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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004062
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20230110BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20230110BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H02K7/14 B
H02K3/50
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105534
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】坂田 智洋
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慈裕
【テーマコード(参考)】
5H604
5H607
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC05
5H604CC13
5H604CC16
5H604QB14
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB09
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD03
5H607FF06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型化を図ることができる電動ポンプを提供する。
【解決手段】電動ポンプは、ロータ部とコイル線が巻かれたステータ部とを有するモータと、ロータ部に連結されたポンプ機構と、モータの軸方向一方側に設けられる回路基板と、モータと回路基板との間に配置され、コイル線を案内するコイルガイド90と、を備える。コイル線は、軸方向一方側に延び出て回路基板に接続される。コイルガイドは、軸方向に沿ってコイル線を案内する第1のコイル案内部92と、モータに対向する対向面に設けられ第1のコイル案内部が開口する第2のコイル案内部93と、を有する。第2のコイル案内部は、第1のコイル案内部の開口部に向かうに従い軸方向一方側に傾斜する傾斜面である。第2のコイル案内部の軸方向から見た幅は、第1のコイル案内部の開口部に向かうに従い狭くなる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータ部とコイル線が巻かれたステータ部とを有するモータと、
前記ロータ部に連結されたポンプ機構と、
前記モータの軸方向一方側に設けられる回路基板と、
前記モータと前記回路基板との間に配置され、前記コイル線を案内するコイルガイドと、を備え、
前記コイル線は、軸方向一方側に延び出て前記回路基板に接続され、
前記コイルガイドは、
軸方向に沿って前記コイル線を案内する第1のコイル案内部と、
前記モータに対向する対向面に設けられ前記第1のコイル案内部が開口する第2のコイル案内部と、を有し、
前記第2のコイル案内部は、前記第1のコイル案内部の開口部に向かうに従い軸方向一方側に傾斜する傾斜面であり、
前記第2のコイル案内部の軸方向から見た幅は、前記第1のコイル案内部の開口部に向かうに従い狭くなる、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記第1のコイル案内部は、貫通孔である、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記第1のコイル案内部の孔径は、前記コイル線の線径の1.5倍以下である、
請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記第1のコイル案内部の開口部は、前記第2のコイル案内部において周方向一方側又は他方側の端部に位置する、
請求項1~3の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記コイルガイドは、三対の前記第1のコイル案内部と三対の前記第2のコイル案内部とを有し、
一対の前記第2のコイル案内部は、軸方向から見て互いに隣り合って配置され、それぞれの前記第2のコイル案内部において、前記第1のコイル案内部の開口部が隣接する前記第2のコイル案内部側の端部に配置される、
請求項1~4の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記コイルガイドは、前記対向面に設けられ軸方向から見て前記第2のコイル案内部を囲む包囲リブを有する、
