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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040869
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】撚線導体
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/08 20060101AFI20230315BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H01B5/08
D07B1/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148056
(22)【出願日】2021-09-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】395005169
【氏名又は名称】三洲電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 俊文
【テーマコード(参考)】
3B153
5G307
【Fターム(参考)】
3B153AA10
3B153AA15
3B153AA32
3B153CC55
3B153FF39
5G307EA01
5G307EA04
5G307EB06
5G307EF09
5G307EF10
(57)【要約】
【課題】圧縮することなく、若しくは、低い圧縮率で、撚線導体の断面形状を真円状に近い形状に製造できる撚線導体を提供する。
【解決手段】
中心部に配設した1本の中心線11で構成された内層2を有し、内層2の外側に、複数本の第1外層線12で構成した第1外層4を配設し、第1外層4の外側に、第1外層線12の本数と同じ本数の外細径線13と、第1外層線12の本数と同じ本数で、かつ、外細径線13より太い外太径線14で構成した最外層5を配設し、第1外層線12を周方向に離間して配設し、周方向に隣り合う第1外層線12,12間の外側に外太径線14を配設し、周方向に隣り合う外太径線14,14間に1本の外細径線15を配設した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、該中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して形成した第1内層で構成された内層を有し、
該内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、
該第1外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、前記外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、
前記第1外層線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う第1外層線間の外側に前記外太径線を配設し、周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を配設したことを特徴とする撚線導体。
【請求項2】
中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、該中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有し、
該内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、
該第1外層の外側に、前記第1外層線の本数と同じ本数の第2外層線で構成した第2外層を配設し、
該第2外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、前記外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、
前記第1外層線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う第1外層線間の外側に前記第2外層線を配設し、
周方向に隣り合う第2外層線間の外側に前記外太径線を配設し、周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を配設したことを特徴とする撚線導体。
【請求項3】
前記撚線導体の中心から、前記最外層を構成する外細径線の外縁端までの距離と、
前記撚線導体の中心から、前記最外層を構成する外太径線の外縁端までの距離が同じであることを特徴とする請求項1又は2記載の撚線導体。
【請求項4】
前記最外層を構成する素線は、外側から圧縮変形されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の撚線導体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚線導体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線等に使用される撚線導体を構成する各々の素線は、一般的に、全て断面円形の丸線で、かつ、同一径である。該素線として銅線が主として用いられ、その銅線に、錫、ニッケル、銀、或いはアルミ、各種合金をメッキしたものが使用されている。
【0003】
例えば、同心撚り構成で、かつ、19本の素線で構成される撚線導体は、一般的に、図15に示すように、撚線導体101における中心の1本の素線102を核として、その周囲を6本の素線103が覆い囲んで内層を形成し、更に、その外周を12本の素線104が覆い囲んで外層を形成し、それを同一方向に撚ることで形成されている。
【0004】
素線102、103、104が全て、断面円形で、かつ、同一径であることから、素線102、103、104を標準心線配列で配列して撚線導体101を形成すると、その外周形状は図15に示すように、六角形状に近似した形状となり、丸形状に近似した形状とはならない。以下、これを従来技術1とする。
【0005】
一般的に、撚線導体101は、図15に示すように、外周部に絶縁材106が被覆されて、電線(被覆線)等107として使用される。絶縁材106の減量化は、資源の有効活用の観点から重要であり、そのために、撚線導体の断面形状は真円であることが望まれる。
【0006】
しかし、同じ径の素線で、かつ、19本の同心撚り配列で撚線導体を構成すると、例えば、図15に示すように、撚線導体101の断面形状の外形は、六角形状でとなり、絶縁材106の厚みは、頂点部の近傍は薄く、頂点部から辺部に至るほど厚くなり、絶縁材106の厚みは不均一となる。また、耐圧不良を防止するためには、頂点部の絶縁材106の厚みが基準となり、辺部の絶縁材106の厚みは余剰で無駄となり、この点からも、撚線導体の断面形状は真円であることが望まれる。
【0007】
また、撚線導体101の断面形状が六角形状であるため、被覆線の端末加工等において、絶縁材106をストリップする際に撚線導体101を傷つける虞があるという問題がある。
【0008】
