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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004093
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20230110BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/01 129
B41J2/01 127
B41J2/01 307
B41J2/165 101
B41J2/165 207
B41J2/165 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105592
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA25
2C056EB38
2C056EC22
2C056EC23
2C056EC24
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA07
2C056HA44
2C056JA01
2C056JB04
2C056JC06
2C056JC21
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】インクの消費量を抑えつつ、インクヘッドに対して適切にクリーニング処理を実行する。
【解決手段】プリンタ10は、インクを吐出するノズル24が形成されたノズル面23を有する複数のインクヘッド22と、制御装置90と、を備えている。制御装置90は、ノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1に応じて、インクヘッド22毎にクリーニング間隔T1を決定する決定部93と、前回のクリーニング処理P1からのインクヘッド22における累積印刷時間T2を取得する取得部95と、累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1以上であるか否かを判定する判定部97と、判定部97によって累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1以上であると判定されたインクヘッド22に対して、クリーニング処理P1を実行するクリーニング実行部99と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有する複数のインクヘッドと、
前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着されるキャップと、前記インクヘッドに対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、前記キャップに接続された吸引ポンプとを有するキャップユニットと、
前記ノズル面を拭くワイパーと、前記ノズル面に前記ワイパーを接触させた状態で、前記ワイパーまたは前記インクヘッドを移動させるワイピング機構と、を有するワイパーユニットと、
制御装置と、
を備え、
前記キャップを前記インクヘッドに装着した状態で前記ノズルからインクを吐出させる吸引処理と、前記ワイパーで前記ノズル面を拭くワイピング処理と、の少なくとも一方を実行する処理をクリーニング処理としたとき、
前記制御装置は、
前記ノズル面に付着したインクの増粘度合いに応じて、前記インクヘッド毎にクリーニング間隔を決定する決定部と、
前回の前記クリーニング処理からの前記インクヘッドにおける累積印刷時間を取得する取得部と、
前記累積印刷時間が前記クリーニング間隔以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記累積印刷時間が前記クリーニング間隔以上であると判定された前記インクヘッドに対して、前記クリーニング処理を実行するクリーニング実行部と、
を備えた、プリンタ。
【請求項2】
前記インクヘッドから吐出されたインクに光を照射する光照射装置を備え、
前記決定部は、前記光照射装置から前記インクヘッドの前記ノズル面に照射される照射光量に応じて、前記インクヘッド毎に前記クリーニング間隔を決定する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記光照射装置は、前記インクヘッドと走査方向に並んで配置され、
前記決定部は、前記光照射装置から前記インクヘッドまでの前記走査方向の距離に応じて、前記インクヘッド毎に前記クリーニング間隔を決定する、請求項2に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記インクヘッドは、
第1インクヘッドと、
前記走査方向において前記第1インクヘッドよりも前記光照射装置側と反対側に配置された第2インクヘッドと、
を有し、
前記決定部は、前記第1インクヘッドにおける前記クリーニング間隔を第1間隔に決定し、前記第2インクヘッドにおける前記クリーニング間隔を前記第1間隔よりも大きい第2間隔に決定する、請求項3に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記光照射装置は、
複数の前記インクヘッドよりも前記走査方向の一方側に設けられた第1光照射装置と、
複数の前記インクヘッドよりも前記走査方向の他方側に設けられた第2光照射装置と、
を有し、
前記決定部は、前記第1光照射装置と前記インクヘッドの前記走査方向の第1距離と、前記第2光照射装置と前記インクヘッドの前記走査方向の距離とのうちの最小距離に応じて、前記インクヘッド毎に前記クリーニング間隔を決定する、請求項2から4までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記インクヘッドは、
第1インクヘッドと、
前記走査方向において前記第1インクヘッドよりも前記光照射装置側とは反対側に配置された第2インクヘッドと、
前記走査方向において前記第2インクヘッドよりも前記光照射装置側とは反対側に配置された第3インクヘッドと、
前記走査方向において前記第3インクヘッドよりも前記光照射装置側とは反対側に配置された第4インクヘッドと、
を有し、
前記ワイピングユニットは、前記第1インクヘッドの前記ノズル面と前記第2インクヘッドの前記ノズル面とを一度で前記ワイパーで拭き、かつ、前記第3インクヘッドの前記ノズル面と前記第4インクヘッドの前記ノズル面とを一度で前記ワイパーで拭くように構成され、
前記決定部は、前記第1インクヘッドおよび前記第2インクヘッドにおける前記クリーニング間隔を第1間隔に決定し、前記第3インクヘッドおよび前記第4インクヘッドにおける前記クリーニング間隔を前記第1間隔よりも大きい第2間隔に決定する、請求項2に記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記決定部は、前記インクヘッドから吐出されるインクの増粘のし易さに応じて、前記インクヘッド毎に前記クリーニング間隔を決定する、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項8】
前記インクヘッドは、
第1のインクを吐出する第1インクヘッドと、
前記第1のインクよりも増粘し難い第2のインクを吐出する第2インクヘッドと、
を有し、
前記決定部は、前記第1インクヘッドにおける前記クリーニング間隔を第1間隔に決定し、前記第2インクヘッドにおける前記クリーニング間隔を前記第1間隔よりも大きい第2間隔に決定する、請求項7に記載されたプリンタ。
【請求項9】
前記クリーニング実行部は、印刷開始前、または、印刷終了後において、前記判定部によって前記累積印刷時間が前記クリーニング間隔以上であると判定されたとき、前記クリーニング処理を実行する、請求項1から8までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インクを記録媒体に向けて吐出する複数のインクヘッドと、記録媒体に着弾したインクに紫外線を照射する紫外線照射装置と、インクヘッドおよび紫外線照射装置が設けられたキャリッジと、を備えたインクジェット記録装置が開示されている。
【0003】
