(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040829
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】制御装置、作業機械、制御方法および制御システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230315BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230315BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/22 A
E02F9/22 C
E02F9/22 E
E02F3/43 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148004
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
(72)【発明者】
【氏名】西郷 雄祐
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA03
2D003BA04
2D003BA06
2D003BA07
2D003CA02
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】作業機に掛かる負荷を適切に制御することができる制御装置、作業機械、制御方法および制御システムを提供する。
【解決手段】作業工具を有する作業機を備える作業機械の制御装置であって、前記作業工具の姿勢を目標姿勢で保持するとともに前記作業工具の位置を目標位置まで移動させる自動積込制御を行う場合に、前記作業工具の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、前記作業工具の姿勢が前記所定の範囲内となるまで前記作業工具の位置よりも前記作業工具の姿勢を優先して制御する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業工具を有する作業機を備える作業機械の制御装置であって、
前記作業工具の姿勢を目標姿勢で保持するとともに前記作業工具の位置を目標位置まで移動させる自動積込制御を行う場合に、
前記作業工具の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、前記作業工具の姿勢が前記所定の範囲内となるまで前記作業工具の位置よりも前記作業工具の姿勢を優先して制御する
制御装置。
【請求項2】
前記目標姿勢は、前記作業工具が積載対象物を積載するのに適した姿勢であり、
前記目標位置は、前記作業工具が前記積載対象物を排土する位置に対応する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記自動積込制御は、
所定の入力装置に対する所定の入力操作に応じて開始される
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記作業機械は、前記作業機と、前記作業機を支持する旋回体とを備え、
前記作業機は、第1部材と、第2部材と、前記作業工具とを有し、
前記自動積込制御において、前記作業工具の高さが所定の閾値より低い場合、前記第2部材の駆動を制限する
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
作業工具を有する作業機と、
前記作業工具の姿勢を目標姿勢で保持するとともに前記作業工具の位置を目標位置まで移動させる自動積込制御を行う場合に、前記作業工具の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、前記作業工具の姿勢が前記所定の範囲内となるまで前記作業工具の位置よりも前記作業工具の姿勢を優先して制御する制御装置と、
を備える作業機械。
【請求項6】
作業工具を有する作業機を備える作業機械の制御方法であって、
前記作業工具の姿勢を目標姿勢で保持するとともに前記作業工具の位置を目標位置まで移動させる自動積込制御を行う場合に、
前記作業工具の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、前記作業工具の姿勢が前記所定の範囲内となるまで前記作業工具の位置よりも前記作業工具の姿勢を優先して制御する
制御方法。
【請求項7】
作業工具を有する作業機を備える作業機械の制御システムであって、
前記作業工具の姿勢を目標姿勢で保持するとともに前記作業工具の位置を目標位置まで移動させる自動積込制御を行う場合に、
前記作業工具の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、前記作業工具の姿勢が前記所定の範囲内となるまで前記作業工具の位置よりも前記作業工具の姿勢を優先して制御する
制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、作業機械、制御方法および制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている制御装置は、旋回体と、旋回体に取り付けられているバケットを有する作業機とを備える積込機械の制御装置であって、次のような自動掘削積込制御を実行する。すなわち、特許文献1に記載されている制御装置による自動掘削積込制御では、旋回体を旋回させて掘削点へ作業機を移動させ、掘削点の土砂を掘削し、旋回体を旋回させてバケットに収容された土砂を積込対象へ積み込む一連の動作が自動的に実行される。ここで、積込対象は、運搬車両、ホッパ等である。
【0003】
一方、特許文献2に記載されている制御装置は、次のような自動積込制御を実行する。特許文献2に記載されている自動積込制御は、オペレータが操作装置のスイッチをオンした場合に開始される。その際、オペレータは、積込機械と運搬車両、ホッパ等の積込対象が積込処理可能な位置関係にあると判断した場合に当該スイッチをオンする。操作装置は、当該スイッチがオンされた場合、積込指示信号を生成して制御装置に出力する。制御装置は、積込指示信号が入力された場合、作業機の位置を掘削完了位置として特定するとともに、積込対象の位置および形状に基づいて積込位置を特定する。制御装置は、掘削完了位置から、積込位置に到達するように、作業機を制御する。また、その際、制御装置は、バケットの対地角度が変化しないように、作業機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-41352号公報