請求項1~5の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記コイルガイドは、
前記対向面に設けられ周方向に沿って延びる周方向リブと、
前記対向面に設けられ径方向に沿って延びる径方向リブと、を有し、
前記周方向リブと前記径方向リブとは、互いに連結される、
請求項1~6の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記傾斜面は、前記第1のコイル案内部に近付くに従い傾斜角度が増加する、
請求項1~7の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
前記傾斜面は、円弧状に湾曲する、
請求項8に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動ポンプのハウジング内に、ロータ部およびステータを備えたモータと、モータに供給する電力を制御してモータの動作を制御する制御部と、を備える構成が記載される。この構成において、制御部に設けられたスイッチング素子からステータのコイルにバスバーを介して三相交流電流が出力されることで、ロータ部が回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-75872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動ポンプにおいては、バスバーは、モータのステータと制御部との間に配置される。このため、モータのステータと制御部との間にバスバーを配置するスペースを確保する必要があり、電動ポンプの大型化を招く恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、小型化を図ることができる電動ポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータ部とコイル線が巻かれたステータ部とを有するモータと、前記ロータ部に連結されたポンプ機構と、前記モータの軸方向一方側に設けられる回路基板と、前記モータと前記回路基板との間に配置され、前記コイル線を案内するコイルガイドと、を備える。前記コイル線は、軸方向一方側に延び出て前記回路基板に接続される。前記コイルガイドは、軸方向に沿って前記コイル線を案内する第1のコイル案内部と、前記モータに対向する対向面に設けられ前記第1のコイル案内部が開口する第2のコイル案内部と、を有する。前記第2のコイル案内部は、前記第1のコイル案内部の開口部に向かうに従い軸方向一方側に傾斜する傾斜面である。前記第2のコイル案内部の軸方向から見た幅は、前記第1のコイル案内部の開口部に向かうに従い狭くなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、小型化を図ることができる電動ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の電動ポンプを示す縦断面図である。
図2図2は、一実施形態の電動ポンプのカバーを取り外した状態の斜視図である。
図3図3は、一実施形態の電動ポンプのコイルガイドを斜め下方から見た図である。
図4図4は、一実施形態のコイルガイドの下面図である。
図5図5は、一実施形態のコイルガイドにおける第2のコイル案内部、第1のコイル案内部、ポッティング領域の断面図である。
図6図6は、一実施形態のコイルガイドの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明においては、各図に示すZ軸が延びる方向を上下方向とし、Z軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。以下の図に示す中心軸J1は、Z軸と平行に延びる仮想軸である。特に断りのない限り、中心軸J1の軸方向と平行な方向、すなわちZ軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸J1に近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸J1から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。なお、本実施形態において、「平行な方向」は略平行な方向を含み、「直交する方向」は略直交する方向を含む。本実施形態において、上側は「軸方向一方側」に相当し、下側は「軸方向他方側」に相当する。
【0010】
なお、上下方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1に示す本実施形態のポンプ10は、例えば、車両に搭載される電動ポンプである。
