(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040513
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】散布図表示装置、散布図表示方法、および分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2252 20180101AFI20230315BHJP
G01N 23/2209 20180101ALI20230315BHJP
【FI】
G01N23/2252
G01N23/2209
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147538
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆
(72)【発明者】
【氏名】塚本 一徳
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA05
2G001BA07
2G001CA01
2G001CA03
2G001DA06
2G001EA01
2G001EA03
2G001EA08
2G001HA07
2G001JA13
2G001KA01
(57)【要約】
【課題】散布図マトリックスを構成する散布図の表示範囲を容易に変更することができる散布図表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る散布図表示装置は、分析装置で取得した複数のマップデータに基づいて複数の散布図を作成し、作成された複数の散布図をマトリックス状に配置した散布図マトリックスを表示部に表示する散布図表示装置であって、複数の散布図の各々における項目の表示範囲の指定を受け付ける表示条件受付部と、複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出し、抽出された散布図の項目の表示範囲を表示範囲の指定に基づいて変更する表示制御部と、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置で取得した複数のマップデータに基づいて複数の散布図を作成し、作成された前記複数の散布図をマトリックス状に配置した散布図マトリックスを表示部に表示する散布図表示装置であって、
前記複数の散布図の各々における項目の表示範囲の指定を受け付ける表示条件受付部と、
前記複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出し、抽出された前記散布図の項目の表示範囲を表示範囲の指定に基づいて変更する表示制御部と、を含む、散布図表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記表示制御部は、抽出された前記散布図の項目の表示範囲が指定された表示範囲となるように、前記散布図を再作成する、散布図表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記表示制御部は、抽出された前記散布図の項目の表示範囲が指定された表示範囲となるように、前記散布図を拡大または縮小する、散布図表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記表示条件受付部は、項目ごとに表示範囲を指定する欄が設けられたテーブルに表示範囲を入力する操作に基づいて、指定された項目の表示範囲の指定を受け付ける、散布図表示装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記表示部には、前記散布図マトリックスと、他の前記散布図マトリックスが表示され、
前記表示条件受付部は、
前記テーブルに表示範囲を入力する操作に基づいて、前記散布図マトリックスにおける表示範囲の指定を受け付け、
他の前記テーブルに表示範囲を入力する操作に基づいて、他の前記散布図マトリックスにおける表示範囲の指定を受け付ける、散布図表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記表示条件受付部は、前記散布図上の領域を指定するためのラバーバンドを用いて、表示範囲を指定する操作に基づいて、指定された項目の表示範囲の指定を受け付ける、散布図表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
表示範囲の情報を記憶する記憶部を含む、散布図表示装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記表示条件受付部は、前記記憶部に記憶された表示範囲の情報を読み出して、表示範囲の指定を受け付ける、散布図表示装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
前記表示条件受付部は、前記散布図マトリックスを構成する前記複数の散布図の配置の指定を受け付ける、散布図表示装置。
【請求項10】
分析装置で取得した複数のマップデータに基づいて複数の散布図を作成し、作成された
前記複数の散布図をマトリックス状に配置した散布図マトリックスを表示部に表示する散布図表示方法であって、
前記複数の散布図の各々における項目の表示範囲の指定を受け付ける工程と、
前記複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出し、抽出された前記散布図の項目の表示範囲を表示範囲の指定に基づいて変更する工程と、
を含む、散布図表示方法。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の散布図表示装置を含む、分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布図表示装置、散布図表示方法、および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)等の表面分析装置により取得した元素マップデータ(元素ごとの検出強度または濃度の分布データ)を解析する手法として、相分析が知られている。相分析は、複数の元素の相関関係から化合物の相を抽出し、相ごとの相関を調べる手法である。
【0003】
相分析において、多数の元素が試料に含まれる場合には、分析者はいずれの元素の組み合わせについて相分析すべきかを判断する必要がある。そのため、異なる2元素を組み合わせて作成された散布図をマトリックス状に配置して散布図マトリックス(散布図行列)を作成し、複数の元素の相関をわかりやすく表示する手法が用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、主成分分析の結果に基づいて元素に優先順位をつけて散布図を配列することによって、複数の散布図を元素の相関がわかりやすいように表示できる散布図表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
