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特開2023-40526電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040526
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147562
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松崎 崚
(72)【発明者】
【氏名】白木 壮哉
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CA01
5G064CA07
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA03
(57)【要約】
【課題】管理装置との間での情報通信を正常に行うことができない電源装置があったとしても必要な調整力を確実に得ることができる電源管理システムを提供する。
【解決手段】電源管理システムであって、管理装置30は、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な電源装置10と、情報通信を正常に行うことができない通信不能な電源装置10とを特定して、通信可能な電源装置10を、出力制御指令を送信する送信候補に設定し、通信不能な電源装置10を、出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する候補決定処理を行い、送信候補に設定した通信可能な電源装置10の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する指令送信処理を行い、電源装置10は、管理装置30から出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な電源装置と、複数の前記電源装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記電源装置は、電力系統に連系される電源部を備え、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置される前記電源装置及び前記電力系統の少なくとも一つから電力供給を受けることができ、
前記管理装置は、前記管理装置と前記電源装置との間での情報通信の状況に基づいて、複数の前記電源装置のうち、前記管理装置との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な前記電源装置と、情報通信を正常に行うことができない通信不能な前記電源装置とを特定して、通信可能な前記電源装置を、当該電源装置の出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に設定し、通信不能な前記電源装置を、前記出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する候補決定処理を行い、
前記管理装置は、前記候補決定処理で前記送信候補に設定した通信可能な前記電源装置の少なくとも一つに対して前記出力制御指令を送信する指令送信処理を行い、
前記電源装置は、前記管理装置から前記出力制御指令を受け取った場合、前記出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、前記出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作する電源管理システム。
【請求項2】
前記電源装置は、電力を出力できない場合、電力を出力できないことを前記管理装置に通知し、
前記管理装置は、前記候補決定処理において、電力を出力できない前記電源装置を前記非送信候補に設定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記電源装置は、
電力を出力でき、且つ、前記電力系統からの電力供給が正常に行われており、且つ、前記管理装置と前記電源装置との間での情報通信の状況に基づいて前記管理装置との間での情報通信を正常に行うことができると判定した場合、通信可能時運転モードで動作し、
電力を出力でき、且つ、前記電力系統からの電力供給が正常に行われており、且つ、前記管理装置と前記電源装置との間での情報通信の状況に基づいて前記管理装置との間での情報通信を正常に行うことができないと判定した場合、通信不能時運転モードで動作する請求項1又は2に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記電源装置は、前記通信不能時運転モードにおいて、出力電力を前記施設に設置される前記電力負荷装置の負荷電力に追従させる運転、又は、出力電力を所定の値に維持する運転、又は、出力電力を前記管理装置との間での情報通信が正常に行われていた間に前記管理装置から受信していた最新の前記出力制御指令に基づいて定まる電力にさせる運転を行う請求項3に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記電源装置が前記通信不能時運転モードで行う運転の内容を記憶している請求項4に記載の電源管理システム。
【請求項6】
前記電源装置は、前記通信可能時運転モードにおいて、前記管理装置から受信した前記出力制御指令で定まる前記制御対象期間の間、出力電力が前記出力制御指令に基づいて定まる電力となるように動作する第1運転モードで動作し、前記制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第2運転モードで動作する請求項3~5の何れか一項に記載の電源管理システム。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池を備える燃料電池装置。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な電源装置と、複数の電源装置との間で施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統には、従来から有る大規模な発電所だけでなく、住宅や事業所などの施設に設置された発電装置や充放電装置等の電源装置も接続されている。また、施設に設置された電力負荷装置も電力系統に接続されている。そして、電源装置及び電力負荷装置を用いて施設の受電点電力を増減させることで、電力系統での電力の需給バランス調整に貢献することができる。近年では、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)という概念の下で、需要家の施設に設置された上述のような電源装置及び電力負荷装置などの需要家側エネルギーリソースの動作を制御することで、発電所と同等の機能を提供することが試みられている。尚、施設の受電点電力という場合、電力系統から施設への受電電力及び施設から電力系統への逆潮流電力の両方が含まれる。
【0003】
