(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040917
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
B65D 5/20 20060101AFI20230315BHJP
B65D 5/30 20060101ALI20230315BHJP
B65D 59/00 20060101ALI20230315BHJP
B65D 81/05 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B65D5/20 A
B65D5/30 Z
B65D59/00 A
B65D81/05 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148115
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】長原 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 健
【テーマコード(参考)】
3E060
3E066
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB02
3E060BB01
3E060BB05
3E060BC02
3E060CG13
3E060DA07
3E060DA25
3E060EA06
3E066AA03
3E066BA06
3E066CA04
3E066GA03
3E066JA04
3E066KA10
(57)【要約】
【課題】打抜部を設けることなく二重壁を組立可能とし、構造体の生産性と外観を向上する。
【解決手段】構造体10は、第1外板22と第1内板24を有する第1壁部21と、第2外板26と第2内板28を有する第2壁部25とを備える。第1壁部21は、第2壁部25側の端部に、第1内板24よりも内側へ突出した係止受部40を有し、第2壁部25は、第1壁部21側の端部に、第1内板24に沿って配置されて係止受部40に係止した係止片45を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外板と、前記第1外板の頂端に連なり、前記第1外板の内面側に配置された第1内板とを有する二重壁からなる第1壁部と、
第2外板と、前記第2外板の頂端に連なり、前記第2外板の内面側に配置された第2内板とを有する二重壁からなり、少なくとも前記第2内板が前記第1内板に隣接して交差する方向に延びる第2壁部と
を備え、
前記第1壁部は、前記第2壁部側の端部の前記頂端側に、前記第1内板よりも内側へ突出した係止受部を有し、
前記第2壁部は、前記第1壁部側の端部に、前記第1内板に沿って配置されて前記係止受部に係止した係止片を有する、
構造体。
【請求項2】
前記第1内板は、前記第1外板の前記頂端と前記第1内板の頂端に連なる第1頂板を介して前記第1外板に連なり、
前記第2内板は、前記第2外板の前記頂端と前記第2内板の頂端に連なる第2頂板を介して前記第2外板に連なり、
前記第2頂板のうち前記第1壁部側の端部は、前記第1頂板の外面側に配置され、
前記第1頂板のうち前記第2壁部側の端部には、前記第2頂板から離れる向きに傾斜した傾斜部が設けられ、
前記係止受部は、前記傾斜部に対して前記第2壁部とは反対側に隣接して設けられている、
請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第2頂板は、前記第1壁部側の端部に、前記第2内板よりも内側へ突出した突部を有し、
前記係止片のうち前記係止受部に係止する係止端は、前記突部に対して間隔をあけて位置している、
請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記第1外板及び前記第2外板それぞれの前記頂端とは反対側の端部に連なる第3壁部を備え、
前記第3壁部のうち前記第1内板及び前記第2内板それぞれと対向する部分は、前記第1内板及び前記第2内板を係止するための孔がない無孔状である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記第2内板は、前記第3壁部に当接可能な位置まで延びており、
前記係止片は、前記第2内板に連なり、前記第2内板のうち前記頂端側から前記頂端とは反対側の端部まで延びており、前記第2頂板側から前記第3壁部に向かうに従って、前記第3壁部に沿う方向の幅が漸増している、
請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
前記第1内板と前記第3壁部の間、及び前記第2内板と前記第3壁部の間に、互いに当接不可能な間隔の隙間が設けられ、
前記係止片は、前記第2内板に連なり、前記第2内板のうち前記頂端側から前記頂端とは反対側の端部まで延びている、
請求項4に記載の構造体。
【請求項7】
前記係止受部を含む前記第1壁部は前記第3壁部の対向位置に一対設けられ、前記係止片を含む前記第2壁部は前記第3壁部の他の対向位置に一対設けられている、請求項4から6のいずれか1項に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイ、包装箱、及びコーナーパッド等の構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、底壁と、底壁の外周から突出した四角筒状の外周壁とを備えるトレイが開示されている。外周壁の対向する一対の第1壁部は、外板と内板を有する二重壁からなる。内板には底壁に向けて突出する係止突起が設けられ、底壁には係止孔が設けられ、係止孔の孔縁への係止突起の係止によって、第1壁部が組立状態に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小さな打抜部からなる係止孔は打ち抜き(製造)が困難なため、特許文献1に記載のトレイのブランクの生産性は悪くなることがある。しかも、底壁の厚みによっては係止孔から係止突起が突出するため、トレイの外観が損なわれることがある。よって、特許文献1のトレイには、生産性と外観について改善の余地がある。
