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特開2023-40638インバータ装置、インバータ装置のオフセット電圧測定方法、インバータ装置のオフセット電圧測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040638
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】インバータ装置、インバータ装置のオフセット電圧測定方法、インバータ装置のオフセット電圧測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230315BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147740
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】久保 孝平
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA15
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770EA01
5H770EA25
5H770HA02Z
5H770HA03Y
(57)【要約】
【課題】高精度にオフセット電圧を測定できるインバータ装置を提供する。
【解決手段】インバータ装置10は、直流の高電圧Vddを供給する高電圧ラインと直流の低電圧Vssを供給する低電圧ラインの間に並列に接続される複数のトランジスタ134のスイッチング動作によって多相の交流を出力するインバータ13と、各トランジスタ134のゲート31にスイッチング動作のためのパルスを供給する複数のドライバ135と、各トランジスタ134の交流出力端子133の間の相間電圧を測定するUV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52と、インバータ13が多相の交流を出力していない時の相間電圧であるオフセット電圧をUV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52が測定している間、各ドライバ135によって各トランジスタ134のゲート31に0より大きく1より小さいデューティ比のパルスを供給させる電圧制御部57と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に並列に接続される複数のトランジスタのスイッチング動作によって多相の交流を出力するインバータと、
前記各トランジスタの制御端子に前記スイッチング動作のためのパルスを供給する複数のパルス供給部と、
前記各トランジスタの交流出力端子の間の相間電圧を測定する相間電圧測定部と、
前記インバータが多相の交流を出力していない時の前記相間電圧であるオフセット電圧を前記相間電圧測定部が測定している間、前記各パルス供給部によって前記各トランジスタの制御端子に0より大きく1より小さいデューティ比のパルスを供給させるパルス制御部と、
を備えるインバータ装置。
【請求項2】
前記相間電圧測定部が前記オフセット電圧を測定している間、前記パルス制御部によって前記各トランジスタの制御端子に供給されるパルスのデューティ比は互いに等しい、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記相間電圧測定部が前記オフセット電圧を測定している間、前記パルス制御部によって前記各トランジスタの制御端子に供給されるパルスのデューティ比はそれぞれ一定である、請求項1または2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記相間電圧測定部が前記オフセット電圧を測定している間、前記パルス制御部によって前記各トランジスタの制御端子に供給されるパルスの位相は互いに等しい、請求項1から3のいずれかに記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記インバータが多相の交流を出力している時に前記相間電圧測定部が測定する相間電圧から前記オフセット電圧を減算するオフセット減算部を更に備え、
前記パルス制御部は、前記オフセット電圧が減算された前記相間電圧に基づいて、前記各パルス供給部が前記各トランジスタの制御端子に供給するパルスのデューティ比をフィードバック制御する、
請求項1から4のいずれかに記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記各トランジスタは、前記パルス供給部から前記制御端子に供給されるパルスに応じて導通状態が切り替わる電流経路と並列に形成される保護ダイオード要素を更に備える、請求項1から5のいずれかに記載のインバータ装置。
【請求項7】
