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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040855
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】眼鏡及び眼鏡の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 1/06 20060101AFI20230315BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20230315BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G02C1/06
G02C7/06
G02B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148036
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】521079488
【氏名又は名称】ViXion株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 茂
(72)【発明者】
【氏名】内海 俊晴
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006AA00
2H006BD03
(57)【要約】
【課題】小型の眼用レンズ部を備える眼鏡において、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることを課題とする。
【解決手段】眼用レンズ部3,3を備える眼鏡であって、装用者の視界外に位置する眼鏡フレーム2から延びる連結部材6,6を前記眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置3a,3aに連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持され、前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、該光軸の回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズ部を備える眼鏡であって、
装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を前記眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持され、
前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、該光軸の回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に配置されることを特徴とする眼鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の眼鏡において、
前記所定角度は30°以上であり、
前記被連結位置は、前記装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分のうち、最も頻度の低い区分又は2番目に頻度の低い区分内に配置されることを特徴とする眼鏡。
【請求項3】
眼用レンズ部を備える眼鏡であって、
装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を前記眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持され、
前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、光軸を通る水平仮想線よりも上側に配置されることを特徴とする眼鏡。
【請求項4】
眼用レンズ部を備える眼鏡であって、
装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を前記眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持され、
前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、光軸を通る鉛直仮想線よりも外側に配置されることを特徴とする眼鏡。
【請求項5】
請求項4に記載の眼鏡において、
前記連結部材は、前記眼鏡フレームにおける装用者の耳に掛けられるテンプル部から延びていることを特徴とする眼鏡。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の眼鏡において、
前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、光軸を通る鉛直仮想線よりも外側、かつ、光軸を通る水平仮想線よりも上側に配置されることを特徴とする眼鏡。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の眼鏡において、
前記連結部材は、該連結部材の軸線方向と前記眼用レンズ部の光軸方向とに直交する方向の厚みが、該眼用レンズ部の光軸方向の厚みよりも薄いものであることを特徴とする眼鏡。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の眼鏡において、
前記眼用レンズ部のレンズ有効径が装用者の眼の角膜径以下であることを特徴とする眼鏡。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の眼鏡において、
前記眼用レンズ部は、可変焦点レンズによって構成されていることを特徴とする眼鏡。
【請求項10】
装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持される眼鏡の製造方法であって、
所定のサンプリング条件で装用者の視線方向をサンプリングするサンプリング工程と、
