(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040908
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230315BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20230315BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/94
A61M5/158 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148102
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 克典
(72)【発明者】
【氏名】永安 武
(72)【発明者】
【氏名】松本 桂太郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 史武
(72)【発明者】
【氏名】朱 睿
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直門
(72)【発明者】
【氏名】橋口 慶一
(72)【発明者】
【氏名】本田 徹郎
【テーマコード(参考)】
4C066
4C160
【Fターム(参考)】
4C066FF05
4C160EE22
4C160KK03
4C160KK17
4C160MM43
4C160NN01
4C160NN11
(57)【要約】
【課題】注射針とスネアとを一体型とした場合に、注射針及びスネアのカテーテル内での搬送やカテーテル先端部からの出し入れを円滑に行うことが可能な内視鏡用処置具を提供する。
【解決手段】内視鏡用処置具100は、内視鏡装置のチャンネルに挿入可能なカテーテル118と、カテーテル118内の長手軸方向に進退可能に挿通される注射針150と、カテーテル118内の長手軸方向に進退可能に挿通されるワイヤ部160と、カテーテル118内の先端側に設けられる案内部材170と、を備える。案内部材170には、注射針を前記カテーテル118の先端部から出没可能に案内する第1溝172と、ワイヤ部160をカテーテル118の先端部から出没可能に案内する第2案内部とが設けられる。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡装置のチャンネルに挿入可能なカテーテルと、
前記カテーテル内の長手軸方向に進退可能に挿通される注射針と、
前記カテーテル内の長手軸方向に進退可能に挿通されるワイヤ部と、
前記カテーテル内の先端側に設けられる案内部材と、を備え、
前記案内部材には、
前記注射針を前記カテーテルの先端部から出没可能に案内する第1案内部と、
前記ワイヤ部を前記カテーテルの前記先端部から出没可能に案内する第2案内部と、が設けられる、
内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記案内部材は、前記カテーテルの前記先端部よりも所定の距離だけ内側に入り込んだ位置に設けられる、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記ワイヤ部は、先端側に設けられ、環状に弾性変形可能なスネアを有し、
前記案内部材の前記第2案内部は、前記カテーテル内で収縮した前記スネアの対向するワイヤのそれぞれを収納する側溝を有する、
請求項1又は請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記案内部材は、本体と、当該本体に連なる頭部と、を有し、
前記本体は、前記カテーテル内に設けられ、
前記頭部は、前記カテーテルの前記先端部から突出して設けられる、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記ワイヤ部は、先端側に設けられ、環状に弾性変形可能なスネアを有し、
前記案内部材の前記第2案内部は、
前記本体に設けられ、前記カテーテル内で収縮した前記スネアの対向するワイヤのそれぞれを収納する側溝を有する、
請求項4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記案内部材の前記第2案内部は、
前記頭部に設けられ、前記スネアの湾曲した先端部を収納する収納溝を有する、
請求項5に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記第1収納部は、長手軸方向に貫通する貫通孔又は長手軸方向に沿って形成される溝である、
請求項1から6の何れか一項に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、初期の悪性腫瘍などの治療においては、例えばEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のように、消化管等の管腔臓器内の粘膜上に発生した病変を経内視鏡的に切除する手技が行われている。病変組織を切除するための内視鏡用処置具としては、高周波ナイフや高周波スネアが使用されている。
【0003】
内視鏡下大腸ポリープ切除では、腸管壁に注射針(局注針)で生理食塩水等の膨隆剤を打ち込んでポリープを浮かし、注射針をスネアに入れ替えてポリープに掛け、スネアを引き絞ることでポリープを切除している。したがって、ポリープの切除個数に応じて注射針とスネアワイヤとを入れ替えなければならず、手技が煩雑化するとともに、手術時間が長くなり、術者や患者の負担が増加するという問題がある。
【0004】
上述の課題を解決するために、注射針とスネアとを一体型とした内視鏡用処置具が提案、開発されている。例えば、特許文献1には、組み合わせ式のスネア及び針を備え、針がスネアの内腔式の細長い制御部材内に移動可能に位置決めした医療デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来における特許文献1等に開示される内視鏡用処置具では、一本のカテーテル内に注射針及びスネアが挿通されており、注射針とスネアとが同軸上に配置された構造となっている。そのため、注射針及びスネアにおいて、例えばカテーテル先端部から突出させる際やカテーテル内を搬送する際に、一方の処置具に何らかの不具合が生じた場合には、両方の処置具が使用不能になってしまう可能性がある。また、特許文献1に開示のスネアは、板状で構成されており、病変組織を高精度に切除することできないという問題がある。
