(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040746
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】合成スラブ及びプレート部材
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
E04B5/40 G
E04B5/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147892
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堂地 利弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 正人
(72)【発明者】
【氏名】畑 武志
(72)【発明者】
【氏名】中川 治彦
(57)【要約】
【課題】施工の手間を増やすことなく、かつ階高を低くする合成スラブ及びプレート部材を提供する。
【解決手段】合成スラブ20は、デッキプレート21と、このデッキプレート21の上に形成されたコンクリート26とを備える。デッキプレート21は、X方向の縦断面が凹凸形状となるように上フランジ32及び下フランジ31を有する。X方向に直交するY方向に延在しデッキプレート21を支持する大梁11の上面に上フランジ32の下面が当接する高さとなるように、デッキプレート21を配置する。デッキプレート21におけるY方向の端部には、下フランジ31に続く上フランジ32と同じ高さの上面縁部が設けられている。大梁11と異なる方向に延在する大梁12と、大梁11とが同じ高さとなるように、上面縁部が大梁12に載置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上フランジ、下フランジ及びこれらを繋ぐ接続部により第1方向に凹凸形状の縦断面を有するデッキプレートと、このデッキプレートに一体で形成されたコンクリートとを備える合成スラブであって、
前記デッキプレートは、
前記下フランジの上面において、上方に突出した鍵溝が形成され、
前記第1方向に直交する第2方向の端部において、前記下フランジから傾斜部を介して接続された上面縁部を有し、
前記上面縁部は、前記上フランジと同じ高さであり、
第1梁に前記上フランジを載置させ、かつ前記第1梁と異なる方向に延在する第2梁に前記上面縁部を載置させることにより、前記デッキプレートが前記第1梁及び前記第2梁に架け渡されていることを特徴とする合成スラブ。
【請求項2】
上フランジ、下フランジ及びこれらを繋ぐ接続部により第1方向に凹凸形状の縦断面を有するデッキプレートと、このデッキプレートに一体で形成されたコンクリートとを備える合成スラブであって、
前記デッキプレートは、前記下フランジの上面において、上方に突出した鍵溝が形成され、
前記上フランジを第1梁に載置させ、かつ前記第1梁と異なる方向に延在する第2梁に固定されたデッキ受け材に前記下フランジを載置させることにより、前記デッキプレートが前記第1梁及び前記第2梁に架け渡され、
前記デッキ受け材は、前記第2梁の上フランジから、前記デッキプレートの前記上フランジと前記下フランジとの高さ分を下げた位置で、前記第2梁に固定されていることを特徴とする合成スラブ。
【請求項3】
合成スラブのデッキプレートを構成するプレート部材であって、
上フランジ、下フランジ及びこれらを繋ぐ接続部により第1方向に凹凸形状の縦断面を有し、
前記第1方向に直交する第2方向の端部において、前記下フランジから傾斜部を介して接続された上面縁部を有し、
前記上面縁部は、前記上フランジと同じ高さであり、
前記下フランジの上面には、上方に突出した鍵溝が形成されていることを特徴とするプレート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁の上に架け渡して構成される合成スラブ及びプレート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の床スラブとして、大梁に架け渡したデッキプレートの上にコンクリートを打設した合成スラブが用いられている。このデッキプレートには、凹凸形状となるように上フランジ及び下フランジを有するプレート部材が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。この文献においては、端部閉塞デッキプレートを梁間に掛け渡して敷設する際に、デッキプレートとデッキプレート幅方向の梁との間の隙間に、中間部用幅調整板とともに端部用幅調整板を配置する。
