(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040866
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】鳥害防止具及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20230315BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20230315BHJP
A01M 29/32 20110101ALI20230315BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
A01M29/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148050
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000243939
【氏名又は名称】名伸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿 昌久
(72)【発明者】
【氏名】内藤 慶和
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 孝治
【テーマコード(参考)】
2B121
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB27
2B121BB30
2B121BB32
2B121EA21
2B121FA12
5G352AC02
5G367BB11
(57)【要約】
【課題】取付作業性を向上し、電線の下に垂れ下がることを防止する鳥害防止具を提供する。
【解決手段】鳥害防止具Xは、コイル状の3次元ライン5又は間隔を空けて連続する複数の環体を含む3次元ライン5と、3次元ライン5により形成される略円柱空間を貫通する支持ライン7とを電線上方に取付可能であって、複数の固定具11、12、13と、3次元ライン5と、支持ライン7とを備える。固定具11、12、13は支持ライン7を挿入可能な挿通孔111、121、131をそれぞれ有し、電線Cを把持して電線C上に立設可能かつ始点固定具11から中継固定具12を経て終点固定具13まで順に立設される。3次元ライン5は、始点固定具11と中継固定具12、中継固定具12と終点固定具13の間に予め架設されている。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状の3次元ライン(5)又は間隔を空けて連続する複数の環体を含む3次元ライン(5)と、前記3次元ラインが形成する略円柱空間を貫通する支持ライン(7)とを電線上方に取付可能な鳥害防止具(X)であって、
前記支持ラインを挿入可能な挿通孔(111、121、131)をそれぞれ有し、電線を把持して電線上に立設可能かつ始点固定具(11)から終点固定具(13)まで順に立設される複数の固定具(11、12、13)と、
各前記固定具間に予め架設された前記3次元ラインと、
始端側が予め各前記挿通孔に挿入され、終端側が巻筒(77)に巻回され、始端及び終端が各前記挿通孔から抜けないようにされた前記支持ラインと、
を備える鳥害防止具。
【請求項2】
請求項1に記載の鳥害防止具を電線上方に取付けるときに用いるボビン治具(3)であって、
地側は電線を把持して電線上に立設可能であり、天側には前記巻筒を取付けたボビン(39)の軸孔(390)を取付可能なポール(37)を有し、
前記終点固定具に対し、前記始点固定具と反対側に立設され、
前記ポールに前記軸孔を取付けた状態で前記ボビンを支持するボビン治具。
【請求項3】
ボビン治具(3)と取付治具(9)を用いて電線上方に鳥害防止具(X)を取付ける鳥害防止具の取付方法であって、
前記鳥害防止具は、コイル状の3次元ライン(5)又は間隔を空けて連続する複数の環体を含む3次元ライン(5)と、前記3次元ラインにより形成される略円柱空間を貫通する支持ライン(7)とを電線上方に取付可能であり、前記支持ラインを挿入可能な挿通孔(111、121、131)をそれぞれ有し、電線を把持して電線上に立設可能かつ始点固定具(11)から終点固定具(13)まで順に立設される複数の固定具(11、12、13)と、各前記固定具間に予め架設された前記3次元ラインと、始端側が予め各前記挿通孔に挿入され、終端側が巻筒(77)に巻回され、始端及び終端が各前記挿通孔から抜けないようにされた前記支持ラインとを備え、
