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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040481
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20230315BHJP
   H04B 17/18 20150101ALI20230315BHJP
【FI】
H04B1/04 N
H04B17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147473
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荻原 守
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060BB01
5K060CC04
5K060HH06
5K060JJ16
5K060LL29
5K060PP01
5K060PP06
(57)【要約】
【課題】進行波検出部及び反射波検出部の基板への実装面積を低減でき、反射電力の検出誤差を低減できる送信装置を提供する。
【解決手段】送信装置10は、電力増幅部11、進行波検出部13及び反射波検出部17をこの順に備え、かつ、進行波検出部と反射波検出部との間に、アイソレータ15を備える。進行波検出部は、単方向性の方向性結合器13aと、検波器13cとを備え、反射波検出部は、単方向性の方向性結合器17aと、検波器17cとを備える。制御部19は、反射波検出部に結合する定常的な漏れ電力値P1記憶する定常値記憶部19aと、反射波検出部で検出された反射波電力値Pαから定常的な漏れ電力値P1を差し引いて、本来の反射波電力Pβを抽出する抽出部19bと、Pβを閾値Th1と比較し、Pβ>Th1の場合に異常信号を出力する異常判定部19cと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を形成する電力増幅部と、前記送信信号の進行波を検出する進行波検出部と、前記送信信号の反射波を検出する反射波検出部と、これらを制御する制御部と、を備える送信装置において、
電力増幅部、進行波検出部及び反射波検出部をこの順に備え、かつ、前記進行波検出部と前記反射波検出部との間に、アイソレータを備え、
前記進行波検出部は、単方向性の方向性結合器と、前記方向性結合器の結合ポートに接続された検波器と、を備え、
前記反射波検出部は、単方向性の方向性結合器と、前記方向性結合器の結合ポートに接続された検波器と、を備え、
前記制御部は、
前記反射波検出部の方向性結合器において当該反射波検出部に結合する定常的な漏れ電力値を予め記憶する定常値記憶部と、
前記反射波検出部で検出された反射波電力値から、前記定常的な漏れ電力値を差し引いて、本来の反射波電力値を抽出する抽出部と、
前記抽出される本来の反射波電力を閾値と比較し、前記本来の反射波電力が前記閾値を超えた場合に異常信号を出力する異常判定部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記送信装置は、周波数及び電力が種々である複数の送信信号を扱うものであり、
前記定常値記憶部は、前記複数の信号に応じた、定常的な漏れ電力値P1~Pnと、これら定常的な漏れ電力値P1~Pnに対応する閾値Th1~Thnと、を記憶するものであり、
前記電力増幅部は、前記複数の送信信号のうちの選択された送信信号を生成するものであり、
前記抽出部及び前記異常信判定部は、前記任選択された送信信号に対する前記抽出処理及び前記判定処理をするものであること
を特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行波検出部及び反射波検出部の基板への実装面積を低減でき、かつ、反射電力の検出誤差を低減できる送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話網の基地局等では、所定の高周波信号を送信する送信装置が使用されている。この種の送信装置では、送信した電力の一部が外部接続機器やアンテナ等で反射されることがあり、反射電力が大きい場合、送信装置の不具合を招く。そのため、送信装置は、反射波を検出し、それに基づいて当該装置を保護する機能を有している。
【0003】