直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に並列に接続される複数のトランジスタのスイッチング動作によって多相の交流を出力するインバータと、前記各トランジスタの制御端子に前記スイッチング動作のためのパルスを供給する複数のパルス供給部と、を備えるインバータ装置のオフセット電圧測定方法であって、
前記インバータが多相の交流を出力していない時の前記各トランジスタの交流出力端子の間の相間電圧であるオフセット電圧を測定している間、前記各パルス供給部によって前記各トランジスタの制御端子に0より大きく1より小さいデューティ比のパルスを供給させるステップを備える、
インバータ装置のオフセット電圧測定方法。
【請求項8】
直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に並列に接続される複数のトランジスタのスイッチング動作によって多相の交流を出力するインバータと、前記各トランジスタの制御端子に前記スイッチング動作のためのパルスを供給する複数のパルス供給部と、を備えるインバータ装置のオフセット電圧測定プログラムであって、
前記インバータが多相の交流を出力していない時の前記各トランジスタの交流出力端子の間の相間電圧であるオフセット電圧を測定している間、前記各パルス供給部によって前記各トランジスタの制御端子に0より大きく1より小さいデューティ比のパルスを供給させるステップをコンピュータに実行させる、
インバータ装置のオフセット電圧測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流を交流に変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流を交流に変換するインバータが開示されている。このインバータは、直流の高電圧を供給する高電圧ライン(Vpp)と直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に直列に接続されるトランジスタ対を三つ備え、各トランジスタ対のスイッチング動作によって3相の交流をモータに対して出力する。具体的には、インバータにおける各トランジスタは、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)によってデューティ比が制御されたパルスに応じて、オン状態とオフ状態の間でスイッチング動作を行う。
【0003】
理想的なインバータでは、各相のトランジスタ対がいずれもオフ状態にあり、各トランジスタ対の中間点である各交流出力端子から各相の交流が出力されていない時の、当該各交流出力端子の電圧は等しくなる。例えば、3相の交流を出力するインバータにおいて、いずれもオフ状態にあるU相トランジスタ対のU相出力端子の電圧、いずれもオフ状態にあるV相トランジスタ対のV相出力端子の電圧、いずれもオフ状態にあるW相トランジスタ対のW相出力端子の電圧は、互いに等しくなるのが理想である。
【0004】
しかし、実際には、各相のトランジスタ対の製造誤差、UV相間、VW相間、WU相間等の相間電圧を測定する電圧センサの個体差、電圧センサの後段に設けられるオペアンプやADC(アナログデジタル変換回路:Analog-to-Digital Converter)の影響等によって、電圧センサで測定される交流非出力時の各交流出力端子の電圧差は0にならない。この電圧差(交流非出力時の各交流出力端子の間の相間電圧)はオフセット電圧と呼ばれる。このオフセット電圧の影響を除去するために、電圧センサによって各相間のオフセット電圧を予め測定しておくことが考えられる。そして、交流出力時のインバータのフィードバック制御において、電圧センサがリアルタイムに測定する相間電圧を利用する場合は、そこから予め測定されたオフセット電圧を減算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-63303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各相のトランジスタには、その電流経路と並列に保護ダイオード要素が設けられることが多い。保護ダイオード要素は、低電圧ライン側から高電圧ライン側に向かう方向のみに電流を流すように設けられるが、トランジスタがオフ状態にある時は高電圧ライン側から低電圧ライン側に向かう方向に漏れ電流が発生する可能性がある。この漏れ電流が保護ダイオード要素を流れる際に電圧が発生するため、電圧センサが各相間のオフセット電圧を測定する際の誤差要因となり得る。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、高精度にオフセット電圧を測定できるインバータ装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインバータ装置は、直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に並列に接続される複数のトランジスタのスイッチング動作によって多相の交流を出力するインバータと、各トランジスタの制御端子にスイッチング動作のためのパルスを供給する複数のパルス供給部と、各トランジスタの交流出力端子の間の相間電圧を測定する相間電圧測定部と、インバータが多相の交流を出力していない時の相間電圧であるオフセット電圧を相間電圧測定部が測定している間、各パルス供給部によって各トランジスタの制御端子に0より大きく1より小さいデューティ比のパルスを供給させるパルス制御部と、を備える。
