(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040533
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147579
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000172961
【氏名又は名称】あおみ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】000133881
【氏名又は名称】株式会社テノックス
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】土屋 信洋
(72)【発明者】
【氏名】小森田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 強
(72)【発明者】
【氏名】大古利 勝己
(72)【発明者】
【氏名】仁田尾 洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝司
(72)【発明者】
【氏名】又吉 直哉
(72)【発明者】
【氏名】河合 拓也
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB03
2D040BA06
2D040CA01
2D040CB03
(57)【要約】
【課題】貫入補助水量に対して引抜き施工時の地盤に吐出するスラリー量を精度よく管理した改良土混合処理を行うことができ、地盤改良における配合計画時の強度を合理的に発現することができる。
【解決手段】施工計画時に得られる計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画貫入補助水とを合わせた計画修正水セメント比が入力される品質管理部20Aと、施工時において、実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量を測定する施工計測部20Bと、施工計測部20Bで測定された実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量に基づいて実修正水セメント比を得る施工管理部20Cと、計画修正水セメント比と実修正水セメント比とを比較して、回転ロッドの引抜き施工時における実スラリー量、及び引抜き速度を算定する算定部20Dと、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排土式深層混合処理機に設けられる回転ロッドを改良地盤に貫入させる際に、プラントで製造したスラリーを地盤に混合させるとともに、前記回転ロッドの貫入時に貫入補助水を地盤に向けて吐出することによる改良土を管理する貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システムであって、
施工計画時に得られる計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画貫入補助水とを合わせた計画修正水セメント比が入力される品質管理部と、
施工時において、実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量を測定する施工計測部と、
前記施工計測部で測定された前記実施工深度、前記実貫入速度、及び前記実貫入補助水量に基づいて実修正水セメント比を得る施工管理部と、
前記計画修正水セメント比と前記実修正水セメント比とを比較して、前記回転ロッドの引抜き施工時における実スラリー量、及び引抜き速度を算定する算定部と、
を備えていることを特徴とする貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム。
【請求項2】
前記算定部では、前記実貫入補助水量が前記計画貫入補助水量よりも多くなり、前記実修正水セメント比が前記計画修正水セメント比よりも大きくなる場合には、前記実修正水セメント比が計画修正水セメント比の値になるように前記実スラリー量が算定されることを特徴とする請求項1に記載の貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム。
【請求項3】
排土式深層混合処理機に設けられる回転ロッドを改良地盤に貫入させる際に、プラントで製造したスラリーを地盤に混合させるとともに、前記回転ロッドの貫入時に貫入補助水を地盤に向けて吐出することによって改良する排土式深層混合処理工法であって、
施工計画時に得られる計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画貫入補助水とを合わせた計画修正水セメント比を求める工程と、
施工時において、実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量を測定する工程と、
予め測定された前記実施工深度、前記実貫入速度、及び前記実貫入補助水量に基づいて実修正水セメント比を得る工程と、
前記計画修正水セメント比と前記実修正水セメント比とを比較して、前記回転ロッドの引抜き施工時における実スラリー量、及び引抜き速度を求める工程と、