【特許文献2】特開2019-190236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献2に記載されている自動積込制御では、積込指示信号が生成された位置を掘削完了位置として、積込位置に到達するように作業機が制御される。そのため、例えば、バケットがまだ掘削面内にある状態でオペレータが操作装置のスイッチをオンした場合に、バケットを掘削面に押し込む動作とバケットを持ち上げる動作が同時に発生することがあり、作業機に掛かる負荷が大きくなる可能性があるという課題があった。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、作業機に掛かる負荷を適切に制御することができる制御装置、作業機械、制御方法および制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の制御装置は、作業工具を有する作業機を備える作業機械の制御装置であって、前記作業工具の姿勢を目標姿勢で保持するとともに前記作業工具の位置を目標位置まで移動させる自動積込制御を行う場合に、前記作業工具の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、前記作業工具の姿勢が前記所定の範囲内となるまで前記作業工具の位置よりも前記作業工具の姿勢を優先して制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の制御装置、作業機械、制御方法および制御システムによれば、作業機に掛かる負荷を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る作業機械の構成を示す概略図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る作業機械の制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るコントローラの構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るコントローラの内の一部の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を説明するための図表である。
【
図9】本開示の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
図1は、本開示の実施形態に係る作業機械の構成を示す概略図である。
図2は、本開示の実施形態に係る作業機械の制御システムの構成例を示すブロック図である。
図3は、本開示の実施形態に係るコントローラの構成を示す概略ブロック図である。
図4は、本開示の実施形態に係るコントローラの内の一部の構成を示す概略ブロック図である。
図5は、本開示の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。
図6は、本開示の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
図7は、本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を示すフローチャートである。
図8は、本開示の実施形態に係るコントローラの動作例を説明するための図表である。
図9~
図12は、本開示の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
【0011】
《作業機械の構成》
図1および
図5に示すように、作業機械100は、土砂等の積載対象物LOを運搬車両等の積込対象200へ積込むため作業機械である。本開示の実施形態に係る作業機械100は、油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る作業機械100は、油圧ショベル以外の作業機械100であってもよい。また
図1に示す作業機械100はフェイスショベルであるが、バックホウショベルやロープショベルであってもよい。積込対象200の例としては、運搬車両やホッパ等が挙げられる。
【0012】
図1に示すように、作業機械100は、走行装置110と、走行装置110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。
走行装置110は、履帯を有し、路面RSあるいは地面を走行する。なお、走行装置110は、履帯に限らず、車輪を有していてもよい。旋回体120は、旋回中心を中心として走行装置110に旋回自在に支持される。
【0013】
作業機130は、ブーム131と、スティック132と、バケット133と、ブームシリンダ134と、スティックシリンダ135と、バケットシリンダ136と、ブーム角センサ137と、スティック角センサ138と、バケット角センサ139とを備える。作業機130は、コントローラ128の制御に従って、バケット133の位置と姿勢を変化させる。
【0014】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピン131Pを介して取り付けられる。スティック132は、ブーム131とバケット133とを連結する。スティック132の基端部は、ブーム131の先端部にスティックピン132Pを介して取り付けられる。バケット133は、土砂等を掘削するための刃133Tと掘削した土砂を収容するための容器133Vとを備える。バケット133の基端部は、スティック132の先端部にバケットピン133Pを介して取り付けられる。バケット133は、積載対象物LOを掘削、積載および排土する作業工具の一例である。また、旋回体120は、作業機械100の本体の一例である。ブーム131は、一端部が旋回体120にピンを介して取り付けられ、他端部がスティック132にピンを介して取り付けられる、第1部材の一例である。スティック132は、一端部がブーム131にピンを介して取り付けられ、他端部がバケット133にピンを介して取り付けられる、第2部材の一例である。この場合、作業機械100は、作業機130と、作業機130を支持する旋回体120とを備え、作業機130は、ブーム131と、スティック132と、バケット133とを有する。