インクヘッドは、ノズル面を有している。インクヘッドから吐出されたインクは、ノズル面に付着することがある。紫外線照射装置から発せられた紫外線は、記録媒体で反射してノズル面に照射されることがあり得る。ノズル面に付着されたインクに紫外線が照射されると、インクがノズル面上で硬化し易くなる。ノズル面に付着したインクが硬化すると、インクの吐出不良が発生するおそれがある。そこで、特許文献1に開示されたインクジェット記録装置では、ノズル面に付着したインクの硬化による吐出不良を抑制するため、インクヘッドをメンテナンスするためのメンテナンスユニットが設けられている。
【0004】
ところで、インクが吐出される記録媒体には、様々な種類がある。記録媒体の種類によって、紫外線を反射させ易いものや、紫外線を反射させ難いものがある。そのため、記録媒体の種類によって、ノズル面に付着されたインクの硬化のし易さが異なる。そこで、特許文献1に開示されたインクジェット記録装置では、印刷対象の記録媒体の種類に応じてメンテナンス間隔を設定し、メンテナンス間隔で設定された間隔に基づいて、定期的にすべてのインクヘッドに対してまとめてメンテナンスを実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-297230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたインクジェット記録装置では、上述のように、複数のインクヘッドが設けられている。インクヘッドのそれぞれに対して、紫外線照射装置から照射される紫外線の量は異なり、ノズル面に付着されたインクの硬化度合い(言い換えると、硬化のし易さ)が異なる。メンテナンスユニットは、複数のインクヘッドをまとめてメンテナンスするため、インクヘッドによっては、ノズル面に付着されたインクが硬化していないにも関わらず、メンテナンスされることがあった。インクヘッドのメンテナンスには、インクが消費されるため、インクの消費量は出来るだけ抑えることが好ましい。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクの消費量を抑えつつ、インクヘッドに対して適切にクリーニング処理を実行することが可能なプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタは、複数のインクヘッドと、キャップユニットと、ワイパーユニットと、制御装置とを備えている。前記インクヘッドは、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有している。前記キャップユニットは、前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着されるキャップと、前記インクヘッドに対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、前記キャップに接続された吸引ポンプとを有している。前記ワイパーユニットは、前記ノズル面を拭くワイパーと、前記ノズル面に前記ワイパーを接触させた状態で、前記ワイパーまたは前記インクヘッドを移動させるワイピング機構とを有している。前記キャップを前記インクヘッドに装着した状態で前記ノズルからインクを吐出させる吸引処理と、前記ワイパーで前記ノズル面を拭くワイピング処理と、の少なくとも一方を実行する処理をクリーニング処理とする。前記制御装置は、決定部と、取得部と、判定部と、クリーニング実行部とを備えている。前記決定部は、前記ノズル面に付着したインクの増粘度合いに応じて、前記インクヘッド毎にクリーニング間隔を決定する。前記取得部は、前回の前記クリーニング処理からの前記インクヘッドにおける累積印刷時間を取得する。前記判定部は、前記累積印刷時間が前記クリーニング間隔以上であるか否かを判定する。前記クリーニング実行部は、前記判定部によって前記累積印刷時間が前記クリーニング間隔以上であると判定された前記インクヘッドに対して、前記クリーニング処理を実行する。
【0009】
上記プリンタによれば、クリーニング処理は、例えばノズル面に付着したインクが増粘したインクヘッドに対して実行されることが好ましい。本発明では、インクヘッドにおけるクリーニング処理を実行するタイミングは、ノズル面に付着したインクの増粘度合いに応じて決定されたインクヘッド毎のクリーニング間隔で決定される。よって、例えばノズル面に付着したインクが増粘したタイミングで、インクヘッド毎にクリーニング処理を実行することができる。したがって、インクが増粘した適切なタイミングで、インクヘッド毎にクリーニング処理が実行されるため、インクヘッドに対する余分なクリーニング処理の実行を削減することができ、クリーニング処理によって消費されるインク消費量を削減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクの消費量を抑えつつ、インクヘッドに対して適切にクリーニング処理を実行することが可能なプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
図2】カバーが開いた状態のプリンタを示す正面図である。
図3】第1実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図4】キャリッジ、インクヘッドおよび光照射装置を示す底面図である。
図5】キャリッジおよびキャップユニットを示す正面図である。
図6】キャリッジおよびキャップユニットを示す正面図である。
図7】キャリッジおよびワイパーユニットを示す正面図である。
図8】クリーニング処理の一例を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態において、各インクヘッドにおける光照射装置からの距離、照射光量、インクの増粘度合い、および、クリーニング間隔を示す図である。
図10】クリーニング処理を実行するまでの制御を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態において、キャリッジ、インクヘッドおよび光照射装置を示す底面図である。
図12】第2実施形態において、各インクヘッドにおける、吐出されるインクの色、光照射装置からの最小距離、照射光量、インクの増粘度合い、および、クリーニング間隔を示す図である。
図13】第3実施形態において、キャリッジ、インクヘッド、光照射装置、および、ワイパーユニットのワイパーを示す正面図である。
図14】第3実施形態において、各インクヘッドにおける光照射装置からの距離、照射光量、インクの増粘度合い、および、クリーニング間隔を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
<第1実施形態>
まず第1実施形態に係るプリンタ10について説明する。図1図2は、それぞれ本実施形態に係るプリンタ10の斜視図、正面図である。図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。以下において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を示している。また、符号X、Yは、それぞれ搬送方向、走査方向を示している。例えば走査方向Yは左右方向である。搬送方向Xは、平面視において走査方向Yと交差しており、ここでは直交している。搬送方向Xは、例えば前後方向である。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0014】
図2に示すように、プリンタ10は、被印刷物5にインクを吐出して、被印刷物5に対して印刷を行うものである。被印刷物5は、例えば記録紙である。ただし、被印刷物5は、記録紙に限定されない。例えば被印刷物5には、PCV、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、金属板、ガラス板、木材板などの比較的に厚みを有するものが含まれる。また、被印刷物5は、例えばスマートフォンケースなどの立体物であってもよい。
【0015】