【0005】
このような問題は、第1壁部に加え、外周壁の他の対向する一対の第2壁部も二重壁からなる場合にも生じ得る。また、トレイに限られず、蓋を有する包装箱、及びコーナーパッド等の他の構造体であっても、上記問題は同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、打抜部を設けることなく二重壁を組み立てることができ、構造体の生産性と外観を向上できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1外板と、前記第1外板の頂端に連なり、前記第1外板の内面側に配置された第1内板とを有する二重壁からなる第1壁部と、第2外板と、前記第2外板の頂端に連なり、前記第2外板の内面側に配置された第2内板とを有する二重壁からなり、少なくとも前記第2内板が前記第1内板に隣接して交差する方向に延びる第2壁部とを備え、前記第1壁部は、前記第2壁部側の端部の前記頂端側に、前記第1内板よりも内側へ突出した係止受部を有し、前記第2壁部は、前記第1壁部側の端部に、前記第1内板に沿って配置されて前記係止受部に係止した係止片を有する、構造体を提供する。
【0008】
本態様では、隣接した第1壁部と第2壁部がそれぞれ二重壁によって構成され、第1壁部の頂端側に設けられた係止受部に、第2壁部に設けられた係止片を係止することで、第1壁部と第2壁部が組立状態に保持されている。このように、打ち抜きが困難な打抜部(係止孔)を設ける必要がないため、構造体のブランクの生産性を向上できる。しかも、構造体の外部に係止突起が突出することはないため、構造体の外観を向上できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、打抜部を設けることなく二重壁を組み立てることができ、構造体の生産性と外観を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る構造体である組立過程のトレイの斜視図。
【
図8】第2実施形態に係る構造体であるトレイを示す斜視図。
【
図11】第3実施形態に係る構造体であるトレイの斜視図。
【
図15】第4実施形態に係る構造体であるトレイを示す斜視図。
【
図17】第5実施形態に係る構造体であるコーナーパッドの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係る構造体であるトレイ10を示す。トレイ10は、底壁(第3壁部)15と、底壁15の外周から突出する筒状の外周壁20とを備える。外周壁20を構成する壁部21,25は、全て二重壁からなる。本実施形態では、打ち抜きが困難な打抜部(係止孔)を設けることなく、二重壁を組立状態に保持できるようにする。
【0013】
以下の説明で引用する図面に記載したX方向はトレイ10の長さ方向であり、Y方向はトレイ10の幅方向であり、Z方向はトレイ10の高さ方向である。本実施形態では、トレイ10の長さ方向Xの寸法が幅方向Yの寸法よりも大きく、幅方向Yの寸法が高さ方向Zの寸法よりも大きい。但し、トレイ10の長さ方向Xの寸法、幅方向Yの寸法、及び高さ方向Zの寸法は、収容する物品の形状に応じて変更可能である。
【0014】
トレイ10は、
図3に示す一枚のブランクを、所定部位で折り曲げて所定部位を固着することで組み立てられている。ブランクは、紙製の段ボールシートを組み立て直前の折畳み状態まで、高速で自動製造可能な汎用加工機であるフレキソグルアによって製造することができる。段ボールシートは、表ライナ(トレイ10の外面)と裏ライナ(トレイ10の内面)の間に波状の中しんを配設した構成である。
【0015】
図3及び
図4に二点鎖線で示す部分は、肉厚を圧縮するように裏ライナの方から罫を入れて形成した汎用罫線である。
図3及び
図4に実線で示す部分は、裏ライナから表ライナにかけて刃を入れて形成した切断線、及び打ち抜きによる形状線(辺)である。
【0016】
以下、底壁15と外周壁20について、具体的に説明する。
【0017】
図1及び
図2を参照すると、底壁15は、四角形状であり、XY平面に沿って延びている。本実施形態の底壁15は、一対の内フラップ16と一対の外フラップ17とを備え、外周壁20の底を開閉可能に塞ぐ蓋である。一対の内フラップ16は、それぞれ四角形状であり、長さ方向Xに間隔をあけて対向配置されている。一対の外フラップ17は、それぞれ内フラップ16よりも長尺な四角形状であり、互いの先端が突き合うように幅方向Yに対向し、内フラップ16の外面側に重ねて配置されている。
【0018】
図3のブランクを参照すると、一対の内フラップ16と一対の外フラップ17は、横並びで交互に配置されている。内フラップ16の先端と外フラップ17の先端とは、直線上に位置している。外周壁20に対して一対の内フラップ16をそれぞれ折り曲げた後、外周壁20に対して一対の外フラップ17をそれぞれ折り曲げる。その後、一対の外フラップ17それぞれの先端に跨がって粘着テープを貼着、又は内フラップ16と外フラップ17の重畳部分を熱溶融樹脂等の接着剤によって貼着(ホットメルト)することで、底壁15が形成される。
【0019】
図1及び
図2を参照すると、外周壁20は、幅方向Yに対向配置された一対の側壁部(第1壁部)21と、長さ方向Xに対向配置された一対の端壁部(第2壁部)25とを備える。側壁部21と端壁部25は、互いに隣接し、交差する方向に延びている。具体的には、一対の側壁部21はそれぞれ、底壁15の幅方向Yの端部に連なり、XZ平面に沿って延びている。一対の端壁部25はそれぞれ、底壁15の長さ方向Xの端部に連なり、YZ平面に沿って延びている。
【0020】
側壁部21は、第1外板22、第1頂板23、及び第1内板24を備える二重壁からなり、端壁部25は、第2外板26、第2頂板27、及び第2内板28を備える二重壁からなる。
図3を参照すると、一対の端壁部25のうちの一方の第2外板26は、外板本体29と付代部30を備え、これらを例えば酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤によって貼着(固着)した構成である。
【0021】
図1及び
