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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040827
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】ウェアラブル機器及び眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02C 1/00 20060101AFI20230315BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20230315BHJP
   G02C 7/06 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
G02C1/00
G02B3/14
G02C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148002
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】521079488
【氏名又は名称】ViXion株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】内海 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 茂
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006AA00
2H006AB00
2H006AC00
2H006BA00
2H006BD03
(57)【要約】
【課題】ウェアラブル機器が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフにし、ウェアラブル機器が装着状態になった時に電力供給を適切にオンにする。
【解決手段】装用者に対して着脱可能に装着されて使用される、電気部品10を搭載したウェアラブル機器1であって、前記電気部品に電力供給する電源部20と、当該ウェアラブル機器の装着時にとる装着時形態と当該ウェアラブル機器の非装着時にとる非装着時形態との間で形態が変化する形態変化部4,9と、前記形態変化部の形態変化により無給電状態で起電力を発生させる起電力発生部231,232と、前記起電力発生部が発生させた起電力を用いて、前記電源部から前記電気部品への電力供給をオン又はオフにする電源スイッチ部とを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者に対して着脱可能に装着されて使用される、電気部品を搭載したウェアラブル機器であって、
前記電気部品に電力供給する電源部と、
当該ウェアラブル機器の装着時にとる装着時形態と当該ウェアラブル機器の非装着時にとる非装着時形態との間で形態が変化する形態変化部と、
前記形態変化部の形態変化により無給電状態で起電力を発生させる起電力発生部と、
前記起電力発生部が発生させた起電力を用いて、前記電源部から前記電気部品への電力供給をオン又はオフにする電源スイッチ部とを有することを特徴とするウェアラブル機器。
【請求項2】
請求項1に記載のウェアラブル機器において、
前記起電力発生部は、前記非装着時形態から前記装着時形態への形態変化によって第一起電力を発生させ、前記装着時形態から前記非装着時形態への形態変化によって該第一起電力とは異なる第二起電力を発生させ、
前記電源スイッチ部は、前記第一起電力を用いて前記電源部から前記電気部品への電力供給をオンにし、前記第二起電力を用いて前記電源部から前記電気部品への電力供給をオフにすることを特徴とするウェアラブル機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のウェアラブル機器において、
前記形態変化部は、可動部材が被可動部材に対して移動することにより前記装着時形態と前記非装着時形態との間で形態が変化することを特徴とするウェアラブル機器。
【請求項4】
請求項3に記載のウェアラブル機器において、
前記形態変化部は、前記可動部材が前記被可動部材に対して回動するように構成されていることを特徴とするウェアラブル機器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のウェアラブル機器において、
前記形態変化部は、自らの形状が変化する形状変化部材が形状変化することにより前記装着時形態と前記非装着時形態との間で形態が変化することを特徴とするウェアラブル機器。
【請求項6】
請求項5に記載のウェアラブル機器において、
前記起電力発生部は、前記形状変化部材の形状変化によって起電力を発生させる圧電素子から構成されていることを特徴とするウェアラブル機器。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のウェアラブル機器において、
前記形態変化部は、前記装着時形態と前記非装着時形態との間で変化するときに互いに近接又は離間する2つの接離部を含み、
前記起電力発生部は、前記2つの接離部のうちの一方に配置される磁石と、前記2つの接離部のうちの他方に配置されるコイルとから構成されていることを特徴とするウェアラブル機器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のウェアラブル機器を含むことを特徴とする眼鏡。
【請求項9】
請求項8に記載の眼鏡において、
前記電気部品は、眼鏡フレームに保持され、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズ又は光軸位置若しくは光軸方向を電子制御可能な光軸可変レンズを含むことを特徴とする眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装用者に対して着脱可能に装着されて使用される、電気部品を搭載したウェアラブル機器及び眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のウェアラブル機器としては、例えば、特許文献1に開示されているウェアラブルカメラが知られている。このウェアラブルカメラは、動き検出部により所定時間以上カメラ筐体の動きがないことが検出されたら、撮像制御部に電力を供給する電源部からの電力の供給を停止し、動き検出部により所定時間以内にカメラ筐体の動きが検出されたら、電源部からの電力の供給を再開する節電制御部が備わっている。このウェアラブルカメラは、ウェアラブルカメラが装用者から取り外されて静置されると、自動的に電力供給がオフ(停止)になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-127600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したウェアラブルカメラのようなウェアラブル機器は、装用者から取り外されている非装着状態であっても、種々の要因(振動が加わったり衝撃を受けたりするなど)によって動くことが多い。そのため、所定時間以上カメラ筐体の動きがないことが検出されたら電力供給を停止するという従来の方法では、当該ウェアラブル機器が非装着状態になっても電力供給がオフにならないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、装用者に対して着脱可能に装着されて使用される、電気部品を搭載したウェアラブル機器であって、前記電気部品に電力供給する電源部と、当該ウェアラブル機器の装着時にとる装着時形態と当該ウェアラブル機器の非装着時にとる非装着時形態との間で形態が変化する形態変化部と、前記形態変化部の形態変化により無給電状態で起電力を発生させる起電力発生部と、前記起電力発生部が発生させた起電力を用いて、前記電源部から前記電気部品への電力供給をオン又はオフにする電源スイッチ部とを有することを特徴とするものである。
本ウェアラブル機器においては、装着時形態と非装着時形態との間で形態が変化する形態変化部の形態変化によって起電力発生部が発生させる起電力を用いて、電源スイッチ部が電源部から電気部品への電力供給をオン又はオフにする。これによれば、装用者が電力供給のオン操作又はオフ操作を別途行うことなく、当該ウェアラブル機器の電気部品への電力供給をオン又はオフにすることができる。