前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、該光軸の回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、前記サンプリング工程でサンプリングした装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分を特定する特定工程と、
前記被連結位置が前記特定工程で特定した区分内に配置されるように、該被連結位置を決定する決定工程とを有することを特徴とする眼鏡の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡及び眼鏡の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可変焦点機能を有する可変焦点レンズ(眼用レンズ部)と、前記可変焦点レンズを駆動する駆動ユニットとを備えた眼鏡が開示されている。この眼鏡は、左右各眼用の可変焦点レンズの全周をそれぞれリム(眼鏡フレーム)によって保持した構成をとる。これらのリム間はブリッジ(眼鏡フレーム)によって接続され、各リムの水平方向外側にヨロイ(眼鏡フレーム)を設けてテンプル部(眼鏡フレーム)が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-240709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、可変焦点レンズは、例えば、そのレンズ有効径が装用者の眼の角膜径以下であり、小型である。このような小型の可変焦点レンズを眼用レンズ部として用いる眼鏡においては、可変焦点レンズを保持する保持構造が装用者の視界に入り込むため、装用者に保持機構を邪魔に感じさせ、利便性を悪化させるという課題があった。
なお、この課題は、可変焦点レンズに限らず、小型の眼用レンズ部を備える眼鏡であれば、同様に生じ得る課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、眼用レンズ部を備える眼鏡であって、装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を前記眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持され、前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、該光軸の回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に配置されることを特徴とするものである。
眼鏡は、一般に、眼用レンズ部が装用者の両眼前方に配置される一方、眼用レンズ部を支持する眼鏡フレームは、おおよそ装用者の視界に入り込まない位置に配置される。可変焦点レンズなどの小型の眼用レンズ部を、装用者の視界に入り込まない位置に配置される眼鏡フレームによって支持する場合、眼鏡フレームと眼用レンズ部とを連結する連結部材(保持構造)が装用者の視界に入り込むことになる。
本発明者らは、研究の結果、連結部材が装用者の視界中のどの位置に(視界中心から見てどの方向に)配置されるかによって、装用者が連結部材を邪魔に感じる度合いが異なることを見出した。したがって、装用者の視界中において、装用者が連結部材を邪魔に感じる度合いが小さい位置(視界中心から見た方向)に連結部材を配置することで、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることが可能である。
装用者は、通常、本眼鏡の装用時に視線方向を変化させるため、どの方向にどのくらいの頻度で視線を向けたかを測定することで、当該装用者が視線を向けることの少ない視線方向を特定することが可能である。装用者が視線を向けることの少ない方向は、装用者が連結部材を邪魔に感じる度合いが小さい方向であると考えることができる。したがって、装用者が視線を向けることの少ない方向に連結部材を配置することで、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
そこで、本眼鏡においては、眼鏡フレームから延びる連結部材が眼用レンズ部に連結される被連結位置が、眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、当該光軸の回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に配置されるようにしている。装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分は、装用者が視線を向けることが相対的に少ない区分であると言える。したがって、本眼鏡のように、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に連結部材を配置することで、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
なお、装用者の視線方向の属する区分ごとの頻度は、例えば、所定のサンプリング条件(例えば、サンプリング時間間隔、サンプリング数、想定状況(自動車や自転車等の乗り物の運転中、屋外活動中、読書中、ゲーム中、スマートフォン使用中、パソコン使用中など)等)で、装用者の視線方向をサンプリングし、上述した複数の区分に対する視線方向の分布を取得して、全体のサンプリング数に対する各区分に属するサンプリング数の比率を求めることで、取得することができる。
【0006】
前記眼鏡において、前記所定角度は30°以上であってもよく、前記被連結位置は、前記装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分のうち、最も頻度の低い区分又は2番目に頻度の低い区分内に配置されてもよい。
