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特開2023-40845飼料添加剤、飼料組成物、および肉牛の生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040845
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】飼料添加剤、飼料組成物、および肉牛の生産方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/10 20160101AFI20230315BHJP
   A23K 20/153 20160101ALI20230315BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20230315BHJP
【FI】
A23K50/10
A23K20/153
A23K10/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148024
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】500557048
【氏名又は名称】学校法人日本医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】把田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 次郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 唯史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 昌宏
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005BA02
2B005BA07
2B150AA02
2B150AB02
2B150DC19
2B150DD13
2B150DD21
(57)【要約】
【課題】肉牛の生産に好適な飼料添加剤または飼料組成物を提供することを課題の1つとする。また、肉牛の生産において、肉牛の増体促進することを、更なる課題の1つとする。
【解決手段】肉牛、好ましくは黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種に対して、リボ核酸成分を有効成分とする、肉牛の増体促進用の飼料添加剤を給与する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボ核酸成分を有効成分とする、肉牛の増体促進用の飼料添加剤であって、
前記肉牛は、黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種である、
前記飼料添加剤。
【請求項2】
前記リボ核酸成分が、酵母核酸抽出物である、請求項1に記載の飼料添加剤。
【請求項3】
前記リボ核酸成分の給与量が、0.05~10.0g/日・頭である、請求項1または2に記載の飼料添加剤。
【請求項4】
哺育期および/または育成期の子牛に給与する、請求項1~3のいずれか一項に記載の飼料添加剤。
【請求項5】
植物性飼料および/または動物性飼料を含む主飼料と、請求項1~4のいずれか一項に記載の飼料添加剤とを含む、肉牛の増体促進用の飼料組成物であって、
前記肉牛は、黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種である、
前記飼料組成物。
【請求項6】
肉牛の生産方法であって、
植物性飼料および/または動物性飼料を含む主飼料と、リボ核酸成分を有効成分とする飼料添加剤とを併用して給与することを含み、
前記肉牛は、黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種であり、
前記リボ核酸成分の給与量が、0.05~10.0g/日・頭となるように前記飼料添加剤を給与する、
前記生産方法。
【請求項7】
前記リボ核酸が、酵母核酸抽出物である、請求項6に記載の生産方法。
【請求項8】
前記飼料添加剤を、哺育期および/または育成期の子牛に給与する、請求項6または7に記載の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉牛の哺育、育成に適した飼料添加剤および飼料組成物、並びにこれらを用いた肉牛の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肉用牛の哺育期において、疾病、事故等を起こすことなく、可能な限り短期間でその時期を終えることは、その後の育成期、肥育期の生産性を考えると重要なことである。哺育期には下痢の発生が少なからず問題となっており、その対策が必要である。このため予防的あるいは成長促進目的に抗菌剤が飼料に添加されてきたが、薬剤耐性菌の影響が懸念されるため、硫酸コリスチンが飼料添加物としての指定を取り消されるに至った。さらに、硫酸コリスチン以外の抗菌剤についても、同趣旨での使用制限の動きがある。こうした中、薬剤耐性菌の影響が少ない、抗菌剤に代わる飼料添加物の開発が期待されている。
【0003】
核酸及びヌクレオチドは、家畜類および家禽類の飼料成分としてこれまでにも用いられてきた。これらの成分は、例えば、飼料の摂取効率の改善、増体効率の向上、幼若期の感染症およびそれに伴う下痢症状の緩和など様々な目的による使用が提案されている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭43-14388号公報