ポンプ10は、車両の内部において流体を送る。ポンプ10によって送られる流体は、例えば、オイルである。オイルは、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)である。図1に示すように、本実施形態のポンプ10は、モータ20と、ポンプ機構30と、ハウジング40と、回路基板50と、コイルガイド(シール部材)90と、を備える。
【0012】
モータ20、ポンプ機構30および回路基板50は、ハウジング40内に収容される。ハウジング40は、ハウジング本体部41と、カバー42と、ポンプカバー43と、を有する。ハウジング40内には、モータ20、ポンプ機構30、および回路基板50を収容する収容空間Sが設けられる。
【0013】
ハウジング本体部41は、モータハウジング44と、ポンプハウジング45と、を有する。本実施形態において、モータハウジング44とポンプハウジング45とは、互いに同一の単一部材の一部である。
【0014】
本実施形態においてモータハウジング44は、軸方向に延びる円筒状の筒状部44cを有する。モータハウジング44は、軸方向において、ポンプハウジング45に対して軸方向において上側(一方側)に配置されている。筒状部44cは、上下に開口し、収容空間Sの一部を構成するモータ収容凹部44aを有する。モータ20は、モータ収容凹部44aの径方向内側に収容される。
【0015】
ポンプハウジング45は、モータハウジング44の下側に繋がっている。ポンプハウジング45は、下側に開口する凹部からなり、収容空間Sの一部を構成するポンプ収容凹部45aを有する。ポンプ収容凹部45aの下側の開口は、ポンプカバー43によって塞がれる。ポンプ機構30は、ポンプ収容凹部45aの径方向内側に収容される。
【0016】
ポンプカバー43は、ポンプハウジング45の底部に複数本のボルト(図示なし)によって装着される。ポンプカバー43は、下方(軸方向の他方側)に延びる筒状の突出部46を有する。突出部46は、ポンプカバー43の底部から下側に延びる。突出部46は、下部凹部46cを有する。下部凹部46cは、突出部46の下端から上方に窪む。
【0017】
突出部46は流入口46aを有する。流入口46aは、第2の中心軸J2を中心として、軸方向に延びる。第2の中心軸J2は、中心軸J1から径方向にずれた位置に配置される。第2の中心軸J2と中心軸J1とは、互いに平行に延びる。流入口46aの下端は、下部凹部46cに臨んで開口する。流入口46aはポンプ収容凹部45aの内部空間と下部凹部46cとを連通する。流入口46aは、ポンプカバー43を軸方向に貫通する孔により構成される。流入口46aは、ポンプ機構30にオイルを流入させる。すなわち、ポンプ機構30は、流入口46aを通して装置外部からオイルを吸入する。
【0018】
突出部46は、流出口46bを有する。流出口46bは、中心軸J1を中心として軸方向に延びる。流出口46bの下端は、下部凹部46cに臨んで開口する。流出口46bは、後述するシャフト22の軸貫通孔22hと下部凹部46cとを連通する。流出口46bは、ポンプカバー43を軸方向に貫通する孔により構成される。流出口46bは、ポンプ機構30からモータ収容凹部44a内に流入し、軸貫通孔22hを通るオイルを流出させる。
【0019】
ハウジング本体部41は、モータ収容凹部44aの内部とポンプ収容凹部45aの内部とを軸方向に繋ぐ貫通孔41cを有する。貫通孔41c内には、後述するシャフト22が挿通される。貫通孔41cの内周面の軸方向の一部には、シャフト22を中心軸J1回りに回転自在に支持する滑り軸受41jが設けられる。
【0020】
ハウジング本体部41の上端には、カバー係合溝41mが設けられる。カバー係合溝41mは、ハウジング本体部41の外周面において、中心軸J1回りの周方向に連続する。
【0021】
カバー42は、カバー本体42aと、カバー筒状部42bと、フランジ42cと、を一体に有する。
カバー本体42aは、板状で、軸方向に直交する面に沿うように配置される。カバー筒状部42bは、カバー本体42aの外周部から軸方向に沿って下方に突出する。カバー筒状部42bの下端には、複数の係合爪47が設けられる。複数の係合爪47は、周方向に間隔をあけて配置される。各係合爪47は、カバー筒状部42bから下方に延びる。各係合爪47は、ハウジング本体部41のカバー係合溝41mに係合される。カバー42は、複数の係合爪47をカバー係合溝41mに係合させることで、ハウジング本体部41に装着される。カバー42は、ハウジング本体部41のモータ収容凹部44aを上方から塞ぐ。カバー42は、カバー筒状部42bの径方向内側に、収容空間Sの一部を構成し、回路基板50を収容する基板収容凹部42sを有する。
【0022】
