(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040661
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/173 20060101AFI20230315BHJP
H02K 5/16 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H02K5/173 A
H02K5/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147773
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】下雅意 大起
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛士
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝哉
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605CC04
5H605EB21
5H605EB30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ベアリングの電食を抑制しつつベアリングへのオイルの円滑な供給を可能とする駆動装置を提供する。
【解決手段】モータはモータシャフトと、ベアリングと、ベアリング保持部65を有するハウジングと、ベアリングとベアリングング保持部65との間に介在する絶縁部材70と、オイルが流れる油路と、を備える。ベアリング保持部65は、ベアリングを径方向外側から保持する保持筒部66と、保持筒部66の軸方向一方側の端部から径方向内側に延びる保持底部67と、を有する。絶縁部材70は、保持筒部66に沿って軸方向に延びる絶縁筒部76と、保持底部67の軸方向一方側の端部に位置し、保持底部67に沿って径方向に延びる絶縁底部77と、を有する。保持筒部66には、径方向の内外を貫通する貫通部66aが設けられる。油路は、貫通部66aの内部に配置される第1経路と、第1経路とベアリングとを繋ぐ第2経路99と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸線を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、
前記モータシャフトを回転可能に支持するベアリングと、
前記モータを内部に収容しベアリング保持部において前記ベアリングを保持するハウジングと、
前記ベアリングと前記ベアリング保持部との間に介在する絶縁部材と、
前記ハウジングの内部に収容されるオイルと、
前記オイルが流れる油路と、を備え、
前記ベアリング保持部は、
前記ベアリングを径方向外側から保持する保持筒部と、
前記保持筒部の軸方向一方側の端部から径方向内側に延びる保持底部と、を有し、
前記絶縁部材は、
前記保持筒部に沿って軸方向に延びる絶縁筒部と、
前記保持底部の軸方向一方側の端部に位置し、前記保持底部に沿って径方向に延びる絶縁底部と、を有し、
前記保持筒部には、径方向の内外を貫通する貫通部が設けられ、
前記油路は、
前記貫通部の内部に配置される第1経路と、
前記第1経路と前記ベアリングとを繋ぐ第2経路と、を有する、
駆動装置。
【請求項2】
前記絶縁底部には、径方向に延びるスリットが設けられ、
前記第2経路は、前記スリットの内部に配置される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記絶縁底部には、径方向に延びるスリットが設けられ、
前記保持底部は、
軸方向他方側を向く保持底面と、
前記保持底面に設けられ軸方向から見て前記スリットに重なり径方向に延びる溝部と、を有し、
前記第2経路は、前記スリットおよび前記溝部の内部に配置される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記絶縁底部には、径方向に延びるスリットが設けられ、
前記保持底部は、
軸方向他方側を向く保持底面と、
前記保持底面から軸方向他方側に突出し前記スリット内に挿入される段部と、
前記段部に設けられる径方向に延びる溝部と、を有し、
前記第2経路は、前記溝部の内部に配置される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記保持底部は、
軸方向他方側を向く保持底面と、
前記保持底面に設けられ径方向に延びる溝部と、を有し、
前記第2経路は、前記溝部の内部に配置される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記保持底部は、
軸方向他方側を向く保持底面と、
軸方向他方側を向き前記保持底面に対し径方向内側かつ軸方向一方側に位置する対向底面と、
前記保持底面に設けられ径方向に延びる溝部と、を有し、
前記絶縁部材は、前記保持底面に接触し、
前記第2経路は、前記溝部と前記絶縁底部の間、および前記対向底面と前記絶縁底部の間に配置される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記絶縁筒部には、径方向に貫通する絶縁貫通部が設けられ、
前記第2経路は、前記絶縁貫通部の内部に配置される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記絶縁部材は、前記絶縁筒部および前記絶縁底部に連なる切れ目部が設けられるC字状である、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第2経路は、前記切れ目部の内部に配置される、
請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記絶縁底部には、径方向に延びるスリットが設けられ、
前記保持底部は、
軸方向他方側を向く保持底面と、
前記保持底面から軸方向他方側に突出し前記スリット内に挿入される段部と、を有する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記ベアリング保持部から径方向外側に延びる壁部を有し、
前記壁部には、前記段部の径方向外側に位置する開口部が設けられる、
請求項10に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記保持底部は、前記段部として第1の段部および第2の段部を有し、
前記壁部には、
前記第1の段部の径方向外側に位置する第1の開口部と、
前記第2の段部の径方向外側に位置する第2の開口部と、が設けられ、
前記第1の段部の周方向に沿う寸法は、前記第2の段部の周方向に沿う寸法より大きい、
前記第1の開口部の周方向に沿う寸法は、前記第2の開口部の周方向に沿う寸法より大きい、
請求項11に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記ハウジングの内部で前記モータの上側に配置され前記オイルを吐出する吐出孔が設けられるオイル供給部を備え、
前記貫通部は、前記吐出孔の下側に位置し、
前記油路は、前記吐出孔から滴下した前記オイルを前記貫通部に導くガイド経路を有する、
請求項1~12の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記モータシャフトに接続される動力伝達機構を備え、
前記動力伝達機構は、複数の伝達シャフトおよび前記伝達シャフトの外周面に設けられる複数のギヤと、を有し、
前記モータシャフトおよび複数の前記伝達シャフトのうち何れかのシャフトには、当該シャフトと前記ハウジングとを電気的に接続する除電装置が設けられる、