前記ボビン治具は、地側は電線を把持して電線上に立設可能であり、天側には前記巻筒を取付けたボビン(39)の軸孔(390)を取付可能なポール(37)を有し、前記終点固定具に対し、前記始点固定具と反対側に立設され、前記ポールに前記軸孔を取付けた状態で前記ボビンを支持し、
前記取付治具は、仮設アーム(93)と、電線を収容可能な筒形状かつ前記筒形状の軸方向に沿って開口(961)を有する懸架アーム(96)と、前記開口を閉鎖可能なカバー(963)とを有し、
前記複数の固定具と前記ボビン治具とを前記取付治具の前記仮設アーム上に仮設する仮設ステップ(S1)と、
前記複数の固定具と前記ボビン治具とが前記取付治具の前記仮設アーム上に仮設された前記取付治具の前記懸架アームを電線に被せて懸架し、前記開口を閉鎖する懸架ステップ(S2)と、
前記仮設アーム上に仮設された各前記固定具を端から順に、前記3次元ラインを伸ばしながら電線上に立設させる取付ステップ(S3)と、
前記取付ステップ終了後、前記開口の閉鎖状態を解除して前記取付治具を電線から取り外す回収ステップ(S4)と、
を含む鳥害防止具の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥害防止具及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線用の鳥害防止具では、従来の直線タイプに加え、最近ではコイル状のものが知られている。いずれも電線上に複数の固定具を取付け、固定具間に鳥害防止線を架設することにより、電線上に鳥が止まることを防止するものである。
【0003】
直線タイプでは例えば特許文献1に、鳥害防止線、支持部材、中間部材から構成され、支持部材に鳥害防止線を巻回して保持するリールを取着する電線用鳥害防止具が開示されている。
【0004】
コイル状のものでは例えば特許文献2に、電線に装着可能な第1ライン支持具、第2ライン支持具、連結部材、第1ライン支持具と第2ライン支持具の間に架け渡されたラインロープを備える鳥害防止具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-30468号公報
【特許文献2】特開2020-195207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の鳥害防止具において取付作業の大部分を高所作業で行う場合、作業が容易でなかった。特に現場では始点固定具に鳥害防止線を取付けて順次後続の固定具に鳥害防止線を架設することが多く、固定具と鳥害防止線を一体に扱うことが難しかった。
【0007】
また樹脂製のコイルでは取付後、積雪等の荷重による材料変形や劣化によりコイル間隔が徐々に大きくなるおそれがある。特に固定具間で鳥害防止目的の電線より低い位置まで垂れ下がることにより、鳥害防止性能が低下するおそれがある。この場合一般にはコイル状の鳥害防止線をたるみのない状態に戻す必要がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付作業性を向上し、かつ電線より低い位置への垂れ下がりを防止する鳥害防止具及びその取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(一態様)
本発明の一態様は、上記の課題を解決するため、コイル状の3次元ライン(5)又は間隔を空けて連続する複数の環体を含む3次元ライン(5)と、3次元ラインにより形成される略円柱空間を貫通する支持ライン(7)とを、電線上方に取付可能な鳥害防止具(X)であって、複数の固定具(11、12、13)と、3次元ラインと、支持ラインとを備える。
【0010】
複数の固定具は支持ラインを挿入可能な挿通孔(111、121、131)をそれぞれ有し、電線を把持して電線上に立設可能かつ始点固定具(11)から終点固定具(13)まで順に立設される。3次元ラインは各固定具間に予め架設されている。支持ラインは、始端側が予め各挿通孔に挿入され、終端側が巻筒(9)に巻回され、始端及び終端が各挿通孔から抜けないようにされている。
【0011】
[一態様の効果]