【0015】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。スティックシリンダ135は、スティック132を駆動するための油圧シリンダである。スティックシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。スティックシリンダ135の先端部は、スティック132に取り付けられる。バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、ブーム131に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133に取り付けられる。
【0016】
ブーム角センサ137は、ブーム131に取り付けられ、ブーム131の傾斜角を検出する。スティック角センサ138は、スティック132に取り付けられ、スティック132の傾斜角を検出する。バケット角センサ139は、バケット133に取り付けられ、バケット133の傾斜角を検出する。本開示の実施形態に係るブーム角センサ137、スティック角センサ138、およびバケット角センサ139は、地平面に対する傾斜角を検出する。ブーム角センサ137、スティック角センサ138、およびバケット角センサ139は、例えば、慣性計測装置を用いて構成することができる。なお、慣性計測装置は、IMU(Inertial Measurement Unit)等とも呼ばれる。
【0017】
なお、他の実施形態に係る角度センサはこれに限られず、他の基準面に対する傾斜角を検出してもよい。例えば、他の実施形態においては、角度センサは、ブーム131、スティック132およびバケット133の基端部に設けられたポテンショメータによって相対回転角を検出してもよいし、ブームシリンダ134、スティックシリンダ135およびバケットシリンダ136のシリンダ長さを計測し、シリンダ長さを角度に変換することで傾斜角を検出するものであってもよい。
【0018】
旋回体120には、運転室121が設けられる。運転室121の内部には、オペレータが着座するための運転席122、作業機械100を操作するための操作装置123、検出方向に存在する対象物の三次元位置を検出するための対象物検出装置124が設けられる。操作装置123は、
図2に示すように複数の操作レバー123L、スイッチ123S、ペダル等を備える。操作装置123は、操作レバー123Lに対するオペレータの操作に応じて、ブームシリンダ134の操作信号、スティックシリンダ135の操作信号、バケットシリンダ136の操作信号、旋回体120の左右への旋回操作信号、走行装置110の前後進のための走行操作信号を生成し、コントローラ128に出力する。コントローラ128は、本開示における制御装置の一構成例である。また操作装置123は、オペレータの操作に応じて作業機130に自動積込制御を開始させるための積込指示信号を生成し、コントローラ128に出力する。積込指示信号は、バケット133の自動移動の開始指示の一例である。積込指示信号はスイッチ123Sの操作により生成される。例えば、スイッチ123Sが押下されたときに、後述する自動積込制御の開始を指示する信号である積込指示信号が出力される。操作装置123は、運転席122の近傍に配置される。操作装置123は、オペレータが運転席122に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。なお、本実施形態においては、レバー操作の有無にかかわらずスイッチ123Sをオンした場合に自動積込制御が開始される。その際、オペレータは、例えば、作業機械100と運搬車両、ホッパ等の積込対象200が積込処理可能な位置関係にあると判断した場合に当該スイッチ123Sをオンする。操作装置123は、当該スイッチ123Sがオンされた場合、積込指示信号を生成してコントローラ128に出力する。コントローラ128は、積込指示信号が入力された場合、作業機130の位置を掘削完了位置として特定するとともに、積込対象200の位置および形状に基づいて積込位置を特定する。コントローラ128は、掘削完了位置から、積込位置に到達するように、作業機130を制御する。また、その際、コントローラ128は、バケット133の対地角度が変化しないように、作業機130を制御する。なお、自動積込制御の開始は、オペレータのレバー操作が無である場合に、スイッチ123Sにて開始されるようにするのが好ましい。
【0019】
対象物検出装置124の例としては、ステレオカメラ、レーザスキャナ、UWB(Ultra Wide Band)測距装置等が挙げられる。対象物検出装置124は、例えば検出方向が作業機械100の運転室121の前方を向くように設けられる。
【0020】
なお、本開示の実施形態に係る作業機械100は、運転席122に着座するオペレータの操作に従って動作するが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機械100は、遠隔操作によって動作するものであってもよい。例えば、作業機械100から離間した位置に操作装置123と同等の操作装置や作業機械100から得た情報を監視するための監視装置を備えた遠隔操作室を設ける。また、作業機械100には、周囲を撮影するカメラや周囲の人や物等の位置や距離を計測する計測装置等を設け、遠隔操作室でオペレータがカメラや計測装置等から得た情報を監視し、オペレータの操作装置に対する操作情報に基づいて、作業機械100が、走行装置110、旋回体120および作業機130等を制御する。また、遠隔操作室には、コントローラ128と同等あるいは一部の機能を有する制御装置を設けて、遠隔操作時にはその制御装置でコントローラ128の機能の全部または一部を実行するようにしてもよい。
【0021】
作業機械100は、位置方位検出装置125、傾斜計測器126、油圧装置127、コントローラ128を備える。
【0022】
