(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040457
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】チタン合金板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 14/00 20060101AFI20230315BHJP
C22F 1/18 20060101ALI20230315BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C22C14/00 Z
C22F1/18 H
C22F1/00 623
C22F1/00 604
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 694A
C22F1/00 694Z
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 684B
C22F1/00 684C
C22F1/00 686A
C22F1/00 685Z
C22F1/00 683
C22F1/00 691C
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147420
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】岳辺 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】塚本 元気
(72)【発明者】
【氏名】爲成 純一
(57)【要約】
【課題】強度、成形性および経済性に優れたチタン合金板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】化学組成が、質量%で、Cu:0.70%以下、Cr:0.03~0.30%、Si:0.03~0.15%、Fe:0.06%以下、O:0.15%以下、N:0.15%以下、C:0.05%以下、H:0.013%以下、残部:Tiおよび不純物であり、[Cu+1.2Cr+3.4Si+5O≧0.80]を満足し、金属組織において、平均結晶粒径dが0.020~0.150mmであり、板厚t(mm)と前記平均結晶粒径d(mm)との関係が[t/d≧3.0]を満足する、チタン合金板。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成が、質量%で、
Cu:0.70%以下、
Cr:0.03~0.30%、
Si:0.03~0.15%、
Fe:0.06%以下、
O:0.15%以下、
N:0.15%以下、
C:0.05%以下、
H:0.013%以下、
残部:Tiおよび不純物であり、
下記(i)式を満足し、
金属組織において、平均結晶粒径dが0.020~0.150mmであり、
板厚tと前記平均結晶粒径dとの関係が、下記(ii)式を満足する、チタン合金板。
Cu+1.2Cr+3.4Si+5O≧0.80 ・・・(i)
t/d≧3.0 ・・・(ii)
但し、上記(i)式中の各元素記号はチタン合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとし、上記(ii)式中の各記号は、以下のように定義される。
t:板厚(mm)
d:平均結晶粒径(mm)
【請求項2】
板厚が0.3~1.5mmである、請求項1に記載のチタン合金板。
【請求項3】
金属組織において、単位結晶粒当たりに存在する変形双晶の境界長さの総和が、0mm超1.0mm以下である、請求項1または2に記載のチタン合金板。
【請求項4】
請求項1または2に記載のチタン合金板の製造方法であって、
請求項1に記載の化学組成を有するチタンスラブまたはチタン鋳塊を800~1100℃の温度域に加熱後、圧延し、当該圧延を700℃以上の温度域で完了する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後に、600℃以下の温度域まで急冷し、熱延板とする、冷却工程と、
前記熱延板を冷間圧延し、冷延板とする、冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程の後に冷延板を600~700℃の温度域で仕上焼鈍し、冷延焼鈍板とする、焼鈍工程と、を有する、
チタン合金板の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のチタン合金板の製造方法であって、
前記焼鈍工程の後に、前記冷延焼鈍板に5.0%未満の伸び率で予ひずみを付与する工程、をさらに有する、