しかも、本ウェアラブル機器によれば、形態変化部の形態変化によって無給電状態で発生する起電力を用いて電力供給がオン又はオフになるため、当該ウェアラブル機器の電源オン又は電源オフの切り替えのための待機電力を低減し又はゼロにすることが可能である。
そして、本ウェアラブル機器によれば、例えば、装用者が当該ウェアラブル機器の使用を終えて取り外す際に装着時形態から非装着時形態になるような形態変化部の形態変化によって、起電力発生部が起電力を発生させ、電源スイッチ部が電力供給をオフにすることができる。これにより、非装着状態に種々の要因(振動が加わったり衝撃を受けたりするなど)によって動くことの多いウェアラブル機器であっても、当該ウェアラブル機器が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることが可能となる。
【0006】
なお、当該ウェアラブル機器が装着状態になったときに電力供給をオンにする制御を実現する方法としては、従来のように筐体の動きが動き検出部によって検出されたら電力供給を再開するという方法を利用する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、当該ウェアラブル機器が非装着状態から装着状態になったことを動き検出部の検出結果から判断することになる。そのため、装着状態になるときに動き検出部によって検出可能な筐体の動きを伴わないようなウェアラブル機器では、当該ウェアラブル機器が装着状態になっても、電力供給が適切にオンにならないことがある。
本ウェアラブル機器によれば、例えば、装用者が当該ウェアラブル機器を装着して使用を開始する際に非装着時形態から装着時形態になるような形態変化部の形態変化によって、起電力発生部が起電力を発生させ、電源スイッチ部が電力供給をオンにすることができる。これにより、装着状態になるときに動き検出部によって検出可能な筐体の動きを伴わないようなウェアラブル機器であっても、当該ウェアラブル機器が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることが可能となる。
【0007】
前記ウェアラブル機器において、前記起電力発生部は、前記非装着時形態から前記装着時形態への形態変化によって第一起電力を発生させ、前記装着時形態から前記非装着時形態への形態変化によって該第一起電力とは異なる第二起電力を発生させてもよく、前記電源スイッチ部は、前記第一起電力を用いて前記電源部から前記電気部品への電力供給をオンにし、前記第二起電力を用いて前記電源部から前記電気部品への電力供給をオフにしてもよい。
本ウェアラブル機器では、当該ウェアラブル機器が非装着状態から装着状態になった時には第一起電力を用いて電力供給を適切にオンにすることができるとともに、当該ウェアラブル機器が装着状態から非装着状態になった時には第二起電力を用いて電力供給を適切にオフにすることができる。
【0008】
また、前記ウェアラブル機器において、前記形態変化部は、可動部材が被可動部材に対して移動することにより前記装着時形態と前記非装着時形態との間で形態が変化してもよい。
可動部材が被可動部材に対して移動して装着時形態と非装着時形態との間で形態が変化するような形態変化部を有するウェアラブル機器において、当該ウェアラブル機器が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることが可能となり、また、当該ウェアラブル機器が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることが可能となる。
【0009】
また、前記ウェアラブル機器において、前記形態変化部は、前記可動部材が前記被可動部材に対して回動するように構成されていてもよい。
本ウェアラブル機器によれば、可動部材が被可動部材に対して回動して装着時形態と非装着時形態との間で形態が変化するような形態変化部を有するウェアラブル機器において、当該ウェアラブル機器が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることが可能となり、また、当該ウェアラブル機器が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることが可能となる。
【0010】
また、前記ウェアラブル機器において、前記形態変化部は、自らの形状が変化する形状変化部材が形状変化することにより前記装着時形態と前記非装着時形態との間で形態が変化してもよい。
本ウェアラブル機器によれば、自らの形状が変化する形状変化部材が形状変化することで装着時形態と非装着時形態との間で形態が変化するような形態変化部を有するウェアラブル機器において、当該ウェアラブル機器が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることが可能となり、また、当該ウェアラブル機器が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることが可能となる。
【0011】
また、前記ウェアラブル機器において、前記起電力発生部は、前記形状変化部材の形状変化によって起電力を発生させる圧電素子から構成されていてもよい。
本ウェアラブル機器によれば、形状変化部材が形状変化することで装着時形態と非装着時形態との間で形態が変化するような形態変化部を有するウェアラブル機器において、装着時形態と非装着時形態との間の形態変化により、無給電状態で起電力を適切に発生させることができる。
【0012】
また、前記ウェアラブル機器において、前記形態変化部は、前記装着時形態と前記非装着時形態との間で変化するときに互いに近接又は離間する2つの接離部を含んでもよく、前記起電力発生部は、前記2つの接離部のうちの一方に配置される磁石と、前記2つの接離部のうちの他方に配置されるコイルとから構成されていてもよい。
本ウェアラブル機器によれば、装着時形態と非装着時形態との間で変化するときに互いに近接又は離間する2つの接離部を含むような形態変化部を有するウェアラブル機器において、装着時形態と非装着時形態との間の形態変化により、無給電状態で起電力を適切に発生させることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、上述したウェアラブル機器を含むことを特徴とする眼鏡である。
これによれば、ウェアラブル機器が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることが可能であり、又は、ウェアラブル機器が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることが可能である眼鏡を提供することができる。
【0014】
前記眼鏡において、前記電気部品は、眼鏡フレームに保持され、焦点距離を電子制御可能な可変焦点レンズ又は光軸位置若しくは光軸方向を電子制御可能な光軸可変レンズを含んでもよい。
これによれば、可変焦点レンズ又は光軸可変レンズを含む眼鏡において、非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることが可能となり、又は、装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウェアラブル機器が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることが可能になり、又は、ウェアラブル機器が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る眼鏡の構成を模式的に示す正面図。
図2】同眼鏡の構成を模式的に示す平面図。
図3】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す断面図。
図4】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す平面図。
図5】同眼鏡における制御装置の構成を示すブロック図。
図6】同眼鏡における左眼視線方向検出部の概略構成を示す平面図。
図7】本実施形態における光軸パラメータ制御の流れを示すフローチャート。