プリンタ10は、インクジェット式のプリンタである。本実施形態では、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであり、後述の支持台40が搬送方向Xに移動することで、被印刷物5も搬送方向Xに移動する。ただし、プリンタ10は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタであってもよく、ロール状の被印刷物5のみを搬送方向Xに移動させるようなものであってもよい。
【0016】
図1に示すように、プリンタ10は、ケース11と、カバー12とを備えている。ケース11は、直方体形状であり、内部空間を有している。当該内部空間において、被印刷物5に対して印刷が行われる。図2に示すように、ケース11の前部には開口15が形成されている。
【0017】
カバー12は、開口15を開閉自在にケース11に支持されている。カバー12は、後端を軸に回転可能に構成されている。図1に示すように、カバー12の前部および上部には、窓16が設けられている。窓16は、透明または半透明の部材、例えばアクリル板によって形成されている。ユーザは、窓16を通じてケース11の内部空間を視認することができる。
【0018】
次に、プリンタ10の内部構成について説明する。図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド22と、光照射装置30と、支持台40を備えている。
【0019】
ガイドレール18は、ケース11の内部空間においてケース11に固定されている。ガイドレール18は、走査方向Yに延びてる。キャリッジ20は、ガイドレール18に摺動自在に係合している。キャリッジ20は、ガイドレール18に沿って走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0020】
インクヘッド22は、支持台40に支持された被印刷物5に対してインクを吐出する。インクヘッド22は、キャリッジ20に設けられている。インクヘッド22は、キャリッジ20と共に走査方向Yに移動可能に構成されている。なお、インクヘッド22の数は特に限定されない。本実施形態では、インクヘッド22の数は4つである。4つのインクヘッド22は、走査方向Yに並んで配置されている。図4は、キャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置30を示す底面図である。ここでは、図4に示すように、4つのインクヘッド22について、左から順に第1インクヘッド22A、第2インクヘッド22B、第3インクヘッド22C、第4インクヘッド22Dとも称することとする。
【0021】
インクヘッド22は、第1インクヘッド22Aと、第2インクヘッド22Bと、第3インクヘッド22Cと、第4インクヘッド22Dとを有している。第2インクヘッド22Bは、走査方向Yにおいて第1インクヘッド22Aよりも光照射装置30側とは反対側(ここでは右方)に配置されている。第3インクヘッド22Cは、走査方向Yにおいて第2インクヘッド22Bよりも光照射装置30側とは反対側に配置されている。第4インクヘッド22Dは、走査方向Yにおいて第3インクヘッド22Cよりも光照射装置30側とは反対側に配置されている。以下の説明では、第1インクヘッド22A~第4インクヘッド22Dの全てのインクヘッドに対する説明の場合には、インクヘッド22という文言を適宜使用する。
【0022】
本実施形態では、図4に示すように、第1インクヘッド22A~第4インクヘッド22Dは、それぞれノズル面23を有している。ノズル面23は、インクヘッド22の底面を構成している。ノズル面23は、キャリッジ20から下方に露出している。1つのノズル面23には、複数のノズル24が形成されている。本実施形態では、1つのノズル面23における複数のノズル24は、搬送方向Xに並んで配置されている。ここでは、搬送方向Xに並んだ複数のノズル24の列のことをノズル列25という。本実施形態では、1つのノズル面23におけるノズル列25の数は2つである。しかしながら、1つのノズル面23におけるノズル列25の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0023】
本実施形態では、インクヘッド22のノズル列25毎に、ノズル24から異なる色のインクが吐出される。ノズル24から吐出されるインクは、例えばプロセスカラーインクまたは特色インクである。プロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。特色インクには、例えばホワイトインク、クリアインク、グロスインク、プライマーインク、蛍光インク、メタリックインク、オレンジインク、レッドインク、バイオレットインク、ブルーインク、グリーンインクなどが含まれる。
【0024】
インクヘッド22のノズル24から吐出されたインクは、光が照射されると乾燥が促進される光硬化型インクである。光とは、例えば紫外線であり、ここでは、インクは、紫外線が照射されると硬化が促進される紫外線硬化型インクである。
【0025】
本実施形態では、インクヘッド22から吐出されるインクは、図2に示すインクカートリッジ26に収容されている。インクカートリッジ26は、例えばケース11の内部空間に配置されている。インクカートリッジ26は、例えば1つのインクヘッド22につき1つ接続されている。インクカートリッジ26は、例えば図示しないチューブを介してインクヘッド22に接続され、インクカートリッジ26に収容されたインクは、チューブを通ってインクヘッド22に供給される。
【0026】
光照射装置30は、インクヘッド22のノズル24から吐出されたインクに光を照射する装置である。ここでは、光照射装置30は、支持台40に支持された被印刷物5に吐出されたインクに光を照射可能に構成されている。本実施形態では、ノズル24から吐出されたインクは、紫外線硬化型インクであるため、光照射装置30は、ノズル24から吐出されたインクに紫外線を照射する紫外線照射装置である。
【0027】
図4に示すように、光照射装置30は、キャリッジ20に設けられており、キャリッジ20およびインクヘッド22と共に走査方向Yに移動可能に構成されている。本実施形態では、光照射装置30は、キャリッジ20における走査方向Yの一方側(ここでは左側)であって、インクヘッド22における走査方向Yの一方側に設けられている。しかしながら、光照射装置30は、キャリッジ20における走査方向Yの他方側(ここでは右側)であって、インクヘッド22における走査方向Yの他方側に設けられてもよい。
【0028】
光照射装置30の構成は特に限定されない。本実施形態では、光照射装置30は、照射本体31(図4参照)と、光源32(図3参照)とを有している。図4に示すように、照射本体31は、例えば直方体形状であり、中空のものである。照射本体31の底面には、照射口33が形成されている。照射口33の形状は、四角形状であるが、特に限定されない。光源32は、光(ここでは紫外線)を発するものであり、照射本体31の内部に配置されている。光源32から発せられた光は、照射口33を通り、被印刷物5に吐出されたインクに照射される。
【0029】
図2に示すように、支持台40は、被印刷物5を支持する。ここでは、支持台40の上面に被印刷物5が載置されている。支持台40上で被印刷物5への印刷が行われ、支持台40に支持された被印刷物5にインクが吐出され、紫外線が照射される。支持台40の上面は、走査方向Yおよび搬送方向Xに広がっている。
【0030】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10は、支持台40に対してインクヘッド22を相対的に走査方向Yに移動させる第1移動機構51と、インクヘッド22に対して支持台40に支持された被印刷物5を相対的に搬送方向Xに移動させる第2移動機構52とを備えている。また、詳しい構成は省略するが、プリンタ10は、支持台40を昇降させる昇降機構53を備えている。
【0031】