同心撚り配列以外の一括集合撚線においても、同様に、撚線導体の断面形状が真円であることが望まれている。
【0009】
撚線導体の断面形状を真円とする方法として、例えば、特許文献1記載のように、断面円形で、かつ、全て同一径の素線202を、一方向に撚りながら圧縮ダイスを通すことにより、図16に示すように、撚線導体201の断面形状を略真円とする方法が提案されている。以下、これを従来技術2とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-25758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記、従来技術2の撚線導体201は、素線202を圧縮ダイスに通す時に、外層素線が、圧縮変形されることにより、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性が損なわれるという問題がある。
【0012】
また、従来技術2の撚線導体201は、一方向に撚りながら圧縮ダイスを通す必要があるため、従来技術1の撚線導体101と比較して、圧縮ダイスが余分に必要であり、この圧縮ダイスは撚線導体201の製造時に摩耗損傷が生じるため、定期交換が必要でありコストが高くなるという問題がある。
【0013】
また、圧縮後の撚線を略真円状にするためには、製造機械(撚線機)の回転数を一定値以下にし、かつ、回転数を安定させる必要があるため、従来技術1の撚線導体101よりも生産効率が悪くなるという問題もある。
【0014】
また、従来技術の撚線導体101,201は、隣接する素線は、全て当接するように配設されているため、素線配列の密度が高く、隣接する素線間に隙間がなく、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性が損なわれる要因となるという問題がある。
【0015】
そこで、圧縮することなく、若しくは、上記従来技術2よりも低い圧縮率で素線を圧縮加工することで、撚線導体の断面形状をより真円形状に近い形状とすることができる撚線導体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、該中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して形成した第1内層で構成された内層を有し、
該内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、
該第1外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、前記外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、
前記第1外層線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う第1外層線間の外側に前記外太径線を配設し、周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を配設したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項2記載の発明は、中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、該中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有し、
該内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、
該第1外層の外側に、前記第1外層線の本数と同じ本数の第2外層線で構成した第2外層を配設し、
該第2外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、前記外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、
前記第1外層線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う第1外層線間の外側に前記第2外層線を配設し、
周方向に隣り合う第2外層線間の外側に前記外太径線を配設し、周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を配設したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項3記載の発明は、前記撚線導体の中心から、前記最外層を構成する外細径線の外縁端までの距離と、
前記撚線導体の中心から、請求項1又は2記載の発明において、前記最外層を構成する外太径線の外縁端までの距離が同じであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記最外層を構成する素線は、外側から圧縮変形されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本願請求項1記載の発明によれば、中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有し、内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、第1外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設したことにより、撚線導体の断面形状は略真円形状とし、撚線導体の細径化、軽量化、柔軟性の向上を図ることができる。
【0021】
また、本発明の撚線導体は、従来技術2の撚線導体201のように、素線を圧縮ダイスに通すことなく、撚線導体の外形を略真円形状とすることができるために、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性を損うことなく、素線の物理特性を維持することができ、信頼性の高い品質を得ることができ、自動車用電線分野や、音響電線分野等において有効に活用することができる。
【0022】
また、本願請求項2記載の発明によれば、中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有し、内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、第1外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の第2外層線で構成した第2外層を配設し、第2外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設したことにより、上記請求項1記載の発明と同様の作用、効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例1に係る撚線導体の横断面図。
図2】本発明の実施例3に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