特許文献1(特開2018-125907号公報)には、複数の施設のそれぞれに設置される電源装置(電力資源101)と、複数の電源装置との間で通信を行うことができる管理装置(仮想発電中央装置103)とを備える電源管理システムが記載されている。そして、管理装置は、経済性や、電力負荷低減における需要家への影響度、電源装置の発動における信頼性、電源装置の故障可能性や稼働寿命の長期化、制御指令に対する電源装置の追従速度、電源装置の通信性能などの評価基準に基づいて、動作指令の対象とする電源装置を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-125907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管理装置が、幾つかの電源装置に対して出力制御指令を送信しても、その電源装置と管理装置との間での通信が正常に行われていない場合、その出力制御指令は電源装置に伝わらない。そのため、その電源装置は出力制御指令に応じた運転を行わないため、管理装置が想定している調整力は得られない。特に、多数の電源装置との間での情報通信が正常に行われていない場合、その影響は大きくなる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができない電源装置があったとしても必要な調整力を確実に得ることができる電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電源管理システムの特徴構成は、複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な電源装置と、複数の前記電源装置との間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記電源装置は、電力系統に連系される電源部を備え、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置される前記電源装置及び前記電力系統の少なくとも一つから電力供給を受けることができ、
前記管理装置は、前記管理装置と前記電源装置との間での情報通信の状況に基づいて、複数の前記電源装置のうち、前記管理装置との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な前記電源装置と、情報通信を正常に行うことができない通信不能な前記電源装置とを特定して、通信可能な前記電源装置を、当該電源装置の出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に設定し、通信不能な前記電源装置を、前記出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する候補決定処理を行い、
前記管理装置は、前記候補決定処理で前記送信候補に設定した通信可能な前記電源装置の少なくとも一つに対して前記出力制御指令を送信する指令送信処理を行い、
前記電源装置は、前記管理装置から前記出力制御指令を受け取った場合、前記出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、前記出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作する点にある。
ここで、前記電源装置は、電力を出力できない場合、電力を出力できないことを前記管理装置に通知し、前記管理装置は、前記候補決定処理において、電力を出力できない前記電源装置を前記非送信候補に設定してもよい。
【0008】
上記特徴構成によれば、管理装置は、候補決定処理において、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な電源装置を、その電源装置の出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に設定し、情報通信を正常に行うことができない通信不能な電源装置を、出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する。そして、管理装置は、候補決定処理で送信候補に設定した通信可能な電源装置の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する指令送信処理を行う。つまり、管理装置は、出力制御指令が伝わらない電源装置は出力制御指令の送信対象から除外し、出力制御指令が確実に伝わる電源装置の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する。そして、管理装置から出力制御指令を受け取った電源装置は、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作する。
従って、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができない電源装置があったとしても必要な調整力を確実に得ることができる電源管理システムを提供できる。
【0009】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記電源装置は、電力を出力でき、且つ、前記電力系統からの電力供給が正常に行われており、且つ、前記管理装置と前記電源装置との間での情報通信の状況に基づいて前記管理装置との間での情報通信を正常に行うことができると判定した場合、通信可能時運転モードで動作し、電力を出力でき、且つ、前記電力系統からの電力供給が正常に行われており、且つ、前記管理装置と前記電源装置との間での情報通信の状況に基づいて前記管理装置との間での情報通信を正常に行うことができないと判定した場合、通信不能時運転モードで動作する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、電源装置は、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができる場合には通信可能時運転モードで動作し、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができない場合には通信不能時運転モードで動作する。つまり、電源装置は、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができなくなってもその動作を停止せず、通信不能時運転モードで動作する。その結果、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができなくなる度に電源装置の運転が停止されることは無くなる。
【0011】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記電源装置は、前記通信不能時運転モードにおいて、出力電力を前記施設に設置される前記電力負荷装置の負荷電力に追従させる運転、又は、出力電力を所定の値に維持する運転、又は、出力電力を前記管理装置との間での情報通信が正常に行われていた間に前記管理装置から受信していた最新の前記出力制御指令に基づいて定まる電力にさせる運転を行う点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、電源装置は、通信不能時運転モードとして、管理装置との間での情報通信を行うことができなくても問題無く実行できる運転、即ち、出力電力を施設に設置される電力負荷装置の負荷電力に追従させる運転、又は、出力電力を所定の値に維持する運転、又は、出力電力を管理装置との間での情報通信が正常に行われていた間に管理装置から受信していた最新の出力制御指令に基づいて定まる電力にさせる運転を行うことができる。
【0013】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記管理装置は、前記電源装置が前記通信不能時運転モードで行う運転の内容を記憶している点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、管理装置は、管理装置との間で情報通信を正常に行うことができない電源装置、即ち、出力制御指令の送信対象から除外した電源装置が通信不能時運転モードで行う運転の内容を記憶している。その結果、管理装置は、出力制御指令の送信対象から除外した電源装置による制御対象期間の間での運転に応じて、出力制御指令の送信対象とする電源装置にどのような出力制御指令を送信すればよいのかを決定できる。