散布図マトリックスでは、散布図マトリックスを構成する散布図の表示範囲を変更することで、元素の相関をわかりやすく表示できる場合がある。例えば、2つの試料を比較する場合には、2つの散布図マトリックスを並べて表示する。このとき、2つの散布図マトリックスにおいて、散布図の表示範囲を揃えることで、目視による比較が容易になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る散布図表示装置の一態様は、
分析装置で取得した複数のマップデータに基づいて複数の散布図を作成し、作成された前記複数の散布図をマトリックス状に配置した散布図マトリックスを表示部に表示する散布図表示装置であって、
前記複数の散布図の各々における項目の表示範囲の指定を受け付ける表示条件受付部と、
前記複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出し、抽出された前記散布図の項目の表示範囲を表示範囲の指定に基づいて変更する表示制御部と、を含む。
【0008】
このような散布図表示装置では、散布図マトリックスを構成する散布図の表示範囲を容易に変更することができる。また、表示制御部は、複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出するため、1つの項目の表示範囲を指定することで、当該項目を含む全ての散布図の表示範囲を一括して変更できる。
【0009】
本発明に係る散布図表示方法の一態様は、
分析装置で取得した複数のマップデータに基づいて複数の散布図を作成し、作成された
前記複数の散布図をマトリックス状に配置した散布図マトリックスを表示部に表示する散布図表示方法であって、
前記複数の散布図の各々における項目の表示範囲の指定を受け付ける工程と、
前記複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出し、抽出された前記散布図の項目の表示範囲を表示範囲の指定に基づいて変更する工程と、
を含む。
【0010】
このような散布図表示方法では、散布図マトリックスを構成する散布図の表示範囲を容易に変更することができる。また、複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出するため、1つの項目の表示範囲を指定することで、当該項目を含む全ての散布図の表示範囲を一括して変更できる。
【0011】
本発明に係る分析装置の一態様は、
上記散布図表示装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図7】表示範囲指定ダイアログを説明するための図。
【
図8】表示範囲変更処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】配置変更処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】2つの散布図マトリックスを模式的に示す図。
【
図12】2つの表示範囲指定ダイアログを説明するための図。
【
図13】2つの散布図マトリックスの表示範囲を1つの表示範囲指定ダイアログで指定する場合を説明するための図。
【
図14】表示範囲変更処理の変形例を示すフローチャート。
【
図15】表示範囲を指定するためのラバーバンドを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 散布図表示装置
まず、本発明の一実施形態に係る散布図表示装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る散布図表示装置100を含む表面分析装置1000の構成を示す図である。
【0015】
表面分析装置1000は、
図1に示すように、分析装置本体部10と、散布図表示装置100と、を含む。
【0016】
表面分析装置1000は、電子線EBを試料Sに照射して電子線EBの照射に応じて試料Sから発生する特性X線を検出し、試料Sに含まれている元素の定性分析または定量分析を行う。また、表面分析装置1000は、試料Sに対して面分析(マップ分析)を行うことができる。表面分析装置1000は、例えば、電子プローブマイクロアナライザー(
EPMA)である。
【0017】
(1)分析装置本体部
分析装置本体部10は、電子銃11と、集束レンズ12と、偏向器13と、対物レンズ14と、試料ステージ15と、二次電子検出器17と、エネルギー分散型検出器18と、波長分散型検出器19と、を含む。
【0018】
電子銃11は、電子線EBを発生させる。電子銃11は、所定の加速電圧により加速された電子線EBを試料Sに向けて放出する。
【0019】
集束レンズ12は、電子線EBを集束させる。偏向器13は、電子線EBを偏向させる。対物レンズ14は、電子線EBを試料S上で集束させて、電子プローブを形成する。集束レンズ12および対物レンズ14で電子線EBを収束して電子プローブを形成し、偏向器13で電子線EBを偏向することによって、電子プローブで試料Sを走査できる。
【0020】
試料ステージ15は、試料Sを保持している。試料ステージ15上には、試料Sが載置される。試料ステージ15は、試料Sを移動させる移動機構を有している。試料ステージ15で試料Sを移動させることにより、電子線EB(電子プローブ)が照射される位置(分析位置)を変更できる。
【0021】
二次電子検出器17は、試料Sから放出された二次電子を検出するための検出器である。二次電子検出器17の測定結果(出力信号)から、二次電子像を得ることができる。二次電子検出器17の出力信号は、電子線EBの走査信号と同期した画像データとして、例えば、散布図表示装置100の記憶部に記憶される。
【0022】
エネルギー分散型検出器18は、X線をエネルギーで弁別し、スペクトルを得るための検出器である。エネルギー分散型検出器18は、電子線EBを試料Sに照射することによって試料Sから放出された特性X線を検出する。
【0023】
波長分散型検出器19は、電子線EBを試料Sに照射することによって試料Sから放出された特性X線を分離して検出する。波長分散型検出器19は、例えば、分光結晶によるX線のブラッグ反射を利用して特定波長のX線を分離する。波長分散型検出器19は、例えば、波長分散型X線分光器(WDS)である。
【0024】
分析装置本体部10では、試料Sのマップ分析(面分析)を行うことができる。具体的には、分析装置本体部10では、試料Sの指定範囲を所定のピクセル(単位領域)に区切り、エネルギー分散型検出器18または波長分散型検出器19によって、各ピクセルのX線強度を測定することで元素マップデータを得ることができる。