【特許文献2】特開20002-45122号公報
【特許文献3】特開平7-184595号公報
【特許文献4】特開2001-340055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、家畜に対する飼料成分としての核酸およびヌクレオチドの使用に関する試験報告は、実際のところモルモットまたは豚を使った試験例が多い。特に、大型の家畜であって反芻動物である牛に関しては、核酸およびヌクレオチドの効能は未だ詳細には明らかではない。ひとくくりに核酸またはヌクレオチドといっても、牛に対しどの成分がどのような点で有効なのかについても必ずしも明確ではない。
【0006】
牛の生産のうちでも、肉牛の生産においては、特に体重増加の効率化が望まれる。しかしながら、どのような核酸およびヌクレオチドの使用が肉牛の生産に適しているかは明らかではなかった。更には、肉牛にも多種多様な品種があり、肉牛の品種レベルで具体的に検討された例はなかった。
【0007】
以上のような状況に鑑み、解決しようとする課題の1つは、肉牛の生産に好適な飼料添加剤または飼料組成物を提供することにある。
また、解決しようとする更なる課題の1つは、肉牛の生産において、肉牛の増体促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示中に提示される発明は、多面的にいくつかの態様として把握しうるところ、課題を解決するための手段として、例えば、下記のように具現化された態様を含む。以下、本開示中に提示される様々な態様の発明のことを包括的に「本発明」ともいう。
【0009】
〔1〕 リボ核酸成分を有効成分とする、肉牛の増体促進用の飼料添加剤であって、
前記肉牛は、黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種である、
前記飼料添加剤。
〔2〕 前記リボ核酸成分が、酵母核酸抽出物である、上記〔1〕に記載の飼料添加剤。
〔3〕 前記リボ核酸成分の給与量が、0.05~10.0g/日・頭である、上記〔1〕または〔2〕に記載の飼料添加剤。
〔4〕 哺育期および/または育成期の子牛に給与する、上記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の飼料添加剤。
〔5〕 植物性飼料および/または動物性飼料を含む主飼料と、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の飼料添加剤とを含む、肉牛の増体促進用の飼料組成物であって、
前記肉牛は、黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種である、
前記飼料組成物。
〔6〕 肉牛の生産方法であって、
植物性飼料および/または動物性飼料を含む主飼料と、リボ核酸成分を有効成分とする飼料添加剤とを併用して給与することを含み、
前記肉牛は、黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種であり、
前記リボ核酸成分の給与量が、0.05~10.0g/日・頭となるように前記飼料添加剤を給与する、
前記生産方法。
〔7〕 前記リボ核酸が、酵母核酸抽出物である、上記〔6〕に記載の生産方法。
〔8〕 前記飼料添加剤を、哺育期および/または育成期の子牛に給与する、上記〔6〕または〔7〕に記載の生産方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示中に提示される発明の一態様によって、肉牛、代表的には黒毛和牛および/または黒毛和牛の交雑種について増体促進させることができる。
本開示中に提示される発明の一態様によれば、離乳後の子牛について増体促進させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本開示において、特に断らない限り、数値範囲に関し、「MM~NN」という記載は、「MM以上NN以下」を示すこととする(ここで、「MM」および「NN」は任意の数値を示す)。また、下限および上限の単位は、特に断りない限り、後者(すなわち、ここでは「NN」)の直後に付された単位と同じである。また、本開示において、「Xおよび/またはY」との表現は、XおよびYの双方、またはこれらのうちのいずれか一方のことを意味する。
【0012】
1.飼料添加剤
本発明の一実施形態は、リボ核酸成分を有効成分とする、飼料添加剤でありうる。本発明の一実施形態において、当該飼料添加剤は、肉牛の増体促進用として好適である。
【0013】
肉牛の生産では、肉を大量に生産できることが重要であり、すなわち肉牛の体重増加を促進できることが望ましい。本発明の一実施形態である飼料添加剤は、肉牛に対する増体促進効果を有する。そのため、本発明の一実施形態である飼料添加剤を給与することにより、体重の増加を促進させることができる。
【0014】
肉牛の種類として好ましくは、黒毛和牛および黒毛和牛の交雑種が挙げられる。黒毛和牛およびその交雑種は、肉牛として増体能力に優れた品種であり、本開示の飼料添加剤等を用いることにより、良質な肉牛をより効率的に生産することに寄与することができる。
【0015】
交雑種は、祖先に黒毛和牛が含まれていればよいが、一方の親が黒毛和牛である交雑第一世代が好適である。交雑種の作出において、黒毛和牛は雄又は雌のいずれであってもよい。黒毛和牛の交雑種として好ましくは、例えば、黒毛和種の雄牛×ホルスタイン種の雌牛の第一世代などが挙げられる。
