(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004076
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】腰用サポーター
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
A61F5/01 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105560
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】399063323
【氏名又は名称】株式会社新生
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 健司
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB05
4C098BC02
4C098BC11
4C098BC34
4C098BD02
(57)【要約】
【課題】この腰用サポーターによれば、真っ直ぐな姿勢をより効果的に実現することを可能とする腰用サポーターを提供する。
【解決手段】この腰用サポーター100は、使用者の仙骨を含む腰部に当接される腰部支持パッド110と、腰部支持パッド110の一方側部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の一方の膝に係合される第1環状ストラップ121と、腰部支持パッド110の他方側部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の他方の膝に係合される第2環状ストラップ121とを備え、腰部支持パッド110は、使用者の仙骨に当接されるプレート部材140を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の仙骨を含む腰部に当接される腰部支持パッドと、
前記腰部支持パッドの一方側部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の一方の膝に係合される第1環状ストラップと、
前記腰部支持パッドの他方側部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の他方の膝に係合される第2環状ストラップと、を備え、
前記腰部支持パッドは、使用者の仙骨に当接されるプレート部材を有する、
腰用サポーター。
【請求項2】
前記腰部支持パッドは、
前記プレート部材を収容する袋状領域を含む、請求項1に記載の腰用サポーター。
【請求項3】
前記プレート部材は、上側から下側に向かって幅が徐々に狭くなる逆三角形形状を有し、
前記袋状領域は、前記プレート部材を収容可能なように、上側から下側に向かって幅が徐々に狭くなる逆三角形形状を有する、
請求項2に記載の腰用サポーター。
【請求項4】
前記プレート部材は、
前記使用者側に位置する第1プレートと、
前記第1プレートを挟んで前記使用者とは反対側に位置する第2プレートとを有し、
前記第1プレートは、前記第2プレートよりもクッション性に富んだ材料で成形されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の腰用サポーター。
【請求項5】
上下の長さ方向において、上からの長さが、前記第1プレートの方が前記第2プレートよりも短い、請求項4に記載の腰用サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腰用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の腰部を支持するベルトとして、例えば、特表2010-537747号公報(特許文献1)に開示される背部支持装置が挙げられる。この背部支持装置は、使用者の背部に当接させる背部支持部材と、この背部支持部材の両側に設けられ、それぞれ使用者の両膝に掛けられる膝ストラップとを備え、使用者の背部を支持する構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレワーク等の椅子に長時間座って作業する場合に、背骨が後方に向かって丸まり、猫背の状態で作業を行う結果、その不適切な姿勢を長時間維持することが、腰痛の一因になることが考えられる。上記特許文献1に開示される背部支持装置は、長時間にわたって真っ直ぐな姿勢で座ることを補助するために開発されたものであるが、真っ直ぐな姿勢をより効果的に実現できる腰用サポーターの開発が望まれるようになってきている。
【0005】
この発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、真っ直ぐな姿勢をより効果的に実現することを可能とする腰用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の腰用サポーターにおいては、使用者の仙骨を含む腰部に当接される腰部支持パッドと、上記腰部支持パッドの一方側部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の一方の膝に係合される第1環状ストラップと、上記腰部支持パッドの他方側部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の他方の膝に係合される第2環状ストラップとを備え、上記腰部支持パッドは、使用者の仙骨に当接されるプレート部材を有する。
【0007】