【0009】
この態様では、相間電圧測定部がオフセット電圧を測定している間に、各トランジスタの制御端子に0より大きく1より小さいデューティ比のパルスを供給することで、各トランジスタが間欠的にオン状態となって電流経路に断続的に電流が流れる結果、保護ダイオード要素等に漏れ電流が流れることを防止できる。
【0010】
本発明の別の態様は、インバータ装置のオフセット電圧測定方法である。この方法は、直流の高電圧を供給する高電圧ラインと直流の低電圧を供給する低電圧ラインの間に並列に接続される複数のトランジスタのスイッチング動作によって多相の交流を出力するインバータと、各トランジスタの制御端子にスイッチング動作のためのパルスを供給する複数のパルス供給部と、を備えるインバータ装置のオフセット電圧測定方法であって、インバータが多相の交流を出力していない時の各トランジスタの交流出力端子の間の相間電圧であるオフセット電圧を測定している間、各パルス供給部によって各トランジスタの制御端子に0より大きく1より小さいデューティ比のパルスを供給させるステップを備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インバータ装置において高精度にオフセット電圧を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】モータに多相の交流を供給するインバータ装置を模式的に示す。
図2】インバータが3相の交流を出力している時のUVW各相の交流出力端子の出力電圧波形を模式的に示す。
図3】誘導モータの等価回路を示す。
図4】インバータ装置における制御装置を示す。
図5】インバータのオフセット電流およびオフセット電圧を測定する際に、各ライバが各トランジスタ対のゲートに印加するパルスを模式的に示す。
図6】オフセット電圧の測定結果の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
本発明のインバータ装置は多相の交流で動作する任意の装置に適用できるが、本実施形態ではインバータ装置が供給する多相の交流に基づいて動作する電動機またはモータを備える駆動装置またはモータ装置の例を説明する。図1は、モータ20に多相の交流を供給する本実施形態のインバータ装置10を模式的に示す。インバータ装置10は、商用電源等から供給されるR相、S相、T相の3相の交流を整流して直流(脈流)に変換するコンバータ11と、コンバータ11で変換された直流を平滑して波形を整えるコンデンサ12と、コンデンサ12で平滑された直流を交流に変換するインバータ13を備える。
【0016】
コンバータ11は、商用電源等から供給される3相(R,S,T)の交流を一定の方向(図の下から上に向かう方向)に整流するダイオード111~116を備える。ダイオード111はR相の交流電圧が正の時に電流を流し、ダイオード112はR相の交流電圧が負の時に電流を流し、ダイオード113はS相の交流電圧が正の時に電流を流し、ダイオード114はS相の交流電圧が負の時に電流を流し、ダイオード115はT相の交流電圧が正の時に電流を流し、ダイオード116はT相の交流電圧が負の時に電流を流す。これらのブリッジ状に接続されたダイオード111~116によって、コンバータ11の出力端子間には、方向が一定で大きさが変動する脈流が現われる。コンデンサ12は、コンバータ11で得られた脈流を平滑した直流をインバータ13に供給する。
【0017】
以下、コンバータ11およびコンデンサ12を経て、インバータ13の高電圧入力端子131と低電圧入力端子132の間に入力される直流電圧をVDCと表す。高電圧入力端子131が接続される高電圧ラインの電圧をVdd、低電圧入力端子132が接続される低電圧ラインの電圧をVssとすれば、VDC=Vdd-Vssである。
【0018】
インバータ13は、直流の高電圧Vddを供給する高電圧ラインと直流の低電圧Vssを供給する低電圧ラインの間に並列に接続されるU相、V相、W相の3相のトランジスタ対のスイッチング動作によって3相の交流を出力する。換言すれば、インバータ13は、高電圧入力端子131と低電圧入力端子132の間で入力される直流電圧VDCに基づいて3相の交流を生成する。具体的には、直流電圧VDCに基づいてU相の交流を生成するU相インバータ13Uと、直流電圧VDCに基づいてV相の交流を生成するV相インバータ13Vと、直流電圧VDCに基づいてW相の交流を生成するW相インバータ13Wが並列に設けられる。各相のインバータ13U、13V、13Wの構成は共通であるため、以下では適宜インバータ13と総称してまとめて説明する。
【0019】