第1移動機構51は、キャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置30をガイドレール18に沿って走査方向Yに移動させる。なお、第1移動機構51の構成は特に限定されない。第1移動機構51は、図示は省略するが、例えば左右のプーリと、ベルトと、スキャンモータとを有している。左のプーリはガイドレール18の左端部の周囲に設けられ、右のプーリはガイドレール18の右端部の周囲に設けられている。ベルトは、例えば無端状のベルトであり、左右のプーリに巻き掛けられている。ベルトには、キャリッジ20が取り付け固定されている。スキャンモータは、左右のプーリの一方に接続されている。ここでは、スキャンモータが駆動することでプーリが回転し、左右のプーリの間においてベルトが走行する。このことで、キャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置30は、ガイドレール18に沿って走査方向Yに移動する。
【0032】
第2移動機構52は、支持台40を搬送方向Xに移動させることで、支持台40に支持された被印刷物5を搬送方向Xに移動させる。なお、第2移動機構52の構成は特に限定されない。ここでは、第2移動機構52は、図示は省略するが、支持台40を支持する支持台キャリッジと、支持台キャリッジをスライド可能に支持し、搬送方向Xに延びた左右一対のスライドレールとを備えている。第2移動機構52は、図示は省略するが、更にスライドレールの前方および後方に設けられた前後一対のプーリと、前後一対のプーリに巻き掛けられたベルトとを備えている。このベルトには、支持台キャリッジが固定されている。前後一対のプーリのうちの何れかには、フィードモータが接続されている。ここでは、フィードモータが駆動してベルトが走行することで、支持台キャリッジと共に支持台40が搬送方向Xに移動する。
【0033】
図5および図6は、キャリッジ20およびキャップユニット60を示す正面図である。図7は、キャリッジ20およびワイパーユニット70を示す正面図である。プリンタ10は、キャップユニット60(図5参照)と、ワイパーユニット70(図7参照)とを備えている。キャップユニット60は、例えば支持台40よりも左方または右方に配置されている。図5に示すように、キャップユニット60は、キャップ61と、キャッピング機構62と、吸引ポンプ63とを備えている。キャップ61は、インクヘッド22の複数のノズル24(図4参照)を覆うように、インクヘッド22に装着可能に構成されている。1つのキャップ61が装着されるインクヘッド22の数は1つである。そのため、キャップ61の数は、インクヘッド22の数と同じ4つである。ただし、1つのキャップ61が装着されるインクヘッド22の数は、複数(例えば4つ全て)であってもよい。
【0034】
キャッピング機構62は、キャップ61を昇降させて、インクヘッド22に対してキャップ61を装着させたり、離間させたりする機構である。例えばキャッピング機構62は、図6に示すように、キャップ61を上昇させることでインクヘッド22に装着させ、図5に示すように、キャップ61を下降させることでインクヘッド22から離間させるように構成されている。
【0035】
キャッピング機構62の構成は特に限定されない。ここでは、キャッピング機構62は、支持部材65と、昇降モータ67とを有している。支持部材65は、例えば板状の部材であり、4つのキャップ61を支持している。昇降モータ67は、支持部材65に接続されている。ここでは、昇降モータ67が駆動することで、支持部材65が昇降する。支持部材65の昇降によって、4つのキャップ61は、同時に昇降する。
【0036】
図5に示すように、吸引ポンプ63は、キャップ61に接続されている。ここでは、1つのキャップ61に1つの吸引ポンプ63が接続されている。そのため、吸引ポンプ63の数は、キャップ61の数と同じ4つである。吸引ポンプ63は、接続されたキャップ61内のインクや、キャップ61に装着されたインクヘッド22内のインクを吸引する。吸引ポンプ63は、チューブ64の途中部分に設けられている。チューブ64の一端はキャップ61に接続され、チューブ64の他端は廃液タンク(図示せず)に接続されている。廃液タンクは、例えば1つであり、4つのチューブ64を介して、4つのキャップ61に接続されている。例えばキャップ61がインクヘッド22に装着された状態で吸引ポンプ63が駆動すると、ノズル24(図4参照)からインクが吸い出され、キャップ61に排出される。吸引ポンプ63に吸引されたキャップ61内のインクなどは、チューブ64を介して廃液タンクに排出される。
【0037】
本実施形態では、4つの吸引ポンプ63は、独立で駆動させることが可能である。例えば4つの吸引ポンプ63のうち、1つの吸引ポンプ63を駆動させて、残りの3つの吸引ポンプ63を駆動させないようにすることが可能である。
【0038】
図7に示すワイパーユニット70は、図5に示すキャップユニット60の近傍に配置されており、インクヘッド22よりも下方に設けられている。ワイパーユニット70は、インクヘッド22のノズル面23をワイピングする。ワイパーユニット70は、ワイパー71と、ワイピング機構72と、洗浄液が貯留される洗浄液槽73とを備えている。
【0039】
ワイパー71は、ノズル面23を拭く部材である。ワイパー71は、前後および上下に延びる平板状の部材である。ワイパー71は、例えばゴムで形成されている。本実施形態では、1つのワイパー71で全てのインクヘッド22のノズル面23を順に拭くことが可能に構成されている。ただし、例えばワイパー71が複数(ここでは4つ)設けられており、1つのワイパー71が1つのインクヘッド22のノズル面23を拭くように構成されてもよい。
【0040】
ワイピング機構72は、ワイパー71でノズル面23をワイピングさせるための機構である。ワイピング機構72は、ワイパー71とインクヘッド22とを相対的に移動させることでワイピングを行う。本実施形態では、ワイピング機構72は、ノズル面23にワイパー71を接触させた状態でワイパー71を移動させるように構成されている。ただし、ワイピング機構72は、ノズル面23にワイパー71を接触させた状態で、インクヘッド22を移動させてワイピングを行ってもよいし、ワイパー71とインクヘッド22との両方を移動させてワイピングを行ってもよい。
【0041】
ワイピング機構72の構成は特に限定されない。ここでは、ワイピング機構72は、回転軸75と、回転モータ76とを有する。回転軸75は、前後に延びており、ワイパー71の一端に接続されている。回転軸75には回転モータ76が接続されている。回転モータ76が駆動することで、ワイパー71は回転軸75を中心に回転可能である。ワイパー71が、回転軸75から遠い方の端部を上にするような回転位置に配置されるとき、当該端部は、ノズル面23よりもわずかに高い位置に配置される。このような状態で、インクヘッド22を走査方向Yに移動させることで、ワイパー71によってノズル面23が拭かれる。一方、ワイパー71が、回転軸75から遠い方の端部を下にするような回転位置に配置されるとき、回転軸75の下方に設置された洗浄液槽73内の洗浄液に浸漬される。
【0042】
図2に示すように、プリンタ10は、制御装置90を備えている。制御装置90は、印刷に関する処理や、後述するクリーニング処理P1(図8参照)を実行する。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置90は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置90は、ケース11の内部に設けられている。ただし、制御装置90は、ケース11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0043】
本実施形態では、図3に示すように、制御装置90は、インクヘッド22、光照射装置30(詳しくは光源32)、第1移動機構51、第2移動機構52、昇降機構53、キャップユニット60(詳しくは、キャッピング機構62および吸引ポンプ63)、および、ワイパーユニット70(詳しくはワイピング機構72の回転モータ76)に通信可能に接続されている。制御装置90は、インクヘッド22、光照射装置30、第1移動機構51、第2移動機構52、昇降機構53、キャップユニット60およびワイパーユニット70を制御する。
【0044】