【0016】
本開示において、「リボ核酸成分」は、リボ核酸を主成分とし、リボ核酸のモノマー単位であるヌクレオチドが若干混在していてもよい。ここで、「主成分」であるとは、有効成分として主たる機能を発揮する成分であること意味し、「リボ核酸成分」中のリボ核酸の含有量(純度)は、少なくとも60重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは、70、73、または75重量%以上でありうる。また、リボ核酸のモノマー単位であるヌクレオチドの含有量は、リボ核酸成分中において、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは、4、3、2、または1重量%以下でありうる。
【0017】
リボ核酸の1分子中には、リボ核酸の構成成分(モノマー成分)であるヌクレオチドが、少なくとも2以上含まれ、好ましくは3以上、より好ましくは4または5以上含まれる。ヌクレオチドよりもリボ核酸の方が、増体促進効果がやや高い場合がある。他方、消化または吸収性の観点から、リボ核酸の分子サイズは、あまり大きすぎないことが好適であり、数値で具体的に示すのは困難ではあるが、概ねヌクレオチド単位で好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは50以下でありうる。
【0018】
本発明の一実施形態において、リボ核酸成分の重量平均分子量(Mw)の上限は、好ましくは30,000以下、より好ましくは25,000以下、さらに好ましくは22,000以下でありうる。
本発明の一実施形態において、リボ核酸成分の重量平均分子量(Mw)下限は、好ましくは3,000以上、より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは10,000以上でありうる。
【0019】
リボ核酸成分を構成する塩基の種類としては、主にアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルが挙げられ、すなわちリボ核酸成分を構成するリボヌクレオシドの種類としては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、が挙げられる。ヌクレオチドを構成するリン酸は、一リン酸であっても、複数のリン酸で構成されていてもよい。リボ核酸成分として、市販品を用いてもよい。リボ核酸成分は、1種を単独で配合してもよいし、複数種を混合して配合してもよい。
【0020】
リボ核酸成分の由来は特に制限はなく、人工合成したものでもよいし、天然物由来のものであってもよい。例えば、酵母などの微生物から抽出または精製したものを用いてもよい。
【0021】
本開示において、用いうる酵母の種類は、有胞子酵母類であっても無胞子酵母類であってもよい。酵母として、具体的には下記のような種類が例示される。
【0022】
有胞子酵母類としては、例えば、シゾサッカロミセス(Shizosaccharomyces)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クリヴェロミセス(Kluyveromyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、ピヒア(Pichia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびリポミセス(Lipomyces)属の酵母が挙げられ、より具体的には、シゾサッカロミセス・ポンビ(Shizosaccharomyces pombe)、シゾサッカロミセス・オクトスポルス(Shizosaccharomyces octosporus);サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・ルーキシイ(Saccharomyces rouxii);クリヴェロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クリヴェロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis);ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala);ピヒア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens);デバリオミセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii);およびリポミセス・スタルケイ(Lipomyces starkeyi)などが挙げられる。
【0023】
無胞子酵母類としては、例えば、トルロプシス(Torulopsis)属、カンジダ(Candida)属、およびロードトルラ(Rhodotorula)属の酵母が挙げられ、より具体的には、トルロプシス・ヴェルサテリス(Torulopsis versatilis);カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、トルラ酵母(Cyberlindnera jadinii(別称:カンジダ・ユチリス(Candida utilis));ロードトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)などが挙げられる。
【0024】