フランジ42cは、カバー本体42aの外周部から径方向外側に突出する。フランジ42cは、カバー本体42aの外周部に、周方向に間隔をあけて複数設けられる。各フランジ42cは、取付対象部位に、不図示のボルトによって固定される。
【0023】
カバー42には、コネクタ部80が設けられる。コネクタ部80は、カバー42から、上側に軸方向一方側に突出する。コネクタ部80は回路基板50に接続され、例えば、外部電源が接続される。これにより、回路基板50は、コネクタ部80から供給された電力を後述するステータ部26に供給することができる。
【0024】
モータ20は、モータ収容凹部44a内に収容されている。モータ20は、ロータ部21と、ステータ部26と、を有する。
【0025】
ロータ部21は、中心軸J1を中心として回転する。ロータ部21は、シャフト22と、ロータコア23と、を有する。
シャフト22は、中心軸J1に沿って延びる。シャフト22は、中心軸J1回りに回転可能である。シャフト22の下側の端部は、貫通孔41cを介してポンプ収容凹部45a内に突出し、ポンプ機構30に連結される。
シャフト22は、軸貫通孔22hを有する。軸貫通孔22hは、軸線に沿って延びる。軸貫通孔22hの上端は、ロータ部21の上方に向かって開口する。軸貫通孔22hの下端は、流出口46bに開口する。
【0026】
流入口46aから流入したオイルの少なくとも一部は、ポンプ収容凹部45aから貫通孔41cの内周面とシャフト22の外周面との隙間を通って、モータ収容凹部44a内に流れこむ。モータ20は、モータ収容凹部44a内に流れこんだオイルに浸漬される。モータ収容凹部44a内のオイルは、シャフト22の上側の端部に開口する軸貫通孔22hに流れ込む。軸貫通孔22hに流れ込んだオイルは、軸貫通孔22h内を下方に流れ、流出口46bから流出される。
【0027】
ロータコア23は、シャフト22の外周面に固定される。ロータコア23は、中心軸J1を中心とする環状である。ロータコア23は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア23は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。
【0028】
ステータ部26は、ロータ部21の径方向外側に配置され、ロータ部21と径方向に隙間をあけて対向する。つまりステータ部26は、ロータ部21と径方向に対向する。ステータ部26は、周方向の全周にわたって、ロータ部21を径方向外側から囲う。ステータ部26は、ステータコア27と、複数のコイル29と、を有する。
【0029】
ステータコア27は、中心軸J1を中心とする環状である。ステータコア27は、軸方向に延びる筒状である。ステータコア27は、ロータ部21を径方向外側から囲う。ステータコア27は、ロータ部21の径方向外側に配置されて、ロータ部21と径方向に隙間をあけて対向する。ステータコア27は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることにより構成される。ステータコア27の径方向外側面は、筒状部44cの内周面に固定される。
【0030】
複数のコイル29は、インシュレータ28を介してステータコア27に取り付けられる。つまり複数のコイル29は、インシュレータ28を介してステータコア27に取り付けられる。インシュレータ28の材料は、例えば樹脂などの絶縁材料である。複数のコイル29は、ステータコア27に設けられた複数のティース(図示なし)のそれぞれに、インシュレータ28を介してコイル線29cが巻き回されることによりそれぞれ構成される。
【0031】
本実施形態のモータ20は3相モータである。複数のコイル29は、U相、V相、W相のコイルを含む。各コイル29は、回路基板50のU相、V相およびW相のいずれかに対応する部位にそれぞれ接続される。図2に示すように、各コイル29のコイル線29cは、コイル29から上側へ延び出て、後述のコイルガイド90を介して回路基板50と接続される。
【0032】
図1に示すように、ポンプ機構30は、モータ20によって駆動される。ポンプ機構30は、ステータ部26よりも下側に配置される。ポンプ機構30は、ロータ部21のシャフト22に接続される。本実施形態ではポンプ機構30が、トロコイドポンプ構造を有する。ポンプ機構30は、インナーロータ30aと、インナーロータ30aの径方向外側に位置するアウターロータ30bと、を有する。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、ポンプギアであり、互いに噛み合う。インナーロータ30aおよびアウターロータ30bは、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ30aは、シャフト22の軸方向他方側の端部に固定される。このようにして、ポンプ機構30は、シャフト22とともにインナーロータ30aが回転されることで駆動する。
