため、検査対象は明確な暗部として出現する。容器の水滴等は、近赤外光及び可視光の波長域のそれぞれにおける透過率や散乱の程度に応じて、第1画像及び第2画像に明暗差を伴って出現する。したがって、第1画像と第2画像との差分の画像としての検査用画像において、検査対象とそれ以外の部分との間に十分な明暗差を生じさせることができる。その検査用画像中の明暗差を利用して検査対象の良否を正確に判別して検査精度を高めることが可能である。
【0051】
上記態様において、前記照明手段は、所定の搬送経路(CP)上の第1位置(P1)の容器に前記第1照明光を照射するように設けられた第1照明手段(15A)と、前記搬送経路上の前記第1位置とは異なる第2位置(P2)の容器に前記第2照明光を照射するように設けられた第2照明手段(15B)とを備え、前記撮像手段は、前記第1位置の容器を通過した第1照明光が入射するように設けられた第1カメラ(13A)と、前記第2位置の容器を通過した第2照明光が入射するように設けられた第2カメラ(13B)とを備えてもよい。これによれば、第1位置にて第1照明手段及び第1カメラを用いて第1画像を撮像し、第2位置にて第2照明手段及び第2カメラを用いて第2画像を撮像することができる。容器に対する近赤外光の波長域の照明と、可視光の波長域の照明とを第1位置及び第2位置に分けて実施し、第1画像及び第2画像の撮像も第1位置と第2位置とで分けて実施するため、一方の位置における照明光が他方の位置における照明光に混ざって検査用画像中の明暗差が損なわれるおそれを排除することが可能である。
【0052】
前記照明手段(11B)は、同一の検査位置(Pi)にある前記容器に対して前記第1照明光及び前記第2照明光の両者を照射できるように構成され、前記撮像手段は、第1撮像素子(14A)及び第2撮像素子(14B)と、前記第1撮像素子が前記第1照明光の波長域の前記第1画像を撮像し、前記第2撮像素子が前記第2照明光の波長域の前記第2画像を撮像するように、各撮像素子の撮像対象となる波長域を選別する波長域選別手段(16、17A、17B;18)と、を備えてもよい。これによれば、同一位置にて第1画像及び第2画像を撮像することができるので、照明手段や撮像手段の設置に必要なスペースを削減することが可能である。同一位置にて第1画像及び第2画像を撮像することにより、両画像の差分の画像を生成する際の位置合わせに要する手間を削減し、又は軽減することもできる。
【0053】
前記波長域選別手段は、前記検査位置の容器を通過した第1照明光及び第2照明光を、前記第1撮像素子及び前記第2撮像素子のそれぞれに向かうように分割する分割手段(16)と、前記第1撮像素子に対しては前記第1照明光が導かれ、前記第2撮像素子に対しては前記第2照明光が導かれるように、分割された第1照明光及び第2照明光を波長域に応じて選択的に通過させるフィルタ手段(17A、17B)と、を備えてもよい。これによれば、分割手段とフィルタ手段との組み合わせにより、第1撮像素子にて第1画像が撮像され、第2撮像素子にて第2画像が撮像されるように、各撮像素子の撮像対象となる波長域を選別することができる。
【0054】
前記第1撮像素子及び前記第2撮像素子が互いに異なるカメラに設けられ、前記分割手段は前記カメラ外に設けられてもよい。これによれば、可視光から近赤外光にかけての波長域にわたる感度範囲を持つ一般的なカメラを使用する場合でも、第1撮像素子には第1照明光を、第2撮像素子には第2照明光を選択的に導き、第1画像及び第2画像を区別して撮像することができる。
【0055】
前記波長域選別手段は、前記検査位置の容器を通過した第1照明光及び前記第2照明光を、前記第1照明光が前記第1撮像素子に向かい、前記第2照明光が前記第2撮像素子に向かうように、波長域に応じて分光する分光手段(18)を備えてもよい。これによれば、分光手段を用いて第1照明光と第2照明光とを分光するため、第1撮像素子には第1照明光を、第2撮像素子には第2照明光を選択的に導き、第1画像及び第2画像を区別して撮像することができる。
【0056】
前記分光手段、前記第1撮像素子及び前記第2撮像素子が同一のカメラ(13C)内に設けられてもよい。これによれば、単一のカメラを用いて第1画像及び第2画像を撮像することができる。それにより、撮像手段の設置に要するスペースをさらに削減することができる。
【0057】
前記対象領域(TA)は、前記容器内の前記液体の液面よりも上方となる位置に設けられた検査対象を含むように設定されてもよい。これによれば、液面よりも上方に水滴等が付着している場合でもその影響を抑えて検査対象とそれ以外との間の明暗差が十分に確保された検査用画像を取得することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 検査装置
2 ボトル(容器)
3 印字部(検査対象)
10 画像取得装置
11、11A、11B 照明装置(照明手段)
12、12A、12B、12C 撮像装置(撮像手段)
13 カメラ
13A 第1カメラ
13B 第2カメラ
13C カメラ
14 撮像素子
14A 第1撮像素子
14B 第2撮像素子
15A 第1照明器(第1照明手段)
15B 第2照明器(第2照明手段)
15C 照明器
16 ビームスプリッタ(波長域選別手段、分割手段)
17A、17B フィルタ(波長域選別手段、フィルタ手段)
18 分光プリズム(波長域選別手段、分光手段)
20 処理ユニット
21 画像処理部(画像処理手段)
22 検査部(判別手段)
CP 搬送経路
P1 第1位置
P2 第2位置
Pi 検査位置
TA 検査領域