(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040599
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230315BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20230315BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20230315BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230315BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230315BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/29
C09J7/24
B32B27/00 M
B32B27/32
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147692
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】福井 千晃
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK51
4F100AK51B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB05
4F100CB05C
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ65
4F100EJ65D
4F100EJ86
4F100GB90
4F100HB31
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4F100JB09
4F100JB09C
4F100JK06
4F100JL13
4F100JL13C
4F100JM01
4F100JM01C
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004CD01
4J004DB02
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】環境対応型でインキの密着性に優れる粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の粘着シートは、ポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成された基材と、酸価が15mgKOH/g以上の高酸価ポリウレタン系樹脂を含む材料で構成された印刷用コート層と、前記基材の前記印刷用コート層で被覆された面とは反対の面側に設けられた粘着剤層と、を備えることを特徴とする。前記基材は、ポリプロピレンおよびポリエチレンのうちの少なくとも一方を含む材料で構成されていることが好ましい。前記高酸価ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度が20℃以上85℃以下であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成された基材と、
酸価が15mgKOH/g以上の高酸価ポリウレタン系樹脂を含む材料で構成された印刷用コート層と、
前記基材の前記印刷用コート層で被覆された面とは反対の面側に設けられた粘着剤層と、
を備えることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記基材は、ポリプロピレンおよびポリエチレンのうちの少なくとも一方を含む材料で構成されている請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記高酸価ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度が20℃以上85℃以下である請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記印刷用コート層は、前記高酸価ポリウレタン系樹脂と水とを含む水系の組成物を前記基材上に塗工することにより形成されたものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記基材と前記印刷用コート層との間に、アンカーコート層が設けられていない請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層は、バイオマス系粘着剤、エマルジョン型粘着剤のうちの少なくとも一方を含むものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の印刷に用いられ、印刷後に被着体に貼着して用いられる粘着シートが知られている。
【0003】
このような粘着シートにおいては、インキとの密着性を良好にするために、印刷用コート層が設けられている。
【0004】
従来においては、このような印刷用コート層は、溶剤系の塗工液を用いて形成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、近年の環境問題への対応のため、各種の製品の製造過程において、環境にやさしい材料を用いることが求められている。
【0006】
このような要求に応えるために、上記のような粘着シートにおいては、水系の塗工液を用いて印刷用コート層を形成することが考えられるが、このような場合、インキの印刷用コート層に対する密着性を十分に優れたものとすることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、環境対応型でインキの密着性に優れる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(6)に記載の本発明により達成される。