【0015】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記電源装置は、前記通信可能時運転モードにおいて、前記管理装置から受信した前記出力制御指令で定まる前記制御対象期間の間、出力電力が前記出力制御指令に基づいて定まる電力となるように動作する第1運転モードで動作し、前記制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第2運転モードで動作する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、電源装置は、制御対象期間では、出力制御指令に応じた運転を行うことができる。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池装置の特徴構成は、上記電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池を備える点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、受電点電力を上昇させる調整力及び受電点電力を低下させる調整力の両方を提供できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える燃料電池装置を提供できる。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る充放電装置の特徴構成は、上記電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、受電点電力を上昇させる調整力及び受電点電力を低下させる調整力の両方を提供できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える充放電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】施設と、管理装置と、アグリゲーションコーディネーターとの関係を示した図である。
図2】施設の構成例を示す図である。
図3】燃料電池装置が、電力出力停止の状態であることを示す情報を通信中継装置を介して管理装置に送信する動作を説明する図である。
図4】管理装置が、制御情報を通信中継装置を介して燃料電池装置に送信する動作を説明する図である。
図5】燃料電池装置が、電力情報等を通信中継装置を介して管理装置に送信する動作を説明する図である。
図6】燃料電池装置の運転モードを決定する運転モード決定処理を説明するフローチャートである。
図7】制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。
図8】燃料電池装置の運転モードを決定する運転モード決定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、燃料電池装置10及び電力負荷装置4が設けられる施設20と、管理装置30と、アグリゲーションコーディネーター40との関係を示した図である。図2は、施設20の構成例を示す図である。電源管理システムは、複数の施設20のそれぞれに設置されて電力を出力可能な燃料電池装置10と、複数の燃料電池装置10との間で施設20の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置30とを備える。加えて、本実施形態の電源管理システムは、燃料電池装置10と管理装置30との間の通信を中継する通信中継装置としてのルーター6及びリモコン7を備える。
燃料電池装置10は、本発明の「電源装置」に対応する。本実施形態において、1台の管理装置30が管理する電源装置の台数は適宜設定可能である。
【0023】
管理装置30は、リソースアグリゲーター等とも呼ばれ、VPP(Virtual Power Plant)サービス契約を締結した施設20に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30が制御する電力量を束ね、電気の取引市場等において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0024】
管理装置30は、複数の施設20から、燃料電池装置10の出力電力、電力負荷装置4の負荷電力、施設20での受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。尚、本実施形態で「電力負荷装置4の負荷電力」と記載する場合、施設20に設けられている全ての電力負荷装置4の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置30は、将来の所定の時間帯に各施設20から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーター40に伝達する。この供出可能電力は、施設20の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。尚、本実施形態において「受電点電力を上げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を増加させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を減少させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0025】
例えば、施設20の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置10の出力電力を下げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設20の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置10の出力電力を上げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0026】
また、管理装置30は、自身が管理する複数の施設20におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設20から調整力等(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設20の受電点電力の合計に相当する。
【0027】
アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30から受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場、卸電力市場、容量市場などの電力の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う。そして、アグリゲーションコーディネーター40は、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力等の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各管理装置30に対して分配して伝達する。
【0028】
管理装置30は、アグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取った場合、その供給指令で指定された調整力等を各施設20に対して分配して伝達する。例えば、管理装置30は、複数の燃料電池装置10に対して、所定の制御対象期間での燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信できる。その結果、各施設20では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設20の受電点電力が増減するという調整力等の供出が行われる。