図3】本発明の実施例3に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図4】本発明の実施例3に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図5】本発明の実施例4に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
図6】本発明の実施例4に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図7】本発明の実施例4に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図8】本発明の実施例5に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
図9】本発明の実施例5に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図10】本発明の実施例5に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図11】本発明の実施例5に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図12】本発明の実施例6に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
図13】本発明の実施例6に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図14】本発明の実施例6に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図15】従来技術1の撚線導体の横断面図。
図16】従来技術2の撚線導体の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0025】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る撚線導体1の軸方向と直交する方向に切断した横断面図で、その各素線の断面を示す斜線は、図の煩雑を避けるために省略した。
【0026】
撚線導体1は、内層2と、内層2の外側に設けられた外層3を有する。内層2は、1本の中心線11で構成されている。
【0027】
外層3は、第1外層4と最外層5の2層で構成されている。
【0028】
第1外層4は、図1に示すように、内層2の外側に設けた3本の第1外層線(素線)12を周方向に配設して構成されている。
【0029】
最外層5は、図1に示すように、3本の外細径線(素線)13と、3本の外太径線(素線)14の計6本の素線13,14で、第1外層4を覆い囲むように構成されている。
【0030】
第1外層4を構成する第1外層線12は、周方向に離間するように配設され、隣り合う第1外層線12,12間には空隙18が形成されている。
【0031】
最外層5を構成する外太径線14は、第1外層4を構成し、かつ、周方向に隣り合う第1外層線12,12との間の空隙18の外側部に、第1外層線12,12に当接するように設けられている。
【0032】
最外層5を構成する外細径線13は、周方向に隣り合う外太径線14,14の間に1本、外太径線14と第1外層4を構成する第1外層線12に当接するように配置されている。
【0033】
各素線11,12,13,14の基となる線材としては、裸銅線、無酸素銅線、線形結晶無酸素銅線、単結晶状高純度無酸素銅線等の銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀等をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線、及び、エナメル線、リッツ線、ホルマル線等の絶縁被覆されたもの等を使用することができる。各素線11,12,13,14の素材は、同じ素材を用いてもよいし、異なる素材を用いてもよい。
【0034】
中心線11の直径d1は、第1外層線12の直径d2より細く設定され、第1外層線12の直径d2は、外細径線13の直径d3より細く設定され、外細径線13の直径d3は、外太径線14の直径d4の直径より細く設定されている。
【0035】
本実施例1では、d1=0.694×d2,d3=1.838×d2,d4=2.425×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14を用いた。
【0036】
また、撚線導体1の断面形状が、略真円形状、つまり、中心線11の中心Aから外太径線14の最外縁端Bまでの距離L1と、中心線11の中心Aから外細径線13の最外縁端Cまでの距離L2が同一となるように形成されている。
【0037】
本願発明の撚線導体1は、上記の構造を有しているために、次のような作用、効果を奏する。
【0038】
撚線導体1の外形が略真円形状で、かつ、上述のように、従来技術1の撚線導体101よりも細径化できることにより、絶縁材の被覆の厚みを薄くでき、かつ、略均一化することができるため、絶縁材を減量でき、コストを低減することができる。
【0039】
また、撚線導体1は、従来技術2の撚線導体201のように、素線を圧縮ダイスに通すことなく、撚線導体1の外形を略真円形状とすることができるため、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性が損うことがなく、素線の物理特性を維持することができ、信頼性の高い品質を得ることができ、自動車用電線分野や、音響電線分野等において有効に活用することができる。
【0040】
また、撚線導体1は、従来技術1,2と比較して、空隙率を多くして素線の配列密度を低下させることにより、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性を向上させることができる。
【0041】
[実施例2]
上記実施例1の撚線導体1を構成する素線は、中心線11の直径d1が、第1外層線12の直径d2より小さく、第1外層線12の直径d2が、外細径線13の直径d3より小さく、外細径線13の直径d3が、外太径線14の直径d4の直径より小さいものを用いて各素線11,12,13,14及び撚線導体1を構成すれば、上記実施例1に記載の径を有する素線以外にも任意の素線を用いて撚線導体1を構成することができる。また、その最外層5の外周部から圧縮ダイス等により、圧縮してもよい。
【0042】
この圧縮により、最外層5を形成する外細径線13と外太径線14の外周部は、圧縮変形され、撚線導体の外形形状をより真円形状に近づけることができる。圧縮ダイス等による圧縮は、撚線導体1を製造する際に行っても良いし、撚線導体1を製造した後に行っても良い。なお、圧縮率に関しては、任意に設定する。
【0043】
その他の構造は、上記実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0044】
本実施例2においても、上記実施例1と同様の作用効果を発揮することができる。
【0045】
[実施例3]
