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  • 特開-電気自動車用の急速充電ケーブル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040543
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】電気自動車用の急速充電ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/42 20060101AFI20230315BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H01B7/42 C
H01B7/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147597
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三堂 信博
(72)【発明者】
【氏名】足立 和久
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 伸夫
【テーマコード(参考)】
5G309
5G315
【Fターム(参考)】
5G309KA04
5G315DA02
5G315DB02
5G315DC02
(57)【要約】
【課題】許容電流値の大きい電気自動車用の急速充電ケーブルを提供する。
【解決手段】電気自動車用の急速充電ケーブル1は導体とこれを被覆するシースとを有するケーブル本体と、導体と導通し電気自動車EVおよび電源装置PSに接続されるアダプタ部とを備えている。電気自動車用の急速充電ケーブル1では、導体として超電導体が使用され、シースには冷媒を流通させるための空間部が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体とこれを被覆するシースとを有するケーブル本体と、
前記導体と導通し電気自動車および電源装置に接続されるアダプタ部とを備え、
前記導体として超電導体が使用され、
前記シースには冷媒を流通させるための空間部が形成されていることを特徴とする電気自動車用の急速充電ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車用の急速充電ケーブルにおいて、
前記アダプタ部が、
前記導体と接続される第1のアダプタ部と、
前記第1のアダプタ部と導通しかつ電気自動車または電源装置に接続される第2のアダプタ部とを有することを特徴とする電気自動車用の急速充電ケーブル。
【請求項3】
請求項2に記載の電気自動車用の急速充電ケーブルにおいて、
前記ケーブル本体と前記第1のアダプタ部および前記第2のアダプタ部とを仲介する継手を有し、
前記継手には冷媒を流入または流出するための流入・流出孔が形成されていることを特徴とする急速充電ケーブル。
【請求項4】
請求項2に記載の電気自動車用の急速充電ケーブルにおいて、
前記ケーブル本体と前記第1のアダプタ部および前記第2のアダプタ部とを仲介する2つの継手部を有し、
第1の継手部には冷媒を流入または流出するための流入・流出孔が形成され、
第2の継手部には前記第1のアダプタ部を保護するための保護材が形成されていることを特徴とする急速充電ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気自動車用の急速充電ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV:Electric Vehicle)の普及に伴い充電技術の開発がさかんに行われている。この充電は自動車と充電装置との間を充電ケーブルで接続し行われる。
電気自動車用の充電ケーブルの一例が特許文献1に開示されている。特許文献1には電力線、信号線およびアース線を備える複合ケーブルが開示され、当該複合ケーブルでは特に、信号線とアース線とを撚り合わせ、電力線に起因するノイズが信号線に伝送する信号に乗ったとしてもそのノイズを低減することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-2508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで従来からすでに、50kWタイプ(125A)の急速充電技術は実用化されているものの、充電時間をさらに短縮すべく、大電流に耐えうる充電ケーブル、すなわち許容電流値の大きい急速充電ケーブルの要請が大きい。
本発明の主な目的は、許容電流値の大きい電気自動車用の急速充電ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
導体とこれを被覆するシースとを有するケーブル本体と、
前記導体と導通し電気自動車および電源装置に接続されるアダプタ部とを備え、
前記導体として超電導体が使用され、
前記シースには冷媒を流通させるための空間部が形成されていることを特徴とする電気自動車用の急速充電ケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、導体として超電導体が使用されるため、許容電流値の大きい電気自動車用の急速充電ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電気自動車用の急速充電ケーブルの適用例を説明する模式図である。
図2】電気自動車または充電装置とのコネクタ部分の分解斜視図である。
図3図2の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0009】
図1に示すとおり、電気自動車用の急速充電ケーブル1(以下単に「充電ケーブル1」という。)は電気自動車EVと電源装置PSとの間に配置され、両端のコネクタ部分が電気自動車EVと電源装置PSとにそれぞれ接続される。
【0010】
[第1の実施形態]
図2に示すとおり、ケーブル本体11は基本的には超電導体111とそれを被覆保護するシース112とで構成されている。充電ケーブル1のコネクタ部分は基本的には両端ともに同様の構成を有しており、第1のアダプタ部12、継手13および第2のアダプタ部14で構成されている。
【0011】
超電導体111は複数枚の超電導線材が積層され、その積層体が不織布などの絶縁シートで被覆された構成を有している。