を有していることを特徴とする排土式深層混合処理工法。
【請求項4】
施工前に、排土式深層混合処理機によって施工される改良土の配合を試験する改良土配合試験が行われ、
改良土配合試験において、前記計画修正水セメント比が求められることを特徴とする請求項3に記載の排土式深層混合処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部における地盤改良工法では、近接施工となるケースが多く、周囲地盤の変位を抑えた変位低減型の工法が求められており、例えば特許文献1に示されるような2軸の回転軸を有する処理機を用いた排土式深層混合処理工法が知られている。
特許文献1は、2軸の回転軸を貫入する際に、固化材の供給量に相当する土量を積極的に排土した後、回転軸の引抜き時に貫入した地盤に固化材を供給して撹拌混合することで、固化材の供給に伴う地盤膨張を防止して周辺地盤に変位が生じることを回避する変位低減型の地盤改良工法である。この場合には、貫入時に固化材を供給しないので、固化材が混入されずに元の地盤のまま排土される。
【0003】
さらに、大径の撹拌翼で改良面積を大きくした大径改良を可能とした2軸の地盤改良工法を実施されるケースもあり、この場合には施工費を低減できる利点がある。大径の撹拌翼で貫入施工を行うときには、貫入抵抗が大きくなることから、貫入速度が低下し、施工能率が低下する傾向にあった。そのため特許文献2では、貫入時には例えば下段吐出口より水を吐出して流動化を促進することにより、貫入抵抗を減少させ施工速度を確保するとともに、引抜き時において上段吐出口よりスラリーを吐出し、撹拌混合することで改良体を造成することも行われている。
【0004】
近年では、実施工において計画時の地盤抵抗を上回り貫入補助水が計画時よりも大量に吐出すことを必要とするケースもあり、この場合には引抜き時に地盤に添加する固化材量が多くなり固化材のスラリー量を即時に正確に算出することが必要となる傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貫入時の地盤抵抗を定量的に事前に把握することは困難であり、計画貫入補助水量を超えたケースを多数想定し、吐出する固化材のスラリー量を引抜き速度とプラントから供給するスラリー量の組合せで配合試験の水セメント比に合わせて設定する必要があった。さらに計画貫入補助水量を超えた貫入補助水量に対して即時にオペレーターが判断する必要があり、正確性とスラリー量の管理の困難さという点で問題があった。
【0007】
また標準装備の管理システムでは、貫入時点の施工深度における貫入速度と貫入補助水量はディスプレイに表示されるのみで、記録として確認できるのは引抜きが終わり、施工が完了した時点で施工記録として全深度を出力できるのみであった。このため、貫入補助水が計画値をオーバーした時点の貫入速度とプラントからの貫入補助水供給量(リットル/分)を手書きで記録し、引抜き施工時点で当該深度に到達した際にプラントからのスラリー供給量と引抜き速度を調整するという操作を行う必要があり、正確性で問題があった。複数深度で調整する操作が必要になった場合は、対応が困難になることも考えられた。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、貫入補助水量に対して引抜き施工時の地盤に吐出するスラリー量を精度よく管理した改良土混合処理を行うことができ、地盤改良における配合計画時の強度を合理的に発現することができる貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システムは、排土式深層混合処理機に設けられる回転ロッドを改良地盤に貫入させる際に、プラントで製造したスラリーを地盤に混合させるとともに、前記回転ロッドの貫入時に貫入補助水を地盤に向けて吐出することによる改良土を管理する貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システムであって、施工計画時に得られる計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画貫入補助水とを合わせた計画修正水セメント比が入力される品質管理部と、施工時において、実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量を測定する施工計測部と、前記施工計測部で測定された前記実施工深度、前記実貫入速度、及び前記実貫入補助水量に基づいて実修正水セメント比を得る施工管理部と、前記計画修正水セメント比と前記実修正水セメント比とを比較して、前記回転ロッドの引抜き施工時における供給する実スラリー量、及び引抜き速度を算定する算定部と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る排土式深層混合処理工法は、排土式深層混合処理機に設けられる回転ロッドを改良地盤に貫入させる際に、プラントで製造したスラリーを地盤に混合させるとともに、前記回転ロッドの貫入時に貫入補助水を地盤に向けて吐出することによって改良する排土式深層混合処理工法であって、施工計画時に得られる計