光軸の回りに設定される区分数が多すぎると、隣り合う区分間で、装用者の視線方向の属する頻度の違いが明確に現れないので、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果が得られる区分を明確に特定することが難しくなる。本眼鏡のように、所定角度が30°以上であれば、光軸の回りに設定される区分数が最大でも12個となり、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果が得られる区分を明確に特定しやすくなる。その結果、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果が得られる最も頻度の低い区分又は2番目に頻度の低い区分を明確に特定できる。
【0007】
本発明の他の態様は、眼用レンズ部を備える眼鏡であって、装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を前記眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持され、前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、光軸を通る水平仮想線よりも上側に配置されることを特徴とするものである。
日常生活の中において、装用者は、視線を下方へ向ける頻度の方が高いことが知られている。例えば、日常生活の中では屋内や屋外を歩く機会が多く、その際、足元を注意するために視線を下方へ向ける頻度が高い。したがって、眼用レンズ部の光軸を通る水平仮想線よりも上側に連結部材を配置することで、日常生活において装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【0008】
また、本発明の更に他の態様は、眼用レンズ部を備える眼鏡であって、装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を前記眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持され、前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、光軸を通る鉛直仮想線よりも外側に配置されることを特徴とするものである。
眼用レンズ部の光軸を通る鉛直仮想線よりも内側(鼻側)に連結部材が配置されると、視野の中心寄りに連結部材が入り込むことになるので、装用者が連結部材の存在を知覚しやすく、邪魔に感じやすい。また、装用者は、一般に、日常生活の中でも、読書中、ゲーム中、スマートフォン使用中などのように、近方の視認対象物を視認するときに眼鏡を使用する機会が多い。このような近方の視認対象物を視認するときには、輻輳により両眼が内側(鼻側)に寄る。そのため、眼用レンズ部の光軸を通る鉛直仮想線よりも内側(鼻側)に連結部材が配置されると、近方の視認対象物を視認するときに連結部材が視界内に多く入り込み、装用者に連結部材を邪魔に感じさせやすい。
本眼鏡によれば、連結部材が眼用レンズ部の光軸を通る鉛直仮想線よりも外側(鼻から遠い側、すなわち、耳側)に配置されるため、近方の視認対象物を視認するときに、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【0009】
前記眼鏡において、前記連結部材は、前記眼鏡フレームにおける装用者の耳に掛けられるテンプル部から延びていていもよい。
これによれば、テンプル部から延びる連結部材を、装用者の視野内へ水平方向外側(耳側)から進入させ、眼用レンズ部の光軸を通る鉛直仮想線よりも外側(耳側)に配置される被連結位置に連結されるという構成をとることができる。
【0010】
また、前記眼鏡において、前記被連結位置は、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、光軸を通る鉛直仮想線よりも外側、かつ、光軸を通る水平仮想線よりも上側に配置されてもよい。
上述したとおり、装用者は、一般に、日常生活の中では屋内や屋外を歩く機会が多く、その際、足元を注意するために視線を下方へ向ける頻度が高い。また、上述したとおり、装用者は、一般に、日常生活の中でも、読書中、ゲーム中、スマートフォン使用中などのように、近方の視認対象物を視認するときに眼鏡を使用する機会が多く、輻輳により両眼が内側(鼻側)に寄る。本眼鏡によれば、このように日常生活において視線が向きやすい、光軸を通る水平仮想線よりも下側、かつ、光軸を通る鉛直仮想線よりも内側(鼻側)を外した位置に被連結位置が配置される。そのため、日常生活の多くの場面で、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【0011】
また、前記眼鏡において、前記連結部材は、該連結部材の軸線方向と前記眼用レンズ部の光軸方向とに直交する方向の厚みが、該眼用レンズ部の光軸方向の厚みよりも薄いものであってもよい。
これによれば、連結部材として必要な強度を確保するための断面積を確保しつつも、連結部材が円形や正多角形の断面を有する場合と比較して、連結部材が装用者の視野を占有する範囲を狭くすることができる。これにより、装用者に連結部材を更に邪魔に感じさせにくくすることができる。
【0012】
また、前記眼鏡において、前記眼用レンズ部のレンズ有効径が装用者の眼の角膜径以下であってもよい。
レンズ有効径が装用者の眼の角膜径以下である眼用レンズ部の場合、装用者の視野内に連結部材が多く入り込むことになるので、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得られるメリットが大きい。
【0013】
また、前記眼鏡において、前記眼用レンズ部は、可変焦点レンズによって構成されていてもよい。
可変焦点レンズは一般に小型であり、眼用レンズ部として可変焦点レンズを用いる場合、装用者の視野内に連結部材が多く入り込むことになりやすいので、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得られるメリットが大きい。
【0014】
