(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040521
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】振袖用帯枕受け具
(51)【国際特許分類】
A41F 19/00 20060101AFI20230315BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20230315BHJP
【FI】
A41F19/00 113K
A41D1/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147554
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】521400833
【氏名又は名称】藤原 純子
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 純子
【テーマコード(参考)】
3B030
【Fターム(参考)】
3B030BA04
(57)【要約】
【課題】人に振袖を着付ける際に、見た目の美しい帯結びを容易に作ることを可能にし、長時間着用しても着崩れにくく、さらに、振袖の着心地を向上できる振袖用帯枕受け具を提供する。
【解決手段】上方から下方に向かって先細り、着用者の胴に巻かれた振袖帯4の隙間へ挿入可能に形成された挿入部2と、挿入部2の上端部から後方に折り曲げられて形成され、挿入部2とのなす角度αが側面視で鋭角となるように下方へ延び、先端部30が挿入部の上端部21よりも上方に位置する湾曲形状であり、帯枕を載置可能に形成された枕受け部3と、を備え、挿入部2は、少なくとも上下方向における中間部20が上端部21および下端部22よりも後方に位置する湾曲形状である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に振袖を着付ける際に用いられる板状の振袖用帯枕受け具であって、
上方から下方に向かって先細り、着用者の胴に巻かれた振袖帯の隙間へ挿入可能に形成された挿入部と、
前記挿入部の上端部から後方に折り曲げられて形成され、該挿入部とのなす角度が側面視で鋭角となるように下方へ延び、先端部が該挿入部の上端部よりも上方に位置する湾曲形状であり、帯枕を載置可能に形成された枕受け部と、を備え、
前記挿入部は、少なくとも上下方向における中間部が上端部および下端部よりも後方に位置する湾曲形状であることを特徴とする振袖用帯枕受け具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人に振袖を着付ける際に用いられる振袖用帯枕受け具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、振袖の着付けに用いられる振袖帯は4m以上あり、様々な形状の変わり結びをすることができる。このような振袖帯の帯結びは、胴に巻かれた振袖帯の上方に形成される。帯結びを高い位置に作ることで、見た目の美しい着付けに仕上げることができる。
【0003】
帯結びに立体感を出し、形成を補助するために、帯結びには帯枕と呼ばれる小物が用いられる。帯結びの内部において、胴に巻かれた振袖帯の上方に帯枕を付けることで、帯結びを高い位置で保持することが可能である。しかしながら、長時間振袖を着用する場合や、着用者の動きが活発である場合、帯枕が徐々に下方へ移動してしまうことがある。帯枕の位置が下方に移動すると、着付けの美しさを損い、ひいては着崩れの要因となってしまう。
【0004】
従来、帯枕が下方へ移動するのを防ぐために、丸めて棒状にしたタオルや、厚紙を重ねて作った厚みのある長四角の紙が用いられることが一般的であった。胴に巻きつけた振袖帯の1巻き目と2巻き目の間へタオルや厚紙を挿入し、そのタオルや厚紙と背中との間に帯枕を挟み込むように固定して着付けられていた。また、帯枕を支える着付け用具として、特許文献1のような帯枕受付帯用止具がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方法では、タオルや厚紙を挿入する際に、胴に巻きつけた振袖帯の、1巻き目と2巻き目がずれやすい。そのため、振袖帯の下線が揃わず、美しく仕上がらないことがあった。また、タオルや厚紙の下部が背中に当たり、タオルや厚紙の上部が帯枕を背中へ押し付ける。そのため、着用者が異物感や圧迫感を感じ、着心地が良くないという問題があった。
【0007】