【0007】
そこで、本開示は、上記課題を解決するために、注射針とスネアとを一体型とした場合に、注射針及びスネアのカテーテル内での搬送やカテーテル先端部からの出し入れを円滑に行うことが可能な内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本開示に係る内視鏡用処置具は、内視鏡装置のチャンネルに挿入可能なカテーテルと、前記カテーテル内の長手軸方向に進退可能に挿通される注射針と、前記カテーテル内の長手軸方向に進退可能に挿通されるワイヤ部と、前記カテーテル内の先端側に設けられる案内部材と、を備え、前記案内部材には、前記注射針を前記カテーテルの先端部から出没可能に案内する第1案内部と、前記ワイヤ部を前記カテーテルの先端部から出没可能に案内する第2案内部と、が設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、カテーテル内の先端部に第1案内部及び第2案内部を有する案内部材を設けることで、1本のカテーテル内において注射針の搬送経路とワイヤ部の搬送経路とを独立して設けることができる。これにより、カテーテル内において注射針とワイヤ部とを干渉させることなく前進及び後退させることができ、注射針及びワイヤ部におけるカテーテルの先端開口からの円滑な出し入れを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る内視鏡用処置具の全体図である。
【
図2A】第1の実施の形態に係る内視鏡用処置具の断面図である。
【
図2B】第1の実施の形態に係るカテーテルの断面図である。
【
図2C】
図2Aに示すカテーテルのA-A線に沿った断面図である。
【
図2D】
図2Aに示すカテーテルのB-B線に沿った断面図である。
【
図3A】第1の実施の形態に係る第1スライダの動作を示す図である。
【
図3B】第1の実施の形態に係る第1スライダの操作に基づく注射針の動作を示す図である。
【
図4A】第1の実施の形態に係る第2スライダの動作を示す図である。
【
図4B】第1の実施の形態に係る第2スライダの操作に基づくワイヤ部の動作を示す図である。
【
図5A】第1の実施の形態に係るワイヤ部を模式的に示す図である。
【
図5B】ワイヤ部の変形例を模式的に示す図である。
【
図6A】第1の実施の形態に係る病変部を除去する場合における内視鏡用処置具の動作を示す図である。
【
図6B】第1の実施の形態に係る病変部を除去する場合における内視鏡用処置具の動作を示す図である。
【
図6C】第1の実施の形態に係る病変部を除去する場合における内視鏡用処置具の動作を示す図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る内視鏡用処置具の全体図である。
【
図8A】第2の実施の形態に係る内視鏡用処置具の断面図である。
【
図8B】第2の実施の形態に係るカテーテルの断面図である。
【
図9A】第2の実施の形態に係る案内部材の平面図である。
【
図9B】第2の実施の形態に係る案内部材の側面図である。
【
図9C】第2の実施の形態に係る案内部材の断面図である。
【
図9D】第2の実施の形態に係る案内部材の正面図である。
【
図9E】第2の実施の形態に係る案内部材の背面図である。
【
図10A】第2の実施の形態に係る第1スライダの操作に基づく注射針の動作を示す図である。
【
図10B】第2の実施の形態に係る第1スライダの操作に基づく注射針の動作を示す図である。
【
図11A】第2の実施の形態に係る第2スライダの操作に基づくスネアワイヤの動作を示す図である。
【
図11B】第2の実施の形態に係る第2スライダの操作に基づくスネアワイヤの動作を示す図である。
【
図12】第3の実施の形態に係る内視鏡用処置具の全体図である。
【
図13A】第3の実施の形態に係る内視鏡用処置具の断面図である。
【
図13B】
図13Aに示す内視鏡用処置具のカテーテルの先端側を示す断面図である。
【
図14A】第3の実施の形態に係る注射器用操作部320の操作に基づく注射針の動作を示す図である。
【
図14B】第3の実施の形態に係る注射器用操作部320の操作に基づく注射針の動作を示す図である。
【
図15】第3の実施の形態に係るスネア用操作部330の操作に基づくワイヤ部の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
[内視鏡用処置具100の動作例]
図1は、第1の実施の形態に係る内視鏡用処置具100の全体図である。
図2Aは第1の実施の形態に係る内視鏡用処置具100の断面図であり、
図2Bはカテーテル118の断面図であり、
図2CはそのA-A線に沿った断面図であり、
図2DはそのB-B線に沿った断面図である。
図3Aは第1スライダ120の動作を示す図であり、
図3Bは第1スライダ120の操作に基づく注射針150の動作を示す図である。
図4Aは第2スライダ130の動作を示す図であり、
図4Bは第2スライダ130の操作に基づくワイヤ部160の動作を示す図である。
図5Aはワイヤ部160Aを模式的に示す図であり、
図5Bは変形例としてのワイヤ部160Bを模式的に示す図である。
【0013】
内視鏡用処置具100は、内視鏡装置の内視鏡挿入部に形成された処置具チャンネルに挿通されて使用される。内視鏡用処置具100は、
図1及び
図2Aに示すように、操作部110と、カテーテル118と、注射針150と、ワイヤ部160Aと、案内部材170とを備える。操作部110は、操作部本体112と、第1スライダ120と、シリンジポート122と、第2スライダ130と、通電用電極102とを有する。注射針150及びワイヤ部160Aのそれぞれは、カテーテル118内の長手軸X方向に進退可能に挿通される。
【0014】
第1スライダ120は、操作部本体112の長手軸X方向の先端側であって、操作部本体112に対して前進及び後退可能に取り付けられている。第1スライダ120は、
