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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040528
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】風向調整体及び風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20230315BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147565
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】佐野 徹
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081HA08
3L211BA60
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】操作フィーリングを向上できるルーバ及びこれを備えた風向調整装置を提供する。
【解決手段】ルーバ10は、上下方向に回動可能に支持され、回動により風向を変化させる。ルーバ10は、回動軸線Aからの重心Gの距離を設定する重心設定部20を備える。重心設定部20によって回動軸線Aに対して重心Gの位置を接近させることができ、自重により上下の回動方向に操作力の荷重差が生じることを抑制し、操作フィーリングを向上できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に回動可能に支持され、回動により風向を変化させる風向調整体であって、
回動軸線からの重心の距離を設定する重心設定部を備える
ことを特徴とする風向調整体。
【請求項2】
内部に中空部を有し、
重心設定部は、前記中空部に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整体。
【請求項3】
複数の部材に分割されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整体。
【請求項4】
他の配風体と連結される連結部を備え、
前記連結部は、複数の部材の固着構造を基準として、風向調整体の回動限界を設定するストッパ部に対して同側に配置されている
ことを特徴とする請求項3記載の風向調整体。
【請求項5】
風の下流側寄りの位置に回動軸線が位置している
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の風向調整体。
【請求項6】
風路を構成するケース体と、
このケース体に回動可能に支持されて前記風路内に位置する少なくとも一つの請求項1ないし5いずれか一記載の風向調整体と、
を備えることを特徴とする風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動により風向を変化させる風向調整体及びこれを備えた風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置には、風向を調整するためのルーバが回動可能に配置されている。このようなルーバにおいて、複数に分割されたルーバ部材を互いに組み付けることで構成されているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-121306号公報 (第4-6頁、図1-7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のルーバ部材を互いに組み付ける構成の場合、ルーバの重心は、ルーバ部材の設計誤差や組み付け誤差によってばらつきが生じることとなる。特に、回動軸を左右両側に有して上下に回動させるルーバの場合、回動軸線からルーバの重心が遠いと、ルーバの自重により回動方向によって操作力が大きく異なり、操作フィーリングを悪化させる要因となる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、操作フィーリングを向上できる風向調整体及びこれを備えた風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の風向調整体は、上下方向に回動可能に支持され、回動により風向を変化させる風向調整体であって、回動軸線からの重心の距離を設定する重心設定部を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の風向調整体は、請求項1記載の風向調整体において、内部に中空部を有し、重心設定部は、前記中空部に配置されているものである。
【0008】
請求項3記載の風向調整体は、請求項1または2記載の風向調整体において、複数の部材に分割されているものである。
【0009】
請求項4記載の風向調整体は、請求項3記載の風向調整体において、他の配風体と連結される連結部を備え、前記連結部は、複数の部材の固着構造を基準として、風向調整体の回動限界を設定するストッパ部に対して同側に配置されているものである。
【0010】
請求項5記載の風向調整体は、請求項1ないし4いずれか一記載の風向調整体において、風の下流側寄りの位置に回動軸線が位置しているものである。
【0011】