請求項1~13の何れか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車およびハイブリッド自動車の普及に伴い車両を駆動する駆動装置の開発が進んでいる。このような駆動装置は、ベアリングの潤滑性を高めるため内部にオイルが貯留される場合がある。一方で、駆動装置のモータには、ロータとステータとの間に高周波誘導に基づく電位差が発生する。ロータを回転可能に支持するベアリングには、この電位差に起因する電食が発生する虞がある。特許文献1には、電食対策として、ベアリングを保持する絶縁スリーブを用いる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁性の部材でベアリングを径方向外側から保持する場合、ベアリングの潤滑性を高めるためのオイルを、ベアリングの径方向外側から供給する経路を確保し難いという問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記問題点に鑑みて、ベアリングの電食を抑制しつつベアリングへのオイルの円滑な供給を可能とする駆動装置の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、モータ軸線を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、前記モータシャフトを回転可能に支持するベアリングと、前記モータを内部に収容しベアリング保持部において前記ベアリングを保持するハウジングと、前記ベアリングと前記ベアリング保持部との間に介在する絶縁部材と、前記ハウジングの内部に収容されるオイルと、前記オイルが流れる油路と、を備える。前記ベアリング保持部は、前記ベアリングを径方向外側から保持する保持筒部と、前記保持筒部の軸方向一方側の端部から径方向内側に延びる保持底部と、を有する。前記絶縁部材は、前記保持筒部に沿って軸方向に延びる絶縁筒部と、前記保持底部の軸方向一方側の端部に位置し、前記保持底部に沿って径方向に延びる絶縁底部と、を有する。前記保持筒部には、径方向の内外を貫通する貫通部が設けられる。前記油路は、前記貫通部の内部に配置される第1経路と、 前記第1経路と前記ベアリングとを繋ぐ第2経路と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ベアリングの電食を抑制しつつベアリングへのオイルの円滑な供給を可能とする駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置の概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の第1壁部の平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の絶縁部材の斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線に沿う絶縁部材およびベアリング保持部の断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図であって、
図4とは異なる方向から見た図である。
【
図7】
図7は、変形例1の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例2の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例3の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例4の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例5の絶縁部材およびベアリング保持部の断面図である。
【
図12】
図12は、変形例6の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図である。
【
図13】
図13は、変形例7の絶縁部材およびベアリング保持部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。
以下の説明では、駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜Y軸を示す。Y軸方向は、車両の幅方向(左右方向)を示す。
【0010】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸線J2に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼ぶ場合がある。また、車両左方(すなわち、+Y側)を、単に軸方向一方側と呼び、車両右方(すなわち、-Y側)を、単に軸方向他方側と呼ぶ場合がある。さらに、モータ軸線J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸線J2を中心とする周方向、すなわち、モータ軸線J2の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態の駆動装置1の概念図である。
駆動装置1は、車両を駆動する。駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0012】
駆動装置1は、モータ2と、動力伝達機構3と、ハウジング6と、オイルOと、ポンプ96と、クーラー97と、オイルOが流れる油路90と、供給管(オイル供給部)95と、複数のベアリング16、16Aと、絶縁部材70、70Aと、除電装置9と、備える。ハウジング6の内部には、モータ2を収容するモータ室81と、動力伝達機構3を収容するギヤ室82と、に区画された収容空間80が設けられる。
【0013】
<モータ>
モータ2は、ハウジング6のモータ室81に収容される。モータ2は、ロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、を備える。モータ2は、ステータ30と、ステータ30の内側に回転自在に配置されるロータ20と、を備えるインナーロータ型モータである。
【0014】
ロータ20は、図示略のバッテリからステータ30に電力が供給されることで回転する。ロータ20は、モータシャフト21と、ロータコア24と、ロータマグネット(図示略)と、を有する。すなわち、モータ2は、モータシャフト21と、ロータコア24と、ロータマグネットと、を有する。ロータ20は、モータ軸線J2を中心として回転する。ロータ20のトルクは、動力伝達機構3に伝達される。
【0015】
モータシャフト21は、モータ軸線J2を中心として延びる。モータシャフト21は、モータ軸線J2を中心として回転する。モータシャフト21は、内部にモータ軸線J2に沿って延びる内周面を有する中空部22が設けられた中空シャフトである。
【0016】
モータシャフト21は、ハウジング6のモータ室81とギヤ室82とを跨いで延びる。モータシャフト21の一方の端部は、ギヤ室82側に突出する。ギヤ室82に突出するモータシャフト21の端部には、ピニオンギヤ41が固定されている。
【0017】
モータシャフト21は、モータ室81内において、ベアリング16、16Aによって回転可能に支持される。すなわち、ベアリング16、16Aは、モータシャフト21を回転可能に支持する。ベアリング16Aは、モータシャフト21の中程で、モータシャフト21を支持する。一方で、ベアリング16は、モータシャフト21の軸方向一方側(+Y側)の端部を支持する。
【0018】
ロータコア24は、珪素鋼板を積層して構成される。ロータコア24は、軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア24には、図示略の複数のロータマグネットが固定される。複数のロータマグネットは、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0019】