本発明の鳥害防止具は、上記の構成により高所作業が最小限になり、取付作業性が向上する。また電線に取付けると支持ラインが3次元ラインの略円柱空間を貫通して架設されるため、取付後に3次元ラインが電線より低い位置まで垂れ下がることを防止する。
【0012】
(別の態様)
本発明の別の態様は、ボビン治具(3)と取付治具(9)を用いて電線上方に鳥害防止具(X)を取付ける鳥害防止具の取付方法であって、仮設ステップ(S1)と、懸架ステップ(S2)と、取付ステップ(S3)と、回収ステップ(S4)とを含む。
【0013】
鳥害防止具は、コイル状の3次元ライン(5)又は間隔を空けて連続する複数の環体を含む3次元ライン(5)と、3次元ラインにより形成される略円柱空間を貫通する支持ライン(7)とを電線上方に取付可能であり、電線を把持して電線上に立設可能かつ始点固定具(11)から終点固定具(13)まで順に立設される複数の固定具(11、12、13)と、各固定具間に予め架設された3次元ラインと、始端側が予め各挿通孔に挿入され、終端側が巻筒(9)に巻回され、始端及び終端が各挿通孔から抜けないようにされた支持ラインとを備える。
【0014】
ボビン治具は、地側で電線を把持して電線上に立設可能であり、天側には巻筒を取付けたボビン(39)の軸孔(390)を取付可能なポール(37)を有する。終点固定具(13)に対し、始点固定具と反対側に立設され、ポールに軸孔を取付けた状態でボビンを支持する。
【0015】
取付治具は、仮設アーム(93)と、電線を収容可能な筒形状かつ前記筒形状の軸方向に沿って開口(961)を有する懸架アーム(96)と、前記開口を閉鎖可能なカバー(963)とを有する。
【0016】
仮設ステップでは、複数の固定具とボビン治具とを取付治具の仮設アーム上に仮設する。懸架ステップでは、複数の固定具とボビン治具とが取付治具の仮設アーム上に仮設された取付治具の懸架アームを電線に被せて懸架し、カバーを閉鎖する。取付ステップでは、仮設アーム上に仮設された各固定具を端から順に、3次元ラインを伸ばしながら電線上に立設させる。取付ステップ終了後、回収ステップで、カバーの閉鎖状態を解除して取付治具を電線から取り外す。
【0017】
[別の態様の効果]
本発明の鳥害防止具の取付方法は、予め3次元ラインが架設され支持ラインが抜けないようにされた各固定具と、ボビンを取付けた巻筒を支持するボビン治具とを、取付治具の仮設アーム上に立設する作業を地上で行った後で電線に懸架することにより、高所では間隔を所定値になるように引っぱりながら順に固定具を電線上に立設していくだけでよく、簡便に設置が完了する。これにより高所作業が最小限になり、取付作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】一実施例の3次元ライン及び支持ラインを示す斜視図。
【
図14】鳥害防止具のさらに別の取付方法の作業フロー。
【
図18】他の実施例の3次元ライン及び支持ラインを例示する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(一実施例)
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。符号は初出の場合、鍵括弧「」を付す。一実施例の取付完成前の「鳥害防止具X」及び鳥害防止具Xの取付に用いる「ボビン治具3」を
図1~3に示す。コイル状の鳥害防止線「3次元ライン5」及び直線タイプの鳥害防止線「支持ライン7」を
図4に示す。
【0020】
本実施例は、3次元ライン5及び3次元ライン5の「略円柱空間55」を貫通する支持ライン7(
図4)を高所に架設された「電線C」上方に取付可能な鳥害防止具Xである。電線Cは送電線であるが、
図3と
図17では略記による断面図を示す。
【0021】
鳥害防止具Xは、複数の「固定具11、12、13」と、複数の3次元ライン5と、支持ライン7とを備えている。複数の固定具11、12、13は、支持ライン7を挿入可能な挿通孔111、121、131をそれぞれ有し、電線Cを把持して電線Cの上方に立設可能、かつ、「始点固定具11」から「中継固定具12」を経て「終点固定具13」まで順に立設される。
【0022】
複数の3次元ライン5は、始点固定具11と中継固定具12の間、中継固定具12と終点固定具13の間にそれぞれ予め架設されている。支持ライン7は「始端71」側が予め各前記挿通孔に挿入され、「巻筒77」に巻回され、かつ始端71及び「終端73」はそれぞれ各前記挿通孔から抜けないように抜け止め加工されている。