ところで、本実施形態では、印刷開始前(例えば印刷開始直前)、または、印刷終了後(例えば印刷終了直後)において、各インクヘッド22に対してクリーニング処理P1が行われる。図8は、クリーニング処理P1の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、クリーニング処理P1には、吸引処理P11とワイピング処理P13とのうちの少なくとも一方が含まれる。ここでは、クリーニング処理P1には、吸引処理P11およびワイピング処理P13以外に、空吸引処理P12とフラッシング処理P14とが含まれる。本実施形態におけるクリーニング処理P1では、吸引処理P11、空吸引処理P12、ワイピング処理P13、フラッシング処理P14が順に実行される。なお、クリーニング処理P1において、ワイピング処理P13の前には、ワイパー71に洗浄液を付着させる付着処理が実行されてもよい。
【0045】
吸引処理P11とは、図6に示すように、キャップ61をインクヘッド22に装着した状態でノズル24(図4参照)からインクを吸引する処理のことである。吸引処理P11では、まずキャップ61でノズル24を覆うように、インクヘッド22にキャップ61を装着させる。その後、吸引ポンプ63を駆動させる。このことで、インクヘッド22内のインクがノズル24から吐出(言い換えると、吸引)される。ノズル24から吐出されたインクは、キャップ61内に排出される。キャップ61内のインクは、吸引ポンプ63が駆動することで、チューブ64を通って廃液タンクに排出される。
【0046】
図8に示す空吸引処理P12とは、インクヘッド22からキャップ61を離間させた状態で吸引ポンプ63を駆動させる処理である。空吸引処理P12では、吸引処理P11の後、図5に示すように、インクヘッド22に装着されたキャップ61をインクヘッド22から離間させるように、キャッピング機構62を制御する。このことで、キャップ61は下降し、インクヘッド22の下方に配置される。このような状態で、吸引ポンプ63を駆動させる。このことで、インクヘッド22内のインクは吸引されず、キャップ61内のインクが吸引されて、チューブ64を通って廃液タンクに排出される。
【0047】
図8に示すワイピング処理P13とは、ワイパー71でノズル面23を拭く処理のことである。ワイピング処理P13では、空吸引処理P12の後、図7に示すように、まず回転軸75から遠い方のワイパー71の端部を上にするようにワイピング機構72を制御する。その後、図1に示す第1移動機構51によってインクヘッド22を走査方向Yに移動させ、ワイパー71がノズル面23に接触した状態で相対的に移動することで、ノズル面23がワイパー71で拭かれる。
【0048】
図8に示すフラッシング処理P14は、インクヘッド22内のインクをキャップ61に吐出させる処理である。ここでは、フラッシング処理P14では、吸引ポンプ63を駆動させずに、インクヘッド22を制御することで、ノズル24からインクを吐出させる。フラッシング処理P14では、ワイピング処理P13の後、インクヘッド22の下方にキャップ61を移動させ、ノズル面23とキャップ61とを離間させた状態にする。そして、吸引ポンプ63を駆動させて空吸引を行いながら、インクヘッド22を制御して、ノズル24からキャップ61に向かってインクを吐出させる。
【0049】
クリーニング処理P1は、ノズル24におけるインクの吐出不良を抑制して、印刷の品質を確保するために定期的に行われる処理である。例えばノズル24からインクが吐出されることで、インクヘッド22のノズル面23にインクが付着することがあり得る。ノズル面23に付着したインクは、硬化することで増粘が高いインクとなり得る。この増粘が高くなると、ノズル24の目詰まりが起こり得ることで、インクの吐出不良になり得る。このインクの吐出不良によって印刷の品質に影響が及ぶおそれがあるため、増粘したインクを除去するためにクリーニング処理P1が定期的に実行される。
【0050】
しかしながら、クリーニング処理P1は、時間を要するものであり、吸引処理P11やフラッシング処理P14を実行することでインクが消費される処理である。そのため、増粘したインクをノズル面23から除去しつつ、クリーニング処理P1の回数を少なくすることが好ましい。
【0051】
本実施形態では、複数のインクヘッド22において、ノズル面23に付着したインクが硬化し易い、すなわち増粘し易いインクヘッド22と、ノズル面23に付着したインクが硬化し難い、すなわち増粘し難いインクヘッド22とが存在する。従来では、インクが増粘し易いインクヘッド22から吐出されたインクがノズル面23で増粘する(言い換えると硬化する)タイミングで、全ての4つのインクヘッド22に対して、一度にクリーニング処理P1を実行していた。そのため、増粘し難いインクヘッド22に対して、インクが増粘していないタイミングであってもクリーニング処理P1が実行されることがあった。その結果、クリーニング処理P1によるインクの消費量が増加することがあった。
【0052】
そこで、本実施形態では、インクヘッド22毎にクリーニング処理P1のタイミングを調整し、不必要なクリーニング処理P1をできるだけ少なくすることにする。
【0053】
本実施形態に係るクリーニング処理P1を実行するために、図3に示すように、制御装置90は、記憶部91と、決定部93と、取得部95と、判定部97と、クリーニング実行部99とを備えている。制御装置90の各部91~99は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置90の各部91~99は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0054】
次に、クリーニング処理P1を実行するまでの制御について説明する。図9は、本実施形態において、各インクヘッド22における光照射装置30からの距離、照射光量A2、インクの増粘度合いA1、および、クリーニング間隔T1を示す図である。なお、図9などにおいて、照射光量A2では、「×」の数が多い程、照射光量A2が多いことが示され、「×」の数が少ない程、照射光量A2が少ないことが示されている。また、インクの増粘度合いA1では、「×」の数が多い程、インクの増粘度合いA1が高いことが示され、「×」の数が少ない程、インクの増粘度合いA1が低いことが示されている。
【0055】
まず図3の決定部93は、図9に示すように、第1インクヘッド22A~第4インクヘッド22Dのそれぞれに対してクリーニング間隔T1を決定する。ここで、クリーニング間隔T1とは、各インクヘッド22においてクリーニング処理P1を実行するにあたって、前回のクリーニング処理P1を実行したときから開けることが可能な間隔のことをいう。
【0056】
本実施形態では、クリーニング間隔T1は、各インクヘッド22のノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1に応じて決定される。例えばノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1が高い、すなわちインクが増粘し易いインクヘッド22に対して、クリーニング間隔T1は、短い時間に決定される。一方、ノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1が低い、すなわちインクが増粘し難いインクヘッド22に対して、クリーニング間隔T1は、長い時間に決定される。
【0057】
本実施形態では、図9に示すように、ノズル面23に付着されたインクの増粘度合いA1は、光照射装置30からインクヘッド22のノズル面23に照射される照射光量A2に応じて推定される。この照射光量A2とは、例えば単位時間当たりの照射光量A2である。ここでは、光照射装置30から発せられた光は、支持台40や、支持台40に支持された被印刷物5に反射し、反射光としてノズル面23に照射される。照射光量A2は、反射光による光量ともいえる。図3の決定部93は、光照射装置30からインクヘッド22のノズル面23に照射される照射光量A2に応じて、クリーニング間隔T1を決定する。ここでは、照射光量A2が多いインクヘッド22に対して、クリーニング間隔T1は短い時間に決定される。一方、照射光量A2が少ないインクヘッド22に対して、クリーニング間隔T1は長い時間に決定される。
【0058】
本実施形態では、各インクヘッド22のノズル面23に照射される照射光量A2は、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離に応じて決定される。ここで、図4に示すように、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離とは、例えば光照射装置30の走査方向Yの中心C11から、インクヘッド22の走査方向Yの中心までの走査方向Yの距離のことをいう。