また、本発明の更に他の態様は、装用者の視界外に位置する眼鏡フレームから延びる連結部材を眼用レンズ部の外縁部分の被連結位置に連結することで、該眼用レンズ部が該眼鏡フレームによって支持される眼鏡の製造方法であって、所定のサンプリング条件で装用者の視線方向をサンプリングするサンプリング工程と、前記眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、該光軸の回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、前記サンプリング工程でサンプリングした装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分を特定する特定工程と、前記被連結位置が前記特定工程で特定した区分内に配置されるように、該被連結位置を決定する決定工程とを有することを特徴とするものである。
上述したとおり、装用者の視界中において、装用者が連結部材を邪魔に感じる度合いが小さい位置(視界中心から見た方向)に連結部材を配置することで、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることが可能である。
装用者は、通常、本眼鏡の装用時に視線方向を変化させるため、どの方向にどのくらいの頻度で視線を向けたかを測定することで、当該装用者が視線を向けることの少ない視線方向を特定することが可能である。装用者が視線を向けることの少ない方向は、装用者が連結部材を邪魔に感じる度合いが小さい方向であると考えることができる。したがって、装用者が視線を向けることの少ない方向に連結部材を配置することで、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
そこで、本製造方法においては、眼鏡フレームから延びる連結部材が眼用レンズ部に連結される被連結位置が、眼用レンズ部の光軸に対して直交する仮想面において、当該光軸の回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に配置されるようにしている。装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分は、装用者が視線を向けることが相対的に少ない区分であると言える。したがって、本眼鏡のように、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に連結部材を配置することで、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
装用者の視線方向の属する区分ごとの頻度は、所定のサンプリング条件(例えば、サンプリング時間間隔、サンプリング数、想定状況(自動車や自転車等の乗り物の運転中、屋外活動中、読書中、ゲーム中、スマートフォン使用中、パソコン使用中など)等)で、装用者の視線方向をサンプリングし、上述した複数の区分に対する視線方向の分布を取得して、全体のサンプリング数に対する各区分に属するサンプリング数の比率を求めることで、取得する。
眼鏡の想定状況によっては、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分が装用者ごとに大きく異なる場合も考えられる。このような場合には、装用者ごとに個別にサンプリングを行って当該区分を特定し、その区分に連結部材を配置することで、装用者ごとの専用の眼鏡とすることも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型の眼用レンズ部を備える眼鏡において、装用者に連結部材を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る眼鏡の構成を模式的に示す正面図。
図2】同眼鏡の構成を模式的に示す平面図。
図3】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す断面図。
図4】同眼鏡における可変焦点レンズの概略構成を示す平面図。
図5】同眼鏡における制御装置の構成を示すブロック図。
図6】(a)及び(b)は、同眼鏡における連結部材の断面形状の例をそれぞれ示す説明図。
図7】同眼鏡を装用する装用者が、運転席が右座席にある自動車を運転している状況において、装用者の左眼の視線方向をサンプリングした結果をプロットした視線方向分布の一例を示す図。
図8】同連結部材が可変焦点レンズに連結される被連結位置が異なる一変形例を示す正面図。
図9】同連結部材がテンプル部から延びている一変形例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、眼用レンズ部を備える眼鏡に適用した一実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、眼用レンズ部が可変焦点レンズである例について説明するが、小型の眼用レンズ部(例えば、レンズ有効径が装用者の眼の角膜径以下である眼用レンズ部)であれば、可変焦点レンズに限られない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す正面図であり、図2は、本実施形態に係る眼鏡1の構成を模式的に示す平面図である。
本実施形態における眼鏡1は、眼鏡フレーム2と、眼用レンズ部としての左右一対の可変焦点レンズ3,3と、可変焦点レンズ3,3の焦点距離を制御するレンズ制御装置としての制御装置10と、を備えている。
【0019】
眼鏡フレーム2は、ブリッジ部4と、左右一対の連結部材6,6と、鼻当部7と、左右一対のヨロイ部8,8と、左右一対のテンプル部9,9と、を備えている。
【0020】
ブリッジ部4は、装用時に装用者の視界から上方へ外れる位置に配置され、可変焦点レンズ3,3を保持する左右の連結部材6,6を支持する部材である。ブリッジ部4は、左右のヨロイ部8,8間にわたって左右方向に延在し、ブリッジ部4の左右方向両端部にヨロイ部8,8が取り付けられる。ブリッジ部4は、連結部材6が左右方向に移動可能に連結部材6を支持して、連結部材6に保持される左右一対の可変焦点レンズ3,3の左右方向のレンズ間距離Dを調整できるレンズ間距離調節部を備えるのが好ましい。なお、レンズ間距離Dは、例えば、可変焦点レンズ3,3上の基準位置(例えば可変焦点レンズ3,3の中心位置)間の距離によって規定することができる。ここで、可変焦点レンズ3,3の基準位置は、例えば可変焦点レンズ3,3の光学中心位置と等しく、レンズ間距離Dは各可変焦点レンズ3,3の光学中心がなす距離と等しくなる。