図3A及び
図3Bに示すように、操作部本体112に対して前進したときに注射針150をカテーテル118の先端側から突出させ、操作部本体112に対して後退したときに注射針150をカテーテル118内に引き込んで収納する。
【0015】
シリンジポート122は、生理用食塩水等の膨隆剤が注入された注射器の先端部(注射筒)を着脱可能に取り付けるための接続口である。シリンジポート122は、第1スライダ120に設けられ、第1スライダ120と一体的に移動する。シリンジポート122には、
図2Aに示すように、注射器用管路123の基端部が連通している。注射器用管路123は、カテーテル118に合流してカテーテル118内に挿通されるとともに、例えばカテーテル118の先端側まで延在している。注射器用管路123は注射針150の基端部に挿入、固定されており、シリンジポート122に装着された注射器内の膨隆剤を注射器用管路123を経由して注射針150に供給できるようになっている。
【0016】
第2スライダ130は、第1スライダ120よりも後側であって操作部本体112の後部に設けられるとともに、操作部本体112に対して前進及び後退可能に取り付けられている。第2スライダ130は、
図4A及び
図4Bに示すように、操作部本体112に対して前進したときにワイヤ部160をカテーテル118の先端開口119から突出させ、
図2Bに示すように、操作部本体112に対して後退したときにワイヤ部160Aをカテーテル118内に引き込む。第2スライダ130は、指の挿入が可能な環状の孔を有する把持部で構成しているが、この形状に限定されることはない。なお、第1スライダ120と第2スライダ130との配置は逆であってもよい。
【0017】
通電用電極102は、第2スライダ130に取り付けられ、第2スライダ130と一体的に動作する。通電用電極102の一端部は、第2スライダ130に対して外側に突出しており、図示しない高周波電源装置が接続可能となっている。通電用電極102の他端部には、ワイヤ取付部136が設けられている。ワイヤ取付部136には、ワイヤ部160Aの基端部が取り付けられており、高周波電源装置からの高周波電流を通電用電極102を介してワイヤ部160Aに通電できるようになっている。
【0018】
カテーテル118は、内視鏡の処置具チャンネル530(
図6A参照)に挿抜可能な長尺部材であり、操作部本体112の先端部からキャップ114を介して所定の長さ延設されている。
図1A等では、カテーテル118の長手軸X方向の長さを省略して図示しているが、カテーテル118の長手軸X方向の長さとしては例えば180~240cmである。カテーテル118には、絶縁性を有する素材、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が用いられる。カテーテル118は、可撓性を有し、体腔内で管腔組織等の湾曲形状に沿って蛇行した内視鏡の処置具チャンネルに挿抜可能である。カテーテル118は、
図2Aに示すように、先端側に設けられる先端開口119と、その全長に亘って形成されるルーメン118aとを有する。なお、本実施の形態では、カテーテル118の基端部をキャップ114を介して操作部本体112の先端部に取り付けた構成としているが、カテーテル118を操作部本体112内に沿って延設させ、その基端部を操作部本体112の基端部に取り付けるようにしてもよい。
【0019】
カテーテル118内には、
図2B及び
図2Cに示すように、注射針150が通る空間とワイヤ部160Aが通る空間とを仕切るための仕切り部材104が配置されている。仕切り部材104は、長手軸X方向に延びる所定の長さを有する平板部材で構成され、断面円形状のカテーテル118内を2分割する。仕切り部材104には、絶縁性を有する素材、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が用いられる。本実施の形態では、仕切り部材104を複数設け、複数の仕切り部材104を所定の間隔をあけて配置しているが、単一の長尺状の仕切り部材104をカテーテル118内に配置するようにしてもよい。また、ワイヤ部160Aが通る空間を仕切り部材104によりさらに2分割してもよい。仕切り部材104は、例えばカテーテル118と金型で一体に成型してもよいし、カテーテル118に長手軸X方向の切断部又は孔を形成し、その切断部又は孔から仕切り部材104を外挿することで後付けしてもよい。
【0020】
ワイヤ部160Aは、例えば、ステンレス、ニッケル-チタン合金、タングステン等の導電性材料からなり、
図2Aに示すように、操作部本体112及びカテーテル118内に延在する。ワイヤ部160Aは、
図2A及び
図5Aに示すように、操作ワイヤ161と、スネアワイヤ(スネア)163とを有する。
【0021】
操作ワイヤ161は、例えば金属製の2本のワイヤを撚り合わせた1本の撚り線で構成されている。操作ワイヤ161の外周面は、図示しない非導電部材により被覆してもよい。操作ワイヤ161は、操作部本体112内において長手軸X方向に沿って配置される円筒の鉛管165に差し込まれ、その基端部が第2スライダ130に取り付けられている。操作ワイヤ161の先端部は、スネアワイヤ163に接続されている。
【0022】
スネアワイヤ163は、病変部P(
図6A参照)を囲んで切開するための部位であり、カテーテル118の先端開口119から出没可能に設けられる。スネアワイヤ163は、
図2D及び
図4B等に示すように、2本のワイヤ163a,163bが外側に湾曲して先端側で繋がった平面視円環状(ループ形状)で構成される。つまり、一本のワイヤを先端側を起点として基端側に折り返すことで円環状に形成される。スネアワイヤ163は、弾性変形可能であり、
図4Bに示すように、カテーテル118の先端開口119から外側に突出したとき弾性力により膨らんでループ形状に変形し、カテーテル118の先端開口119の内側に引き込まれるとき弾性力により収縮して窄まる。なお、本実施の形態では、スネアワイヤ163を平面視円環状で構成したが、これに限定されることはなく、スネアワイヤ163に複数の屈曲部を設けることで平面視多角形に形成するようにしても良い。
【0023】