図2を参照すると、第1外板22は、XZ平面に沿って延びる四角形状であり、折曲部31を介して底壁15の外フラップ17に連なっている。つまり、第1外板22のうち、上端(頂端)とは反対側の下端が底壁15に連なっている。
【0022】
第1頂板23は、XY平面に沿って延びる細長い四角形状であり、折曲部32を介して第1外板22に連なり、折曲部33を介して第1内板24に連なっている。つまり、第1頂板23は、第1外板22の上端(頂端)と第1内板24の上端(頂端)とに連なっている。
【0023】
第1内板24は、XZ平面に沿って延びる四角形状であり、前述のように折曲部33を介して第1頂板23に連なっている。つまり、第1内板24は、第1頂板23を介して第1外板22の上端に連なり、第1頂板23分の間隔をあけて第1外板22の内面側に配置されている(
図6参照)。
図5及び
図6を参照すると、第1内板24は、底壁15に当接可能な位置まで延びている。当接可能な位置とは、底壁15に向けた外力が第1頂板23に加わったときに、下向きに移動する第1内板24の下端部が底壁15に当接可能な位置を意味する。勿論、外力が加わっていない状態で、第1内板24の下端部が底壁15に当接した構成も含まれる。
【0024】
図1及び
図2を参照すると、第2外板26は、YZ平面に沿って延びる四角形状であり、折曲部34を介して底壁15の内フラップ16に連なるとともに、折曲部35を介して第1外板22に連なっている。つまり、第2外板26のうち、上端(頂端)とは反対側の下端が底壁15に連なっている。
【0025】
第2頂板27は、XY平面に沿って延びる細長い四角形状であり、折曲部36を介して第2外板26に連なるとともに、折曲部37を介して第2内板28に連なっている。つまり、第2頂板27は、第2外板26の上端(頂端)と第2内板28の上端(頂端)とに連なっている。
【0026】
第2内板28は、YZ平面に沿って延びる四角形状であり、前述のように折曲部37を介して第2頂板27に連なっている。つまり、第2内板28は、第2頂板27を介して第2外板26の上端(頂端)に連なり、第2頂板27分の間隔をあけて第2外板26の内面側に配置されている(
図5参照)。第2内板28の幅方向Yの幅は、一対の側壁部21の第1内板24間の距離と概ね同一である。
図5及び
図6を参照すると、第2内板28は、第1内板24と同様に、底壁15に当接可能な位置まで延びている。
【0027】
図3を参照すると、一対の第1外板22と一対の第2外板26は、横方向に並べて交互に配置されている。一対の第1頂板23と一対の第2頂板27は、対応する第1外板22と第2外板26に連なるように、横方向に並べて交互に配置されている。一対の第1内板24と一対の第2内板28は、対応する第1頂板23と第2頂板27と連なるように、横方向に並べて交互に配置されている。
【0028】
具体的には、
図3の左側から右側に向けて、一方の第2外板26を構成する付代部30、一方の第1外板22、他方の第2外板26、他方の第1外板22、及び一方の第2外板26を構成する外板本体29の順で配置され、それぞれ折曲部35を構成する折曲線35aを介して連設されている。第1外板22は、折曲部31を構成する折曲線31aを介して外フラップ17に連設され、他方の第2外板26と外板本体29は、折曲部34を構成する折曲線34aを介して内フラップ16に連設されている。折曲線31a,34a,35aは、いずれも汎用罫線からなる。また、折曲線31a,34aは、同一直線上を延びるように設けられている。
【0029】
第1頂板23は、折曲部32を構成する折曲線32aを介して第1外板22に連設され、第2頂板27は、折曲部36を構成する折曲線36aを介して第2外板26及び外板本体29に連設されている。折曲線32a,36aは、いずれも汎用罫線からなり、同一直線上を延びるように設けられている。
【0030】
第1内板24は、折曲部33を構成する折曲線33aを介して第1頂板23に連設され、第2内板28は、折曲部37を構成する折曲線37aを介して第2頂板27に連設されている。折曲線33a,37aは、いずれもリード罫からなり、同一直線上を延びるように設けられている。リード罫とは、汎用罫線上に破断不可能な間隔をあけて複数の切断線を設けた構成である。破断不可能な間隔とは、隣り合う切断線間の非切断部分を、外力の付加によって隣り合う切断線が繋がるように破断することが困難な距離を意味する。
【0031】
このように構成されたトレイ10のブランクは、
図3において左側に位置する第1外板22を第2外板26に対して折り曲げ、
図3において右側に位置する外板本体29を第1外板22に対して折り曲げ、重なり合った外板本体29と付代部30を接着剤によって貼着する。これにより、組立前で折畳み状態のトレイ10が完成する。フレキソグルアの場合、この状態まで高速で自動製造できる。
【0032】
トレイ10を組み立てる場合、一対の第1外板22と一対の第2外板26が四角筒状をなすように広げる。続いて、第2外板26に対して内フラップ16を内側へ折り曲げた後、第1外板22に対して外フラップ17を内側へ折り曲げ、外板22,26(外周壁20)の底を閉鎖する。その後、第1外板22に対して第1頂板23を折り曲げるとともに、第1頂板23に対して第1内板24を折り曲げて、二重壁からなる側壁部21を組み立てる。また、第2外板26に対して第2頂板27を折り曲げるとともに、第2頂板27に対して第2内板28を折り曲げて、二重壁からなる端壁部25を組み立てる。これにより、
図2に示すように、上端を開口して下端を閉鎖したトレイ10が完成する。
【0033】
図1及び
図2を参照すると、いずれも二重壁からなる側壁部21と端壁部25を組立状態に保持するために、本実施形態のトレイ10には、側壁部21に係止受部40が設けられ、端壁部25に係止片45が設けられている。また、本実施形態のトレイ10には更に、第1頂板23の両端に傾斜部50が設けられ、第2頂板27の両端に突部55が設けられている。
【0034】
図1、
図5及び
図6を参照すると、係止受部40は、側壁部21のうち端壁部25側に位置する第1頂板23の両端部にそれぞれ設けられている。係止受部40は、第1頂板23と同一平面状に設けられ、第1内板24よりも内側(端壁部25の幅方向Yの中央側)へ突出している。係止受部40のうち、第1内板24の内側面から係止受部40の先端までの突出寸法は、係止片45の厚み、つまり段ボールシートの厚み以上である。
