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  • 特開-床材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040875
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
E04F15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148066
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】原井 美保
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA15
2E220AA33
2E220FA01
2E220GA22X
2E220GA27X
2E220GA28X
2E220GB12X
2E220GB28X
2E220GB32X
2E220GB34X
(57)【要約】
【課題】つや消し状態を確保しつつ、汚れ防止効果を備えた床材を提供する。
【解決手段】床材1は、表面処理層10と、表面処理層10の裏面側の少なくとも1層の基材20と、を備え、表面処理層10は、シリカ12が添加された樹脂11からなり、厚さが4~15μmとされ、シリカ12は、平均粒径が3~12μm、見かけ比重が0.2~0.4g/cm3、細孔容積が0.3~1.0cm3/gで、シリカ12と樹脂11との合計を100質量部として14~55質量部添加されて構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理層と、
前記表面処理層の裏面側の少なくとも1層の基材と、を備え、
前記表面処理層は、シリカが添加された樹脂からなり、厚さが4~15μmとされ、
前記シリカは、平均粒径が3~12μm、見かけ比重が0.2~0.4g/cm3、細孔容積が0.3~1.0cm3/gで、前記シリカと前記樹脂との合計を100質量部として14~55質量部添加されて構成されている、
ことを特徴とする床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材に関する。
【背景技術】
【0002】
床材に必要とされる機能の一つに防汚性があり、床材の表面に表面処理層を備えたものが知られている。
【0003】
表面処理層を形成した床材は、例えば特許文献1に開示されており、下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、その表面上に無機質充填剤を散布後に硬化させることで、耐摩耗性や防汚性などを備えた表面処理層を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-277439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面処理層は、添加された無機質充填剤が表面から一部が突き出しているため、無機質充填剤の添加量が多くなると、突出部が多くなり、突出部間に汚れが溜まりやすくなる。
一方、床材として高級感や重厚感が求められており、つやのある表面のビニル感の強い光沢性に代わりつや消し状態としたものが望まれている。
床材の表面をつや消し状態とするためには、表面が平坦でなく、突出部が形成される必要があり、防汚性との両立が難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点と現状に鑑みてなされたもので、つや消し状態を確保しつつ、汚れ防止効果を備えた床材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
床材の表面処理層について鋭意検討を重ねたところ、表面処理層の厚さや添加するシリカの物性や配合量を調整することで、シリカが直接表面に露出し過ぎず、突出によるつや消し状態を確保しつつ、汚れ防止効果を備える床材を得ることができることが分かり、表面処理層の厚さやシリカの物性および配合量を実験により定めることで本発明を完成したものである。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明にかかる床材は、
表面処理層と、
前記表面処理層の裏面側の少なくとも1層の基材と、を備え、
前記表面処理層は、シリカが添加された樹脂からなり、厚さが4~15μmとされ、
前記シリカは、平均粒径が3~12μm、見かけ比重が0.2~0.4g/cm3、細孔容積が0.3~1.0cm3/gで、前記シリカと前記樹脂との合計を100質量部として14~55質量部添加されて構成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、つや消し状態を確保しつつ、汚れ防止効果を備えた床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の床材にかかり、(a)はクッションフロアとした場合の概略断面図、(b)は、表面処理層の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の床材1は、例えば、図1に示すように、防汚性でつや消し状態の表面処理層10と、表面処理層10の裏面側の少なくとも1層の基材20と、を備えて構成される。さらに、表面処理層10は、シリカ12が添加された樹脂からなり、厚さが4~15μmとされる。シリカ12は、平均粒径が3~12μm、見かけ比重が0.2~0.4g/cm3、細孔容積が0.3~1.0cm3/gで、シリカ12と樹脂11との合計を100質量部として14~55質量部添加されて構成される。
