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  • 特開-設備架台支持構造 図1
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  • 特開-設備架台支持構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040546
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】設備架台支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147600
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇人
(72)【発明者】
【氏名】森山 実
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寛徳
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AB13
2E139AC12
2E139AD03
2E139AD08
(57)【要約】
【課題】設備架台を浮上させるフロートを備えながら設備架台に対するメンテナンス作業が行い易い設備架台支持構造を提供する。
【解決手段】設備架台用基礎2と、当該設備架台用基礎2の上面に支持される設備架台3とを備え、設備架台3の下部に、水に対する浮力によって設備架台3を設備架台用基礎2から浮上させるフロート4を備え、設備架台3を、設備架台用基礎2に支持された設備架台支持高さと、フロート4の浮力によって設備架台用基礎2から浮上した設備架台浮上高さとに昇降可能に構成し、設備架台用基礎2に、設備架台支持高さの設備架台3のフロート4を収容するフロート収容ピット8を備え、フロート収容ピット8を、そのピット底面F1が周囲の地盤面F2よりも下方に位置するように地盤9を掘り込んで構成される地盤掘り込み式とする。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備架台用基礎と、当該設備架台用基礎の上面に支持される設備架台とが備えられ、
前記設備架台の下部に、水に対する浮力によって前記設備架台を前記設備架台用基礎から浮上させるフロートが備えられている設備架台支持構造であって、
前記設備架台は、前記設備架台用基礎に支持された設備架台支持高さと、前記フロートの浮力によって前記設備架台用基礎から浮上した設備架台浮上高さとに昇降可能に構成され、
前記設備架台用基礎に、前記設備架台支持高さの前記設備架台の前記フロートを収容するフロート収容ピットが備えられ、
前記フロート収容ピットが、そのピット底面が周囲の地盤面よりも下方に位置するように地盤を掘り込んで構成される地盤掘り込み式である設備架台支持構造。
【請求項2】
前記設備架台は、前記フロート以外の部分に被支持部を備え、
前記設備架台用基礎は、前記フロートを前記ピット底面から浮かした状態で前記設備架台支持高さの前記設備架台の前記被支持部を支持する架台支持部を備えている請求項1に記載の設備架台支持構造。
【請求項3】
前記設備架台を前記設備架台支持高さと前記設備架台浮上高さとの間で上下方向に沿って移動案内する移動案内機構を備えている請求項1又は2に記載の設備架台支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備架台用基礎と、当該設備架台用基礎の上面に支持される設備架台とが備えられ、前記設備架台の下部に、水に対する浮力によって前記設備架台を前記設備架台用基礎から浮上させるフロートが備えられている設備架台支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設備架台用基礎(基礎7)と、設備架台用基礎の上面に支持される設備架台とが備えられ、設備架台の下部に、水に対する浮力によって設備架台を設備架台用基礎から浮上させるフロート(フロート部2)を備えている設備架台支持構造が示されている。
この特許文献1の設備架台支持構造では、洪水・津波発生時において設備架台が水没する虞がある場合でも、フロートの浮力によって設備架台が設備架台用基礎から浮上するため、設備架台の水没が回避できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-203361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような設備架台支持構造では、設備架台の下部にフロートを設置しているため、設備架台上に設置されている設備機器(特許文献1ではタンクT)は地盤面から高い位置となり、設備機器に対するメンテナンス作業が行い難くなっていた。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、設備架台を浮上させるフロートを備えながら設備架台に対するメンテナンス作業が行い易い設備架台支持構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、設備架台用基礎と、当該設備架台用基礎の上面に支持される設備架台とが備えられ、