図8】(a)は、同眼鏡におけるテンプル部を回動させて開いた装着状態の眼鏡を模式的に示す平面図。(b)は、同テンプル部を回動させて折りたたんだ非装着状態の眼鏡を模式的に示す平面図。
図9】(a)は、変形例1において、テンプル部を伸ばした装着状態の眼鏡を模式的に示す平面図。(b)は、変形例1において、テンプル部を曲げた非装着状態の眼鏡を模式的に示す平面図。
図10】(a)は、変形例2において、ユーザーに装着された状態(装着状態)の眼鏡を模式的に示す平面図。(b)は、変形例2において、ユーザーから取り外された状態(非装着状態)の眼鏡を模式的に示す平面図。
図11】実施形態に係る眼鏡の他の構成を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、ウェアラブル機器の一例として、光軸可変レンズを備える眼鏡に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明を適用可能なウェアラブル機器は、光軸可変レンズを備える眼鏡に限られない。例えば、ディスプレイを備えるヘッドマウントディスプレイのように装用者(以下「ユーザー」という。)の頭部に装着されて眼のために使用される眼鏡型のウェアラブル機器であってもよい。また、ユーザーの頭部に装着されて耳などのために使用されるヘッドマウント型のウェアラブル機器であってもよい。本発明を適用可能なウェアラブル機器は、頭部以外の体の部位に装着されて使用されるあらゆるウェアラブル機器にも適用可能である。
【0018】
図1は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す正面図であり、図2は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す平面図である。
本実施形態における眼鏡1は、眼鏡フレーム2と、電気部品である左右一対の光軸可変レンズ3,3と、光軸可変レンズ3,3の光軸パラメータを制御する電気部品であるレンズ制御装置としての制御装置10と、を備えている。ここでいう光軸パラメータとは、光軸可変レンズ3,3の光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方である。
【0019】
眼鏡フレーム2は、ブリッジ部4と、左右一対のレンズ保持部6,6と、鼻当部7と、左右一対のヨロイ部8,8と、左右一対のテンプル部9,9と、を備えている。
【0020】
ブリッジ部4は、装用時に装用者の視界から上方へ外れる位置に配置され、光軸可変レンズ3,3を保持する左右のレンズ保持部6,6を支持する部材である。ブリッジ部4は、左右のヨロイ部8,8間にわたって左右方向に延在し、ブリッジ部4の左右方向両端部にヨロイ部8,8が取り付けられる。ブリッジ部4は、レンズ保持部6が左右方向に移動可能にレンズ保持部6を連結して、レンズ保持部6に保持される左右一対の光軸可変レンズ3,3の左右方向のレンズ間距離Dを調整できるレンズ間距離調節部を備えるのが好ましい。なお、レンズ間距離Dは、例えば、光軸可変レンズ3,3上の基準位置(例えば光軸可変レンズ3,3の中心位置)間の距離によって規定することができる。ここで、光軸可変レンズ3,3の基準位置は、例えば光軸可変レンズ3,3の光学中心位置と等しく、レンズ間距離Dは各光軸可変レンズ3,3の光学中心がなす距離と等しくなる。
【0021】
レンズ保持部6,6は、光軸可変レンズ3,3を保持する部材であり、その形状は、細長い形状(線状)である。具体的には、本実施形態のレンズ保持部6,6は、塑性変形可能なワイヤー部材によって形成されている。本実施形態におけるレンズ保持部6は、眼鏡フレーム2におけるブリッジ部4から延び、その先端が光軸可変レンズ3の外縁部分の被連結位置3aに連結することで、光軸可変レンズ3を保持する。レンズ保持部6は、ブリッジ部4に対してスライド部4aを介して支持されており、スライド部4aによってレンズ間距離調節部が構成される。具体的には、スライド部4aは、ブリッジ部4に対してレンズ保持部6を左右方向にスライド可能に保持する部材である。本実施形態におけるスライド部4aは、中空状部材であり、その中空部にブリッジ部4が挿入されて、ブリッジ部4の長手方向に沿って摺動可能なようにブリッジ部4に取り付けられる。
【0022】
レンズ間距離調節部を備えることで、正視状態におけるユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて、光軸可変レンズ3,3のレンズ間距離Dを調整することができる。本実施形態のように光軸可変レンズ3,3が通常の眼鏡レンズと比べて小型である場合、ユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて光軸可変レンズ3,3のレンズ間距離Dをユーザーごとに調整できるようにすることは有益である。
【0023】
なお、本実施形態において、レンズ保持部6,6が連結される光軸可変レンズ3,3の被連結位置3aは、それぞれ、図1に示すように、光軸可変レンズ3,3の光軸を通る鉛直仮想線よりも外側(鼻から遠い側、すなわち、耳側)に位置し、かつ、光軸可変レンズ3,3の光軸を通る水平仮想線よりも上側に位置している。この位置にレンズ保持部6,6が連結されるように構成することで、装用者の視界にレンズ保持部6,6が入っていても、レンズ保持部6,6を邪魔に感じさせにくい。
【0024】
ただし、レンズ保持部6,6が連結される光軸可変レンズ3,3の被連結位置3aは、本実施形態の位置に限らず、例えば、図11に示すように、光軸可変レンズ3,3の光軸を通る鉛直仮想線よりも内側(鼻側)に配置してもよい。
【0025】
鼻当部7は、ブリッジ部4に保持され、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの鼻に当接して眼鏡1の位置を位置決めする部材である。
【0026】
ヨロイ部8,8は、ブリッジ部4とテンプル部9,9とを連結する部材である。本実施形態におけるヨロイ部8,8は、ブリッジ部4の端部に取り付けられる取付部8aと、テンプル部9を回動可能に支持するヒンジ部8bとを備えている。
【0027】
テンプル部9,9は、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの耳に掛けられる部材である。本実施形態における左右のテンプル部9,9は、ヨロイ部8,8が備えるヒンジ部8bにより眼鏡1の左右方向中央側に向かってそれぞれ折りたたむことができるように構成されている。
【0028】
本実施形態における光軸可変レンズ3,3は、電気的に制御可能な光軸パラメータの変更機能を有する光軸可変レンズであれば、その構成に限定されない。ただし、光軸可変レンズ3,3は、屈折面の形状が変化することにより光軸の方向及び位置のうちの少なくとも一方の光軸パラメータ(以下、単に「光軸パラメータ」という。)が変化する形状可変レンズであるのが好ましい。形状可変レンズであれば、光軸の位置や方向だけでなく、焦点距離などの他のレンズパラメータについても制御可能になる。なお、焦点距離を電気的に制御可能なレンズは可変焦点レンズとも呼ばれる。
【0029】
形状可変レンズの中でも、2種類の液体の界面を屈折面とし、液体の濡れ性を電気的に制御して当該界面の形状を変更することで光軸パラメータを変更可能な液体レンズ(エレクトロウェッティングデバイスなどとも言う。)が好ましい。液体レンズであれば、光軸の位置や方向、焦点距離などを含むレンズパラメータについて、高速で自由度の高い制御が可能である。
【0030】
本実施形態の光軸可変レンズ3,3は、例えばレンズ部分の直径が5mm~12mm程度の液体レンズを採用している。なお、より大型の光軸可変レンズを用いることで、光軸可変レンズがカバーできるユーザーの視線方向範囲が広がり、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0031】
図3は、本実施形態における光軸可変レンズ3の概略構成を示す断面図である。
図4は、本実施形態における光軸可変レンズ3の概略構成を示す平面図である。
本実施形態の光軸可変レンズ3は、図3に示すように、界面Iで非混合状態で接触している絶縁液311と導電液312とが、環状の第一電極301と、第一電極301の上端と下端を閉じる2つの透明な窓部材303,304とによって封入された構成を有する。絶縁液311は例えば油性液体であり、導電液312は例えば比較的導電率の低い水性液体である。第一電極301には電圧V0が印加されるが、本実施形態では環状の第一電極301を接地しているため、V0=0Vである。また、第一電極301は、封入されている絶縁液311及び導電液312に対し、絶縁層301aによって絶縁されている。