ステータ30は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータ30は、ステータコア32と、コイル31と、ステータコア32とコイル31との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、ハウジング6に保持される。ステータコア32は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に複数の磁極歯(図示略)を有する。磁極歯の間には、コイル線が掛けまわされる。磁極歯に掛けまわされたコイル線は、コイル31を構成する。
【0020】
<動力伝達機構>
動力伝達機構3は、ギヤ室82に収容される。動力伝達機構3は、モータシャフト21に接続される。動力伝達機構3は、複数の伝達シャフト(中間シャフト45、および出力シャフト55)および伝達シャフトの外周面に設けられる複数のギヤ(ピニオンギヤ41、カウンタギヤ42、ドライブギヤ43、およびリングギヤ51)と、を有する。動力伝達機構3は、複数のギヤによってモータ2の動力を伝達する。
【0021】
動力伝達機構3は、減速装置4と差動装置5とを有する。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置4は、モータ2のモータシャフト21に接続される。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、一対の出力シャフト55に同トルクを伝える機能を有する。
【0022】
減速装置4は、ピニオンギヤ41と、中間シャフト45と、中間シャフト45に固定されたカウンタギヤ42およびドライブギヤ43と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、モータ2のモータシャフト21、ピニオンギヤ41、カウンタギヤ42およびドライブギヤ43を介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0023】
ピニオンギヤ41は、モータ2のモータシャフト21の外周面に固定される。ピニオンギヤ41は、モータシャフト21とともに、モータ軸線J2を中心に回転する。
【0024】
中間シャフト45は、モータ軸線J2と平行な中間軸線J4に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸線J4を中心として回転する。中間シャフト45は、ハウジング6の内側面にベアリングを介して回転可能に支持される。
【0025】
カウンタギヤ42とドライブギヤ43とは、軸方向に並んで配置される。カウンタギヤ42およびドライブギヤ43は、中間シャフト45の外周面に設けられる。カウンタギヤ42およびドライブギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。カウンタギヤ42およびドライブギヤ43は、中間軸線J4を中心として回転する。カウンタギヤ42、ドライブギヤ43および中間シャフト45のうち少なくとも2つは、単一の部材から構成されていてもよい。カウンタギヤ42は、ピニオンギヤ41と噛み合う。ドライブギヤ43は、差動装置5のリングギヤ51と噛み合う。
【0026】
差動装置5は、リングギヤ51と一対の出力シャフト55とを有する。リングギヤ51は、モータ軸線J2と平行な差動軸線J5を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。一対の出力シャフト55は、軸方向に沿って延びる。一対の出力シャフト55の一端にはそれぞれサイドギヤが接続され、他端にはそれぞれ車輪が接続される。一対の出力シャフト55は、モータ2のトルクを、車輪を介して路面に伝える。
【0027】
<ハウジング>
ハウジング6は、モータ2および動力伝達機構3を内部に収容する。ハウジング6は、軸方向と直交する平面に沿って延びる第1壁部(壁部)62と第2壁部64とを有する。第1壁部62は、モータ2の軸方向一方側(+Y側)に配置される。第2壁部64は、モータ2の軸方向他方側(-Y側)に配置される。また、第2壁部64は、モータ2と動力伝達機構3との間に配置される。第2壁部64の一部は、ハウジング6内の収容空間80をモータ室81とギヤ室82とに区画する。
【0028】
第1壁部62には、第1のシャフト通過孔62fと第1の開口部62aと第2の開口部62bとベアリング保持部65と除電装置保持部68とカバー固定部69と、が設けられる。除電装置保持部68は、除電装置9を保持する。ベアリング保持部65は、ベアリング16を保持する。ベアリング16とベアリング保持部65との間には、絶縁部材70が介在する。
【0029】
第1壁部62には、カバー6Aが固定される。カバー6Aは、カバー固定部69に固定される。第1壁部62とカバー6Aとの間には、センサ室83が設けられる。カバー6Aは、第1壁部62の第1のシャフト通過孔62f、第1の開口部62a、および第2の開口部62bを軸方向一方側(+Y側)から覆う。
【0030】
図2は、第1壁部62をモータ室81側から見た平面図である。
第1のシャフト通過孔62fと第1の開口部62aと第2の開口部62bとは、第1壁部62を軸方向に貫通する。第1のシャフト通過孔62fには、モータシャフト21の軸方向一方側の端部が通過する。第1の開口部62aは、例えば、モータシャフト21の回転数を測定する回転センサ(図示略)や当該回転センサのハーネス(図示略)などを配置するために設けられる。第2の開口部62bは、第1のシャフト通過孔62fおよび第1の開口部62aより下側に配置される。本実施形態の第2の開口部62bは、モータ軸線J2の直下に配置される。第2の開口部62bは、第1のシャフト通過孔62f又は第1の開口部62aからセンサ室83内に浸入したオイルOをモータ室81内に戻すために設けられる。
【0031】
図1に示すように、第2壁部64には、第2のシャフト通過孔64fと第3の開口部64gとベアリング保持部65Aとが設けられる。ベアリング保持部65Aは、ベアリング16Aを保持する。ベアリング16Aとベアリング保持部65Aとの間には、絶縁部材70Aが介在する。
【0032】
第2のシャフト通過孔64fと第3の開口部64gとは、第2壁部64を軸方向に貫通する。第2のシャフト通過孔64fには、モータシャフト21が通過する。第3の開口部64gは、モータ室81の底部の近傍に設けられる。モータ室81内でモータ2を冷却したオイルOは、第3の開口部64gを介しモータ室81からギヤ室82のオイル溜りPに移動する。
【0033】
第1壁部62のベアリング保持部65と第2壁部64のベアリング保持部65Aとは、ともにモータ軸線J2上に配置される。ハウジング6は、ベアリング保持部65Aにおいてベアリング16Aを保持し、ベアリング保持部65においてベアリング16を保持する。なお、ベアリング保持部65、65Aの具体的な構成については、後段において詳細に説明する。
【0034】
ハウジング6のギヤ室82内には、キャッチタンク93が配置される。キャッチタンク93は、上側に開口する。キャッチタンク93は、一時的にオイルを貯留するリザーバとして機能する。キャッチタンク93には、カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOが溜る。
【0035】
<除電装置>
除電装置9は、ハウジング6の除電装置保持部68に保持される。除電装置9は、モータシャフト21を囲む環状である。本実施形態において除電装置9は、モータ軸線J2を中心とする円環状である。除電装置9は、モータシャフト21の軸方向一方側(+Y側)の端部を径方向外側から囲む。
【0036】
除電装置9は、モータ軸線J2を中心とする円環状の基部と、基部の径方向内縁部に全周に亘って設けられたブラシ部と、を有する。除電装置9は、基部において除電装置保持部68に固定される。したがって、除電装置9は、基部においてハウジング6に電気的に接触する。また、除電装置9は、ブラシ部においてモータシャフト21の外周面に接触する。すなわち、除電装置9は、ブラシ部において、ロータ20に電気的に接触する。