【0059】
本実施形態では、光照射装置30から第1インクヘッド22Aまでの距離D11は、光照射装置30の中心C11から第1インクヘッド22Aの走査方向Yの中心C21までの走査方向Yの距離である。同様に、光照射装置30から第2インクヘッド22Bまでの距離D12は、光照射装置30の中心C11から第2インクヘッド22Bの走査方向Yの中心C22までの走査方向Yの距離である。光照射装置30から第3インクヘッド22Cまでの距離D13は、光照射装置30の中心C11から第3インクヘッド22Cの走査方向Yの中心C23までの走査方向Yの距離である。また、光照射装置30から第4インクヘッド22Dまでの距離D14は、光照射装置30の中心C11から第4インクヘッド22Dの走査方向Yの中心C24までの走査方向Yの距離である。
【0060】
ここでは、図9に示すように、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離が長い程、照射光量A2は少なくなり、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離が短い程、照射光量A2は多くなる。本実施形態では、第1インクヘッド22A、第2インクヘッド22B、第3インクヘッド22C、および、第4インクヘッド22Dの順で、光照射装置30からの走査方向Yの距離D11、D12、D13、D14が長くなる。そのため、第1インクヘッド22A、第2インクヘッド22B、第3インクヘッド22C、第4インクヘッド22Dの順で、照射光量A2が少なくなり、増粘度合いA1が低くなる。
【0061】
図3の決定部93は、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離に応じて、クリーニング間隔T1を決定する。決定部93は、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離が短い程、クリーニング間隔T1を短い時間に設定し、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離が長い程、クリーニング間隔T1を長い時間に設定する。ここでは、決定部93は、第1インクヘッド22Aにおけるクリーニング間隔T1を第1間隔T11に決定し、第2インクヘッド22Bにおけるクリーニング間隔T1を第2間隔T12に決定する。また、決定部93は、第3インクヘッド22Cにおけるクリーニング間隔T1を第3間隔T13に決定し、第4インクヘッド22Dにおけるクリーニング間隔T1を第4間隔T14に決定する。ここで、第1間隔T11は、第2間隔T12~第4間隔T14よりも小さい。第2間隔T12は、第1間隔T11よりも大きく、第3間隔T13および第4間隔T14よりも小さい。
【0062】
なお、本実施形態では、第3間隔T13と第4間隔T14は、同じ時間である。これは、照射光量A2がある程度少ない場合(例えば所定の基準光量よりも少ない場合)では、クリーニング間隔T1に差をつけなくても、印刷の品質に影響を与え難いと考えられるからである。もちろん、ここでは第3インクヘッド22Cは、第4インクヘッド22Dよりも光照射装置30からの走査方向Yの距離が短いため、第3間隔T13は、第4間隔T14よりも小さい時間であってもよい。
【0063】
なお、第1間隔T11~第4間隔T14の具体的な値は、特に限定されるものではない。第1間隔T11は、例えば15分である。第2間隔T12は、例えば30分である。第3間隔T13および第4間隔T14は、例えば60分である。本実施形態では、決定部93によって決定された第1間隔T11~第4間隔T14は、図3の記憶部91に記憶される。
【0064】
このように、図3の決定部93によって各インクヘッド22に対するクリーニング間隔T1が決定された後、図10に示すフローチャートに示す手順に沿って、クリーニング処理P1を実行するまでの制御が行われる。本実施形態におけるクリーニング処理P1は、印刷開始前、または、印刷終了後に実行される処理である。そのため、図10における各ステップは、印刷開始前、または、印刷終了後に実行される。
【0065】
ここでは、まず図10のステップS1では、図3の取得部95は、インクヘッド22毎に累積印刷時間T2を取得する。ここで、累積印刷時間T2とは、前回のクリーニング処理P1からのインクヘッド22毎における印刷時間の合計のことである。印刷時間とは、印刷用の画像データに基づいて被印刷物5に印刷するために要した時間のことである。累積印刷時間T2は、被印刷物5に印刷したときに要した時間をカウントすることで得られる。累積印刷時間T2には、クリーニング処理P1に要した時間や、印刷の間の待機時間は含まれない。
【0066】
累積印刷時間T2は、インクヘッド22に対してクリーニング処理P1が実行されたときにリセットされるものである。ここでは、インクヘッド22毎にクリーニング処理P1が実行されるタイミングが異なることがあり得る。そのため、累積印刷時間T2は、インクヘッド22毎に設定されるものである。取得部95によって取得されたインクヘッド22毎の累積印刷時間T2は、図3の記憶部91に記憶される。
【0067】
インクヘッド22毎の累積印刷時間T2を取得した後、図10のステップS2では、図3の判定部97は、インクヘッド22毎にクリーニング処理P1を実行するか否かを判定する。判定部97は、インクヘッド22毎に、累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1以上であるか否かを判定する。
【0068】
判定部97は、例えば第1インクヘッド22Aにおける累積印刷時間T2が、第1インクヘッド22Aにおけるクリーニング間隔T1である第1間隔T11(図9参照)であるか否かを判定する。判定部97によって第1インクヘッド22Aにおける累積印刷時間T2が第1間隔T11未満であると判定された場合、第1インクヘッド22Aのノズル面23に付着されたインクが増粘していなく、インクが硬化していない状態である。この場合、第1インクヘッド22Aに対してクリーニング処理P1は実行しなくてもよいため、図10のステップS2の判定をNOとして、図10のフローチャートを終了する。
【0069】
一方、図10のステップS2において、判定部97によって第1インクヘッド22Aにおける累積印刷時間T2が第1間隔T11以上であると判定された場合、第1インクヘッド22Aのノズル面23に付着されたインクが増粘しており、インクが硬化する状態である。そのため、増粘したインクを除去するため、クリーニング処理P1を実行した方がよい。この場合、図10のステップS2の判定をYESとして、次にステップS3に進む。
【0070】
ステップS3では、図3のクリーニング実行部99は、第1インクヘッド22Aに対してクリーニング処理P1を実行する。ここでは、クリーニング実行部99は、第1インクヘッド22Aに対して、図8に示す吸引処理P11、空吸引処理P12、ワイピング処理P13、フラッシング処理P14を順に実行することで、クリーニング処理P1を実行する。
【0071】
なお、上記では、第1インクヘッド22Aに対して説明しているが、第2インクヘッド22B、第3インクヘッド22Cおよび第4インクヘッド22Dに対して、印刷開始前、または、印刷終了後において、図10の各ステップが行われる。すなわち、第2インクヘッド22B、第3インクヘッド22Cおよび第4インクヘッド22Dに対して、判定部97による判定(ステップS2)が行われ、判定部97によって累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1(例えば第2間隔T12~第4間隔T14)以上と判定されたインクヘッド22に対して、ステップS3においてクリーニング処理P1が実行される。なお、クリーニング処理P1が実行された後、クリーニング処理P1が実行されたインクヘッド22に対する累積印刷時間T2は、0にリセットされる。
【0072】