【0003】
従来、
図14に示すように、床スラブ90を構成する合成スラブ92は、デッキプレート95の上にコンクリート96が打設されている。ここで、デッキプレート95は、大梁91の上に端部が載置されることにより、大梁間に架け渡される。このため、通常、大梁91は、合成スラブ92の凹凸形状の断面において下に突出した位置(デッキプレート95の下フランジの下面)で、合成スラブ92を支持する。そして、このような合成スラブを用いた建物の階高を低くすることが検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載の合成スラブ構築工法では、梁の上側部分を包む込む状態でコンクリートを打設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-177512号公報
【特許文献2】特開昭55-114742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の合成スラブ構築工法では、梁の上をコンクリートに埋設させているので、梁を挿入した部分からのコンクリートの漏洩の抑制等のための施工を行なう必要があり、手間が掛かっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する合成スラブは、上フランジ、下フランジ及びこれらを繋ぐ接続部により第1方向に凹凸形状の縦断面を有するデッキプレートと、このデッキプレートに一体で形成されたコンクリートとを備える合成スラブであって、前記デッキプレートは、前記下フランジの上面において、上方に突出した鍵溝が形成され、前記第1方向に直交する第2方向の端部において、前記下フランジから傾斜部を介して接続された上面縁部を有し、前記上面縁部は、前記上フランジと同じ高さであり、第1梁に前記上フランジを載置させ、かつ前記第1梁と異なる方向に延在する第2梁に前記上面縁部を載置させることにより、前記デッキプレートが前記第1梁及び前記第2梁に架け渡されている。
【0007】
また、上記課題を解決する合成スラブは、上フランジ、下フランジ及びこれらを繋ぐ接続部により第1方向に凹凸形状の縦断面を有するデッキプレートと、このデッキプレートに一体で形成されたコンクリートとを備える合成スラブであって、前記デッキプレートは、前記下フランジの上面において、上方に突出した鍵溝が形成され、前記上フランジを第1梁に載置させ、かつ前記第1梁と異なる方向に延在する第2梁に固定されたデッキ受け材に前記下フランジを載置させることにより、前記デッキプレートが前記第1梁及び前記第2梁に架け渡され、前記デッキ受け材は、前記第2梁の上フランジから、前記デッキプレートの前記上フランジと前記下フランジとの高さ分を下げた位置で、前記第2梁に固定されている。
【0008】
更に、上記課題を解決するプレート部材は、合成スラブのデッキプレートを構成するプレート部材であって、上フランジ、下フランジ及びこれらを繋ぐ接続部により第1方向に凹凸形状の縦断面を有し、前記第1方向に直交する第2方向の端部において、前記下フランジから傾斜部を介して接続された上面縁部を有し、前記上面縁部は、前記上フランジと同じ高さであり、前記下フランジの上面には、上方に突出した鍵溝が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施工の手間を増やすことなく、階高を低く又は天井高さを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における建物の床構造の正面断面図である。
【
図2】実施形態における合成スラブの要部を説明する拡大正面断面図である。
【
図3】実施形態における合成スラブの要部を説明する拡大側面断面図である。
【
図4】実施形態における合成スラブを構成するデッキプレートと大梁との関係を示す斜視図である。
【
図5】実施形態におけるデッキプレートに用いられるプレート部材を説明する断面図である。
【
図6】実施形態におけるプレート部材を説明する斜視図である。
【
図7】実施形態におけるプレート部材の端部を説明する拡大上面図である。
【
図8】実施形態におけるデッキプレートに用いられる調整板を説明する断面図である。
【
図9】実施形態における合成スラブに用いる役物を説明する斜視図である。
【