【0012】
床材1は、基材20については、床材1として必要な機能に合わせて種々の構成を選択することができる。例えば、クッションフロアとする場合には、透明樹脂層21と、絵柄意匠が印刷された印刷層22と、クッション性を付与する発泡層23と、裏打ち層24と、が順に積層されて構成される。
クッションフロアとする床材1では、絵柄意匠が印刷された印刷層22の表面に塩化ビニル樹脂ペーストからなる透明樹脂層21を積層して構成され、透明樹脂層21で必要な耐摩耗性を備える厚さを確保し、透明性や接着性も確保する。また、透明樹脂層21で発泡層23の発泡剤の分解ガスの影響を留めることができる。
なお、以下の実施形態ではクッションフロアとした床材1を例に説明する。
【0013】
表面処理層10は、防汚性でつや消し状態とされたものであり、樹脂11にシリカ12を添加して構成される。
表面処理層10に付与する表面性能、表面機能である防汚性は、汚れが付き難くなる、あるいは汚れが付いても、その下の層に染み込まずに汚れが取れることをいい、特に塩化ビニル樹脂混合物の成分由来の油分を通じて油汚れや色素、顔料などの染み込み汚れ、ゴムに添加されている添加剤の移行汚れなどの汚れなどが対象となる。これまでの表面処理層10の防汚性は、床材1の表面に塗料を塗布し、皮膜化させることで汚れの移行を抑え、あるいは軽減することが行われていた。しかしながら、防汚性を確保する上では、つやのあるものしかなく、ビニル感の強い光沢性のあるものであり、高級感や重厚感を付与できるものではなかった。
【0014】
床材1では、表面処理層10を構成する樹脂11に添加するシリカ12の物性および配合量を調整することで、防汚性を確保すると同時に、つや消し状態の表面を得るようにしている。樹脂11の表面にシリカ12が直接露出し過ぎず、突出することによるつや消し効果と、シリカ12を樹脂11でコーティングされた状態とすることにより汚れ防止効果を両立させる。
【0015】
表面処理層10は、樹脂塗料として水や、有機溶剤にアクリル樹脂や、ウレタン樹脂等が分散されて構成され、乾燥硬化させることで塗膜が形成される。樹脂塗料は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などからなる塗料に、電子線や紫外線などのエネルギー線を照射して架橋硬化させるエネルギー線硬化型樹脂とは相違するものである。
例えば、アクリル系樹脂塗料(単に樹脂とする場合もある。)11は、例えばアクリル樹脂16%と酢酸ビニル2%とを含んで固形分濃度が18%とされたものが用いられる。表面処理層10は、厚さが4~15μmとされる。厚さが4μmより薄いと樹脂の表面にシリカ12が突出しすぎてしまい、汚れ防止効果が得られにくく、表面処理層10として不十分であり、15μmより厚くすると樹脂の表面にシリカ12が突出しにくくなり、つや消し効果が得られにくい。
【0016】
シリカ12は、非晶質二酸化ケイ素であり、多孔質素材である。シリカ12は、平均粒径が3~12μm、見かけ比重が0.2~0.4g/cm3、細孔容積が0.3~1.0cm3/gのものが用いられる。シリカ12は、シリカ12と樹脂11との合計を100質量部として14~55質量部添加される。例えば、固形分が18%のアクリル系樹脂塗料11では、アクリル系樹脂塗料11(固形分が18%)100質量部に対しては、4~18PHC(Per Hundred Compound)添加する。なお、PHCは、レジンに対するPHR(Per Hundred Resin)と同様の単位である。
【0017】
このようなシリカ12の平均粒径と表面処理層10の厚さとの関係で、シリカ12の粒子が突出しても粒子が完全にむき出しになることはなく、樹脂11でコーティングされた状態となると推測される。また、アクリル系樹脂塗料11にシリカ12が均一に分散されて塗布された後、乾燥により塗膜が形成される際に塗膜が痩せることでシリカ12のわずかな突起が形成される。こうしてシリカ12が突起として存在することでつや消し状態の表面となり、しかも汚れが付着し難い防汚機能を備えたものとなる。
【0018】
シリカ12は、多孔質のため、樹脂11の表面から突出したシリカ12の多孔質部分には、汚れが付着するおそれがあることから、表面処理層10の樹脂11の表面からシリカ12が直接露出し過ぎず、突出することによるつや消し効果を確保し、しかも、シリカ12が樹脂コーティングされる状態として汚れ防止効果を奏するものとする。シリカ12は、見かけ比重が大きく、細孔容積が小さいことで、シリカ表面の細孔部が一般的なシリカ12より小さいため、アクリル系樹脂塗料11の表面からわずかに突出していて、つや消し効果が得られると同時に、シリカ12の表面の樹脂11による樹脂コーティングで細孔部が塞がれた状態となって汚れ防止効果を備えたものとなる。このためのシリカ12の物性および配合量などが上記の実験より得られた範囲である。