【0021】
連結部材6,6は、可変焦点レンズ3,3を保持する部材であり、その形状は、細長い形状(線状)である。具体的には、本実施形態の連結部材6,6は、塑性変形可能なワイヤー部材によって形成されている。本実施形態における連結部材6は、眼鏡フレーム2におけるブリッジ部4から延び、その先端が可変焦点レンズ3の外縁部分の被連結位置3aに連結することで、可変焦点レンズ3を保持する。連結部材6は、ブリッジ部4に対してスライド部4aを介して支持されており、スライド部4aによってレンズ間距離調節部が構成される。具体的には、スライド部4aは、ブリッジ部4に対して連結部材6を左右方向にスライド可能に保持する部材である。本実施形態におけるスライド部4aは、中空状部材であり、その中空部にブリッジ部4が挿入されて、ブリッジ部4の長手方向に沿って摺動可能なようにブリッジ部4に取り付けられる。
【0022】
レンズ間距離調節部を備えることで、正視状態におけるユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて、可変焦点レンズ3,3のレンズ間距離Dを調整することができる。本実施形態のように可変焦点レンズ3,3が通常の眼鏡レンズと比べて小型である場合、ユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて可変焦点レンズ3,3のレンズ間距離Dをユーザーごとに調整できるようにすることは有益である。なお、レンズ間距離調節部の構成は、本実施形態のものに限られることはない。
【0023】
鼻当部7は、ブリッジ部4に保持され、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの鼻に当接して眼鏡1の位置を位置決めする部材である。
【0024】
ヨロイ部8,8は、ブリッジ部4とテンプル部9,9とを連結する部材である。本実施形態におけるヨロイ部8,8は、ブリッジ部4の端部に取り付けられる取付部8aと、テンプル部9を回動可能に支持するヒンジ部8bとを備えている。
【0025】
テンプル部9,9は、ユーザーが眼鏡1を装着した際にユーザーの耳に掛けられる部材である。本実施形態における左右のテンプル部9,9は、ヨロイ部8,8が備えるヒンジ部8bにより眼鏡1の左右方向中央側に向かってそれぞれ折りたたむことができるように構成されている。
【0026】
本実施形態における可変焦点レンズ3,3は、電気的に制御可能な焦点距離の変更機能を有するものであれば、その構成に限定されない。ただし、可変焦点レンズ3,3は、屈折面の形状が変化することにより焦点距離が変化する形状可変レンズであるのが好ましい。形状可変レンズの中でも、2種類の液体の界面を屈折面とし、液体の濡れ性を電気的に制御して当該界面の形状を変更することで焦点距離を変更可能な液体レンズ(エレクトロウェッティングデバイスなどとも言う。)が好ましい。液体レンズであれば、焦点距離について高速で自由度の高い制御が可能である。
【0027】
本実施形態の可変焦点レンズ3,3は、そのレンズ有効径が装用者の眼の角膜径以下の液体レンズ、具体的にはレンズ有効径(直径)が5mm~12mm程度の液体レンズを採用している。なお、より大型の可変焦点レンズを用いることで、可変焦点レンズがカバーできるユーザーの視線方向範囲が広がり、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0028】
図3は、本実施形態における可変焦点レンズ3の概略構成を示す断面図である。
図4は、本実施形態における可変焦点レンズ3の概略構成を示す平面図である。
本実施形態の可変焦点レンズ3は、図3に示すように、界面Iで非混合状態で接触している絶縁液311と導電液312とが、環状の第一電極301と、第一電極301の上端と下端を閉じる2つの透明な窓部材303,304とによって封入された構成を有する。絶縁液311は例えば油性液体であり、導電液312は例えば比較的導電率の低い水性液体である。第一電極301には電圧V0が印加されるが、本実施形態では環状の第一電極301を接地しているため、V0=0Vである。また、第一電極301は、封入されている絶縁液311及び導電液312に対し、絶縁層301aによって絶縁されている。
【0029】
また、本実施形態の可変焦点レンズ3は、第一電極301の軸Oに対する対称位置に複数対の第二電極302A,302B,・・・が配置されている。本実施形態では、図4に示すように、4対の第二電極302A~302Hが軸Oを中心とした円周上に配置されており、合計8つの第二電極302A~302Hを備えている。
【0030】
第二電極302A~302Hは、図3に示すように、導電液312に接触する位置に配置されている。各第二電極302A~302Hに電圧VA~VHを印加すると、各第二電極302A~302Hと第一電極301との間に電位差が生じ、エレクトロウェッティング効果によって絶縁液311の端部Ia(界面Iの端部Ia)を第一電極301上の絶縁層部分301bに沿って変位させることができる。このように絶縁液311の端部Iaが変位することにより、絶縁液311の形状が変化して界面Iの曲率が変更される。したがって、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、界面Iを屈折面とする可変焦点レンズ3の焦点距離を変化させることができる。
【0031】
特に、本実施形態の可変焦点レンズ3は、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、屈折面である界面Iを、拡散レンズ(凹レンズ)、平面レンズ、集光レンズ(凸レンズ)に変形させることができる。したがって、本実施形態の眼鏡1は、可変焦点レンズ3を拡散レンズ(凹レンズ)とすることで近視ユーザー用の眼鏡として使用でき、また、可変焦点レンズ3を集光レンズ(凸レンズ)とすることで遠視ユーザー用の眼鏡として使用できる。
【0032】