インバータ13は、高い直流電源電圧Vddが入力される高電圧入力端子131と、低い直流電源電圧Vssが入力される低電圧入力端子132と、高電圧入力端子131が接続される高電圧ラインと低電圧入力端子132が接続される低電圧ラインの間に設けられてVddとVssの間で変動する交流電圧を出力する交流出力端子133を備える。高電圧ラインと交流出力端子133の間には高電圧側トランジスタ134Hが接続され、低電圧ラインと交流出力端子133の間には低電圧側トランジスタ134Lが接続される。
【0020】
高電圧側トランジスタ134Hは、その制御端子に接続されるパルス供給部としての高電圧側ドライバ135Hから供給されるパルスに応じて、電流経路の導通状態が切り替わるスイッチング動作を行う。低電圧側トランジスタ134Lは、その制御端子に接続されるパルス供給部としての低電圧側ドライバ135Lから供給されるパルスに応じて、電流経路の導通状態が切り替わるスイッチング動作を行う。以下、高電圧側トランジスタ134Hおよび低電圧側トランジスタ134Lを、適宜トランジスタ134またはトランジスタ対134と総称し、高電圧側ドライバ135Hおよび低電圧側ドライバ135Lを、適宜ドライバ135またはドライバ対135と総称する。また、以下の説明においては「高電圧側」を意味する「H」および「低電圧側」を意味する「L」を適宜省略するが、図面では必要に応じて「H」および「L」を符号の末尾に付す。
【0021】
トランジスタ134は、制御端子としてのゲート31と、高電圧ライン側に接続される高電圧端子としてのコレクタ32と、低電圧ライン側に接続される低電圧端子としてのエミッタ33を備える絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。なお、トランジスタ134は、制御端子としてのゲートと、高電圧端子としてのドレインと、低電圧端子としてのソースを備える電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)でもよいし、制御端子としてのベースと、高電圧端子としてのコレクタと、低電圧端子としてのエミッタを備えるバイポーラトランジスタでもよい。
【0022】
高電圧側トランジスタ134Hにおいて、ゲート31Hは高電圧側ドライバ135Hに接続され、コレクタ32Hは高電圧入力端子131または高電圧ラインに接続され、エミッタ33Hは交流出力端子133および低電圧側トランジスタ134Lのコレクタ32Lに接続される。低電圧側トランジスタ134Lにおいて、ゲート31Lは低電圧側ドライバ135Lに接続され、コレクタ32Lは交流出力端子133および高電圧側トランジスタ134Hのエミッタ33Hに接続され、エミッタ33Lは低電圧入力端子132または低電圧ラインに接続される。以上の構成において、高電圧側トランジスタ134Hのエミッタ33Hと低電圧側トランジスタ134Lのコレクタ32Lの接続点が交流出力端子133を形成する。
【0023】
各トランジスタ134は、各ドライバ135からゲート31に供給されるパルスに応じて導通状態が切り替わるコレクタ32とエミッタ33の間の電流経路またはチャネルと並列に形成される保護ダイオード要素としての保護ダイオード34を更に備える。保護ダイオード34は、トランジスタ134と別体のディスクリートな素子でもよいし、トランジスタ134を製造する半導体製造プロセスにおいてトランジスタ134と一体的またはモノリシックに形成されるものでもよい。保護ダイオード34は、低電圧ライン側から高電圧ライン側に向かう方向のみに電流を流すように設けられるが、後述するように、トランジスタ134がオフ状態(チャネルが非導通状態)にある時は高電圧ライン側から低電圧ライン側に向かう方向に漏れ電流が発生する可能性がある。
【0024】
集積回路(IC:Integrated Circuit)として構成されるドライバ135は、トランジスタ134のゲート31にスイッチング動作のためのパルスを供給するパルス供給部を構成する。具体的には、ドライバ135は、PWMによってデューティ比が制御されたパルスをトランジスタ134のゲート31に印加する。トランジスタ134は、パルスの有無に応じてオン状態とオフ状態の間でスイッチング動作を行う。具体的には、パルスがゲート31に印加されている間はトランジスタ134がオン状態となり、コレクタ32とエミッタ33の間のチャネルが導通状態となる。また、パルスがゲート31に印加されていない間はトランジスタ134がオフ状態となり、コレクタ32とエミッタ33の間のチャネルが非導通状態となる。
【0025】
図2は、インバータ13が3相の交流を出力している時のUVW各相の交流出力端子133U、133V、133Wの出力電圧波形V、V、Vを、UVW各相の高電圧側ドライバ135Hおよび低電圧側ドライバ135Lがトランジスタ対134のゲート31に印加するパルスと共に模式的に示す。各交流出力端子133U、133V、133Wは、高電圧Vddと低電圧Vssの間で変動する正弦波状の交流電圧V、V、Vを出力する。3相交流では各相の交流電圧波形V、V、Vの位相が120度または2/3πずつ異なる。以下の説明では、高電圧Vddと低電圧Vssの平均値を0と置く。
【0026】