位置方位検出装置125は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位検出装置125は、GNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)を構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位検出装置125は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点の位置を検出する。この現場座標系における旋回体120の代表点は例えばショベル座標系の原点に対応する。位置方位検出装置125は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。
【0023】
傾斜計測器126は、旋回体120の加速度および角速度あるいは旋回速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢を検出する。旋回体120の姿勢は、例えば、ロール角、ピッチ角、およびヨー角で表すことができる。傾斜計測器126は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器126は、例えば、慣性計測装置を用いることができる。
【0024】
油圧装置127は、旋回体120、走行装置110、ブームシリンダ134、スティックシリンダ135、およびバケットシリンダ136に作動油を供給する。油圧装置127から旋回体120、走行装置110、ブームシリンダ134、スティックシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給される作動油の量は、コントローラ128によって制御される。
【0025】
コントローラ128は、操作装置123から操作信号を受信する。コントローラ128は、油圧装置127に操作信号を出力することで、作業機130、旋回体120、または走行装置110を駆動させる。
【0026】
《制御システムの構成》
図2は、本開示の実施形態に係る作業機械100の制御システム1の構成例を示す。
図2に示すように、作業機械100は、上述した構成のほか、動力源301と、油圧ポンプ302と、制御弁300と、旋回モータ304とを備える。油圧ポンプ302と、制御弁300と、旋回モータ304は、
図1に示す油圧装置127に含まれる。
【0027】
動力源301は、作業機械100を作動させるための駆動力を発生する。動力源として、内燃機関や電動機が例示される。
【0028】
油圧ポンプ302は、動力源301によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ302から吐出された作動油の少なくとも一部は、制御弁300を介して、ブームシリンダ134、スティックシリンダ135、バケットシリンダ136、旋回モータ304および走行装置110のそれぞれに供給される。制御弁300は、油圧ポンプ302からブームシリンダ134、スティックシリンダ135、バケットシリンダ136、旋回モータ304および走行装置110のそれぞれに供給される作動油の流量および方向を制御する。作業機130は、油圧ポンプ302からの作動油により動作する。
【0029】
《コントローラの構成および動作》
コントローラ128は、操作装置123、対象物検出装置124、位置方位検出装置125、傾斜計測器126、ブーム角センサ137、スティック角センサ138、および、バケット角センサ139の出力信号を入力する。コントローラ128は、制御弁300に操作指令を出力し、作業機130、旋回体120、または走行装置110を作動させる。操作指令は、ブームシリンダ134に対する操作指令であるブーム操作指令、スティックシリンダ135に対する操作指令であるスティック操作指令、バケットシリンダ136に対する操作指令であるバケット操作指令を含む。コントローラ128は、例えば、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、入出力装置等を有するFPGA(Field Programmable Gate Array)やマイクロコンピュータを用いて構成される。
【0030】
図3は、本開示の実施形態に係る作業機械100のコントローラ128を示す構成図である。コントローラ128は、ハードウェアまたはハードウェアとプログラム等のソフトウェアの組み合わせから構成される機能的構成として、作業機制御部400を備える。コントローラ128は、オペレータが操作装置123のスイッチ123Sをオンした場合に自動積込制御を開始する。自動積込制御によって動作する積込動作は、作業機械を駆動するシリンダやモータである複数のアクチュエータが同時に動作される複合動作である。なお、本開示の実施形態の積込動作の一例は、ブームシリンダによるブーム上げと旋回モータによる旋回による複合動作が行われる。以下では、主に、作業機130の動作制御について説明する。コントローラ128は、積込指示信号が入力された場合、作業機130の位置を自動積込制御の開始位置として特定するとともに、積込対象200の位置および形状に基づいて積込位置を特定する。なお、開始位置や積込位置については、例えば、GNSSや無人ダンプトラック運行システムの管制から得た運搬車両の位置情報等を使って特定してもよい。コントローラ128は、例えば、バケット133の位置が、開始位置から、積込位置に到達するように、作業機130および旋回モータ304を制御する。なお、この積込位置は自動積込制御において目標とする位置であることから、以下では目標位置という。また、その際、コントローラ128は、バケット133の姿勢を目標姿勢で保持し、バケット133の対地角度あるいは旋回体120に対する角度が変化しないように、作業機130を制御する。本実施形態において自動積込制御とは、例えばオペレータが操作装置123のスイッチ123Sをオンした場合に開始される制御であって、バケット133の姿勢を目標姿勢に変化させた後あるいはすでに目標姿勢である場合にはその姿勢のまま、バケット133の姿勢を目標姿勢で保持しながら、例えばバケット133の位置を自動積込制御の開始位置から目標位置まで移動させる制御である。オペレータは、例えば、積込機械と運搬車両、ホッパ等の積込対象が積込処理可能な位置関係にあると判断した場合にスイッチ123Sをオンする。なお、
図3では、コントローラ128は、自動積込制御において作業機130を制御する機能的構成である作業機制御部400のみを備えているが、他に図示していない旋回モータ304や走行装置110を制御するための機能的構成を備えている。作業機制御部400は、第1操作指令算出部401と、目標シリンダ長算出部402と、シリンダ長算出部403と、判定部404と、操作指令切換部405と、第2操作指令算出部406とを備える。