本実施形態の可変焦点レンズ3は、ジオプター換算(焦点距離の逆数)で-15D以上+15D以下の範囲で、焦点距離を変化させることができる。このように焦点距離の変化範囲が広い可変焦点レンズ3を用いることで、例えば、弱視のような低視力のユーザーに対応することも可能である。
【0033】
本実施形態において、第一電極301の軸Oの対称位置に配置されるすべての第二電極302A~302Hに同じ電圧を印加することで、可変焦点レンズ3の光軸を第一電極301の軸Oに一致させたまま、焦点距離を変化させることができる。一方で、各第二電極302A~302Hに対して異なる電圧を印加すれば、焦点距離を変化させるだけでなく、可変焦点レンズ3の光軸をずらしたり傾けたりすることも可能である。すなわち、本実施形態の可変焦点レンズ3は、印加電圧VA~VHを制御することによって、光軸の位置と方向のいずれか一方及び両方を変化させることができる。
【0034】
制御装置10は、図1に示すように、バッテリー20とともに、左右のヨロイ部8,8のうちの一方(図中左側のヨロイ部8)に設けられている。制御装置10は、バッテリー20から可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を制御することにより、可変焦点レンズ3の焦点距離を制御することができる。
【0035】
図5は、本実施形態における制御装置10の構成を示すブロック図である。
本実施形態における制御装置10は、主制御部11と、電圧変更部12と、操作部13と、記憶部14と、を備えている。制御装置10は、可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hと、電圧を供給する電源としてのバッテリー20とが接続されている。
【0036】
主制御部11は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の制御プログラムを実行することにより、眼鏡レンズ装置である眼鏡1の全体的な制御を行う。特に、本実施形態では、主制御部11は、操作部13が受け付けた操作指示に基づいて、可変焦点レンズ3,3の焦点距離が変化するように、可変焦点レンズ3を制御する制御部(制御手段)として機能する。
【0037】
電圧変更部12は、主制御部11の制御の下、バッテリー20から可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を変更する。電圧変更部12は、各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を、第二電極302A~302Hごとに個別に変更することができる。ただし、電圧変更部12は、第二電極302A~302Hの一部だけ(例えば1対の第二電極だけ)を部分的に変更可能なものであってもよい。
【0038】
操作部13は、ユーザーによって操作されることで、ユーザーの操作内容を示す操作信号を主制御部11に出力する。操作部13が受け付けるユーザー操作としては、例えば、電源のオンオフ操作、主制御部11の実行指示、主制御部11の制御内容の変更などが挙げられる。操作部13は、受け付けるユーザー操作の内容に適した種類の操作器(機械式や静電タッチ式などのボタン、ダイヤルなどの回転型操作部など)によって構成される。なお、これらのユーザー操作を不要とする構成とすることも可能であり、その場合には操作部13を省略することが可能である。
【0039】
記憶部14は、制御装置10で使用されるプログラムやデータを記憶する。特に、本実施形態では、後述する可変焦点レンズ3,3の焦点距離制御に使用されるデータとして、ユーザーに適合する可変焦点レンズの焦点距離の測定情報を記憶する。
【0040】
バッテリー20は、制御装置10の電源として機能し、可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hに供給する電圧を出力する。バッテリー20は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。また、太陽光パネルなどの発電機能を備えたものであってもよい。
【0041】
本実施形態では、操作部13がユーザーによる電源オンの操作を受け付けると、可変焦点レンズ3の基本焦点距離の設定が完了していない場合には、基本焦点距離の設定を行う。なお、ここでは、操作部13がユーザーによる電源オンの操作を受け付けることで電源オンになる例であるが、これに限らず、例えば、眼鏡1がユーザーに装着されたことを検知する装着検知部を設け、ユーザーが眼鏡1を装着したことを検知することで電源オンになるように構成してもよい。
【0042】
基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途(ユーザーが視認対象物を視認する距離)に応じて、任意に設定することができる。例えば、ユーザーが近くの視認対象物(スマートフォン、タブレット、ゲーム機、書籍など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この近くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定し、逆に、ユーザーが離れた視認対象物(離れた場所の映像(映画など)、美術品などの鑑賞物、景色など)を視認する用途に眼鏡1を利用するときには、この遠くの視認対象物にピントが合う焦点距離に基本焦点距離を設定する。
【0043】
また、基本焦点距離は、眼鏡1を利用するユーザーの利用用途に関係なく、ユーザーごとに固定の焦点距離に設定してもよい。例えば、近視、遠視、乱視などの屈折異常を含む眼の異常をもつユーザーであれば、ユーザーの処方屈折力(基本屈折力)に対応する焦点距離に基本焦点距離を設定する。この場合、例えば、近視ユーザーであれば、マイナス屈折力に対応する焦点距離が基本焦点距離として設定される。
【0044】