図10】実施形態における役物と梁との関係を説明する説明図である。
【
図11】第1変更例における合成スラブの構成を説明する説明図である。
【
図12】第2変更例における合成スラブの構成を説明する説明図である。
【
図13】第3変更例における合成スラブの構成を説明する説明図である。
【
図14】従来技術の合成スラブを用いた床構造の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図10を用いて、大梁の上に架け渡して構成される合成スラブ及びプレート部材を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の床スラブ10は、複数の大梁11の上フランジ11fに合成スラブ20が当接して配置されている。第1梁としての大梁11は、H形鋼で構成される。大梁11は、耐火被覆材16で覆われている。本実施形態では、床スラブ10は、大梁11,12に連結された小梁17の上にも載置されている。なお、合成スラブ20の上には床仕上げ材18が敷設されており、大梁11の下には、下層階の天井材19が配置されている。
【0012】
(合成スラブ20の構成)
図2及び
図3は、大梁11と合成スラブ20との要部を示す正面断面図及び側面断面図である。
図2は、第1方向となるX方向に沿った断面正面図であり、
図3は、X方向と直交する第2方向となるY方向に沿った縦断面図である。ここで、合成スラブ20の下面は、大梁11の幅方向のX方向において、凹凸形状(波形状)を有する。
【0013】
図4は、コンクリート26の打設前に、プレート部材30、調整板40及び役物50を、直交する大梁11,12に架け渡した状態の斜視図である。ここで、第2梁としての大梁12も、大梁11と同様に、H形鋼で構成される。なお、
図2~
図4において、耐火被覆材16、小梁17、床仕上げ材18及び天井材19については図示を省略している。
【0014】
図2及び
図3に示すように、合成スラブ20は、凹凸形状のデッキプレート21と、コンクリート26とを備える。コンクリート26は、デッキプレート21の上方において、デッキプレート21と一体となって形成される。コンクリート26の下面は、デッキプレート21の形状に沿って断面が凹凸形状で形成される。コンクリート26は、従来と同じ厚みで形成される。
【0015】
図4に示すように、デッキプレート21は、複数のプレート部材30、調整板40及び役物50を備える。調整板40は、デッキプレート21の幅方向の長さを調整するための部材であって、プレート部材30の幅方向で大梁11との間に配置され、プレート部材30と一体化されている。役物50は、柱(図示せず)近傍のデッキプレート21の角に配置される。そして、役物50は、プレート部材30及び調整板40と係合する。プレート部材30、調整板40及び役物50の詳細は後述する。
【0016】
図2及び
図3に示すように、大梁11,12の上フランジ11f,12fの上面には複数のスタッドボルト15が設けられている。この複数のスタッドボルト15は、コンクリート26内に埋設される。本実施形態では、コンクリート26の厚みに応じて、スタッドボルト15から所定のかぶり厚(例えば30mm)を確保できる大きさのスタッドボルト15を、3本並べて用いる。
また、コンクリート26内には、ひび割れ防止筋25が埋設される。このひび割れ防止筋25は、格子状の鉄筋で構成されている。
【0017】
(プレート部材30の構成)
図5は、プレート部材30の幅方向(X方向)に沿って切断した断面図である。
図6は、プレート部材30の斜視図であり、
図7は、プレート部材30の延在方向の端部を拡大した平面図である。
【0018】
図5及び
図6に示すように、本実施形態のプレート部材30は、凹凸形状を有し、下フランジ(谷部)31と、2つの上フランジ(山部)32と、これらの端部を傾斜によって接続する接続部33とを有する。プレート部材30において、下フランジ31から上フランジ32までの高さは、例えば75mmである。下フランジ31には、上に突出する鍵溝31aが設けられている。この鍵溝31aは、接合部が上部よりも細く上部が膨らんだ形状を有し、コンクリート26がデッキプレート21と一体化するために設けられている。また、上フランジ32には、下に突出する断面がV形状のリブ32rが設けられている。鍵溝31a及びリブ32rは、プレート部材30の延在方向(Y方向)に延在して設けられる。
【0019】