なお、ワイヤ部160Aについては、他の構成を採用することもできる。変形例としてのワイヤ部160Bは、
図5Bに示すように、第1操作ワイヤ161と、第2操作ワイヤ162と、スネアワイヤ163とを有する。
【0024】
第1操作ワイヤ161は、例えば金属製の2本のワイヤ161a,161bで構成されている。第1操作ワイヤ161の先端部はスネアワイヤ163の基端部に接続され、その基端部は第2操作ワイヤ162の先端部に接続されている。第2操作ワイヤ162は、操作部本体112内において長手軸X方向に沿って配置される鉛管165内に差し込まれて撚り合わされることで、1本のワイヤに収束される。第2操作ワイヤ162の基端部は、第2スライダ130に取り付けられている。スネアワイヤ163は、カテーテル118の先端開口119から出没可能に設けられる。スネアワイヤ163は、環状に弾性変形可能であり、病変部P(
図6A参照)を囲んで切開する。
【0025】
図2A及び
図2Bに戻り、案内部材170は、注射針150とスネアワイヤ163とを干渉しないように離間した状態でカテーテル118内を案内するための部材である。案内部材170には、例えばセラミック、プラスチック等の材料が用いられる。案内部材170は、カテーテル118の内径より小さい径を有する略円柱体であり、カテーテル118の内部であって先端開口119から所定の距離Yだけ内側に入り込んだ位置に取り付けられている。案内部材170は、例えば接着剤等の固着部材を用いてカテーテル118内に固定できる。距離Yは、例えば、5~20mm程度である。これにより、ポリープ等の病変部Pを挟み込んだスネアワイヤ163をカテーテル118内に引き込む際に、カテーテル118の先端開口119の開口径よりも大きい病変部Pが先端開口119の開口縁に当たって阻害されることで病変部Pを引きちぎることができるようになっている。
【0026】
案内部材170は、
図2Dに示すように、注射針150をカテーテル118の先端開口119から出没可能に案内する第1溝172と、ワイヤ163a,163b等をカテーテル118の先端開口119から出没可能に案内する第2溝174a,174bとを有する。第1溝172は、周面を断面凹状に切り欠いて形成されるとともに、長手軸X方向の全長に亘って形成される。第1溝172の凹形状は、注射針150の径よりも若干大きい径を有し、注射針150の外形形状に沿う例えばU字状の溝で形成してもよい。なお、第1溝172は第1案内部の一例を構成する。
【0027】
第2溝174a,174bは、周面を断面凹状に切り欠いて形成されるとともに、長手軸X方向の全長に亘って形成される。第2溝174a,174bの凹形状は、ワイヤ163a,163b等の径よりも若干大きい径を有し、ワイヤ部160Aの外形形状に沿う例えばU字状の溝で形成してもよい。なお、第2溝174a,174bは第2案内部の一例を構成する。
【0028】
本実施の形態では、第1溝172と第2溝174a,174bとが互いに干渉しないように円周方向に略120°の間隔を空けて配置しているが、この配置間隔に限定されることはない。また、
図2D等では、第1溝172及び第2溝174a,174bを溝で構成しているが、第1溝172及び第2溝174a,174bの少なくとも一つを長手軸X方向に貫通する孔で構成してもよい。
【0029】
[内視鏡用処置具100の動作例]
次に、生体の上皮から膨隆したポリープ等の病変部Pを切除する場合における内視鏡用処置具100の動作例について説明する。
図6A~
図6Cは、病変部Pを除去する場合における内視鏡用処置具100の動作を示す図である。
【0030】
まず、術者は、内視鏡装置500の内視鏡挿入部510を体腔内に挿入し、内視鏡520で撮影された画像を観察しながら病変部Pを特定する。術者は、内視鏡用処置具100のカテーテル118を内視鏡挿入部510に設けられた処置具チャンネル530に挿入し、
図6Aに示すように、カテーテル118の先端部を処置具チャンネル530から突出させて病変部Pの上方に位置させる。
【0031】
次に、内視鏡用処置具100の第1スライダ120を操作部本体112に対して前進させて、
図6Bに示すように、カテーテル118の先端開口119から注射針150を突出させる。続けて、突出した注射針150を病変部Pと筋層Wとの間に刺して生理用食塩水等の膨隆剤を注入し、病変部Pを膨隆させる。膨隆剤の注入後、第1スライダ120を操作部本体112に対して後退させて、カテーテル118の先端開口119からカテーテル118内に注射針150を引き込み、注射針150を案内部材170の第1溝172内に収納する(
図2B、
図2D参照)。
【0032】
次に、内視鏡用処置具100の第2スライダ130を操作部本体112に対して前進させて、
図6Cに示すように、カテーテル118の先端開口119からスネアワイヤ163を突出させる。これにより、スネアワイヤ163が弾性力により膨らんでループ状に変形、展開する。術者は、ループ状に変形したスネアワイヤ163を病変部Pに掛けることで、病変部Pをスネアワイヤ163で囲む。
【0033】
次に、術者は、内視鏡用処置具100の第2スライダ130を操作部本体112に対して若干後退させて、スネアワイヤ163の基端側をカテーテル118内に引き込む。これにより、スネアワイヤ163の円環状の径が小さくなり、病変部Pの根元がスネアワイヤ163によって巻き付けられる。
【0034】
次に、術者は、高周波電源装置を操作して、通電用電極102を介してワイヤ部160Aのスネアワイヤ163に高周波電流を供給、通電する。これにより、スネアワイヤ163によって巻き付けられた病変部Pが焼灼されながら切開される。最後に、術者は、内視鏡用処置具100の第2スライダ130を操作部本体112に対してさらに後退させて、スネアワイヤ163の全体をカテーテル118内に引き込み、ワイヤ163a,163bのそれぞれを第2溝174a,174b内に収納する(
図2B、
図2D参照)。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、スネアワイヤ163に高周波電流を流す構成としたが、これに限定されることはない。例えば、スネアワイヤ163に高周波電流を流さずに、スネアワイヤ163により病変部Pの根元を締め付けて切開する、いわゆるコールドポリペクトミーにより病変部Pを切開するようにしてもよい。