【0035】
図4を参照すると、係止受部40は、折曲線33aから第1内板24側へ突出するように設けられた半長円形状(円弧状)の切断線41によって画定されている。切断線41の両端は、それぞれ折曲線33aを越えて第1頂板23の領域内に位置している。切断線41内には、折曲線33aは設けられていない。これにより、折曲線33aに沿って第1内板24を第1頂板23に対して折り曲げることで、第1頂板23から係止受部40が面一に突出する。
【0036】
図2、
図5及び
図6を参照すると、係止片45は、端壁部25のうち側壁部21側に位置する第2内板28の両端にそれぞれ設けられている。係止片45は、短冊状(四角形状)で、第2内板28の上端から下端まで延びている。つまり、係止片45の高さ方向Zの寸法(全高)は第2内板28の全高と同一である。係止片45は、折曲部46を介して第2内板28に連なり、第1内板24に沿って配置されることで、第1頂板23側である係止端45aが係止受部40に係止する。
【0037】
図3及び
図4を参照すると、一対の係止片45の幅(
図2における長さ方向Xの寸法)は、いずれも同じである。一対の係止片45と第2内板28を合わせた全幅は、隣り合う第1内板24との間にスリットが設けられている分、第2外板26の全幅よりも小さい。
【0038】
係止片45は、折曲部46を構成する折曲線46aを介して第2内板28に連設されている。折曲線46aは、I字形状に形成された一対の切断線からなる。折曲線46aを構成する個々の切断線の全長は、折曲線37aを構成するリード罫のうちの個々の切断線の全長よりも長い。これは、第2内板28に対する係止片45の折曲性を向上し、弾性的な復元力を低減させるためである。一対の切断線間には、破断不可能な間隔の連続部(非切断部)が確保されている。
【0039】
図1及び
図7を参照すると、傾斜部50は、側壁部21の第1頂板23の上面(外面)側に重ねて配置する第2頂板27の端部の浮き上がり(撓み)を抑え、第1頂板23上に第2頂板27を平坦に配置するために設けられている。傾斜部50は、第1外板22側から第1内板24側に向かうに従って、第2頂板27から離れるように下向きに傾斜している。傾斜部50によって形成された第1頂板23の窪みに、第2頂板27の端部を配置可能とすることで、第2頂板27の浮き上がりを抑えている。傾斜部50の長さ方向Xの幅は、第2頂板27の長さ方向Xの幅以上である。傾斜部50は、高さ方向Zから見て三角形状であり、2つの折曲部51,52によって画定されている。
図1に最も明瞭に示すように、この傾斜部50に対して端壁部25とは反対側に隣接するように、前述した係止受部40が設けられている。
【0040】
ここで、傾斜部50が無い場合、第1頂板23上に配置した第2頂板27の端部は、第2外板26側から第2内板28側に向かうに従って上向きに傾斜するため、トレイ10の外観が損なわれる。これは、
図3に示すように、フレキソグルアによって製造されたブランク(トレイ10)では、第1外板22及び第2外板26それぞれの全高、第1頂板23及び第2頂板27それぞれの全幅、及び第1内板24及び第2内板28それぞれの全高が、いずれも同じであることに起因する。そのため、傾斜部50が無い場合、第1頂板23上に配置した第2頂板27の端部には浮き上がりが生じるが、本実施形態では、このような不都合を防止できる。
【0041】
図4を参照すると、傾斜部50は、折曲部51,52を構成する2本の折曲線51a,52aによって画定されている。折曲線51aは、折曲線33aの延長線と切断線41の交点から折曲線32aの端部に向けて延びている。折曲線52aは、折曲線51aに対して折曲線33aを中心として線対称に設けられている。折曲線51a,52aは、いずれも汎用罫線からなる。折曲線33aに沿って第1内板24を第1頂板23に対して折り曲げることで、2本の折曲線51a,52aが山折れし、外側から内側に向けて下側へ傾斜した傾斜部50が形成される。
【0042】
図2、
図5及び
図6を参照すると、突部55は、第2内板28よりも内側(側壁部21の長さ方向Xの中央側)へ突出しており、係止片45の係止による係止受部40の浮き上がりを抑えるために設けられている。具体的には、
図3及び
図4に示すブランクの状態で、係止片45に隣接する第2頂板27の両端に突部55を設けることで、
図5及び
図6に示す組立状態で、係止片45の係止端45aを係止受部40よりも下側(底壁15側)に間隔をあけて配置可能とし、係止片45による係止受部40の押し上げを抑えている。突部55の幅方向Yの幅は、幅方向Yにおける係止受部40を含めた第1頂板23の幅以上である。
【0043】
図4を参照すると、突部55と係止片45は、折曲線37aに沿って平行に延びる第1切断線56によって画定されている。第1切断線56の内側端(第2内板28の幅方向Yの中央側の端)には、折曲線37aを越えて延びる第2切断線57が設けられている。第2切断線57には、第1切断線56に接する円弧部が含まれている。折曲線37aに沿って第2内板28を第2頂板27に対して折り曲げることで、第2頂板27に対して突部55が面一に突出する。また、係止片45の係止端45aが突部55(係止受部40)の下側に間隔をあけて位置する。
【0044】
なお、前述した底壁15のうち、第1内板24及び第2内板28それぞれと対向する部分は無孔状であり、第1内板24及び第2内板28を係止するための孔(打抜部)は何ら設けられていない。
【0045】
係止受部40、係止片45、傾斜部50、及び突部55を備えるトレイ10は、前述した手順で同様に組み立てられる。側壁部21の組立時、第1頂板23に対して第1内板24を折り曲げることで、係止受部40が幅方向Yの内側へ突出するとともに、幅方向Yの外側から内側へ傾斜した傾斜部50が形成される。端壁部25の組立時、第2頂板27に対して第2内板28を折り曲げることで、突部55が長さ方向Xの内側へ突出する。また、側壁部21に干渉した係止片45が、第2内板28に対して折れ曲がり、第1内板24に沿って回動した後、係止端45aが係止受部40の下側に係止する。