請求項6記載の風向調整装置は、風路を構成するケース体と、このケース体に回動可能に支持されて前記風路内に位置する少なくとも一つの請求項1ないし5いずれか一記載の風向調整体と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の風向調整体によれば、重心設定部によって回動軸線に対して重心の位置を接近させることができ、自重により上下の回動方向に操作力の荷重差が生じることを抑制し、操作フィーリングを向上できる。
【0013】
請求項2記載の風向調整体によれば、請求項1記載の風向調整体の効果に加えて、ルーバの表面の整流作用に対する重心設定部による影響を防止でき、配風性能を確保できる。
【0014】
請求項3記載の風向調整体によれば、請求項1または2記載の風向調整体の効果に加えて、重心設定部を所望の形状に容易に設定できる。
【0015】
請求項4記載の風向調整体によれば、請求項3記載の風向調整体の効果に加えて、ストッパ部によるルーバの回動限界の位置からさらにルーバを回動させる方向に負荷が加えられたとしても、この負荷が部材の固着構造を引き離そうと作用する力になりにくく、部材の分裂を抑制できる。
【0016】
請求項5記載の風向調整体によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の風向調整体の効果に加えて、ルーバの下流側の上下方向への操作量に対してルーバを大きく回動させることができ、配風性能を向上できる。
【0017】
請求項6記載の風向調整装置によれば、操作性及び配風性能に優れた風向調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整体を示す断面図である。
図2】(a)は同上風向調整体の一の部材を示す斜視図、(b)は同上風向調整体の他の部材を示す斜視図、(c)は一の部材と他の部材とを組み付けた風向調整体の斜視図である。
図3】同上風向調整体を備える風向調整装置の一部を示す斜視図である。
図4】本発明の第2の実施の形態の風向調整体を示す断面図である。
図5】本発明の第3の実施の形態の風向調整体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図3において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0021】
風向調整装置1は、ケース体2を備える。ケース体2の内部には、流体である空調風が流れる風路3が形成されている。風路3内を空調風が所定の第一方向である前後方向に通過する。すなわち、風路3内において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。また、ケース体2には、風路3に空調風を受け入れる受入口が形成されている。受入口は、風路3の上流端である後端に位置する。さらに、ケース体2には、風路3を通過した空調風が吹き出される吹出口5が形成されている。吹出口5は、風路3の下流端である前端に位置する。吹出口5は、車室内に連通し、車室内へと空調風を吹き出すように配置されている。
【0022】
本実施の形態において、ケース体2は、角筒状に形成されている。ケース体2は、風路3の通気方向に所定長を有する。ケース体2は、単数または複数の部材により構成されている。
【0023】
そして、ケース体2には、配風部としての風向調整体であるルーバ10が取り付けられている。ルーバ10は、フィンなどとも呼ばれる配風部材である。ルーバ10は、左右方向を軸として上下方向に回動することで上下方向に配風する横フィンである。一例として、ルーバ10は、操作ノブなどの操作部11の操作に応じて回動される。本実施の形態において、操作部11は、ルーバ10に取り付けられ、車両の乗員などの使用者が手動により直接操作するように構成されている。
【0024】
ルーバ10は、ルーバ本体部12を備える。ルーバ本体部12は、長手状に形成されている。ルーバ本体部12は、ケース体2の風路3内に、厚み方向が上下方向となるように配置されている。つまり、ルーバ本体部12は、互いに平行な平面状の一の主面である一の整流面12aと他の主面である他の整流面12bとを有する板状となっている。したがって、ルーバ本体部12は、厚み方向に扁平な形状となっている。一の整流面12a及び他の整流面12bは、それぞれ左右方向に長手状に延びて配置される。
【0025】
本実施の形態において、ルーバ本体部12には、回動軸13が形成されている。回動軸13は、ルーバ本体部12の長手方向の両端部に位置する。回動軸13は、円柱状に形成されている。回動軸13は、ルーバ本体部12から突出し、ケース体2に回動可能に支持される。すなわち、本実施の形態において、回動軸13は、ケース体2に支持された状態でルーバ10の左右両側部に位置する。
【0026】
また、本実施の形態では、回動軸13、及びその中心軸である回動軸線Aは、ルーバ10において、風路3を通過する風の下流側寄りの位置にある。すなわち、回動軸13及び回動軸線Aは、ルーバ本体部12の両端部において、前側寄りの位置にある。図示される例では、回動軸13及び回動軸線Aは、一の整流面12a及び他の整流面12bの前後方向の中央部よりも前側に位置している。また、回動軸13及び回動軸線Aは、一の整流面12a及び他の整流面12bの前端部よりも後側に位置している。さらに、回動軸13及び回動軸線Aは、ルーバ本体部12の厚み方向の中央部に位置している。