【0036】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、カテーテル118内の先端側に第1溝172及び第2溝174a,174bを有する案内部材170を設けることで、1本のカテーテル118内において注射針150の搬送経路とワイヤ部160Aの搬送経路とを独立して設けることができる。これにより、カテーテル118内において注射針150とワイヤ部160Aとを干渉させることなく前進及び後退させることができ、注射針150及びワイヤ部160Aにおけるカテーテル118の先端開口119からの円滑な出し入れを実現できる。さらに、注射針150の搬送経路とワイヤ部160Aの搬送経路とを別々に設けるので、一方の処置具、例えば注射針150に不具合が発生した場合でも、他方の処置具、例えばワイヤ部160Aを正常に使用することができる。
【0037】
また、案内部材170の第1溝172に沿って注射針150を案内及び搬送するとともに、案内部材170の第2溝172b,172cに沿ってスネアワイヤ163を案内及び搬送するので、注射針150及びスネアワイヤ163における長手軸X方向に交差(直交)する方向の位置ずれを防止できる。これにより、病変部Pを正確かつ高精度に切除できる。
【0038】
また、カテーテル118内に仕切り部材104を設けるので、1本のカテーテル118内において注射針150の搬送経路とワイヤ部160Aの搬送経路とを独立させることができ、注射針150及びスネアワイヤ163同士が干渉することを防止できる。これにより、注射針150及びスネアワイヤ163同士が絡まってしまう等の不具合を防止することができ、注射針150及びスネアワイヤ163の搬送を円滑に行うことができる。また、例えばワイヤ部160Aを仕切り部材104により支持するとともに搬送経路を狭めることで、ワイヤ部160Aが撓んでしまうことを防止できる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、カテーテル118内において注射針150の搬送経路とスネアワイヤ163の搬送経路とを別々に設けることができるので、注射針150とスネアワイヤ163とを入れ替えることなく、注射針150及びスネアワイヤ163を順番に使用することができる。さらに、注射針150とスネアワイヤ163とをカテーテル118の先端開口119から同時に突出させた状態で、膨隆剤の注入、病変部Pの切除を行うことができる。これらにより、注射針150とスネアワイヤ163とを入れ替える時間を削減できるので、手術時間の大幅な削減を図ることができる。
【0040】
さらに、本実施の形態によれば、カテーテル118の先端開口119から所定の距離Yだけ内側に入り込んだ位置に案内部材170を設けるので、高周波電流を用いずに病変部Pを切除するコールドペクトミーを好適に実施できる。すなわち、病変部Pを挟み込んだスネアワイヤ163をカテーテル118内に引き込んで、スネアワイヤ163を距離Yだけ移動させる間に、先端開口119よりも大きい病変部Pがカテーテル118の先端開口縁に当たることで、病変部Pを非通電で引きちぎることができる。コールドペクトミーを採用することで、ポリープの茎を走行している微小な血管を鈍的に引きちぎることで攣縮を起こせるため、電気メスで焼灼して切除した場合よりも出血をし難くできるという利点がある。
【0041】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、案内部材270の先端部をカテーテル218の先端開口219から突出させる点において、第1の実施の形態の案内部材170の構成とは相違している。なお、以下の実施の形態の内視鏡用処置具200において、第1の実施の形態の内視鏡用処置具100と同一の構成及び機能を有する部位には同一の名称を使用することにより重複する説明を省略する。
【0042】
図7は、第2の実施の形態に係る内視鏡用処置具200の全体図である。
図8Aは第2の実施の形態に係る内視鏡用処置具200の断面図であり、
図8Bはカテーテル218の断面図である。
図9Aは第2の実施の形態に係る案内部材270の平面図であり、
図9Bは案内部材270の側面図であり、
図9Cは案内部材270の断面図であり、
図9Dは案内部材270の正面図であり、
図9Eは案内部材270の背面図である。
【0043】
[内視鏡用処置具200の構成例]
図7及び
図8Aに示すように、本実施の形態に係る内視鏡用処置具200は、操作部210と、カテーテル218と、仕切り部材204と、注射針250と、ワイヤ部260と、案内部材270とを備える。操作部210は、操作部本体212と、第1スライダ220と、第2スライダ230と、通電用電極202とを有する。なお、ワイヤ部260としては、
図5Aに示したワイヤ部160Bの構造、
図5Bに示したワイヤ部160Aの構造の何れを採用してもよいが、以下では、ワイヤ部260としてワイヤ部160Bを採用した場合を示す。ワイヤ部260は、第1操作ワイヤ261と、第2操作ワイヤ262と、スネアワイヤ263とを有する。
【0044】
案内部材270は、注射針250とワイヤ部260とを干渉しないように離間した状態でカテーテル218内を案内するための部材である。案内部材270には、例えばセラミック、プラスチック等が用いられる。案内部材270は、
図8B及び
図9A等に示すように、本体270aと、本体270aに連なる頭部270bとを有する。本実施の形態では、本体270aがカテーテル118の先端側の内部に設けられ、頭部270bがカテーテル218の先端開口219から外側に突出して設けられる。
【0045】
本体270aは、カテーテル218の内径より若干小さいか又は略同一の径を有する円柱形状からなり、例えば接着剤等の固着部材によりカテーテル118内の先端部に固定される。本体270aの左右の側面には、
図9C及び
図9D等に示すように、カテーテル218内において収縮(圧縮)した対向するワイヤ263a,263b(ワイヤ部260)を収納するための側溝272a、272bが形成されている。側溝272a、272bは、周面を断面凹状に切り欠いて形成されるとともに、長手軸X方向の全長に亘って形成される。なお、側溝272a、272bの凹形状は、ワイヤ部260の径よりも若干大きい径を有し、ワイヤ部260の外形形状に沿う例えばU字状の溝で形成してもよい。なお、側溝272a、272bは第2案内部の一例を構成する。