本開示において用いうる酵母として好ましくは、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、パン酵母、トルラ酵母等が挙げられ、具体的にはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・ルーキシイ(Saccharomyces rouxii);クリヴェロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、トルロプシス・ヴェルサテリス(Torulopsis versatilis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、トルラ酵母(Cyberlindnera jadinii(別称:カンジダ・ユチリス(Candida utilis))、ロードトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)などが挙げられる。
【0025】
酵母の中でも、より好ましくは、例えば、トルラ酵母(Cyberlindnera jadinii(別称:カンジダ・ユチリス(Candida utilis))などが挙げられる。トルラ酵母は、酵母の中でもリボ核酸の含有量が多い。このように合成、抽出、または精製したリボ核酸成分は、牛が摂食した際に、吸収されやすい形態とすることができる。廃材とされた生物資源、例えば廃材とされた木材に含まれる木質糖分を用いて酵母などの微生物を増殖し、核酸成分を得て、本発明の飼料添加剤として配合して用いることにより、廃材とされていたものを有用物質に転換することができ、持続可能な循環型社会の形成に寄与することができる。
【0026】
飼料添加剤は、一般に添加剤として採用される形態でありうる。飼料添加剤の形態としては、例えば、粉体、顆粒、マッシュ、ペレット、クランブル、およびフレークなどが挙げられる。飼料添加剤の形態は、単一形態であってもよいし、上記のような形態のうちの2つ以上の形態のものの混合形態、例えば、ペレットとフレークの混合物、マッシュとペレットの混合物など、としてもよい。本発明の一実施形態である飼料添加剤には、必要に応じ任意成分として、水分、油分、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、色材、香料、賦形剤、ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類、抗生物質、抗菌剤などを配合してもよい。
【0027】
本発明の一実施形態において、飼料添加剤の給与は肉牛の成育段階のどの段階でも行いうるが、好ましくは、哺育期および/または育成期の肉牛に給与される。本発明の一実施形態である飼料添加剤を含む飼料組成物は、肉牛の体重増加を促進させることができる。本発明の一実施形態において、飼料組成物は、増体促進の観点からは、哺育期に給与することが好適であり、さらに育成期もその対象となりうる。本発明の好ましい一実施形態としては、少なくとも飼料組成物は哺育期に給与する形態が挙げられる。なお、本開示において「哺育期」とは、分娩後から離乳までの期間であって、液状乳(例えば、代用乳など)を摂取させる期間のことをいう。また、本開示において、「育成期」とは、離乳後から肥育開始までの期間であって、スターター(人工乳)などを摂取させる期間のことをいう。
【0028】
肉牛に対する飼料添加剤の投与量に関しては、下記の「3.肉牛の生産方法」の欄にてまとめて説明する。
【0029】
2.飼料組成物
本発明の一実施形態において、肉牛の増体促進用の飼料組成物は、植物性飼料および/または動物性飼料を含む主飼料と、上記の飼料添加剤とを含む。好ましい一実施形態として、飼料添加剤は、当該飼料添加剤に由来するリボ核酸成分の主飼料に対する重量比率が0.01~5.00%(W/W)(W/W)となるように、飼料組成物中に配合してもよい。
【0030】
主飼料は、植物性飼料および動物性飼料のうちから1種または2種以上の飼料を適宜選択して配合してよい。植物性飼料は、植物由来の飼料であり、例えば、トウモロコシ、マイロ、大麦、小麦、キャッサバ、米ぬか、ふすま、大豆かす、菜種かす、米、米ぬか、およびビート、並びにこれらの加工品などが挙げられる。また、動物性飼料は、動物由来の飼料であり、例えば、脱脂粉乳、および濃縮ホエーなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、飼料組成物または主飼料は、植物性飼料および動物性飼料の他に、例えば炭酸カルシウムなどの無機成分を含んでいてもよい。主飼料は、牛の飼育用に一般に用いられている混合飼料、配合飼料、または粗飼料などを用いてもよい。また、本発明の一実施形態において、飼料組成物または主飼料には、必要に応じ任意成分として、水分、油分、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、色材、香料、賦形剤、ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類、抗生物質、または抗菌剤などを配合してもよい。
【0032】
肉牛に対する飼料添加剤または飼料組成物の投与量に関しては、下記の「3.肉牛の生産方法」の欄にてまとめて説明する。
【0033】
本発明の一実施形態において、飼料組成物の給与は肉牛の成育段階のどの段階でも行いうるが、好ましくは、哺育期および/または育成期の肉牛に給与される。本発明の一実施形態である飼料組成物は、肉牛の体重増加を促進させることができる。本発明の一実施形態において、飼料組成物は、増体促進の観点からは、哺育期に給与することが好適であり、さらに育成期もその対象となりうる。本発明の好ましい一実施形態としては、少なくとも飼料組成物は哺育期に給与する形態が挙げられる。