【0046】
これにより、側壁部21と端壁部25を組立状態に保持できる。具体的には、係止受部40への係止片45の係止によって、第2頂板27に対して第2内板28が回動して浮き上がることを防止できる。また、第1内板24への係止片45の当接によって、第1頂板23に対して第1内板24が回動して浮き上がることを防止できる。
【0047】
このように構成したトレイ10は、以下の特徴を有する。
【0048】
隣接した側壁部21と端壁部25がそれぞれ二重壁によって構成され、側壁部21の頂端側に設けられた係止受部40に、端壁部25に設けられた係止片45を係止することで、側壁部21と端壁部25が組立状態に保持されている。このように、打ち抜きが困難な小さな打抜部(係止孔)を設ける必要がないため、トレイ10のブランクの生産性を向上できる。しかも、トレイ10の外部に係止突起が突出することはないため、トレイ10の外観を向上できる。
【0049】
第2頂板27の端部が第1頂板23の外面側に配置され、第1頂板23の端部に傾斜部50が設けられ、係止受部40が傾斜部50に隣接して設けられている。そのため、第1頂板23に重ねた第2頂板27の端部の浮き上がりを抑え、係止受部40に係止片45を確実に係止できる。
【0050】
第2頂板27は第2内板28よりも内側へ突出した突部55を有し、係止片45のうち係止受部40に係止する係止端45aは突部55に対して間隔をあけて位置している。言い換えれば、第2頂板27に突部55を設けているため、組立状態では係止片45の係止端45aを突部55に対して間隔をあけて配置できる。そのため、突部55よりも下側に位置する係止受部40に係止片45を確実に係止できる。
【0051】
第1外板22及び第2外板26に連なる底壁15のうち第1内板24と第2内板28に対向する部分は、第1内板24及び第2内板28を係止するための孔がない無孔状である。そのため、トレイ10のブランクの生産性と組立後のトレイ10の外観とを確実に向上できる。
【0052】
係止受部40を含む側壁部21は底壁15の対向位置に一対設けられ、係止片45を含む端壁部25は底壁15の他の対向位置に一対設けられている。このトレイ10では、底壁15に対して側壁部21及び端壁部25を構成する外板22,26と内板24,28をそれぞれ折り曲げることで、容易に組み立てることができ、その組立状態を確実に保持できるため、利便性を向上できる。
【0053】
以下、本発明の他の実施形態並びに種々の変形例を説明するが、これらの説明において、特に言及しない点は第1実施形態と同様である。以下で言及する図面において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0054】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態の構造体であるトレイ10を示す。このトレイ10は、第2内板28と係止片45の間の折曲部46を、第2頂板27と第2内板28の間の折曲部37に対して傾斜させて、係止片45を直角台形状とした点で、第1実施形態のトレイ10と相違する。
【0055】
図8及び
図9を参照すると、第2内板28は、幅方向Yの寸法が第2頂板27から離れるに従って漸減する二等辺台形状に形成されている。よって、第2内板28と係止片45の間の折曲部46(折曲線46a)は、第2頂板27から離れるに従って、第2内板28の幅方向Yの中央側へ近づく向きに傾斜するように設けられている。その結果、折曲部46(折曲線46a)を介して第2内板28に連なる係止片45のうち、底壁15に沿う方向(概ね長さ方向X)の幅は、第2頂板27側から底壁15に向かうに従って漸増している。
【0056】
図8を参照すると、このようにしたトレイ10では、長さ方向Xから見て、第2内板28は上辺が下辺よりも長い台形状であり、折曲部46が第2頂板27から底壁15に向かうに従って幅方向Yの中央側へ傾斜する。
図8及び
図10を参照すると、係止片45は、上辺が下辺よりも短い台形状であり、上辺と長さ方向Xの中央側の斜辺とは、第1内板24に沿って長さ方向Xに延び、下辺と長さ方向Xの外側の辺とは、底壁15に近づくに従って第1内板24から次第に離れるように傾斜する。但し、係止片45の下辺は、底壁15に沿って平行に位置する。
【0057】
このようにした第2実施形態のトレイ10では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、第2内板28が底壁15に当接可能な位置まで延び、係止片45は、第2頂板27から底壁15に向かうに従って幅が漸増している。そのため、底壁15に対する係止片45の干渉によって、第2外板26側への第2内板28の入り込みを抑制できる。その結果、内部に収容する物品を確実に支持できるため、物品を安定状態に収容できる。
【0058】
(第3実施形態)
図11は第3実施形態の構造体であるトレイ10を示す。このトレイ10は、第1内板24及び第2内板28それぞれの寸法を短くした点、側壁部21と底壁15にスタッキング用の係止部61と係止孔66を設けた点で、第1実施形態のトレイ10と相違する。
【0059】
図11及び
図13を参照すると、第1頂板23から第1内板24の下端までの第1内板24の全高は、第2頂板27から第2内板28の下端までの第2内板28の全高と同一であり、これらの全高は、頂板23,27から底壁15までの外板22,26の全高よりも大幅に低い。これにより、第1内板24と底壁15の間、及び第2内板28と底壁15の間に、互いに当接不可能な間隔の隙間60がそれぞれ設けられている。ここで、当接不可能な間隔とは、底壁15に向けた外力が頂板23,27に加わったときに、下向きに移動する内板24,28の下端が底壁15に当接しない距離を意味する。
【0060】
係止片45は、第2内板28の上端(頂端)から下端にかけて連なる短冊状である。つまり、係止片45と底壁15の間にも、互いに当接不可能な間隔の隙間60が確保されている。第2内板28と係止片45の間の折曲部46は、第2頂板27と第2内板28の間の折曲部37に対して直交方向に延びている。