【0031】
本実施形態において、作業機制御部400は、自動積込制御において、バケット133の姿勢を目標姿勢で保持するとともにバケット133の位置を目標位置まで移動させる際の作業機130の制御を行う。その際、作業機制御部400は、バケット133の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、バケット133の姿勢がその所定の範囲内となるまでバケット133の位置よりバケット133の姿勢を優先して制御する。なお、本実施形態において、バケット133の姿勢とは、後述するバケット面133Sの角度に対応する。また、バケット133の位置とは、例えばバケットピン133Pの位置に対応する。また、目標姿勢は、例えば、バケット133が積載対象物LOを積載するのに適した姿勢である。また、目標位置は、例えば、バケット133が積載対象物LOを積載対象200に排土する位置に対応する。また、バケット133の姿勢を目標姿勢で保持するとともにバケット133の位置を目標位置まで移動させる作業機130の制御は、例えば、入力装置の一例である操作装置123のスイッチ123Sに対する押下操作に応じて開始される。この押下操作が本開示における所定の入力操作の一例である。
【0032】
図5および
図6は、作業機制御部400による自動積込制御における作業機130の制御例を示す。
図5は、作業機械100と積込対象200を模式的に示す平面
図5Aと、バケット133と積込対象200を模式的に示す正面
図5Bとを含む。
図6は、作業機制御部400による自動積込制御における作業機130の制御例を示す。
図6では、姿勢や位置が異なる4つの状態のバケット133の例をバケット133-A1、A2、A3およびA4として示している。なお、
図5において積込対象200はダンプトラックである。
【0033】
正面
図5Bに示すように、作業機制御部400は、自動積込制御において、開始位置133PSから目標位置133PTに到達するまで、バケットピン133Pの位置を自動で制御する。ここで、バケットピン133Pの位置は、垂直方向の位置と前後方向の位置を含む。なお、以下では、垂直方向の位置を、バケット高さともいう。本実施形態では、このバケットピン133Pの位置の制御を「位置制御」という。また、
図6に示すように、作業機制御部400は、バケット133の位置の制御とともに、バケット133のバケット面133Sの対地角度あるいは旋回体120に対する角度θbが目標角度133STの範囲内で保持されるようにバケット133の姿勢を制御する。なお、以下では角度θbをバケット角度ともいう。本実施形態では、このバケット面133Sの角度θbの制御を「姿勢制御」という。バケット面133Sは、バケットピン133Pと刃133Tの先端を結ぶ面である。ここで、目標角度133STは、バケット133-A2を例として、バケットピン133Pを通り、路面RSあるいは旋回体120を基準とした水平線HLを基準とした第1角度θ1および第2角度θ2で定義される。目標角度133STは、第1角度θ1から第2角度θ2までの角度の範囲を含む。
【0034】
図6において、バケット133-A1は自動積込制御開始時の状態である積込指示信号の入力時の状態である。バケット133-A1のバケットピン133Pの位置が開始位置133PSである。また、バケット133-A1のバケット面133Sは、許容角度の範囲外の角度θbを有している。ここで、許容角度は、角度θbにおいて位置制御の実行が許容される範囲である許容角度の範囲の境界となる角度であり、角度θbが許容角度の範囲外の場合は姿勢制御が優先して実行され、許容角度の範囲内の場合は姿勢制御と位置制御の両方あるいはいずれかが実行される。バケット133-A2を例として、許容角度は、バケットピン133Pを通り、路面RSあるいは旋回体120を基準とした水平線HLに対する第3角度θ3で定義される。バケット133-A2は、水平線HLとバケット面133Sがなす角度θbが、許容角度である第3角度θ3と等しい状態である。バケット133-A3は、バケットピン133Pの位置がスティック制御開始高さ閾値と等しい状態である。また、バケット133-A3は、バケット面133Sが目標角度133ST内の状態である。そして、バケット133-A4は、バケットピン133Pの位置が目標位置133PTに達した状態である。
【0035】
図6に示す例では、自動積込制御開始時のバケット133-A1のバケットピン133Pの位置である開始位置133PSとブームピン131Pとの距離が、目標位置到達時のバケット133-A4のバケットピン133Pの位置である目標位置133PTとブームピン131Pとの距離より小さい。また、開始位置133PSは目標位置133PTより低い。したがって、この場合、バケット133には、上昇方向への移動と、ブームピン131Pから離れる方向への移動がなされることになる。この場合、仮に、バケット133-A1のように刃133Tが下を向いた状態でバケット133を持ち上げようとすると、バケット133の底面で土砂等の負荷を受けることになって高負荷となる。そこで、本実施形態では、バケット133の姿勢が目標姿勢である目標角度133STから所定の範囲外にある場合、バケット133の姿勢が範囲内となるまでバケット133の位置制御よりバケット133の姿勢制御を優先させるようにした。なお、円133PCは、ブーム131だけを仮想的に360度、回転させた場合のバケット133-A1のバケットピン133Pの仮想的な軌跡を目安として示す。
【0036】
図6に示す例では、バケット133-A1の状態からバケット133-A2の状態まではバケット面133Sの角度の制御を優先する。作業機制御部400は、バケットシリンダ136の駆動を優先し、ブームシリンダ134とスティックシリンダ135の駆動を停止あるいは抑制する。
【0037】