【0034】
3.肉牛の生産方法
本発明の他の一実施形態として、上記飼料添加剤または飼料組成物を用いた豚の生産方法が提供される。
【0035】
本発明の一実施形態である肉牛の生産方法では、植物性飼料および/または動物性飼料を含む主飼料と、リボ核酸成分を含む飼料添加剤とを併用して給与する。ここで「併用」との用語は、(1)飼料添加剤と主飼料とを別々に給与する形態と、(2)飼料添加剤と主飼料とを混合し、混合飼料(または配合飼料)として給与する形態の双方を含む意味で用いる。飼料添加剤と主飼料とを別々に用いる場合において、それぞれを給与するタイミングは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
肉牛に対するリボ核酸成分の給与量の下限は、好ましくは0.05g/日・頭以上、より好ましくは、0.08g/日・頭以上、さらに好ましくは1.0g/日・頭以上でありうる。このような下限より少なくなるほど、増体促進効果が現れにくくなっていく傾向がある。
肉牛に対するリボ核酸成分の給与量の上限は、好ましくは10.0g/日・頭以下であり、または8.0g/日・頭以下、若しくは5.0g/日・頭以下としてもよい。このような上限を超えて給与しても、増加量に対応したほどの増体促進効果が現れにくくなっていく傾向がある。
【0037】
主飼料の重量に対するリボ核酸成分の重量の好ましい比率については、上記牛一頭当たりの給与量に沿うように適宜調整してよい。また、本発明の一実施形態において、肉牛の生産方法は、上記飼料組成物のところで説明したのと同様に、哺育期の肉牛に対して好適であり、さらに育成期もその対象となりうる。本発明の好ましい一実施形態としては、少なくとも飼料組成物は哺育期に給与する形態が挙げられる。
【実施例0038】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、本開示における本発明の技術的範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
1.試験方法
以下のようにして、牛に対し、飼料成分としてリボ核酸成分を用いた場合の効能について試験を行った。
【0040】
(1)供試動物
北海道の農場にて、下記の要領にて、試験を行った。供試牛として、交雑種オス(ホルスタイン種メス×黒毛和種オス)、24頭を用いた。供試牛は、飼育元から3回に分けて導入した。試験は、供試牛の導入後、1週間程度の予備飼育を行った後に開始した。試験開始時における供試牛は13.5日齢であった。
【0041】
(2)供試飼料
供試牛の導入以後、供試牛への飼料の給与は次のように、代用乳とスターターとを併用して行った。
代用乳の給与は、供試牛の導入後から開始し、朝8時と昼14時の1日2回給与した。導入から5日間は1Lを給与した。最初5日間が終了後、1.5Lに増給し、10日間給与後、2Lに増量した。
スターターの給与は、導入時に200gから給与を開始し、1日1回朝に給与した。完食が確認されたら徐々に増給し、最大で1kgまでとし、代用乳2L及び1kgのスターターを3回以上完食した時点で、離乳とした。
予備飼育期間を含め、代用乳給与期間(哺育期間)は30~60日間であった。
離乳後は、育成期として、育成期用配合飼料を給与した。なお、離乳後における育成期用配合飼料には、下記リボ核酸製品(RNA-M)は未添加である。
【0042】
使用した供試飼料は次のとおりである。
代用乳として、ポテ牛ミルク(製品名、日本農産工業社製)を用いた。
スターター(人工乳)として、ニューカーフバルキー(製品名、日本農産工業社製)を用いた。
リボ核酸として、RNA-M(製品名、日本製紙社製)を用いた。RNA-Mは、トルラ酵母(Cyberlindnera jadinii)から生成されたリボ核酸製剤(核酸純度として78%以上)である。
【0043】
代用乳およびスターターの栄養成分(単位:重量%)を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
(3)試験区
供試牛24頭を、8頭ずつ3つの試験区に分け、1区8頭で、以下のような3試験区を設定した。
試験区1(R1.5区):RNA-M 1.5g/日、抗生剤(なし)
試験区2(R3.0区):RNA-M 3.0g/日、抗生剤(なし)
対照区(R0区):RNA-Mおよび抗生剤の添加なし
【0046】
(4)体重測定
試験開始時、中間時、離乳時、離乳1か月後の育成期に供試牛の体重を測定した。供試牛の日増体重(DG)の結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
本試験での離乳プログラムは、一定量のスターターの摂取が確認できた場合に離乳としているため、離乳までの期間は個体間で異なる。このため、単に離乳時の体重あるいはその期間を比較するのではなく、離乳までの期間を考慮した評価が必要となり、1日当たりの増体重(DG:Daily Gain)は、体重と期間の両方を反映した評価として有効と考える。離乳までの期間のDGにおいて、対照区と比較してRNA-M給与区において増加傾向が認められ、さらに、離乳後、約1ヵ月間の育成期での追跡調査において、R0区と比べてR3.0区で有意な増加がみられ、R1.5区においても増加傾向が認められた。これらは哺育期間および育成期の子牛の成長について、リボ核酸の効果が認められることを示している。