なお、本明細書において「或る対象が他の対象に電気的に接触している」とは、或る対象と他の対象との間で電流が流れることが可能となっていればよい。
【0037】
本実施形態によれば、モータシャフト21とハウジング6とは、除電装置9を介して電気的に繋がっている。そのため、モータシャフト21に生じた電流を、ハウジング6に流すことができる。これにより、モータシャフト21と電気的に繋がる各ベアリングに電流が流れることを抑制できベアリングに電食が生じることを抑制できる。
【0038】
なお、本実施形態の除電装置9は、モータシャフト21からハウジング6に直接的に電流を流す場合について説明した。しかしながら、除電装置9は、モータシャフト21と電気的に繋がる部分に設けられていれば効果を得ることができる。すなわち、除電装置9は、モータシャフト21および複数の伝達シャフト(中間シャフト45、および出力シャフト55)のうち何れかのシャフトに設けられていればよい。この場合、除電装置9は、シャフトとハウジング6とを電気的に接続して、シャフトの電荷をハウジング6に逃がす。
【0039】
駆動装置1における絶縁部材70と除電装置9との配置の関係についてより具体的に説明する。一般的なモータでは、モータシャフト、一方のベアリング、ハウジング、他方のベアリング、およびモータシャフトを繋ぐ閉回路に、高周波循環電流が発生する。ここで、一方のベアリングとは、動力を伝達する側のベアリングであって本実施形態のベアリング16Aに相当し、他方のベアリングとは、ベアリング16に相当する。
【0040】
本実施形態では、ベアリング16、16Aにそれぞれ絶縁部材70、70Aが取り付けられる。これにより、閉回路を遮断し循環電流の発生を遮断する。また、本実施形態によれば、さらに除電装置9を設けて除電することによって、閉回路中に生じる電位差を抑制しベアリング16、16Aに電食が発生することを抑制できる。
【0041】
なお、絶縁部材70、70Aが取り付けらえるベアリングの位置に応じて、除電装置9が取り付けられる好ましい位置も変わる。
図1において、絶縁部材70、70A又は除電装置9を配置できる位置を、それぞれ、位置A、位置B、および位置Cとする。位置Aは、モータ2の軸方向一方側(+Y側)におけるモータシャフト21の支持位置である。位置Bは、モータ2の軸方向他方側(-Y側)におけるモータシャフト21の支持位置である。位置Cは、ギヤ室82における伝達シャフト(モータシャフト21、中間シャフト45、および出力シャフト55)の支持位置である。なお、
図1において図示が省略されているが、位置Cとしては、中間シャフト45の軸方向一方側(+Y側)を支持する部分も含まれる。
【0042】
絶縁部材70を位置Aのみに取り付ける場合、モータシャフト21を流れる電流は位置Bに誘導されるため、除電装置9は位置Bに取り付けられることが好ましい。
絶縁部材70を位置Bのみに取り付ける場合、モータシャフト21を流れる電流は位置Aに誘導されるため、除電装置9は位置Aに取り付けられることが好ましい。
絶縁部材70を位置A、Bに取り付ける場合、モータシャフト21を流れる電流はギヤ室82側に誘導されるため、除電装置9は何れかの位置Cに取り付けられることが好ましい。
【0043】
<オイル>
オイルOは、ハウジングの内部に収容される。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOは、ギヤ室82内の下部領域(すなわちオイル溜りP)に溜る。オイルOは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のものを用いることが好ましい。
【0044】
図1に示すように、オイルOは、駆動装置1内で、油路90内を循環する。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給するオイルOの経路である。
【0045】
なお、本明細書において、「油路」とは、収容空間80を循環するオイルOの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かう定常的なオイルの流動を形成する「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路(例えばキャッチタンクのようなリザーバとして機能するもの)およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。
【0046】
油路90は、収容空間80のモータ室81とギヤ室82とに跨って構成される。油路90は、オイルOをオイル溜りPからモータ2を経て、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、第1の油路91と第2の油路92とを有する。
【0047】
第1の油路91および第2の油路92は、ともにオイル溜りPからオイルOをモータ2に供給して、再びオイル溜りPに回収する経路である。第1の油路91および第2の油路92において、オイルOは、モータ2から滴下して、モータ室81内の下部領域に溜る。
モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、第3の開口部64gを介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、オイル溜りP)に移動する。
【0048】
第1の油路91において、オイルOは、オイル溜りPからカウンタギヤ42によりかき上げられてキャッチタンク93に導かれる。また、カウンタギヤ42にかき上げられたオイルOの一部は、ベアリングに導かれてベアリングの潤滑性を高める。カウンタギヤ42にかき上げられたオイルOの他の一部は、ギヤ室82内の各ギヤに上側から降り注ぎ各ギヤの歯面に供給される。
【0049】
キャッチタンク93に溜まったオイルOの一部は、第1のオイル導入路68bを通りモータシャフト21の内部に供給される。キャッチタンク93に溜まったオイルOの他の一部は、ギヤ室82内のベアリングに供給される。
【0050】
モータシャフト21の中空部22に供給されたオイルOには、ロータ20の回転に伴う遠心力が付与される。オイルOは、ロータ20に設けられた孔から傾向方向外側に連続的に飛散して、ステータ30を冷却する。ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪いつつ下側に滴下され、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、第2壁部64に設けられた第3の開口部64gを介してギヤ室82に移動する。
【0051】
第2の油路92の経路中には、ポンプ96と、クーラー97と、供給管95と、が設けられる。ポンプ96は、第2の油路92のオイルOを圧送する。クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。
【0052】
供給管95は、モータ室81の上部領域に配置される。供給管95は、モータ2の直上に配置される。すなわち、供給管95は、ハウジング6の内部でモータ2の上側に配置される。供給管95は、軸方向に沿って延びる。供給管95は、第1壁部62と第2壁部64とに接続される。供給管95は、モータ室81の内部においてモータ2の上側に配置される。供給管95には、モータ2側に開口する吐出孔95aが設けられる。すなわち、供給管95には、オイルOを吐出する吐出孔95aが設けられる。
【0053】
なお、本実施形態では、オイル供給部としてオイルOが流れるパイプ状の供給管95が設けられる場合について説明した。しかしながら、オイル供給部は、他の形態であってもよい。一例として、オイル供給部は、オイルOを貯留しつつ、底部に設けられた吐出孔からオイルを滴下させる樋状のものであってもよい。
【0054】