請求項4に記載のチタン合金板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン合金板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン合金は、強度、耐食性等に優れるため、航空分野、輸送機関等、様々な用途で活用されている。その一方、チタン合金は、成形性が低く、複雑な部品形状に加工しにくい。このため、例えば、特許文献1~3には、成形性を向上させたチタン合金板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-298970号公報
【特許文献2】国際公開第2019/043882号
【特許文献3】特開2010-31314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、強度と成形性とは、互いに相反する特性である。すなわち、成形性が向上すると、強度が低下する。このため、強度と成形性とをともに、バランスよく向上させることは難しいという問題がある。また、強度と成形性とを向上させるために、合金元素を添加する場合があるが、この場合、製造コストが増加するという問題がある。
【0005】
上述した特許文献1~3に開示されたチタン合金板は、添加元素の含有量が比較的高く、製造コストが増加する。従って、経済性の観点からさらに改善の余地がある。このように、強度、成形性および経済性のすべてに優れたチタン合金板を得ることは難しいという課題がある。
【0006】
以上を踏まえ、本発明は、上記の課題を解決し、成形性を維持した上で経済性に優れた高強度チタン合金板およびその製造方法を提供することを目的とする。なお、具体的には、後述するように、高強度とは、0.2%耐力で200MPa以上が好ましく、成形性を維持とは、均一伸びで25%以上が好ましいと考える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のチタン合金板およびその製造方法を要旨とする。
【0008】
(1)化学組成が、質量%で、
Cu:0.70%以下、
Cr:0.03~0.30%、
Si:0.03~0.15%、
Fe:0.06%以下、
O:0.15%以下、
N:0.15%以下、
C:0.05%以下、
H:0.013%以下、
残部:Tiおよび不純物であり、
下記(i)式を満足し、
金属組織において、平均結晶粒径dが0.020~0.150mmであり、
板厚tと前記平均結晶粒径dとの関係が、下記(ii)式を満足する、チタン合金板。
Cu+1.2Cr+3.4Si+5O≧0.80 ・・・(i)
t/d≧3.0 ・・・(ii)
但し、上記(i)式中の各元素記号はチタン合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとし、上記(ii)式中の各記号は、以下のように定義される。
t:板厚(mm)
d:平均結晶粒径(mm)
【0009】
(2)板厚が0.3~1.5mmである、上記(1)に記載のチタン合金板。
【0010】
(3)金属組織において、単位結晶粒当たりに存在する変形双晶の境界長さの総和が、0mm超1.0mm以下である、上記(1)または(2)に記載のチタン合金板。
【0011】
(4)上記(1)または(2)に記載のチタン合金板の製造方法であって、
上記(1)に記載の化学組成を有するチタンスラブまたはチタン鋳塊を800~1100℃の温度域に加熱後、圧延し、当該圧延を700℃以上の温度域で完了する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後に、600℃以下の温度域まで急冷し、熱延板とする、冷却工程と、
前記熱延板を冷間圧延し、冷延板とする、冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程の後に冷延板を600~700℃の温度域で仕上焼鈍し、冷延焼鈍板とする、焼鈍工程と、を有する、
チタン合金板の製造方法。
【0012】
(5)上記(1)~(3)のいずれかに記載のチタン合金板の製造方法であって、
前記焼鈍工程の後に、前記冷延焼鈍板に5.0%未満の伸び率で予ひずみを付与する工程、をさらに有する、
上記(4)に記載のチタン合金板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強度、成形性および経済性に優れたチタン合金板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、強度、成形性および経済性に優れたチタン合金板について検討を行い、以下の(a)~(c)の知見を得た。
【0015】
(a)強度を向上させるためには、Cu、Cr、Siの含有量を高めることが望ましい。その一方、これらの元素は、Tiと結合し、微細な金属間化合物を形成する。このような金属間化合物は、結晶粒を微細にする。結晶粒が微細であると、成形性が低下する。このため、金属間化合物を極力形成させず、結晶粒が粗粒であるのが望ましい。具体的には、平均結晶粒径を、0.020~0.150mmの範囲とするのが好ましい。