水平線HLとバケット面133Sがなす角度が許容角度内に到達したバケット133-A2の状態の場合、作業機制御部400は、ブームシリンダ134の駆動の停止あるいは抑制を解除し、バケットシリンダ136とブームシリンダ134の駆動によってバケット133の姿勢と位置を制御する。ここで、スティックシリンダ135の駆動を停止あるいは抑制したままとするのは、ブームシリンダ134の駆動の停止あるいは抑制とスティックシリンダ135の駆動の停止あるいは抑制の両方を解除してしまうと、バケット133を掘削面に押し込む動作とバケット133を持ち上げる動作が同時に発生することになり、作業機130に掛かる負荷が過大となるおそれがあるからである。この状態では、バケット面133Sの角度は目標角度133ST外であるが、負荷増大への影響を一定程度抑制することができる許容角度に達したところで位置制御を開始することで、負荷増大への影響を一定程度抑制した上で目標位置133PTへの到達時間を短縮することができる。
【0038】
そして、バケットピン133Pの位置がスティック制御開始高さ閾値より大きくなったバケット133-A3の状態の場合、作業機制御部400は、スティックシリンダ135の駆動の停止あるいは抑制を解除し、バケットシリンダ136とスティックシリンダ135とブームシリンダ134の駆動によってバケット133の姿勢と位置を制御する。作業機制御部400は、バケットシリンダ136とスティックシリンダ135とブームシリンダ134の駆動によってバケット133の姿勢と位置をバケット133-A4の位置である目標位置まで制御する。なお、スティック制御開始高さ閾値は、路面RSからの高さに対応する値であってもよいし、例えばブームピン131Pの位置等を基準とする値であってもよい。また、この構成において作業機制御部400は、バケット133の位置を制御するとき、バケットピン133Pの位置がスティック制御開始高さ閾値である所定の閾値より低いとき、スティック135の駆動を制限していることになる。
【0039】
なお、
図6に示す例では、バケット133-A3で、バケット面133Sの角度が目標角度133ST内に到達しているが、本実施形態において、作業機制御部400は、バケット面133Sの角度が目標角度133ST内に到達していない場合でも、バケットピン133Pの位置がスティック制御開始高さ閾値より大きくなったときに、スティックシリンダ135の駆動の停止あるいは抑制を解除する。
【0040】
また、平面
図5Aに太線の矢印で示すように、コントローラ128は、自動積込制御において、作業機130の水平方向の位置の制御である旋回方向の制御を実行するが、作業機130の水平方向の位置の制御について限定は無く、例えば特許文献2に記載されている手法で行うことができる。
【0041】
図3に戻り、作業機制御部400において、第1操作指令算出部401は、オペレータによる操作装置123に対する操作入力に応じて、手動操作によるブーム操作指令、スティック操作指令、およびバケット操作指令を算出して、操作指令切換部405へ出力する。
【0042】
目標シリンダ長算出部402は、操作装置123でスイッチ123Sがオンされた場合、対象物検出装置124、位置方位検出装置125、傾斜計測器126、ブーム角センサ137、スティック角センサ138、およびバケット角センサ139の各出力信号に基づいて、目標位置133PTにバケットピン133Pを到達させる目標ブームシリンダ長と目標スティックシリンダ長を決定して出力するとともに、実ブームシリンダ長と実スティックシリンダ長に基づいてバケット133が目標姿勢となるように随時目標バケットシリンダ長を算出して出力する。
【0043】
シリンダ長算出部403は、ブーム角センサ137、スティック角センサ138、およびバケット角センサ139の各出力信号に基づいて、実ブームシリンダ長と実スティックシリンダ長と実バケットシリンダ長を算出して出力する。なお、シリンダ長算出部403は、目標シリンダ長算出部402に含まれていてもよい。
【0044】
判定部404は、ブーム角センサ137、スティック角センサ138、およびバケット角センサ139の各出力信号に基づいて、バケット面133Sの角度が許容角度未満であるか否かを判定するとともに、バケットピン133Pの位置がスティック制御開始高さ閾値より大きいか否かを判定し、各判定結果を出力する。
【0045】
第2操作指令算出部406は、目標シリンダ長算出部402が出力した目標ブームシリンダ長と目標スティックシリンダ長と目標バケットシリンダ長と、シリンダ長算出部403が出力した実ブームシリンダ長と実スティックシリンダ長と実バケットシリンダ長と、判定部404が出力した各判定結果とを入力し、ブーム操作指令、スティック操作指令、およびバケット操作指令を算出して、操作指令切換部405へ出力する。
【0046】
操作指令切換部405は、操作装置123の操作状態と、第1操作指令算出部401が出力したブーム操作指令、スティック操作指令、およびバケット操作指令と、第2操作指令算出部406が出力したブーム操作指令、スティック操作指令、およびバケット操作指令と、目標シリンダ長算出部402が出力した目標ブームシリンダ長と目標スティックシリンダ長と目標バケットシリンダ長と、シリンダ長算出部403が出力した実ブームシリンダ長と実スティックシリンダ長と実バケットシリンダ長とを入力する。
【0047】
操作指令切換部405は、それらの入力信号に基づいて、自動積込制御の実行期間である開始から終了まで、第2操作指令算出部406が出力したブーム操作指令、スティック操作指令、およびバケット操作指令を選択して出力し、自動積込制御を実行していない場合、第1操作指令算出部401が出力したブーム操作指令、スティック操作指令、およびバケット操作指令を選択して出力する。操作指令切換部405は、例えば、スイッチ123Sがオンされた場合、自動積込制御を開始し、各実シリンダ長が各目標シリンダ長に到達した場合あるいは操作装置123に対して所定の停止操作が行われた場合、自動積込制御を終了する。
【0048】
ここで、
図4を参照して、
図3に示す第2操作指令算出部406の構成例について説明する。
図4に示す第2操作指令算出部406は、テーブル501と、減算器502と、論理和回路であるオア回路503と、ディレイ回路504と、セレクタ505と、テーブル511と、減算器512と、論理和回路513と、ディレイ回路514と、セレクタ515と、論理積回路であるアンド回路516と、テーブル521と、減算器522とを備える。
【0049】