前記設備架台の下部に、水に対する浮力によって前記設備架台を前記設備架台用基礎から浮上させるフロートが備えられている設備架台支持構造であって、
前記設備架台は、前記設備架台用基礎に支持された設備架台支持高さと、前記フロートの浮力によって前記設備架台用基礎から浮上した設備架台浮上高さとに昇降可能に構成され、
前記設備架台用基礎に、前記設備架台支持高さの前記設備架台の前記フロートを収容するフロート収容ピットが備えられ、
前記フロート収容ピットが、そのピット底面が周囲の地盤面よりも下方に位置するように地盤を掘り込んで構成される地盤掘り込み式である点にある。
【0007】
本構成によれば、洪水・津波発生時において設備架台が水没する虞がある場合でも、フロートの浮力によって設備架台が設備架台用基礎から浮上して当該設備架台が設備架台支持高さから設備架台浮上高さに上昇するため、設備架台上に設備機器を設置した場合にその設備機器が水没することを回避できる。
また、フロート収容ピットのピット底面が地盤面より下方にあるため、設備架台支持高さを地盤面近くに設定することができ、設備架台上に設置されている設備機器の高さを地盤面近くとすることができるので、設備架台に対するメンテナンス作業が行い易くなる。
このように、洪水・津波発生時に設備架台を浮上させるフロートを備えながらも、設備架台に対するメンテナンス性を高めることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記設備架台は、前記フロート以外の部分に被支持部を備え、
前記設備架台用基礎は、前記フロートを前記ピット底面から浮かした状態で前記設備架台支持高さの前記設備架台の前記被支持部を支持する架台支持部を備えている点にある。
【0009】
本構成によれば、設備架台の被支持部を設備架台用基礎の被支持部で支持してフロートをピット底面から浮かすことで、フロートがピット底面に支持されることによるフロートの損傷を防ぎ、洪水・津波発生時に適切にフロートを機能させることができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記設備架台を前記設備架台支持高さと前記設備架台浮上高さとの間で上下方向に沿って移動案内する移動案内機構を備えている点にある。
【0011】
本構成によれば、洪水・津波発生時に設備架台を浮上させる場合にその設備架台の移動が移動案内機構によって案内されるため、フロート収容ピットの側面にフロートが接触することを回避しながら設備架台を適切に設備架台浮上高さに浮上させることができる。また、周囲の水が引いた場合に下降する設備架台の移動が移動案内機構によって案内されるため、フロート収容ピットの側面にフロートが接触することを回避しながら設備架台を適切に設備架台支持高さに降下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】設備架台支持構造の平面図
図2】設備架台支持構造のA-A断面図
図3】設備架台支持構造のB-B断面図
図4】位置ずれ防止機構の断面図
図5】設備架台が浮上した設備架台支持構造の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る設備架台支持構造の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図3に示すように、設備架台支持構造1には、設備架台用基礎2と、当該設備架台用基礎2の上面に支持される設備架台3とが備えられている。設備架台3の下部に、水に対する浮力によって設備架台3を設備架台用基礎2から浮上させるフロート4が備えられている。
【0014】
設備架台3は、設備架台用基礎2に支持された設備架台支持高さ(図2及び図3参照)と、フロート4の浮力によって設備架台用基礎2から浮上した設備架台浮上高さ(図5参照)とに昇降可能に構成されている。本実施形態では、設備架台支持構造1は、設備架台3を設備架台支持高さと設備架台浮上高さとの間で上下方向Zに沿って移動案内する移動案内機構5を備えている。洪水や津波が発生していない通常の状態では、設備架台3は設備架台用基礎2に支持された設備架台支持高さにあり、洪水・津波発生時には、洪水や津波によって生じた周囲の水に対するフロート4の浮力によって設備架台3は移動案内機構5に案内されながら浮上して設備架台支持高さから設備架台浮上高さに上昇する。尚、設備架台浮上高さは、設備架台3が設備架台用基礎2から浮上している高さを意味しており、図5に示している高さ以外に、図5に示す高さと設備架台支持高さとの間の高さや、図5に示す高さ以上の高さも含んでいる。