【0025】
元素マップデータは、元素の2次元的な分布の情報を含むデータであり、2次元的な位置(座標)と、各位置でのX線の強度(または元素の濃度)の情報を含む。元素マップデータは、元素ごとに得られる。例えば、元素aの元素マップデータは、元素aの2次元的な分布の情報を含むデータであり、位置と、各位置での元素aのX線強度(または元素aの濃度)の情報を含む。分析装置本体部10から出力された元素マップデータは、散布図表示装置100の記憶部124に記憶される。
【0026】
(2)散布図表示装置
散布図表示装置100は、分析装置本体部10におけるマップ分析の結果として得られた元素マップデータを取得し、取得した元素マップデータに対して主成分分析を行い、主成分分析の結果に基づいて元素に優先順位をつけ、散布図を優先順位に基づいて配列し、表示部122に表示させる。
【0027】
図2は、散布図表示装置100の構成を示す図である。散布図表示装置100は、
図2に示すように、処理部110と、操作部120と、表示部122と、記憶部124と、を含む。
【0028】
操作部120は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部110に出力する。操作部120の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどの入力機器により実現することができる。
【0029】
表示部122は、処理部110によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどのディスプレイにより実現できる。表示部122は、例えば、処理部110(表示制御部118)で作成された散布図マトリックスを表示することができる。また、表示部122は、例えば、二次電子像や、元素マップ等を表示することができる。
【0030】
記憶部124は、処理部110の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部124は、処理部110のワーク領域としても機能する。記憶部124の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
【0031】
処理部110は、記憶部124に記憶されているプログラムを実行することで、以下に説明する、元素マップデータ取得部112、主成分分析部114、順位付与部116、表示制御部118、表示条件受付部119として機能する。処理部110の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。なお、処理部110の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。処理部110は、元素マップデータ取得部112と、主成分分析部114と、順位付与部116と、表示制御部118と、表示条件受付部119と、を含む。
【0032】
元素マップデータ取得部112は、複数の元素マップデータを取得する。例えば、元素マップデータ取得部112は、分析装置本体部10での面分析で得られた元素マップデータの情報を取得する。なお、元素マップデータ取得部112は、分析装置本体部10での面分析で得られた元素マップデータから、ユーザーによって選択された、複数の元素マップデータの情報を取得してもよい。分析装置本体部10での面分析で得られた元素マップデータは、記憶部124に記憶されており、元素マップデータ取得部112は、記憶部124から元素マップデータを読み出す。
【0033】
主成分分析部114は、元素マップデータ取得部112で取得した複数の元素マップデータに対して主成分分析を行う。
【0034】
ここで、主成分分析とは、多変量解析の手法の一つであり、多変量のデータからそのデータ群の特徴を表す少数の特徴的な変量(合成変量)を求める手法である。合成変量(主成分)uは、下記式(1)で表される。
【0035】
【0036】
ただし、Nは変量の数、iは自然数、xは各変量のデータ、a1,a2,・・・,aN-1,aNは合成変量の係数(主成分係数)である。
【0037】
合成変量の係数(主成分係数)a1,a2,・・・,aN-1,aNは、合成変量uの分散が最大になるように求める。ただし、合成変量の係数(主成分係数)は以下の関係を満たす。
【0038】
【0039】
合成変量の係数(主成分係数)a1,a2,・・・,aN-1,aNを求めるためには、まず、元のデータ群の分散・共分散行列を計算し、その分散・共分散行列の固有値問題を解く。その固有値問題の解である固有値ベクトルが係数a1,a2,・・・,aN-1,aNに対応する。また、得られる主成分はN組(元のデータ群の個数と同じ)であり、固有値の大きいものから第1主成分、第2主成分、・・・、第N主成分と呼ばれる。
【0040】
主成分分析部114は、元素マップデータ取得部112で取得した複数の元素マップデータの全ピクセルのデータ(強度値または濃度値)に対して主成分分析を行い、第1主成分の主成分係数、および第2主成分の主成分係数を求める。
【0041】
順位付与部116は、主成分分析部114における主成分分析の結果に基づいて、元素に優先順位をつける。順位付与部116は、第1主成分の主成分係数の絶対値が最も大きい元素を優先順位が1番目に高い元素とし、第2主成分の主成分係数の絶対値が最も大きい元素を優先順位が2番目に高い元素とする。
【0042】
順位付与部116は、例えば、優先順位が2番目に高い元素を除いて、第1主成分の主成分係数の絶対値が2番目に大きい元素を優先順位が3番目に高い元素とし、第1主成分の主成分係数の絶対値が3番目に大きい元素を優先順位が4番目に高い元素とする。5番目以降も同様にして第1主成分の主成分係数が大きいほうから順に優先順位を決定する。
【0043】
表示制御部118は、各元素を組み合わせて作成された複数の散布図を、順位付与部116で各元素につけられた優先順位に基づいて配列し、表示部122に表示させる。表示制御部118は、例えば、各元素を組み合わせて作成された複数の散布図を、優先順位に基づいてマトリックス状に配列して散布図マトリックス(散布図行列)を作成する。
【0044】
図3は、散布図マトリックスの一例を示す図である。
図3に示すように、散布図マトリックスは、異なる2元素を組み合わせて作成された散布図をマトリックス状に配置したものである。
【0045】
図4は、散布図マトリックスを説明するための図である。なお、
図4では各散布図を簡略化して図示している。
【0046】
図4に示す例では、元素a,b,c,d,eのうちの2元素を組み合わせて作成された散布図が配置されている。