(1) ポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成された基材と、
酸価が15mgKOH/g以上の高酸価ポリウレタン系樹脂を含む材料で構成された印刷用コート層と、
前記基材の前記印刷用コート層で被覆された面とは反対の面側に設けられた粘着剤層と、
を備えることを特徴とする粘着シート。
【0010】
(2) 前記基材は、ポリプロピレンおよびポリエチレンのうちの少なくとも一方を含む材料で構成されている上記(1)に記載の粘着シート。
【0011】
(3) 前記高酸価ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度が20℃以上85℃以下である上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
【0012】
(4) 前記印刷用コート層は、前記高酸価ポリウレタン系樹脂と水とを含む水系の組成物を前記基材上に塗工することにより形成されたものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の粘着シート。
【0013】
(5) 前記基材と前記印刷用コート層との間に、アンカーコート層が設けられていない上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の粘着シート。
【0014】
(6) 前記粘着剤層は、バイオマス系粘着剤、エマルジョン型粘着剤のうちの少なくとも一方を含むものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境対応型でインキの密着性に優れる粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]粘着シート
まず、本発明の粘着シートについて説明する。
図1は、本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0018】
本実施形態の粘着シート10は、ポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成された基材11と、酸価が15mgKOH/g以上の高酸価ポリウレタン系樹脂を含む材料で構成された印刷用コート層13と、基材11の印刷用コート層13で被覆された面とは反対の面側に設けられた粘着剤層12とを備える。
【0019】
このような構成により、環境対応型で、インキの密着性に優れる粘着シート10を提供することができる。
【0020】
これに対し、上記のような条件を満たさない場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、印刷用コート層を構成するポリウレタン系樹脂の酸価が15mgKOH/g未満であると、印刷用コート層とインキとの密着性を十分に優れたものとすることができない。
【0021】
また、印刷用コート層を構成する樹脂材料の酸価が15mgKOH/g以上であっても、当該樹脂材料がポリウレタン系樹脂以外の樹脂材料であると、基材と印刷用コート層との密着性を十分に優れたものとすることができず、結果として、粘着シートとインキとの密着性を十分に優れたものとすることができない。
【0022】
また、酸価が15mgKOH/g以上の高酸価ポリウレタン系樹脂を含む材料で構成された印刷用コート層を備えていても、基材がポリオレフィン系樹脂を含まない材料で構成されたものであると、基材と印刷用コート層との密着性を十分に優れたものとすることができず、結果として、粘着シートとインキとの密着性を十分に優れたものとすることができない。
なお、本明細書において「シート」にはフィルムの概念が含まれるものとする。
【0023】
[1-1]基材
基材11は、シート状の部材であり、印刷用コート層13や粘着剤層12を支持する機能を有している。そして、上述したように、基材11は、ポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成されている。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂は、炭素-炭素二重結合を有するオレフィンをモノマーとして重合した化学構造を有する高分子化合物である。
【0025】
このようなポリオレフィン系樹脂は、一般に、柔軟性や透明性に優れるという特徴を有している。したがって、基材11がポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成されていることにより、曲面への追従性や下地の視認性の高い粘着シート10が得られる。
【0026】
基材11を構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-プロピレン-(5-エチリデン-2-ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリプロピレンおよびポリエチレンのうちの少なくとも一方であるのが好ましい。
【0027】
これにより、基材11と印刷用コート層13との密着性をより優れたものとすることができ、その結果、粘着シート10とインキとの密着性をより優れたものとすることができる。
【0028】
基材11は、ポリオレフィン系樹脂に加え、他の樹脂材料を含んでいてもよい。
基材11中に含まれるポリオレフィン系樹脂以外の樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、基材11を構成する材料には、必要に応じて各種の添加剤が含有されていてもよい。