【0029】
施設20には、電源装置としての燃料電池装置10と、電力負荷装置4とが設けられている。燃料電池装置10及び電力負荷装置4は、電力系統1に連系される電力線2に接続される。電力線2には、施設20の受電点電力を測定する電力メーター3が設置されている。尚、図1及び図2には、電源装置としての燃料電池装置10が1台設置されている例を示しているが、燃料電池装置10の設置台数は適宜変更可能である。
【0030】
電力メーター3で測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイ5及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0031】
電力負荷装置4は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設20に設置される燃料電池装置10及び電力系統1の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0032】
燃料電池装置10は、電力系統1に連系される電源部としての燃料電池部12と、燃料電池部12の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部11と、燃料電池部12及び電力変換部11の動作を制御する燃料電池制御部13と、燃料電池装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部14とを備える。また、燃料電池装置10は、燃料電池部12の燃料ガスである水素を生成する燃料改質装置を備えていてもよい。
【0033】
このように、電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備え、電源部が燃料電池部12を備える燃料電池装置10を実現できる。
【0034】
燃料電池制御部13は、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池装置10から電力線2への出力電力を調節できる。例えば、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うこともできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。尚、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10で故障などが発生した場合、燃料電池部12の運転を停止することにより、燃料電池装置10からの電力出力を停止することもある。
【0035】
燃料電池制御部13は、電力変換部11から電力線2に供給する出力電力についての情報及び電力測定部8での測定電力についての情報を有しているため、電力負荷装置4の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。尚、電力測定部8での測定電力の符号がプラスの場合は負荷電力が燃料電池装置10の出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力測定部8での測定電力の符号がマイナスの場合は燃料電池装置10の出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0036】
燃料電池装置10は、施設20の利用者が燃料電池装置10に対する指令を行う場合に操作するリモコン7と接続されている。そして、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコン7及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
リモコン7及びルーター6は、本発明の「通信中継装置」に対応する。
【0037】
次に、管理装置30の動作について説明する。
管理装置30は、燃料電池装置10に対してその燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する場合、候補決定処理と指令送信処理とを行う。
具体的には、管理装置30は、候補決定処理において、その管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる燃料電池装置10を、その燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に設定し、その管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない燃料電池装置10を、出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する。加えて、管理装置30は、候補決定処理で送信候補に設定した燃料電池装置10の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する指令送信処理を行う。このように、情報が正常に伝達されない燃料電池装置10に対して出力制御指令を送信しても、その出力制御指令が実行される可能性は無いが、管理装置30がこれらの処理を行うことで、情報が正常に伝達され得る燃料電池装置10、即ち、出力制御指令が実行され得る燃料電池装置10に対して出力制御指令が伝達されることが確保される。
【0038】
そして、燃料電池装置10は、管理装置30から出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作する。
【0039】
次に、燃料電池装置10と管理装置30との間で行われる情報通信の例について説明する。
【0040】
〔燃料電池装置10が、電力出力停止の状態であることを示す情報を管理装置30に送信する場合の動作例〕
図3は、燃料電池装置10が、電力出力停止の状態であることを示す情報を通信中継装置を介して管理装置30に送信する動作を説明する図である。例えば、燃料電池装置10は、自身が電力を出力できるか否かを判定する。そして、燃料電池装置10は、故障などの理由により電力出力を停止している場合、電力出力停止の状態であることを示す情報を通信中継装置としてのリモコン7を介して管理装置30に送信する(情報通信A1)。そして、リモコン7は、電力出力停止の状態であることを示す情報(情報通信A1)を受信したことへの返信(情報通信A2)を燃料電池装置10に対して行う。尚、燃料電池装置10は、リモコン7から、電力出力停止の状態であることを示す情報(情報通信A1)を受信したことへの返信(情報通信A2)が無い場合、リモコン7が原因で、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない状態にあると判定できる。
【0041】
また、図3において、リモコン7は、燃料電池装置10が電力出力停止の状態であることを示す情報を管理装置30に送信する(情報通信A3)。そして、管理装置30は、燃料電池装置10が電力出力停止の状態であることを示す情報(情報通信A3)を受信したことへの返信(情報通信A4)をリモコン7に対して行う。尚、リモコン7は、管理装置30から、燃料電池装置10が電力出力停止の状態であることを示す情報(情報通信A3)を受信したことへの返信(情報通信A4)が無い場合、管理装置30又はルーター6が原因で、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない状態にあると判定して、管理装置30と通信不能であることを示す情報(情報通信A5)を燃料電池装置10に送信する。従って、燃料電池装置10は、管理装置30と通信不能であることを示す情報(情報通信A5)を受信した場合には、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができないと判定し、管理装置30と通信不能であることを示す情報(情報通信A5)を受信しない場合には、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができると判定する。