基本焦点距離の設定作業は、専門の作業者あるいはユーザー自身が操作部13を操作することにより行うことができる。例えば、操作部13に屈折力が表記されたダイヤルが設けられている場合、ユーザーの処方屈折力に一致するようにダイヤルを回すことで、基本焦点距離の設定を行うことができる。この場合、ダイヤルの回転位置に応じた電気信号(操作信号)が主制御部11に送られ、主制御部11は、この信号に対応する電圧が可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hに印加されるように、電圧変更部12を制御する。これにより、可変焦点レンズ3における絶縁液311と導電液312との界面Iの形状変化により界面Iの曲率が変更され、可変焦点レンズ3の焦点距離が、設定された基本焦点距離に変更される。この基本焦点距離の情報は、ユーザーに適合する可変焦点レンズ3,3の焦点距離の測定情報として、記憶部14に保存される。
【0045】
次に、本実施形態における可変焦点レンズ3,3の保持機構(連結部材6,6)について説明する。
本眼鏡1は、可変焦点レンズ3,3が小型であるため、可変焦点レンズ3,3を保持する連結部材6,6が装用者の視界に入り込むことになる。本実施形態では、連結部材6,6として、細長い線状の部材(ワイヤー部材)を用いることで、装用者の視界中における連結部材6,6の占有範囲を狭くしている。また、連結部材6,6の先端を可変焦点レンズ3,3の外縁部分の一部(被連結位置3a)に連結した構成としているため、連結部材6,6の位置(視界中心=レンズの軸Oから見た方向)を装用者の視界中の限られた位置(限られた方向)に限定している。このような構成により、眼鏡1を装用する際、装用者に、連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくすることができる。
【0046】
特に、本実施形態の連結部材6,6は、図6(a)及び(b)に示すように、連結部材の軸線方向(図6中紙面に直交する方向)と可変焦点レンズ3,3の光軸方向(図6中上下方向)とに直交する方向(図6中左右方向)の厚みT1が、可変焦点レンズ3,3の光軸方向の厚みT2よりも薄い(T1<T2)。これによれば、線状の連結部材6,6として必要な強度を確保するための断面積を確保しつつも、線状の連結部材6,6が円形や正多角形の断面を有する場合と比較して、連結部材6,6が装用者の視野を占有する範囲を狭くすることができる。これにより、装用者に連結部材を更に邪魔に感じさせにくくすることができる。
【0047】
ところが、可変焦点レンズ3,3を保持する連結部材6,6として線状のものを採用するだけでは、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする効果が十分得られない場合がある。そして、本発明者らは、研究の結果、線状の連結部材6,6が装用者の視界中のどの位置に(視界中心=レンズの軸Oから見てどの方向に)配置されるかによって、装用者が連結部材6,6を邪魔に感じる度合いが異なることを見出した。したがって、装用者の視界中において、装用者が連結部材6,6を邪魔に感じる度合いが小さい位置(視界中心=レンズの軸Oから見た方向)に線状の連結部材6,6を配置することで、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることが可能である。
【0048】
ここで、装用者は、通常、本眼鏡1の装用時に視線方向を適宜変化させるため、どの方向にどのくらいの頻度で視線を向けたかを測定することで、当該装用者が視線を向けることの少ない視線方向を特定することが可能である。装用者が視線を向けることの少ない方向は、装用者が連結部材6,6を邪魔に感じる度合いが小さい方向であると考えることができる。したがって、装用者が視線を向けることの少ない方向に線状の連結部材6,6を配置することで、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【0049】
そこで、本実施形態においては、眼鏡フレーム2のブリッジ部4から延びる連結部材6,6の先端がそれぞれの可変焦点レンズ3,3に連結される被連結位置3aが、可変焦点レンズ3,3の光軸Oに対して直交する仮想面において、当該光軸Oの回りを所定角度ずつに区分して得られる複数の区分のうち、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に配置されるようにしている。装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分は、装用者が視線を向けることが相対的に少ない区分であると言える。したがって、本実施形態のように、装用者の視線方向の属する頻度が平均値よりも低い区分内に線状の連結部材6,6を配置することで、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【0050】
図7は、本眼鏡1を装用する装用者が、運転席が右座席にある自動車を運転している状況(約1時間運転したとき)において、装用者の左眼の視線方向をサンプリングした結果をプロットした視線方向分布の一例を示す図である。なお、右目の場合についても同様の結果が得られるので、その説明は省略する。
装用者の視線方向をサンプリングするサンプリング工程は、例えば、実際に普通乗用車で一般道を走行したドライバー(装用者)の視線データを、公知の視線計測装置(例えば、Seeing Machines社製の「faceLAB 5」)によって計測レート60スキャン毎秒で計測する。これにより、図7に示すように、水平方向の視線角度と垂直方向の視線角度とからなる視線データを得ることができる。なお、サンプリング条件は、これに限らず、適宜変更してもよい。
【0051】
その後、図7に示すように、可変焦点レンズ3,3の光軸Oに対して直交する仮想面(図7の紙面)において、当該光軸Oの回りを所定角度ずつ(本実施形態では45°ずつ)に区分して得られる8つの区分(区分1~区分8)のうち、前記サンプリング工程でサンプリングした装用者の視線データ(各プロット)の属する頻度が平均値よりも低い区分を特定する特定工程を行う。装用者の視線方向の属する区分ごとの頻度は、全体のサンプリング数(例えば20万点)に対する各区分に属するサンプリング数の比率を求めることで、取得することができる。平均値は、全体のサンプリング数(例えば20万点)を区分数(8個)で割ることで得られる。