【0033】
図2に示すように、回路基板50は、基材55を有する。回路基板50は、モータ20の軸方向一方側に位置する。基材55は、板面が軸方向を向く板状である。基材55は、後述するコイルガイド90によって軸方向他方側から支持される。基材55は、コイルガイド90に設けられるピン56によって、コイルガイド90に位置決めされる。
【0034】
基材55には、ステータ部26を構成する各相のコイル29のコイル線29cの先端が電気的に接続される。本実施形態において、基材55には、ステータ部26のコイル線29cが、回路基板50の外周部で周方向に間隔をあけた3箇所に接続される。回路基板50の各箇所において、2本のコイル線29cが配置されている。なお、各コイル線29cはU相、V相、W相のいずれかのコイル29の一部である。
【0035】
回路基板50の基材55には、複数の電子部品57、放熱材70等が設けられる。電子部品57は、例えば、コンデンサーである。電子部品57としては、コンデンサー以外に藻、プロセッサ、インバータ等を基材55に実装することができる。インバータは、回路基板50に接続されたコイル29のコイル線29cを介して、ステータ部26と電気的に接続される。すなわち、コイル線29cは、軸方向一方側に延び出て回路基板50に接続される。
【0036】
放熱材70は、プロセッサ、インバータ等、ポンプ駆動時に発熱する発熱部材の熱を放出する。放熱材70は、例えば、アルミニウム系材料、銅系材料等の高い熱伝導率を有した材料を含む。放熱材70は、カバー42のカバー本体42aに接触してもよい。
【0037】
図1に示すように、カバー42は、複数の放熱フィン42fと、部品収容凸部42pと、を有する。複数の放熱フィン42fは、カバー本体42aから上方に突出するように設けられる。部品収容凸部42pは、カバー本体42aの一部が上方に窪むことで設けられる。部品収容凸部42pの内側には、例えば電子部品57が収容される。
【0038】
コイルガイド90は、コイル線29cを案内する。コイルガイド90は、回路基板50の下側に設けられる。コイルガイド90は、ステータ部26と回路基板50との間に配置される。コイルガイド90は、コイル29の巻き線部から上側に延びるコイル線29cを保持する。コイルガイド90は、モータ20と回路基板50との間で、収容空間Sをシールして区画する。コイルガイド90は、絶縁性を有した樹脂材料からなる。図3図6に示すように、コイルガイド90は、コイルガイド本体(シール部材本体)91と、第1のコイル案内部92と、第2のコイル案内部93と、ポッティング領域94と、を有する。
【0039】
コイルガイド本体91は、軸線に直交する面に沿って設けられている。コイルガイド本体91は、軸方向から見て円板状である。コイルガイド本体91は、ハウジング本体部41の上端において、カバー筒状部42bの開口を閉塞するように設けられる。コイルガイド本体91は、ハウジング本体部41の筒状部44cとカバー42のカバー筒状部42bとの間に挟み込まれる。コイルガイド本体91は、軸方向において下方を向き、モータ20に対向する下面(対向面、第1面)91aと、回路基板50に対向する上面(第2面)91bと、を有する。
【0040】
第1のコイル案内部92は、コイルガイド本体91を軸方向に貫通し、コイル線29cを保持する。第1のコイル案内部92は、コイル線29cを軸方向に沿って案内する。図2図5に示すように、本実施形態において、第1のコイル案内部92は、U相、V相、W相のコイル29に対応して、三対設けられる。三対の第1のコイル案内部92は、第1のコイル案内部92の外周部に、周方向に間隔をあけて配置される。
図1図3図5に示すように、各第1のコイル案内部92は、コイルガイド本体91を軸方向に貫通する貫通孔92hである。第1のコイル案内部92は、コイルガイド本体91を軸方向に貫通し、コイル線29cを保持できるのであれば、例えばコイルガイド本体91の外周部から径方向内側に窪むように設けた切欠き等であってもよい。第1のコイル案内部92(貫通孔92h)の孔径は、コイル線29cの線径の1.5倍以下であるのが好ましい。本実施形態において、第1のコイル案内部92の孔径は、例えば1.4mmであり、コイル線29cの線径は、例えば1mmである。これにより、第1のコイル案内部92の内周面とコイル線29cの外周面との間には、直径で合計0.4mmの隙間が形成される。
【0041】