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画貫入補助水とを合わせた計画修正水セメント比を求める工程と、施工時において、実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量を測定する工程と、予め測定された前記実施工深度、前記実貫入速度、及び前記実貫入補助水量に基づいて実修正水セメント比を得る工程と、前記計画修正水セメント比と前記実修正水セメント比とを比較して、前記回転ロッドの引抜き施工時における実スラリー量、及び引抜き速度を求める工程と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明では、地盤に吐出する固化材のスラリー量を、管理装置により測定された貫入補助水量の施工情報により引抜き時の施工速度とプラントからのスラリー供給量を自動的に算定し効率よく供給することができ、地盤改良における正確な強度を発揮できる
つまり、貫入補助水施工に対する改良土配合試験により求められる設計基準強度を実現できる、計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、計画配合水と計画補助水を合わせた計画修正水セメント比の条件を入力する。実施工において、管理計器により測定入力される実施工深度、実貫入速度、実貫入補助水量から実修正水セメント比を算定する。実補助水量が計画よりも多く実修正水セメント比が計画修正水セメント比よりも大なる場合は、計画修正水セメント比の値となるよう実スラリー量を算定する。実スラリー量を実現できる、プラントから供給するスラリー量と引抜き速度を管理値としてオペレーターに表示し、引抜き施工の状態を管理計器から自動で読み取り照査判定し記録することができる。これにより、本発明では、貫入補助水量に対して引抜き施工時の地盤に吐出するスラリー量を精度よく管理した改良土混合処理を行うことができ、地盤改良における配合計画時の強度を合理的に発現することができる。
【0012】
また、本発明に係る貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システムは、前記算定部では、前記実貫入補助水量が前記計画貫入補助水量よりも多くなり、前記実修正水セメント比が前記計画修正水セメント比よりも大きくなる場合には、前記実修正水セメント比が計画修正水セメント比の値になるように前記実スラリー量が算定されることを特徴としてもよい。
【0013】
また、本発明に係る排土式深層混合処理工法では、施工前に、排土式深層混合処理機によって施工される改良土の配合を試験する改良土配合試験が行われ、改良土配合試験において、前記計画修正水セメント比が求められることを特徴としてもよい。
【0014】
本発明では、回転ロッドの貫入時に改良土配合試験方法によって得られた結果に基づく補助水量を管理することで、地盤改良時における周辺地盤の変位を小さく抑えることができ、強度発現を実現する引抜き吐出時のスラリー量を自動に瞬時で規定管理できるため、排土式で変位低減型の深層混合処理に好適となり、排土式2軸深層混合処理工法を効果的に採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法によれば、貫入補助水量に対して引抜き施工時の地盤に吐出するスラリー量を精度よく管理した改良土混合処理を行うことができ、地盤改良における配合計画時の強度を合理的に発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)~(f)は、本発明の第1の実施の形態による排土式深層混合処理工法の工程を示す図である。
【
図3】施工管理の内容を示す施工管理項目図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態による改良土配合試験方法と排土式深層混合処理工法の作業工程を示すフロー図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態による改良土配合試験方法と排土式深層混合処理工法の作業工程の作業工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態による貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法について、図面に基づいて説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1及び
図2に示すように、本実施の形態の貫入時補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム(以下、単に管理システム20という)は、排土式深層混合処理機1に設けられる回転ロッド11を改良地盤に貫入させる際に、プラントで製造した固化材のスラリーを地盤Gに混合させるとともに、回転ロッド11の貫入時に貫入補助水を地盤Gに向けて吐出することによる改良土を管理するためのものである。
そして、本実施の形態の排土式深層混合処理工法は、上述した管理システム20によって得られた結果(実スラリー量)を用いて、排土式深層混合処理機1の回転ロッド11を引抜き施工時にスラリーを吐出することによって深層混合処理を行う施工方法である。