減算器502は、目標ブームシリンダ長から実ブームシリンダ長を減算し、ブームシリンダ長偏差を算出して出力する。テーブル501は、減算器502が出力したブームシリンダ長偏差を入力し、偏差に応じたブーム操作指令を算出して出力する。論理和回路503は、バケット角度が許容角度未満である場合に“1”となる信号とディレイ回路504の出力とを入力し、論理和演算を行い、演算結果を出力する。ディレイ回路504は、論理和回路503の出力を入力し、1演算ステップ分遅延させて出力する。ディレイ回路504は、自動積込制御の開始時あるいは終了時にリセットされる。セレクタ505は、論理和回路503の出力が“1”の場合、テーブル501の出力を選択して出力し、論理和回路503の出力が“0”の場合、“0”入力を選択して出力する。以上の構成では、自動積込制御が開始された後、バケット角度が許容角度未満でない間は“0”がブーム操作指令として出力される。一方、バケット角度が一度でも許容角度未満となった場合、以後、継続してテーブル501の出力がブーム操作指令として出力される。
【0050】
また、減算器512は、目標スティックシリンダ長から実スティックシリンダ長を減算し、スティックシリンダ長偏差を算出して出力する。テーブル511は、減算器512が出力したスティックシリンダ長偏差を入力し、偏差に応じたスティック操作指令を算出して出力する。論理積回路516は、バケット角度が許容角度未満である場合に“1”となる信号と、実バケットピン高さがスティック制御開始高さ閾値より大きい場合に“1”となる信号とを入力し、論理積演算を行い、演算結果を出力する。論理和回路513は、論理積回路516の出力とディレイ回路514の出力とを入力し、論理和演算を行い、演算結果を出力する。ディレイ回路514は、論理和回路513の出力を入力し、1演算ステップ分遅延させて出力する。ディレイ回路514は、自動積込制御の開始時あるいは終了時にリセットされる。セレクタ515は、論理和回路513の出力が“1”の場合、テーブル511の出力を選択して出力し、論理和回路513の出力が“0”の場合、“0”入力を選択して出力する。以上の構成では、自動積込制御が開始された後、バケット角度が許容角度未満でないか、または、実バケットピン高さがスティック制御開始高さ閾値より大きくない間は“0”がスティック操作指令として出力される。一方、一度でも、バケット角度が許容角度未満かつ実バケットピン高さがスティック制御開始高さ閾値より大きくなった場合、以後、継続してテーブル511の出力がスティック操作指令として出力される。
【0051】
また、減算器522は、目標バケットシリンダ長から実バケットシリンダ長を減算し、バケットシリンダ長偏差を算出して出力する。テーブル521は、減算器522が出力したバケットシリンダ長偏差を入力し、偏差に応じたバケット操作指令を算出して出力する。
【0052】
なお、バケット操作指令、スティック操作指令およびブーム操作指令が“0”の場合、バケットシリンダ136、スティックシリンダ135およびブームシリンダ134の長さは“0”になる前の長さで維持される。また、論理和回路の出力をディレイ回路を介して論理和回路の入力に戻す回路を設けているので、上述したように、一旦、テーブル501の出力およびテーブル511の出力が選択された場合、その後、テーブル501の出力およびテーブル511の出力の選択条件が不成立となった場合でも選択状態は維持される。
【0053】
図7は、
図4に示す第2操作指令算出部406が実行する処理の例を示す。
図7に示すフローは、所定の周期で繰り返し実行される。
図7に示すフローが開始されると、第2操作指令算出部406は、まず、ブームシリンダ134、スティックシリンダ135およびバケットシリンダ136の各シリンダの各目標シリンダ長と各実シリンダ長との各偏差を算出する(ステップS1)。次に、第2操作指令算出部406は、各偏差に基づいて各操作指令を算出する(ステップS2)。次に、第2操作指令算出部406は、バケット角度が許容角度より小さいか否かを判断する(ステップS3)。バケット角度が許容角度より小さい場合(ステップS3で「Yes」の場合)、第2操作指令算出部406は、バケットピン高さがスティック制御開始高さ閾値より大きいか否かを判断する(ステップS4)。バケットピン高さがスティック制御開始高さ閾値より大きい場合(ステップS4で「Yes」の場合)、第2操作指令算出部406は、ブーム、バケット、およびスティックの各操作指令を出力する(ステップS5)。バケットピン高さがスティック制御開始高さ閾値より大きくない場合(ステップS4で「No」の場合)、第2操作指令算出部406は、ブームおよびバケットの各操作指令を出力する(ステップS6)。また、バケット角度が許容角度より小さくない場合(ステップS3で「No」の場合)、第2操作指令算出部406は、バケット操作指令を出力する(ステップS7)。
【0054】
以上の処理によって、第2操作指令算出部406は、バケット133の姿勢を目標姿勢で保持するとともにバケット133の位置を目標位置まで変化させる作業機130の制御を行う際に、バケット133の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、バケット133の姿勢がその所定の範囲内となるまでバケット133の位置制御よりもバケット133の姿勢制御を優先させることができる。なお、本開示において、目標姿勢から所定の範囲とは、
図6の例では、水平線HLから目標角度133STまでの角度の範囲と、水平線HLから許容角度までの角度の範囲とを含む角度の範囲である。なお、
図6に示す例では一例であって、他の本開示の実施形態では、例えば、水平線HLから目標角度133STまでの角度の範囲と、水平線HLから許容角度までの角度の範囲が、ともに水平線HLの上側または下側であったり、水平線HLから目標角度133STまでの角度の範囲が水平線HLの下側で、水平線HLから許容角度までの角度の範囲が水平線HLの上側であってもよい。また、目標姿勢は、バケット133が積載対象物LOを積載するのに適した姿勢であり、目標位置は、バケットが積載対象物LOを排土する位置に対応する。なお、バケット133が積載対象物LOを積載するのに適した姿勢とは、例えば、目標位置までバケットを移動するにあたり荷こぼれの少ない姿勢であったり、バケットピンとバケットの刃の刃先が水平となる姿勢であったりする。また、
図6の例では目標位置は、目標位置133PTである。
【0055】
次に、本実施形態による作業機130の制御例について説明する。
図8は、自動積込制御の開始時に、バケット角度が許容角度の範囲に対して範囲内の場合または範囲外の場合と、バケット高さがスティック制御開始高さ閾値より高い場合と低い場合との組み合わせで、コントローラ100による自動積込制御における制御態様がどのように変化するのかを白抜きの矢印で示す。