図3図5に示すように、第2のコイル案内部93は、コイルガイド本体91の下面91aに設けられる。第2のコイル案内部93は、ポンプ10の組立の際に、第1のコイル案内部92の貫通孔92hの開口部に向けて、貫通孔92hに挿入されるコイル線29cを案内する。第2のコイル案内部93は、傾斜面93aと、包囲リブ93rと、を有する。すなわち、第2のコイル案内部93は、少なくとも一部において、傾斜面93aである。
【0042】
図4に示すように、傾斜面93aは、軸方向から見て、略涙型(ティアドロップ型)で、周方向に延びている。傾斜面93aの周方向の一端部には、貫通孔92hの開口部が開口する。これにより、第2のコイル案内部93は、第1のコイル案内部92が開口する。つまり、コイルガイド90は、三対の第2のコイル案内部93と三対の第1のコイル案内部92とを有する。三対の第2のコイル案内部93のそれぞれの一対の第2のコイル案内部93は、軸方向から見て互いに隣り合って配置される。
【0043】
第1のコイル案内部92の開口部は、第2のコイル案内部93において周方向一方側又は他方側の端部に位置する。一対の第2のコイル案内部93のそれぞれの第2のコイル案内部93は、第1のコイル案内部92の開口部が隣接する第2のコイル案内部93側の端部に配置される、三対が設けられた第2のコイル案内部93の各対において、周方向一方側に位置する第2のコイル案内部93Aと、周方向他方側に位置する第2のコイル案内部93Bとは、第1のコイル案内部92の開口部が互いに隣接するように配置される。つまり、第2のコイル案内部93Aの開口部は、第2のコイル案内部93Aの傾斜面93aにおいて周方向他方側の端部に位置する。第2のコイル案内部93Bの開口部は、第2のコイル案内部93Bの傾斜面93aにおいて周方向一方側の端部に位置する。
【0044】
傾斜面93aの軸方向から見た幅dは、周方向において第1のコイル案内部92の開口部に向かうに従い狭くなる。傾斜面93aは、周方向において、第1のコイル案内部92の開口部に向かうに従い、軸方向一方側(上側)に傾斜する。図5に示すように、傾斜面93aは、第1のコイル案内部92に近付くに従い急勾配で傾斜する。すなわち、傾斜面93aは、第1のコイル案内部92に近付くに従い傾斜角度が増加する。傾斜面93aは、軸方向に沿った断面視で、周方向において、開口部から最も離れた位置から開口部に向けて、円弧状に湾曲する。
なお、傾斜面93aは、径方向において、第1のコイル案内部92の開口部に向かうに従い、上側に傾斜するようにしてもよい。
【0045】
図3図4に示すように、包囲リブ93rは、軸方向から見て第2のコイル案内部93の傾斜面93aを囲むように設けられる。包囲リブ93rは、コイルガイド本体91の下面91aから下方(軸方向他方側)に突出する筒状である。三対の第2のコイル案内部93を囲む三対の包囲リブ93rは、互いに連結され、周方向に連続して設けられる。
【0046】
コイルガイド90は、挿入筒部(挿入部)97と、突条部98と、周方向リブ95aと、径方向リブ96aと、を有する。挿入筒部97、突条部98、周方向リブ95a、および径方向リブ96aは、コイルガイド本体91の下面91aに設けられる。
【0047】
挿入筒部97は、三対の包囲リブ93rの周方向一端側から周方向に連続して延び、三対の包囲リブ93rの周方向他端側に接続される。挿入筒部97は、周方向の一部に三対の包囲リブ93rを備えることで、周方向の全周に連続する。挿入筒部97は、下面91aから下方に突出する。挿入筒部97は、ハウジング本体部41の上端部において、筒状部44cの内側に配置される。すなわち、挿入筒部97は、筒状部44cに挿入される。
【0048】
突条部98は、挿入筒部97の外周面に設けられる。突条部98は、挿入筒部97の周方向に間隔をあけて設けられる。各突条部98は、挿入筒部97の外周面から径方向外側に突出し、軸方向に沿って延びる。突条部98は、先端面98bとテーパ部98aと、を有する。先端面98bは、径方向外側を向き、軸方向と平行に延びている。先端面98bは、筒状部44cの内周面に接触する。テーパ部98aは、先端面98bの下側に連続して設けられる。テーパ部98aは、突条部98の下側(軸方向他方側)の端部に設けられる。テーパ部98aは、下方(軸方向他端側)に向かって、挿入筒部97から径方向外側への突出高さが漸次低くなる。このようなテーパ部98aを備えることで、コイルガイド90の挿入筒部97を筒状部44cの内側に容易に挿入できる。突条部98の先端面98bが筒状部44cの内周面に突き当たることで、コイルガイド90が、ハウジング本体部41に装着される。
なお、本実施形態では、突条部98が筒状の挿入筒部97の外周面に設けられる場合について説明した。しかしながら、突条部は、筒状部44cに挿入されるコイルガイド90の一部(挿入部)であれば、筒状でなくてもよい。
【0049】
周方向リブ95aは、挿入筒部97に対して径方向内側に設けられる。周方向リブ95aは、軸方向から見て円環状で、周方向に沿って延びる。