また、第1の実施の形態では、排土式深層混合処理機1によって施工される改良土の配合を試験する第1の改良土配合試験方法を適用している。
【0019】
図1(a)~(f)に示すように、排土式深層混合処理機1は、先端部に撹拌翼12を備え並列に配置された2軸の回転ロッド11、11と、これら2軸の回転ロッド11、11の各外周面に設けられたスパイラル13と、回転ロッド11、11の先端部から地盤Gに固化材を噴出する固化材吐出口14と、を備えている。
【0020】
各回転ロッド11は、それぞれ先端部に掘削翼15を備え、それぞれ専用の駆動モータ16によって独立に駆動される。そして、これら回転ロッド11、11の回転方向は、貫入時、引き抜き時においてスパイラル13を回転して排土する方向とする。なお、引き抜き時には、2軸の回転ロッド11、11同士の中央に掘削土を集めた状態で排土する。
【0021】
撹拌翼12は、2軸の回転ロッド11、11の先端部側においてそれぞれ複数段(図示例では4段)で設けられている。各回転ロッド11に設けられる撹拌翼12の撹拌径は、例えば1600mmのものを採用することができる。
【0022】
固化材吐出口14は、各回転ロッド11、11の撹拌翼12近傍に設けられている。そして、回転ロッド11の内部には、軸方向全体にわたって流路(不図示)が設けられており、それら流路の上端部に供給された固化材が固化材吐出口14まで流通する構成となっている。具体的には、ロッド貫入時の改良部先端処理時には固化材を下段側の固化材吐出口14から吐出し、引き抜き時には固化材を上段側の固化材吐出口14から吐出することが基本となっている。なお、本実施の形態のように2軸の回転ロッド11、11の場合には、下段側と上段側の固化材吐出口14を切り替えて使用する。
【0023】
次に、貫入補助水施工に対する管理システム20について、
図2及び
図3を用いて具体的に説明する。
【0024】
管理システム20は、排土式深層混合処理機1に設けられる回転ロッド11を改良地盤に貫入させる際に、プラントで製造したスラリーを地盤Gに混合させるとともに、回転ロッド11の貫入時に貫入補助水を地盤Gに向けて吐出することによる改良土を管理する貫入補助水施工に適用される。管理システム20は、施工機側(排土式深層混合処理機1側)に設けられる機器に対して、プラント側に設けられる機器及び管理室側に設けられる機器が有線又は無線により接続されている。
【0025】
管理システム20は、施工計画時に管理する品質管理部20Aと、施工時に管理する施工計測部20B、施工管理部20C、及び算定部20Dと、を備えている。
【0026】
品質管理部20Aには、施工計画時に得られる計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画補助水とを合わせた計画修正水セメント比が入力される。排土式深層混合処理機1による貫入施工時には、品質管理部で入力された計画修正水セメント比に基づいて貫入スラリーが吐出される。
【0027】
施工機側には、システム計測盤21と、排土式深層混合処理機1の運転席に設けられる施工管理装置22と、が設けられている。システム計測盤21と施工管理装置22とは、互いに後述する施工計測部20Bで検出した計測データ等のデータDが送受信される。
【0028】
システム計測盤21は、施工計測部20Bとして設けられる計測機器で検出された計測データが集約される。施工計測部20Bは、施工機(排土式深層混合処理機1)で施工される回転ロッド11の先端部の深度(実施工深度)や昇降速度(実貫入速度)を計測する深度・速度検出計23と、回転ロッド11の回転数を計測する回転検出計24と、回転ロッド11を駆動する駆動モータ16の電流値を計測する電流検出計25と、を備えている。また、施工計測部20Bは、回転ロッド11を貫入するときの貫入補助水量を測定する流量計等の機器(図示省略)が設けられている。
【0029】
これら深度・速度検出計23、回転検出計24、及び電流検出計25で検出された測定値はシステム計測盤21に集約されて施工管理装置22へ送られる。施工管理装置22は、施工管理部20Cと、算定部20Dと、を有している。
施工管理部20Cでは、施工計測部20Bで測定された実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量に基づいて実修正水セメント比が得られる。
【0030】
算定部20Dは、品質管理部20Aで得られた計画修正水セメント比と施工管理部で得られた実修正水セメント比とを比較して、回転ロッド11の引抜き施工時における実スラリー量、及び引抜き速度が算定される。例えば、算定部20Dでは、実貫入補助水量が計画貫入補助水量よりも多くなり、実修正水セメント比が計画修正水セメント比よりも大きくなる場合には、実修正水セメント比が計画修正水セメント比の値になるように実スラリー量を算定することができる。
【0031】
プラントは、排土式深層混合処理機1を使用した貫入補助水施工において、排土式深層混合処理機1の回転ロッド11を貫入した後に引き抜く際に、排土式深層混合処理機1から地盤G中に注入されるスラリーを製造する。