このような送信装置の一例が、特許文献1に開示されている。図3(A)は、その説明図である。特許文献1に開示された送信装置50は、電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)を計測して、外部接続機器の劣化状況を把握するものである(特許文献1の段落5等)。そのため、送信装置50は、増幅器51a及びアイソレータ51bを有し所定の送信信号を形成する電力増幅部51と、単方向性の方向性結合器53a及び検波器53bを有する進行波検出部53と、サーキュレータ55a及び検波器55bを有する反射波検出部55と、制御部57と、を備えている。
【0004】
この送信装置50では、反射波を、サーキュレータ55aによって、進行波とは別の経路に分離してVSWRを計測するため、VSWRを精度良く計測できるという(特許文献1の段落54等)。
【0005】
また、送信装置の他の例が、特許文献2に開示されている。図3(B)は、その説明図である。特許文献2に開示された送信装置70は、アッテネータ71a及び増幅器71bを有し所定の送信信号を形成する電力増幅部71と、1つの双方向性の方向性結合器73を利用して構成された進行波検出部75及び反射波検出部77と、制御部79と、を備えている。
【0006】
この送信装置70の場合も、VSWRに基づいて、アンテナからの反射波の異常を検出するものである。ただし、送信装置70の立上がり時等のVSWRが不安定になり易い場合を考慮するため、進行波検出部75が検出した進行波に比例した電圧(Vf)が、所定の閾値(Vfth)を超えている場合に、アッテネータ71aを用いた所定の制御を行なっている(特許文献2の段落22、図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-43957号公報
【特許文献2】特開2011-35703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された送信装置50の場合、サーキュレータ55aを用いているので、実際は、反射波による検波器53b等の破損を防止するために、サーキュレータ55aと検波器53bとの間に、反射波を減衰するためのアッテネータ55xが設けられる(図3(A)参照)。しかも、大電力の反射波が及ぶことを考慮し、アッテネータ55xは、特に高出力が要求される基地局等では、大電力に耐え得るものが必要である。従って、アッテネータ55xは、大電力が及んだ際に生じる熱を放熱できる構造を有したものが必要になるため、基板上に、放熱構造等を設けるための広い面積が必要になるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に開示された送信装置70の場合、双方向性の1つの方向性結合器73を用いて進行波検出部75及び反射波検出部77を構成しているため、回路構成を簡易にできる。しかしその反面、反射波が生じた場合、反射波の影響で進行波検出部75の進行波電力値が変化してしまうため、進行波電力値に対する反射波出力値に誤差が生じるので、反射波の異常判断が難しいという問題がある。
この出願は上記の点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、進行波検出部及び反射波検出部の基板への実装面積を低減でき、かつ、反射電力の検出誤差を低減できる送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的の達成を図るため、この発明によれば、送信信号を形成する電力増幅部と、前記送信信号の進行波を検出する進行波検出部と、前記送信信号の反射波を検出する反射波検出部と、これらを制御する制御部と、を備える送信装置において、
電力増幅部、進行波検出部及び反射波検出部をこの順に備え、かつ、前記進行波検出部と前記反射波検出部との間に、アイソレータを備え、
前記進行波検出部は、単方向性の方向性結合器と、前記方向性結合器の結合ポートに接続された検波器と、を備え、
前記反射波検出部は、単方向性の方向性結合器と、前記方向性結合器の結合ポートに接続された検波器と、を備え、
前記制御部は、
前記反射波検出部の方向性結合器において当該反射波検出部に結合する定常的な漏れ電力値を予め記憶する定常値記憶部と、
前記反射波検出部で検出された反射波電力値から、前記定常的な漏れ電力値を差し引いて、本来の反射波電力値を抽出する抽出部と、
前記抽出される本来の反射波電力値を閾値と比較し、前記本来の反射波電力値が前記閾値を超えた場合に異常信号を出力する異常判定部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
この出願の送信装置の発明を実施するに当たり、前記送信装置は、周波数及び電力が種々である複数の送信信号を扱うものであり、