【0027】
さらに、ルーバ10には、このルーバ10と他の配風体とを連結する連結部15が形成されている。連結部15は、ルーバ10の回動に他の配風体を連動させる部分である。連結部15は、ルーバ10において、回動軸13(回動軸線A)と平行に設定されている。例えば、連結部15は、ルーバ本体部12の一端部において、ルーバ10の回動軸13に対して離れて位置している。本実施の形態では、連結部15は、ルーバ本体部12の短手方向である前後方向に離れ、回動軸13に対して後方に位置する。連結部15は、円柱状に形成されている。連結部15には、リンク16が接続されている。リンク16は、連結部15や他の配風体を回動可能に支持する支持穴17を複数、本実施の形態では3つ有する。リンク16は、その移動限界がストッパ部18との当接により設定されている。本実施の形態において、ストッパ部18は、リンク16の下方に設定されている。ストッパ部18は、例えばケース体2に形成されている。
【0028】
また、図1に示すように、ルーバ10には、重心Gの位置を設定する重心設定部20が形成されている。具体的に、重心設定部20は、ルーバ10の重心Gの回動軸線Aからの距離を設定することで、ルーバ10の重心配分を制御するものである。重心設定部20は、ルーバ本体部12の内部に埋め込まれて位置する。重心設定部20は、ルーバ10の一部の構造を利用して構成される。
【0029】
本実施の形態において、重心設定部20は、ルーバ10の内部に形成された中空部21に配置されている。中空部21は、ルーバ10の長手方向に沿って形成されている。また、中空部21は、前後方向に所定の長さを有している、中空部21の前端部寄りの位置に、回動軸線Aが通っている。なお、中空部21は、全体がルーバ本体部12の内部に位置している構成でもよいし、一部がルーバ本体部12の外部に露出するように、すなわちルーバ本体部12の外部と連通するように形成されている構成でもよい。
【0030】
図示される例では、中空部21は、ルーバ10が複数の部材23に分割されていることによりルーバ10の内部に形成されている。すなわち、本実施の形態のルーバ10は、複数の部材23を組み付けて構成された分割タイプのものである。図示される例では、部材23には、一の部材25と、他の部材26と、が設定されている。これら一の部材25と他の部材26とが互いに固着されることで、ルーバ10が一体的に構成されている。
【0031】
一の部材25は、ルーバ本体部12の一の整流面12a側及び前端部側を主として構成する部品である。一の部材25は、例えばガラス繊維強化PBT樹脂などにより形成されている。図1及び図2(a)に示すように、一の部材25は、一の部材本体部28を有する。一の部材本体部28は、長手状に形成された平板状であり、一主面が一の整流面12aとなっている。一の部材本体部28の他主面は、中空部21の一の壁部となっている。一の部材本体部28には、一の部材端壁部29が連なって形成されている。一の部材端壁部29は、一の部材本体部28の短手方向の一端部の全体に亘って連なり、断面視でコ字状に折り返されている。そのため、一の部材端壁部29の背後側には、受け部30が形成されている。また、一の部材本体部28には、一の固着部である一の係止部31が形成されている。一の係止部31は、一の部材本体部28の短手方向の他端部に形成されている。一の係止部31は、一の部材本体部28の長手方向全体に亘り形成されていてもよいし、長手方向の一部に形成されていてもよいし、長手方向に断続的に複数箇所に形成されていてもよい。本実施の形態において、一の係止部31は、一の部材本体部28の厚み方向の一部が爪状に突出して形成されている。
【0032】
また、一の部材本体部28と一の部材端壁部29との長手方向の端部には、側壁部32が連なって形成されている。側壁部32は、ルーバ本体部12の長手方向の両端部を構成する。本実施の形態では、側壁部32に回動軸13が形成されている。
【0033】
そして、一の部材25は、ルーバ10がケース体2(図3)に取り付けられた状態で、一の部材本体部28及び一の部材端壁部29の長手方向を左右方向とし、一の部材本体部28の一主面を上側とし、一の部材端壁部29を前側とするように配置される。
【0034】
他の部材26は、ルーバ本体部12の他の整流面12b側及び後端部側を主として構成する部品である。他の部材26は、一の部材25と同一または異なる材質により形成されている。例えば、他の部材26は、ポリアセタールなどにより形成されている。図1及び図2(b)に示すように、他の部材26は、他の部材本体部35を有する。
【0035】
他の部材本体部35は、長手状に形成された平板状であり、一主面が中空部21の他の壁部となっている。他の部材本体部35の他主面は、他の整流面12bとなっている。他の部材本体部35には、挿入部36が連なって形成されている。挿入部36は、一の部材25の受け部30に挿入されて他の部材26の短手方向の一端部を一の部材25の短手方向の一端部に引っ掛ける部分である。挿入部36は、他の部材本体部35の短手方向の一端部に連なっている。挿入部36は、他の部材本体部35の長手方向全体に亘り連なっていてもよいし、長手方向の一部に連なっていてもよいし、長手方向に断続的に複数箇所に連なっていてもよい。また、他の部材本体部35には、他の部材端壁部37が連なって形成されている。他の部材端壁部37は、他の部材本体部35の短手方向の他端部、すなわち挿入部36とは反対側の端部に連なり、他の部材本体部35の一主面よりも厚み方向に突出している。