これにより、床材1は、シリカ12を添加しても表面をコーティングすることで汚れ防止状態を保持でき、しかもシリカ12が表面処理層10の樹脂表面からわずかに突き出した状態とすることができ、つや消し状態の高級感、重厚感を備えたものとなる。
【0019】
基材20となる透明樹脂層21は、例えば、塩化ビニル樹脂で形成されて透明に構成される。
透明樹脂層21は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、安定剤、その他の添加剤を混合してペースト状にした透明な塩化ビニル樹脂ペーストで形成される。塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル樹脂単独でもよく、或いは塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル共重合体等のコポリマーをも使用することができる。可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等のフタル酸系可塑剤や、アジピン酸ジイソノニル(DINA)などのアジピン酸系可塑剤等が使用でき、フタル酸系可塑剤を単独使用してもよいし、フタル酸系可塑剤とアジピン酸系可塑剤とを混合使用することもできる。安定剤としては、バリウム系、カリウム系、亜鉛系等を使用することができる。その他、必要に応じて難燃剤、酸化防止剤など、通常の塩化ビニル系樹脂ペーストに配合する一般的な添加剤を添加することができる。
【0020】
透明樹脂層21は、例えば、透明塩化ビニル樹脂ペーストを、厚さを0.05~0.3mm、望ましくは、0.1~0.15mm程度均一に印刷層22の表面に塗布することで形成される。透明樹脂層21は、印刷層22の表面に塩化ビニル樹脂ペーストを塗布し、ゲル化することで形成される。
これにより、透明樹脂層21、印刷層22、発泡層23、裏打ち層24が積層された状態で接着され、透明樹脂層21により透明性を確保でき、耐摩耗性を有するものとすることができる。
【0021】
印刷層22は、絵柄意匠を印刷することで形成されるものであり、床材1に絵柄を印刷して意匠を付与するものである。
印刷層22は、例えば白色の発泡剤を含む塩化ビニル樹脂ペーストを裏打ち層24の表面に塗布し、ゲル化した後の発泡層23上に、グラビア印刷などで直刷り印刷して形成される。
【0022】
発泡層23は、印刷層22の下地層を構成するとともに、クッション性を付与するものである。発泡層23は、発泡剤を含む塩化ビニル樹脂ペーストで構成される。塩化ビニルペーストとして透明樹脂層21と同様ものが使用でき、さらに充填材として炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、シリカ、クレー、珪酸カルシウム、アルミナ等を好ましく使用でき、これらは単独で使用してもよいし、適宜の組み合わせによる複数を併用してもよい。発泡剤としては、熱分解型のものが使用でき、例えばアゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルホドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。
発泡層23は、裏打ち層24の表面に、発泡剤を含んだ塩化ビニル樹脂ペーストを塗布し、ゲル化する。このゲル化状態では、未発泡の状態である。次いで、ゲル化した発泡剤を含んだ塩化ビニル樹脂層の表面には、印刷を施して印刷層22を形成する。さらに印刷層22の表面に、透明樹脂層21が設けられ積層される。最後に、積層された各層21~24を加熱圧着した後、加熱処理(キュア)することがおこなわれる。この加熱処理工程で、ゲル化した発泡剤を含んだ塩化ビニル樹脂の発泡剤を加熱分解しガス化させ、発泡した塩化ビニル樹脂の発泡層23とする。
【0023】
裏打ち層24は、例えば、ガラス不織布とバインダー樹脂とで構成される。ガラス不織布は、秤量が10~100g/m2、望ましくは秤量が20~60g/m2とされ、バインダー樹脂がボンディングされて構成される。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)エマルジョン、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂エマルジョン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)ラテックスなどが使用でき、1種又は1種以上をブレンドして用いても良く、特に塩化ビニル樹脂との接着性の良いものが好ましい。
なお、ガラス繊維質の裏打ち層24は、ガラス不織布を用いて構成する場合に限らず、ガラス繊維の織布を用いたガラス繊維質の裏打ち層24であっても良く、バインダー樹脂などを用いて平滑性があり、表面に積層される発泡層23や必要に応じて裏面に積層される塩化ビニルの補強層などとの接着性を確保できるものであれば良い。
【0024】
床材1の製造方法は、まず、基材20を製造する。基材20は少なくとも1層で構成され、例えば、クッションフロアとする場合には、透明樹脂層21と、絵柄意匠が印刷された印刷層22と、クッション性を付与する発泡層23と、裏打ち層24と、が順に積層されて4層で構成される。