【0023】
始点固定具11を
図5に示す。巻筒77から引き出された支持ライン7の始端71は、始点固定具11の「挿通孔111」を貫通し、抜け止めを形成した状態で留まっている。終端73は巻筒77が側面に有する仮止め孔(図示なし)に挿入され、抜け止め加工された部分で巻筒77の内面に留まった状態になっている。このとき、強く引っ張れば当該仮止め孔から抜けるようにされているが、終点固定具13の挿通孔131からは抜けないようになっている。
【0024】
本実施例では、複数の固定具11、12、13が筒状物などに取付けられ、固定具11及び固定具12、固定具12及び固定具13の間に3次元ライン5がそれぞれ予め架設され、支持ライン7の始端71が始点固定具11の挿通孔111に、終端73が終点固定具13の挿通孔131に、それぞれ抜けないようにされた鳥害防止具Xが、支持ライン7が巻回された巻筒77を付属品としてセットで提供されるものである。取付施工業者はボビン治具3、「取付治具9」、及び後述の「遠隔操作棒」を別途入手して利用することで、簡便に鳥害防止具Xを電線Cに取付けることができる。
【0025】
なお、特に固定具や固定具を電線に取付ける器具である遠隔操作棒などに関し、本発明は特許文献1、特開2002-176901号公報(以下「特許文献3」という)に記載の公知技術に基づく。よって本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、本発明を実施するに当たり、特許文献1及び3を参照可能である。
【0026】
ボビン治具3を、
図6~8に示す。ボビン治具3には、巻筒77を装着して固定するための「ボビン39」が付属している。ボビン39を
図8、9に示す。ボビン治具3とボビン39は
図1~3にも表れているので併せて参照する。
図5、6に示すように、固定具11、12、13及びボビン治具3はほぼ同じ構造を有し、特許文献1、3に記載されている公知技術であるため、ここでは簡単な説明に留める。
【0027】
ボビン治具3は、電線Cを把持して電線Cの上に立設可能であり、地側に電線Cを把持するグリップ33を有し、天側に巻筒77が取付けられたボビン39の軸孔390を取付可能なポール37を有し、ボビン39を取付けた状態でボビン39を支持する。ボビン治具3は、終点固定具13に対し、始点固定具11と反対側に立設される。
【0028】
図6に示すように、ボビン治具3のグリップ33は「内側上面333」が電線Cの上端に当接し、上下に移動可能な「内側下面339」が電線Cの下端に当接することにより、電線Cを上下から挟持して電線Cの上方に立設する。この構造は固定具11、12、13についても同様である。
【0029】
図9に示すように、ボビン39は4個の部材からなる。上下対になる鍔付き円筒部材391、393の円筒部分の外径は、支持ライン7が巻回された巻筒77の内径が収まるように形成されている。取付施工業者は、取付施工前に、巻筒77をボビン39に収容し、中芯395を通してボルト399で固定したものをボビン治具3のポール37に取付けておく。
【0030】
次に取付治具9について説明する。取付治具9を
図10~12に示す。取付治具9は、仮設アーム93と、電線を収容可能な筒形状かつ前記筒形状の軸方向に沿って開口961を有する懸架アーム96と、開口961を閉鎖可能なカバー963を有する。
【0031】
仮設アーム93は、固定具11、12、13及び支持ライン7を引き出せるようにしたボビン治具3(以下「鳥害防止具一式」という)を電線Cの代わりに仮設しておくための部材である。
図12は仮設アーム93に固定具11、12、13とボビン治具3とが仮設された状態を示している。
【0032】
懸架アーム96は、鳥害防止具一式を仮設した取付治具9を、電線C上に懸架させておくための部材である。開口961を通して被せるようにして懸架アーム96の中に電線Cを収容して取付治具9を懸架した後、カバー963を閉じて開口961を閉鎖する。これにより、電線Cから懸架アーム96が外れて落下することを防止する。
図10はカバー963を開いたときの状態、
図11はカバー963を閉じたときの状態を示している。
【0033】
[鳥害防止具の取付方法]
ここで「鳥害防止具の取付方法」について説明する。これは、本発明の「別の態様」に対応するもので、「仮設ステップS1」、「懸架ステップS2」、「取付ステップS3」、「回収ステップS4」を含む。