図2に示す例では、縦方向に並ぶ散布図は横軸が同じ元素であり、横方向に並ぶ散布図は縦軸が同じ元素である。
【0047】
表示制御部118は、優先順位が1番目に高い元素(例えば元素a)と、2番目に高い元素(例えば元素b)と、を組み合わせて作成された散布図((a,b)散布図)を、散
布図マトリックスの角部に配置する。次に、優先順位が1番目に高い元素と、優先順位が3番目以降の元素(c,d,e)と、を組み合わせて作成された散布図((a,c)散布図、(a,d)散布図、(a,e)散布図)を、優先順位が高い順に角部から縦方向に配置する。
【0048】
次に、表示制御部118は、優先順位が2番目に高い元素と、優先順位が3番目以降の元素(c,d,e)と、を組み合わせて作成された散布図((b,c)散布図、(b,d)散布図、(b,e)散布図)を、優先順位が高い順に端部から角部に向かって横方向に配置する。これにより、残りの散布図((c,d)散布図、(c,e)散布図、(d,e)散布図)の配置も決まり、散布図マトリックスを作成することができる。
【0049】
図5は、(a,b)散布図を説明するための図である。
【0050】
表示制御部118は、散布図の各項目(軸)の表示範囲を、マップデータの信号強度の最大値および最小値に基づいて決定する。表示制御部118は、元素aのマップデータの信号強度の最大値または最大値よりも大きい値を散布図の元素aの軸の表示範囲の上限値とし、元素aのマップデータの信号強度の最小値または最小値よりも小さい値を元素aの軸の表示範囲の下限値として、散布図の表示範囲を決定する。散布図のその他の軸についても同様に、マップデータの信号強度の最大値または最大値よりも大きい値を上限値とし、マップデータの信号強度の最小値または最小値よりも小さい値を下限値とする。これにより、元素aのマップデータおよび元素bのマップデータを散布図内に表示できる。
【0051】
例えば、元素aのマップデータにおいて信号強度の最大値がAmax、最小値がAminのとき、(a,b)散布図の元素aの軸(横軸)の表示範囲は、Amin-C以上Amax+D以下の範囲となる。なお、CおよびDは、任意の値に設定可能である。また、元素bのマップデータにおいて信号強度の最大値がBmax、最小値がBminのとき、元素bの軸(縦軸)の表示範囲は、Bmin-E以上Bmax+F以下の範囲となる。なお、EおよびFは、任意の値に設定可能である。表示制御部118は、その他の散布図についても同様に表示範囲を決定する。
【0052】
表示制御部118は、上記のようにして作成された散布図を元素の優先順位に従って配置し、散布図マトリックスを表示部122に表示させる。
【0053】
表示条件受付部119は、散布図マトリックスを構成する複数の散布図の各々における項目の表示範囲の指定を受け付ける。
【0054】
表示制御部118は、表示条件受付部119が項目の表示範囲の指定を受け付けると、複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する散布図を抽出する。そして、表示制御部118は、抽出された散布図の項目の表示範囲を、表示範囲の指定に基づいて変更する。
【0055】
2. 散布図表示方法
2.1. 散布図マトリックスの表示
図6は、散布図マトリックスを模式的に示す図である。
図6に示す例では、主成分分析の結果、Al、Fe、Zn、Si、Mgの順で優先順位が高いと順位づけされた。表示制御部118は、各元素を組み合わせて作成された複数の散布図を順位付与部116で各元素につけられた優先順位に基づいて配列し、表示部122に表示させる。
【0056】
具体的には、表示制御部118は、優先順位が1番目に高いAlと、2番目に高いFeと、を組み合わせて散布図を作成し、当該散布図((Al,Fe)散布図)を、散布図マ
トリックスの左下の角部に配置する。
【0057】
また、表示制御部118は、優先順位が1番目に高いAlと、優先順位が3番目以降の元素(元素Zn,Si,Mg)と、を組み合わせて作成された散布図((Al,Zn)散布図、(Al,Si)散布図、(Al,Mg)散布図)を、優先順位が高い順に角部から縦方向に配置する。次に、優先順位が2番目に高いFeと、優先順位が3番目以降の元素(元素Zn,Si,Mg)と、を組み合わせて作成された散布図((Fe,Zn)散布図、(Fe,Si)散布図、(Fe,Mg)散布図)を、優先順位が高い順に端部から角部に向かって横方向に配置する。これにより、残りの散布図((Zn,Si)散布図、(Zn,Mg)散布図、(Si,Mg)散布図)の配置も決まり、散布図マトリックスを作成することができる。
【0058】
このとき、表示制御部118は、(Al,Fe)散布図のAl(横軸)の表示範囲をAlのマップデータの信号強度の最小値および最大値に基づいて決定する。また、Fe(縦軸)の表示範囲をFeのマップデータの信号強度の最小値および最大値に基づいて決定する。表示制御部118は、その他の散布図についても同様に、表示範囲を決定する。
【0059】
2.2. 表示範囲の変更
(1)表示範囲指定ダイアログの操作
図7は、表示範囲指定ダイアログ2を説明するための図である。表示範囲指定ダイアログ2を用いることによって、散布図マトリックスを構成する各散布図の表示範囲を変更することができる。
【0060】
表示範囲指定ダイアログ2は、散布図の項目ごとに、表示範囲を指定する欄が設けられたテーブル210と、適用ボタン220と、を含む。テーブル210は、項目欄212と、表示範囲を指定するための下限欄214および上限欄216と、を含む。
【0061】
項目欄212には、散布図の各軸の項目が表示されている。項目欄212には、項目を特定するための名前が記載されており、図示の例では、元素名と信号の種類が記載されている。ここでは、信号の種類として、EDSとWDSが記載される。
【0062】
下限欄214は、散布図の表示範囲の下限が入力され、上限欄216には、散布図の表示範囲の上限が入力される。初期状態では、下限欄214にはマップデータの信号強度の最小値に基づく値が入力され、上限欄216にはマップデータの信号強度の最大値に基づく値が入力される。
【0063】
下限欄214および上限欄216には、ユーザーが任意の値を入力できる。ユーザーが操作部120を操作して下限欄214および上限欄216にそれぞれ値を入力し、適用ボタン220を押すことで、表示範囲が指定される。
【0064】
例えば、Si WDSの下限欄214に「10」を入力し、上限欄216に「500」を入力し適用ボタン220を押して表示範囲を指定すると、Siの項目を有する4つの散布図において、Siの表示範囲が「10-500」に変更される。具体的には、Si WDSを横軸とする(Si,Fe)散布図および(Si,Zn)散布図では、横軸の下限値が「10」、横軸の上限値が「500」に変更される。また、Si WDSを縦軸とする(Al,Si)散布図および(Mg,Si)散布図では、縦軸の下限値が「10」、縦軸の上限値が「500」に変更される。