裏打ち層24は、例えば、ガラス不織布とバインダー樹脂とで構成し、ガラス不織布にバインダー樹脂がボンディングされる。
裏打ち層24の表面に、発泡剤を含んだ塩化ビニル樹脂ペーストを塗布し、ゲル化して発泡層23とする。このゲル化状態では、未発泡の状態である。
次いで、ゲル化した発泡剤を含んだ塩化ビニル樹脂層の表面には、印刷を施して印刷層22を形成する。
さらに印刷層22の表面に、透明樹脂層21が設けられ積層される。
この後、積層された各層21~24を加熱圧着し、加熱処理(キュア)することが行われ、基材20となる。この加熱処理工程で、ゲル化した発泡剤を含んだ塩化ビニル樹脂の発泡剤を加熱分解しガス化させ、発泡した塩化ビニル樹脂の発泡層23が積層された状態となる。
【0025】
基材20の表面に、防汚性でつや消し状態の表面処理層10を形成する。
アクリル系樹脂塗料11に対して、シリカ12として、平均粒径が3~12μm、見かけ比重が0.2~0.4g/cm3、細孔容積が0.3~1.0cm3/gのものを、シリカ12とアクリル系樹脂塗料11の固形分(樹脂)との合計を100質量部として14~55質量部を分散して、表面処理層用の塗料とする。
表面処理層用の塗料は、基材20の表面の透明樹脂層21上に塗布し、乾燥させて表面処理層10の厚さが4~15μmとなるようにする。
これらの工程により、表面処理層10が防汚性で、つや消し状態とされた高級感、重厚感を備えたクッションフロアとした床材1が製造される。
【0026】
床材1について、つや消し状態および汚れ防止効果について下記の方法により測定し、評価した。
<つや消し状態>
<つや消しの評価>
つやの評価は、グロスチェッカーIG-320(堀場製作所社製)にて測定した。いずれも測定値が0~15であれば、つや消し状態であると評価し、より好ましくは、10以下とした。測定値が0~10を○とし、11~15を△とし、16以上を×として表示した。
<防汚性>
<油汚れに対する評価>
油汚れは、油とケチャップを1:1で混ぜ合わせ、試験片上に塗布して、24時間静置した後、乾布で拭き取り、水拭き、アルコール拭きをし、1時間乾燥した。この試験片の表面の着色状態(ケチャップの色素の移行状態)をグレースケールにより評価した。その結果により、5級~3級であれば、油汚れに対する汚れ防止性を有すると評価した。結果の表示は、5級を◎、4級を○、3級を△、2級~1級を×として表示した。
<ヒールマークに対する評価>
ヒールマークによる評価は、JIS K3920 フロアポリシャ試験規格ヒールマーク試験方法に準じて評価した。ここでは、下記の3段階で評価し、○および△であればヒールマークに対する防汚性を有すると評価した。
○:ヒールマークが付くが、拭き取れる、
△:ヒールマークが付くが、大部分は拭き取れる、
×:拭き取れない、
として○、△、×で表示した。
<ゴム汚染に対する評価>
ゴム汚染は、ゴムからの移行物質による変色を評価する。試験片の上に、厚さ2mmのゴム平板(2cm角)を載せて、両面をガラス板で挟み込み、ガラス板の上からおもし(約2kg)を載せて完全に密着させ、70℃で48時間加熱促進の後、試験片を日光に30分露出後(日光露出により移行物質による変色が促進される)、グレースケールで評価した。グレースケールが、5級~3級であれば、ゴム汚れに対する汚れ防止性を有すると評価した。結果の表示は、5級を◎、4級を○、3級を△、2級~1級を×として表示した。
【実施例0027】
次に、本発明の実施例について比較例とともに説明するが、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。
<使用素材>
実施例および比較例では、使用素材は、表1に示すものを用いた。
アクリル系樹脂塗料:ユーラック7378A 坂井化学工業社製(固形分18%)1種類
シリカ:P-707 水澤化学工業社製のほか、同社製の8種類を用意した。
なお、シリカの呼称や平均粒径、細孔容積、見かけ比重は、表1に記載の通りである。
<配合>
シリカとアクリル系樹脂塗料の固形分(樹脂)に対する各シリカの割合(質量部)は、表1中に記載の通りである。
<実施例および比較例>
実施例1~10では、アクリル系樹脂塗料に対して4種類のシリカを、表1に示すように、配合した。
比較例1~9では、アクリル系樹脂塗料に対して6種類のシリカを、表1に示すように、配合した。
【0028】
床材の評価は、すでに説明したように、<つや消し状態>として<つや消しの評価>、<防汚性>として<油汚れに対する評価>、<ヒールマークに対する評価>、<ゴム汚染に対する評価>を実施し、その結果を、表1中に示した。
【0029】
<実施例1>
アクリル系樹脂塗料11:ユーラック7378A100質量部に対して、平均粒径12μm、細孔容積0.9cm3/g、見かけ比重0.4g/cm3のシリカ12:P758Cを9質量部分散し、表面処理層10用の塗料とした。なお、シリカとアクリル系樹脂塗料の固形分(樹脂)に対する各シリカの割合(質量部)は、33質量部である。
基材20として用意した塩化ビニル樹脂層上に表面処理層10用の塗料を塗布し、乾燥させて表面処理層10の厚さが7μmとなる床材1を作製した。