プレート部材30の幅方向の両端部には、それぞれ、下フランジ31において内側係合端部34aと、外側係合端部34bとが設けられている。プレート部材30の内側係合端部34aに、他のプレート部材30の外側係合端部34bを覆うように引っ掛けて係合させることにより、複数のプレート部材30を一体化してX方向に並べることができる。
【0020】
図4及び
図6に示すように、プレート部材30の長手方向(Y方向)の端部は同じ構成を有している。下フランジ31のY方向の端部には、上フランジ32の高さと面一となる上面縁部31bと、この上面縁部31bと下フランジ31とを傾斜により接続する傾斜面部31sとが設けられている。なお、内側係合端部34a及び外側係合端部34bのY方向の端部は、下フランジ31と同様に、上面端部及び傾斜面部34as,34bsが設けられている。
【0021】
図6及び
図7に示すように、下フランジ31の端部に位置する上面縁部31bには、複数の突条部31eが設けられている。突条部31eは、上面縁部31bにおいて、プレート部材30の長手方向に延在し、下に突出して設けられている。また、上フランジ32の端部には、上に突出する複数のリブ32eが設けられている。リブ32eは、上面縁部31bから傾斜面部31sに対応する位置に設けられている。
なお、従来の端部閉塞型(エンドクローズ型)のプレート部材を、上下逆にした場合、下フランジに位置する鍵溝がコンクリート側の反対側(下方)に突出する。ここで、従来のエンドクローズ型のプレート部材とは、上フランジの端部が傾斜して下フランジと同じ高さの平面部を備えたプレート部材である。本実施形態のプレート部材30は、鍵溝31aの形成方向が従来のエンドクローズ型のプレート部材の鍵溝とは逆方向となる。従って、プレート部材30は、従来のエンドクローズ型のプレート部材を、単に上下逆にして使用したものではない。
【0022】
(調整板40の構成)
図8には、プレート部材30と大梁11との間に設けられた調整板40の断面図を示す。この調整板40は、この断面形状が端部まで続く長尺物であって、下面部41、傾斜部42及び上面部43を備える。下面部41及び上面部43は、プレート部材30の下フランジ31及び上フランジ32と、それぞれ面一となる高さで構成される。傾斜部42は、下面部41の長手方向の一端部と上面部43の長手方向の一端部とを傾斜面で接続する。下面部41の端部には、プレート部材30の内側係合端部34aと同様な形状を有した係合端部41aが設けられている。この係合端部41aは、プレート部材30の外側係合端部34bと係合可能に構成されている。
図2に示すように、本実施形態では、調整板40の上面部43が大梁11の上に載置される。更に、調整板40の係合端部41aが、プレート部材30の外側係合端部34bに内嵌されて、調整板40とプレート部材30とが一体化される。
【0023】
(役物50の構成)
図9には、大梁11の端部と大梁12の端部とに設けられる役物50の斜視図を示す。この役物50は、略長方形状の上面部51と、側縁部53とを備える。側縁部53は、上面部51の長手方向の一方の端部に設けられる。なお、役物50は、配置する位置(大梁11,12の位置関係)に応じて、側縁部53や後述する切欠き52の位置が異なる。
【0024】
図10は、役物50と大梁11,12との位置関係を説明する説明図である。役物50の上面部51の下面は、大梁11,12の上フランジ11f,12fの上面に当接する。また、役物50の上面部51には、柱(図示せず)に対応する部分に切欠き52が形成されている。
【0025】
図9に示すように、役物50の側縁部53は、上面側縁部53a、下面側縁部53b及び傾斜側縁部53sを備える。上面側縁部53aは、上面部51と同じ高さであって、上面部51と続いている。傾斜側縁部53sは、上面側縁部53aと下面側縁部53bとを傾斜面で接続する。
また、役物50は、接続面部54を備える。この接続面部54は、下面側縁部53bの端部と上面部51との端部を略垂直面で接続する。
【0026】
更に、役物50の上面部51には、上面側縁部53a側の端部に、上に突出した丘形状の突出部55が設けられている。この突出部55は、直方体形状のブロックにおいて下が開口し、短手方向の辺が傾斜した形状を有し、上面部51に一体的に形成される。この突出部55は、上方に形成されるコンクリート26と一体化するために設けられている。
【0027】
(床スラブ10の施工方法)
次に、上述した合成スラブ20の施工方法について説明する。