【0065】
複数の項目について、それぞれ下限欄214および上限欄216に値を入力して表示範
囲を指定した場合には、指定された項目を含む全ての散布図について指定された項目の表示範囲が変更される。
【0066】
なお、表示範囲指定ダイアログ2で設定された、各項目(元素)ごとの表示範囲の情報は、記憶部124に記憶される。例えば、表示制御部118は、散布図表示装置100を起動した際に、記憶部124に記憶された情報を読み出して、表示範囲指定ダイアログ2のテーブル210に各項目ごとの表示範囲を再現してもよい。
【0067】
(2)処理
図8は、散布図表示装置100の処理部110の表示範囲変更処理の一例を示すフローチャートである。
【0068】
表示制御部118は、
図6に示す散布図マトリックスおよび
図7に示す表示範囲指定ダイアログ2を表示部122に表示する(S100)。このとき、散布図マトリックスを構成する散布図の各項目(元素)の表示範囲は、下限値が各元素のマップデータの信号強度の最小値に基づく値であり、上限値が信号強度の最大値に基づく値である。また、表示範囲指定ダイアログ2のテーブル210には、各元素ごとに、下限欄214には表示範囲の最小値が示され、上限欄216には表示範囲の最大値が示されている。
【0069】
表示条件受付部119は、ユーザーがテーブル210において表示範囲を入力する操作を行ったか否かを判定し(S102)、表示範囲を入力する操作が行われるまで待機する(S102のNo)。例えば、各項目の下限欄214および上限欄216に値が入力され、適用ボタン220を押す操作が行われた場合に、表示範囲を入力する操作が行われたと判定する。
【0070】
表示条件受付部119は、ユーザーが表示範囲を入力する操作を行ったと判定した場合(S102のYes)、指定された項目の表示範囲の指定を受け付ける(S104)。表示条件受付部119は、例えば、テーブル210の下限欄214に入力された値および上限欄216に入力された値から指定された表示範囲の情報を取得する。
【0071】
表示制御部118は、散布図マトリックスから表示範囲が指定された元素を項目とする全ての散布図を抽出する(S106)。次に、表示制御部118は、抽出した散布図の項目の表示範囲が指定された表示範囲となるように、マップデータを用いて散布図を再作成する(S108)。
【0072】
表示制御部118は、再作成した散布図を初期状態の散布図と入れ替えて散布図マトリックスに組み込み、表示部122に表示する(S110)。処理部110は、再作成した散布図を表示部122に表示した後、表示範囲変更処理を終了する。
【0073】
(3)動作例
散布図表示装置100の動作の一例として、
図6に示す散布図マトリックスと
図7に示す表示範囲指定ダイアログ2が表示された状態で、ユーザーが表示範囲指定ダイアログ2において、Alの下限欄214に「20」、上限欄216に「200」を入力し、Znの下限欄214に「30」、上限欄216に「300」を入力する操作を行った場合の動作について説明する。
【0074】
上記のユーザーの操作が行われると、表示条件受付部119は、ユーザーが表示範囲を入力する操作を行ったと判定し、Alの表示範囲を「20-200」とする指定、およびZnの表示範囲を「30-300」とする指定を受け付ける。
【0075】
表示制御部118は、散布図マトリックスから、Alを項目とする4つの散布図((Al,Fe)散布図、(Al,Zn)散布図、(Al,Si)散布図、(Al,Mg)散布図)と、Znを項目とする4つの散布図((Al,Zn)散布図、(Mg,Zn)散布図、(Si,Zn)散布図、(Zn,Fe)散布図)を抽出する。
【0076】
表示制御部118は、(Al,Fe)散布図、(Al,Zn)散布図、(Al,Si)散布図、および(Al,Mg)散布図の横軸を「20-200」の範囲に変更する。また、表示制御部118は、(Al,Zn)散布図、(Mg,Zn)散布図、および(Si,Zn)散布図の縦軸を「30-300」に変更し、(Zn,Fe)散布図の横軸を「30-300」の範囲に変更する。表示制御部118は、表示範囲が変更された散布図を再作成する。
【0077】
表示制御部118は、抽出した散布図を、再作成した散布図と入れ替えて散布図マトリックスを表示部122に表示する。
【0078】
以上の処理により、散布図の表示範囲を変更できる。
【0079】
2.3. 散布図の配置の変更
図9は、元素選択ダイアログ4を説明するための図である。
【0080】
元素選択ダイアログ4は、散布図マトリックスの構成する散布図の項目となる元素を選択し、散布図マトリックスにおける散布図の配置を指定するためのものである。元素選択ダイアログ4で散布図の配置を指定することで、散布図マトリックスを構成する複数の散布図の配置を変更できる。
【0081】
元素選択ダイアログ4は、散布図マトリックスのプレビュー401と、使用できる元素の一覧が表示される元素リスト402と、選択された元素の一覧が表示される選択リスト404と、元素入れ替えボタン406と、優先順位入れ替えボタン408と、適用ボタン410と、を含む。
【0082】
プレビュー401には、散布図マトリックスのプレビューが表示される。プレビュー401には、元素の優先順位を示す番号が付されている。図示の例では、散布図の各項目に、元素の優先順位を示す1から5の番号が付されている。
【0083】
元素リスト402には、散布図マトリックスを構成する散布図の項目に使用できる元素の一覧が表示される。元素リスト402の元素を選択し、元素入れ替えボタン406を操作することで、選択された元素を選択リスト404に含めることができる。また、選択リスト404の元素を選択し、元素入れ替えボタン406を操作することで、元素を選択リスト404から外すことができる。
【0084】
選択リスト404には、散布図の項目として選択された元素の一覧が表示される。選択リスト404には、選択された元素と、選択された元素の優先順位を示す番号と、が表示される。初期状態では、選択リスト404には、主成分分析の結果に基づいてつけられた優先順位の順で、元素が並んでいる。
【0085】
選択リスト404では、選択リスト404に表示された元素名を選択し、優先順位入れ替えボタン408を操作することで、元素の優先順位を変更できる。選択リスト404を変更した後、適用ボタン220を押すことで、元素の優先順位を指定できる。ここで、散布図マトリックスにおける散布図の配置は、元素の優先順位で決まるため、元素の優先順
位を指定することで、散布図マトリックスにおける散布図の配置を指定できる。
【0086】