図13に鳥害防止具の取付方法の作業フローを示す。
【0034】
仮設ステップS1では、取付施工業者は、鳥害防止具一式を取付治具9の仮設アーム93上に仮設する。この作業は高所作業の前に地上で簡便に行うことができる。懸架ステップS2以降は高所作業となる。
【0035】
懸架ステップS2では、取付施工業者は鳥害防止具一式が仮設アーム93上に仮設された取付治具9を電線Cに被せて懸架した上でカバー963を閉じる。本明細書には図示していないが、遠隔操作棒などを使用すれば高所作業を簡便に行うことができる。
【0036】
遠隔操作棒とは、先端が固定具11、12、13の下端部119、129、139(
図1、14、16等)やボビン治具3の下端部309(
図7~8)に連結可能な長竿状の器具(特許文献3の
図3)であり、連結した固定具11、12、13及びボビン治具3を遠隔保持したまま回転させることができる。
【0037】
取付ステップS3では、取付施工業者は遠隔操作棒の先端を仮設アーム93上に仮設された始点固定具11の下端部119に連結して、仮設アーム93から取り外し、電線C上に立設させる。次に、中継固定具12の下端部129に連結し、同じように立設させる。
【0038】
このとき、3次元ライン5は予め架設されており、ボビン39は自由に回転可能なため、3次元ライン5を引き伸ばせば、連動して支持ライン7が自ずと必要な長さだけ引き出されるため、固定具間隔を自由に調整できる。間隔は状況に応じてある程度変更可能であるが、架設された3次元ライン5の長さによって自ずと全長が規定されることになる。
【0039】
終点固定具13についても同様であるが、終点固定具13を仮設アーム93から取り外すときはやや強い力で引っ張る。こうすることで巻筒77の仮止め孔(図示なし)に仮止めされていた支持ライン7の(抜け止め加工された)終端73が仮止め孔から脱離し、終点固定具13の挿通孔131に引っ掛かり、抜け止めされる。
【0040】
なお、例えば3次元ライン5を比較的狭い固定具間隔にしたときなど、支持ライン7が初期長さのままではたるみを生じてしまう場合が考えられる。このようなときは予め抜け止め加工された終端73ではなく、挿通孔131を通過させたまま終点固定具13の挿通孔131より終端73に近い側で支持ライン7を切断し、新たに生じた末端部分で取付施工業者が玉結びをするなどして現場で適宜抜け止め加工を施し、挿通孔131に引っ掛かるようにしてもよい。これにより固定具間隔調整上の自由度が大きくなる。
【0041】
立設に当たっては、電線Cを各グリップ33の内側上面333と内側下面339の間に挟み(グリップの代表図として
図6)、遠隔操作棒を回転させて内側下面339の位置を上昇させる。こうして電線Cを強く把持させ、固定具11、12、13を安定に立設する。このように取付けることで効率的に高所作業を行い、鳥害防止具を架設することができる。
【0042】
回収ステップS4では、ボビン治具3のみが仮設アーム93上に立設したままの取付治具9について、カバー963を開けて懸架アーム96を電線Cから取り外して回収する。これにより、鳥害防止具Xの取付作業が終了する。
【0043】
[鳥害防止具の別の取付方法]
次に「鳥害防止具の別の取付方法」について説明する。これは上記の鳥害防止具の取付方法において、ボビン治具は使用するが、取付治具9を使用しない方法である。例えば、作業員が遠くから紙管などの筒状物を把持できる工具(長尺の「ヤットコ」など)を用いて鳥害防止具一式が取付けられた紙管を把持して電線Cの近くにささげ持ちながら、あるいは、作業員が別の遠隔操作棒を用いて、紙管に取付けられた鳥害防止具一式のうち固定治具11、12、13の下端部119、129、139、ボビン治具3の下端部309のうちいずれかに連結して鳥害防止具一式全体を電線Cの近くにささげ持ちながら、取付施工を行う。これにより、取付治具9がなくても取付施工することができる。
【0044】
[鳥害防止具のさらに別の取付方法]
さらに、「鳥害防止具のさらに別の取付方法」について説明する。これはボビン治具3は使用するが、取付治具9を使用せず、さらに、鳥害防止具一式が取付けられた紙管をも使用しない取付方法である。鳥害防止具のさらに別の取付方法は「仮設ステップT1」、「間隔調整ステップT2」、「回収ステップT3」を含む。
図14に鳥害防止具のさらに別の取付方法の作業フローを示す。
【0045】