径方向リブ96aは、コイルガイド本体91の下面91aに、周方向に間隔をあけて複数設けられる。複数の径方向リブ96aは、下面91aの中央部から放射状に延びる。各径方向リブ96aは、径方向に沿って延びる。径方向リブ96aと、周方向リブ95aと、挿入筒部97とは、互いに連結される。
挿入筒部97、突条部98、周方向リブ95a、および径方向リブ96aは、下面91aから下方への突出寸法が、包囲リブ93rと同一とされる。
【0050】
図5図6に示すように、ポッティング領域94は、コイルガイド本体91の下面91a又は上面91bに設けられる。本実施形態において、ポッティング領域94は、コイルガイド本体91の上面91bに設けられる。ポッティング領域94には、第1のコイル案内部(コイル案内部)92の貫通孔92hが開口する。コイルガイド90は、3つのポッティング領域94を有する。3つのポッティング領域94は、コイルガイド本体91の外周部に、周方向に間隔をあけて設けられる。3つのポッティング領域94は、コイルガイド本体91を挟んで三対の第1のコイル案内部92に対応する位置に配置される。1つのポッティング領域94には、一対の第1のコイル案内部92が開口する。各ポッティング領域94は、例えば、軸方向から見て、周方向に延びる長円形状である。各ポッティング領域94の外周部には、コイルガイド本体91の上面91bから上方に突出する周壁94rが設けられる。ポッティング領域94には、ポッティング材99が充填される。
【0051】
コイルガイド本体91の上面91bには、周方向リブ95bと、径方向リブ96bとが設けられる。周方向リブ95bは、軸方向から見て円環状で、周方向に沿って延びる。本実施形態において、周方向リブ95bは、直径を異ならせて径方向に二重に設けられる。径方向リブ96bは、コイルガイド本体91の上面91bに、周方向に間隔をあけて複数設けられる。複数の径方向リブ96bは、上面91bの中央部から放射状に延びる。各径方向リブ96bは、径方向に沿って延びる。径方向リブ96bと、周方向リブ95bとは、互いに連結される。
【0052】
図1に示すように、U相、V相、W相のコイル29のコイル線29cは、三対の第1のコイル案内部92の貫通孔92hに下方から挿入され、コイルガイド本体91の上方に突出する。各コイル線29cは、コイルガイド本体91の上方に配置された回路基板50に設けられたスルーホールに挿入され、回路基板50上の回路に電気的に接続される。
コイル線29cが、貫通孔92hを貫通する部分において、ポッティング領域94にポッティング材99が充填されることで、貫通孔92hとコイル線29cとの隙間が封止される。
【0053】
本実施形態において、コイル線29cの端部は、回路基板50よりも上方に突出している。回路基板50上には、コイル線29cに接続される温度センサ59が設けられる。温度センサ59は、回路基板50に接続されるコイル線29cの端部の温度を計測する。モータ収容凹部44a内のオイルに浸漬されるコイル29は、時間の経過とともに、オイルと略等しい温度となる。この温度は、コイル29を通して伝播される。これにより、温度センサ59でコイル線29cの温度を検出することで、ハウジング40内のオイルの温度が検出される。
【0054】
本実施形態によれば、モータ20と回路基板50との間に配置されるコイルガイド90が、コイルガイド本体91を軸方向に貫通し、コイル線29cを保持する第1のコイル案内部92を有する。これにより、バスバーや接続端子を用いることなく、コイル線29cを保持し、回路基板50に直接接続することができる。したがって、ポンプ10の軸方向への大型化を抑制し、ポンプ10の小型化を図ることができる。
また、第1のコイル案内部92の開口部に向かうに従い軸方向一方側に傾斜する傾斜面93aを有する。これにより、ステータ部26から引き出されたコイル線29cを、傾斜面93aに沿って開口部に容易に導くことができる。また、第2のコイル案内部93の幅dが第1のコイル案内部92の開口部に向かうに従い狭くなるので、コイル線29cを、第2のコイル案内部93の幅dが広い部分に当てれば、コイル線29cを容易に開口部に導くことができる。したがって、コイル線29cを開口部に挿入し、コイル線29cを容易かつ確実に保持できる。
【0055】
本実施形態によれば、第1のコイル案内部92は、貫通孔92hであるので、貫通孔92hにコイル線29cを貫通させることで、コイル線29cを軸方向に確実に保持できる。
【0056】
本実施形態によれば、第1のコイル案内部92の孔径は、コイル線29cの線径の1.5倍以下である。これにより、第1のコイル案内部92とコイル線29cとの隙間を小さく抑えることで、コイル線29cが第1のコイル案内部92に確実に保持される。また、第1のコイル案内部92とコイル線29cとの隙間を塞ぐようにポッティング材99を充填する場合、ポッティング材99が第1のコイル案内部92とコイル線29cとの隙間から漏れるのを抑えることができる。