前記定常値記憶部は、前記複数の信号に応じた、定常的な漏れ電力値P1~Pnと、これら定常的な漏れ電力値P1~Pnに対応する閾値Th1~Thnと、を記憶するものであり、
前記電力増幅部は、前記複数の送信信号のうちの選択された送信信号を生成するものであり、
前記抽出部及び前記異常信判定部は、前記選択された送信信号に対する前記抽出処理及び前記判定処理をするものであることが、好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の送信装置では、進行波検出部及び反射波検出部を、別々の方向性結合器を用いて構成している。方向性結合器は、構造上、マイクロストリップライン等で構成できるので、基板への実装面積が比較的小さく済むので、2つの方向性結合器を用いているといえど、基板への実装面積は、特許文献1のように大電力に対応できるサーキュレータを用いる場合より、小さく済む。また、アイソレータは、2つの方向性結合器の間に設けてあるため、反射波をサーキュレータで直接受けていた特許文献1の構成と比較して、アイソレータ自体は小型で済むため基板への実装面積も小さくて済む。
さらに、進行波検出部及び反射波検出部各々が単方向性の方向性結合器を用いていること、及び、進行波検出部と反射波検出部との間にアイソレータを設けてあることから、特許文献2のように双方向性の方向性結合器を用いる場合に比べ、反射波の進行波検出部への影響を軽減できる。従って、進行波電力値は精度が高いものになる。
さらに、制御部は、反射波検出部に定常的に及んでいる定常的な漏れ電力値を差し引いて本来の反射波電力値に基づいて反射波の異常判断をする。
これらのことから、進行波検出部及び反射波検出部の基板への実装面積を低減でき、かつ、反射電力の検出誤差を低減できる送信装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の送信装置10を説明するためのブロック図である。
図2】(A)は、実施形態の送信装置10の1つの動作例を説明するためのフローチャートであり、(B)は、実施形態の送信装置10の他の動作例を説明するためのフローチャートである。
図3】(A)は特許文献1に開示された送信装置50の構成及び問題点を説明するためのブロック図、(B)は特許文献2に開示された送信装置70の構成及び問題点を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の送信装置の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。
【0015】
1. 実施形態の送信装置10の構成
図1は、実施形態の送信装置10を説明するためのブロック図である。実施形態の送信装置10は、電力増幅部11、進行波検出部13、アイソレータ15、反射波検出部17、制御部19、入力端子10a及び出力端子10bを備えている。
然も、送信装置10は、電力増幅部11、進行波検出部13及び反射波検出部17をこの順で備え、かつ、進行波検出部13と反射波検出部17との間に、アイソレータ15を備えている。そして、進行波検出部13、反射波検出部17及び制御部19各々が、以下に説明する特徴的な構成となっている。以下、具体的に説明する。
【0016】
電力増幅部11は、所定電力の送信信号を形成するものである。この実施形態の電力増幅部11は、可変型のアッテネータ11aと、増幅器11bと、D/A変換器11cとで構成してある。可変型アッテネータ11aの入力端子に、送信装置10の入力端子10aを接続してあり、可変型アッテネータ11aの出力端子に、増幅器11bの入力端子を接続してあり、可変型アッテネータ11aの制御端子に、D/A変換器11cの出力端子を接続してあり、D/A変換器11cの入力端子に、後述する増幅制御部19dを接続してある。
【0017】
進行波検出部13は、送信信号の進行波電力をモニタするものである。この実施形態の進行波検出部13は、単方向性の方向性結合器13aと、固定型のアッテネータ13bと、検波器13cと、ログアンプ13dと、A/D変換器13eとで構成してある。
方向性結合器13aの入力ポートを、増幅器11bの出力端子に接続してあり、方向性結合器13aの出力ポートを、アイソレータ15の入力端子に接続してあり、方向性結合器13aの結合ポートに、アッテネータ13bの入力端子を接続してあり、方向性結合器13aのアイソレーションポートに、終端抵抗13aaを接続してある。終端抵抗13aaによって、方向性結合器13aは、単方向性を確保している。