【0015】
次に、設備架台支持構造1の各構成について説明するが、上下方向Zに対して直交する一方向を第1方向Xと称し、その第1方向Xに対して上下方向視で直交する方向を第2方向Yと称して説明する。本実施形態では、図1及び図3に示すように、設備架台3には、水平方向に沿って1列に並ぶ状態で複数の設備機器6が設置されており、この複数の設備機器6が並ぶ方向を第1方向Xとしている。尚、本実施形態では、キュービクル式高圧受電設備が設備機器6として設備架台3に備えられている。
【0016】
図1から図3に示すように、設備架台用基礎2に、設備架台支持高さの設備架台3のフロート4を収容するフロート収容ピット8が備えられている。
図2及び図3に示すように、フロート収容ピット8は、そのピット底面F1が周囲の地盤面F2よりも下方に位置するように地盤9を掘り込んで構成される地盤掘り込み式である。本実施形態では、地盤9を掘り込み、その掘り込んだ箇所に、鉄筋コンクリート造の設備架台用基礎2が構築されている。そして、設備架台用基礎2は、底壁部10と側壁部11とを有しており、これら底壁部10と側壁部11に囲まれる空間によってフロート収容ピット8が形成されており、底壁部10の上面によってフロート収容ピット8のピット底面F1が形成されていると共に、側壁部11の内面によってフロート収容ピット8のピット側面F3が形成されている。
設備架台用基礎2の上端は、周囲の地盤9の地盤面F2と同じ高さ又は僅かに高い高さとなっている。
【0017】
設備架台用基礎2には、設備架台3の設備架台用基礎2に対する水平方向(第1方向X及び第2方向Y)への移動を規制する位置ずれ防止機構13が備えられている。
図1及び図2に示すように、位置ずれ防止機構13は、下方に凹入する規制部14が複数形成されており、図4に示すように、複数の規制部14の夫々に設備架台3の当接部15が上方側から嵌合するように構成されている。
本実施形態では、図1に示すように、設備架台用基礎2は平面視で矩形状に形成されており、規制部14は設備架台用基礎2の四隅の夫々に備えられている。図4に示すように、規制部14は、円柱状の当接部15が上方側から嵌合する円筒状の筒状部16と、その筒状部16の底を塞ぐ板状の底板部17とで構成されており、側壁部11の上端部の四隅の夫々に形成された4つの凹部の夫々に設置されている。尚、筒状部16は、鋼管等の金属製の部材によって構成されており、底板部17は、鋼板等の金属製の部材によって構成されている。また、当接部15は、丸鋼等の金属製の部材によって構成されている。
【0018】
図2に示すように、設備架台3が設備架台支持高さにある状態では、設備架台3の当接部15が規制部14に嵌合しており、当接部15が筒状部16の内面に当接することで、位置ずれ防止機構13によって設備架台3の水平方向への移動が規制されており、フロート4はピット側面F3から離間している状態で適確に保持されている。 ちなみに、水平方向への移動の規制は移動案内機構5によっても行われるものの、位置ずれ防止機構13は、筒状部16が鉄筋コンクリート製の側壁部11によって保持されており、移動案内機構5よりも強固に設備架台3の水平方向の移動を規制できるようになっている。
【0019】
図2及び図4に示すように、設備架台用基礎2は、フロート4をピット底面F1から浮かした状態で設備架台支持高さの設備架台3の被支持部21を支持する架台支持部22を備えている。
本実施形態では、図4に示すように、設備架台3が設備架台支持高さにある状態では、設備架台3の当接部15が位置ずれ防止機構13の底板部17に上方側から接触しており、この底板部17によって設備架台3を支持している。つまり、設備架台3の当接部15は、設備架台3の被支持部21として機能しており、位置ずれ防止機構13の底板部17は、被支持部21を支持する架台支持部22として機能している。
【0020】
図2及び図3に示すように、移動案内機構5は、設備架台用基礎2に立設された棒状の案内部24を備えている。本実施形態では、移動案内機構5は、複数の案内部24を備えており、案内部24は設備架台用基礎2の四隅の夫々に立設されている。
設備架台3には、案内部24が挿通されたリング状の被案内部25が備えられており、移動案内機構5は、案内部24によって設備架台3の被案内部25を上下方向Zに沿って案内することで、設備架台3を上下方向Zに沿って移動案内するように構成されている。
【0021】
設備架台3は、基部27と、基部27の下方側に設置されたフロート4とを備えている。本実施形態では、設備架台3における基部27より下方側の部分を設備架台3の下部としており、フロート4は設備架台3の下部に備えられている。基部27は、その上面に設備機器6を載せた状態で設備機器6を支持している。