例えば、選択リスト404において、Alの優先順位を「2」とし、Feの優先順位を「1」とすることによって、散布図マトリックスにおいて、表示位置「1」にFe、表示位置「2」にAlが設定され、散布図が並び変えられる。
【0087】
元素選択ダイアログ4で設定された元素の優先順位の情報(散布図の配置の情報)は、記憶部124に記憶される。例えば、表示制御部118は、散布図表示装置100を起動した際に、記憶部124に記憶された優先順位の情報を読み出して、散布図の配置を再現してもよい。
【0088】
(2)処理
図10は、散布図表示装置100の処理部110の配置変更処理の一例を示すフローチャートである。
【0089】
表示制御部118は、
図9に示す元素選択ダイアログ4を表示部122に表示する(S200)。このとき、選択リスト404には、主成分分析の結果に基づいてつけられた優先順位の順で、元素が並んでいる。
【0090】
表示条件受付部119は、ユーザーが選択リスト404において元素の優先順位を変更する操作を行ったか否かを判定し(S202)、優先順位を変更する操作が行われるまで待機する(S202のNo)。例えば、選択リスト404において元素の優先順位が変更され、適用ボタン410を押す操作が行われた場合に、優先順位を変更する操作、すなわち、散布図の配置を変更する操作が行われたと判定する。
【0091】
表示条件受付部119は、ユーザーが元素の優先順位を変更する操作を行ったと判定した場合(S202のYes)、散布図の配置の指定を受け付ける(S204)。
【0092】
表示制御部118は、元素の優先順位に基づいて、散布図マトリックスにおいて散布図が指定された配置となるように散布図を再配置し(S206)、表示部122に表示する(S208)。処理部110は、再配置した散布図を表示部122に表示した後、配置変更処理を終了する。
【0093】
3. 効果
散布図表示装置100では、分析装置本体部10で取得した複数のマップデータに基づいて複数の散布図を作成し、作成された複数の散布図をマトリックス状に配置した散布図マトリックスを表示部122に表示する。また、表示条件受付部119は、複数の散布図の各々における項目の表示範囲の指定を受け付け、表示制御部118は、複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出し、抽出された散布図の項目の表示範囲を表示範囲の指定に基づいて変更する。
【0094】
そのため、散布図表示装置100では、散布図マトリックスを構成する散布図の表示範囲を容易に変更できる。
【0095】
また、表示制御部118は、複数の散布図から表示範囲が指定された項目を有する全ての散布図を抽出するため、1つの項目の表示範囲を指定することで、当該項目を含む全ての散布図の表示範囲を一括して変更できる。
【0096】
散布図表示装置100では、表示制御部118は、抽出された散布図の項目の表示範囲が指定された表示範囲となるように、散布図を再作成する。そのため、散布図表示装置1
00では、散布図マトリックスを構成する散布図の表示範囲を変更することができる。
【0097】
散布図表示装置100では、表示条件受付部119は、項目ごとに表示範囲を指定する欄が設けられたテーブル210に表示範囲を入力する操作に基づいて、指定された項目の表示範囲の指定を受け付ける。そのため、散布図表示装置100では、ユーザーは容易に表示範囲を指定できる。
【0098】
散布図表示装置100では、表示条件受付部119は、散布図マトリックスを構成する複数の散布図の配置の指定を受け付ける。そのため、散布図表示装置100では、散布図マトリックスにおける散布図の配置を変更できる。
【0099】
4. 変形例
次に、本発明の一実施形態に係る散布図表示装置の変形例について説明する。以下では、上述した散布図表示装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0100】
4.1. 第1変形例
4.1.1. 動作例1
(1)動作
図11は、表示部122に表示された、2つの散布図マトリックスを模式的に示す図である。
【0101】
図11に示すように、表示部122には、散布図マトリックスを表示するためのウィンドウ300Aおよびウィンドウ300Bが表示されている。ウィンドウ300Aには、試料Aの散布図マトリックスが表示され、ウィンドウ300Bには、試料Bの散布図マトリックスが表示されている。
【0102】
ここで、試料Aの散布図マトリックスと試料Bの散布図マトリックスを比較する場合、2つの散布図マトリックスにおいて、各散布図の配置が同じであって、対応する項目の表示範囲が同じであれば比較が容易である。
【0103】
図12は、ウィンドウ300Aに表示された散布図マトリックスのための表示範囲指定ダイアログ2A、およびウィンドウ300Bに表示された散布図マトリックスのための表示範囲指定ダイアログ2Bを説明するための図である。
【0104】
散布図表示装置100では、表示部122に複数の散布図マトリックスが表示される場合には、表示される複数の散布図マトリックスに1対1に対応して複数の表示範囲指定ダイアログが表示される。ここでは、2つの散布図マトリックスに対応して2つの表示範囲指定ダイアログ2(表示範囲指定ダイアログ2Aおよび表示範囲指定ダイアログ2B)が表示される。
【0105】
表示範囲指定ダイアログ2Aおよび表示範囲指定ダイアログ2Bは、コピーボタン230と、ペーストボタン232と、を含む。
【0106】
ユーザーがコピーボタン230を押す操作を行うことで、テーブル210に入力された内容をすべてコピーできる。また、ユーザーがペーストボタン232を押す操作を行うことで、テーブル210にコピーされた内容を入力できる。
【0107】
なお、このコピー処理およびペースト処理は、下限欄214および上限欄216にのみ適用可能であってもよい。この場合、項目欄212の変更は、元素選択ダイアログ4を用
いて行われてもよい。
【0108】
また、コピー処理によって得られた情報を、テキストファイル形式で保存してもよい。
【0109】
(2)処理
表示条件受付部119は、テーブル210に入力された情報をコピーする操作、およびコピーした情報を他のテーブルにペーストする操作に基づいて、指定された項目の表示範囲の指定を受け付ける。
【0110】
例えば、ユーザーが操作部120を介して、表示範囲指定ダイアログ2Aのテーブル210においてコピーボタン230を押す操作を行うと、表示条件受付部119は、表示範囲指定ダイアログ2Aのテーブル210に入力された値をすべて記憶部124に記憶させる。
【0111】
次に、ユーザーが操作部120を介して表示範囲指定ダイアログ2Bのテーブル210においてペーストボタン232を押す操作を行うと、表示条件受付部119は、記憶部124に記憶されたコピーされた値を、表示範囲指定ダイアログ2Bのテーブル210にペーストする。