【0030】
添加剤としては、例えば、可塑剤や、安定剤、着色剤、充填剤、難燃剤等が挙げられる。
【0031】
安定剤としては、例えば、バリウム亜鉛系(Ba-Zn系)やカルシウム亜鉛系(Ca-Zn系)の安定剤等を用いることができる。
着色剤としては、例えば、有機顔料や、無機顔料、染料等を用いることができる。
【0032】
基材11は、少なくとも印刷用コート層13と接触する部位がポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成されていればよく、ポリオレフィン系樹脂を含まない部位を有していてもよいが、全体がポリオレフィン系樹脂を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0033】
なお、基材11中におけるポリオレフィン系樹脂(特に、前述した好ましいポリオレフィン系樹脂)の含有率は、40質量%以上であるのが好ましく、50質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0034】
基材11の厚さは、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、15μm以上300μm以下であるのがより好ましい。
【0035】
これにより、粘着シート10全体としての剛性、可撓性、耐久性等をより好適なものとし、粘着シート10の取り扱いのしやすさを優れたものとすることができる。より具体的には、例えば、粘着シート10に印刷層を形成する際の作業性(例えば、粘着シート10の搬送不良の起こりにくさ)や、粘着シート10の被着体への貼着の作業効率をより優れたものとすることができる。また、粘着シート10の生産コスト、軽量化等の観点からも有利である。
【0036】
[1-2]印刷用コート層
印刷用コート層13は、インキが付与されることにより印刷部が形成される部位である。
【0037】
そして、印刷用コート層13は、酸価が15mgKOH/g以上の高酸価ポリウレタン系樹脂を含む材料で構成されている。
【0038】
印刷用コート層13を構成する高酸価ポリウレタン系樹脂の酸価は、15mgKOH/g以上であればよいが、18mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるのが好ましく、20mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であるのがより好ましく、23mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0039】
高酸価ポリウレタン系樹脂は、主鎖中にウレタン結合を有する高分子材料であればよく、例えば、アクリル変性ポリウレタン、エーテル変性ポリウレタン、エステル・エーテル変性ポリウレタン、シリコーン変性ポリウレタン等の各種変性ポリウレタンを用いてもよい。
【0040】
印刷用コート層13を構成する高酸価ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度は、20℃以上85℃以下であるのが好ましく、23℃以上60℃以下であるのがより好ましく、25℃以上50℃以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
これにより、粘着シート10の耐熱性、耐久性を十分に優れたものとしつつ、印刷用コート層13と基材11との密着性をより優れたものとすることができる。
【0042】
印刷用コート層13を構成する高酸価ポリウレタン系樹脂の重量平均分子量は、1,000以上50,000以下であるのが好ましく、3,000以上30,000以下であるのがより好ましい。
【0043】
これにより、粘着シート10の耐熱性、耐久性を十分に優れたものとしつつ、印刷用コート層13とインキとの密着性をより優れたものとすることができる。
【0044】
印刷用コート層13は、高酸価ポリウレタン系樹脂に加え、他の樹脂材料を含んでいてもよい。
【0045】
印刷用コート層13中に含まれる高酸価ポリウレタン系樹脂以外の樹脂材料としては、例えば、酸価が15mgKOH/g未満のポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、高酸価ポリエステル系樹脂や高酸価ポリオレフィン樹脂、高酸価アクリル樹脂等、高酸価の材料を使用することが好ましい。
【0046】
中でも、印刷用コート層13が高酸価ポリウレタン系樹脂とともに酸価が30mgKOH/g以上の高酸価ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されたものであるのがさらに好ましい。
【0047】
印刷用コート層13が高酸価ポリウレタン系樹脂とともにポリエステル系樹脂を含む材料で構成されたものである場合、当該ポリエステル系樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上であるのが好ましいが、15mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であるのがより好ましく、30mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0048】
印刷用コート層13が高酸価ポリウレタン系樹脂とともに高酸価ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されたものである場合、印刷用コート層13中における高酸価ポリウレタン系樹脂と高酸価ポリエステル系樹脂との含有率の比率は、質量比で、30:70以上99:1以下であるのが好ましく、40:60以上98:2以下であるのがより好ましく、45:55以上90:10以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0049】