他の形態においては、上記腰部支持パッドは、上記プレート部材を収容する袋状領域を含む。
【0008】
他の形態においては、上記プレート部材は、上側から下側に向かって幅が徐々に狭くなる逆三角形形状を有し、上記袋状領域は、上記プレート部材を収容可能なように、上側から下側に向かって幅が徐々に狭くなる逆三角形形状を有する。
【0009】
他の形態においては、上記プレート部材は、上記使用者側に位置する第1プレートと、上記第1プレートを挟んで上記使用者とは反対側に位置する第2プレートとを有し、上記第1プレートは、上記第2プレートよりもクッション性に富んだ材料で成形されている。
【0010】
他の形態においては、上下の長さ方向において、上からの長さが、上記第1プレートの方が上記第2プレートよりも短い。
【発明の効果】
【0011】
この腰用サポーターによれば、真っ直ぐな姿勢をより効果的に実現することを可能とする腰用サポーターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態における腰用サポーターの内面図である。
【
図2】実施の形態における腰用サポーターの外面図である。
【
図3】
図2中のIII-III線矢視断面図である。
【
図4】実施の形態における腰部支持パッドに内装される第1支持パッドおよび第2支持パッドの斜視図である。
【
図5】他の実施の形態における腰部支持パッドに内装される第1支持パッドおよび第2支持パッドの斜視図である。
【
図6】実施の形態における腰用サポーターの使用者への装着状態を示す斜視図である。
【
図7】使用者の背中が丸まった状態を示す模式図である。
【
図8】使用者の背中が真っ直ぐに伸びた状態を示す模式図である。
【
図9】本実施の形態における腰用サポーターを使用者が使用した場合の効果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態における腰用サポーターについて、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。以下の説明においては、説明の便宜上、上下の文言を用いて位置関係を明示しているが、上下の配置が天地逆になる構成、および、左右に配置される構成を排除するものではな.い。
【0014】
図1および
図2を参照して、本実施の形態の腰用サポーター100の構造について説明する。
図1は、腰用サポーター100の内面図、
図2は腰用サポーター100の外面図である。ここで内面は使用者に接する面を意味し、外面は使用者に接しない面を意味する。
【0015】
この腰用サポーター100は、使用者の仙骨を含む腰部に当接される腰部支持パッド110と、この腰部支持パッド110の一方側(
図1において右側)部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の一方の膝に係合される第1環状ストラップ121と、腰部支持パッド110の他方側(
図1において左側)部から環状に取り付けられ、座位状態にある使用者の他方の膝に係合される第2環状ストラップ122とを備える。
【0016】
腰部支持パッド110は、中央部分に後述するプレート部材140を収容するための袋状領域112が設けられている。腰部支持パッド110は、全体として角部が丸められた矩形形状を有し、周囲には縁取り111が縫製されている。袋状領域112は、本実施の形態では逆三角形形状を有しているが、この形態に限定されるものではない。
【0017】
袋状領域112の両側には、メッシュ部材等を用いた通気性に富んだ周辺領域114が設けられている。袋状領域112と周辺領域114との間には、V字状に配置された帯状部113が設けられ、袋状領域112と周辺領域114とを区画している。
【0018】
第1環状ストラップ121および第2環状ストラップ122は、いずれも帯状部材の一端と他端とが、同じ側の腰部支持パッド110に固定され環状の形態を構成している。帯状部材には伸縮性のある部材が用いられることで、使用者の体型に応じた長さ調整機能を備えている。帯状部材の内側には、使用者の膝に掛けた際の滑り止めを施しておくことが好ましい。本実施の形態では、第1環状ストラップ121の内側に滑り止め領域121aが設けられ、同様に、第2環状ストラップ122の内側に滑り止め領域122aが設けられている。
【0019】
第1環状ストラップ121および第2環状ストラップ122には、使用者がこの腰用サポーター100を装着した際に左右の脚の間が広がることを抑制するための係合バックル131,132が設けられている。
【0020】
図3から
図5を参照して、プレート部材140の構成について説明する。
図3は、
図2中のIII-III線矢視断面図、
図4は、実施の形態における腰部支持パッドに内装される第1支持パッドおよび第2支持パッドの斜視図、
図5は、他の実施の形態における腰部支持パッドに内装される第1支持パッドおよび第2支持パッドの斜視図である。
【0021】
図3の断面図に示すように、袋状領域112には、プレート部材140が収容されている。プレート部材140は、使用者側(内側)に位置する第1プレート141と、この第1プレート141を挟んで使用者とは反対側(外側)に位置する第2プレート142とを有している。
【0022】
本実施の形態では、第1プレート141には、第2プレート142よりもクッション性に富んだ材料が用いらる。第1プレート141に用いられる材料は、発泡ウレタンやネオプレンゴムのようなクッション性があり復元性の高い素材が適している。その厚さ(t1)は、約5mm~15mmmm程度である。第2プレート142に用いられる材料は、ポリエチレンなどの硬度の高い板状で復元性も高い素材が適している。その厚さ(t2)は約1mm~5mm程度である。