【0112】
この状態で、表示範囲指定ダイアログ2Bの適用ボタン220を押す操作が行われると、処理部110は、上述した
図8に示す表示範囲変更処理を行う。
【0113】
この結果、
図11に示すウィンドウ300Bに表示された試料Bの散布図マトリックスを構成する各散布図の表示範囲を、ウィンドウ300Aに表示された試料Aの散布図マトリックスを構成する各散布図の表示範囲と同じにできる。
【0114】
4.1.2. 動作例2
(1)動作
なお、テーブル210の項目欄212を選択した状態でコピーボタン230を押す操作を行うことで、選択された項目欄212に入力された元素名をコピーできる。また、テーブル210の項目欄212を選択した状態でペーストボタン232を押す操作を行うことで、選択された項目欄212にコピーされた元素名を入力できる。
【0115】
テーブル210の下限欄214を選択した状態でコピーボタン230を押す操作を行うことで、選択された下限欄214に入力された値をコピーできる。同様に、テーブル210の上限欄216を選択した状態でコピーボタン230を押す操作を行うことで、選択された上限欄216に入力された値をコピーできる。
【0116】
テーブル210の下限欄214を選択した状態でペーストボタン232を押す操作を行うことで、選択された下限欄214にコピーされた値を入力できる。同様に、テーブル210の上限欄216を選択した状態でペーストボタン232を押す操作を行うことで、選択された上限欄216にコピーされた値を入力できる。
【0117】
したがって、例えば、まず、表示範囲指定ダイアログ2Aにおいて、5つの項目欄212、5つの下限欄214、および5つの上限欄216を選択した状態でコピーボタン230を押す操作を行う。次に、表示範囲指定ダイアログ2Bにおいて、5つの項目欄212、5つの下限欄214、および5つの上限欄216を選択した状態でペーストボタン232を押す操作を行う。これにより、表示範囲指定ダイアログ2Bのテーブル210に入力された内容を、表示範囲指定ダイアログ2Aのテーブル210に入力された内容と同じにできる。この結果、ウィンドウ300Bに表示された試料Bの散布図マトリックスの各散
布図の配置と各項目の表示範囲を、ウィンドウ300Aに表示された試料Aの散布図マトリックスの各散布図の配置と各項目の表示範囲と同じにできる。
【0118】
(2)処理
表示条件受付部119は、テーブル210に入力された情報をコピーする操作、およびコピーした情報を他のテーブルにペーストする操作に基づいて、指定された項目の表示範囲の指定を受け付ける。
【0119】
例えば、ユーザーが操作部120を介して、表示範囲指定ダイアログ2Aのテーブル210においてAlの下限欄214および上限欄216を選択し、選択されたAlの下限欄214および上限欄216に入力された値をコピーする操作(コピーボタン230を押す操作)を行うと、表示条件受付部119は、Alの下限欄214の値および上限欄216の値を記憶部124に記憶させる。
【0120】
次に、ユーザーが操作部120を介して表示範囲指定ダイアログ2Bのテーブル210においてAlの下限欄214および上限欄216を選択し、選択されたAlの下限欄214および上限欄216にコピーした値をペーストする操作(ペーストボタン232を押す操作)を行うと、表示条件受付部119は、記憶部124に記憶されたコピーした値を、選択されたAlの下限欄214および上限欄216にペーストする。
【0121】
この状態で、表示範囲指定ダイアログ2Bの適用ボタン220を押す操作が行われると、処理部110は、上述した
図8に示す表示範囲変更処理を行う。
【0122】
この結果、
図11に示すウィンドウ300Bに表示された試料Bの散布図マトリックスを構成する散布図のAlの項目の表示範囲を、ウィンドウ300Aに表示された試料Aの散布図マトリックスを構成する散布図のAlの項目の表示範囲と同じにできる。
【0123】
4.1.3. 効果
第1変形例に係る散布図表示装置100では、表示部122には、試料Aの散布図マトリックスと、試料Bの散布図マトリックス(他の散布図マトリックス)が表示される。また、表示条件受付部119は、表示範囲指定ダイアログ2Aのテーブル210に表示範囲を入力する操作に基づいて試料Aの散布図マトリックスにおける表示範囲の指定を受け付け、表示範囲指定ダイアログ2Bのテーブル210(他のテーブル)に表示範囲を入力する操作に基づいて、試料Bの散布図マトリックスにおける表示範囲の指定を受け付ける。
【0124】
そのため、第1変形例に係る散布図表示装置100では、試料Aの散布図マトリックスの表示条件と、試料Bの散布図マトリックスの表示条件を、容易に揃えることができる。したがって、試料間の散布図の比較を容易にすることができる。
【0125】
4.1.4. 変形例
図13は、2つの散布図マトリックスの表示範囲を1つの表示範囲指定ダイアログ2で指定する場合を説明するための図である。
【0126】
図12に示す例では試料Aの散布図マトリックスの表示範囲を表示範囲指定ダイアログ2Aで指定し、試料Bの散布図マトリックスの表示範囲を表示範囲指定ダイアログ2Bで指定した。これに対して、試料Aの散布図マトリックスの表示範囲および試料Bの散布図マトリックスの表示範囲を1つの表示範囲指定ダイアログ2で指定してもよい。この場合、表示範囲指定ダイアログ2は1つであるため、2つの散布図マトリックスに対して同じ表示範囲を指定できる。
【0127】
4.2. 第2変形例
第1変形例では、表示範囲指定ダイアログ2Aのテーブル210の値をコピーし、表示範囲指定ダイアログ2Bのテーブル210にペーストすることで、2つの散布図マトリックスの各散布図の表示条件を揃えた。
【0128】
これに対して、第2変形例では、表示範囲指定ダイアログ2Aのテーブル210の情報(各項目の下限値および上限値の情報)が表示条件設定ファイルとして記憶部124に記憶され、記憶部124に記憶された表示条件設定ファイルを読み出すことで、表示範囲指定ダイアログ2Bのテーブル210を、表示範囲指定ダイアログ2Aと同じ条件にする。
【0129】
なお、表示条件設定ファイルを読み出す際には、下限値および上限値の情報だけを読み出してもよい。
【0130】
ここでは、試料Aの散布図マトリックスの表示条件設定ファイルを、試料Bの散布図マトリックスに適用した場合について説明したが、例えば、事前に試料Aの散布図マトリックスの表示条件設定ファイルを作成し、事前に作成した表示条件設定ファイルを試料Aの散布図マトリックスに適用してもよい。
【0131】
4.3. 第3変形例
上述した実施形態では、
図8に示すように、表示範囲を変更するために散布図を再作成した。これに対して、表示範囲を変更するために散布図を拡大または縮小してもよい。すなわち、画像処理によって散布図の表示範囲を変更してもよい。