【0016】
(b)従って、Cu、Cr、およびSiを含有させることで、強度を高めつつも、成形性を低下させる金属間化合物を形成させないようにする必要がある。そこで、これらの元素の含有量を所定の範囲に制御するのが有効である。これにより、各元素の含有量に上限を設けつつ、バランスよく含有させることができる。この結果、金属間化合物を形成させることなく、チタン合金板の強度を向上させることができるため、経済性に優れたチタン合金板を得ることができる。また、製造時に熱間圧延後の冷却条件等を適切に制御することでも、金属間化合物の形成を抑制することができ、成形性も確保できる。
【0017】
(c)加えて、冷間圧延後に行われる仕上焼鈍後、予ひずみを加えるのが望ましい。予ひずみを加えることで、成形後の製品の強度を効率的に向上させることができる。
【0018】
本発明の一実施形態は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本実施形態の各要件について詳しく説明する。
【0019】
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明で、含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。また、以下の段落で説明する各元素の含有量は、合金板全体の平均的な分析値である。分析試料は、O、Nなどの偏在が懸念される表層0.05mm(全厚で0.1mm)を除去し、板厚全体から試料を均等に採取して分析すればよい。
【0020】
Cu:0.70%以下
Cuは、強度を向上させる効果を有する。しかしながら、Cuを過剰に含有させると、CuがTiとの金属間化合物を形成し、焼鈍時の結晶粒の成長を阻害する。特に、バッチ式焼鈍では、0.70%超含有させると、金属間化合物の形成に起因し、結晶粒が微細になる。この結果、成形性が低下する。このため、Cu含有量は、0.70%以下とする。Cu含有量は、0.65%以下とするのが好ましく、0.60%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Cu含有量は、0.10%以上とするのが好ましい。
【0021】
Cr:0.03~0.30%
Crは、Cuと同様、強度を向上させる効果を有する。このため、Cr含有量は、0.03%以上とする。Cr含有量は、0.05%以上とするのが好ましく、0.10%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Crは、β安定化元素である。このため、Crを過剰に含有させると、β相が形成され、焼鈍時の結晶粒の成長を阻害し、結晶粒が微細になる。この結果、成形性が低下する。このため、Cr含有量は、0.30%以下とする。Cr含有量は、0.25%以下とするのが好ましく、0.20%以下とするのがより好ましい。
【0022】
Si:0.03~0.15%
Siも、CuおよびCrと同様、強度を向上させる効果を有する。このため、Si含有量は、0.03%以上とする。Si含有量は、0.05%以上とするのが好ましい。しかしながら、Siを過剰に含有させると、結晶粒の成長を阻害する。また、Siは、Tiとの間で金属間化合物を形成することでも、焼鈍時、結晶粒の成長を阻害する。このため、Si含有量は、0.15%以下とする。Si含有量は、0.12%以下とするのが好ましく、0.10%以下とするのがより好ましい。
【0023】
Fe:0.06%以下
Feは、β安定化元素であり、チタン合金中に含有される不純物である。Fe含有量が過剰であると、β相が形成され、焼鈍時に結晶粒の成長を阻害する。この結果、成形性が低下する。このため、Fe含有量は、0.06%以下とする。Fe含有量は、0.04%以下とするのが好ましい。なお、Fe含有量の下限については、特に制限しないが、実質的には、0.001%以上であるのが好ましい。
【0024】
O:0.15%以下
Oは、チタン合金中に含有される不純物元素であり、後述するNと同様、強度を向上させる効果を有する。しかしながら、Oを過剰に含有させると、著しく成形性が低下する。このため、O含有量は、0.15%以下とする。O含有量は、N含有量との総和で、0.15%以下であるのが好ましい。一方、上述した効果を得るために、O含有量は、N含有量との総和で、0.05%以上とするのが好ましい。
【0025】
Cu、Cr、SiおよびOは、強度を向上させる効果を有する一方、成形性を低下させる金属間化合物を形成しやすい。このため、これら元素の含有量の関係は、(i)式を満足する必要がある。
【0026】
Cu+1.2Cr+3.4Si+5O≧0.80 ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、チタン合金中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