上記実施例1,2においては、第1外層4を構成する第1外層線12と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、夫々3本で設定したが、第1外層線12の本数と、外細径線13の本数と、外太径線14の本数が同じであればよく、その本数が3本以上であれば夫々任意の本数に設定することができる。
【0046】
例えば、図2に示すように、第1外層4の第1外層線12と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各4本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体21の場合には、d1=1.109×d2,d3=1.350×d2,d4=1.850×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体21の断面形状を略真円形状とするとことができる。
【0047】
例えば、図3に示すように、第1外層4の第1外層線12と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各5本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体22の場合には、d1=1.375×d2,d3=1.125×d2,d4=1.563×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体22の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0048】
例えば、図4に示すように、第1外層4の第1外層線12と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各6本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体23の場合には、d1=1.750×d2,d3=1.013×d2,d4=1.419×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体23の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0049】
その他の構造は、上記実施例1,2と同様であるため説明を省略する。
【0050】
本実施例3においても、上記実施例1,2と同様の作用効果を発揮することができる。
【0051】
[実施例4]
上記実施例1~3においては、内層2は、1本の中心線11で構成したが、中心線31と、該中心線31の外側に、第1外層4の第1外層線12の本数と同じ本数の第1内層線15を周方向に配設して形成した第1内層32で内層33を構成するようにしてもよい。
【0052】
第1内層線15は、中心線31の外側に配設されるとともに、隣り合う第1内層線15,15は、当接するように配設されている。第1内層線15の基となる線材は、素線11,12,13,14の基となる線材と同様のものを用いる。
【0053】
隣り合う第1内層線15,15で構成される谷間部34の外側に第1外層線12が、第1内層線15,15と当接するように配設されている。
【0054】
例えば、図5に示すように、1本の中心線31を配設し、中心線31の周りに8本の第1内層線15で覆って第1内層32を構成し、第1内層32の周りに、8本の第1外層線12を周方向に離間するようにして配設して第1外層4を構成し、第1外層4の周りを8本の外細径線13と8本の外太径線で覆って最外層5を構成し撚線導体35としてもよい。
【0055】
第1内層線15の直径をd5とし、d1=1.269×d2,d3=0.825×d2,d4=1.200×d2,d5=0.788×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,15の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体35の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0056】
例えば、図6に示すように、第1内層32の第1内層線15と、第1外層4の第1外層線12と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各10本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体36の場合には、d1=1.900×d2,d3=0.750×d2,d4=1.088×d2,d5=0.850×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,15の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体36の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0057】
例えば、図7に示すように、第1内層32の第1内層線15と、第1外層4の第1外層線12と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各12本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体37の場合には、d1=2.862×d2,d3=0.769×d2,d4=1.154×d2,d5=d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,15の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体37の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0058】
その他の構造は、上記実施例1~3と同様であるため説明を省略する。
【0059】
本実施例4においても、上記実施例1~3と同様の作用効果を発揮することができる。
【0060】
[実施例5]
上記実施例1~3においては、外層3は、第1外層4と最外層5の2層で構成したが、外層41を、第1外層4と第2外層42と最外層5の3層で構成してもよい。
【0061】
中心線11と第1外層4は、上記実施例1~3と同様に構成されている。
【0062】
第2外層42は、第1外層4の外側に、第1外層4の第1外層線12の本数と同じ本数の第2外層線16を、周方向に離間するように配設して構成されている。隣り合う第2外層線16,16間には空隙43が形成されている。第2外層線16の基となる線材は、素線11,12,13,14の基となる線材と同様のものを用いる。
【0063】
第2外層線16は、第1外層線12,12との間の空隙18の外側部に、第1外層線12,12に当接するように設けられている。
【0064】
最外層5を構成する外太径線14は、第2外層42を構成し、かつ、周方向に隣り合う第2外層線16,16との間の空隙43の外側に、第2外層線16,16に当接するように設けられている。
【0065】
最外層5を構成する外細径線13は、周方向に隣り合う外太径線14,14の間に1本、外太径線14と第1外層4を構成する第2外層線16に当接するように配置されている。