また、アッテネータ13bの出力端子を、検波器13cの入力端子に接続してあり、検波器13cの出力端子を、ログアンプ13dの入力端子に接続してあり、ログアンプ13dの出力端子を、A/D変換器13eの入力端子に接続してあり、A/D変換器13eの出力端子を制御部19の抽出部19bに接続してある。
【0018】
進行波検出部13のアッテネータ13b、検波器13c、ログアンプ13d及びA/D変換器13eの機能は次の通りである。
アッテネータ13bは、方向性結合器13aの結合ポートを経由してくる送信信号の一部であるモニタ電力を、検波器13cに適合するレベルに減衰するものである。
検波器13cは、上記した送信信号のモニタ電力を電圧に変換するものである。ログアンプ13dは、入力電圧と出力電圧とが直線的な関係になるように変換するものである。A/D変換器13eは、送信装置10で実施されるデジタル信号処理に対応するためのもので、上記のモニタ電力に関係するアナログ電圧を、デジタル値に変換するものである。
なお、アッテネータ13b、ログアンプ13d及びA/D変換器13eを設けるか否かは、送信装置10の信号処理の方式により決めれば良く、信号処理の方式次第では、アッテネータ13b、ログアンプ13d及びA/D変換器13e全部又は一部を設けない場合があっても良い。
【0019】
アイソレータ15は、周知の通り、順方向の信号すなわち進行波を損出少なく出力端子に送り、逆方向の信号すなわち反射波を大きな減衰量で減衰するものである。従って、アイソレータ15の入力端子を、進行波検出部13の出力端子に接続してあり、アイソレータ15の出力端子を、反射波検出部17の入力端子に接続してある。
【0020】
反射波検出部17は、送信装置10の出力端子10b側からの反射波電力をモニタするものである。この実施形態の反射波検出部17は、単方向性の方向性結合器17aと、固定型のアッテネータ17bと、検波器17cと、ログアンプ17dと、A/D変換器17eとで構成してある。
方向性結合器17aの入力ポートを、アイソレータ15の出力端子に接続してあり、方向性結合器17aの出力ポートを、送信装置10の出力端子10bに接続してあり、方向性結合器17aの結合ポートに、アッテネータ17bの入力端子を接続してあり、方向性結合器17aのアイソレーションポートに、終端抵抗17aaを接続してある。終端抵抗17aaによって、方向性結合器17aは、単方向性を確保できる。
また、アッテネータ17bの出力端子を、検波器17cの入力端子に接続してあり、検波器17cの出力端子を、ログアンプ17dの入力端子に接続してあり、ログアンプ17dの出力端子を、A/D変換器17eの入力端子に接続してあり、A/D変換器17eの出力端子を、制御部19の増幅制御部19dに接続してある。
【0021】
反射波検出部17のアッテネータ17b、ログアンプ17d及びA/D変換器17eの機能は、扱う信号が反射波のモニタ電力である点を除けば、進行波検出部13のアッテネータ13b、ログアンプ13d及びA/D変換器13eの機能と同様である。また、アッテネータ17b、ログアンプ17d及びA/D変換器17eを設けるか否かも、送信装置10の信号処理の方式により決めれば良く、信号処理の方式次第では、アッテネータ17b、ログアンプ17d及びA/D変換器17e全部又は一部を設けない場合があっても良い。
【0022】
制御部19は、この実施形態の場合、定常値記憶部19aと、抽出部19bと、異常判定部19cと、増幅制御部19dとで構成してある。そして、抽出部19bの入力端子に、反射波検出部17の出力端子を、すなわちこの実施形態の場合はA/D変換器17eの出力端子を、接続してある。また、抽出部19bの出力端子は、異常判定部19cの入力端子に接続してある。また、抽出部19bは、定常値記憶部19aとの情報授受のため、定常値記憶部19aにも接続してある。また、異常判定部19cの出力端子は、この実施形態の場合、増幅制御部19dの所定端子に接続してある。増幅制御部19dの出力端子は、電力増幅部11のD/A変換器11cの入力端子に接続してある。異常判定部19c、増幅制御部19d各々は、必要情報を授受するため、定常値記憶部19aとも接続してある。これら各部分19a~19dは、以下の機能を有するものである。
【0023】
先ず、制御部19の定常値記憶部19aは、以下の情報を予め記憶するものである。すなわち、反射波検出部17の方向性結合器17aの結合ポートから僅かに漏れてくる進行波に関する漏れ電力値と、送信装置10と外部装置やアンテナとの間のインピダンス整合を所定通りにしたとしても方向性結合器17aの結合ポートから僅かに漏れてくる反射波に関する漏れ電力値とから成る漏れ電力値P1(これを本発明では定常的な漏れ電力値P1と称する)を予め記憶するものである。なお、定常的な漏れ電力値P1は、反射波が無い状態において予め実測して求める等して、定常値記憶部19aに格納しておく。また、この実施形態の場合、定常値記憶部19aは、異常判定部19cが異常判定に用いる閾値Thも記憶するものである。