【0032】
また、本実施形態の光軸可変レンズ3は、第一電極301の軸Oに対する対称位置に複数対の第二電極302A,302B,・・・が配置されている。本実施形態では、図4に示すように、4対の第二電極302A~302Hが軸Oを中心とした円周上に配置されており、合計8つの第二電極302A~302Hを備えている。
【0033】
第二電極302A~302Hは、図3に示すように、導電液312に接触する位置に配置されている。各第二電極302A~302Hに電圧VA~VHを印加すると、各第二電極302A~302Hと第一電極301との間に電位差が生じ、エレクトロウェッティング効果によって絶縁液311の端部Ia(界面Iの端部Ia)を第一電極301上の絶縁層部分301bに沿って変位させることができる。このように絶縁液311の端部Iaが変位することにより、絶縁液311の形状が変化して界面Iの曲率が変更される。したがって、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、界面Iを屈折面とする光軸可変レンズ3の焦点距離を変化させることができる。
【0034】
特に、本実施形態の光軸可変レンズ3は、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、屈折面である界面Iを、拡散レンズ(凹レンズ)、平面レンズ、集光レンズ(凸レンズ)に変形させることができる。したがって、本実施形態の眼鏡1は、光軸可変レンズ3を拡散レンズ(凹レンズ)とすることで近視ユーザー用の眼鏡として使用でき、また、光軸可変レンズ3を集光レンズ(凸レンズ)とすることで遠視ユーザー用の眼鏡として使用できる。
【0035】
本実施形態の光軸可変レンズ3は、ジオプター換算(焦点距離の逆数)で-15D以上+15D以下の範囲で、焦点距離を変化させることができる。このように焦点距離の変化範囲が広い光軸可変レンズ3を用いることで、例えば、弱視のような低視力のユーザーに対応することも可能である。
【0036】
本実施形態において、第一電極301の軸Oの対称位置に配置されるすべての第二電極302A~302Hに同じ電圧を印加することで、光軸可変レンズ3の光軸を第一電極301の軸Oに一致させたまま、焦点距離を変化させることができる。一方で、各第二電極302A~302Hに対して異なる電圧を印加すれば、焦点距離を変化させるだけでなく、光軸可変レンズ3の光軸をずらしたり傾けたりすることも可能である。すなわち、本実施形態の光軸可変レンズ3は、印加電圧VA~VHを制御することによって、光軸の位置と方向のいずれか一方及び両方を変化させることができる。
【0037】
制御装置10は、図1に示すように、バッテリー20とともに、左右のヨロイ部8,8のうちの一方(図中左側のヨロイ部8)に設けられている。制御装置10は、バッテリー20から光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を制御することにより、光軸可変レンズ3の光軸の位置や方向並びに焦点距離を制御することができる。
【0038】
図5は、本実施形態における制御装置10の構成を示すブロック図である。
本実施形態における制御装置10は、主制御部11と、電圧変更部12と、操作部13と、を備えている。制御装置10は、光軸可変レンズ3の第二電極302A~302Hと、電圧を供給する電源部としてのバッテリー20と、ユーザーの視線方向を検出する電気部品としての視線方向検出部21A,21Bとが接続されている。なお、本実施形態では、ユーザーの各眼の視線方向をそれぞれ検出する2つの視線方向検出部21A,21Bが備わっているが、ユーザーのいずれか一方の眼の視線方向を検出する視線方向検出部だけが備わっている構成や、ユーザーの両眼に共通する1つの視線方向を検出する視線方向検出部が備わっている構成などを採用してもよい。
【0039】
主制御部11は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の制御プログラムを実行することにより、眼鏡1の全体的な制御を行う。特に、本実施形態では、主制御部11は、視線方向検出部によって検出されるユーザーの視線方向(検出結果)に基づいて、光軸可変レンズ3,3の光軸パラメータが変化するように、光軸可変レンズ3を制御する制御部(制御手段)として機能する。
【0040】
電圧変更部12は、主制御部11の制御の下、バッテリー20から光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を変更する。電圧変更部12は、各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を、第二電極302A~302Hごとに個別に変更することができる。ただし、電圧変更部12は、第二電極302A~302Hの一部だけ(例えば1対の第二電極だけ)を部分的に変更可能なものであってもよい。
【0041】
操作部13は、ユーザーによって操作されることで、ユーザーの操作内容を示す操作信号を主制御部11に出力する。操作部13が受け付けるユーザー操作としては、例えば、電源のオンオフ操作、主制御部11の実行指示、主制御部11の制御内容の変更などが挙げられる。操作部13は、受け付けるユーザー操作の内容に適した種類の操作器(機械式や静電タッチ式などのボタン、ダイヤルなどの回転型操作部など)によって構成される。なお、これらのユーザー操作を不要とする構成とすることも可能であり、その場合には操作部13を省略することが可能である。
【0042】
バッテリー20は、制御装置10、光軸可変レンズ3,3、視線方向検出部21A,21Bなどの電気部品へ電力供給を行う電源部として機能するもので、光軸可変レンズ3の第二電極302A~302Hに供給する電圧を出力する。バッテリー20は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。また、太陽光パネルなどの発電機能を備えたものであってもよい。
【0043】
2つの視線方向検出部21A,21Bは、ユーザーの右眼と左眼のそれぞれの視線方向を個別に検出するものであり、視線方向が検知できるものであれば、その構成は限定されないが、眼鏡フレーム2上に配置できる構成であるのが好ましい。
【0044】
図6は、本実施形態における左眼視線方向検出部21Bの概略構成を示す平面図である。なお、図6では、説明のため、眼鏡フレーム2の図示は省略され、左眼用の光軸可変レンズ3のみが図示されている。
本実施形態の左眼視線方向検出部21Bは、光源211と、ハーフミラー212と、撮像手段としてのカメラ213と、画像処理部214と、から構成されている。なお、右眼視線方向検出部21Aの構成は、左眼視線方向検出部21Bと同様であるため、説明を省略する。
【0045】
左眼視線方向検出部21Bのうちの光源211及びカメラ213は、図2の符号21Bで示すように、眼鏡フレーム2の左側ヨロイ部8の近くの左側テンプル部9上に取り付けられている。一方、左眼視線方向検出部21Bのうちのハーフミラー212は、図6に示すように、眼鏡1を装着したユーザーの左眼Eと左眼用の光軸可変レンズ3との間に配置される。ハーフミラー212は、光軸可変レンズ3と一体構成とするのが好ましいが、別体構成としてもよい。
【0046】
ハーフミラー212は、入射する近赤外光を反射し、可視光は透過する機能を有している。これにより、光軸可変レンズ3を通じて入射する視認対象物からの可視光Lは、図6に示すように、ハーフミラー212を通過してユーザーの眼Eに入射することになり、ユーザーは視認対象物を視認することができる。
【0047】
光源211は、非可視光として、例えば近赤外光L0を照射する。光源211は、ハーフミラー212に対し、眼鏡1を装着したユーザーの眼Eと同じ側に配置される。光源211から照射される近赤外光L0は、ハーフミラー212で反射され、ユーザーの眼Eに入射される。ユーザーの眼Eに入射した近赤外光は、ユーザーの眼E(眼の角膜)で反射され、再びハーフミラー212に到達する。そして、ユーザーの眼Eで反射した近赤外光L1は、ハーフミラー212で反射され、光源211の近傍に配置されているカメラ213に入射される。