また、印刷用コート層13を構成する材料には、必要に応じて各種の添加剤が含有されていてもよい。
【0050】
添加剤としては、例えば、可塑剤や、安定剤、着色剤、充填剤、難燃剤等が挙げられる。
【0051】
安定剤としては、例えば、バリウム亜鉛系(Ba-Zn系)やカルシウム亜鉛系(Ca-Zn系)の安定剤等を用いることができる。
着色剤としては、例えば、有機顔料や、無機顔料、染料等を用いることができる。
【0052】
なお、印刷用コート層13中における高酸価ポリウレタン系樹脂の含有率は、40質量%以上であるのが好ましく、50質量%以上であるのがより好ましく、60質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0053】
印刷用コート層13の厚さは、0.1μm以上50μm以下であるのが好ましく、1μm以上25μm以下であるのがより好ましい。
【0054】
これにより、インキと印刷用コート層13との密着性、ならびに、基材11と印刷用コート層13との密着性を、より優れたものとすることができる。
【0055】
印刷用コート層13は、高酸価ポリウレタン系樹脂と水とを含む水系の組成物を基材11上に塗工することにより形成されたものであるのが好ましい。
【0056】
これにより、粘着シート10の製造過程における環境負荷をより小さいものとすることができる。また、上記のような高酸価ポリウレタン系樹脂は水との親和性に優れているため、高酸価ポリウレタン系樹脂を含む組成物の塗工性をより優れたものとすることができる。なお、粘着シート10の製造方法は、後に詳述する。
【0057】
[1-3]粘着剤層
粘着剤層12は、被着体への粘着力を発揮する機能を有する。
粘着剤層12は、粘着剤を含む材料で構成されていればよく、前記粘着剤は、特に限定されないが、バイオマス系粘着剤、エマルジョン型粘着剤のうちの少なくとも一方であるのが好ましい。
これにより、粘着シート10の環境負荷をより小さいものとすることができる。
【0058】
エマルジョン型粘着剤は、粘着剤成分またはその前駆体を分散質として含むエマルジョンである粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤である。通常、粘着剤層12を構成するエマルジョン型粘着剤自体は、前記粘着剤組成物の分散媒成分をほとんど含んでおらず、前記粘着剤組成物の分散媒成分を含む場合であっても、当該成分は、分散媒としての機能を有していない。
【0059】
前記粘着剤組成物は、アクリル系共重合体を含む水性エマルジョンであるのが好ましい。
【0060】
エマルジョン型粘着剤は、例えば、炭素数4以上12以下のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有不飽和単量体、カルボニル基含有不飽和単量体、および、必要に応じて、その他の不飽和単量体を含む単量体混合物を乳化重合させることにより得ることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方を含む概念である。後述の「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アリル」についても同様である。
【0061】
炭素数4以上12以下のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0062】
カルボキシル基含有不飽和単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0063】
カルボニル基含有不飽和単量体としては、特に限定されないが、例えば、ジアセトンアクリルアミド、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ジアセトンアクリルアミドが好ましい。
【0064】
さらに、その他の不飽和単量体としては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1以上3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の炭素数13以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0065】
不飽和単量体としては、上記の他に、官能基含有不飽和単量体、例えば、水酸基含有不飽和単量体、エポキシ基含有不飽和単量体、アルコキシシリル基含有不飽和単量体、アミド基やメチロール基を含有する不飽和単量体、多官能性不飽和単量体等を用いてもよい。
【0066】
水酸基含有不飽和単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
エポキシ基含有不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0068】
アルコキシシリル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリポロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン等が挙げられる。
【0069】
アミド基やメチロール基を含有する不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ブトキシN-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0070】