図4に示すように、建物の柱(図示せず)に大梁11,12を固定する。そして、デッキプレート21を組み立てて、大梁11,12間に架け渡す。このデッキプレート21を架け渡す前に、デッキプレートの下に小梁17を設けてもよい。
【0028】
デッキプレート21の組み立てにおいては、プレート部材30を幅方向に並べる。この場合、プレート部材30の内側係合端部34aに、隣接するプレート部材30の外側係合端部34bを覆うように引っ掛けることにより、複数のプレート部材30を一体化した状態でX方向に並べる。
【0029】
更に、プレート部材30と大梁11との間に調整板40を配置する。この場合、調整板40の下面部41の係合端部41aを、プレート部材30の外側係合端部34bに係合させるとともに、調整板40の上面部43を大梁11の上フランジ11fに載置させる。
【0030】
そして、大梁11の端部及び大梁12の端部が突き合う角に、役物50を配置する。この場合、切欠き52を柱の位置に合わせる。また、役物50を、調整板40及びプレート部材30と係合させる。
次に、上述のようにして組み立てが完了したデッキプレート21の上方に、ひび割れ防止筋25を配置する。更に、大梁11,12の上にスタッドボルト15を配置する。そして、大梁11,12の上にコンクリート止めを配置した後、コンクリート26を打設する。その後、大梁11,12に耐火被覆材16を施し、床仕上げ材18や天井材19を配置する。以上により、
図1に示す床スラブ10が完成する。
【0031】
(作用)
本実施形態では、大梁11,12が、合成スラブ20のデッキプレート21の上フランジ32の高さで支持するように、大梁11,12の上にデッキプレート21の端部を載置する。これにより、デッキプレート21の上フランジ32の位置(高さ)で、大梁11,12が合成スラブ20を支持することができる。
【0032】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、大梁11,12が、合成スラブ20のデッキプレート21の上フランジ32で支持するように、大梁11,12間にデッキプレート21を架け渡す。これにより、大梁11,12は、デッキプレート21の下フランジ31よりも高い位置で、デッキプレート21を支持できるので、大梁11,12に対する合成スラブ20の上面位置の高さを低くすることができる。従って、天井から床までを短くできるので、階高を低くしたり天井高さを高くしたりすることができる。また、従来のデッキプレートを用いた合成スラブと同様な手間で施工することができる。
【0033】
(2)本実施形態では、デッキプレート21を構成するプレート部材30は、下フランジ31の端部において上フランジ32と同じ高さの上面縁部31bを有する。このため、この上面縁部31bを大梁12に載置することにより、大梁12は、デッキプレート21の上フランジ32の高さで、デッキプレート21を支持することができる。また、プレート部材30には、上に突出する鍵溝31aが設けられているため、プレート部材30とコンクリート26とを一体化して、合成スラブ20の剛性を確保することができる。
【0034】
(3)本実施形態では、プレート部材30の端部には、下に突出した突条部31e及び上に突出したリブ32eを有する。これら突条部31e及びリブ32eがない場合には、この部分にコンクリートの波が生じて、コンクリート26との密着性が悪くなる。そこで、突条部31e及びリブ32eを設けることにより、コンクリート26の打設時の腰折れの抑制及びコンクリート26のノロ漏れを抑制することができる。結果として、合成スラブ20の強度を高くするとともに、合成スラブ20の表面を滑らかにすることができる。
【0035】
(4)本実施形態では、プレート部材30の幅方向において、大梁11とプレート部材30との間には、調整板40が設けられている。この調整板40は、プレート部材30の下フランジ31の外側係合端部34bに係合する係合端部41aを有する下面部41と、プレート部材30の上フランジ32の高さと同じ高さの上面部43とを備える。これにより、調整板40を用いて、大梁11と、一体化した複数のプレート部材30との間隔を調整することができる。
【0036】
(5)本実施形態では、大梁11,12の端部が突き合う位置に役物50を配置する。これにより、断面形状と同じ端部を有する調整板40を用いた場合であっても、大梁11,12の角におけるノロ漏れ等を抑制しながら、コンクリート26を打設することができる。
【0037】