【0046】
頭部270bは、
図9A及び
図9Bに示すように、本体270aよりも大きい径を有する略椀状からなり、本体270aの先端部に取り付けられている。頭部270bには、スネアワイヤ263(ワイヤ部260)の湾曲した先端部263c(
図11A参照)を収納するための収納溝272cが形成されている。収納溝272cは周面を断面凹状に切り欠いて形成されるとともにその周面形状に沿うように円弧状に形成され、その両端部のそれぞれが側溝272a、272bに連通している。なお、収納溝272cの凹形状は、ワイヤ部260の径よりも若干大きい径を有し、ワイヤ部260の外形形状に沿う例えばU字状の溝で形成してもよい。なお、収納溝272cは第2案内部の一例を構成する。
【0047】
収納溝272cは、
図9Bに示すように、案内部材270の側面視で、長手軸X方向(水平方向)に延びる側溝272a、272bに対して斜め上方に所定の角度だけ傾斜している。これにより、案内部材270を前方から見たときに、案内部材270の軸芯に形成される格納孔272dとはずれた位置に収納溝272cを配置できる。なお、格納孔272dの側面視での延在方向は、切削加工の観点から直線状に形成することが好ましいが、湾曲状であってもよい。頭部270bの後端縁に設けられる段差部270cは、
図8Bに示すように、カテーテル218の先端開口219の端面に係合され、案内部材270のカテーテル218内への移動が規制される。
【0048】
また、案内部材270には、
図9C、
図9D及び
図9Eに示すように、注射針250をカテーテル218内において前進及び後退可能に案内するための格納孔272dが形成されている。格納孔272dは、案内部材270の中心軸(軸芯)に沿って貫通しており、注射針250の径よりも若干大きいか略同一の径を有する。格納孔272dの基端側は、カテーテル218内に連通している。なお、格納孔272dは第1案内部の一例を構成する。
【0049】
[内視鏡用処置具200の動作例]
図10A及び
図10Bは、第1スライダ220の操作に基づく注射針250の動作を示す図である。
【0050】
術者により第1スライダ220を操作部本体212に対して前進させる操作が行われると、
図10Aに示すように、注射針250がカテーテル218内の案内部材270の格納孔272dに沿って前進し、カテーテル218の先端開口219及び頭部270bから外側に突出する。続けて、この状態で、頭部270bから突出した注射針250が病変部Pと筋層Wとの間に刺され、膨隆剤が注入される。
【0051】
次に、術者により第1スライダ220を操作部本体212に対して後退させる操作が行われると、
図10Bに示すように、注射針250がカテーテル218内に引き込まれる。これにより、注射針250が案内部材270の格納孔272dに収納される。
【0052】
図11A及び
図11Bは、第2スライダ230の操作に基づくワイヤ部260の動作を示す図である。
【0053】
次に、術者により第2スライダ230を操作部本体212に対して前進させる操作が行われると、スネアワイヤ263がカテーテル218内の案内部材270の側溝272a,272bに沿って前進し、
図11Aに示すように、カテーテル218の先端開口219及び頭部270bから外側に突出する。頭部270bから突出したスネアワイヤ263は、弾性力により変形して若干広がる。
【0054】
次に、頭部270bからスネアワイヤ263が病変部Pに掛けられる。その後、術者により第2スライダ230を操作部本体212に対して後退させる操作が行われると、スネアワイヤ263の後端側がカテーテル218内に引き込まれる。続けて、高周波電源装置によりスネアワイヤ363に高周波電流が通電され、病変部Pが切除される。
【0055】
次に、術者により第2スライダ230を操作部本体212に対して後退させる操作が行われると、スネアワイヤ263の全体がカテーテル218内に引き込まれる。これにより、
図11Bに示すように、スネアワイヤ263の先端部263cが案内部材270の収納溝272cに収納され、スネアワイヤ263のワイヤ263a,263bのそれぞれが側溝272a,272bに収納される。スネアワイヤ263の開口径は、案内部材270の径と略同一に構成されているため、スネアワイヤ263に対して負荷をあまり掛けることなく、スネアワイヤ263をカテーテル218内に収納できる。
【0056】
以上のように第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。例えば、カテーテル218内の先端側に側溝272a、272b、収納溝272c及び格納孔272dを有する案内部材270を設けることで、1本のカテーテル218内において注射針250の搬送経路とワイヤ部260の搬送経路とを独立して設けることができる。これにより、カテーテル218内において注射針250とワイヤ部260とを干渉させることなく前進及び後退させることができ、注射針250及びワイヤ部260におけるカテーテル218の先端開口219からの円滑な出し入れを実現できる。さらに、注射針250の搬送経路とワイヤ部260の搬送経路とを別々に設けるので、一方の処置具、例えば注射針250に不具合が発生した場合でも、他方の処置具、例えばワイヤ部260を正常に使用することができる。
【0057】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の内視鏡用処置具300では、操作部310を拳銃型で構成する点において、上記第1及び第2の実施の形態の内視鏡用処置具100,200の操作部110,210とは相違している。なお、以下の実施の形態の内視鏡用処置具300において、第1の実施の形態の内視鏡用処置具100と同一の構成及び機能を有する部位には同一の名称を使用することにより重複する説明を省略する。
【0058】
図12は、第3の実施の形態に係る内視鏡用処置具300の全体図である。
図13Aは第3の実施の形態に係る内視鏡用処置具300の断面図であり、