各交流出力端子133U、133V、133Wが正の電圧を出力している期間では、高電圧側ドライバ135Hが高電圧側トランジスタ134Hのゲート31Hに、0と1の間でデューティ比が段階的に変わるパルスを印加する一方、低電圧側ドライバ135Lは低電圧側トランジスタ134Lのゲート31Lにパルスを印加しない(デューティ比が0)。高電圧側ドライバ135Hが高電圧側トランジスタ134Hのゲート31Hにデューティ比が1のパルスを印加する時、高電圧側トランジスタ134Hのチャネルが高電圧ラインと略完全に導通するため、交流出力端子133にはVddと略等しい高電圧が現れる。
【0027】
各交流出力端子133U、133V、133Wが負の電圧を出力している期間では、低電圧側ドライバ135Lが低電圧側トランジスタ134Lのゲート31Lに、0と1の間でデューティ比が段階的に変わるパルスを印加する一方、高電圧側ドライバ135Hは高電圧側トランジスタ134Hのゲート31Hにパルスを印加しない(デューティ比が0)。低電圧側ドライバ135Lが低電圧側トランジスタ134Lのゲート31Lにデューティ比が1のパルスを印加する時、低電圧側トランジスタ134Lのチャネルが低電圧ラインと略完全に導通するため、交流出力端子133にはVssと略等しい低電圧が現れる。
【0028】
以上のように、インバータ13が3相の交流を出力している通常動作時は、UVW各相のインバータ13U、13V、13Wにおいて、高電圧側トランジスタ134Hおよび低電圧側トランジスタ134Lの一方のみにデューティ比が段階的に変わるパルスが印加され、高電圧側トランジスタ134Hおよび低電圧側トランジスタ134Lの他方にはパルスが印加されない(デューティ比が0)。このような通常動作時のパルスの態様は、後述するオフセット電圧測定時に各トランジスタ134に印加されるパルスの態様と大きく異なる。
【0029】
インバータ13で生成された3相の交流は、回転動力を発生させるモータ20に供給される。モータ20は、U相、V相、W相の3相のコイル20U、20V、20Wを備える3相ブラシレスモータである。U相コイル20UにはU相インバータ13Uの交流出力端子133UからのU相電流が流れ、V相コイル20VにはV相インバータ13Vの交流出力端子133VからのV相電流が流れ、W相コイル20WにはW相インバータ13Wの交流出力端子133WからのW相電流が流れる。各相のインバータ13U、13V、13Wは、モータ20のホール素子H1、H2、H3が検知した回転子の回転位置に基づき、互いに位相が異なる3相の交流を各相のコイル20U、20V、20Wに印加することで回転磁界を発生させる。この回転磁界によって回転する回転子から所望の回転動力が得られる。なお、モータ20の相の数は3に限られず、2以上の任意の自然数でよい。
【0030】
モータ20はインバータ13が供給する多相の交流に基づいて動作するものであればタイプを問わないが、後述するように各相間のオフセット電圧を高精度に測定できる本実施形態では、回転子に永久磁石が用いられる同期モータに比べて測定すべきモータ定数(後述)が多い誘導モータまたは非同期モータを用いるのが好ましい。誘導モータでは、一次側としての固定子が多相のコイル20U、20V、20Wを備えるだけでなく、二次側としての回転子も多相のコイルを備える。
【0031】
図3は、誘導モータ20の等価回路を示す。図の左側が一次側の固定子21を表し、図の右側が二次側の回転子22を表す。固定子21は前述の3相のコイル20U、20V、20Wを備え、回転子22は3相のコイル20u、20v、20wを備える。図示される各パラメータはそれぞれ以下を表し、これらのうち数値が略一定のものは特にモータ定数と呼ばれる。
【0032】
:一次端子電圧
:一次電流
′:一次負荷電流
:一次誘導起電力
:二次端子電圧
:二次電流
:二次誘導起電力
【0033】
:一次抵抗
:一次リアクタンス
:二次抵抗
:二次リアクタンス
:励磁コンダクタンス
:励磁サセプタンス
【0034】
:励磁電流
:鉄損電流
:磁化電流
:等価出力抵抗
s:滑り
【0035】
図4は、本実施形態のインバータ装置10における制御装置をインバータ13およびモータ20と共に示す。制御装置は、モータ20に印加される3相の交流電流をフィードバック制御する外側の電流制御ループ40と、モータ20に印加される3相の交流電圧をフィードバック制御する内側の電圧制御ループ50によって構成される。電流制御ループ40は、電流センサ41と、増幅部42と、AD変換部43と、オフセット電流保持部44と、オフセット電流減算部45と、電流制御部46を備える。電圧制御ループ50は、UV相間電圧センサ51と、VW相間電圧センサ52と、増幅部53と、AD変換部54と、オフセット電圧保持部55と、オフセット電圧減算部56と、電圧制御部57を備える。
【0036】