【0036】
他の部材端壁部37には、他の固着部である他の係止部38が形成されている。他の係止部38は、一の部材25の一の係止部31との係合によって、一の部材25と他の部材26とを一体的に固着するものである。本実施の形態において、他の係止部38は、他の部材端壁部37から他の部材本体部35側に折り返される爪状に形成されている。受け部30、挿入部36、一の係止部31及び他の係止部38により、一の部材25と他の部材26とを固着する固着構造である係止構造が構成されている。一の部材25と他の部材26とが互いに係止されることで、一の部材25と他の部材26との間に、中空部21が区画される。なお、受け部30を他の部材26に形成し、挿入部36を一の部材25に形成する構成としてもよい。
【0037】
そして、他の部材26は、ルーバ10がケース体2(図3)に取り付けられた状態で、他の部材本体部35の長手方向を左右方向とし、他の部材本体部35の一主面を上側とし、他の部材端壁部37を後側とするように配置される。
【0038】
また、本実施の形態では、他の部材26に連結部15が形成されている。図示される例では、他の部材26の長手方向の一端部に連結部15が配置されている。例えば、他の部材26の他の部材本体部35の長手方向の一端部、あるいは他の部材端壁部37の長手方向の一端部に連結部15が配置されている。本実施の形態において、連結部15は、他の係止部38よりも下方に位置する。すなわち、連結部15は、一の部材25と他の部材26との固着構造を基準として、ストッパ部18(図3)と同側に配置されている。
【0039】
さらに、本実施の形態では、他の部材26に重心設定部20が形成されている。図示される例では、他の部材26の他の部材本体部35の一主面側に重心設定部20が形成されている。重心設定部20は、任意に形成してよいが、例えば長手方向に連続的または断続的に形成された第一部分40と、第一部分40と交差する方向に連なる第二部分41と、を有する。第一部分40及び第二部分41は、それぞれ他の部材本体部35と同一材質により一体成形されたリブ状となっている。本実施の形態では、第二部分41は、第一部分40の長手方向の複数箇所に形成されている。また、重心設定部20は、回動軸線A方向に見て、回動軸13の投影内に少なくとも一部、好ましくは全部が位置している。つまり、回動軸13の外周面を回動軸線Aに沿って延ばした領域内に、重心設定部20の少なくとも一部、好ましくは全部が位置している。そして、重心設定部20の第一部分40及び第二部分41の厚み及び長さを含む形状、第二部分41の個数、及び、回動軸線Aに対する位置に応じて、ルーバ10の重心Gの回動軸線Aからの距離が設定されるように構成されている。
【0040】
なお、ルーバ10は、図3に示す吹出口5に臨んで複数配置されていてもよい。この場合、複数のルーバ10は、リンク16によって連結されて、同方向に回動するように連動されることが好ましい。また、ケース体2には、ルーバ10の他に、任意の配風体やシャットバルブなどが可動的に取り付けられていてもよい。
【0041】
そして、ルーバ10を組み立てる際には、図1に示すように、予めそれぞれ形成された一の部材25の受け部30に対して他の部材26の挿入部36を差し込み、一の部材25の一の係止部31に他の部材26の他の係止部38を係合させることで、一の部材25と他の部材26とが互いに一体的に固定されたルーバ10(図2(c))を容易に組み立てることができる。
【0042】
組み立てたルーバ10は、必要に応じて連結部15にリンク16を接続し、他の配風体と連動可能とした状態で、回動軸13がケース体2側に回動可能に支持されるようにケース体2内に組み付け、上下方向に回動するように配置する。使用者は、ルーバ10に取り付けられた操作部11を摘み、上下に操作することにより、ルーバ10を上下に回動させる。
【0043】
このとき、上下方向に回動するルーバ10は、回動軸線Aに対し重心Gが遠いほど、ルーバ10には自重によって下方向に回動するベクトルが大きく発生し、そのベクトル方向に回動させる際には荷重が相対的に小さく、その反対方向に回動させる際には荷重が相対的に大きくなる。そこで、第1の実施の形態では、回動軸線Aからの重心Gの距離を設定する重心設定部20を備えることで、重心設定部20によって回動軸線Aに対して重心Gの位置を接近させることができ、上記のように自重により上下の回動方向に操作力の荷重差が生じることを抑制し、操作フィーリングを向上できる。本実施の形態の場合には、重心Gを回動軸線Aに接近させることでルーバ10の上流側である後部に対して自重によって下方向に回動する荷重を抑制できるため、ルーバ10を上下いずれの方向に回動させたとしても、自重による荷重差が生じにくく、操作フィーリングを向上できる。
【0044】
重心設定部20をルーバ10の内部の中空部21に配置したことで、ルーバ10の表面(一及び他の整流面12a,12b)の整流作用に対する重心設定部20による影響を防止でき、ルーバ10の配風性能を確保できる。
【0045】