図13Bは
図2Aに示す内視鏡用処置具300のカテーテル318の先端側を示す断面図である。
【0059】
[内視鏡用処置具300の構成例]
内視鏡用処置具300は、
図12及び
図13Aに示すように、操作部310と、カテーテル318と、注射器用操作部320と、スネア用操作部330と、注射針350と、ワイヤ部360と、案内部材370と、駆動機構380とを備える。なお、案内部材370には、上述した第1の実施の形態の案内部材170を適用しているが、第2の実施の形態の案内部材270を適用してもよい。
【0060】
操作部310は、
図12に示すように、操作部本体312と、通電用電極302と、を有する。ワイヤ部360は、
図13Aに示すように、第1操作ワイヤ361と、第2操作ワイヤ362と、スネアワイヤ363とを有する。
【0061】
操作部本体312には、操作部本体312の後部下面から下方に延びるハンドル部313が設けられている。本実施の形態では、操作部本体312とハンドル部313とで拳銃形状を構成している。ハンドル部313には、
図13Aに示すように、生理食塩水等の膨隆剤を収容するためのタンク390が内蔵されている。ハンドル部313の下端部には、図示しないシリンジが接続可能な接続口391が設けられている。タンク390は接続口391に連通しており、接続口391を介してタンク390内に膨隆剤を充填できるようになっている。
【0062】
操作部本体312内には、
図13Aに示すように、長手軸X方向に沿って移動可能であり、かつ長手軸X周りに回転可能なシリンダ315が設けられている。シリンダ315には、ワイヤ部360の基端部が取り付けられており、ワイヤ部360がシリンダ315の前進及び後退に伴って前後方向に移動可能となっている。シリンダ315の後端側は操作部本体312の後端部から外側に突出しており、突出したシリンダ315にはシリンダ315及びスネアワイヤ363を回転操作するためのリング315aが設けられている。これにより、リング315aを回転させることでスネアワイヤ363の角度を調整できる。ただし、本実施例においては案内部材370がカテーテル318内の先端側で固定されているため、回転操作機能を使用しない。
【0063】
シリンダ315の先端側には、スライド機構316が取り付けられている。スライド機構316の軸317は、操作部本体312の長孔312a、及び第1グリップ331の長孔331aに挿通されている。操作部本体312の長孔312aは、操作部本体312の長手軸X方向に沿って形成される。スライド機構316は、第1グリップ331及び第2グリップ332の回動操作により長孔312aに沿って移動し、シリンダ315を操作部本体312に対して前進及び後退させる。
【0064】
通電用電極302は、操作部本体312の後側上部に取り付けられる。通電用電極302の先端部はシリンダ315に当接可能に設けられ、通電用電極302の基端部は図示しない高周波電源装置に接続可能に構成されている。これにより、高周波電源装置から供給された高周波電流を、シリンダ315を介してワイヤ部360に伝達できるようになっている。なお、通電用電極302の先端部は、シリンダ315の後端側に取り付けるようにしてもよい。
【0065】
注射器用操作部320は、第1トリガー321及び第2トリガー322を有する。第1トリガー321は、注射針350をカテーテル318の先端から突出させる、及び注射針350をカテーテル318内に引き込むための操作部である。第1トリガー321は、操作部本体312の下方に設けられ、術者により引き操作が可能に構成されている。第1トリガー321は、引き操作されたときに、駆動機構380を作動させてカテーテル318内に挿通された注射針350を前進させる。なお、第1トリガー321は、図示しないバネ等の弾性部材により前方に付勢されている。
【0066】
第2トリガー322は、膨隆剤を注射針350に供給、注入するための操作部である。第2トリガー322は、操作部本体312の下方であって、第1トリガー321の後側に設けられている。第2トリガー322は、第1トリガー321が引き操作されたときに第1トリガー321によって後方に押圧される。
図13Aに示すように、第2トリガー322の後端部にはゴム栓323が取り付けられており、ゴム栓323がタンク390に連通するタンクパイプ392に装着されている。第2トリガー322の後退に伴ってゴム栓323がタンクパイプ392内を後方に移動すると、タンク390に充填されている膨隆剤が押し出されて注射針350に注入されるようになっている。
【0067】
駆動機構380は、
図13Aに示すように、第1スライド部381と、第2スライド382と、回転軸383とを有する。第1スライド部381は、第1トリガー321の上側に取り付けられ、第1トリガー321の引き操作等に伴って一体的に移動する。第1スライド部381は、上面側に複数の歯が形成された細長の平板部材で構成され、上側に配置される回転軸383の歯に噛み合っている。
【0068】
回転軸383は、長手軸Xに直交する方向に軸を有する歯車であり、操作部本体312に回転可能に取り付けられている。回転軸383は、第1スライド部381の前後方向の移動に伴って回転する。
【0069】
第2スライド382は、下側に複数の歯が形成された細長の平板部材で構成され、第1スライド部381の上側に対向して配置されている。第2スライド382は、下側に配置される回転軸383の歯に噛み合っており、回転軸383の回転に伴って操作部本体312に対して前進及び後退する。
【0070】
第2スライド382の上面側には、注射器用チューブ394を保持、固定するための保持部384が設けられている。保持部384は、第2スライド382の移動に伴って一体的に移動し、注射器用チューブ394及び注射針350を前進及び後退させる。保持部384の構成としては、例えば、注射器用チューブ394を挟持する構成としてもよいし、接着剤等の固着部材を用いた構成としてもよい。
【0071】
スネア用操作部330は、細長の平板部材からなる第1グリップ331及び第2グリップ332を有する。第1グリップ331及び第2グリップ332は、術者が把持して前方に傾けることで、ワイヤ部360をカテーテル318内において前進させるための部材である。