【0048】
カメラ213は、光源211から照射される非可視光の画像を撮像する撮像手段であり、本実施形態では、近赤外光の画像を撮像可能な近赤外カメラである。本実施形態のカメラ213は、可視光を遮断するフィルタを備え、可視光に邪魔されることなく、ユーザーの眼Eで反射された近赤外光L1の画像を撮像することができる。カメラ213で撮像された画像のデータは、画像処理部214に出力される。
【0049】
画像処理部214は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の視線方向検出プログラムを実行することにより、カメラ213で撮像された画像データに基づいてユーザーの眼Eの視線方向を検出する。なお、画像処理部214の機能を制御装置10の主制御部11に持たせ、画像処理部214を省略してもよい。
【0050】
カメラ213によって撮像される非可視光画像である近赤外画像には、ユーザーの眼Eの画像が含まれる。画像処理部214は、カメラ213から出力されるユーザーの眼Eの画像から、眼Eの視線方向を検出する。眼Eの視線方向を検出する方法は、特に限定はないが、例えば、カメラ213によって撮像された画像には近赤外光の輝点が含まれるので、この輝点を利用する方法が挙げられる。具体的には、この輝点は、眼Eの視線方向によらず、画像上における眼Eの固定地点に表示されることから、この輝点を基準位置とし、この基準位置に対する眼Eの瞳孔中心の相対位置から、眼Eの視線方向を検出することができる。なお、カメラ213から出力される画像における輝点及び瞳孔中心の検出は、エッジ抽出やハフ変換などの既存の画像処理技術を用いて実現することができる。
【0051】
次に、本実施形態における光軸可変レンズ3,3の光軸パラメータ制御の一例について説明する。
図7は、本実施形態における光軸パラメータ制御の流れを示すフローチャートである。
本実施形態における光軸パラメータ制御では、所定の制御プログラムを実行する主制御部11が電圧変更部12を制御することにより、視線方向検出部21A,21Bの各検出結果(ユーザーの右眼と左眼の各視線方向の検出結果)に基づいて、光軸パラメータである光軸の方向が変化するように、左右の光軸可変レンズ3,3を制御する。なお、ユーザーの右眼と左眼にそれぞれ対応する2つの光軸可変レンズ3,3の制御は独立して行われるが、その制御内容は同様であるため、以下、左右の光軸可変レンズ3,3を区別することなく説明する。
【0052】
本実施形態では、電源スイッチ部が電源オンになると(S1)、まず、光軸可変レンズ3の基本焦点距離の設定が完了していない場合には、基本焦点距離の設定を行う(S2)。本実施形態では、光軸可変レンズ3の光軸方向が変化されても、光軸可変レンズ3の焦点距離は基本焦点距離のまま変化しないように、光軸可変レンズ3を制御する。なお、ここでは、電源オンになることで光軸パラメータ制御が開始される例であるが、これに限らず、例えば、眼鏡1がユーザーに装着されたことを検知する装着検知部を設け、ユーザーが眼鏡1を装着したことを検知することで光軸パラメータ制御が開始されるように構成してもよい。
【0053】
基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途(ユーザーが視認対象物を視認する距離)に応じて、任意に設定することができる。例えば、ユーザーが近くの視認対象物(スマートフォン、タブレット、ゲーム機、書籍など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この近くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定し、逆に、ユーザーが離れた視認対象物(離れた場所の映像(映画など)、美術品などの鑑賞物、景色など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この遠くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定する。
【0054】
また、基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途に関係なく、ユーザーごとに固定の焦点距離に設定してもよい。例えば、近視、遠視、乱視などの屈折異常を含む眼の異常をもつユーザーであれば、ユーザーの処方屈折力(基本屈折力)に対応する焦点距離に基本焦点距離を設定する。この場合、例えば、近視ユーザーであれば、マイナス屈折力に対応する焦点距離が基本焦点距離として設定される。
【0055】
なお、基本焦点距離の設定作業は、専門の作業者あるいはユーザー自身が操作部13を操作することにより行うことができる。例えば、操作部13に屈折力が表記されたダイヤルが設けられている場合、ユーザーの処方屈折力に一致するようにダイヤルを回すことで、基本焦点距離の設定を行うことができる。この場合、ダイヤルの回転位置に応じた電気信号(操作信号)が主制御部11に送られ、主制御部11は、この信号に対応する電圧が光軸可変レンズ3の第二電極302A~302Hに印加されるように、電圧変更部12を制御する。これにより、光軸可変レンズ3における絶縁液311と導電液312との界面Iの形状変化により界面Iの曲率が変更され、光軸可変レンズ3の焦点距離が、設定された基本焦点距離に変更される。
【0056】
光軸可変レンズ3の基本焦点距離の設定が完了したら、主制御部11は、視線方向検出部21A,21Bによる検出動作を開始させる(S3)。これにより、光源211から照射された近赤外光L0が、ハーフミラー212で反射されてユーザーの各眼Eに入射され、その反射光が再びハーフミラー212で反射されてそれぞれのカメラ213に入射され、各眼Eの画像が撮像される。そして、各カメラ213で撮像された各眼Eの画像データは、それぞれの画像処理部214によって画像処理がなされ、各眼Eの画像から各眼Eの視線方向が検出される。この視線方向の検出動作は、所定のサンプリング間隔で繰り返し実行される。
【0057】
視線方向検出部21A,21Bで検出された各眼Eの視線方向の検出結果は主制御部11に送られる。主制御部11は、電圧変更部12を制御し、光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hに、視線方向の検出結果に対応する電圧がそれぞれ印加させる制御を実行する(S4)。これにより、ユーザーの視線方向が変わると、その検知結果に応じて、光軸可変レンズ3の各第二電極302A~302Hに印加される電圧が電圧変更部12により変更され、光軸可変レンズの光軸の方向が、変更後のユーザーの視線方向に追従するように変化する。
【0058】
なお、電源スイッチ部22が電源オフになると(S5のYes)、主制御部11は、光軸パラメータ制御を終了する。
【0059】
本実施形態においては、眼鏡1を利用しているユーザーの視線が変更されても、これに追従して眼鏡1の光軸可変レンズ3,3の光軸の方向が変更され、光軸可変レンズ3,3の光軸からユーザーの視線が許容範囲を超えるほど大きく外れることが抑制される。その結果、ユーザーの視線が変更されても、光軸可変レンズ3,3の本来の機能(ユーザーの眼をレンズによって矯正する機能)を適正に発揮することができる。
【0060】
特に、本実施形態では、光軸可変レンズ3,3の焦点距離を維持しつつ光軸可変レンズ3,3の光軸の方向が変化する。そのため、ユーザーが光軸可変レンズ3,3を通じて視認している視認対象物との距離を変化させないまま視線を変更した場合に、ユーザーの眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、ユーザーの違和感や眼の疲労が抑制される。
【0061】
ただし、本実施形態において、光軸可変レンズ3,3の焦点距離が、ユーザーの視線方向の検出結果に応じて変化する光軸可変レンズ3,3の光軸の方向に対応する焦点距離となるように、光軸可変レンズ3,3の焦点距離を制御してもよい。この場合、例えば、ユーザーの視線方向と光軸可変レンズ3,3の焦点距離との対応関係を記述したテーブルデータなどを記憶部に記憶しておく。そして、主制御部11は、ユーザーの視線方向の検出結果に基づき、ユーザーの視線方向に追従するように光軸可変レンズ3,3の光軸の方向が変更し、かつ、変更後の光軸の方向に対応する焦点距離を記憶部から読み出して光軸可変レンズ3,3の焦点距離も変化するように、電圧変更部12を制御する。