(6)本実施形態では、デッキプレート21のコンクリート26の厚さは従来と同じにする。そして、大梁11,12は、上フランジ32の高さでデッキプレート21を支持する。このため、大梁11,12の上には、かぶり厚を確保できる小さいスタッドボルト15を配置する。これにより、スタッドボルト15を小さくしても、コンクリート26と大梁11,12とを一体化することができる。
【0038】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、合成スラブ20のデッキプレート21には、プレート部材30を用いた。このプレート部材30は、下フランジ31の延在方向(Y方向)の端部において、上フランジ32と同じ高さの上面縁部31bを有する。このようなプレート部材30の代わりに、凹凸形状の断面が両端部まで続く(エンドクローズ型ではない)プレート部材を用いてもよい。
【0039】
図11に示すように、プレート部材65を用いたデッキプレートで構成した合成スラブ60としてもよい。プレート部材65は、両端部まで
図5に示すような凹凸形状の断面を有した長尺物であって、上フランジ65a及び下フランジ65bを有する。そして、合成スラブ60を支持する大梁12の上フランジ12fの側面に、デッキ受け材62を溶接する。このデッキ受け材62は、例えば、断面がL型のアングル(山形鋼)で構成される。この場合、デッキ受け材62の水平面が、大梁12の上フランジ12fから、プレート部材65の上フランジ65aと下フランジ65bとの高さ分を下げた位置となるように、デッキ受け材62は大梁12に固定される。その結果、デッキ受け材62にプレート部材65を載置すると、大梁12の上フランジ12fの上面がプレート部材65の上フランジ65aの下面と当接する高さとなる。更に、デッキ受け材62の鉛直面に、プレート部材65の端部を密着させる。隙間がある場合には、コンクリート止めを設ける。そして、ひび割れ防止筋25を配置した後、コンクリート66を打設する。このような構成の合成スラブ60を、大梁12は、デッキプレートの上フランジ65aの高さで支持することができる。
【0040】
また、いわゆる従来のエンドクローズ型のプレート部材を用いて、デッキプレートを構成してもよい。このエンドクローズ型のプレート部材は、上フランジのY方向の端部が、下フランジと同じ高さの下面端部となっている。
【0041】
例えば、
図12に示すように、
図11のプレート部材65の代わりに、プレート部材68を用いた合成スラブ67としてもよい。この合成スラブ67は、大梁12に設けたデッキ受け材62の上に、プレート部材68を載置する。このプレート部材68は、上フランジ68aのY方向の端部が、下フランジ68bと同じ高さの下面端部68abとなっている。そして、この下面端部68abは、上フランジ68aと、傾斜面部68sを介して接続されている。なお、デッキ受け材62は、水平部の端部に、プレート部材68の下フランジ68bの端部を載置した際に、大梁12の上フランジ12fの上面がプレート部材68の上フランジ68aの下面と同じ高さになるように、大梁12に固定される。加えて、コンクリート66内において、デッキ受け材62の上面に、スタッドボルトを立設してもよい。
【0042】
また、
図13に示すように、プレート部材71を用いたデッキプレートで構成した合成スラブ70としてもよい。このプレート部材71は、上フランジ71aの延在方向の端部において、下面部71ab及び傾斜面部71sを備える。下面部71abは、下フランジ71bと同じ高さの水面を構成する。傾斜面部71sは、下面部71abと上フランジ71aとを傾斜により接続する。
【0043】
また、合成スラブ70を支持する大梁12のウェブ12wに、デッキ受け材75及びスチフナ76を溶接する。デッキ受け材75は、大梁12の延在方向に延在する板部材であって、ウェブ12wから水平方向に突出する。デッキ受け材75は、上面でプレート部材71を支持した際に、プレート部材71の上フランジ71aの下面が、大梁12の上面の高さとなる位置に設ける。スチフナ76は、デッキ受け材75の下面に当接して設けられており、デッキ受け材75を補強する。
【0044】
そして、デッキ受け材75で、プレート部材71の端部を支持する。更に、デッキ受け材75の外側(ウェブ12wとは反対側)の端部に、スタッドボルト77を配置する。更に、ひび割れ防止筋25及びコンクリート止めを配置した後、プレート部材71及びデッキ受け材75の上方にコンクリート打設を行なってコンクリート78を形成する。これにより、プレート部材71を用いたデッキプレート及びコンクリート78で構成された合成スラブ70が完成する。従って、この合成スラブ70を、大梁12は、デッキプレートの上フランジ71aの高さで支持することができる。