特許文献1の帯枕受付帯用止具は、胴に巻きつけた帯が帯結びで隠れる太鼓結びに用いられるものであるので、振袖の帯結びには適用できない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、人に振袖を着付ける際に、見た目の美しい帯結びを容易に作ることを可能にし、長時間着用しても着崩れにくく、さらに、振袖の着心地を向上できる振袖用帯枕受け具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、人に振袖を着付ける際に用いられる板状の振袖用帯枕受け具であって、
上方から下方に向かって先細り、着用者の胴に巻かれた振袖帯の隙間へ挿入可能に形成された挿入部と、前記挿入部の上端部から後方に折り曲げられて形成され、該挿入部とのなす角度が側面視で鋭角となるように下方へ延び、先端部が該挿入部の上端部よりも上方に位置する湾曲形状であり、帯枕を載置可能に形成された枕受け部と、を備え、前記挿入部は、少なくとも上下方向における中間部が上端部および下端部よりも後方に位置する湾曲形状であることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、挿入部を胴に巻きつけた振袖帯と着物との間へ挿入しやすく、枕受け部によって帯枕を上方でしっかりと支持することが可能となる。そのため、見た目の美しい帯結びを容易に作ることを可能にし、長時間着用しても着崩れしにくい。
【0011】
この振袖用帯枕受け具を用いることによって、従来の用いていた丸めて棒状にしたタオルや、厚紙を重ねて作った厚みのある長四角の紙のような道具を、都度作成する必要がなく、着付けの効率を向上させることが可能となる。
【0012】
また、枕受け部と挿入部とのなす角度が鋭角であり、枕受け部が湾曲していることによって、帯枕の下端は、枕受け部の上部において、着用者の背中から離れて位置する。帯枕は、枕受け部の上部に斜めに載置され、上部が着用者の背中に近接し、下端が背中から離れて位置する。そのため、帯枕の下部と着用者の背中との間に空間が生じる。この空間によって、帯枕が背中に触れる面積が小さくなり、着心地に優れる。さらに、挿入部は、少なくとも上下方向における中間部が上端部および下端部よりも後方に位置する湾曲形状であるため、振袖用帯枕受け具自体も背中に触れる面積が小さく、より快適な着心地となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、人に振袖を着付ける際に、見た目の美しい帯結びを容易に作ることを可能にし、長時間着用しても着崩れにくく、さらに、振袖の着心地を向上できる振袖用帯枕受け具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る振袖用帯枕受け具の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る振袖用帯枕受け具の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る振袖用帯枕受け具の正面図である。
【
図4】振袖用帯枕受け具を用いた帯結びの手順を示す説明図である。
【
図5】振袖用帯枕受け具を用いた帯結びの手順を示す説明図である。
【
図6】振袖用帯枕受け具を用いた帯結びの参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。いくつかの図面においては、上下や前後の方向を矢印で示してある。特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれら矢印で示す方向に従って説明する。
【0016】
本発明の振袖用帯枕受け具1は、人に振袖を着付ける際、すなわち、振袖の他装の着付けの際に用いられる板状の着付け用小物である。
【0017】
図1および
図2に示すように、振袖用帯枕受け具1は、着用者の胴に巻かれた振袖帯の隙間へ挿入可能に形成された挿入部2と、帯枕を載置可能に形成された枕受け部3と、を備える。挿入部2と枕受け部3は、一体的に形成されて振袖用帯枕受け具1を構成している。振袖用帯枕受け具1の材質は限定されないが、着心地向上の観点から、軽量で弾性を有するプラスチックの薄板から形成されることが好ましい。
【0018】
図3に示すように、挿入部2は、上方から下方に向かって先細り、下端部22は弧状に形成されている。このような構成により、挿入部2は、胴に巻かれた振袖帯の隙間へ挿入しやすくなるとともに、枕受け部3は、しっかりと帯枕を支えることが可能となる。
【0019】
また、挿入部2は、
図2に示すように、少なくとも上下方向における中間部20が上端部21および下端部22よりも後方に位置する湾曲形状である。挿入部2は、さらに、左右方向における中間部が右端部および左端部よりも後方に位置していてもよく、挿入部2の略中央部が後方に窪んだ形状であってもよい。
【0020】