【0057】
本実施形態によれば、第1のコイル案内部92の開口部は、第2のコイル案内部93において周方向一方側又は他方側の端部に位置する。これにより、コイルガイド90が径方向に大型化することを抑制できる。
【0058】
本実施形態によれば、一対の第2のコイル案内部93は、軸方向から見て互いに隣り合って配置され、それぞれの第2のコイル案内部93において、第1のコイル案内部92の開口部が隣接する第2のコイル案内部93側の端部に配置される。これにより、コイルガイド90が、同相の一対のコイル線29cを近づけて保持できる。同相の一対のコイル線29cを近づけて回路基板50に接続できるため、コイル線29cの回路基板50への接続作業が容易となる。
【0059】
本実施形態によれば、コイルガイド90は、第2のコイル案内部93を囲む包囲リブ93rを有する。これにより、コイルガイド90を補強することができる。また、包囲リブ93rによって、第2のコイル案内部93の深さを確保できるので、コイル線29cが第2のコイル案内部93から外れるのを抑えることができる。また、傾斜面93aの傾斜を急勾配にしやすく、第1のコイル案内部92にコイル線29cを案内しやすくすることができる。
【0060】
本実施形態によれば、周方向リブ95a、および径方向リブ96aを備えることで、コイルガイド90の強度を高めることができる。
【0061】
本実施形態によれば、傾斜面93aは、第1のコイル案内部92に近付くに従い急勾配で傾斜するので、コイル線29cを、第1のコイル案内部92へ、より導きやすくできる。
【0062】
本実施形態によれば、傾斜面93aは、円弧状に湾曲するので、コイル線29cを、第1のコイル案内部92へ、より導きやすくできる。
【0063】
本実施形態によれば、第1のコイル案内部92が開口するポッティング領域94にポッティング材99が充填される。これにより、コイルガイド90は、コイル線29cを保持する機能に加えて、コイル線29cを第1のコイル案内部92におけるシール機能を有することになる。これにより、バスバーや接続端子と、シール部材とをそれぞれ設ける必要がない。したがって、ポンプ10の部品点数を削減し、コスト削減・小型化・組立性の向上を図ることができる。
【0064】
本実施形態によれば、1つのポッティング領域94には、一対の第1のコイル案内部92が開口するので、同相のコイル線29cを纏めてポッティングすることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0065】
本実施形態によれば、コイルガイド90は、ハウジング40の筒状部44cの内側に配置される挿入筒部97と、挿入筒部97の外周面に設けられた突条部98と、を有する。これにより、コイルガイド90をハウジング40にハウジング40に固定する際に、コイルガイド90の径方向の位置決めが容易にできる。
【0066】
本実施形態によれば、突条部98にテーパ部98aが設けられるので、コイルガイド90をハウジング40へ容易に挿入することができる。
【0067】
本実施形態によれば、回路基板50に接続されるコイル線29cの端部の温度を測定する温度センサ59を備える。これにより、モータ収容凹部44a内に温度センサ59を設ける必要がなく、温度センサ59を設けるためのスペースを確保する必要もない。これにより、ポンプ10の大型化を抑えることができる。また、温度センサ59をモータ収容凹部44a内に配置する場合には、温度センサ59からの引出線をコイルガイド90に貫通させる部分にシール構造が必要となるが、温度センサ59を回路基板50に接続することで、前記シール構造が不要となる。
【0068】
以上に、本発明の一実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0069】
例えば、上述した実施形態およびその変形例の電動ポンプの用途は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0070】
10…ポンプ、20…モータ、21…ロータ部、26…ステータ部、29…コイル、29c…コイル線、30…ポンプ機構、50…回路基板、90…コイルガイド、91…コイルガイド本体、91a…下面(対向面)、92…第1のコイル案内部、92h…貫通孔、93、93A、93B…第2のコイル案内部、93a…傾斜面、93r…包囲リブ、95a…周方向リブ、96a…径方向リブ、97…挿入筒部(挿入部)、d…幅、J1…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6