電流制御ループ40における電流センサ41は、UVW各相のインバータ13U、13V、13Wの各交流出力端子133U、133V、133Wがモータ20に印加するUVW各相の交流電流を測定する。増幅部42は、オペアンプ等によって構成され、電流センサ41が測定したUVW各相の交流電流を増幅する。AD変換部43は、増幅部42によって増幅されたUVW各相の交流電流をアナログ値からデジタル値に変換する。オフセット電流保持部44は、AD変換部43によってデジタル値に変換されたUVW各相の交流電流に基づいて、インバータ13が3相の交流を出力していない時のUVW各相間の電流差であるオフセット電流を格納および保持する。オフセット電流の具体的な測定方法については後述する。
【0037】
オフセット電流減算部45は、インバータ13が3相の交流を出力している際の電流フィードバック制御時に、電流センサ41が測定するUVW各相のリアルタイムの交流電流から、オフセット電流保持部44が保持するUVW各相間のオフセット電流に相当する電流を減算する。電流制御部46は、オフセット電流減算部45によってオフセット電流の影響が除去されたUVW各相のリアルタイムの交流電流を、図示の制御装置外から提供されるUVW各相の電流指令と比較し、それぞれの偏差に基づいて電圧制御部57に対する電圧指令を生成する。
【0038】
電圧制御ループ50におけるUV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52は、それぞれUV相間およびVW相間の電圧差を測定する相間電圧測定部を構成する。具体的には、UV相間電圧センサ51はU相インバータ13Uの交流出力端子133UとV相インバータ13Vの交流出力端子133Vの間のUV相間電圧を測定し、VW相間電圧センサ52はV相インバータ13Vの交流出力端子133VとW相インバータ13Wの交流出力端子133Wの間のVW相間電圧を測定する。なお、W相インバータ13Wの交流出力端子133WとU相インバータ13Uの交流出力端子133Uの間のWU相間電圧は、UV相間電圧センサ51が測定するUV相間電圧とVW相間電圧センサ52が測定するVW相間電圧から演算できるため、これを測定するための電圧センサを設ける必要はない。
【0039】
増幅部53は、オペアンプ等によって構成され、UV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52が測定したUVW各相間の電圧差を増幅する。AD変換部54は、増幅部53によって増幅されたUVW各相間の電圧差をアナログ値からデジタル値に変換する。オフセット電圧保持部55は、AD変換部54によってデジタル値に変換されたUVW各相間の電圧差に基づいて、インバータ13が3相の交流を出力していない時のUVW各相間の電圧差であるオフセット電圧を格納および保持する。オフセット電圧の具体的な測定方法については後述する。
【0040】
オフセット減算部としてのオフセット電圧減算部56は、インバータ13が3相の交流を出力している際の電圧フィードバック制御時に、UV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52が測定するUVW各相間のリアルタイムの相間電圧から、オフセット電圧保持部55が保持するUVW各相間のオフセット電圧を減算する。電圧制御部57は、オフセット電圧減算部56によってオフセット電圧の影響が除去されたUVW各相間のリアルタイムの電圧差を、電流制御部46から提供されるUVW各相の電圧指令と比較し、それぞれの偏差に基づいてパルス供給部としての各ドライバ135に対するパルス生成指令を生成する。
【0041】
インバータ13が3相の交流を出力している通常動作時には、図2のようにPWMによってデューティ比が制御されたパルスが、電圧制御部57による制御の下で各ドライバ135によって生成される。このように電圧制御部57は、オフセット電圧減算部56によってオフセット電圧が減算された相間電圧に基づいて、各ドライバ135が各トランジスタ134のゲート31に供給するパルスのデューティ比をフィードバック制御するパルス制御部を構成する。
【0042】
続いて、図4の制御装置によるインバータ13のオフセット電流およびオフセット電圧の測定について説明する。図5は、インバータ13のオフセット電流およびオフセット電圧を測定する際に、UVW各相の高電圧側ドライバ135Hおよび低電圧側ドライバ135Lが各トランジスタ対134のゲート31に印加するパルスを模式的に示す。
【0043】
図5(A)は、従来の典型的なオフセット電流およびオフセット電圧の測定方法を示す。この測定方法では、UVW各相のインバータ13U、13V、13Wにおける全6個のトランジスタ134のゲート31にパルスが印加されない。換言すれば、全トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスのデューティ比は常に0である。この時、全トランジスタ134はオフ状態となってコレクタ32とエミッタ33の間のチャネルには電流が流れないため、UVW各相の交流出力端子133U、133V、133Wは高電圧ラインおよび低電圧ラインから電気的に絶縁された状態となる。この状態のUVW各相の交流出力端子133U、133V、133Wを測定対象として、電流センサ41はUVW各相間のオフセット電流を測定し、UV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52はUVW各相間のオフセット電圧を測定する。測定されたオフセット電流はオフセット電流保持部44に格納および保持され、測定されたオフセット電圧はオフセット電圧保持部55に格納および保持される。