【0042】
このようにして、燃料電池装置10は、電力を出力できない場合、電力を出力できないことを管理装置30に通知し、管理装置30は、上記候補決定処理において、電力を出力できない燃料電池装置10を非送信候補に設定する。
【0043】
〔管理装置30が、制御情報を燃料電池装置10に送信する場合の動作例〕
図4は、管理装置30が、制御情報を通信中継装置を介して燃料電池装置10に送信する動作を説明する図である。例えば、管理装置30は、後述する出力制御指令等の制御情報(情報通信B1)を通信中継装置としてのリモコン7を介して燃料電池装置10に送信する。そして、リモコン7は、制御情報(情報通信B1)を受信したことへの返信(情報通信B2)を管理装置30に対して行う。尚、管理装置30は、リモコン7から、制御情報(情報通信B1)を受信したことへの返信(情報通信B2)が無い場合、リモコン7又はルーター6が原因で、燃料電池装置10の間での情報通信を正常に行うことができない状態にあると判定できる。
【0044】
また、図4において、リモコン7は、管理装置30から受信した制御情報を燃料電池装置10に送信する(情報通信B3)。そして、燃料電池装置10は、制御情報を受信したことへの返信(情報通信B4)をリモコン7に対して行う。尚、リモコン7は、燃料電池装置10から、制御情報を受信したことへの返信(情報通信B4)が無い場合、燃料電池装置10が原因で、燃料電池装置10及び管理装置30の間での情報通信を正常に行うことができない状態にあると判定して、燃料電池装置10と通信不能であることを示す情報(情報通信B5)を管理装置30に送信する。従って、管理装置30は、燃料電池装置10と通信不能であることを示す情報(情報通信B5)を受信した場合には、燃料電池装置10との間での情報通信を正常に行うことができないと判定し、燃料電池装置10と通信不能であることを示す情報(情報通信B5)を受信しない場合には、燃料電池装置10との間での情報通信を正常に行うことができると判定する。
【0045】
このようにして、管理装置30は、候補決定処理において、その管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる燃料電池装置10を、燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に設定し、その管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない燃料電池装置10を、出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する。
【0046】
〔燃料電池装置10が、電力情報を管理装置30に送信する場合の動作例〕
図5は、燃料電池装置10が、電力情報を通信中継装置を介して管理装置30に送信する動作を説明する図である。例えば、燃料電池装置10は、上述した受電点電力などの電力情報を通信中継装置としてのリモコン7を介して管理装置30に送信する(情報通信C1)。そして、リモコン7は、電力情報等(情報通信C1)を受信したことへの返信(情報通信C2)を燃料電池装置10に対して行う。尚、燃料電池装置10は、リモコン7から、電力情報等(情報通信C1)を受信したことへの返信(情報通信C2)が無い場合、リモコン7が原因で、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない状態にあると判定できる。
【0047】
また、図5において、リモコン7は、電力情報等を管理装置30に送信する(情報通信C3)。そして、管理装置30は、電力情報等(情報通信C3)を受信したことへの返信(情報通信C4)をリモコン7に対して行う。尚、リモコン7は、管理装置30から、電力情報(情報通信C3)を受信したことへの返信(情報通信C4)が無い場合、管理装置30又はルーター6が原因で、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない状態にあると判定して、管理装置30と通信不能であることを示す情報(情報通信C5)を燃料電池装置10に送信する。従って、燃料電池装置10は、管理装置30と通信不能であることを示す情報(情報通信C5)を受信した場合には、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができないと判定し、管理装置30と通信不能であることを示す情報(情報通信C5)を受信しない場合には、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができると判定する。
【0048】
以上のような手法で、管理装置30は、出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に含まれる燃料電池装置10と、出力制御指令を送信しない非送信候補に含まれる燃料電池装置10とを決定する。
具体例を挙げて説明すると、管理装置30は、VPPサービス契約を締結した複数の施設20から制御対象期間の間に供出させる合計の調整力等の目標値を決定する。そして、管理装置30は、VPPサービス契約を締結した複数の施設20の燃料電池装置10のうちの例えば100台等の燃料電池装置10を予め選択し、その100台の燃料電池装置10を用いて上記調整力等を供出させようとしている。但し、情報通信を正常に行うことができない(即ち、出力制御指令を伝達できない)燃料電池装置10が存在する場合もあるため、管理装置30は、上述したような手法で、その100台の燃料電池装置10のうち、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な燃料電池装置10と、情報通信を正常に行うことができない通信不能な燃料電池装置10とを特定する。そして、管理装置30は、その100台の燃料電池装置10のうち、通信可能な燃料電池装置10を送信候補に設定し、通信不能な燃料電池装置10及び電力を出力できない燃料電池装置10を非送信候補に設定する候補決定処理を行う。つまり、その100台の燃料電池装置10のうち、送信候補の燃料電池装置10が90台になる場合や、送信候補の燃料電池装置10が50台になる場合などがあり得る。そして、管理装置30は、送信候補に設定した燃料電池装置10の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する。
【0049】
尚、送信候補に設定した通信可能な燃料電池装置10の台数が少ない場合、それらの燃料電池装置10が設けられる施設20から供出される合計の調整力等が上記目標値に足りなくなる可能性がある。そこで、管理装置30は、非送信候補に設定した燃料電池装置10の台数が設定数以上存在する場合、当初に調整力等を供出させるために用いる予定であった燃料電池装置10から、通信不能な燃料電池装置10及び電力を出力できない燃料電池装置10を除外し、当初は調整力等を供出させるために用いる予定ではなかった別の燃料電池装置10を追加して、調整力等を供出させるために用いる新たな100台の燃料電池装置10を用意してもよい。例えば、当初に100台の燃料電池装置10を用いて調整力等を供出させる予定であったにも関わらず、その中に上記例のような50台の通信不能な燃料電池装置10が存在していた場合、その50台の通信不能な燃料電池装置10を当初の100台から除外し、VPPサービス契約を締結した複数の施設20の燃料電池装置10の中から別の50台を追加して、調整力等を供出させるために用いる合計100台の燃料電池装置10を用意してもよい。