以上、本実施形態では、図2に示すように、プリンタ10は、インクヘッド22と、キャップユニット60(図5参照)と、ワイパーユニット70(図7参照)と、制御装置90とを備えている。図4に示すように、インクヘッド22は、インクを吐出するノズル24が形成されたノズル面23を有している。図5および図6に示すように、キャップユニット60は、ノズル24を覆うようにインクヘッド22に装着されるキャップ61と、インクヘッド22に対してキャップ61を装着させたり、離間させたりするキャッピング機構62と、キャップ61に接続された吸引ポンプ63とを有している。図7に示すように、ワイパーユニット70は、ノズル面23を拭くワイパー71と、ノズル面23にワイパー71を接触させた状態で、ワイパー71またはインクヘッド22を移動させるワイピング機構72と、を有している。ここで、図8に示すように、キャップ61をインクヘッド22に装着した状態でノズル24からインクを吐出させる吸引処理P11と、ワイパー71でノズル面23を拭くワイピング処理P13と、の少なくとも一方を実行する処理をクリーニング処理P1とする。図3に示すように、制御装置90は、決定部93と、取得部95と、判定部97と、クリーニング実行部99とを備えている。決定部93は、ノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1(図9参照)に応じて、インクヘッド22毎にクリーニング間隔T1(図9参照)を決定する。取得部95は、前回のクリーニング処理P1からのインクヘッド22における累積印刷時間T2を取得する。判定部97は、累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1以上であるか否かを判定する。クリーニング実行部99は、判定部97によって累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1以上であると判定されたインクヘッド22に対して、クリーニング処理P1を実行する。
【0073】
図8に示すクリーニング処理P1は、例えばノズル面23に付着したインクが増粘したインクヘッド22に対して実行されることが好ましい。本実施形態では、インクヘッド22におけるクリーニング処理P1を実行するタイミングは、ノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1に応じて決定されたインクヘッド22毎のクリーニング間隔T1で決定される。よって、例えばノズル面23に付着したインクが増粘したタイミングで、インクヘッド22毎にクリーニング処理P1を実行することができる。したがって、インクが増粘した適切なタイミングで、インクヘッド22毎にクリーニング処理P1が実行されるため、インクヘッド22に対する余分なクリーニング処理P1の実行を削減することができ、クリーニング処理P1によって消費されるインク消費量を削減することができる。
【0074】
本実施形態では、図4に示すように、プリンタ10は、インクヘッド22から吐出されたインクに光を照射する光照射装置30を備えている。図3の決定部93は、光照射装置30からインクヘッド22のノズル面23に照射される照射光量A2(図9参照)に応じて、クリーニング間隔T1を決定する。本実施形態では、ノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1は、光照射装置30からの照射光量A2に基づいて推定されることができる。図9に示すように、例えば単位時間当たりの照射光量A2が多い場合には、インクが増粘し易く、単位時間当たりの照射光量A2が少ない場合には、インクが増粘し難い。よって、ノズル面23に照射される照射光量A2に応じて、クリーニング間隔T1を決定することで、インクが増粘した適切なタイミングでクリーニング処理P1を実行することができる。
【0075】
本実施形態では、図4に示すように、光照射装置30は、インクヘッド22と走査方向Yに並んで配置されている。図3の決定部93は、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離(例えば第1インクヘッド22Aの場合、距離D11(図9参照))に応じて、クリーニング間隔T1を決定する。ここでは、図9に示すように、ノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1は、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離に基づいて推定されることができる。例えば光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離が短い場合(例えば第1インクヘッド22Aの距離D11の場合)には、インクが増粘し易く、当該距離が長い場合(例えば第4インクヘッド22Dの距離D14の場合)には、インクが増粘し難い。よって、光照射装置30からインクヘッド22までの走査方向Yの距離に応じてクリーニング間隔T1を決定することで、インクが増粘した適切なタイミングでクリーニング処理P1を実行することができる。
【0076】
本実施形態では、図4に示すように、インクヘッド22は、第1インクヘッド22Aと、走査方向Yにおいて第1インクヘッド22Aよりも光照射装置30側と反対側に配置された第2インクヘッド22Bと、を有している。図3の決定部93は、図9に示すように、第1インクヘッド22Aにおけるクリーニング間隔T1を第1間隔T11に決定し、第2インクヘッド22Bにおけるクリーニング間隔T1を第1間隔T11よりも大きい第2間隔T12に決定する。このことによって、光照射装置30から比較的に近くに配置され、照射光量A2が多い第1インクヘッド22Aに対して、クリーニング間隔T1を短い時間(第1間隔T11)に設定することができる。一方、第1インクヘッド22Aに比べて、光照射装置30から遠くに配置され、照射光量A2が少ない第2インクヘッド22Bに対して、クリーニング間隔T1を長い時間(第2間隔T12)に設定することができる。よって、インクヘッド22毎に、異なるクリーニング間隔T1を設定することができる。
【0077】
本実施形態では、図3のクリーニング実行部99は、印刷開始前、または、印刷終了後において、判定部97によって累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1以上であると判定されたとき、クリーニング処理P1を実行する。このことによって、累積印刷時間T2がクリーニング間隔T1以上になったタイミングでクリーニング処理P1が実行されるに限らず、印刷開始前のタイミング、または、印刷終了後のタイミングで、インクの増粘の程度に応じてクリーニング処理P1を実行することができる。よって、クリーニング処理P1が実行されて、ノズル面23に付着されたインクの増粘が抑制された状態で印刷が行われ易いため、印刷の品質を確保し易い。
【0078】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るプリンタ110について説明する。図11は、第2実施形態に係るキャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置130を示す底面図である。図12は、第2実施形態において、各インクヘッド22における、吐出されるインクの色、光照射装置130からの最小距離、照射光量A2、インクの増粘度合いA1、および、クリーニング間隔T1を示す図である。
【0079】
本実施形態では、図11に示すように、プリンタ110は、光照射装置130を備えている。第1実施形態では、光照射装置30の数は1つ(図4参照)であったが、本実施形態に係る光照射装置130の数は2つである。ここで、2つの光照射装置130のうち、一方の光照射装置130を第1光照射装置130Aといい、他方の光照射装置130を第2光照射装置130Bという。
【0080】
本実施形態では、2つの光照射装置130は、第1インクヘッド22A~第4インクヘッド22Dを走査方向Yから挟むように配置されている。第1光照射装置130Aは、複数のインクヘッド22よりも走査方向Yの一方側(ここでは左側)に設けられている。第1光照射装置130Aは、キャリッジ20の左側に設けられている。第2光照射装置130Bは、複数のインクヘッド22よりも走査方向Yの他方側(ここでは右側)に設けられている。第2光照射装置130Bは、キャリッジ20の右側に設けられている。本実施形態では、左から右に向かって、第1光照射装置130A、第1インクヘッド22A、第2インクヘッド22B、第3インクヘッド22C、第4インクヘッド22D、第2光照射装置130Bの順に走査方向Yに並んで配置されている。