【0066】
例えば、図8に示すように、1本の中心線11を配設し、中心線11の周りに3本の第1外層線12を周方向に離間するようにして配設して第1外層4を構成し、第1外層4の周りに3本の2外層線16を周方向に離間するようにして配設して第2外層42を構成し、第2外層42の周りを3本の外細径線13と3本の外太径線で覆って最外層5を構成し撚線導体45としてもよい。
【0067】
第2外層線16の直径をd6とし、d1=0.684×d2,d3=3.868×d2,d4=5.105×d2,d6=2.105×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,16の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体45の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0068】
例えば、図9に示すように、第1外層4の第1外層線12と、第2外層42の第2外層線16と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各4本とし、第1外層線12と第2外層線16を夫々周方向に離間して配置した撚線導体46の場合には、d1=0.833×d2,d3=2.571×d2,d4=3.524×d2,d6=1.905×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,16の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体46の断面形状を略真円形状とするとことができる。
【0069】
例えば、図10に示すように、第1外層4の第1外層線12と、第2外層42の第2外層線16と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各5本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体47の場合には、d1=1.133×d2,d3=2.000×d2,d4=2.778×d2,d6=1.778×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,16の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体47の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0070】
例えば、図11に示すように、第1外層4の第1外層線12と、第2外層42の第2外層線16と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各6本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体48の場合には、d1=1.400×d2,d3=1.620×d2,d4=2.270×d2,d6=1.600×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,16の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体48の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0071】
その他の構造は、上記実施例1乃至3と同様であるため説明を省略する。
【0072】
本実施例5においても、上記実施例1乃至3と同様の作用効果を発揮することができる。
【0073】
[実施例6]
上記実施例5においては、内層2を、1本の中心線11で構成したが、上記実施例4と同様に、中心線31と、該中心線31の外側に、第1外層4の第1外層線12の本数と同じ本数の第1内層線15を周方向に配設して形成した第1内層32で内層33を構成するようにしてもよい。
【0074】
例えば、図12に示すように、1本の中心線31を配設し、中心線31の周りに8本の第1内層線15で覆って第1内層32を構成し、第1内層32の周りに、8本の第1外層線12を周方向に離間するようにして配設して第1外層4を構成し、第1外層4の周りに8本の2外層線16を周方向に離間するようにして配設して第2外層42を構成し、第2外層42の周りを8本の外細径線13と8本の外太径線で覆って最外層5を構成し撚線導体51としてもよい。
【0075】
d1=1.145×d2,d3=1.200×d2,d4=1.745×d2,d5=0.709×d2,d6=1.455×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,15,16の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体51の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0076】
例えば、図13に示すように、第1内層32の第1内層線15と、第1外層4の第1外層線12と、第2外層42の第2外層線16と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各10本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体52の場合には、d1=1.990×d2,d3=1.101×d2,d4=1.596×d2,d5=0.881×d2,d6=1.468×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,15,16の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体52の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0077】
例えば、図14に示すように、第1内層32の第1内層線15と、第1外層4の第1外層線12と、第2外層42の第2外層線16と、最外層5を構成する外細径線13と外太径線14を、各12本とし、第1外層線12を周方向に離間して配置した撚線導体53の場合には、d1=2.480×d2,d3=d2,d4=1.400×d2,d5=0.850×d2,d6=1.500×d2の関係が成立する各素線11,12,13,14,15,16の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体53の断面形状を略真円形状とすることができる。
【0078】
その他の構造は、上記実施例1乃至5と同様であるため説明を省略する。
【0079】
本実施例6においても、上記実施例1乃至5同様の作用効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,21,22,23,35,36,37,45,46,47,48,51,52,53 撚線導体
2,33 内層
3,41 外層
4 第1外層
5 最外層
11,31 中心線