【0050】
次に、燃料電池装置10の運転モードを決定する運転モード決定処理について説明する。
図6は、燃料電池装置10の運転モードを決定する運転モード決定処理を説明するフローチャートである。
工程#10において燃料電池装置10は、自身が電力を出力できるか否かを判定する。そして、燃料電池装置10は、例えばエラーなどにより自身が電力を出力できない場合には工程#15に移行して動作を停止し、自身が電力を出力できる場合には工程#11に移行する。
【0051】
工程#11において燃料電池装置10は、電力系統1からの電力供給が正常に行われているか否かを判定する。そして、燃料電池装置10は、電力系統1からの電力供給が正常に行われていない場合には工程#16に移行して自立運転し、電力系統1からの電力供給が正常に行われている場合には工程#12に移行する。例えば、工程#16において燃料電池装置10は、電力系統1からの電力供給が正常に行われていない場合、自立運転として、出力電力を施設20に設置される電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行う。
【0052】
工程#12において燃料電池装置10は、受信した出力制御指令の制御対象期間であるか否かを判定し、制御対象期間である場合には工程#13に移行して通信可能時運転モードとしての第1運転モードで動作し、制御対象期間でない場合には工程#14に移行して通信可能時運転モードとしての第2運転モードで動作する。つまり、燃料電池装置10は、電力を出力でき、且つ、電力系統1からの電力供給が正常に行われており、且つ、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる場合、通信可能時運転モード(第1運転モード又は第2運転モード)で動作する。具体的には、燃料電池装置10は、通信可能時運転モードにおいて、管理装置30から受信した出力制御指令で定まる制御対象期間の間、出力電力が出力制御指令に基づいて定まる電力となるように動作する第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第2運転モードで動作する。或いは、燃料電池装置10は、管理装置30から出力制御指令を受け取っていない場合、即ち、制御対象期間の指定を受けていない場合も、非制御対象期間に該当するとして第2運転モードで動作する。
【0053】
図7は、制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。図7に示した例では、制御情報(出力制御指令)において、12時~15時の間が制御対象期間に指定されている。そのため、この燃料電池装置10は、12時~15時の制御対象期間は、第1運転モードで動作し、それ以外の非制御対象期間は、第2運転モードで動作する。
【0054】
第2運転モードは、複数の燃料電池装置10において予め設定されている運転モードである。或いは、管理装置30は、複数の燃料電池装置10に対して、第2運転モードを定める運転モード制御指令を送信でき、燃料電池装置10は、管理装置30から受け取った運転モード制御指令に従って第2運転モードを決定する。
【0055】
例えば、燃料電池制御部13は、第2運転モードとして、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、第2運転モードとして、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うこともできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。或いは、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)が、+100Wや-100W等の設定値になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。
【0056】
以上のように、管理装置30は、候補決定処理において、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な燃料電池装置10を、その燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に設定し、情報通信を正常に行うことができない通信不能な燃料電池装置10を、出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する。そして、管理装置30は、候補決定処理で送信候補に設定した通信可能な燃料電池装置10の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する指令送信処理を行う。つまり、管理装置30は、出力制御指令が伝わらない燃料電池装置10は出力制御指令の送信対象から除外し、出力制御指令が確実に伝わる燃料電池装置10の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する。そして、管理装置30から出力制御指令を受け取った燃料電池装置10は、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標として動作する。従って、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない燃料電池装置10があったとしても必要な調整力等を確実に得ることができる電源管理システムを提供できる。
【0057】
<第2実施形態>
第2実施形態の電源管理システムは、管理装置30及び燃料電池装置10の両方が、管理装置30及び燃料電池装置10の間での情報通信が正常に行われるか否かを判定している点で上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の電源管理システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0058】
上記第1実施形態で説明したのと同様に、管理装置30は、候補決定処理において、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な燃料電池装置10を、その燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信する送信候補に設定し、情報通信を正常に行うことができない通信不能な燃料電池装置10を、出力制御指令を送信しない非送信候補に設定する。そして、管理装置30は、候補決定処理で送信候補に設定した通信可能な燃料電池装置10の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する指令送信処理を行う。
【0059】
加えて、燃料電池装置10は、管理装置30及び燃料電池装置10の間での情報通信が正常に行われるか否かを判定し、その判定結果を参照して運転モードを決定している。
【0060】
図8は、燃料電池装置10の運転モードを決定する運転モード決定処理を説明するフローチャートである。
工程#20において燃料電池装置10は、自身が電力を出力できるか否かを判定する。そして、燃料電池装置10は、例えばエラーなどにより自身が電力を出力できない場合には工程#27に移行して動作を停止し、自身が電力を出力できる場合には工程#21に移行する。