【0062】
これによれば、例えば、ユーザーが、視認対象物を近くのものから遠方のものへ変更する場合(近方視から遠方視へ切り替えるとき)やその逆の場合のように、光軸可変レンズ3,3を通じて視認している視認対象物との距離の変化を伴って視線を変更する場合に、視認対象物との距離の変化に応じて光軸可変レンズ3,3の焦点距離を自動調整することができる。したがって、視認対象物との距離の変化を伴って視線を変更する場合でも、ユーザーの眼の毛様体筋の弛緩や収縮などの動きが少なく、ユーザーの違和感や眼の疲労が抑制される。
【0063】
なお、本実施形態における光軸パラメータ制御では、ユーザーの視線方向の検出結果に応じて、光軸可変レンズ3の光軸の方向を変更する構成について説明したが、光軸可変レンズ3の光軸の位置を変更する構成としてもよい。このとき、光軸可変レンズ3の光軸の方向を変更しないまま光軸可変レンズ3の光軸の位置を変更する構成、すなわち、光軸可変レンズ3の光軸を平行移動させる構成としてもよい。
【0064】
次に、本実施形態における眼鏡1の電源オン/オフの構成及び動作について説明する。
図8(a)は、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させて開いた装着状態の眼鏡1を模式的に示す平面図である。
図8(b)は、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させて折りたたんだ非装着状態の眼鏡1を模式的に示す平面図である。
【0065】
本実施形態の眼鏡1は、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させて折りたたんだり(非装着時形態)、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させて開いたり(装着時形態)することで、形態変化する形態変化部を有する。具体的には、本実施形態の形態変化部は、可動部材であるテンプル部9と、被可動部材であるブリッジ部4及びヨロイ部8とから構成され、テンプル部9がブリッジ部4に対して相対的に移動(回動)することにより、図8(a)に示す装着時形態と図8(b)に示す非装着時形態との間で形態が変化する。本実施形態において、テンプル部9とブリッジ部4とは、図8(a)に示す装着時形態と図8(b)に示す非装着時形態との間で変化するときに互いに離間又は近接する2つの接離部として機能する。
【0066】
本実施形態の眼鏡1は、装着状態では、図8(a)に示す矢印Aのように、両テンプル部9,9をヨロイ部8,8の各ヒンジ部8bを中心に回動させて開いて装着時形態となり、ユーザーに装着されて使用される。一方、本実施形態の眼鏡1は、ユーザーから取り外されて非装着状態になるとき、図8(b)に示す矢印Bのように、両テンプル部9,9をヨロイ部8,8の各ヒンジ部8bを中心に回動させて折りたたんで非装着時形態となる。そして、非装着時形態となった眼鏡1は、例えば、卓上に置かれたり、眼鏡ケースに収容されたり、カバンに入れられたりする。
【0067】
本実施形態の眼鏡1は、このように装着時形態と非装着時形態との間で形態変化することによって起電力を無給電状態で発生させる起電力発生部として、テンプル部9に配置される磁石231と、ブリッジ部4に配置されるコイル232とを備えている。コイル232は電源スイッチ部22に接続されており、コイル232で発生する起電力は電源スイッチ部22に入力される。磁石231は、無給電状態で磁界を発生させるものであれば特に限定はない。なお、ここでいう無給電状態とは、電源からの電力供給(電圧や電流の供給)を受けていない状態をいい、待機電力を実質的に消費しない状態をいう。
【0068】
ユーザーが眼鏡1を装着して使用を開始する際、図8(a)に示すように、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させて開き、眼鏡1を非装着時形態から装着時形態に形態変化させる。この形態変化により、テンプル部9の磁石231はブリッジ部4のコイル232から離間する方向(図8(a)の矢印Aの向き)へ移動することになる。これにより、ブリッジ部4のコイル232を貫く磁束が減少し、コイル232には電磁誘導により磁束減少に応じた第一起電力(以下「装着時起電力」という。)が発生する。
【0069】
起電力発生部23のコイル232で発生した装着時起電力が電源スイッチ部22に入力されると、電源スイッチ部22がオン状態に遷移する。そして、電源スイッチ部22のオン状態は、コイル232で発生する後述の非装着時起電力(第二起電力)が電源スイッチ部22に入力されるまで維持される。その結果、眼鏡1が非装着時形態から装着時形態に形態変化すると、バッテリー20からの電力が電源スイッチ部22を介して制御装置10や視線方向検出部21A,21B等へ供給され、制御装置10が起動して、図7に示したような光軸パラメータ制御を含む各種制御、各種動作が開始される。
【0070】
一方、ユーザーが眼鏡1の使用を終えて取り外す際、図8(b)に示すように、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させて折りたたみ、眼鏡1を装着時形態から非装着時形態に形態変化させる。この形態変化により、テンプル部9の磁石231はブリッジ部4のコイル232に近接する方向(図8(b)の矢印Bの向き)へ移動することになる。これにより、ブリッジ部4のコイル232を貫く磁束が増加し、コイル232には電磁誘導により磁束増加に応じ、装着時起電力とは逆向き(逆極性)の第二起電力(以下「非装着時起電力」という。)が発生する。
【0071】
起電力発生部23のコイル232で発生した非装着時起電力が電源スイッチ部22に入力されると、電源スイッチ部22がオフ状態に遷移する。そして、電源スイッチ部22のオフ状態は、コイル232で発生する上述の装着時起電力(第一起電力)が電源スイッチ部22に入力されるまで維持される。その結果、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態に形態変化すると、バッテリー20から制御装置10や視線方向検出部21A,21B等への電力供給がオフになり、バッテリー20の電力消費がなくなる。
【0072】
本実施形態によれば、図8(a)に示す装着時形態と図8(b)に示す非装着時形態との間で眼鏡1が形態変化することによって発生する装着時起電力及び非装着時起電力を用いて、電源スイッチ部22がバッテリー20から制御装置10等の電気部品への電力供給をオン及びオフにする。これによれば、ユーザーが操作部13に対して電源オン/オフの操作を別途行うことなく、眼鏡1の電源をオン/オフすることができ、ユーザーの利便性が向上する。
【0073】
しかも、本実施形態によれば、形態変化部の形態変化によって起電力を発生させる起電力発生部23は、無給電状態で起電力を発生させる構成であるため、眼鏡1の電源オン、電源オフの切り替えのための待機電力を実質的にゼロにすることができる。したがって、バッテリー20の電力消費を抑制でき、眼鏡1の稼働時間を長くすることができる。
【0074】
更に、本実施形態によれば、眼鏡1が非装着時形態から装着時形態になると電源スイッチ部22がオン状態になるので、眼鏡1が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることができる。例えば、眼鏡1の使用を開始する際に眼鏡1が所定時間以上静止するような状況であっても、眼鏡1での電力供給を適切にオンすることができる。
【0075】
しかも、本実施形態において、電源スイッチ部22のオン状態は、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態になって電源スイッチ部22に非装着時起電力が入力されるまで維持される。そのため、眼鏡1が装着状態中であるにもかかわらず、電源スイッチ部22がオフ状態になってしまうような事態を抑制できる。例えば、眼鏡1の使用中に所定時間以上の静止が続くような状況になっても、電源スイッチ部22がオフ状態になってしまうような事態が回避される。
【0076】