なお、送信装置10が扱う信号が1種類の場合は、定常的な漏れ電力値および異常判定で用いる閾値は、おのおの1つ、すなわち定常的な漏れ電力値P1及び閾値Th1である。従って、定常値記憶部19aに格納する情報も、定常的な漏れ電力値P1及び閾値Th1である。しかし、送信装置10は、周波数及び電力が種々である複数の信号のうちの任意の信号を扱うものであっても良い。送信装置10が複数の信号を扱う場合、定常値記憶部19aは、複数の信号に対応する定常的な漏れ電力値P1~Pn及び閾値Th1~Thnを格納する。表1は、送信装置10が複数の信号(n種の信号)を扱う場合の、定常値記憶部19aの内部のイメージ図である。すなわち、この場合、複数の送信信号S1~Snとして、周波数がf1~fnかつ送信電力がW1~Wnであって、定常的な漏れ電力値がP1~Pnであり、漏れ電力値の異常値管理の閾値がTh1~Thnである例を示してある。詳細は後述するが、表1に示すようなテーブルに対し、抽出部19bは定常的な漏れ電力値を読み出して本来の反射波電力値を算出し、異常判定部19cは、閾値を読み出して、反射波の異常有無を判定する。また、電力制御部10dは、送信信号S1~Snの指定された送信信号の生成制御をする。
【0024】
【表1】
【0025】
制御部19の抽出部19bは、反射波検出部17で検出された反射波電力値(反射波電力値Pαともいう)から、上記の定常的な漏れ電力値例えばP1を差し引いて、本来の反射波電力値(本来の反射波電力値Pβともいう)を抽出するものである。
また、制御部19の異常判定部19cは、抽出部19bが抽出する本来の反射波電力値Pβを閾値Th1と比較し、本来の反射波電力値Pβが閾値Th1を超えた場合に、異常信号Saを出力するものである。
また、制御部19の増幅制御部19dは、電力増幅部11が所定電力の送信信号例えば送信信号S1を出力するよう制御するものであると共に、異常判定部19cが異常信号Saを出力した場合、電力増幅部11に所定動作、例えば電力増幅部11の動作停止や出力低下処置等を制御するものである。
なお、制御部19の定常値記憶部19a、抽出部19b、異常判定部19c及び増幅制御部19d各々は、実際は、CPU(Central Processor Unit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)及びROMや不揮発性メモリ等で構成したハードウエアと、そこに格納されたソフトウエアによって構成してある。
【0026】
2.実施形態の送信装置10の動作
2-1.動作例1
次に、この発明の理解を深めるため、実施形態の送信装置10の動作例について説明する。図2(A)はその説明のためのフローチャートである。なお、図2(A)を参照して説明する動作例は、送信信号が、表1に示した送信信号S1に予め設定されている場合の動作例である。
送信装置10の入力端子10aから入力された高周波信号を、増幅制御部19dの制御の下、可変型アッテネータ11aが所定の電力に減衰した後、増幅器11bが所定の電力に増幅して送信信号S1を生成する(図2(A)のステップ1)。
生成された送信信号S1は、進行波検出部13の方向性結合器13aに入力されると共に、アイソレータ15、反射波検出部17の方向性結合器17aを介して、送信装置10の出力端子10bに伝搬される。ただし、方向性結合器13aに入力した送信信号は、方向性結合器13aの結合度や減衰に応じ、その一部が、モニタ電力として、方向性結合器13aの結合ポートからアッテネータ13bに伝搬される。
【0027】
この送信信号のモニタ電力は、アッテネータ13bによって適正レベルにされた後、検波器13cで検波されてモニタ電力に対応する電圧に変換される。変換された電圧信号は、ログアンプ13dに入力される。ログアンプ13dは、入力電圧と出力電圧とが直線的な関係になるように信号を成形する。ログアンプ13dの出力信号は、A/D変換器13eによってデジタル信号に変化され、進行波電力値PPとして制御部19に出力される。すなわち、進行波電力値PPの測定が終了する(図2(A)のステップ2)。制御部19は、この進行波電力値PPを送信信号の電力値の制御やVSWRの算出に利用する(図2(A)のステップ3)。
【0028】