第2の油路92においてオイルOは、ポンプ96によって吸い上げられるとともにクーラー97によって冷却され供給管95に達する。供給管95を流れるオイルOは、供給管95に設けられる吐出孔95aからモータ2に向かって吐出される。供給管95から吐出されたオイルOは、モータ2の上側からモータ2に供給される。また、供給管95から吐出されたオイルOの一部は、ベアリング16、16Aに供給される。ここで、供給管95の吐出孔95aから吐出されたオイルがベアリング16に達する経路を、上流側から順にガイド経路94、第1経路98、および第2経路99と呼ぶ。すなわち、油路90は、ガイド経路94、第1経路98、および第2経路99を有する。
【0055】
モータ2に供給されたオイルOは、ステータ30の外周面を伝いながら、ステータ30から熱を奪い、モータ2を冷却する。ステータ30の外周面を伝ったオイルOは、下方に滴下してモータ室81内の下部領域に溜る。第2の油路92のオイルOは、第1の油路91のオイルOとモータ室81内の下部領域で合流する。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、第3の開口部64gを介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、オイル溜りP)に移動する。
【0056】
ここで、ガイド経路94について、
図2を基に説明する。なお、第1経路98、および第2経路99については、ベアリング16の保持構造と共に後段において詳細に説明する。
【0057】
第1壁部62のモータ室81側を向く面62cには、複数のリブ62dが設けられる。複数のリブ62dは、軸方向他方側(-Y側)に突出する。複数のリブ62dは、ベアリング保持部65から径方向外側に延びる。複数のリブ62dは、周方向に沿って並んで配置される。周方向に並ぶリブ62d同士の周方向の距離は、径方向外側から内側に向かうに従い近くなる。
【0058】
ガイド経路94は、周方向に隣り合うリブ62d同士の間に設けられる。ここでガイド経路94の周方向一方側および他方側に配置されるリブ62dを、それぞれ第1リブ62daおよび第2リブ62dbと呼ぶ。第1リブ62daおよび第2リブ62dbは、ベアリング保持部65の上側に位置する。すなわち、第1リブ62daおよび第2リブ62dbは、ベアリング保持部65から上側に延びる。第2リブ62dbは、鉛直方向に対し平行に延びる。第1リブ62daは、鉛直方向に対して若干傾斜して延びる。より具体的には、第1リブ62daは、上側に向かうに従い第2リブ62dbから離れる方向に傾斜する。第1リブ62daのベアリング保持部65との接続部と、第2リブ62dbとベアリング保持部65との接続部との間には、第1経路98の入口が設けられる。
【0059】
供給管95から吐出されるオイルOは、第1リブ62daの側面に当てられる。第1リブ62daのオイルOが当てられる側面は、第2リブ62db側を向く面である。第1リブ62daに達したオイルOは、第1リブ62daの側面に沿って下側に流れてベアリング保持部65に設けられる第1経路98に達する。このように、ガイド経路94は、第1壁部62のリブ62dの側面によって構成され、供給管95から吐出されたオイルOを第1経路98の入口に導く経路である。なお、後述するように、第1経路98は、ベアリング保持部65の貫通部66aの内部に配置される。本実施形態によれば、ガイド経路94は、吐出孔95aから滴下したオイルOを、供給管95の吐出孔95aの下側に位置する貫通部66aに導く。本実施形態によれば、吐出孔95aから吐出されたオイルOを第1経路98に円滑に導くことできる。
【0060】
<ベアリング保持部および絶縁部材>
次に、ベアリング保持部65および絶縁部材70の構成について説明する。上述したように、ベアリング保持部65は、ベアリング16を保持する。
ここでは、第1壁部62のベアリング保持部65、および当該ベアリング保持部65に保持される絶縁部材70について具体的に説明する。しかしながら、第2壁部64のベアリング保持部65Aおよび絶縁部材70Aについても、これと同様の構成を有することが好ましい。
【0061】
図3は、絶縁部材70の斜視図である。
図4は、絶縁部材70が装着されたベアリング保持部65の斜視図である。
図5は、
図4のV-V線に沿う絶縁部材70およびベアリング保持部65の断面図である。
図6は、絶縁部材70が装着されたベアリング保持部65の斜視図であって、
図4とは異なる方向から見た図である。
【0062】
図4に示すように、ベアリング保持部65は、保持筒部66と保持底部67とを有する。
保持筒部66は、第1のシャフト通過孔62fの縁部から軸方向他方側(-Y側)に突出する。保持筒部66は、モータ軸線J2を中心とする円筒状である。保持筒部66は、ベアリング16を径方向外側から保持する。
【0063】
保持筒部66には、径方向の内外を貫通する貫通部66aが設けられる。本実施形態の貫通部66aは、保持筒部66の軸方向他方側(-Y側)の端部で開口する切欠状ある。本実施形態において、貫通部66aは、上下方向に貫通する。貫通部66aの上側には、オイルOを下側に吐出する供給管95が配置される。貫通部66aには、供給管95からオイルOが供給される。これにより、貫通部66aは、保持筒部66の径方向外側から内側にオイルOを導く第1経路98として機能する。換言すると、第1経路98は、貫通部66aの内部に配置される。
【0064】
保持底部67は、保持筒部66の軸方向一方側(+Y側)の端部から径方向内側に延びる。保持底部67の内縁は、軸方向から見てモータ軸線J2を中心とする円形である。保持底部67は、モータ軸線J2の周方向に沿って環状に延びる。保持底部67は、ベアリング16を軸方向一方側(+Y側)から支持する。
【0065】
図4および
図6に示すように、保持底部67は、保持底面67aと、第1の段部(段部)67cと、第2の段部(段部)67eと、溝部67bと、を有する。保持底面67aは、保持底部67の軸方向他方側(-Y側)を向く面である。第1の段部67cと第2の段部67eとは、保持底面67aから軸方向他方側(-Y側)に突出する。第1の段部67cと第2の段部67eとは、突出高さが互いに等しい。
【0066】
図2に示すように、第1の段部67cと第2の段部67eとは、周方向において異なる位置に配置される。第1の段部67cおよび第2の段部67eは、それぞれ保持底部67の径方向全幅に設けられる。また、第1の段部67cおよび第2の段部67eは、それぞれ周方向沿って延びる。本実施形態において、第1の段部67cの周方向に沿う寸法d1は、第2の段部67eの周方向に沿う寸法d2より大きい。第1の段部67cは、第1の開口部62aの径方向内側に配置される。一方で、第2の段部67eは、第2の開口部62bの径方向内側に配置される。
【0067】
図4に示すように、溝部67bは、第1の段部67cに設けられる。溝部67bは、貫通部66aの径方向内側に配置される。溝部67bは、径方向に沿って延びる。溝部67bの径方向外側の端部は、貫通部66aに繋がる。溝部67bには、貫通部66aの内部を通過したオイルOが流れる。したがって、溝部67bは、貫通部66a内の第1経路98に繋がる、第2経路99として機能する。換言すると、第2経路99は、溝部67bの内部に配置される。
【0068】
図3に示すように、本実施形態の絶縁部材70は、絶縁筒部76と絶縁底部77とを有するカップ状である。絶縁部材70は、絶縁性の部材から構成されている。本実施形態の絶縁部材70は、表面にアルマイト処理がなされたアルミニウム合金から構成される。アルマイト処理を施すことでアルミニウム合金の表面には、酸化アルミニウムからなる絶縁性の被膜が設けられる。このため、アルマイト処理を施したアルミニウム合金は、全体として絶縁性となり、絶縁部材70として採用することができる。
【0069】
図4に示すように、絶縁筒部76は、モータ軸線J2を中心とする円筒状である。絶縁筒部76は、ベアリング保持部65の保持筒部66に沿って軸方向に延びる。また、絶縁筒部76は、保持筒部66の内周面とベアリング16の外輪の外周面との間に配置される。これにより、絶縁筒部76は、保持筒部66とベアリング16との直接的な接触を抑制し、ベアリング16に電流が流れることを抑制する。