12 第1外層線
13 外細径線
14 外太径線
15 第1内層線
16 第2外層線
32 第1内層
42 第2外層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2021-12-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、該中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して形成した第1内層で構成された内層を有し、
該内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、
該第1外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、前記外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、
前記第1外層線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う第1外層線間の外側に前記外太径線を1本配設し、該外太径線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を、前記第1外層線と当接するように配設したことを特徴とする撚線導体。
【請求項2】
中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、該中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有し、
該内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、
該第1外層の外側に、前記第1外層線の本数と同じ本数の第2外層線で構成した第2外層を配設し、
該第2外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、前記外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、
前記第1外層線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う第1外層線間の外側に前記第2外層線を配設し、
周方向に隣り合う第2外層線間の外側に前記外太径線を配設し、周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を配設したことを特徴とする撚線導体。
【請求項3】
前記撚線導体の中心から、前記最外層を構成する外細径線の外縁端までの距離と、
前記撚線導体の中心から、前記最外層を構成する外太径線の外縁端までの距離が同じであることを特徴とする請求項1又は2記載の撚線導体。
【請求項4】
前記最外層を構成する素線は、外側から圧縮変形されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の撚線導体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
しかし、同じ径の素線で、かつ、19本の同心撚り配列で撚線導体を構成すると、例えば、図15に示すように、撚線導体101の断面形状の外形は、六角形となり、絶縁材106の厚みは、頂点部の近傍は薄く、頂点部から辺部に至るほど厚くなり、絶縁材106の厚みは不均一となる。また、耐圧不良を防止するためには、頂点部の絶縁材106の厚みが基準となり、辺部の絶縁材106の厚みは余剰で無駄となり、この点からも、撚線導体の断面形状は真円であることが望まれる
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、該中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して形成した第1内層で構成された内層を有し、
該内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、
該第1外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、前記外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、
前記第1外層線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う第1外層線間の外側に前記外太径線を1本配設し、該外太径線を周方向に離間して配設し、
周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を、前記第1外層線と当接するように配設したことを特徴とするものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記撚線導体の中心から、前記最外層を構成する外細径線の外縁端までの距離と、 前記撚線導体の中心から、前記最外層を構成する外太径線の外縁端までの距離が同じであることを特徴とするものである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本願請求項1記載の発明によれば、中心部に配設した1本の中心線で構成された内層、又は、中心部に配設した1本の中心線と、中心線の外側に複数本の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有し、内層の外側に、複数本の第1外層線で構成した第1外層を配設し、第1外層の外側に、第1外層線の本数と同じ本数の外細径線と、第1外層線の本数と同じ本数で、かつ、外細径線より太い外太径線で構成した最外層を配設し、周方向に隣り合う第1外層線間の外側に外太径線を1本配設し、外太径線を周方向に離間して配設し、周方向に隣り合う外太径線間に1本の外細径線を、第1外層線と当接するように配設したことにより、撚線導体の断面形状は略真円形状とし、撚線導体の細径化、軽量化、柔軟性の向上を図ることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
例えば、図8に示すように、1本の中心線11を配設し、中心線11の周りに3本の第1外層線12を周方向に離間するようにして配設して第1外層4を構成し、第1外層4の周りに3本の2外層線16を周方向に離間するようにして配設して第2外層42を構成し、第2外層42の周りを3本の外細径線13と3本の外太径線14で覆って最外層5を構成し撚線導体45としてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
例えば、図12に示すように、1本の中心線31を配設し、中心線31の周りに8本の第1内層線15で覆って第1内層32を構成し、第1内層32の周りに、8本の第1外層線12を周方向に離間するようにして配設して第1外層4を構成し、第1外層4の周りに8本の2外層線16を周方向に離間するようにして配設して第2外層42を構成し、第2外層42の周りを8本の外細径線13と8本の外太径線14で覆って最外層5を構成し撚線導体51としてもよい。