【0052】
なお、本実施形態の区分数は8個であるが、区分数(光軸Oの回りを区分する所定角度)は任意に設定することができる。例えば、所定角度を30°に設定して12個の区分を得るようにしてもよい。ただし、区分数が多すぎると、隣り合う区分間で、装用者の視線データの属する頻度の違いが明確に現れにくくなるので、所定角度は30°以上に設定するのが好ましい。なお、区分数の下限値は4個(所定角度=90°)とするのが好ましい。
【0053】
図7に示す例において、装用者の視線データ(各プロット)の属する頻度が平均値よりも低い区分は、区分1、区分2、区分3であり、この中でも区分2と区分3の頻度が特に低かった。したがって、区分1、区分2、区分3のうちのいずれか、特に区分2又は区分3のうちのいずれかに被連結位置3aが配置されるように構成すれば、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【0054】
ここで、可変焦点レンズ3,3の光軸Oを通る鉛直仮想線よりも内側(鼻側)に連結部材6,6が配置されると、視野の中心寄りに連結部材が入り込むことになるので、装用者が連結部材6,6の存在を知覚しやすく、邪魔に感じやすい。そのため、本実施形態における左眼用の可変焦点レンズ3については、区分2と区分3のうち、光軸Oを通る鉛直仮想線よりも内側に位置する区分2ではなく、光軸Oを通る鉛直仮想線よりも外側(鼻から遠い側、すなわち、耳側)に位置する区分3内に被連結位置3aが配置されるように構成している。
【0055】
同様の理由から、右眼用の可変焦点レンズ3については、区分2と区分3のうち、光軸Oを通る鉛直仮想線よりも内側(鼻側)に位置する区分3ではなく、光軸Oを通る鉛直仮想線よりも外側(耳側)に位置する区分2内に被連結位置3aが配置されるように構成している。
【0056】
その結果、本実施形態の眼鏡1における連結部材6,6が連結される可変焦点レンズ3,3の被連結位置3a,3aは、それぞれ、図1に示すようになる。
【0057】
なお、図7に例示した視線方向分布図は、本眼鏡1を装用する装用者が自動車を運転している状況下によるものであるため、ルームミラーを視認するための視線方向が属する区分4の頻度が比較的高いものとなっている。しかしながら、日常生活の中において、本眼鏡1を装用する装用者は、視線を下方へ向ける頻度の方が高いことが知られており、自動車を運転しない状況下では、区分4の頻度も区分1と同様の頻度まで低くなる。
【0058】
このような場合には、例えば、図8に示すように、左眼用の可変焦点レンズ3については、区分4内に被連結位置3aが配置されるように構成し、右眼用の可変焦点レンズ3については、区分1内に被連結位置3aが配置されるように構成するようにしてもよい。
【0059】
また、装用者は、一般に、日常生活の中においては、読書中、ゲーム中、スマートフォン使用中などのように、近方の視認対象物を視認するときに眼鏡1を使用する機会が多い。このような近方の視認対象物を視認するときには、輻輳により両眼が内側(鼻側)に寄る。そのため、可変焦点レンズ3,3の光軸Oを通る鉛直仮想線よりも内側に連結部材6,6が配置されると、近方の視認対象物を視認するときに連結部材6,6が視界内に多く入り込み、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせやすい。
【0060】
このような場合、図1図8に示したように、左眼用の可変焦点レンズ3については、区分3又は区分4に限らず、区分5又は区分6に被連結位置3aを配置してもよい。同様に、右眼用の可変焦点レンズ3については、区分1又は区分2に限らず、区分7又は区分8に被連結位置3aを配置してもよい。この場合でも、連結部材6が左眼用の可変焦点レンズ3の光軸Oを通る鉛直仮想線よりも外側(耳側)に配置されるため、近方の視認対象物を視認するときに、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得ることができる。
【0061】
ただし、日常生活の様々な状況において、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする高い効果を得たい場合には、光軸Oを通る水平仮想線よりも下側に被連結位置3a,3aを配置することは避けるのが好ましい。したがって、この場合には、光軸Oを通る鉛直仮想線よりも外側(耳側)、かつ、光軸を通る水平仮想線よりも上側に被連結位置3a,3aを配置するのが好ましい。具体的には、左眼用の可変焦点レンズ3については、図7に示す区分3又は区分4に被連結位置3aを配置するのが好ましく、右眼用の可変焦点レンズ3については、図7に示す区分1又は区分2に被連結位置3aを配置するのが好ましい。
【0062】
なお、本実施形態において、連結部材6,6は、眼鏡フレーム2におけるブリッジ部4から延びる構成となっているが、図9に示すように、眼鏡フレーム2におけるテンプル部9,9から延びる構成としてもよい。これによれば、テンプル部9,9から延びる連結部材6,6を、装用者の視野内へ水平方向外側(耳側)から進入させ、可変焦点レンズ3,3の光軸Oを通る鉛直仮想線よりも外側に配置される被連結位置3aに連結されるという構成をとることができる。この場合、装用者に連結部材6,6を邪魔に感じさせにくくする更に高い効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 :眼鏡
2 :眼鏡フレーム
3 :可変焦点レンズ
3a :被連結位置
4 :ブリッジ部
4a :スライド部
6 :連結部材
7 :鼻当部
8 :ヨロイ部
8a :取付部
8b :ヒンジ部
9 :テンプル部
10 :制御装置
11 :主制御部
12 :電圧変更部
13 :操作部
14 :記憶部
20 :バッテリー
301 :第一電極
301a,301b:絶縁層
302A~302H:第二電極
303,304:窓部材
311 :絶縁液
312 :導電液
D :レンズ間距離
I :界面
Ia :端部
O :軸
PD :瞳孔間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9