【0070】
絶縁底部77は、絶縁筒部76の軸方向一方側(+Y側)の端部に位置する。絶縁底部77の内縁は、軸方向から見てモータ軸線J2を中心とする円形である。絶縁底部77は、モータ軸線J2の径方向に沿って環状に延びる。絶縁底部77は、保持底部67に沿って径方向に延びる。絶縁底部77は、保持底部67とベアリング16の間に配置される。絶縁底部77は、絶縁底部77とベアリング16との直接的な接触を抑制し、ベアリング16に電流が流れることを抑制する。
【0071】
絶縁筒部76の外周面には、大径部76pと小径部76qとが設けられる。大径部76pと小径部76qとは、軸方向に沿って並んで配置される。大径部76pは、絶縁筒部76の外周面において、絶縁底部77と反対側の領域に設けられる。小径部76qは、絶縁筒部76の外周面において、絶縁底部77側の領域に設けられる。小径部76qの直径は、大径部76pの直径より小さい。大径部76pの直径は、保持筒部66の内径と略一致する。一方で、小径部76qの直径は、保持筒部66の内径より小さい。
【0072】
ベアリング保持部65に絶縁部材70を装着する工程において、絶縁筒部76の絶縁底部77側の領域は、保持筒部66のエッジ部分などに接触しやすい。絶縁性の被膜は、他部材のエッジ部分との接触によって損傷を受ける場合がある。
【0073】
本実施形態によれば、絶縁筒部76の外周面において他部材と接触し易い領域に、小径部76qが設けられている。小径部76qは、保持筒部66の内径よりも小さいため、絶縁部材70をベアリング保持部65に装着した状態で、小径部76qと保持筒部66の内周面との間には、隙間が生じる。本実施形態によれば、小径部76qの絶縁性の被膜に損傷が生じたとしても、絶縁部材70とベアリング保持部65とが電気的に接続されることを抑制できる。
【0074】
本実施形態において、絶縁筒部76の外周面と絶縁底部とを繋ぐ角部76rは、なめらかな湾曲形状を有する。すなわち、角部76rには、R形状が設けられる。本実施形態によれば、角部76rが鋭利な形状である場合と比較して、絶縁部材70の被膜(本実施形態ではアルマイト被膜)を角部76rにおいても斑なく形成し易い。また、ベアリング保持部65に絶縁部材70を圧入する場合、角部76rの一部に局所的な応力が加わり難くなり、角部76rの絶縁性の被膜の損傷を抑制できる。
【0075】
図2に示すように、絶縁底部77には、第1スリット(スリット)77aおよび第2スリット(スリット)77eが設けられる。第1スリット77aと第2スリット77eは、径方向に延びる。第1スリット77aおよび第2スリット77eは、それぞれ絶縁底部77の径方向全幅に達する。また、第1スリット77aおよび第2スリット77eは、それぞれ周方向に沿って延びる。本実施形態において、第1スリット77aの周方向に沿う寸法は、第2スリット77eの周方向に沿う寸法より大きい。
【0076】
図4に示すように、第1スリット77aには、第1の段部67cが挿入される。すなわち、第1の段部67cは、第1スリット77a内に挿入される。第1スリット77aの周方向に沿う寸法は、第1の段部67cの周方向に沿う寸法と同じか若干大きい。このため、第1の段部67cは、絶縁部材70の周り止めとして機能する。
【0077】
図6に示すように、第2スリット77eには、第2の段部67eが挿入される。すなわち、第2の段部67eは、第2スリット77e内に挿入される。第2スリット77eの周方向に沿う寸法は、第2の段部67eの周方向に沿う寸法と同じか若干大きい。第2の段部67eは、第1の段部67cとともに、絶縁部材70の周り止めとして機能する。なお、本実施形態では、保持底部67に2つの段部(第1の段部67cおよび第2の段部67e)が設けられ、それぞれが周り止めとして機能する場合について説明したが、何れか一つの見であっても周り止めとしては成立する。
【0078】
図5に示すように、第1経路98は、保持筒部66に設けられる切欠状の貫通部66aの内部に配置される。また、第2経路99は、保持底部67に設けられる溝部67b、および絶縁底部77の第1スリット77aの内部に配置される。第1経路98と第2経路99とは、繋がって配置される。第1経路98には、上述した供給管95の吐出孔95a(
図2参照)から吐出されたオイルOが到達する。オイルOは、第1経路98を通って、保持筒部66の径方向内側に達する。さらに、オイルOは、第2経路99を通過して絶縁筒部76の径方向内側に達し、ベアリング16に供給される。このように、第2経路99は、第1経路98とベアリング16とを繋ぐ。
【0079】
本実施形態によれば、絶縁部材70を用いてハウジング6とベアリング16との間の絶縁を確保しつつ、第1経路98、および第2経路99を介して絶縁部材70の内側に配置されるベアリング16にオイルOを供給できる。本実施形態によれば、このため、ベアリング16の電食を抑制しつつ、ベアリング16に潤滑性を付与して円滑に動作させることができる。
【0080】
本実施形態によれば、第2経路99は、保持底部67の第1の段部67cに設けられる溝部67bを通過する。また、第1の段部67cは、絶縁底部77の第1スリット77aが嵌る。したがって、第2経路99は、第1スリット77aの内部に配置される。これにより、第2経路99が、第1スリット77aを介して、オイルOを絶縁底部77の内側のベアリング16に円滑に導くことができる。
【0081】
本実施形態によれば、第2経路99が、径方向に沿って延びる溝部67bの内部に配置される。このため、オイルOが広がって流出することを抑制し、オイルOをベアリング16に集中的に導くことができ、ベアリング16の潤滑性をより確実に高めることができる。
【0082】
図2に示すように、第1壁部62は、ベアリング保持部65から径方向外側に延びる。また、第1壁部62には、第1の段部67cの径方向外側に位置する第1の開口部62aと、第2の段部67eの径方向外側に位置する第2の開口部62bと、が設けられる。第1壁部62に、第1の開口部62aおよび第2の開口部62bを設けると、第1の開口部62aおよび第2の開口部62bの近傍で応力集中が発生し第1壁部62の強度及び剛性が低下する虞がある。一方で、ベアリング保持部65は、第1の段部67cおよび第2の段部67eにおいて保持底部67の肉厚を厚くすることで、強度および剛性が局所的に高められている。
【0083】
本実施形態によれば、第1壁部62は、第1の開口部62aの径方向内側に配置される第1の段部67c、および第2の開口部62bの径方向内側に配置される第2の段部67eによって補強される。これにより、第1の開口部62aおよび第2の開口部62bの近傍で第1壁部62の強度および剛性が、局所的に低下することを抑制できる。
【0084】
本実施形態において、保持底部67は、2つの段部67c、67eを有し、第1壁部62には2つの開口部62a、62bが設けられる。より具体的には、保持底部67は、段部として第1の段部67cおよび第2の段部67eを有する。また、第1壁部62には、第1の段部67cの径方向外側に位置する第1の開口部62aと、第2の段部67eの径方向外側に位置する第2の開口部62bと、が設けられる。
【0085】
本実施形態において、第1の段部67cの周方向に沿う寸法d1は、第2の段部67eの周方向に沿う寸法d2より大きい。さらに、第1の開口部62aの周方向に沿う寸法d3は、第2の開口部62bの周方向に沿う寸法d4より大きい。すなわち、本実施形態によれば、比較的大きな開口部(第1の開口部62a)の内側には比較的大きな段部(第1の段部67c)が配置される。また、比較的小さな開口部(第2の開口部62b)の内側には比較的小さな段部(第2の段部67e)が配置される。これにより、強度が低下する部分の内側に効果的に段部を配置して、第1壁部62を効果的に配置できる。
【0086】
<変形例>