【0022】
設備架台3上には、第1方向Xに沿って一列に並ぶ状態で複数の設備機器6が設置されており、フロート4は、複数の設備機器6の夫々の真下に位置するように、第1方向Xに沿って一列に並ぶ状態で複数備えられている。
【0023】
基部27は、第1方向X及び第2方向Yに延びる板状の板状体28と、第1方向Xに沿った姿勢又は第2方向Yに沿った姿勢の複数の枠材29とを備えている。複数の枠材29は、板状体28の下面に固定されており、補強材として用いられている。
本実施形態では、板状体28は鋼板やグレーチング材等の金属製の部材によって構成されており、枠材29はH形鋼からなる鉄骨鋼材等の金属製の部材によって構成されている。そして、複数の枠材29としては、第1方向Xに沿った姿勢の第1枠材29Aと、第2方向Yに沿った姿勢の第2枠材29Bとがあり、第1枠材29Aは、基部27における第2方向Yの両端部の夫々に固定されており、第2枠材29Bは、基部27における一対の第1枠材29Aの間において第1方向Xに並ぶ状態で複数固定されている。
板状体28には設備機器6が載せられており、板状体28は、設備機器6を載置支持している。第2枠材29Bには、その下端部にフロート4の上端部が連結されており、第2枠材29Bは、フロート4を吊り下げ支持している。
【0024】
設備架台3は、フロート4以外の部分に被支持部21を備えている。また、設備架台3は、フロート4以外の部分に被案内部25を備えている。
本実施形態では、被支持部21及び被案内部25は、基部27に備えられており、設備架台3におけるフロート4以外の部分に備えられている。具体的には、被支持部21は、第2枠材29Bの下面に連結固定されている。また、被案内部25は、連結材30を介して第2枠材29Bに連結固定されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、洪水や津波が発生していない通常の状態では、設備架台3は設備架台用基礎2に支持された設備架台支持高さにあり、設備架台3は、被支持部21が架台支持部22に支持されると共に規制部14が筒状部16に嵌合しているため、フロート4はピット底面F1から浮き且つピット側面F3から離れており、フロート4は設備架台用基礎2に接触していない。そのため、上述のような通常の状態において、フロート4が設備架台用基礎2に接触することによるフロート4の破損を回避できるようになっている。
【0026】
図5に示すように、洪水や津波が発生した洪水・津波発生時において設備架台3が水没する虞がある場合でも、設備架台用基礎2の周囲に存在する水に対するフロート4の浮力によって設備架台3が水面F4より上方側に上昇するため、設備機器6が水没することを回避できる。そして、設備架台用基礎2の周囲に存在していた水が引き、また、フロート収容ピット8内に浸入した水を排除することで、設備架台3を設備架台支持高さまで下降させることができる。
そして、このように設備架台3が上昇及び下降する場合は、移動案内機構5によって案内されるため、上昇時や下降時にフロート4が設備架台用基礎2に接触することによる破損を回避することができる。
【0027】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0028】
(1)上記実施形態では、設備架台用基礎2が、フロート4をピット底面F1から浮かした状態で設備架台支持高さの設備架台3を支持する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。たとえば、フロート4が破損する可能性が低い場合等には、フロート4の底部を被支持部21とし、設備架台用基礎2が、フロート4の被支持部21をピット底面F1で支持する形態で設備架台支持高さの設備架台3を支持する構成としてもよい。
【0029】
(2)上記実施形態では、設備架台3を上下方向Zに沿って移動案内する移動案内機構5を備えた構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、移動案内機構5に代えて設備架台3をワイヤー等の索状体で設備架台用基礎2に連結するようにしてもよい。
【0030】
(3)上記実施形態では、設備架台3上に設置する設備機器6を高圧受電設備(キュービクル)とする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、非常用発電機等の高圧受電設備以外の重要機器を、設備機器6として設備架台3上に設置してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 設備架台支持構造
2 設備架台用基礎
3 設備架台
4 フロート
5 移動案内機構
8 フロート収容ピット
9 地盤
21 被支持部
22 架台支持部
F1 ピット底面
F2 地盤面
図1
図2
図3
図4
図5