【0061】
工程#21において燃料電池装置10は、電力系統1からの電力供給が正常に行われているか否かを判定する。そして、燃料電池装置10は、電力系統1からの電力供給が正常に行われていない場合には工程#28に移行して自立運転し、電力系統1からの電力供給が正常に行われている場合には工程#22に移行する。例えば、工程#28において燃料電池装置10は、電力系統1からの電力供給が正常に行われていない場合、自立運転として、出力電力を施設20に設置される電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行う。
【0062】
工程#22において燃料電池装置10は、図3図5を参照して説明したような手法で、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができるか否かを判定する。そして、燃料電池装置10は、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる場合には工程#23に移行し、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない場合には工程#26に移行して、通信不能時運転モードで動作する。つまり、燃料電池装置10は、電力を出力でき、且つ、電力系統1からの電力供給が正常に行われており、且つ、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができない場合、通信不能時運転モードで動作する。
【0063】
燃料電池装置10は、通信不能時運転モードにおいて、出力電力を施設20に設置される所定の電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転、又は、出力電力を所定の値に維持する運転、又は、出力電力を管理装置30との間での情報通信が正常に行われていた間に管理装置30から受信していた最新の出力制御指令に基づいて定まる電力にさせる運転を行う。
【0064】
ここで、燃料電池制御部13は、上述した通信不能時運転モードの例のうち、どの運転を行うのかを時間帯に応じて決定してもよい。例えば、燃料電池制御部13は、管理装置30から、過去の所定期間内に受電点電力を下げる方向への出力制御指令を受けた回数の方が受電点電力を上げる方向への出力制御指令を受けた回数よりも多い時間帯の場合、即ち、燃料電池装置10の出力電力を大きくすることが好ましい時間帯の場合、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることや、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)が、-100W等の設定値になるように(即ち、常に100Wの逆潮流になるように)燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。
【0065】
それに対して、燃料電池制御部13は、管理装置30から、過去の所定期間内に受電点電力を上げる方向への出力制御指令を受けた回数の方が受電点電力を下げる方向への出力制御指令を受けた回数よりも多い時間帯の場合、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節すること、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)が、+100W等の設定値になるように(即ち、常に100Wの受電になるように)燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。
【0066】
工程#23において燃料電池装置10は、受信した出力制御指令の制御対象期間であるか否かを判定し、制御対象期間である場合には工程#24に移行して通信可能時運転モードとしての第1運転モードで動作し、制御対象期間でない場合には工程#25に移行して通信可能時運転モードとしての第2運転モードで動作する。つまり、燃料電池装置10は、電力を出力でき、且つ、電力系統1からの電力供給が正常に行われており、且つ、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる場合、通信可能時運転モード(第1運転モード又は第2運転モード)で動作する。具体的には、燃料電池装置10は、通信可能時運転モードにおいて、管理装置30から受信した出力制御指令で定まる制御対象期間の間、出力電力が出力制御指令に基づいて定まる電力となるように動作する第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第2運転モードで動作する。或いは、燃料電池装置10は、管理装置30から出力制御指令を受け取っていない場合、即ち、制御対象期間の指定を受けていない場合も、非制御対象期間に該当するとして第2運転モードで動作する。
【0067】
以上のように、本実施形態では、管理装置30及び燃料電池装置10の両方が、管理装置30及び燃料電池装置10の間での情報通信が正常に行われるか否かを判定している。加えて、本実施形態では、管理装置30は、燃料電池装置10が通信不能時運転モードで行う運転の内容を記憶している。例えば、管理装置30は、燃料電池装置10が、通信不能時運転モードにおいて、出力電力を施設20に設置される所定の電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転、又は、出力電力を所定の値に維持する運転、又は、出力電力を管理装置30との間での情報通信が正常に行われていた間に管理装置30から受信していた最新の出力制御指令に基づいて定まる電力にさせる運転、の何れの運転を行うのかを記憶している。そのため、管理装置30は、通信不能な燃料電池装置10を用いて施設20から調整力等を供出させることはできないが、通信不能時運転モードで動作する燃料電池装置10が設けられる施設20が自ら供出する調整力等を予測できる。
【0068】
具体例を挙げて説明すると、管理装置30は、制御対象期間の間にVPPサービス契約を締結した複数の施設20から供出させる合計の調整力等を決定する。そして、管理装置30は、VPPサービス契約を締結した複数の施設20の燃料電池装置10のうちの例えば100台等の燃料電池装置10を予め選択し、その100台の燃料電池装置10を用いて上記調整力等を供出させようとしている。そして、管理装置30は、上述したような手法で、その100台の燃料電池装置10のうち、管理装置30との間での情報通信を正常に行うことができる通信可能な燃料電池装置10(即ち、受信した出力制御指令に応じた運転を行う燃料電池装置10)と、情報通信を正常に行うことができない通信不能な燃料電池装置10(即ち、通信不能時運転モードで動作する燃料電池装置10)とを特定する。加えて、管理装置30は、記憶している情報に基づいて、通信不能時運転モードで動作する燃料電池装置10が設けられる施設20が制御対象期間の間に自ら供出する調整力等を予測する。
【0069】
一例として、燃料電池装置10が通信不能時運転モードにおいて、出力電力を施設20に設置される所定の電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行う場合、例えば、燃料電池装置10の出力電力を電力負荷装置4の負荷電力の+100W(即ち、出力電力=負荷電力+100W)で追従させる場合を考える。この場合、管理装置30は、その施設20の燃料電池装置10を用いて1時間当たり100Whの調整力等が供出されると予測する。
【0070】