以下に、上述の実施形態に採用可能な変形例の絶縁部材およびベアリング保持部の構成について説明する。なお、各変形例の説明において、既に説明した実施形態又は既に説明した変形例と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
(変形例1)
図7は、変形例1の絶縁部材170およびベアリング保持部165の斜視図である。
上述の実施形態と同様に、ベアリング保持部165は、保持筒部66と保持底部167とを有する。本変形例の保持筒部66は、上述の実施形態と同様の構成を有する。保持筒部66には、切欠状の貫通部66aが設けられる。上述の実施形態と同様に、オイルOが通過する第1経路98は、保持筒部66に設けられる切欠状の貫通部66aの内部に配置される。また、本変形例の保持底部167は、上述の実施形態と比較して段部を有しておらず、周方向に沿って一様な断面形状を有する。
【0088】
上述の実施形態と同様に、絶縁部材170は、絶縁筒部176と絶縁底部177とを有するカップ状である。絶縁筒部176は、モータ軸線J2を中心とする円筒状である。絶縁筒部176は、保持筒部66に沿って軸方向に延びる。絶縁底部177は、絶縁筒部176の軸方向一方側(+Y側)の端部に位置する。絶縁底部177は、保持底部167に沿って径方向に延びる。
【0089】
絶縁底部177には、スリット177aが設けられる。スリット177aは、径方向に延びる。スリット177aは、絶縁底部177の径方向全幅に達する。スリット177aは、保持筒部66の貫通部66aの径方向内側に配置される。オイルOが通過する第2経路199は、スリット177aの内部に配置される。
【0090】
第1経路98と第2経路199とは、繋がって配置される。オイルOは、第1経路98を通って、保持筒部66の径方向内側に達する。さらに、オイルOは、第2経路199を通過して絶縁筒部176の径方向内側に達し、ベアリングに供給される。このように、第2経路199は、第1経路98とベアリングとを繋ぐ。本変形例によれば、第1経路98と第2経路199とを通して、ベアリングにオイルOを効果的に供給できる。
【0091】
(変形例2)
図8は、変形例2のベアリング保持部265および当該ベアリング保持部265に装着される絶縁部材170の斜視図である。本変形例において、絶縁部材170は、変形例1のものと同様の構成を有するため説明を省略する。
【0092】
上述の実施形態と同様に、ベアリング保持部265は、保持筒部66と保持底部267とを有する。本変形例の保持筒部66は、上述の実施形態と同様の構成を有する。保持筒部66には、切欠状の貫通部66aが設けられる。
【0093】
本変形例の保持底部267は、上述の実施形態と比較して段部を有していない。保持底部267は、保持底面267aと溝部267bとを有する。保持底面267aは、保持底部267の軸方向他方側(-Y側)を向く面である。溝部267bは、保持底面267aに設けられる。溝部267bは、径方向に延びる。溝部267bの径方向外側の端部は、貫通部66aに繋がる。ベアリング保持部265に絶縁部材170を装着した状態で、溝部267bは、軸方向から見てスリット177aに重なる。
【0094】
本変形例において、オイルOが通過する第2経路299は、スリット177aおよび溝部267bの内部に配置される。第1経路98と第2経路299とは、繋がって配置される。オイルOは、第1経路98を通って、保持筒部66の径方向内側に達する。さらに、オイルOは、第2経路299を通過して絶縁筒部176の径方向内側に達し、ベアリングに供給される。このように、第2経路299は、第1経路98とベアリングとを繋ぐ。本変形例によれば、第1経路98と第2経路299とを通して、ベアリングにオイルOを効果的に供給できる。
【0095】
(変形例3)
図9は、変形例3のベアリング保持部365および当該ベアリング保持部365に装着される絶縁部材170の斜視図である。本変形例において、絶縁部材170は、変形例1のものと同様の構成を有するため説明を省略する。
【0096】
上述の実施形態と同様に、ベアリング保持部365は、保持筒部66と保持底部367とを有する。本変形例の保持筒部66は、上述の実施形態と同様の構成を有する。保持筒部66には、切欠状の貫通部66aが設けられる。
【0097】
本変形例の保持底部367は、保持底面367aと段部367cと溝部367bとを有する。保持底面367aは、保持底部367の軸方向他方側(-Y側)を向く面である。段部367cは、保持底面367aから軸方向他方側(-Y側)に突出する。段部367cは、保持底面367aの径方向全幅に設けられる。段部367cは、絶縁部材170のスリット177aに挿入される。これにより、段部367cは、絶縁部材170の周り止めとして機能する。
【0098】
溝部367bは、段部367cに設けられる。溝部367bは、貫通部66aの径方向内側に配置される。溝部367bは、径方向に沿って延びる。溝部367bの径方向外側の端部は、貫通部66aに繋がる。第2経路399は、溝部367bの内部に配置される。
【0099】
本変形例において、オイルOが通過する第2経路399は、スリット177aおよび溝部367bの内部に配置される。第1経路98と第2経路399とは、繋がって配置される。オイルOは、第1経路98を通って、保持筒部66の径方向内側に達する。さらに、オイルOは、第2経路399を通過して絶縁筒部176の径方向内側に達し、ベアリングに供給される。このように、第2経路399は、第1経路98とベアリングとを繋ぐ。本変形例によれば、第1経路98と第2経路399とを通して、ベアリングにオイルOを効果的に供給できる。
【0100】
(変形例4)
図10は、変形例4の絶縁部材470およびベアリング保持部465の斜視図である。
上述の実施形態と同様に、ベアリング保持部465は、保持筒部66と保持底部467とを有する。本変形例の保持筒部66は、上述の実施形態と同様の構成を有する。保持筒部66には、切欠状の貫通部66aが設けられる。上述の実施形態と同様に、オイルOが通過する第1経路98は、保持筒部66に設けられる切欠状の貫通部66aの内部に配置される。
【0101】
本変形例の保持底部467は、上述の実施形態と比較して段部を有していない。保持底部467は、保持底面467aと溝部467bとを有する。保持底面467aは、保持底部467の軸方向他方側(-Y側)を向く面である。溝部467bは、保持底面467aに設けられる。溝部467bは、径方向に延びる。溝部467bの径方向外側の端部は、貫通部66aに繋がる。溝部467bの内部には、オイルOが通過する第2経路499が配置される。
【0102】
上述の実施形態と同様に、絶縁部材470は、絶縁筒部476と絶縁底部477とを有するカップ状である。絶縁筒部476は、モータ軸線J2を中心とする円筒状である。絶縁筒部476は、保持筒部66に沿って軸方向に延びる。絶縁底部477は、絶縁筒部476の軸方向一方側(+Y側)の端部に位置する。絶縁底部477は、保持底部467に沿って径方向に延びる。本変形例の絶縁筒部476および絶縁底部477には、スリットおよび貫通部が設けられていない。したがって、絶縁筒部476および絶縁底部477は、周方向に沿って一様な断面形状を有する。本変形例の絶縁底部477は、保持底部467の溝部467bを軸方向他方側(-Y側)から覆う。このため、溝部467bを通過するオイルOが、溝部467bから漏れ出すことを抑制できる。
【0103】
本変形例によれば、第1経路98と第2経路499とは、繋がって配置される。オイルOは、第1経路98を通って、保持筒部66の径方向内側に達する。さらに、オイルOは、第2経路499を通過して絶縁筒部476の径方向内側に達し、ベアリングに供給される。このように、第2経路499は、第1経路98とベアリングとを繋ぐ。本変形例によれば、第1経路98と第2経路499とを通して、ベアリングにオイルOを効果的に供給できる。
【0104】
(変形例5)