多官能性不飽和単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシフォスフェート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジアリルテレフタレート、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0071】
粘着剤層12のエマルジョン型粘着剤の平均粒子径は、80nm以上1000nm以下であるのが好ましく、200nm以上800nm以下であるのがより好ましく、300nm以上600nm以下であるのがさらに好ましい。本明細書において、「平均粒子径」とは、体積基準の平均粒子径をいう。
【0072】
バイオマス系粘着剤は、植物由来の成分が配合されている粘着剤である。植物由来の成分としては、植物由来のアルコールから製造されたアクリル酸等を重合して得られたポリマーや、ロジン樹脂およびテルペン樹脂から選択される粘着付与樹脂等が挙げられる。
【0073】
また、粘着剤層12を構成する材料には、必要に応じて各種の添加剤が含有されていてもよい。
【0074】
添加剤としては、例えば、可塑剤や、安定剤、着色剤、充填剤、難燃剤等が挙げられる。
【0075】
安定剤としては、例えば、バリウム亜鉛系(Ba-Zn系)やカルシウム亜鉛系(Ca-Zn系)の安定剤等を用いることができる。
着色剤としては、例えば、有機顔料や、無機顔料、染料等を用いることができる。
【0076】
なお、粘着剤層12中における粘着剤の含有率は、60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0077】
粘着剤層12の厚さは、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましい。
【0078】
これにより、粘着シート10を被着体に貼着する際の貼着のしやすさ等の粘着シート10の取り扱いのしやすさ、粘着シート10の被着体に対する密着性をより向上させることができる。
【0079】
[1-4]剥離ライナー
未使用の粘着シート10の粘着剤層12の表層は、
図1に示されているように、剥離ライナー20によって覆われているのが好ましい。
【0080】
これにより、被着体に貼着される前の粘着剤層12を好適に保護できるとともに、未使用の粘着シート10が取り回しやすくなる。例えば、粘着シート10に印刷を施す際等に、粘着シート10が不本意な場所に付着してしまうことを効果的に防止することができる。
【0081】
剥離ライナー20としては、例えば、紙基材の一方の面をポリエチレンによってコートし、そのポリエチレンのコート層の表面にシリコーン等の剥離剤を塗工したものを用いることができる。剥離ライナー20としては、これに限定されることはなく、例えば、樹脂フィルムが用いられてもよい。
【0082】
[1-5]その他の構成
粘着シート10は、上記以外の構成を有していてもよい。例えば、基材11と粘着剤層12との間に少なくとも1層の中間層が設けられていてもよい。
【0083】
ただし、粘着シート10は、基材11と印刷用コート層13との間に、アンカーコート層が設けられていない構成のものであるのが好ましい。
【0084】
このように、本発明においては、アンカーコート層を設けなくても、基材11と印刷用コート層13との密着性を十分に優れたものとすることができる。また、アンカーコート層を設けないことにより、粘着シート10の生産性をより優れたものとすることができるとともに、粘着シート10の環境負荷をさらに低減することができる。
【0085】
[2]粘着シートの製造方法
次に、粘着シートの製造方法について説明する。
【0086】
粘着シート10は、基材11の一方の面側に、粘着剤層12を形成する粘着剤層形成工程と、基材11の他方の面側に印刷用コート層13を形成する印刷用コート層形成工程とを有する方法により製造することができる。
【0087】
粘着剤層形成工程および印刷用コート層形成工程の順番は、特に限定されない。すなわち、粘着剤層形成工程の後に印刷用コート層形成工程を行ってもよいし、印刷用コート層形成工程の後に粘着剤層形成工程を行ってもよい。
【0088】
粘着剤層形成工程は、例えば、基材11上に粘着剤組成物を付与することにより行ってもよい。このような方法で粘着剤層形成工程を行う場合、基材11への粘着剤組成物の付与後に、例えば、粘着剤組成物が付与された基材11を乾燥炉に搬送する等して、粘着剤組成物を乾燥する処理を行ってもよい。また、このような方法で粘着剤層形成工程を行う場合、粘着剤層形成工程の後に、粘着剤層12の表面を剥離ライナー20で被覆する被覆工程を行うのが好ましい。
【0089】
また、粘着剤層形成工程は、剥離ライナー20上に粘着剤組成物を付与した後、これを基材11に転写することにより行ってもよい。このような方法で粘着剤層形成工程を行う場合、剥離ライナー20への粘着剤組成物の付与後であって基材11に転写する前のタイミングで、例えば、粘着剤組成物が付与された剥離ライナー20を乾燥炉に搬送する等して、粘着剤組成物を乾燥する処理を行ってもよい。
【0090】
粘着剤組成物の塗工方式(基材11または剥離ライナー20への塗工方式)としては、例えば、ナイフコーター、グラビアコーター、バーコーター等を採用することができる。
【0091】
印刷用コート層形成工程は、例えば、基材11上に印刷用コート層形成用組成物を付与することにより行ってもよい。このような方法で印刷用コート層形成工程を行う場合、基材11への印刷用コート層形成用組成物の付与後に、例えば、印刷用コート層形成用組成物が付与された基材11を乾燥炉に搬送する等して、印刷用コート層形成用組成物を乾燥する処理を行ってもよい。
【0092】
特に、印刷用コート層13は、高酸価ポリウレタン系樹脂と水とを含む水系の組成物を基材11上に塗工することにより形成するのが好ましい。