また、本実施形態によれば、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態になると電源スイッチ部22がオフ状態になるので、眼鏡1が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることができる。例えば、眼鏡1の使用を終える際に種々の要因(振動が加わったり衝撃を受けたりするなど)によって眼鏡1が動いていても、眼鏡1での電力供給を適切にオフすることができる。
【0077】
しかも、本実施形態において、電源スイッチ部22のオフ状態は、眼鏡1が非装着時形態から装着時形態になって電源スイッチ部22に装着時起電力が入力されるまで維持される。そのため、眼鏡1が非装着状態中であるにもかかわらず、電源スイッチ部22がオン状態になってしまうような事態を抑制できる。例えば、眼鏡1の不使用中に種々の要因によって眼鏡1が動いていても、電源スイッチ部22がオン状態になってしまうような事態が回避される。
【0078】
なお、本実施形態においては、形態変化部の形態変化により発生する起電力によって、電源スイッチ部22がバッテリー20からの電力供給のオン及びオフの両方について切り替えを行う例であったが、いずれか一方だけ(オンだけ又はオフだけ)を、形態変化部の形態変化により発生する起電力によって切り替えるようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態における磁石231とコイル232の配置は、装着時形態と非装着時形態との間で形態変化部が形態変化するときに互いに近接又は離間するように配置されていれば、上述した配置に限られない。例えば、ブリッジ部4に磁石231を配置し、テンプル部9にコイル232を配置してもよい。また、例えば、ブリッジ部4の中間地点(例えば左右方向中央付近)とテンプル部9の中間地点とにそれぞれ磁石231とコイル232を配置してもよい。
【0080】
また、本実施形態において、電源スイッチ部22をオン/オフするための起電力を発生させる形態変化は、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させるという形態変化であるが、その形態変化に限定されるものではない。本発明が適用されるウェアラブル機器(ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルコンピュータなど)の種類や構成などによって、当該ウェアラブル機器の装着時にとる装着時形態と当該ウェアラブル機器の非装着時にとる非装着時形態との間の形態変化はさまざまである。
【0081】
このとき、可動部材が被可動部材に対して移動することにより装着時形態と非装着時形態との間の形態変化するウェアラブル機器は多いので、このような形態変化によって発生する起電力で電源スイッチ部22をオン/オフする構成とすれば、多くのウェアラブル機器に本発明を適用することが可能である。特に、装着時形態と非装着時形態との間で形態変化するときに互いに近接又は離間する2つの接離部を含む形態変化部であれば、上述した磁石231とコイル232からなる起電力発生部23を適用することができる。なお、被可動部材に対する可動部材の移動は、本実施形態では回動であるが、これに限らず、スライド移動(直線的な移動)など、他の移動であってもよい。
【0082】
〔変形例1〕
次に、本実施形態における眼鏡1の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
上述した実施形態では、電源スイッチ部22をオン/オフするための起電力を発生させる形態変化が、テンプル部9をヨロイ部8のヒンジ部8bを中心に回動させるときの形態変化である例であった。これに対し、本変形例1では、ヨロイ部8がヒンジ部8bを備えていない。その代わり、本変形例1では、テンプル部9が、自らの形状を変化させることのできる形状変化部材によって構成され、テンプル部9を形状変化(曲げたり伸ばしたり)することで装着時形態と非装着時形態との間で形態変化する例である。なお、上述した実施形態と重複する説明については適宜省略する。
【0083】
図9(a)は、テンプル部9を伸ばした装着状態の眼鏡1を模式的に示す平面図である。
図9(b)は、テンプル部9を曲げた非装着状態の眼鏡1を模式的に示す平面図である。
本変形例1において、形状変化部材である左右のテンプル部9,9は、弾性部材で構成され、ヨロイ部8,8を基点にして眼鏡1の左右方向中央側に向かってそれぞれ曲げることができるように構成されている。本変形例1のテンプル部9,9は、外力を加えない状況では、図9(a)に示す装着時形態をとり、外力を加えて弾性変形させる(曲げる)ことにより、図9(b)に示す非装着時形態をとる。
【0084】
本変形例1の眼鏡1は、ユーザーから取り外されて非装着状態になるとき、図9(b)に示す矢印Bのように、ヨロイ部8を基点にしてテンプル部9が曲げられて非装着時形態をとる。そして、非装着時形態となった眼鏡1は、曲げられた状態で(非装着時形態のまま)、例えば、眼鏡ケースに収容されたり、カバンに入れられたりする。一方、本変形例1の眼鏡1は、ユーザーに使用される時には、テンプル部9を自らの弾性力(復元力)によって伸ばして装着時形態にし、ユーザーに装着されて使用される。
【0085】
本変形例1の眼鏡1は、このように装着時形態と非装着時形態との間で形態変化(形状変化)することによって起電力を無給電状態で発生させる起電力発生部23として、テンプル部9に配置される圧電素子233を備えている。圧電素子233は電源スイッチ部22に接続されており、圧電素子233で発生する起電力は電源スイッチ部22に入力される。圧電素子233は、テンプル部9の形状変化(曲げ)によって無給電状態で起電力を発生させるものであれば特に限定はない。
【0086】
ユーザーが眼鏡1の使用を終える際、図9(b)に示すように、ユーザーがテンプル部9を曲げるように操作するなどして、テンプル部9を弾性変形させて曲げることで、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態に形態変化する。この形態変化により、テンプル部9の外側面に固定された圧電素子233が引き延ばされ、圧電効果により圧電素子233が第二起電力(非装着時起電力)を発生させる。
【0087】
起電力発生部23の圧電素子233で発生した非装着時起電力が電源スイッチ部22に入力されると、上述した実施形態と同様に、電源スイッチ部22がオフ状態に遷移する。よって、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態に形態変化すると、バッテリー20から制御装置10や視線方向検出部21A,21B等への電力供給がオフになり、バッテリー20の電力消費がなくなる。
【0088】
一方、ユーザーが眼鏡1の使用を開始する際、図9(a)に示すように、テンプル部9の弾性力(復元力)によってテンプル部9を伸ばし、眼鏡1を非装着時形態から装着時形態に形態変化させる。この形態変化により、テンプル部9の外側面に固定された圧電素子233の引き延ばしが無くなり、圧電素子233が起電力を発生させない状態となり、言い換えると、圧電素子233がゼロVの第一起電力(装着時起電力)を発生させる。
【0089】
これにより、起電力発生部23の圧電素子233で発生した装着時起電力が電源スイッチ部22に入力され、電源スイッチ部22がオン状態に遷移する。その結果、バッテリー20からの電力が電源スイッチ部22を介して制御装置10や視線方向検出部21A,21B等へ供給され、制御装置10が起動して、図7に示したような光軸パラメータ制御を含む各種制御、各種動作が開始される。
【0090】
本変形例1によれば、上述した実施形態のように可動部材が被可動部材に対して移動することにより装着時形態と非装着時形態との間で形態変化するような構成を有しない眼鏡であっても、自らの形状が変化する形状変化部材が形状変化することにより装着時形態と非装着時形態との間で形態変化する構成を有する眼鏡であれば、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
すなわち、本変形例1においても、ユーザーが操作部13に対して電源オン/オフの操作を別途行うことなく、眼鏡1の電源をオン/オフすることができ、ユーザーの利便性が向上する。
【0092】