プラント側には、一対の補助水・スラリー流量計26(26A、26B)が設けらている。これら補助水・スラリー流量計26A、26Bは、補助水とスラリーの流量を検出するものである。補助水・スラリー流量計26A、26Bのそれぞれで計測された流量値は施工機側のシステム計測盤21に集約されて施工管理装置22へ送られる。
【0032】
管理室側には、例えば日報作成用のコンピュータ27やプリンタ28が設けられている。コンピュータ27は、施工管理装置22に接続され、データDのやり取りができるようになっている。また、プリンタ28では、コンピュータ27で作成された管理結果等が出力される。
【0033】
次に、管理システム20の管理項目や管理内容について、
図2及び
図3に基づいてさらに具体的に説明する。
本実施の形態の管理システム20では、材料の品質、改良体の出来形、変位を管理する。
【0034】
図3に示すように、材料の品質については、貫入補助水施工で使用されプラントで製造されるスラリーの材料、スラリーの配合、混合(スラリーの混練状態)が管理される。
スラリーの材料の管理内容は、材料の計量であり、計量器を用いて検定される。計量器で検定された材料の検定値は、例えばデジタル印字表等でコンピュータ27に送られる。
スラリーの配合の管理内容は、貫入補助水または固化材スラリー流量計(
図2に示す補助水・スラリー流量計26A)と処理機昇降速度計(
図2に示す深度・速度検出計23)を使用して検出された改良土1m
3当りのセメント量の確認である。
スラリーの混練状態の管理内容は、排土式深層混合処理機1(処理機)の軸回転計(回転検出計24)によって混練性能の確認である。
【0035】
改良体の出来形については、排土式深層混合処理機1による打設位置、打設深度、着底(着底状態)とされている。打設位置の管理内容は、例えばトータルステーション等の測量機器を使用して処理杭1本ごとの打設位置を確認することである。打設深度の管理内容は、処理機深度計(
図2に示す深度・速度検出計23)によって検出される処理杭1本ごとの打設深度を確認することである。着底状態の管理内容は、処理機回転モータの油圧計または電流計(
図2に示す電流検出計25)、及び処理機昇降速度計(
図2に示す深度・速度検出計23)によって検出される所定深度に到達したことの確認である。
【0036】
改良体の変位の管理内容は、処理機回転計(
図2に示す回転検出計24)、及びスクリュー形状等に基づいて処理杭1本ごとの排土量を確認することである。
【0037】
管理システム20では、管理内容である材料の品質、改良体の出来形、変位は、コンピュータ27に送られ施工評価され、施工に適している場合(=YES)にはパソコン(PC)で日報が作成され、不適な場合(=NO)には修正する施工が行われる。
【0038】
ここで、管理システム20によって管理されるスラリーの水セメント比の考え方について以下に示す。
施工計画時の配合は、以下の5つである。
配合セメント質量:C配合(kg)
配合水質量 :W配合(kg)
配合水セメント比:W配合/C配合
計画貫入補助水量 :W計画補助(kg)
計画修正水セメント比:(W配合+W計画補助水)/C配合
貫入施工時の配合は、以下の2つである。
実貫入補助水量 :W施工補助水(kg)>W配合
実修正水セメント比 :(W配合+W施工補助水)/C配合>(W配合+W計画補助水)/C配合
引抜き施工時の配合は、以下の3つである。
実セメント質量 :C引抜 (kg)>C配合
実水セメント比 :W引抜/C引抜=W配合/C配合
引抜き修正水セメント比:(W引抜+W施工補助水)/C引抜=(W配合+W計画補助水)/C配合
【0039】
次に、上述した管理システム20を用いた第1の改良土配合試験方法、及び第1の排土式深層混合処理工法について、図面に基づいて具体的に説明する。
第1の排土式深層混合処理工法は、施工計画時に得られる計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画貫入補助水とを合わせた計画修正水セメント比を求める工程と、施工時において、実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量を測定する工程と、予め測定された実施工深度、実貫入速度、及び実貫入補助水量に基づいて実修正水セメント比を得る工程と、計画修正水セメント比と実修正水セメント比とを比較して、回転ロッド11の引抜き施工時における実スラリー量、及び引抜き速度を求める工程と、を有している。
【0040】
先ず、
図4を用いて第1の改良土配合試験方法について説明する。
ステップS1において、規定量の試料土と、回転ロッド11(
図1参照)の貫入時に地盤Gに向けて吐出される所定の補助水量の水とを混合する。その後、ステップS1で混合した試料土と所定量の補助水とを10分間で一次撹拌を行い(ステップS2)、規定量の含水比試料土を作成する(ステップS3)。なお、このときの一次撹拌に要する時間は、通常、地盤工学会基準JGS0821-2009に定める10分程度である。
【0041】
次に、ステップS4では、ステップS3で作成した規定量の含水比試料土に対して硬化材を混合する。その後、混合した規定量の含水比試料土と硬化材とを10分間で二次撹拌を行い(ステップS5)、改良土供試体を作成する(ステップS6)。なお、このときの二次撹拌に要する時間は、通常、地盤工学会基準JGS0821-2009に定める10分程度である。