図11は、変形例5のベアリング保持部565および当該ベアリング保持部565に装着される絶縁部材470の断面図である。本変形例において、絶縁部材470は、変形例4のものと同様の構成を有するため、その説明を省略する。
上述の実施形態と同様に、ベアリング保持部565は、保持筒部66と保持底部567とを有する。本変形例の保持筒部66は、上述の実施形態と同様の構成を有する。保持筒部66には、切欠状の貫通部66aが設けられる。上述の実施形態と同様に、オイルOが通過する第1経路98は、保持筒部66に設けられる切欠状の貫通部66aの内部に配置される。
【0105】
本変形例の保持底部567は、保持底面567aと対向底面567dと溝部567bとを有する。保持底面567aおよび対向底面567dは、軸方向他方側(+Y側)を向く。保持底面567aおよび対向底面567dは、それぞれ一様な径方向幅で周方向に沿って延びる。対向底面567dは、保持底面567aに対し径方向内側かつ軸方向一方側(+Y側)に位置する。したがって、保持底面567aと対向底面567dとは、径方向内側に向かうに従い軸方向一方側(+Y側)に位置する階段状に配置される。保持底面567aは、絶縁部材470に接触する。保持底面567aは、絶縁部材470の絶縁底部477を軸方向一方側から支持する。一方で、対向底面567dは、絶縁底部477と接触しない。対向底面567dは、絶縁底部477と軸方向に隙間Sを介して対向して配置される。
【0106】
溝部567bは、保持底面567aに設けられる。溝部567bは、径方向に沿って延びる。溝部567bの底面は、対向底面567dに連なる。溝部567bの径方向外側の端部は、貫通部66aに繋がる。また、溝部567bの径方向内側の端部は、対向底面567dと絶縁底部477との間の隙間Sに繋がる。
【0107】
本変形例によれば、オイルOが通過する第2経路599は、溝部567bと絶縁底部477の間、および対向底面567dと絶縁底部477の間(すなわち、隙間S)に配置される。第1経路98と第2経路599とは、繋がって配置される。オイルOは、第1経路98を通って、溝部567b内に達する。さらに、オイルOは、溝部567b内のおよび隙間S内の第2経路599を通過してベアリング16に供給される。このように、第2経路599は、第1経路98とベアリング16とを繋ぐ。本変形例によれば、第1経路98と第2経路599とを通して、ベアリング16にオイルOを効果的に供給できる。
【0108】
(変形例6)
図12は、変形例6の絶縁部材670および、当該絶縁部材670が装着されるベアリング保持部165の斜視図である。本変形例のベアリング保持部165は、変形例1と同等の構成を有する。すなわち、ベアリング保持部165は、貫通部66aが設けられる保持筒部66と、周方向に沿って一様な断面形状を有する保持底部667とを有する。オイルOが通過する第1経路98は、貫通部66aの内部に配置される。
【0109】
上述の実施形態と同様に、絶縁部材670は、絶縁筒部676と絶縁底部677とを有するカップ状である。絶縁筒部676は、モータ軸線J2を中心とする円筒状である。絶縁筒部676は、保持筒部66に沿って軸方向に延びる。絶縁底部677は、絶縁筒部676の軸方向一方側(+Y側)の端部に位置する。絶縁底部677は、保持底部667に沿って径方向に延びる。
【0110】
絶縁筒部676には、径方向に貫通する絶縁貫通部676aが設けられる。絶縁貫通部676aは、径方向から見て貫通部66aに重なる。したがって、絶縁貫通部676aは、第1経路98を通過したオイルO流入する。すなわち、絶縁貫通部676aの内部には、第2経路699が配置される。
【0111】
なお、本変形例の絶縁貫通部676aは、径方向から見て円形の孔部である。しかしながら、絶縁貫通部676aは、絶縁筒部676を径方向に貫通するものであれば本変形例の構成に限定されず、例えば絶縁筒部676の軸方向他方側(-Y側)の端部で開口する切欠状であってもよい。
【0112】
第1経路98と第2経路699とは、繋がって配置される。オイルOは、第1経路98を通って、保持筒部66の径方向内側に達する。さらに、オイルOは、第2経路699を通過して絶縁筒部676の径方向内側に達し、ベアリングに供給される。このように、第2経路699は、第1経路98とベアリングとを繋ぐ。本変形例によれば、第1経路98と第2経路699とを通して、ベアリングにオイルOを効果的に供給できる。
【0113】
(変形例7)
図13は、変形例7の絶縁部材770およびベアリング保持部765の斜視図である。
上述の実施形態と同様に、ベアリング保持部765は、保持筒部66と保持底部767とを有する。本変形例の保持筒部66は、上述の実施形態と同様の構成を有する。保持筒部66には、切欠状の貫通部66aが設けられる。上述の実施形態と同様に、オイルOが通過する第1経路98は、保持筒部66に設けられる切欠状の貫通部66aの内部に配置される。
【0114】
本変形例の保持底部767は、保持底面767aと段部767cとを有する。保持底面767aは、保持底部767の軸方向他方側(-Y側)を向く面である。段部767cは、保持底面767aから軸方向他方側(-Y側)に突出する。段部767cは、保持底面767aの径方向全幅に設けられる。
【0115】
上述の実施形態と同様に、絶縁部材770は、絶縁筒部776と絶縁底部777とを有する。絶縁部材770は、絶縁筒部776および絶縁底部777に連なる切れ目部776a、777aが設けられるC字状である。すなわち、絶縁筒部776の切れ目部(以下、第1切れ目部776a)と、絶縁底部777の切れ目部(第2切れ目部777a)とは、互いに繋がっている。
【0116】
絶縁底部777の第2切れ目部777aには、保持底部767の段部767cが嵌る。これにより、絶縁部材770は、ベアリング保持部765に対する回転が抑制される。すなわち、段部767cは、絶縁部材770の周り止めとして機能する。
【0117】
絶縁筒部776の第1切れ目部776aは、径方向において保持筒部66の貫通部66aに重なる。したがって、オイルOが通過する第2経路799は、第1切れ目部776aの内部に配置される。
【0118】
第1経路98と第2経路799とは、繋がって配置される。オイルOは、第1経路98を通って、保持筒部66の径方向内側に達する。さらに、オイルOは、第1切れ目部776a内の第2経路799を通過して絶縁筒部776の径方向内側に達し、ベアリングに供給される。このように、第2経路799は、第1経路98とベアリングとを繋ぐ。本変形例によれば、第1経路98と第2経路799とを通して、ベアリングにオイルOを効果的に供給できる。
【0119】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0120】
1…駆動装置、2…モータ、3…動力伝達機構、6…ハウジング、9…除電装置、16,16A…ベアリング、21…モータシャフト、62…第1壁部(壁部)、62a…第1の開口部(開口部)、62b…第2の開口部(開口部)、64…第2壁部(壁部)、65,65A,165,265,365,465,565,765…ベアリング保持部、66…保持筒部、66a…貫通部、67,167,267,367,467,567,667,767…保持底部、67a,267a,367a,467a,567a,767a…保持底面、67b,267b,367b,467b,567b…溝部、67c…第1の段部(段部)、67e…第2の段部(段部)、70,70A,170,470,670,770…絶縁部材、76,176,476,676,776…絶縁筒部、77,177,477,677,777…絶縁底部、77a…第1スリット(スリット)、77e…第2スリット(スリット)、90…油路、94…ガイド経路、95…供給管(オイル供給部)、95a…吐出孔、98…第1経路、99,199,299,399,499,599,699,799…第2経路、177a…スリット、367c,767c…段部、567d…対向底面、676a…絶縁貫通部、776a,777a…切れ目部、d1,d2,d3,d4…寸法、J,J2…モータ軸線、O…オイル