【0093】
これにより、粘着シート10の製造過程における環境負荷をより小さいものとすることができる。また、上記のような高酸価ポリウレタン系樹脂は水との親和性に優れているため、高酸価ポリウレタン系樹脂を含む組成物の塗工性をより優れたものとすることができ、粘着シート10の生産性を高めることができる。
【0094】
印刷用コート層形成用組成物の塗工方式としては、例えば、ナイフコーター、グラビアコーター、バーコーター等を採用することができる。
【0095】
[3]印刷物
次に、印刷物について説明する。
【0096】
本発明に係る印刷物は、前述した本発明に係る粘着シート10の印刷用コート層13にインキを付与して印刷部を形成することにより製造されたものである。
このような印刷物は、環境対応型で印刷部の密着性に優れている。
【0097】
印刷部の形成に用いるインキは、特に限定されないが、例えば、水を主溶媒として含む水系インキ、紫外線硬化型インキ等を好適に用いることができる。
【0098】
印刷部の形成パターンは、特に限定されず、例えば、印刷用コート層13の一部のみにインキを付与することにより形成されたものであってもよいし、印刷用コート層13全体にインキを付与することにより形成されたものであってもよい。
【0099】
また、印刷部の形成には、複数種のインキを用いてもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0100】
また、本発明の粘着シートは、いかなる方法で製造されたものであってもよく、前述した実施形態で述べたような方法で製造されたものに限定されない。
【実施例0101】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0102】
[4]粘着シートの製造
(実施例1)
まず、ポリプロピレンで構成された厚さ50μmの基材を用意した。
【0103】
この基材の一方の面に、印刷用コート層形成用組成物をバーコーターで塗工し、その後、熱風乾燥機を用いて、70℃で1分間加熱することにより、印刷用コート層を形成した。印刷用コート層形成用組成物としては、酸価が27mgKOH/gのポリウレタン系樹脂である高酸価ポリウレタン系樹脂:100質量部と、水:400質量部との混合物である組成物を用いた。このようにして形成された印刷用コート層の厚さは、1.0μmであった。
【0104】
一方、シリコーン樹脂で離型処理したグラシン紙で構成された剥離ライナー上に、アクリル系エマルジョン型粘着剤で構成された粘着剤層を形成した。剥離ライナー上への粘着剤層の形成は、粘着剤組成物であるオリバイン BPW 6441(トーヨーケム社製)をナイフコーターで塗工し、その後、熱風乾燥機を用いて、90℃で1分間加熱することにより行った。
【0105】
このようにして剥離ライナー上に形成された粘着剤層を、印刷用コート層が形成された基材の印刷用コート層が設けられた面とは反対の面に接触させることにより、印刷用コート層、基材、粘着剤層および剥離ライナーがこの順に積層された粘着シートを得た。粘着シートが有する粘着剤層の厚さは20μmであった。
【0106】
(実施例2~9)
各部位の構成が表1に示すものとなるようにした以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0107】
(比較例1~3)
各部位の構成が表1に示すものとなるようにした以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0108】
前記各実施例および各比較例の粘着シートの条件を表1にまとめて示す。なお、表1中、ポリエチレンを「PE」、ポリプロピレンを「PP」、ポリエチレンテレフタレートを「PET」、エマルジョン型粘着剤であるオリバイン BPW 6441(トーヨーケム社製)による粘着剤を「EM」、バイオマス系粘着剤であるオリバイン BPS 6554(トーヨーケム社製)による粘着剤を「BM」と示した。また、前記各実施例においては、印刷用コート層の形成には、水系の組成物を用いた。
【0109】
【0110】
[5]評価
前記各実施例および各比較例の粘着シートについて、以下のような評価を行った。
[5-1]印刷適性評価
前記各実施例および各比較例の粘着シートについて、印刷用コート層の表面に紫外線硬化型インキ(T&K TOKA社製、商品名「BESTCURE UV161 墨S」)を用いて、印刷機(明製作所社製、商品名「RIテスター」)で所定のパターンの印刷を施し、高圧水銀ランプで紫外線照射してインキを硬化させて、膜厚0.5μmの印刷層を形成し、印刷物を得た。形成された印刷層に対し、JIS K 5600-5-6(クロスカット法)に準じて粘着テープ剥離試験を行い、下記の基準に従い、印刷適性を評価した。
【0111】
〇:粘着テープ剥離試験後に印刷層が残存するマス目の数が、マス目100個あたり80個以上である。
△:粘着テープ剥離試験後に印刷層が残存するマス目の数が、マス目100個あたり50個以上80個未満である。
×:粘着テープ剥離試験後に印刷層が残存するマス目の数が、マス目100個あたり50個未満である。
これらの結果を、表2にまとめて示す。
【0112】
【0113】
表2から明らかなように、本発明の粘着シートでは、印刷層が好適に残存しており、インキとの密着性に優れていることが確認された。これに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
【0114】
紫外線硬化型インキの代わりに水性インキ(東洋インキ社製、商品名「アクワリオナ」)を用い、紫外線照射の代わりに70℃下で乾燥を行った以外は、上記[5-1]と同様に印刷物を製造し、同様の評価を行ったところ、同様の傾向の結果が得られた。