ここまでのステップS1~S6が、第1の改良土配合試験方法による作業フローとなる。
【0042】
次に、第1の排土式深層混合処理工法について具体的に説明する。
第1の排土式深層混合処理工法では、先ず、ステップS7において、上述した第1の改良土配合試験方法により作成された改良土供試体で強度試験を実施し配合を分析する。すなわち、ステップS7で作成された改良土供試体の配合を変化させて強度試験を行い、貫入補助水量と配合の組み合わせを選定する。
【0043】
その後、ステップS8において、改良土供試体の分析結果に基づいて
図1に示す排土式深層混合処理機1の回転ロッド11の貫入施工時の貫入補助水量を設定する。次いで、後述する施工時において、
図1に示す撹拌翼12に設けられる固化材吐出口14から地盤Gに向けて水を吐出し流動化を促進するための補助水量(前記ステップS8で設定した貫入補助水量)を掘削深度毎に制御しながら貫入することにより施工する。
【0044】
具体的な施工としては、先ず、
図2に示す管理システム20において計画配合の施工条件である計画スラリー水セメント比、計画スラリー量、計画貫入補助水量、計画貫入速度、及び計画配合水と計画補助水とを合わせた計画修正水セメント比を品質管理部に入力する。
【0045】
次に、
図1(a)、(b)に示すように、排土式深層混合処理機1を所定の施工位置に位置決めした後、2軸の回転ロッド11、11をそれぞれ回転させて地盤Gに貫入していく。その際、実貫入速度を考慮して回転ロッド11、11の回転量を適正に制御してそれぞれのスパイラル13により排土を行う。このとき、撹拌翼12に設けられる固化材吐出口14から地盤Gに向けて水を吐出し、流動化を促進するための貫入補助水量(前記ステップS8で設定した貫入補助水量)を掘削深度毎に制御しながら貫入する。
【0046】
掘削深度毎の吐出された貫入補助水量は、
図2のプラント側の補助水・スラリー流量計26Aにより計測され施工管理装置に施工と同時に記録される。そして、施工管理装置22の施工管理部20Cにおいて予め測定された実施工深度、実貫入速度、及び実施工で吐出された実貫入補助水量から実修正水セメント比を算定する。
その後、算定部20Dにおいて計画修正水セメント比と前記実修正水セメント比とを比較して、実修正水セメント比を計画時に一致させるように引抜き施工時に吐出スラリー量を算定し、プラントから供給される実スラリー量と引抜き速度とを規定し引抜き施工時に施工管理値として管理される。
【0047】
そして、
図1(c)に示すように、回転ロッド11、11の先端(掘削翼15)が所定の改良下端深度に到達したときに貫入を停止する。
【0048】
次いで、
図1(d)、(e)に示すように、回転ロッド11、11を改良領域P中の途中まで引き抜く。このときの各回転ロッド11は、上述した吐出スラリー量の固化材を固化材吐出口14より吐出させながら回転ロッド11、11及び撹拌翼12を貫入時の回転を維持したまま引き上げることで、1スパンあたりの改良領域Pの地盤改良が完了する(
図1(f)参照)。
この際、引抜き速度とプラントから送るスラリー量は
図2の施工管理装置22に示され、
図3の施工管理計(流量計、昇降速度計)からの測定量として施工管理装置22にて評価判断する。
【0049】
そして、所望深度までの改良体が施工された後、
図1(f)に示すように排土式深層混合処理機1の装置全体を地上に引き上げて次の施工位置まで移動させ、上述した改良土配合試験方法により得られた貫入補助水量に基づいて
図1(a)~(f)の工程を同様に繰り返して他の改良体を施工する。
【0050】
上述のように本実施の形態による貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法では、地盤Gに吐出する水の補助水量を精度よく管理した改良土混合処理を行うことができ、改良強度を確実に発現するためのスラリー量管理が即時にできるため、地盤改良における正確な強度を把握することができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態による貫入時補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法について、
図5に示すフロー図に基づいて説明する。
第2の実施の形態では、排土式深層混合処理機1によって施工される改良土の配合を試験する第2の改良土配合試験方法を適用したものである。本試験方法で改良土の配合を試験する排土式深層混合処理機1(
図1参照)は上述した第1の実施の形態と同様である。また、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態で用いた
図1~
図4を参照して説明する。
【0052】
先ず、ステップS10において、規定量の試料土を作成する。
一方で、回転ロッド11(
図1参照)の貫入速度と地盤Gに向けて吐出される所定の貫入補助水量を設定する(ステップS11)。その後、ステップS11で設定した貫入速度で撹拌される対象土に投入される貫入補助水量を算定する(ステップS12)。具体的には、改良対象土の体積当たり貫入補助水量を算定する。そして、ステップS13において、投入される貫入補助水量から排土率を設定して排土量を算定する。さらに、排土後の改良対象土量に対する規定配合(水セメント比)から、セメント添加量と配合水量を算定する(ステップS14)。