【0027】
(i)式左辺値の値が0.80未満であると、十分な強度を得ることができない。このため、(i)式左辺値は、0.80以上とする。(i)式左辺値は、0.90以上とするのが好ましく、1.0以上とするのがより好ましい。なお、(i)式左辺値の上限については、特に制限しない。各元素の上限値を鑑みると、(i)式左辺値は、2.32程度となる。
【0028】
N:0.15%以下
Nは、チタン合金中の含有される不純物元素であり、上述したOと同様、強度を向上させる効果を有する。しかしながら、Nを過剰に含有させると、著しく成形性が低下する。このため、N含有量は、0.15%以下とする。N含有量は、O含有量との総和で、0.15%以下であるのが好ましい。一方、上述した効果を得るために、O含有量は、N含有量との総和で、0.05%以上とするのが好ましい。
【0029】
C:0.05%以下
Cは、上述したOおよびNと同様、強度を向上させる効果を有する。しかしながら、Cを過剰に含有させると、成形性が低下する。このため、C含有量は、0.05%以下とする。C含有量は、0.02%以下とするのが好ましい。なお、C含有量の下限については、特に制限しないが、実質的には0.001%以上であるのが好ましい。
【0030】
H:0.013%以下
Hは、チタン合金中に不純物として含有され、脆化を引き起こす元素である。このため、H含有量は、0.013%以下とする。H含有量は、0.008%以下とするのがより好ましい。なお、H含有量の下限については、特に制限しないが、実質的には0.0001%以上であるのが好ましい。
【0031】
本実施形態の化学組成において、残部はTiおよび不純物である。ここで「不純物」とは、チタン合金を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0032】
不純物として、混入する可能性のある元素としては、例えば、Al、Sn、Ni、Mn、Zr、Nb、Mo、V、その他、白金族等の元素がある。これらの元素は、スクラップ、低級のスポンジチタン等の原料を使用した場合に混入することがあるが、混入した場合であっても、各元素の含有量が、0.05%以下とするのが好ましい。また、これらの元素が含有される場合、その合計含有量は、0.3%未満とするのが好ましい。
【0033】
2.平均結晶粒径
本実施形態のチタン合金板の金属組織において、平均結晶粒径dは、0.020~0.150mmの範囲とする。平均結晶粒径dが0.020mm未満であると、結晶粒が微細で、十分な成形性を有するチタン合金板を得ることができない。このため、平均結晶粒径dは、0.020mm以上とする。平均結晶粒径dは、0.030mm以上とするのが好ましく、0.040mm以上とするのがより好ましい。
【0034】
一方、平均結晶粒径dが、0.150mmを超えると、結晶粒単位の変形によって表面凹凸が大きくなり、却って、成形性が低下する。また、表面欠陥の検査も困難になる。このため、平均結晶粒径dは、0.150mm以下とする。平均結晶粒径dは、0.120mm以下とするのが好ましく、0.100mm以下とするのがより好ましい。
【0035】
ここで、上記平均結晶粒径dについては、以下の方法で測定することができる。具体的には、合金板のL断面の板厚中央部(位置)を測定面とし、適当な腐食液でエッチングを行い、EBSDを用いた測定を行うことで平均結晶粒径dを算出する。平均結晶粒径dの算出には、データ解析ソフト(OIM Analysis)を用いればよい。
【0036】
なお、結晶粒径は結晶粒を円相当直径とし、算出すればよい。また、EBSDの測定条件は、測定倍率および視野数は材料の結晶粒径によって変更することができ、原則、1視野に100個以上の結晶粒が含まれる範囲で行うことが望ましい。装置、その他観察条件により、1視野に100個以上の結晶粒が含まれない場合であっても、20個以上の結晶粒が含まれるように測定し、複数視野の測定によって100個以上の結晶粒が含まれるようにすればよい。測定する結晶粒は、測定視野に完全に含まれるものだけを用いて行う。つまり、結晶粒界が視野の境界を分断する場合は、その結晶粒を測定から除外する。
【0037】
そのときのステップサイズは平均結晶粒径の1/10以下で行う。ステップサイズは平均結晶粒径の1/30~1/20程度の値とするのがより好ましい。例えば、平均結晶粒径が約30μmの場合には、倍率が300倍、視野面積350μm×400μm、1視野、ステップサイズを1μmとすればよい。
【0038】
3.板厚
本実施形態のチタン合金板において、板厚tは、0.3~1.5mmの範囲とするのがこのましい。板厚tが0.3~1.5mmである場合において、強度および成形性の両特性が要求されやすいためである。
【0039】
4.板厚と平均結晶粒径との関係