超電導線材は、基板上に中間層を介して、REBayCuOz系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、GdおよびHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2およびz=6.2~7である。)の高温超電導薄膜が形成されたものである。
シース112はポリエチレン樹脂などの樹脂材料から構成されている。シース112の内部には超電導体111との間で空隙が形成され、冷媒を流通させるための空間部が形成されている。シース112の内部には液体窒素などの冷媒が流通し、超電導体111を冷却するようになっている。
シース112は上記のとおり樹脂材料による1重管構造が採用されてもよいし、アルミニウムやSUSなどの金属材料による2重管構造が採用されてもよい。1重管構造が採用される場合は、ケーブル本体11に屈曲性や湾曲性があり取扱い性が向上する。2重管構造が採用される場合は、内管の内部に冷媒を流通させ、内管と外管との間を真空引きし断熱するような構造とするのがよい。2重管構造が採用される場合は、断熱性が向上し熱帯地や温暖地での用途に適合化する。
シース112の端部には金属製のフランジ113が取り付けられている。フランジ113にはボルトを挿通するための複数の挿通孔が形成されている。
【0012】
第1のアダプタ部12はアダプタ121およびスリーブ122を有している。アダプタ121はアルミニウムなどの金属材料から構成されており、その表面には第2のアダプタ部14に導通するためのコンタクトバンドなどの接触子が設置されている。アダプタ121の内部には柱状の挿通孔123が形成されており(図3参照)、超電導体111が挿通され半田付けされている。スリーブ122は銅またはアルミニウムなどの金属材料から構成されており、スリーブ122の内部においてアダプタ121が半田付けされている。
【0013】
継手13はアルミニウムなどの金属材料から構成されている。継手13には冷媒を流入または流出させるための流入・流出孔131が形成されている。
【0014】
第2のアダプタ部14はアダプタ141およびフランジ142を有している。アダプタ141はアルミニウムなどの金属材料から構成されており、その表面には電気自動車EVまたは電源装置PSに導通するためのコンタクトバンドなどの接触子が設置されている。アダプタ141の内部には柱状の挿通孔143が形成されており、第1のアダプタ部12のアダプタ121が挿通され、第2のアダプタ部14のアダプタ141が第1のアダプタ部12を介して超電導体111と導通するようになっている。
アダプタ141の端部には金属製のフランジ142が取り付けられている。フランジ142にはボルトを挿通するための複数の挿通孔が形成されている。
【0015】
充電ケーブル1のコネクタ部分では、第1のアダプタ部12(アダプタ121)が第2のアダプタ部14(挿通孔143)に挿通され導通した状態で、ケーブル本体11と第2のアダプタ部14との各フランジ113、142が継手13との間でボルト締めされ、第1のアダプタ部12、継手13、および第2のアダプタ部14が一体化される。
【0016】
電気自動車EVの充電時においては、充電ケーブル1の一方のコネクタ部分を電気自動車EVに接続しかつ他方のコネクタ部分を電源装置PSに接続する。
その後、冷媒を、電気自動車EV側のコネクタ部分の流入孔から流入し、シース112の内部で流通させ、電源装置PS側のコネクタ部分の流出孔から流出(排出)する。冷媒が液体窒素の場合は、流出孔から気体窒素として外気中に放出することができる。
冷媒を一定時間流通させ超電導体111を冷却したところで、電源装置PSから電気自動車EVに対し電力を供給し、充電することができる。
【0017】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は主に下記の点で第1の実施形態と異なっており、それ以外は第1の実施形態と同様となっている。
【0018】
図3に示すとおり、充電ケーブル1のコネクタ部分には第1の継手部23と第2の継手部33とが形成されており、これらを介してケーブル本体11と第1のアダプタ部12および第2のアダプタ部14とが接続されている。
【0019】
第1の継手部23は継手本体231を有している。継手本体231はアルミニウムなどの金属材料から構成されている。継手本体231の側部には冷媒を流入または流出させるための流入・流出孔232が形成されている。継手本体231の一方の端部には超電導体111を導入するための導入孔233が形成され、シース112との間で溶接されている。継手本体231の他方の端部にはフランジ234が形成されている。
第2の継手部33は2つのフランジ331a、331bおよび絶縁部332(縁切部)を有している。各フランジ331a、331bはステンレス鋼(SUS)などの金属材料から構成され、絶縁部332はガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)などのプラスチック材料から構成されている。一方のフランジ331aは第1の継手部23のフランジ234との間でボルト締めされ、他方のフランジ331bは第2のアダプタ部14のフランジ142との間でボルト締めされている。絶縁部332はシート状を呈しており、各フランジ331a、331b間に巻回されエポキシ樹脂などの接着剤でフランジ331a、331bに接着されている。絶縁部332には作業者が手で直接接触することができ、充電ケーブル1の取扱い性および安全性が向上する。
【0020】
以上の実施形態によれば、導体として超電導体111が適用されているため、充電ケーブル1を大電流に耐えうる、許容電流値の大きい急速充電ケーブルとすることができる。結果的に充電ケーブル1によれば、電気自動車EVに対し急速に充電することができる。たとえば、充電ケーブル1が600A仕様で使用されることを想定した場合には、超電導線材として幅4mmで厚さが0.1mm程度の超電導線材を3枚積層しただけで、直流電圧1000Vで600kWの電力供給が可能になる。
【符号の説明】
【0021】
EV 電気自動車
PS 電源装置
1 充電ケーブル(電気自動車用の急速充電ケーブル)
11 ケーブル本体
12 第1のアダプタ部
13 継手
14 第2のアダプタ部
23 第1の継手部
33 第2の継手部
111 超電導体
112 シース
121 アダプタ
122 スリーブ
131 流入・流出孔
141 アダプタ
142 フランジ
143 挿通孔
231 継手本体
232 流入・流出孔
233 導入孔
234 フランジ
331a、331b フランジ
332 絶縁部
図1
図2
図3