【0132】
図14は、処理部110の表示範囲変更処理の変形例を示すフローチャートである。
図8に示す表示範囲変更処理では、散布図を再作成する処理S108を行うが、
図14に示す表示範囲変更処理では、散布図を拡大または縮小する処理S109を行う点で相違する。以下では、上述した
図8に示す表示範囲変更処理の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0133】
表示制御部118は、散布図マトリックスから表示範囲が指定された元素を項目とする全ての散布図を抽出した後(S106の後)、抽出した散布図の項目の表示範囲が指定された表示範囲となるように、散布図を拡大または縮小する(S109)。散布図の拡大または縮小は、画像処理によって行われる。
【0134】
表示制御部118は、散布図マトリックスの各散布図を、拡大または縮小された散布図に更新し、表示部122に表示する(S110)。
【0135】
第3変形例に係る散布図表示装置100の動作の一例として、
図6に示す散布図マトリックスと
図7に示す表示範囲指定ダイアログ2が表示された状態で、ユーザーが表示範囲指定ダイアログ2において、Alの下限欄214に「20」、上限欄216に「200」を入力し、Znの下限欄214に「0」、上限欄216に「300」を入力した場合の動作について説明する。
【0136】
上記のユーザーの操作が行われると、表示条件受付部119は、ユーザーが表示範囲を入力する操作を行ったと判定し、Alの表示範囲を「20-200」とする指定、およびZnの表示範囲を「0-300」とする指定を受け付ける。
【0137】
表示制御部118は、散布図マトリックスから、Alを項目とする4つの散布図((Al,Fe)散布図、(Al,Zn)散布図、(Al,Si)散布図、(Al,Mg)散布図)と、Znを項目とする4つの散布図((Al,Zn)散布図、(Mg,Zn)散布図
、(Si,Zn)散布図、(Zn,Fe)散布図)を抽出する。
【0138】
表示制御部118は、(Al,Fe)散布図、(Al,Zn)散布図、(Al,Si)散布図、および(Al,Mg)散布図の横軸を「20-200」となるように散布図を横方向に拡大する。次に、表示制御部118は、(Al,Zn)散布図、(Mg,Zn)散布図、(Si,Zn)散布図の縦軸が「0-300」となるように散布図を縦方向に縮小する。次に、表示制御部118は、(Zn,Fe)散布図の横軸が「0-300」となるように散布図を横方向に縮小する。
【0139】
表示制御部118は、抽出した散布図を、拡大または縮小した散布図と入れ替えて散布図マトリックスの表示を更新し表示部122に表示する。
【0140】
以上の処理により、散布図の表示範囲を変更できる。
【0141】
4.4. 第4変形例
図15は、表示範囲を指定するためのラバーバンド6を模式的に示す図である。
【0142】
上述した実施形態では、表示範囲指定ダイアログ2のテーブル210に値を入力することによって表示範囲を変更したが、
図15に示すように、散布図上のラバーバンド6で表示範囲を指定してもよい。
【0143】
例えば、散布図マトリックスを構成する散布図上で、マウスのドラッグ操作によりラバーバンド6を表示し、ラバーバンド6を用いて散布図上の領域を指定する。これにより、指定された領域に対応した表示範囲が指定される。ラバーバンド6を用いて表示範囲を指定することによって、
図7に示す表示範囲指定ダイアログ2の下限欄214の値および上限欄216の値が、ラバーバンド6で指定された表示範囲に応じた値に変更される。図示の例では、Mgの下限欄214および上限欄216の値、Znの下限欄214および上限欄216の値が変更される。
【0144】
表示条件受付部119は、ラバーバンド6を用いて表示範囲を指定する操作に基づいて指定された項目(元素)の表示範囲の指定を受け付ける。なお、表示範囲指定ダイアログ2を表示せずに、ラバーバンド6を用いて指定した表示範囲を、直接、表示条件受付部119が受け付けてもよい。
【0145】
4.5. 第5変形例
上述した実施形態では、散布図マトリックスを構成する散布図がX線信号強度を項目とした散布図である場合について説明したが、散布図マトリックスを構成する散布図は、電子信号強度を項目とした散布図であってもよい。
【0146】
例えば、上述した実施形態では、X線信号強度のマップデータに基づいて散布図を作成したが、電子信号強度のマップデータに基づいて散布図を作成してもよい。例えば、二次電子像の各ピクセルの信号強度のデータや、反射電子像の各ピクセルの信号強度のデータから散布図を作成してもよい。
【0147】
4.6. 第6変形例
例えば、上述した実施形態では、表面分析装置1000が電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)である例について説明したが、本発明に係る表面分析装置は、X線信号強度のマップデータや電子信号強度のマップデータを取得できる装置であれば特に限定されない。
【0148】
例えば、本発明に係る分析装置は、オージェ電子分光装置、X線光電子分光装置、エネルギー分散型X線分光器が搭載された走査電子顕微鏡などであってもよい。
【0149】
また、例えば、上述した実施形態では、散布図表示装置100が表面分析装置1000に含まれている場合について説明したが、本発明に係る散布図表示装置は、表面分析装置に含まれていなくてもよい。本発明に係る散布図表示装置は、例えば、情報記憶媒体やネットワークを介してマップデータを取得して、上述した散布図を表示させる処理を行ってもよい。
【0150】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0151】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0152】
10…分析装置本体部、11…電子銃、12…集束レンズ、13…偏向器、14…対物レンズ、15…試料ステージ、17…二次電子検出器、18…エネルギー分散型検出器、19…波長分散型検出器、100…散布図表示装置、110…処理部、112…元素マップデータ取得部、114…主成分分析部、116…順位付与部、118…表示制御部、119…表示条件受付部、120…操作部、122…表示部、124…記憶部、210…テーブル、212…項目欄、214…下限欄、216…上限欄、220…適用ボタン、230…コピーボタン、232…ペーストボタン、300A…ウィンドウ、300B…ウィンドウ、401…プレビュー、402…元素リスト、404…選択リスト、406…元素入れ替えボタン、408…優先順位入れ替えボタン、410…適用ボタン、1000…表面分析装置