【0056】
図8において、制御態様(C1)はバケットシリンダ136のみが駆動される制御である。制御態様(C2)はバケットシリンダ136とブームシリンダ134が駆動される制御である。制御態様(C3)はバケットシリンダ136とスティックシリンダ135とブームシリンダ134が駆動される制御である。以下、
図9~
図12を参照して自動積込制御における制御態様の変化について説明する。
【0057】
図9に示す例では、自動積込制御の開始時のバケット133-B1のバケット角度が許容角度の範囲外であり、バケット高さがスティック制御開始高さ閾値より低い。また、バケット角度が許容角度の範囲内となった場合のバケット133-B2のバケット高さH1がスティック制御開始高さ閾値より低い。バケット133-B3はバケット高さがスティック制御開始高さ閾値より高く、バケット133が目標姿勢となった場合である。バケット133-B4はバケット133が目標位置に移動した場合である。
図9に示す例では、制御態様(C1)(バケット133-B1~バケット133-B2)→制御態様(C2)(バケット133-B2~バケット133-B3)→制御態様(C3)(バケット133-B3~バケット133-B4)の流れで作業機130が制御される。
【0058】
図10に示す例では、自動積込制御の開始時のバケット133-C1のバケット角度が許容角度の範囲外であり、バケット高さH2がスティック制御開始高さ閾値より高い。また、バケット角度が許容角度の範囲内となった場合のバケット133-C2のバケット高さもスティック制御開始高さ閾値より高い。バケット133-C3はバケット133が目標姿勢となった状態で目標位置に移動した場合である。
図10に示す例では、制御態様(C1)(バケット133-C1~バケット133-C2)→制御態様(C3)(バケット133-C2~バケット133-C3)の流れで作業機130が制御される。
【0059】
図11に示す例では、自動積込制御の開始時のバケット133-D1のバケット角度が許容角度の範囲内であり、バケット高さがスティック制御開始高さ閾値より低い。また、バケット高さがスティック制御開始高さ閾値より高くなった場合のバケット133-D2は目標姿勢となっている。バケット133-D3はバケット133が目標位置に移動した場合である。
図11に示す例では、制御態様(C2)(バケット133-D1~バケット133-D2)→制御態様(C3)(バケット133-D2~バケット133-D3)の流れで作業機130が制御される。
【0060】
図12に示す例では、自動積込制御の開始時のバケット133-E1のバケット角度が許容角度の範囲内であり、バケット高さがスティック制御開始高さ閾値より高い。また、バケット133-E2はバケット133が目標位置に移動した場合である。
図12に示す例では、制御態様(C3)(バケット133-E1~バケット133-E2)の状態で作業機130が制御される。
【0061】
《作用・効果》
以上のように本実施形態では、バケット133の位置・姿勢によって、ブーム131・スティック132・バケット133の動作(操作指令)に優先順位を設けている。本実施形態では、 バケット133の刃133Tが下を向いているときは、バケット133を優先し、刃133Tを上に向けるか、あるいは持ち上げられる姿勢にする。また、バケット133が低い位置にあるときは、ブーム131・バケット133を優先し、バケットを持ち上げる。その後、スティック132を伸ばしてゆく。本実施形態によれば、ブーム131とスティック132の動作を同時に制御しないことで、作業機130にかかる負荷を適切に制御することができる。なお、積込対象200への積み込みでは、スティック132を伸ばさないとバケット133が積込位置まで届かない場合がある。この場合、自動積込制御の動きは、スティック132を伸ばしてバケット133を押す動作と、ブーム131やスティック132を駆動してバケット133を持ち上げる動作の2つを含むことになる。ただし、例えば、自動積込制御の開始時にすでにスティック132が伸ばされた状態であれば、バケット133を駆動してブーム131を持ち上げる動作が行われる。本実施形態によれば、バケット133の姿勢が目標姿勢から所定の範囲外にある場合、バケット133の姿勢がその所定の範囲内となるまでバケット133の位置制御よりもバケット133の姿勢制御を優先させるので、作業機130に掛かる負荷を適切に制御することができる。
【0062】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【0063】
例えば、上記実施形態では、目標位置を対象物検出装置124等を使用して自動で決定するようにしているが、これに限定されない。例えば、オペレータが作業機130を操縦して、目標位置を手動で設定してティーチングするようにしてもよい。また、作業機130の位置と姿勢の制御を自動で行い、
図5に示す旋回方向の制御は手動で行うようにしてもよい。また、自動積込制御は、バケット133に積込動作をさせる制御を含んでいてもよい。例えば、積込動作は、バケット133を排土方向に回動させる制御や、バケット133がクラムバケットである場合におけるクラムシェルを開く制御によって実行することができる。また、
図4に示す例では、操作指令を出力するかしないかの切り換えで、優先させるか否かを切り換えているが、優先しない場合の操作指令をゼロにするのではなく、テーブルの値を一定の割合で抑制したり、あるいは一定の値に固定したりしてもよい。また、他の実施形態として、バケットピンの位置を基準とする制御に代えて、刃先やバケットピン以外のバケットの所定位置を基準とする制御、あるいは、ブームやスティック等の作業機の予め設定した位置等を基準とする制御を、バケットピンの位置を基準とする制御と同様に行ってもよい。
【符号の説明】
【0064】
100…作業機械、110…走行装置、120…旋回体、123…操作装置、123S…スイッチ、124…対象物検出装置、125…位置方位検出装置、126…傾斜計測器、127…油圧装置、128…コントローラ(制御装置)、130…作業機、131…ブーム、132…スティック、133…バケット、134…ブームシリンダ、135…スティックシリンダ、136…バケットシリンダ、400…作業機制御部、406…第2操作指令算出部