仮設ステップT1では取付施工業者は鳥害防止具一式を電線Cに取付ける。ここでは鳥害防止具一式を電線C上に仮固定するのみでよい。遠隔操作棒(特許文献3)を使用することで簡便に高所作業を行うことができること、遠隔操作棒の使用方法などは鳥害防止具の取付方法と同じである。
【0046】
間隔調整ステップT2では、取付施工業者は3次元ライン5及び支持ライン7を引き出しながら、固定具11、12、13又はボビン治具3の間隔を調整する。本実施例では、ボビン治具3を終点固定具13側に固定し、遠隔操作棒を用いて固定具11、12、13の間隔を拡げ、所望の位置に固定する。固定具間隔は現場の状況等に合わせ、適宜変更可能である。
【0047】
3次元ライン5は予め架設されており、またボビン39は自由に回転可能なため、間隔調整ステップT2を実施すれば、支持ライン7は自ずと必要な長さだけ引き出されることになる。こうして鳥害防止具一式を電線Cに取付けていくことで、3次元ライン5及び支持ライン7を効率的な高所作業により架設することができる。
【0048】
間隔調整ステップT2において、終点固定具13をボビン治具3から引き離すときにやや強い力で引っ張り、巻筒77の仮止め孔(図示なし)に仮止めされていた支持ライン7の抜け止め加工された終端73を仮止め孔から脱離させて終点固定具13の挿通孔131に引っ掛かるように抜け止めすることは、鳥害防止具の取付方法と同じである。
【0049】
さらに、挿通孔131を通過させたまま終点固定具13の挿通孔131より終端73に近い側で支持ライン7を切断し、新たに生じた末端部分で取付施工業者が現場で抜け止め加工を施して挿通孔131に引っ掛かるようにしてもよいことも、鳥害防止具の取付方法と同じである。
【0050】
その後、電線C上からボビン治具3を取り外して回収し、鳥害防止具Xの取付作業を終了する。これが回収ステップT3である。
【0051】
以上、本発明の鳥害防止具の取付方法、鳥害防止具の別の取付方法、又は鳥害防止具のさらに別の取付方法を行った結果物である取付完成後の鳥害防止具X(複数の固定具、コイル状の鳥害防止線5と直線タイプの鳥害防止線7)を、
図15~17に示す。
図17のように鳥害防止具Xを架設しておくと、鳥が電線Cに止まろうとすると鳥害防止線に触れて嫌がるため、鳥が止まるのを防止する効果が期待される。
【0052】
(本発明の効果)
以上、本発明の鳥害防止具及びその取付方法を実施すれば、従来技術の課題を解消する以下の効果が期待される。
【0053】
(効果1)コイル状の鳥害防止線と直線タイプの鳥害防止線を複数の固定具及びボビン治具に予め組付けた状態にしておくことで電線への取付作業を効率的に行うことができる。
【0054】
(効果2)コイル状の鳥害防止線と直線タイプの鳥害防止線とを併用することにより電線より低い位置へ垂れ下がることが防止され長期にわたり安定に鳥害防止効果を維持する。
【0055】
(その他の実施例)
上記の実施例では、3次元ラインは
図4に例示したようにコイル状の鳥害防止線を支持ライン(直線タイプの鳥害防止線)が貫通する形式となっているが、3次元ラインの形状はこの形式に限定されない。例えば
図18に例示したように、間隔を空けて連続する複数の環体と支持ラインが一体化し、各環体が支持ラインから垂下されるようなものであってもよい。
【0056】
上記の実施例は送電線に取付けることを想定したものであるが、本発明の対象は送電線に限定されない。高所低所を問わず、架設されたケーブル類であれば同様に適用できる。
【0057】
鳥害防止具一式についても、実施例に例示したものに限定されない。各3次元ラインの長さ、固定具の数などは必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
11 ・・・ 固定具(始点固定具)
12 ・・・ 固定具(中継固定具)
13 ・・・ 固定具(終点固定具)
111、121、131 ・・・ 挿通孔
3 ・・・ ボビン治具
37 ・・・ ポール
39 ・・・ ボビン
390 ・・・ 軸孔
5 ・・・ 3次元ライン
7 ・・・ 支持ライン
77 ・・・ 巻筒
9 ・・・ 取付治具
93 ・・・ 仮設アーム
96 ・・・ 懸架アーム
961 ・・・ 開口
963 ・・・ カバー
S1 ・・・ 仮設ステップ
S2 ・・・ 懸架ステップ
S3 ・・・ 取付ステップ
S4 ・・・ 回収ステップ
X ・・・ 鳥害防止具