また、燃料電池装置10が通信不能時運転モードにおいて、出力電力を所定の値に維持する運転を行う場合、例えば、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力(例えば700W等)に維持する運転を行う場合を考える。この場合、管理装置30は、施設20から、情報通信が正常に行われている間に電力情報としての電力負荷装置4の負荷電力を逐次収集して記憶しているため、燃料電池装置10の上限出力電力から、収集した負荷電力の最新値を減算した値を、施設20の燃料電池装置10を用いて供出される調整力等として予測する。
【0071】
更に、燃料電池装置10が通信不能時運転モードにおいて、出力電力を管理装置30との間での情報通信が正常に行われていた間に管理装置30から受信していた最新の出力制御指令に基づいて定まる電力にさせる運転を行う場合を考える。この場合、管理装置30は、施設20から、電力情報としての電力負荷装置4の負荷電力を逐次収集して記憶し、且つ、情報通信が正常に行われていた間に管理装置30が燃料電池装置10に送信していた最新の出力制御指令も記憶しているため、燃料電池装置10の予測される出力電力(即ち、情報通信が正常に行われていた間に管理装置30が送信していた最新の出力制御指令に基づいて定まる電力)から、収集した負荷電力の最新値を減算した値を、施設20の燃料電池装置10を用いて供出される調整力等として予測する。
【0072】
そして、管理装置30は、制御対象期間の間にVPPサービス契約を締結した複数の施設20の燃料電池装置10を用いて供出させる必要がある合計の調整力等から、上記例で説明したように通信不能時運転モードで動作する燃料電池装置10が設けられる施設20が制御対象期間の間に自ら供出すると予測される調整力等を減算して得られる値を、送信候補に設定した通信可能な燃料電池装置10、即ち、制御対象期間の間に通信可能時運転モードで動作する燃料電池装置10を用いて供出するべき調整力等として決定できる。そして、管理装置30は、その調整力等を供出するように、送信候補に設定した通信可能な燃料電池装置10の少なくとも一つに対して出力制御指令を送信する。
【0073】
このように、管理装置30は、管理装置30との間で情報通信を正常に行うことができない燃料電池装置10、即ち、出力制御指令の送信対象から除外した燃料電池装置10が通信不能時運転モードで行う運転の内容を記憶している。その結果、管理装置30は、出力制御指令の送信対象から除外した燃料電池装置10による制御対象期間の間での運転に応じて、出力制御指令の送信対象とする燃料電池装置10にどのような出力制御指令を送信すればよいのかを決定できる。
【0074】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、本発明の電源管理システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、電源装置が備える電源部が燃料電池部12を備える例を説明したが、電源部は電力を出力できる他の装置であってもよい。例えば、電源部が、蓄電池などの充放電部を備える装置であってもよい。その場合、電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備え、電源部が充放電部を備える充放電装置が実現される。
或いは、電源部は、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機とを備える装置などであってもよい。
【0075】
<2>
上記実施形態では、出力電力、負荷電力、受電点電力、制御対象期間の長さなどについて具体的な数値を例示して説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。
【0076】
<3>
上記実施形態では、燃料電池装置10が、通信中継装置としてのリモコン7及びルーター6を介して管理装置30と情報通信する例を説明したが、他の装置を介して管理装置30と通信してもよい。例えば、LTE等の携帯電話の通信規格を利用した通信中継装置を用いて、燃料電池装置10と管理装置30との間の情報通信を行ってもよい。
【0077】
<4>
上記実施形態では、燃料電池制御部13が、過去の所定期間内での受電点電力を下げる方向への出力制御指令を受けた回数と受電点電力を上げる方向への出力制御指令を受けた回数との比較結果に応じて、通信不能時運転モードでの具体的な運転内容を決定する例を説明したが、他の判断基準に従って通信不能時運転モードでの具体的な運転内容を決定してもよい。
【0078】
例えば、燃料電池制御部13は、過去の所定期間における1日の中の各時間帯での、複数の施設20の電力負荷装置4の合計の負荷電力についての情報と、複数の施設20の燃料電池装置10の合計の出力可能電力についての情報とを例えば管理装置30から予め受信して記憶している。そして、燃料電池制御部13は、その記憶している情報を参照して、現在時刻と同じ過去の時間帯での、複数の施設20の電力負荷装置4の合計の負荷電力が、複数の施設20の燃料電池装置10の合計の出力可能電力の設定割合以上(例えば2/3以上など)である場合、即ち、自身の燃料電池装置10の出力電力を大きくすることが好ましい時間帯の場合、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることや、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)が、-100W等の設定値になるように(即ち、常に100Wの逆潮流になるように)燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。
【0079】
それに対して、燃料電池制御部13は、現在時刻と同じ過去の時間帯での、複数の施設20の電力負荷装置4の合計の負荷電力が、複数の施設20の燃料電池装置10の合計の出力可能電力の設定割合未満(例えば2/3未満など)である場合、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節すること、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)が、+100W等の設定値になるように(即ち、常に100Wの受電になるように)燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行うことができる。
【0080】
<5>
上記実施形態において、燃料電池装置10と管理装置30との間で行われる情報通信の例は、図3図5を用いて説明したものに限定されない。例えば、燃料電池装置10とリモコン7との間では、現在時刻等の情報を所定タイミングで送受信しており、その情報通信の過程で、情報通信を正常に行うことができるか否かを判定してもよい。
【0081】
<6>
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、管理装置との間での情報通信を正常に行うことができない電源装置があったとしても必要な調整力を確実に得ることができる電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 :電力系統
2 :電力線
3 :電力メーター
4 :電力負荷装置
5 :ゲートウェイ
6 :ルーター(通信中継装置)
7 :リモコン(通信中継装置)
8 :電力測定部
10 :燃料電池装置(電源装置)
11 :電力変換部
12 :燃料電池部(電源部)
13 :燃料電池制御部
14 :記憶部
20 :施設
30 :管理装置
40 :アグリゲーションコーディネーター

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8