本実施形態のチタン合金板においては、板厚tと平均結晶粒径dとの関係が、下記(ii)式を満足する必要がある。
t/d≧3.0 ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の各記号は、以下のように定義される。
t:板厚(mm)
d:平均結晶粒径(mm)
【0040】
通常、平均結晶粒径dが大きくなると、成形性が向上するが、(ii)式左辺値であるt/dが3.0未満であると、板厚方向の結晶粒の数が過剰に少なくなり、均一伸びが却って低下する。このため、成形性が低下する。また、安定的に良好な成形性を得にくくなる。このため、t/dは、3.0以上とする。t/dは、3.5以上とするのが好ましく、4.0以上とするのがより好ましい。なお、t/dの上限は、特に制限しないが、通常、10.0程度になる。
【0041】
5.変形双晶の長さの総和
チタン合金板は、成形加工して用いられる。この際、加えられた加工の度合いによって、強度が異なる。これは、加工硬化の度合いが異なるからである。そして、加工硬化初期での強度向上は、延性の低下が小さく、成形後の強度向上に有効である。このため、後述する予ひずみ、すなわち均一でかつ、延性を大きく低下させない程度の加工を加えることが望ましい。予ひずみを加えることで、結晶粒内に変形双晶が形成し、強度が向上する。そして、本実施形態のチタン合金板の金属組織においては、単位結晶粒当たりに存在する変形双晶の境界長さの総和(以下、単に「総双晶境界長さ」と記載する。)が0mm超1.0mm以下であるのが好ましい。
【0042】
ここで、単位結晶粒当たりに存在する総双晶境界長さとは、後述する方法で測定される変形双晶の周囲の長さのことであり、導入された予ひずみの程度を表す指標となる。
【0043】
単位結晶粒当たりの総双晶境界長さが0mm超であれば、初期の加工硬化が生じている。このため、単位結晶粒当たりに存在する総双晶境界長さが0mm超とするのが好ましく、0.1mm以上とするのがより好ましい。一方、単位結晶粒当たりの総双晶境界長さが、1.0mm超であると、加工硬化が進み過ぎて、却って、成形性が低下する。このため、単位結晶粒当たりの総双晶境界長さは、1.0mm以下とするのが好ましく、0.9mm以下とするのがより好ましく、0.8mm以下がさらに好ましい。
【0044】
なお、上記単位結晶粒当たりの総双晶境界長さは、以下の手順で測定すればよい。具体的には、上述した平均結晶粒径と同様、EBSDにより測定を行えばよい。ただし、ステップサイズは0.2~0.5μmで測定を行う。その他の条件は平均結晶粒径の測定と同様で行う。測定後、データ解析ソフト(OIM Analysis)を用い、測定視野に完全に含まれている結晶粒のみに分離する。変形双晶は、{11-22}双晶、{10-12}双晶、{11-21}双晶の3つを考慮すればよい。これら双晶のK1面および軸の許容範囲は10°として解析を行い、変形双晶を特定する。これら3つの方位から特定された双晶について、その境界の全周の長さの総和Lを測定し、視野に含まれる結晶粒の数で除することで、単位結晶粒あたりの総双晶境界長さとなる。なお、複数の視野で測定する場合であっても、同様に測定された全ての双晶境界長さの総和Lを、視野の中に含まれる結晶粒の総和で除すればよい。
【0045】
6.目標とする強度と成形性
本実施形態のチタン合金板において、強度は、上述のように合金元素を含まない経済性に優れたチタン合金で得ることが難しい範囲の強度、すなわち0.2%耐力で200MPa以上であるが好ましく、この範囲を高強度であると評価する。強度は、0.2%耐力で、220MPa以上であるのがより好ましく、230MPa以上であるのがさらに好ましい。また、成形性については、均一伸びが25%以上であるのが好ましく、この範囲を成形性が良好であると評価する。均一伸びは、26%以上とするのが好ましく、27%以上とするのがより好ましい。
【0046】
7.製造方法
本実施形態に係るチタン合金板の好ましい製造方法について説明する。本実施形態に係るチタン合金板は、例えば、以下のような製造方法により、安定して製造することができる。
【0047】
7-1.分塊工程
上述した化学組成の鋳塊を、電子ビーム溶解、真空アーク溶解(「VAR」ともいう。)、電子ビーム溶解(「EB溶解」ともいう。)等の方法で製造するのが好ましい。鋳塊の形状は特に制限しない。矩形でも円柱状でもよい。また、必要に応じて鋳塊の表面を切削加工する工程を行ったり、熱間鍛造等により分塊する工程(以下、単に「分塊工程」と記載する。)を行ったりしてもよい。
【0048】
上述した分塊工程では、β単相域(β変態点以上1300℃以下)に加熱し、20%以上の断面減少率の加工を行うのが好ましい。この分塊工程は、凝固欠陥と凝固組織とを解消し、熱間加工性を向上させる目的で行う。このため、熱間圧延等で製造上、支障が無ければ分塊工程を行わなくてもよい。