【0023】
また、プレート部材140を上記2枚構成とすることで、1枚構成と比較して仙骨部へのプレート部材140よる圧力を高めることができる。その結果、感覚的にも仙骨部に刺激を与えることができ、両膝を用いた腰部(仙骨部)のサポートによる3点支持の効果をより高めることが可能となる。
【0024】
図4に示すように、第1プレート141および第2プレート142は同一の形態を有し、上側から下側に向かって幅が徐々に狭くなる逆三角形形状を有している。このように逆三角形形状を採用することで、同じく逆三角形形状を有する袋状領域112に第1プレート141および第2プレート142を収容した場合に、第1プレート141および第2プレート142の袋状領域112内での不要な移動を抑制し、第1プレート141および第2プレート142を位置決めさせる効果が得られる。
【0025】
図5に示すように、仙骨が当接する領域に位置する第1プレート141を、上下の長さ方向において、上からの長さを第2プレート142よりも短くすることも可能である。第1プレート141の長さを短くしても、袋状領域112に第1プレート141を挿入した際に、第1プレート141を上側の所定の位置に固定させることができる。
【0026】
次に、
図6から
図9を参照して、本実施の形態の腰用サポーター100の使用形態およびその作用効果について説明する。
図6は、腰用サポーター100の使用者1への装着状態を示す斜視図、
図7は、使用者の背中が丸まった状態を示す模式図、
図8は、使用者の背中が真っ直ぐに伸びた状態を示す模式図、
図9は、腰用サポーター100を使用者が使用した場合の効果を示す模式図である。
【0027】
腰用サポーター100の使用者1への装着に際しては、使用者1は椅子等に着席した座位の姿勢において、腰部支持パッド110を使用者1の腰部に当接させる。その際、プレート部材140の中間よりも上の領域が使用者の仙骨に当接するように位置調整を行なう。次に、第1環状ストラップ121を使用者1の左側の膝に固定するように掛ける。同様に、第2環状ストラップ122を使用者1の右側の膝に固定するように掛ける。その後、左右の係合バックル131,132を相互に係止する。
【0028】
ここで、
図7は、使用者の背中が丸まった状態を示す正しくない座位姿勢であり、「仙骨座り」といわれ、仙骨が後方へ倒れ腰椎が後弯して生理的前弯が消失し、姿勢が不安定となるため広背筋・脊柱起立筋といった姿勢保持筋への負担が高まることで、慢性的な腰痛の原因になるとされている(松尾庸平 (2016) 腰椎の解剖とキネマティクス The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine,53(10),770頁-773頁)。
【0029】
一方、
図8は、使用者の背中が真っ直ぐに伸びた状態の正しい座位姿勢であり、腰椎が生理的前弯を維持しているため、腰椎に加わる身体の荷重が広く分散し、安定した姿勢となっている。
【0030】
上述の「仙骨座り」は、腰痛の原因となるだけでなく、上肢機能(朝比奈彩子&臼倉京子(2020)、標準型車椅子上での仙骨座り姿勢が上肢機能に及ぼす影響、保健医療福祉科学,9,1-6)や、呼吸機能(武田広道、岡山裕美&大工谷新一(2014)、骨盤、脊柱アラインメントが胸郭可動性と呼吸機能に及ぼす影響、In理学療法学、Supplement、Vol.41、Suppl.No.2、(第49回日本理学療法学術大会、抄録集、0250頁、公益社団法人、日本理学療法士協会)が低下したり、臀部に加わる圧力が大きくなることから仙骨部への荷重が増えたりすることで、虚弱高齢者では褥瘡の原因になるといわれている(見木太郎、古町克郎&嶋村正(2013)、座位姿勢の変化と臀部にかかる力の研究、日本義肢装具学会誌29(3)168-174)。
【0031】
さらに、「仙骨座り」は、腰椎後弯だけでなく、脊柱全体を「円背」という状態に強いるため、身体機能の老化を促すこともわかっており、大きな健康問題となっている(宮崎純弥、村田伸、大田尾浩、堀江淳、村田潤&鈴木秀次(2009)、男性高齢者の矢状面脊柱アライメントと身体機能の関係、理学療法科学、24(6)、907-911/斐義浩、村田伸、大田尾浩、冨永浩一、松本武士、吉浦勇次&角典洋(2009)、地域在住女性高齢者の脊椎加齢変化と下肢筋力との関連、理学療法科学、24(1)、45-48)。
【0032】
本実施の形態の腰用サポーター100を装着した使用者1の状態は、「仙骨座り」に着目し、仙骨が後方に倒れることを防ぐため、
図9に示すように両膝に掛けた第1環状ストラップ121および第2環状ストラップ122と仙骨部にある腰部支持パッド110に設けられたプレート部材140との3点固定により、効果的に仙骨を直立させて、生理的前弯を維持することで、正しい座位姿勢を使用者に保持させることを可能としている。
【0033】
特に、仙骨部にあるプレート部材140は、仙骨部に圧を加えることで、使用者1に仙骨部を意識させることで、仙骨の直立に注意させ続けて正しい座位姿勢を維持させることが可能となる。
【0034】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
100 腰用サポーター、110 腰部支持パッド、111 縁取り、112 袋状領域、113 帯状部、114 周辺領域、121 第1環状ストラップ、121a,122a 滑り止め領域、122 第2環状ストラップ、131,132 係合バックル、140 プレート部材、141 第1プレート、142 第2プレート。