【0044】
このような従来のオフセット電流およびオフセット電圧の測定方法では、保護ダイオード34の漏れ電流によって測定精度が悪化する可能性がある。保護ダイオード34は低電圧ライン側から高電圧ライン側に向かう方向のみに電流を流すように設けられるが、図5(A)のように全てのトランジスタ134がオフ状態にある時は、高電圧ライン側から低電圧ライン側に向かう方向の漏れ電流が保護ダイオード34を流れる可能性がある。この漏れ電流は電流センサ41によってオフセット電流を測定する際の誤差要因となると共に、漏れ電流が保護ダイオード34を流れる際に発生する電圧がUV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52によってオフセット電圧を測定する際の誤差要因となる。
【0045】
図5(B)は、保護ダイオード34を流れる漏れ電流の影響を低減できるオフセット電流およびオフセット電圧の測定方法を示す。この測定方法では、パルス制御部としての電圧制御部57による制御の下、UVW各相のインバータ13U、13V、13Wにおける全6個のトランジスタ134のゲート31に、0より大きく1より小さいデューティ比のパルスが印加される。この時、全トランジスタ134が間欠的にオン状態となってチャネルに断続的に電流が流れる結果、保護ダイオード34を流れる漏れ電流が低減される。このように漏れ電流の影響が低減された状態で、電流センサ41はUVW各相間のオフセット電流を高精度に測定でき、UV相間電圧センサ51およびVW相間電圧センサ52はUVW各相間のオフセット電圧を高精度に測定できる。
【0046】
なお、6個の各トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスのデューティ比は互いに異なっていてもよいが、図5(B)のように互いに等しくするのが好ましい。また、6個の各トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスのデューティ比は、オフセット電流およびオフセット電圧を測定している間に、0より大きく1より小さい範囲で変化させてもよいが、図5(B)のようにそれぞれ一定とするのが好ましい。更に、6個の各トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスの位相は互いに異なっていてもよいが、図5(B)のように互いに等しくするのが好ましい(但し後述する図5(C)も参照)。
【0047】
また、6個の各トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスのデューティ比は0より大きく1より小さい範囲で任意に設定できるが、図5(B)のように0.5または50%付近の値とするのが好ましい。このようにすれば、各トランジスタ134がオン状態となる時間とオフ状態となる時間がバランスするため、オフセット電流およびオフセット電圧を測定している間のインバータ13の動作を安定化できる。具体的には、6個の各トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスのデューティ比は、40%~60%の範囲内の数値とするのが好ましく、45%~55%の範囲内の数値とするのが更に好ましい。
【0048】
なお、6個の各トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスのデューティ比を0とした場合は、図5(A)の従来の測定方法と同じになり、6個の各トランジスタ134のゲート31に印加されるパルスのデューティ比を1とした場合は、全トランジスタ134が完全導通状態となって高電圧ラインおよび/または低電圧ラインの電源電圧が各交流出力端子133U、133V、133Wに現れるため、オフセット電流およびオフセット電圧を測定できない。また、デューティ比が1の場合は高電圧ラインおよび低電圧ラインが短絡することで、各トランジスタ134に過大な電流が流れてしまう可能性もある。
【0049】
この点は高電圧側トランジスタ134Hおよび低電圧側トランジスタ134Lが同時にオン状態となる図5(B)でも同様である(但し、短絡する時間は50%のデューティ比によって半分になる)。このような短絡の問題を防止するために、図5(C)のように高電圧側トランジスタ134Hのゲート31Hに印加するパルスと低電圧側トランジスタ134Lのゲート31Lに印加するパルスの位相を互いにずらし、高電圧側トランジスタ134Hと低電圧側トランジスタ134Lが同時にオン状態となる時間を低減してもよい。図5(C)の例では、それぞれ50%のデューティ比のパルスを高電圧側と低電圧側で当該デューティ比の分だけずらすことで、どの時刻においても一方のトランジスタ134のみがオン状態となり高電圧ラインと低電圧ラインの短絡が防止される。