【0045】
・上記実施形態では、デッキプレート21を構成するプレート部材30の上面に形成された突条部31e及びリブ32eは、プレート部材30の延在方向に延在する形状を有する。プレート部材30のY方向の端部に形成された突条部31e及びリブ32eは、これらの形状に限定されない。コンクリートの波が発生せずに、コンクリート26の打設時の腰折れの抑制及びコンクリート26のノロ漏れを抑制することができる形状であればよい。例えば、プレート部材30の延在方向に複数に分割して構成される突条部やリブであってもよい。
【0046】
・上記実施形態では、プレート部材30は、下フランジ31の両側に2つの上フランジ32を備える。デッキプレート21を構成するプレート部材30は、この形状に限定されない。例えば、1つの上フランジ32と両側の下フランジ31を備えた形状のプレート部材を用いてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、プレート部材30と大梁12との間には、調整板40と役物50とを配置した。デッキプレート21と大梁11,12との大きさによっては、プレート部材30のX方向の端部に調整板40の形状を設けることにより調整板40を省略したり、役物50の形状を端部に設けた調整板を用いたり、これらの寸法を適宜変更したりしてもよい。更に、役物50は、上述した形状に限られず、上に突出した突出部55を省略してもよいし、この突出部を複数設けてもよい。
【0048】
・上記実施形態においては、合成スラブ20が支持される大梁11,12は、直交する方向に配置した。合成スラブ20を支持する大梁11,12は、直交する場合に限られず、例えば、一方の梁が他方の梁に対して異なる方向(例えば、斜め方向)に配置された構造に適用できる。
【0049】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記デッキプレートは、前記第1方向に直交する第2方向の端部において、前記上フランジから傾斜部を介して接続された下面縁部を有することを特徴とする請求項2に記載の合成スラブ。
(b)前記デッキプレートは、複数のプレート部材と、前記プレート部材と第1梁との間に配置される調整板とを備え、
前記調整板は、前記第1梁の上面に載置する上面部と、前記下フランジに係合する下面端部と、前記上面部と前記下面端部とを連通する接続部とを有することを特徴とする請求項1、2又は前記(a)に記載の合成スラブ。
(c)上フランジ、下フランジ及びこれらを繋ぐ接続部により第1方向に凹凸形状の縦断面を有するデッキプレートと、このデッキプレートに一体で形成されたコンクリートとを備える合成スラブに用いられ、前記デッキプレートを架け渡す第1梁の端部及び第2梁の端部に設ける役物であって、
前記第1梁の上フランジの上面及び前記第2梁の上フランジの上面に当接する上面部と、
前記上面部の長手方向の一方の端部に設けられた側縁部とを備え、
前記側縁部は、前記上面部と同じ高さの上面側縁部と、前記下フランジの高さに対応する下面側縁部と、前記上面側縁部と前記下面側縁部とを接続する傾斜側縁部を備え、
前記上面部の端部と、前記下面側縁部の端部及び前記傾斜側縁部の端部とに接続する接続面部を更に有したことを特徴とする役物。
【符号の説明】
【0050】
10…床スラブ、11,12…大梁、11f,12f…大梁の上フランジ、12w…大梁のウェブ、15,77…スタッドボルト、16…耐火被覆材、17…小梁、18…床仕上げ材、19…天井材、20,60,67,70…合成スラブ、21…デッキプレート、25…ひび割れ防止筋、26,66,78…コンクリート、30,65,68,71…プレート部材、31,65b,68b,71b…下フランジ、31a…鍵溝、31b…上面縁部、31e…突条部、31s,34as,34bs,68s,71s…傾斜面部、32,65a,68a,71a…プレート部材の上フランジ、32e,32r…リブ、33…接続部、34a…内側係合端部、34b…外側係合端部、40…調整板、41,71ab…下面部、41a…係合端部、42…傾斜部、43,51…上面部、50…役物、52…切欠き、53…側縁部、53a…上面側縁部、53b…下面側縁部、53s…傾斜側縁部、54…接続面部、55…突出部、62,75…デッキ受け材、68ab…下面端部、76…スチフナ。