また、本変形例1も、形態変化部の形態変化(形状変化)によって起電力を発生させる起電力発生部23は、無給電状態で起電力を発生させる構成であるため、眼鏡1の電源オン、電源オフの切り替えのための待機電力を実質的にゼロにすることができる。したがって、バッテリー20の電力消費を抑制でき、眼鏡1の稼働時間を長くすることができる。
【0093】
また、本変形例1も、眼鏡1が装着状態になった時に電力供給を適切にオンすることができる。また、本変形例1においても、電源スイッチ部22のオン状態は、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態になるまで維持されるため、眼鏡1が装着状態中であるにもかかわらず、電源スイッチ部22がオフ状態になってしまうような事態を抑制できる。
【0094】
同様に、本変形例1は、眼鏡1が非装着状態になった時に電力供給を適切にオフすることができる。また、本変形例1においても、電源スイッチ部22のオフ状態は、眼鏡1が非装着時形態から装着時形態になるまで維持されるため、眼鏡1が非装着状態中であるにもかかわらず、電源スイッチ部22がオン状態になってしまうような事態を抑制できる。
【0095】
なお、本変形例1では、圧電素子233をテンプル部9の外側面に配置した例について説明したが、テンプル部9の曲げ伸ばしをして装着時形態と非装着時形態との間の形態変化(形状変化)をするときにテンプル部9が変形する箇所であれば、テンプル部9上のどの箇所であってもよい。
【0096】
また、本変形例1において、電源スイッチ部22をオン/オフするための起電力を発生させる形態変化は、テンプル部9を曲げたり伸ばしたりするというテンプル部9の形状変化であるが、この形状変化に限定されるものではない。本発明が適用されるウェアラブル機器の種類や構成などによって、当該ウェアラブル機器の装着時にとる装着時形態と当該ウェアラブル機器の非装着時にとる非装着時形態との間で形状変化部材が形状変化する態様はさまざまである。
【0097】
本変形例1のように、自らの形状が変化する形状変化部材が形状変化することによって装着時形態と非装着時形態との間で形態変化する構成を採用すれば、配線途中に電気的接点を無くすことが可能となるというメリットがある。すなわち、上述した実施形態では、テンプル部9がヒンジ部8bを中心に回動する構成のように可動部材が被可動部材に対して移動する構成が採用されている。この構成では、テンプル部9(可動部材)とブリッジ部4(被可動部材)との間に配線を設ける場合、その可動箇所に電気的接点を設ける必要が生じる。これに対し、本変形例1のテンプル部9のように自らの形状が変化する形状変化部材であれば、可動部材(テンプル部9)が被可動部材(ブリッジ部4)に対して移動する構成を採用しなくても、装着時形態と非装着時形態との間で形態変化する構成を実現できる。この場合、電気的接点を設ける必要のある可動箇所が存在しないため、テンプル部9とブリッジ部4との間に配線を設ける場合でも、配線途中に電気的接点を設ける必要はない。
【0098】
なお、本変形例1では、テンプル部9が弾性変形することにより形状変化する例であったが、テンプル部9が塑性変形することにより形状変化する例であってもよい。
【0099】
また、本変形例1の装着時形態は、テンプル部9の弾性力(復元力)によってテンプル部9を伸ばした時の形態であり、圧電素子233がゼロVの第一起電力(装着時起電力)を発生させる例であるが、これに限られない。例えば、ユーザーが本変形例1の眼鏡1を装着すると、通常、左右のテンプル部9,9は、後述する図10(a)に示すように、ユーザーの頭部(こめかみ付近)から受ける力Fによって左右に押し広げられる。この場合、テンプル部9の外側面に固定されている圧電素子233が圧縮されるため、テンプル部9が曲げられて非装着時形態になるとき(圧電素子233が引き延ばされるとき)に発生する第二起電力(非装着時起電力)とは逆向き(逆極性)の第一起電力(装着時起電力)が発生する。したがって、この第一起電力(装着時起電力)を用いて、電源スイッチ部22がオン状態に遷移するように構成してもよい。
【0100】
〔変形例2〕
次に、本実施形態における眼鏡1の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
本変形例2の眼鏡1の基本構成は、上述した変形例1と同様である。すなわち、本変形例2の眼鏡1は、ヨロイ部8がヒンジ部8bを備えておらず、テンプル部9が自らの形状を変化させることのできる形状変化部材によって構成されている。ただし、本変形例2では、装着時形態と非装着時形態におけるテンプル部9の形状変化が、上述した変形例1とは異なっている。なお、上述した実施形態や変形例1と重複する説明については適宜省略する。
【0101】
図10(a)は、ユーザーに装着された状態(装着状態)の眼鏡1を模式的に示す平面図である。
図10(b)は、ユーザーから取り外された状態(非装着状態)の眼鏡1を模式的に示す平面図である。
本変形例2における左右のテンプル部9,9は、上述した変形例1と同様に弾性部材で構成されている。ユーザーが眼鏡1の使用を開始する際、ユーザーが本変形例2の眼鏡1を装着すると、通常、左右のテンプル部9,9は、図10(a)に示すように、ユーザーの頭部(こめかみ付近)から受ける力Fによって左右に押し広げられる。これにより、テンプル部9は曲げられて弾性変形し、非装着時形態から装着時形態へと形態変化(形状変化)する。この形態変化(形状変化)により、テンプル部9の外側面に固定されている圧電素子233が圧縮され、第一起電力(装着時起電力)が発生する。
【0102】
これにより、起電力発生部23の圧電素子233で発生した装着時起電力が電源スイッチ部22に入力され、上述した変形例1と同様に、電源スイッチ部22がオン状態に遷移する。その結果、バッテリー20からの電力が電源スイッチ部22を介して制御装置10や視線方向検出部21A,21B等へ供給され、制御装置10が起動して、図7に示したような光軸パラメータ制御を含む各種制御、各種動作が開始される。
【0103】
一方、ユーザーが眼鏡1の使用を終える際、ユーザーが眼鏡1を取り外すと、装着時にテンプル部9,9がユーザーの頭部(こめかみ付近)から受けていた力Fが解除される。これにより、図10(b)に示すように、テンプル部9は自らの弾性力(復元力)によってテンプル部9が元の状態にもどり、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態に形態変化(形状変化)する。この形態変化(形状変化)により、テンプル部9の外側面に固定された圧電素子233の圧縮が無くなり、圧電素子233が起電力を発生させない状態となり、言い換えると、圧電素子233がゼロVの第二起電力(非装着時起電力)を発生させる。
【0104】
これにより、起電力発生部23の圧電素子233で発生した非装着時起電力が電源スイッチ部22に入力され、上述した変形例1と同様に、電源スイッチ部22がオフ状態に遷移する。よって、眼鏡1が装着時形態から非装着時形態に形態変化すると、バッテリー20から制御装置10や視線方向検出部21A,21B等への電力供給がオフになり、バッテリー20の電力消費がなくなる。
【0105】
本変形例2の構成でも、上述した変形例1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0106】
1 :眼鏡
2 :眼鏡フレーム
3 :光軸可変レンズ
4 :ブリッジ部
4a :スライド部
6 :レンズ保持部
7 :鼻当部
8 :ヨロイ部
8a :取付部
8b :ヒンジ部
9 :テンプル部
10 :制御装置
11 :主制御部
12 :電圧変更部
13 :操作部
20 :バッテリー
21A,21B:視線方向検出部
22 :電源スイッチ部
23 :起電力発生部
211 :光源
212 :ハーフミラー
213 :カメラ
214 :画像処理部
231 :磁石
232 :コイル
233 :圧電素子
301 :第一電極
301a,301b:絶縁層
302A~302H:第二電極
303,304:窓部材
311 :絶縁液
312 :導電液
D :レンズ間距離
I :界面
Ia :端部
L :可視光
L0,L1:近赤外光
O :軸
PD :瞳孔間距離
図1
図2
図3
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図11