【0061】
図11を参照すると、係止部61は、一対の側壁部21の上端にそれぞれ2個ずつ設けられ、それぞれ第1頂板23よりも上側へ突出している。
図12を参照すると、係止部61は、第1頂板23を跨いで第1外板22から第2外板26まで延びる切断線62,63、切断線62,63の端部間を延びる一対の第1折曲線64、及び一対の第1折曲線64間に設けられた一対の第2折曲線65によって形成されている。
【0062】
係止受部40側に位置する第1切断線62は、第1内板24の中央側に位置する第2切断線63よりも長い。これらの切断線62,63間には、折曲線32a,33aは設けられていない。一対の第1折曲線64はいずれも汎用罫線からなる。一対の第2折曲線65は、いずれもリード罫からなり、第1切断線62の中央から第2切断線63に向けて互いに離れる向きに傾斜している。第2切断線63上に位置する第2折曲線65の端部は、いずれも第1頂板23の領域内に配置されている。
【0063】
このようにした係止部61は、第1外板22に対して第1頂板23を折り曲げるとともに、第1頂板23に対して第1内板24を折り曲げることで、一対の第1折曲線64と一対の第2折曲線65がそれぞれ山折れする。これにより、
図11及び
図13に示すように、概ね断面三角形状をなす係止部61が、第1頂板23よりも上側へ突出する。
【0064】
図11及び
図13を参照すると、係止孔66は、底壁15を構成する外フラップ17のうち、係止部61と対応する位置に設けられている。
図12を参照すると、係止孔66は四角形状の打抜部であり、係止孔66の長さ方向Xの寸法は、係止部61の長さ方向Xの寸法よりも大きい。
【0065】
このようにした第3実施形態のトレイ10では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、第1内板24と底壁15の間、及び第2内板28と底壁15の間には、互いに当接不可能な間隔の隙間60が設けられている。言い換えれば、側壁部21に係止受部40を設け、端壁部25に係止片45を設けているため、内板24,28が底壁15に対して間隔をあけて位置する短い寸法設定であっても、側壁部21と端壁部25を確実に組み立てることができる。
【0066】
また、側壁部21に係止部61が設けられ、底壁15に係止孔66が設けられているため、
図14に示すように、第1のトレイ10の上に第2のトレイ10を載せた際、第2のトレイ10の係止孔66に第1のトレイ10の係止部61を挿入することで、第1のトレイ10に対して第2のトレイ10を位置決めできる。そのため、2以上のトレイ10を積み重ねた際の安定性を向上できる。
【0067】
(第4実施形態)
図15は第4実施形態の構造体であるトレイ100を示す。このトレイ100は、前面側に上端の開口に連なる開口部124を備える。
図16を参照すると、トレイ100のブランクは、底壁105の外周に、外周壁110を構成する一対の側壁部(第1壁部)111、後壁部(第2壁部)112、及び前壁部113が連設されている。このブランクは、フレキソグルアとは異なる周知の紙器打抜装置によって製造される。
【0068】
図15及び
図16を参照すると、底壁105は、四角形状をなす1枚の段ボールシートによって構成されている。
【0069】
一対の側壁部111のうち、一方は底壁105の幅方向Yの一端に連設され、他方は底壁105の幅方向Yの他端に連設されている。一対の側壁部111はいずれも、第1実施形態の側壁部21と同様に、底壁105に連なる第1外板22と、第1外板22に連なる第1頂板23と、第1頂板23に連なる第1内板24とで構成されている。第1内板24は、底壁105に対して当接可能な位置まで延びている。また、側壁部111には、係止受部40と傾斜部50が第1実施形態と同様に設けられている。
【0070】
後壁部112は、底壁105の長さ方向Xの一端に連設されている。後壁部112は、第1実施形態の端壁部25と同様に、底壁105に連なる第2外板26と、第2外板26に連なる第2頂板27と、第2頂板27に連なる第2内板28とで構成されている。第2内板28は、底壁105に対して当接可能な位置まで延びている。また、後壁部112には、係止片45と突部55が第1実施形態と同様に設けられている。
【0071】
前壁部113は、底壁105に連なる第3外板114と、第3外板114に連なる第3頂板115と、第3頂板115に連なる第3内板116とを備える二重壁からなる。
【0072】
第3外板114は、上辺が下辺よりも小さい二等辺台形状であり、折曲部117(折曲線117a)を介して底壁105に連なっている。第3外板114の高さ方向Zの寸法(全高)は、他の外板22,26の寸法よりも小さい。
【0073】
第3頂板115は、細長い四角形状であり、折曲部118(折曲線118a)を介して第3外板114の上辺(頂部)に連なっている。第3頂板115の長さ方向Xの幅は、第3外板114と第3内板116の間に、後述する第2差込片122を配置する隙間が形成される程度の寸法である。
【0074】
第3内板116は、上辺が下辺よりも小さい二等辺台形状であり、折曲部119(第3折曲線)を介して第3頂板115に連なっている。第3内板116の幅方向Yの最大寸法は、一対の側壁部111の第1内板24間の距離よりも大きい。一対の第1内板24間に第3内板116を圧接状態で配置することにより、前壁部113が組立状態に保持されている。この場合、補助的な係止構造として、底壁105に係止孔を設けるとともに、係止孔から外側へ突出しない程度の係止突起を第3内板116に設けてもよい。
【0075】
図16を参照すると、一対の第1外板22には、第2外板26と第2内板28の間に配置される第1差込片120が、汎用罫線からなる折曲線121を介してそれぞれ連設されている。また、一対の第1外板22には、第3外板114と第3内板116の間に配置される第2差込片122が、汎用罫線からなる第5折曲線123を介してそれぞれ連設されている。一対の第1差込片120は、いずれも四角形状であり、第1外板22の全高にかけて延びている。一対の第2差込片122は、底壁105と隣接する位置に設けられており、第1外板22の全高にかけて延びる枠部122aを備える。一対の第2差込片122の枠部122a間に開口部124が形成されている(