一方、送信信号は、上記したように、アイソレータ15及び反射波検出部17の方向性結合器17aを経由して送信装置10の出力端子10bに伝搬されるが、その一部は反射波検出部17の方向性結合器17aの結合ポートから、アッテネータ17bに伝搬される。すなわち、進行波に関する漏れ電力値の原因になる電力漏洩が生じる。ただし、反射波検出部17の方向性結合器17aにおいての、進行波に関する上記の漏れ電力値と、既に説明した反射波に関する漏れ電力値とから成る定常的な漏れ電力値は、既に説明したように、送信信号の種類に応じて予め測定されたものと同じであり、従って、定常値記憶部19aに格納されている値P1である。
また、何らかの原因(アンテナや外部装置等の影響)で、送信装置10において反射波が生じると、反射波は、反射波検出部17の方向性結合器17aの結合度や減衰に応じた一部が、反射波のモニタ電力として方向性結合器17aの結合ポートからアッテネータ17bに伝搬される。そして、進行波電力値を抽出したと同様な手順に従い、アッテネータ17b、検波器17c、ログアンプ17d及びA/D変換器17eによって、反射波電力値Pαとして検出される(図2(A)のステップ4)。従って、反射波電力値Pαは、定常的な漏れ電力値P1を含むものになっている。
【0029】
反射波電力値Pαは、制御部19の抽出部19bに入力され、抽出部19bは、以下の(1)式に従い、本来の反射波電力値Pβを算出して、それを異常判定部19cに出力する(図2(A)のステップ5)。
本来の反射波電力値Pβ=反射波電力値Pα-定常的な漏れ電力値P1・・(1)
次に、異常判定部19cは、本来の反射波電力値Pβを閾値Th1と比較し(図2(A)のステップ6)、Pβ>Th1の場合、反射波が異常であると判断して異常信号Saを出力し(図2(A)のステップ7)、異常でない場合は、制御部19は、図示しないタイマーによって制御される周期で、ステップ1からの処理を継続する(図2(A)のステップ8)。
【0030】
2-1.動作例2
図2(B)は、送信装置10の他の動作例の要部を示したフローチャートである。動作例2の動作例1と相違する点は、周波数や電力が異なる複数の種類の送信信号の中から1つの送信信号を先ず選択する点である。選択した後は、図2(A)の動作例を同じである。
従って、送信装置10の制御部19は、動作開始時に、例えば図示しない表示装置を介して使用者に送信信号の選択を求め、選択情報の入力を待つ。そして、入力された選択情報に基づいて、表1に示したテーブル中の該当する情報を選択し(図2(A)のステップ0)、その後は、図2(A)を用いて説明したステップ1~ステップ8の動作を行う。
動作例2の場合、複数の種類の送信信号に対応できるため、汎用性に優れる送信装置を提供できる。
【0031】
この発明の送信装置10によれば、進行波検出部13及び反射波検出部17を、別々の方向性結合器を用いて構成している。方向性結合器は、構造上、マイクロストリップライン等で構成できるので、基板への実装面積が比較的小さく済むので、2つの方向性結合器を用いているといえど、基板への実装面積は、特許文献1のように大電力に対応できるサーキュレータを用いる場合より、小さく済む。また、アイソレータ15は、2つの方向性結合器13a、17aの間に設けてあるため、反射波をサーキュレータで直接受けていた特許文献1の構成と比較して、アイソレータ15の基板への実装面積も小さくて済む。従って、進行波検出部13及び反射波検出部17の実装面積を低減できる。
さらに、進行波検出部13及び反射波検出部17各々は、単方向性の方向性結合器を用いていること、及び、進行波検出部と反射波検出部との間にアイソレータを設けてあることから、特許文献2のように双方向性の方向性結合器を用いる場合に比べ、反射波の進行波出力部への影響を軽減できる。従って、送信信号のモニタ値である進行波電力値も精度の高いものになる。
さらに、制御部は、反射波検出部に定常的に及んでいる定常的な漏れ電力値を差し引いて本来の反射波電力に基づいて反射波の異常判断をする。
これらのことから、進行波検出部及び反射波検出部の基板への実装面積を低減でき、かつ、反射電力の検出誤差を低減できる送信装置を実現できる。
【符号の説明】
【0032】
10:実施形態の送信装置、 11a:送信装置の入力端子
11b:送信装置の出力端子、 13:進行波検出部
13a:単方向性の方向性結合器、 13c:検波器
15:アイソレータ、 17:反射波検出部
17a:単方向性の方向性結合器、 17c:検波器
19:制御部、 19a:定常値記憶部
19b:抽出部、 19c:異常判定部
19d:増幅制御部
PP:進行波電力値、 Pα:反射波電力値
Pβ:本来の反射波電力値、 P1~Pn:定常的な漏れ電力値
Th1~Thn:閾値(本来の反射波電力値の異常判定閾値)
図1
図2
図3