【0053】
その後、ステップS15において、算定されたセメント添加量、配合水量と貫入補助水量から、修正した水セメント比(修正水セメント比)を算定する。ステップS10で作成した規定量の試料土に対して修正水セメント比の硬化材を混合する(ステップS16)。その後、ステップS10で混合した規定量の試料土と、修正水セメント比の硬化材とを10分間撹拌を行い(ステップS17)、改良土供試体を作成する(ステップS18)。
なお、このときの撹拌に要する時間は、通常、地盤工学会基準JGS0821-2009に定める10分程度である。
ここまでのステップS10~S18が、第2の改良土配合試験方法による作業フローとなる。
【0054】
次に、第2の排土式深層混合処理工法では、先ず、ステップS19において、上述した第2改良土配合試験方法により作成された改良土供試体で強度試験を実施し配合を分析する。具体的には、ステップS19で作成された改良土供試体の配合を変化させて強度試験を行い、貫入補助水量と配合の組み合わせを選定する。
【0055】
その後、ステップS20において、改良土供試体の分析結果に基づいて
図1に示す排土式深層混合処理機1の回転ロッド11の貫入施工時の計画貫入補助水量を設定する。次いで、後述する施工時において、撹拌翼12に設けられる固化材吐出口14から地盤Gに向けて水を吐出し流動化を促進するための補助水量(ステップS20で設定した計画貫入補助水量)を掘削深度毎に制御しながら貫入することにより施工する。
実施工での実貫入補助水量に基づく引抜き時のスラリー量管理の具体的な施工としては、上述した第1の実施の形態と同様であるのでここでは詳しい説明を省略する。
【0056】
第2の実施の形態では、試料土の性状は現地の性状のまま試験を行うことができる。混合する硬化材に対して、規定の配合に対する配合水に貫入時の貫入補助水量を加算し、排土量を考慮して新たに水セメント量を修正して計算する。この修正水セメント量で配合した硬化材を試料土と混合することで改良土供試体を作成し、作成された改良土供試体を分析した分析結果に基づいて排土式深層混合処理機1の撹拌翼12の貫入施工時の補助水量を設定することができる。
【0057】
このように本第2の実施の形態では、事前に補助水による土質性状の変化(水分の増加、土粒子分の減少)を反映した配合試験を行って管理することができる。とくに、本実施の形態では、上述したように回転ロッド11の貫入時に補助水を吐出するため含水比が高くなった混合土が排出されるが、吐出される水の補助水量が好適な量に精度よく管理されるため、地盤改良時における周辺地盤の変位を小さく抑えることができる。
【0058】
また、改良土供試体の作成方法については、従来規定されている作成方法(地盤工学会基準JGS0821-2009、「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」)によることができるため、他の試験結果とも比較検証ができ再現性もあり、試験結果を保証することができる。
【0059】
以上、本発明による貫入補助水施工に対する吐出スラリー量管理システム、及び排土式深層混合処理工法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
例えば、上述した実施の形態では、管理システム20において、算定部20Dでは、実貫入補助水量が計画貫入補助水量よりも多くなり、実修正水セメント比が計画修正水セメント比よりも大きくなる場合には、実修正水セメント比が計画修正水セメント比の値になるように実スラリー量が算定されるように管理しているが、このような管理方法に限定されることはない。
【0061】
また、本実施形態では、施工前に、排土式深層混合処理機1によって施工される改良土の配合を試験する改良土配合試験が行われ、改良土配合試験において、前記計画修正水セメント比が求められる方法を採用しているが、改良土配合試験を実施しない施工方法であってもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、排土式深層混合処理機1として、回転ロッド11が2軸で設けられ、撹拌翼12は撹拌径が1600mm以上の太径の装置を採用しているが、これに限定されることはなく、撹拌径が例えば1000mm~1300mmのものを用いるようにしてもよい。例えば、貫入時の抵抗が大きいと想定される地盤では、上述した1600mm以上でない撹拌径のものを採用することも可能である。
【0063】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 排土式深層混合処理機
11 回転ロッド
20 管理システム(吐出スラリー量管理システム)
20A 品質管理部
20B 施工計測部
20C 施工管理部
20D 算定部
21 システム計測盤
22 施工管理装置
23 深度・速度検出計
24 回転検出計
25 電流検出計
26、26A、26B 補助水・スラリー流量計
27 コンピュータ
G 地盤