図15参照)。
【0076】
図15及び
図16を参照すると、一対の側壁部111には、スタッキング用の係止部125と係止孔127が設けられている。
【0077】
図15を参照すると、係止部125は、第1外板22と一体に設けられ、第1頂板23よりも上側へ突出している。
図16を参照すると、係止部125は、折曲線32a(折曲部32)から第1頂板23の領域内へ延びるように設けられたU字状の切断線126によって画定されている。切断線126の両端は折曲線32a上に配置されている。切断線126内には折曲線32aは設けられていない。第1外板22に対して第1頂板23を折り曲げることで、第1外板22から係止部125が面一に突出する。
【0078】
係止孔127は、第1外板22のうち、係止部125と対応する位置に設けられた貫通孔からなる。係止孔127は、第1外板22における折曲線31aと隣接する位置に設けられている。係止孔127内には折曲線31aは設けられていない。
【0079】
第4実施形態のトレイ100は、例えば以下のように組み立てられる。
【0080】
まず、底壁105に対して一対の第1外板22をそれぞれ山折りし、第1外板22に対して第1頂板23をそれぞれ山折りし、第1頂板23に対して第1内板24をそれぞれ山折りする。
【0081】
続いて、第1外板22に対して第1差込片120を山折りし、底壁105に対して第2外板26を山折りし、第2外板26に対して第2頂板27を山折りし、第2頂板27に対して第2内板28を山折りする。これにより、いずれも二重壁からなる一対の側壁部111と後壁部112が組み立てられる。
【0082】
また、第1外板22に対して第2差込片122を山折りし、底壁105に対して第3外板114を山折りし、第3外板114に対して第3頂板115を山折りし、第3頂板115に対して第3内板116を山折りする。これにより、二重壁からなり、開口部124を有する前壁部113が組み立てられ、トレイ100の組み立てが完了する。
【0083】
この第4実施形態のトレイ100のように、係止受部40と係止片45を備える構造体は、上端のみを開口したトレイ10に限られず、前壁部113にも開口部124を形成したトレイ100にも適用でき、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、第4実施形態のトレイ100は、係止部125と係止孔127を備えるため、第3実施形態と同様に、2以上のトレイ100を安定状態で積み重ねることができる。
【0084】
(第5実施形態)
図17は第5実施形態の構造体であるコーナーパッド200を示す。このコーナーパッド200は、例えば物品の角部に配置する緩衝材であり、端壁(第3壁部)205と、端壁205の第1辺に連なる第1壁部215と、端壁205の第2辺に連なる第2壁部216とを備える。
【0085】
図17及び
図18を参照すると、端壁205は、第1端板206と第2端板207を積層した二重壁である。第1端板206と第2端板207は、連設された第1壁部215と第2壁部216を介して連なっている。第1端板206には一対の係止片208が設けられ、第2端板207には一対の係止溝211が設けられている。
【0086】
一対の係止片208は、第1壁部215と対向する辺、及び第2壁部216と対向する辺の二箇所にそれぞれ設けられている。個々の係止片208は、間隔をあけて設けられた一対の切断線209と、一対の切断線209の端部間に設けられた折曲線210とで画定されている。
【0087】
一対の係止溝211は、係止片208と同様に、第1壁部215と対向する辺、及び第2壁部216と対向する辺の二箇所にそれぞれ設けられている。係止溝211は、第1壁部215又は第2壁部216に向けて切り欠いた溝であり、第1端板206と第2端板207を重ね合わせた状態で上下に対応する位置に設けられている。
【0088】
図17に示すように、第1端板206と第2端板207を重ね合わせて、係止片208を係止溝211内へ折り曲げることで、第1端板206と第2端板207を位置決めできる。
図17では、第2端板207の上側に第1端板206を重ねているが、第1端板206の上側に第2端板207を重ねてもよい。
【0089】
第1壁部215は端壁205の第1端板206に連なり、第2壁部216は端壁205の第2端板207に連なっている。但し、第1壁部215が第2端板207に連なり、第2壁部216が第1端板206に連なっていてもよい。
【0090】
第1壁部215は、第1実施形態の側壁部21と同様に、端壁205に連なる第1外板22と、第1外板22に連なる第1頂板23と、第1頂板23に連なる第1内板24とで構成されている。第1内板24は、端壁205に対して当接可能な位置まで延びている。また、第1壁部215には、第2壁部216と隣接する端部だけに、係止受部40と傾斜部50が第1実施形態と同様に設けられている。
【0091】
第2壁部216は、第1実施形態の端壁部25と同様に、端壁205に連なる第2外板26と、第2外板26に連なる第2頂板27と、第2頂板27に連なる第2内板28とで構成されている。第2外板26は、折曲部35を介して第1外板22と連なっている。第2内板28は、端壁205に対して当接可能な位置まで延びている。また、第2壁部216には、第2壁部216と隣接する端部だけに、係止片45と突部55が第1実施形態と同様に設けられている。
【0092】
図17を参照すると、第1壁部215と第2壁部216には更に、それぞれの外板22,26と内板24,28間の圧縮強度を向上するための補強部220が設けられている。
図18を参照すると、補強部220は、折曲線32a,36aから内板24,28内に延びる第1切断線221と第2切断線222、及びこれらの間に設けられた第1折曲線223と第2折曲線224によって画定されている。
【0093】