【0050】
また、図5(D)のように高電圧側トランジスタ134Hのゲート31Hにパルスを印加する第1の時間帯と低電圧側トランジスタ134Lのゲート31Lにパルスを印加する第2の時間帯を分けてもよい。第1の時間帯で測定された第1のオフセット電流および第1のオフセット電圧では高電圧側トランジスタ134Hの保護ダイオード34Hの漏れ電流の影響が低減されており、第2の時間帯で測定された第2のオフセット電流および第2のオフセット電圧では低電圧側トランジスタ134Lの保護ダイオード34Lの漏れ電流の影響が低減されている。
【0051】
そこで、第1のオフセット電流および第2のオフセット電流の平均を取れば、高電圧側保護ダイオード34Hおよび低電圧側保護ダイオード34Lの漏れ電流の影響がバランス良く低減された、精度の高いオフセット電流が得られる。同様に、第1のオフセット電圧および第2のオフセット電圧の平均を取れば、高電圧側保護ダイオード34Hおよび低電圧側保護ダイオード34Lの漏れ電流の影響がバランス良く低減された、精度の高いオフセット電圧が得られる。
【0052】
なお、第1のオフセット電流および/または第2のオフセット電流は、それぞれ単独でも図5(A)の従来の測定方法によるオフセット電流より精度が高いため、これらをオフセット電流保持部44に保持して電流フィードバック制御に利用してもよい。同様に、第1のオフセット電圧および/または第2のオフセット電圧は、それぞれ単独でも図5(A)の従来の測定方法によるオフセット電圧より精度が高いため、これらをオフセット電圧保持部55に保持して電圧フィードバック制御に利用してもよい。
【0053】
図6は、図5に示した測定方法によるオフセット電圧の測定結果の例を示す。図6の上方の曲線はUV相間電圧センサ51によって測定されたUV相間のオフセット電圧VUVを表し、図6の下方の曲線はVW相間電圧センサ52によって測定されたVW相間のオフセット電圧VVWを表す。いずれのオフセット電圧VUV、VVWも、AD変換部54でアナログ値から変換されたデジタル値である。時刻Tまでの時間帯では図5(A)の従来の測定方法によってオフセット電圧VUV、VVWを測定し、時刻T以降の時間帯では図5(B)の本実施形態の測定方法によってオフセット電圧VUV、VVWを測定した。
【0054】
この結果、UV相間のオフセット電圧VUVでは従来の測定方法と本実施形態の測定方法の間で0.39Vの差が確認され、VW相間のオフセット電圧VVWでは従来の測定方法と本実施形態の測定方法の間で0.45Vの差が確認された。このように、従来の測定方法では保護ダイオード34の漏れ電流等の影響が約0.4Vの測定誤差となっていたことが分かる。本実施形態の測定方法によれば、この測定誤差を除去できるため、高精度にオフセット電圧およびオフセット電流を測定できる。
【0055】
以上のようなオフセット電圧および/またはオフセット電流の測定誤差は、特にモータ20のモータ定数(図3)の測定時に大きな悪影響を及ぼす。例えば、実際は60mΩの一次抵抗rに50Aの一次電流Iを流した時の電圧を、UV相間電圧センサ51および/またはVW相間電圧センサ52で測定した場合、保護ダイオード34の漏れ電流等による測定誤差がなければ3Vという正しい測定値が得られ、r=3V/50A=60mΩと正しい抵抗値が得られる。一方、漏れ電流等による測定誤差が0.4Vあった場合、一次抵抗rに50Aの一次電流Iを流した時の電圧の測定値は3.4Vとなり、r=3.4V/50A=68mΩと誤った抵抗値が得られてしまう。
【0056】
また、オフセット電圧および/またはオフセット電流の測定誤差は、モータ20の制御にも悪影響を及ぼす。例えば、モータ20の一次抵抗rが100mΩの場合、0.4Vの測定誤差は一次電流Iにおける0.4V/100mΩ=4Aの誤差となって、制御装置におけるフィードバック制御に悪影響を及ぼす。特にモータ20を低トルクで駆動させる場合は、流すべき一次電流Iが小さくなるため、上記の誤差が及ぼす影響が相対的に大きくなってしまう。
【0057】
従って、オフセット電圧および/またはオフセット電流の測定誤差を低減できる本実施形態によれば、モータ20のモータ定数を高精度に測定できると共に、モータ20を高精度に制御できる。
【0058】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0060】
10 インバータ装置、13 インバータ、20 モータ、31 ゲート、34 保護ダイオード、40 電流制御ループ、41 電流センサ、44 オフセット電流保持部、45 オフセット電流減算部、46 電流制御部、50 電圧制御ループ、51 UV相間電圧センサ、52 VW相間電圧センサ、55 オフセット電圧保持部、56 オフセット電圧減算部、57 電圧制御部、133 交流出力端子、134 トランジスタ、135 ドライバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6