【0049】
矩形状の鋳塊において分塊工程を行わない場合は、熱間圧延の際、鋳肌が表面欠陥の原因となる。このため、表面を切削し、鋳肌を解消するのが望ましい。また、分塊工程を行う場合は、鋳肌にもよるが、表面を切削する必要はない。この場合、分塊工程完了の後、スケール除去と合わせて、表面を切削してもよい。すなわち、分塊工程の最後に表層のスケールおよび硬化層を除去し、熱間圧延用のスラブとすればよい。また、円柱状の鋳塊の場合、そのままの形状では、熱間圧延が難しいため、矩形状の鋳塊と同様、分塊工程を行い、熱間圧延用のスラブとすればよい。
【0050】
7-2.熱間圧延工程
続いて、上記鋳塊または熱間圧延用のスラブを、800~1100℃の温度域に加熱し、熱間圧延するのが好ましい。熱間圧延の際の加熱温度が800℃未満であると、熱間圧延後に好ましい温度域で冷却しにくくなる。このため、熱間圧延の際の加熱温度は、800℃以上とするのが好ましい。一方、熱間圧延の際の加熱温度が、1100℃を超えると、酸化が過剰に進行し、歩留まりが低下するとともに、硬化層の形成等により表面欠陥が発生する。このため、熱間圧延の際の加熱温度は、1100℃以下とするのが好ましい。なお、熱間圧延では、1回の加熱において、70%以上の圧下率を確保できればよい。
【0051】
熱間圧延は、700℃以上の温度域で完了するのが好ましい。すなわち、熱間圧延の完了温度は、700℃以上とするのが好ましい。本実施形態のチタン合金板の製造では、後述するように、熱間圧延後、金属間化合物の形成を抑制するために、所定の温度域まで急冷する必要があるからである。
【0052】
板厚が比較的薄い、薄板の場合、一般的にコイル形状で製造される。コイル形状にするために、巻き取られる必要があるが、この場合、板表面から放熱しにくくなるため、冷却が遅くなる。従って、コイル形状に巻き取る前に十分冷却する必要がある。
【0053】
ここで、本実施形態のチタン合金板の化学組成においては、700℃付近の温度で、TiとSiとを含む金属間化合物が析出しやすくなる。また、600℃付近の温度で、TiとCuとを含む金属間化合物が析出しやすくなる。すなわち、600~700℃の範囲において、金属間化合物が析出しやすい。このような金属間化合物が形成した結果、熱間圧延後の結晶粒が微細になり、成形性が低下する。
【0054】
また、この金属間化合物は、上記のような温度範囲だけでなく、熱間圧延により導入された加工ひずみが残留している程、析出しやすくなる。従って、熱間圧延後に、上記金属間化合物が形成しにくい温度域まで、十分冷却した後、コイルに巻き取る必要がある。
【0055】
後述するように、バッチ式焼鈍を行った場合には、600~700℃の温度域で、冷間圧延後の仕上焼鈍を行うことがある。この際にも、金属間化合物が析出していると、結晶粒が微細になり、成形性が低下する。また、金属間化合物が形成することで、母相中で添加元素の固溶量が低下し、固溶強化により強度を向上させにくくなる。
【0056】
このため、熱間圧延工程後、コイルに巻き取る前までに、600℃以下の温度域まで急冷し、熱延板とするのが好ましい。コイルに巻き取る前までに、550℃以下の温度域まで急冷されているのがより好ましい。なお、上記急冷とは、10℃/s以上の冷却速度で冷却することをいい、冷却方法としては、例えば、水冷が考えられる。また、上述した温度とは、板の表面温度のことであり、放射温度計で測定する温度のことをいい、後述する段落でも同様である。
【0057】
熱間圧延後は、必要に応じて、脱スケールを行ってもよい。また、熱間圧延後の焼鈍、いわゆる熱延板焼鈍は、金属間化合物が形成しやすくなるため、冷間圧延の際に支障がなければ行わない方が望ましい。
【0058】
なお、熱延板焼鈍を行う場合は、700~800℃の温度域で行うのが望ましい。700℃未満の温度域で熱延板焼鈍をすると、金属間化合物が形成しやすくなる。一方、800℃以上の温度域で熱延板焼鈍すると、β相が形成され、CuおよびSiがβ相に濃化することで、金属間化合物が析出しやすくなる。このため、熱延板焼鈍を行う場合は、700~800℃の温度域で行うのが望ましい。また、焼鈍時間は、短い程、生産性が向上するため、30s以上5min以下とするのが好ましい。
【0059】
熱延板焼鈍を行う場合、連続式焼鈍で焼鈍するのが好ましい。バッチ式焼鈍では金属間化合物の析出を避けつつ、十分に焼きなますことができないためである。焼鈍雰囲気は、特に、限定しないが、大気雰囲気で行えばよい。
【0060】
また、熱延板焼鈍後の冷却速度であるが、この際、板厚が6mm以下であるのが通常であり、この場合、冷却速度は、空冷に相当する1℃/s以上であればよい。金属間化合物が析出するのを抑制できるからである。
【0061】