第1切断線221は、折曲線32a,36aに対して直交方向に延びている。第2切断線222は、折曲線32a,36aから離れるに従って第1切断線221に近づく向きに傾斜している。第1折曲線223は、折曲線32a,36aに沿って平行に延びる汎用罫線で、内板24,28の領域内に位置する切断線221,222の端部間に設けられている。第2折曲線224は、折曲線32a,36aに沿って平行に延びる汎用罫線で、頂板23,27の領域内に位置する切断線221,222の中間部分間に設けられている。第1切断線221と第2切断線222の間には、折曲線32a,33a,36a,37aは設けられていない。
【0094】
外板22,26に対して頂板23,27を折り曲げ、頂板23,27に対して内板24,28を折り曲げることで、第1折曲線223と第2折曲線224も折れ曲がり、これらの間に頂板23,27とは異なる角度で延びる傾斜板220aが形成される(
図17参照)。傾斜角が異なる頂板23,27と傾斜板220aによって、外板22,26と内板24,28が近づく方向の力を分散できるため、第1壁部215と第2壁部216の圧縮強度を向上できる。
【0095】
第5実施形態のコーナーパッド200は、例えば以下のように組み立てられる。
【0096】
まず、第1外板22に対して第2外板26を折り曲げた後、第1外板22に対して第1端板206を折り曲げるとともに、第2外板26に対して第2端板207を折り曲げ、第1端板206と第2端板207を重ね合わせる。続いて、一対の係止片208を第2端板207側へ折り曲げ、第1端板206と第2端板207を位置決めする。
【0097】
続いて、第1外板22に対して第1頂板23をそれぞれ山折りし、第1頂板23に対して第1内板24をそれぞれ山折りした後、第2外板26に対して第2頂板27を山折りし、第2頂板27に対して第2内板28を山折りする。これにより、いずれも二重壁からなる第1壁部215と第2壁部216が組み立てられ、コーナーパッド200の組み立てが完了する。
【0098】
このように、構造体は、一組の係止受部40と係止片45を備えていれば隣接した第1壁部と第2壁部を係止可能であり、トレイ10,100に限られず、緩衝材として用いられるコーナーパッド200にも適用でき、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。勿論、第1実施形態から第4実施形態のトレイにおいても、隣接した一組の壁部のみに係止受部40と係止片45を設けてもよい。
【0099】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0100】
例えば、第1壁部21,111,215は、第1頂板23を備えずに、第1外板22の上端(頂端)に第1内板24が直接連設されていてもよい。また、第2壁部25,112,216は、第2頂板27を備えずに、第2外板26の上端(頂端)に第2内板28が直接連設されていてもよい。
【0101】
係止受部40は、例えば概ねU字形状の切断線と折曲線によって画定された切起構造によって、第1内板24に設けられてもよく、第1外板22の頂端側に設けられていれば、その構成は必要に応じて変更が可能である。
【0102】
第1壁部21,111,215には、傾斜部50を設けなくてもよい。また、第2壁部25,112,216には、突部55を設けなくてもよい。
【0103】
第3壁部15,105,205と第1外板22、及び第3壁部15,105,205と第2外板26は、面取り壁を介して連設されていてもよい。また、第1内板24と第2内板28を隣接して配置可能であれば、第1外板22と第2外板26も面取り壁を介して連設されていてもよい。
【0104】
第1実施形態から第3実施形態のトレイ10は、フレキソグルアとは異なる周知の紙器打抜装置によって製造されてもよい。この場合、第1外板22の全高と第2外板26の全高、第1頂板23の幅と第2頂板27の幅、及び第1内板24の全高と第2内板28の全高は、いずれか1つが異なっていてもよいし、全てが異なっていてもよい。
【0105】
構造体は、トレイ10,100、及びコーナーパッド200に限られず、上蓋を備える包装箱であってもよい。例えば、第4実施形態のトレイ100において、前壁部113を構成する第3頂板115と第3内板116を設けずに、第3外板114を他の外板22,26と同じ高さまで延ばし、第3外板114に上蓋を連設すれば、蓋を有する包装箱を構成できる。
【0106】
構造体の素材は、紙製の段ボールシートに限らず、樹脂製の段ボールシートであってもよい。また、構造体の素材は、段ボールシートに限られず、単層の厚紙や樹脂シートであってもよい。
【符号の説明】
【0107】
10 トレイ(構造体)
15 底壁(第3壁部)
16 内フラップ
17 外フラップ
20 外周壁
21 側壁部(第1壁部)
22 第1外板
23 第1頂板
24 第1内板
25 端壁部(第2壁部)
26 第2外板
27 第2頂板
28 第2内板
29 外板本体
30 付代部
31 折曲部
31a 折曲線
32 折曲部
32a 折曲線
33 折曲部
33a 折曲線
34 折曲部
34a 折曲線
35 折曲部
35a 折曲線
36 折曲部
36a 折曲線
37 折曲部
37a 折曲線
40 係止受部
41 切断線
45 係止片
45a 係止端
46 折曲部
46a 折曲線
50 傾斜部
51 折曲部
51a 折曲線
52 折曲部
52a 折曲線
55 突部
56 第1切断線
57 第2切断線
60 隙間
61 係止部
62 第1切断線
63 第2切断線
64 第1折曲線
65 第2折曲線
66 係止孔
100 トレイ(構造体)
105 底壁(第3壁部)
110 外周壁
111 側壁部(第1壁部)
112 後壁部(第2壁部)
113 前壁部
114 第3外板
115 第3頂板
116 第3内板
117 折曲部
117a 折曲線
118 折曲部
118a 折曲線
119 折曲部
119a 折曲線
120 第1差込片
121 折曲線
122 第2差込片
122a 枠部
123 第5折曲線
124 開口部
125 係止部
126 切断線
127 係止孔
200 コーナーパッド(構造体)
205 端壁(第3壁部)
206 第1端板
207 第2端板
208 係止片
209 切断線
210 折曲線
211 係止溝
215 第1壁部
216 第2壁部
220 補強部
220a 傾斜板
221 第1切断線
222 第2切断線
223 第1折曲線
224 第2折曲線