挿入部2の上下方向の長さは、胴に巻かれた振袖帯の幅の1/2以上であることが好ましい。挿入部2の長さを、胴に巻かれた振袖帯(幅方向で2つ折りされた状態の振袖帯)の幅の1/2以上とすれば、胴に巻かれた振袖帯により確実に固定され、帯結びの荷重をしっかりと支えることができる。そのため、より確実に帯枕を長時間支えることが可能となる。
【0021】
枕受け部3は、挿入部2の上端部21から後方に折り曲げられて形成され、挿入部2とのなす角度αが側面視で鋭角となるように下方へ延び、先端部30が挿入部2の上端部21よりも上方に位置するように湾曲して形成されている。挿入部と枕受け部とがなす角度αは、例えば
図2に示すように、90°より小さく45°より大きい角度である。
【0022】
このような、枕受け部3の下方に向かって窪んだ湾曲形状の上部に、帯枕が載置可能となっている。また、枕受け部3の先端部30は、緩やかな弧状である。
【0023】
《振袖用帯枕受け具を用いた帯結びの手順》
次に、このように構成した本実施形態の振袖用帯枕受け具1を用いた帯結びの手順について、
図4から
図6に基づいて説明する。
図4から
図6は、着用者の背中側(後方)から見た図である。
【0024】
まず、振袖帯4を幅方向に2つ折りし、着用者の胴回りに1巻きする。着用者の背中側において、1巻き目の振袖帯4(41)の内側には後ろ板を差し込む。
【0025】
後ろ板は、振袖の帯結び(変わり結び)をする際に必ず用いられるものである。振袖は、帯結びが胴に巻かれた振袖帯4の上方に位置するため、着用者の背中側において、胴に巻かれた振袖帯4の下部が露出する。後ろ板を差し込むことで、胴に巻かれた振袖帯4に張りを与えて皺を防ぎ、帯結びを美しく仕上げることが可能となる。
【0026】
次いで、2巻き目の振袖帯4(42)を胴に巻きつけた後、振袖帯42を折り上げて一結びする。一結びした結び目4Aは、胴に巻かれた振袖帯4よりも上方に位置する。
【0027】
一結びした結び目4Aの下方において、着物5と1巻き目の振袖帯41との間に、本実施形態の振袖用帯枕受け具1の挿入部2を差し込むと、
図4に示す状態となる。振袖用帯枕受け具1の枕受け部3は、1巻き目の振袖帯41と結び目4Aの間から露出し、後方へ延びている。
【0028】
一結びした結び目4Aから延びる振袖帯4の端部を用いて、結び目4Aの上部に帯結びの羽根4Bを形成する。そして、胴に巻かれた振袖帯4の上部において帯枕6を結びつける。帯枕6は、
図5に示すように、枕受け部3の上部に載置された状態となる。次に、帯枕6とともに帯揚げで覆うことで、振袖用帯枕受け具1は隠れて見えない状態となる。
【0029】
帯結び100が仕上がった状態を
図6に示す。振袖用帯枕受け具1および帯枕6は、帯結び100の内部にあり、振袖用帯枕受け具1は帯枕6を高い位置で支持している。
【0030】
仕上がった帯結び100の内部を、
図7の一部断面図に示す。1巻き目の振袖帯41の内部には、後ろ板7が挿入されている。振袖用帯枕受け具1の挿入部2は、着物5と1巻き目の振袖帯41との間に差し込まれている。振袖用帯枕受け具1の枕受け部3は、1巻き目の振袖帯41と結び目4Aとの間から、後方へ向かって延びている。背中(着物5)から離れた位置において、枕受け部3の上部に、帯枕6が載置されている。このような構成により、振袖帯4の下線が揃い、美しい仕上がりの帯結びとなる。
【0031】
振袖用帯枕受け具1の挿入部2は、少なくとも上下方向における中間部20が上端部21および下端部22よりも後方に位置する湾曲形状であるため、
図7に示すように、挿入部2は、着物5と触れる面積が少なく、着用者に圧迫感や不快感を与えにくい。
【0032】
また、枕受け部3と挿入部2とのなす角度が鋭角であり、枕受け部3が湾曲している。そのため、枕受け部3の上部に載置される帯枕6の下端部6Aは、着用者の背中からやや離れた後方に位置する。帯枕6は、枕受け部3の上部に斜めに載置され、上部が着用者の背中近くに位置し、下端部6Aが背中から離れて位置する。このような状態において、帯枕6の下部と着用者の背中(着物5)との間には空間8が生じる。この空間8に、結び目4Aが位置し、帯枕6は背中に触れる面積が小さいため、着心地に優れる。
【0033】
また、帯枕6は、下端部6Aが枕受け部3の窪みの上部に安定した状態で載置される。そのため、着付けの仕上がり後、長時間経っても位置ずれしにくく、美しい帯結びを保つことが可能となる。
【0034】
振袖用帯枕受け具1は、上記した結び方(変わり結び)の振袖帯だけでなく、浴衣の帯結び等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 振袖用帯枕受け具
2 挿入部
3 枕受け部
4 振袖帯
4A 結び目
4B 羽根
5 着物
6 帯枕
7 後ろ板
8 空間
20 挿入部の中間部
21 挿入部の上端部
22 挿入部の下端部
100 帯結び
α 挿入部と枕受け部とがなす角度