板厚が6mm超の場合には、冷却が進みにくくなる。このため、冷却速度は、遅くなり、板厚によっては1℃/s以上の冷却速度を得られない場合がある。その場合には、より早く冷却できる水冷を行った方がよい。水冷を行うことで、板厚にもよるが10℃/s以上の冷却速度となり、十分に1℃/s以上の冷却速度を得ることができるからである。熱延板焼鈍を行い、冷却した後に脱スケールを行ってもよい。脱スケールの方法は、特に限定しないが、例えば、ショットブラスト、酸洗、研磨等の機械的な手法または化学的手法によって行えばよい。
【0062】
7-3.冷間圧延工程
続いて、熱延板に冷間圧延を行い冷延板とするのが好ましい。冷間圧延は、複数回に分けて行ってもよい。また、この際、冷間圧延と冷間圧延との間に、必要に応じて、中間焼鈍を行ってもよい。中間焼鈍を行う場合は、例えば、750~800℃の温度域で30秒~2分行うのが好ましい。中間焼鈍は、熱延板焼鈍と同様、連続式焼鈍とすればよい。また、中間焼鈍における焼鈍雰囲気は、特に限定しない。大気雰囲気で焼鈍すればよい。また、中間焼鈍を行った場合は、上述した空冷または水冷に相当する冷却速度で冷却するのが好ましい。熱延板焼鈍と同様に、板厚が6mm以下で板厚が薄い場合は、冷却速度の遅い空冷等で冷却してもよいが、板厚が6mm超で板厚が厚い場合は、水冷で冷却するのがよい。
【0063】
冷間圧延において、後述する仕上焼鈍の直前に行う最終冷間圧延での冷間圧延率は、50%以上とするのが好ましい。上述した冷間圧延率が、50%未満であると、均質な等軸粒が得られずに、粗大な粒と微細な粒とが入り混じった混粒組織となりやすい。
【0064】
混粒組織になると、局所的に粗大な粒が存在する。このような部分では、板厚方向で結晶粒の数が少なくなる。この結果、均一伸びが低下し、成形性が低下しやすくなる。このため、所望する板厚に応じて、最終冷間圧延での冷間圧延率を調整すればよいが、当該冷間圧延率は、50%以上とするのが好ましい。
【0065】
7-4.仕上焼鈍
上記冷間圧延工程の後に、冷延板に仕上焼鈍を行うのが好ましい。仕上焼鈍は、冷間圧延工程が全て完了した後に行う、最終の焼鈍のことであり、最終焼鈍ともいう。仕上焼鈍においては、焼鈍温度を600~700℃の温度域として焼鈍し、冷延焼鈍板とするのが好ましい。仕上焼鈍の焼鈍温度が600℃未満であると、結晶粒が微細になる。この結果、成形性が低下する。このため、仕上焼鈍における焼鈍温度は、600℃以上とするのが好ましい。一方、仕上焼鈍における焼鈍温度が700℃超であると、コイル内部の焼き付きによる表面性状の劣化が生じやすくなる。このため、仕上焼鈍における焼鈍温度は、700℃以下とするのが好ましい。仕上焼鈍における焼鈍温度は、630~680℃の範囲とするのがより好ましい。
【0066】
また、仕上焼鈍における焼鈍時間は、1h以上とするのが好ましい。仕上焼鈍の焼鈍時間が1h未満であると、結晶粒が十分に成長せず、成形性が低下する。このため、上記焼鈍時間は、1h以上とするのが好ましく、4h以上とするのがより好ましい。なお、仕上焼鈍の焼鈍時間の上限は、特に限定しないが、通常、生産性の観点から20h程度となる。
【0067】
仕上焼鈍においては、焼鈍する前に予備加熱を行ってもよい。予備加熱を行うことで、コイル内の温度のばらつきが小さくしやすいからである。予備加熱をする場合も、金属間化合物の析出を抑制するために、加熱温度は550℃以下とするのが好ましい。また、仕上焼鈍は、バッチ式焼鈍とすればよい。低温で長時間の焼鈍を行うことができるからである。また、仕上焼鈍の焼鈍雰囲気は、酸化を抑制するため、真空またはArガスとするのがよい。
【0068】
7-5.予ひずみ
仕上焼鈍後、すなわち、600~700℃の温度域での焼鈍後に、必要に応じて、冷延焼鈍板の強度を向上させるために、予ひずみを加えてもよい。予ひずみとは、製品の加工前に予め加工量の小さい加工を行うことをいう。本実施形態のチタン合金板では、伸び率5.0%未満の予ひずみを付与するのが好ましい。伸び率が5.0%以上では、一因として変形双晶境界長さ総和が1.0mmを超えると考えられ、成形性が低下するからである。伸び率は、4.0%以下とするのが好ましく、3.0%以下とするのがより好ましい。予ひずみを加える方法としては、形状矯正に用いられるテンションレベラーまたはスキンパス圧延で、行うのが好ましい。なお、伸び率とは、以下の(a)式を用いて算出される。
【0069】
伸び率(%)=(l-l0)/l0×100 ・・・(a)
但し、上記式中の各記号は、以下により定義される。
l0:予ひずみ加工前の試験片の標点間距離
l:予ひずみ加工後の試験片の標点間距離
【0070】
以下、実施例によって本実施形態に係るチタン合金板をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0071】