ルーバ10を複数の部材23に分割したことで、中空部21を容易に形成できるとともに、重心設定部20を所望の形状に容易に設定できる。また、ルーバ10の厚みが、一体成形の場合には一般的な成形条件で対応できない場合であっても、複数の部材23に分割することでそれぞれの部材23を成形条件内の厚みに設定しつつ対応可能となるため、厚肉によって発生するひけなどの外観不良を抑制でき、外観性能及び配風性能を保持できる。
【0046】
一方、ルーバ10を複数の部材23に分割していたとしても、ルーバ10の両端部の回動軸13については、いずれかの部材23に形成することにより、互いに異なる部材23にそれぞれの回動軸13を形成する場合と比較して、回動軸線Aの精度出しが容易であり、各部材23を必要以上に高精度に形成せずに済み、部品費用を抑制できるとともに、ケース体2への組み付けも容易であり、組み付け作業に要する費用を抑制できる。
【0047】
また、ルーバ10を回動方向である上下方向に対向する複数の部材23に分割する構造の場合、例えばルーバ10を最大に回動させた位置で仮にリンク16がストッパ部18に当接した状態で、使用者が操作部11を操作することによってさらに負荷を加えると、リンク16の位置が不変である一方、リンク16に連結されているルーバ10の連結部15には移動しようとするため、操作部11から連結部15に負荷が作用することとなる。そこで、本実施の形態では、一の係止部31と他の係止部38との係止構造に対してストッパ部18と同側である下方に連結部15を形成することにより、リンク16の下部がストッパ部18に当接するルーバ10の回動限界の位置から操作部11に対してさらにルーバ10を回動させる方向に負荷が加えられたとしても、この負荷が部材23(一の部材25及び他の部材26)の係止構造を引き離そうと作用する力になりにくく、部材23(一の部材25及び他の部材26)の分裂を抑制できる。
【0048】
さらに、ルーバ10は、風の下流側寄りの位置に回動軸線Aが位置しているため、ルーバ10の下流側の上下方向への操作量に対してルーバ10を大きく回動させることができ、ルーバ10の配風性能を向上できる。
【0049】
そして、このようなルーバ10を風向調整装置1に備えることで、操作性及び配風性能に優れた風向調整装置を提供できる。
【0050】
なお、上記の第1の実施の形態において、一の部材25と他の部材26とは、例えば溶着(振動溶着)などにより互いに固着されてもよい。その場合、図4に示す第2の実施の形態のように、溶着用のピンなどの溶着部45を固着部として他の部材26に形成してもよいし、図5に示す第3の実施の形態のように、溶着部45を一の部材25に形成してもよい。これらのいずれの場合でも、上記の第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、一の部材25と他の部材26とを互いにより強固に固定できるため、リンク16がストッパ部18に当接するルーバ10の回動限界の位置から操作部11に対してさらにルーバ10を回動させる方向に負荷が加えられた状態でも、その負荷によってルーバ10が分裂しにくくなる。
【0051】
また、上記各実施の形態において、重心設定部20は、一の部材25に形成されていてもよい。すなわち、重心設定部20は、一の部材25と他の部材26との少なくともいずれかに形成されていてよい。
【0052】
重心設定部20は、一の部材25及び/または他の部材26に対して重量を付加するものに限らず、一の部材25及び/または他の部材26の厚みを抜いたり、一部を切り欠いたり、穴部を形成したりするなど、重量を削減するものであってもよい。
【0053】
さらに、一の部材25と他の部材26との材質を設定することで、これらの比重差によって回動軸線Aから重心Gまでの距離を設定してもよい。
【0054】
また、回動軸13は、他の部材26に形成されていてもよい。すなわち、回動軸13は、一の部材25と他の部材26とのいずれか一方に形成されていればよい。
【0055】
ルーバ10は、回動軸13を備えている必要はなく、ケース体2に形成された回動軸に対し回動可能に軸支されるように構成されていてもよい。
【0056】
さらに、連結部15は、一の部材25と他の部材26との固着構造に応じて、その固着構造を基準としてストッパ部18と同側に設定されていれば、一の部材25に形成されていてもよい。
【0057】
また、ルーバ10を構成する複数の部材23は、一の部材25と他の部材26との二つに限らず、三つ以上でもよい。
【0058】
さらに、重心設定部20は、一の部材25及び他の部材26と異なる比重を有する異なる材質のものを別途組み付けるように構成してもよい。その場合、比重が大きいものを用いることで、重心設定部20をより小型に構成できる。
【0059】
さらに、ルーバ10に取り付けられた操作部11の操作によりルーバ10を直接回動させる構成には限定されず、他の配風体を動作させる操作に連動されて回動されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置のルーバとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 風向調整装置
2 ケース体
3 風路
10 風向調整体であるルーバ
15 連結部
18 ストッパ部
20 重心設定部
21 中空部
23 部材
A 回動軸線
G 重心
図1
図2
図3
図4
図5