【0072】
第1グリップ331の一端部は、ハンドル部313の下端部に設けられた軸334に回動可能に取り付けられている。第1グリップ331の他端部は、操作部本体312の上面から突出しており、術者が把持する部位として機能する。第1グリップ331の長手方向の略中央部には軸335が設けられ、軸335が第2グリップ332の長孔332aが挿通されている。第1グリップ331には長孔331aが形成され、長孔331aにはスライド機構316の軸317が挿通されている。
【0073】
第2グリップ332の一端部は、操作部本体312の後側上部に設けられた軸336に回動可能に取り付けられている。第2グリップ332には長孔332aが形成され、長孔332aには第1グリップ331の軸335が挿通されている。第2グリップ332の他端部は、ハンドル部313の下面から突出しており、術者が把持するための把持部として機能する。
【0074】
これにより、第1グリップ331及び第2グリップ332が術者により前方に傾けられると、スライド機構316が操作部本体312の長孔312aに沿って前進し、これに伴ってシリンダ315及びワイヤ部360が前進する。なお、第1グリップ331及び第2グリップ332の少なくとも一方は、図示しないバネ等の弾性部材により後方に付勢されている。本実施の形態では、第1グリップ331及び第2グリップ332は弾性部材により
図12に示す初期位置で保持される。
【0075】
[内視鏡用処置具300の動作例]
図14A及び
図14Bは、第1トリガー321及び第2トリガー322の操作に基づく注射針350の動作を説明するための図である。
【0076】
図14Aに示すように、術者により第1トリガー321が矢印D1方向に引き操作されると、第1スライド部381が操作部本体312に対して後退することで、回転軸383が反時計回りに回転し、第2スライド382が前進する。これにより、保持部384及び注射器用チューブ394が操作部本体312に対して前進し、注射器用チューブ394に取り付けられている注射針350がカテーテル318の先端開口319から突出する。続けて、この状態で、カテーテル318の先端部から突出した注射針350が病変部Pと筋層Wとの間に刺される。
【0077】
図14Bに示すように、術者により第1トリガー321が矢印D1方向にさらに引き操作されると、第2トリガー322が第1トリガー321によって後方に押圧される。これにより、ゴム栓323が後退することで、タンク390内の膨隆剤が注射器用チューブ394を経由して注射針350に供給され、注射針350から病変部Pの近傍に液体が注入される。
【0078】
注射針350による注入が終了すると、第1トリガー321及び第2トリガー322から指が離され、図示しないバネ等の弾性力により第1トリガー321及び第2トリガー322が元の位置に戻る。これに伴い、第1スライド部381が操作部本体312に対して前進して、回転軸383が時計回りに回転することで、第2スライド382及び保持部384が後退する。これにより、注射器用チューブ394及びこれに接続された注射針350が後退し、注射針350がカテーテル318内に引き込まれて収納される。
【0079】
図15は、第1グリップ331及び第2グリップ332の操作に基づく注射針350ワイヤ部360の動作を説明するための図である。
【0080】
術者により第1グリップ331及び第2グリップ332が把持されて矢印D2方向及び矢印D3方向の前方に傾けられると、スライド機構316が長孔312aに沿って前進することでシリンダ315が操作部本体312に対して前進する。これにより、シリンダ315に取り付けられたワイヤ部360がカテーテル318内を前進することで、先端側のスネアワイヤ363がカテーテル318の先端開口319から突出したスネアワイヤ363が弾性力により円環状に変形する。
【0081】
続けて、スネアワイヤ363を病変部Pに掛けた後、第1グリップ331及び第2グリップ332を後方に若干戻すことでスネアワイヤ363を絞り、高周波電源装置によりスネアワイヤ363に高周波電流を通電する。これにより、病変部Pが切除される。
【0082】
次に、術者の指が第1グリップ331及び第2グリップ332から離間すると、図示しないバネ等の弾性力により第1グリップ331及び第2グリップ332が後方に移動して元の位置に戻る。スライド機構316は長孔312aに沿って後退し、シリンダ315及びシリンダ315に取り付けられたワイヤ部360が後退する。これにより、スネアワイヤ363が、カテーテル318内に引き込まれて収納される。
【0083】
以上のように第3の実施の形態によれば、操作部310を拳銃型とすることで、人間工学の観点から、コールドポリペクトミー時においてポリープ等の病変部Pの切除に必要加力をよりダイレクトにスネア用操作部330に伝達することができる。これにより、病変部Pを正確かつ高精度に切除できる。
【0084】
また、第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。例えば、カテーテル318内の先端側に案内部材370を設けることで、カテーテル318内において注射針350とワイヤ部360とを干渉させることなく前進及び後退させることができ、注射針350及びワイヤ部360におけるカテーテル318の先端開口319からの円滑な出し入れを実現できる。さらに、注射針350の搬送経路とワイヤ部360の搬送経路とを別々に設けるので、一方の処置具、例えば注射針350に不具合が発生した場合でも、他方の処置具、例えばワイヤ部360を正常に使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
100,200,300 内視鏡用処置具
118,218,318 カテーテル
150,250,350 注射針
160A,160B,260,360 ワイヤ部
163,263,363 スネアワイヤ
170,270,370 案内部材
172 第1溝(第1案内部)
174a,174b 第2溝(第2案内部)
270a 本体(案内部材)
270b 頭部(案内部材)
272a、272b 側溝(第2案内部)
272c 収納溝(第2案内部)
272d 格納孔(第1案内部)