表1に記載の化学組成を有する厚さ60mmのチタン合金のブロックを、表2に記載の条件で、熱間圧延し、600℃以下まで水冷または空冷し、板厚4mmの熱延板とした。なお、表1の化学組成において、O含有量は、不活性ガス溶融赤外線吸収法による分析値である。NおよびH含有量は、不活性ガス溶融熱伝導度法による分析値である。また、C含有量は、高周波燃焼赤外線吸収法による分析値である。また、これら以外の元素の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法による分析値である。また、表2中の「WQ」は、「水冷」を表し、「AC」は「空冷」を表し、「FC」は「炉冷」を表す。
【0072】
その後、No.17、18、21および22以外の例については、熱延板焼鈍を行わず、ショットブラストおよびふっ酸での酸洗により、脱スケールを行った。一方、No.17、18、21および22の例については、熱延板焼鈍を行い、その後、上述した脱スケールを行った。冷間圧延は、1回または2回行い、一部のNo.19~22については、冷間圧延の間に大気中で中間焼鈍を行った。なお、表中のNo.19~22中の中間冷延・焼鈍の項目の冷延率(冷間圧延率)は、中間焼鈍を行う前の冷間圧延の冷延率である。
【0073】
行われた中間焼鈍の条件については、表2に示すとおりである。No.19~22については、中間焼鈍後、ショットブラストおよびふっ酸での酸洗により脱スケールを行った。その後、全てのチタン合金の例について表2に示す条件で、最終冷間圧延および仕上焼鈍を行い、冷却した。仕上焼鈍は、真空中で行い、炉冷した。冷却後、No.2、24~26、32~36については、表2に記載の伸び率で、調質圧延により予ひずみを付与した。
【0074】
【0075】
【0076】
こうして得られたチタン合金板について、平均結晶粒径および総双晶境界長さを以下の手順で測定した。
【0077】
(平均結晶粒径)
平均結晶粒径は、合金板のL断面の板厚中央部(位置)を測定面とし、適当な腐食液でエッチングを行い、EBSDを用いた測定を行うことで平均結晶粒径dを算出した。平均結晶粒径dの算出には、データ解析ソフト(OIM Analysis)を用いた。なお、結晶粒径は結晶粒を円相当直径とし、算出した。また、EBSDの測定条件は、2視野に合計130~150個の結晶粒が含まれる範囲で行った。その他の条件については、上述したように、適宜、平均結晶粒径の大きさに合わせて調整した。
【0078】
(総双晶境界長さ)
総双晶境界長さは、上述した平均結晶粒径と同様、EBSDにより測定した。ただし、ステップサイズは0.2~0.5μmで測定を行った。その他の条件は平均結晶粒径の測定と同様とした。測定後、データ解析ソフト(OIM Analysis)を用い、測定視野に完全に含まれている結晶粒のみに分離した。変形双晶は、{11-22}双晶、{10-12}双晶、{11-21}双晶の3つを考慮した。これら双晶のK1面および軸の許容範囲は10°として解析を行い、変形双晶を特定した。これら3つの双晶境界長さの総和Lを測定した視野に含まれる結晶粒の数で除することで、単位結晶粒あたりの総双晶境界長さとした。
【0079】
また、得られたチタン合金板について、引張試験を行い、0.2%耐力および均一伸びを測定した。0.2%耐力が200MPa以上である場合を強度が良好であると評価した。また、均一伸びが25%以上である場合を成形性が良好であると評価した。
【0080】
引張試験の試験片は、JIS 13Bサブサイズ試験片を用いた。試験片は、並行部の長さが32mm、幅6.25mmとし、標点間距離を25mmであるものを使用した。また、引張速度は、ストローク制御によって、ひずみ2%までを0.13mm/minとし、それ以降から破断までを7.5mm/minで実施した。以下、結果を纏めて、表3に記載する。
【0081】
【0082】
本実施形態の要件を満足する試験No.4、5、11~15、17~22、24~29および31~36のチタン合金板は、高強度かつ良好な成形性を有していた。ここで、No.24、26、32~36は、好ましい範囲の予ひずみを付与したため、強度が向上した上、良好な成形性も維持した。一方、No.25は、付与した予ひずみの量が多かったため、強度は向上したものの、均一伸びが他の本発明例と比較して小さく、成形性がやや劣る結果となった。
【0083】
一方、本実施形態の要件を満足しない試験No.1~3、6~10、16、23および30のチタン合金板は、強度または成形性の少なくとも一方が劣る結果となった。化学組成が本実施形態の要件を外れる試験No.1~3については、主に強度が劣るものとなった。他方、同要件を外れる試験No.6~10については、成形性に劣るものとなった。なお、試験No.9は特に高強度であり、成形性が劣ると考えられ、冷間圧延中に幅端部の一部に耳割れが発生した。また、No.16、23、および30の例については、好ましい製造条件で製造されなかったため、平均結晶粒径等が本実施形態の範囲外となり、強度または成形性が劣る結果となった。