作製した床材1に対し、つや消し、油汚れ、ヒールマーク、ゴム汚染について評価し、その結果を表1に示した。また、参考として塗料の加工性についても良い方から順に○、△、×の3段階の評価結果を表1に示した。
この床材1のつや消しは5.6の○、油汚れは3-4の△-○、ヒールマークは○、ゴム汚染は3-4の△-○であった。
【0030】
<実施例2>
シリカ12としてP-763を3質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0031】
<実施例3-6>
シリカ12の配合量を変更したこと以外、実施例2と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0032】
<実施例7>
表面処理層10の塗膜厚さを15μmに変更したこと以外、実施例4と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0033】
<実施例8>
表面処理層10の塗膜厚さを4μmに変更したこと以外、実施例7と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0034】
<実施例9>
シリカ12としてP-50を9質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0035】
<実施例10>
シリカ12としてP-73を9質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0036】
<比較例1>
シリカ12としてP-802Yを9質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。この床材1では、油汚れやヒールマークについて評価の基準を満たすものでなかった。
【0037】
<比較例2>
シリカ12としてP-707を9質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0038】
<比較例3>
シリカ12としてP-78Aを9質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0039】
<比較例4>
シリカ12としてP-78Dを9質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0040】
<比較例5>
シリカ12としてP-78Fを9質量部としたこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0041】
<比較例6>
表面処理層10の塗膜厚さを2μmに変更したこと以外、実施例4と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0042】
<比較例7>
表面処理層10の塗膜厚さを25μmに変更したこと以外、実施例4と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0043】
<比較例8>
シリカ12としてP-763を25質量部としたこと以外、実施例2と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0044】
<比較例9>
シリカ12を添加しなかったこと以外、実施例1と同様である。この場合の床材1の評価結果は、表1に記載したとおりであった。
【0045】
以上の実施例および比較例に対して行った床材1の評価結果を示す表1から、本発明における実施例1~10では、つや消し状態を確保しつつ汚れ防止性を有するものであることが確認できた。
一方、比較例1~6では、つや消し状態とできるものの、汚れ防止性を満たすことができず、比較例7、9では、つや消し状態とすることができないことが確認できた。
【0046】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように、本発明の床材1は、表面処理層10と、表面処理層10の裏面側の少なくとも1層の基材20と、を備え、表面処理層10は、シリカ12が添加された樹脂11なり、厚さが4~15μmとされ、シリカ12は、平均粒径が3~12μm、見かけ比重が0.2~0.4g/cm3、細孔容積が0.3~1.0cm3/gで、シリカ12と樹脂11との合計を100質量部として14~55質量部添加されて構成される。
かかる構成によれば、床材1では、表面処理層10を構成する樹脂11に添加するシリカ12の物性および配合量を調整することで、防汚性を確保すると同時に、つや消し状態の表面を得ることができる。すなわち、樹脂11の表面にシリカ12が直接露出し過ぎず、突出することによるつや消し効果と、シリカ12を樹脂11にコーティングされた状態とすることにより汚れ防止効果を両立させることができる。これにより、表面処理層10が防汚性で、つや消し状態とされた高級感、重厚感を備えた床材1となる。
【0047】
【表1】
【符号の説明】
【0048】
1 床材
10 表面処理層
11 樹脂(アクリル系樹脂塗料)
12 シリカ
20 基材
21 透明樹脂層
22 印刷層
23 発泡層
24 裏打ち層
図1