【0081】
本実施形態では、第1インクヘッド22Aおよび第4インクヘッド22Dから、特色インクが吐出される。第2インクヘッド22Bおよび第3インクヘッド22Cから、プロセスカラーインクが吐出される。詳しくは、図11に示すように、第1インクヘッド22Aの2つのノズル列25のうち、一方のノズル列25のノズル24からグロスインクが吐出され、他方のノズル列25のノズル24からプライマーインクが吐出される。第2インクヘッド22Bの2つのノズル列25のうち、一方のノズル列25のノズル24からシアンインクが吐出され、他方のノズル列25のノズル24からマゼンタインクが吐出される。第3インクヘッド22Cの2つのノズル列25のうち、一方のノズル列25のノズル24からイエローインクが吐出され、他方のノズル列25のノズル24からブラックインクが吐出される。第4インクヘッド22Aの2つのノズル列25のノズル24からホワイトインクが吐出される。
【0082】
ここで、インクの色に応じてインクの増粘のし易さが異なる。ここで、インクの増粘のし易さとは、例えば光照射によるインクの硬化のし易さ(言い換えると、硬化度合い)であり、水性インクや溶剤インクなどの乾燥のし易さである。例えば第1インクヘッド22Aから吐出されるグロスインクおよびプライマーインクは、第4インクヘッド22Dから吐出されるホワイトインクよりも増粘し易い。すなわち、グロスインクおよびプライマーインクは、ホワイトインクよりも硬化し易い。ここでは、グロスインク、プライマーインクは、プロセスカラーインクよりも増粘し易く、プロセスカラーインクは、ホワイトインクよりも増粘し易い。本実施形態では、グロスインクおよびプライマーインクが、第1のインクの一例である。ホワイトインクが、第1のインクよりも増粘し難い第2のインクの一例である。
【0083】
本実施形態のように、光照射装置130が第1光照射装置130Aと第2光照射装置130Bの2つを備えている場合、第1光照射装置130Aからインクヘッド22までの走査方向Yの距離と、第2光照射装置130Bからインクヘッド22までの走査方向Yの距離とが異なることあり得る。ここでは、第1光照射装置130Aからインクヘッド22までの走査方向Yの距離を第1距離とする。第2光照射装置130Bからインクヘッド22までの走査方向Yの距離を第2距離とする。
【0084】
本実施形態では、第1インクヘッド22Aにおいて、第1光照射装置130Aの中心C11からの走査方向Yの第1距離D11は、第2光照射装置130Bの走査方向Yの中心C12からの走査方向Yの第2距離D21よりも短い。同様に、第2インクヘッド22Bにおいて、第1光照射装置130Aの中心C11からの走査方向Yの第1距離D12は、第2光照射装置130Bの中心C12からの走査方向Yの第2距離D22よりも短い。一方、第3インクヘッド22Cにおいて、第1光照射装置130Aの中心C11からの走査方向Yの第1距離D13は、第2光照射装置130Bの中心C12からの走査方向Yの第2距離D23よりも長い。同様に、第4インクヘッド22Dにおいて、第1光照射装置130Aの中心C11からの走査方向Yの第1距離D14は、第2光照射装置130Bの中心C12からの走査方向Yの第2距離D24よりも長い。
【0085】
本実施形態では、図3の決定部93は、第1光照射装置130Aとインクヘッド22の走査方向Yの第1距離と、第2光照射装置130Bとインクヘッド22の走査方向Yの第2距離とのうちの最小距離に応じて、インクヘッド22毎にクリーニング間隔T1を決定する。ここでは、図11に示すように、第1インクヘッド22Aおよび第2インクヘッド22Bは、第2光照射装置130Bよりも第1光照射装置130Aの方が走査方向Yの距離が短い。そのため、図12に示すように、第1インクヘッド22Aおよび第2インクヘッド22Bにおける最小距離は、第1光照射装置130Aとの走査方向Yの距離である第1距離D11、D12となる。
【0086】
一方、図11に示すように、第3インクヘッド22Cおよび第4インクヘッド22Dは、第1光照射装置130Aよりも第2光照射装置130Bの方が走査方向Yの距離が短い。そのため、図12に示すように、第3インクヘッド22Cおよび第4インクヘッド22Dにおける最小距離は、第2光照射装置130Bとの走査方向Yの距離である第2距離D23、D24となる。
【0087】
本実施形態では、図11に示すように、第1インクヘッド22Aの最小距離である第1距離D11と、第4インクヘッド22Dの最小距離である第2距離D24とは、同じである。この場合、決定部93は、インクヘッド22A、22Dから吐出されるインクの増粘のし易さに応じて、インクヘッド22A、22Dに対するクリーニング間隔T1を決定する。ここでは、第1インクヘッド22Aから吐出されるグロスインクおよびプライマーインクは、第4インクヘッド22Dから吐出されるホワイトインクよりも増粘し易く、硬化し易い。そのため、決定部93は、第4インクヘッド22Dよりも第1インクヘッド22Aに対するクリーニング間隔T1を短い時間に決定する。ここでは、決定部93は、図12に示すように、第1インクヘッド22Aにおけるクリーニング間隔T1を第1間隔T11Aに決定する。また、決定部93は、第4インクヘッド22Dにおけるクリーニング間隔T1を第2間隔T12Aに決定する。ここで、第2間隔T12Aは、第1間隔T11Aよりも大きい。本実施形態において、第1間隔T11Aは例えば15分であり、第2間隔T12Aは例えば30分である。
【0088】
また、本実施形態では、図11に示すように、第2インクヘッド22Bの最小距離である第1距離D12と、第3インクヘッド22Cの最小距離である第2距離D23とは、同じである。また、図12に示すように、第2インクヘッド22Bから吐出されるインクと、第3インクヘッド22Cから吐出されるインクとは、共にプロセスカラーインクであり、インクの増粘のし易さは同じである。この場合、決定部93は、第2インクヘッド22Bにおけるクリーニング間隔T1と、第3インクヘッド22Cにおけるクリーニング間隔T1とを同じに決定する。
【0089】
ここでは、第2インクヘッド22Bの最小距離である第1距離D12、および、第3インクヘッド22Cの最小距離である第2距離D23は、第1インクヘッド22Aの最小距離である第1距離D11よりも長く、かつ、第4インクヘッド22Dの最小距離である第2距離D24よりも長い。そのため、第2インクヘッド22Bおよび第3インクヘッド22Cにおけるクリーニング間隔T1は、第1インクヘッド22Aおよび第4インクヘッド22Dにおけるクリーニング間隔T1よりも大きい時間に決定される。例えば第2インクヘッド22Bおよび第3インクヘッド22Cにおけるクリーニング間隔T1を、第3間隔T13Aとする。第3間隔T13Aは、上記の第1間隔T11Aよりも大きく、かつ、第2間隔T12Aよりも大きい。第3間隔T13Aは、例えば60分である。
【0090】
本実施形態のように、図11に示すように、光照射装置130が第1光照射装置130Aと第2光照射装置130Bとの2つで構成されている場合であっても、第1、2光照射装置130A、130Bのうち、インクヘッド22までの走査方向Yの距離が短い方の光照射装置130との走査方向Yの距離に応じて、インクヘッド22におけるクリーニング間隔T1を決定する。このことで、図12に示すように、照射光量A2が多い第1インクヘッド22Aに対しては、クリーニング間隔T1を短い時間(ここでは第1間隔T11A)に設定でき、照射光量A2が少ない第2、3インクヘッド22B、22Cに対しては、クリーニング間隔T1を長い時間(ここでは第3間隔T13A)に設定することができる。
【0091】
本実施形態では、図3の決定部93は、インクヘッド22から吐出されるインクの増粘のし易さに応じて、インクヘッド22毎にクリーニング間隔T1を決定する。ここでは、ノズル面23に付着したインクの増粘度合いA1は、インクの増粘のし易さ、言い換えると硬化のし易さに基づいて推定されることができる。例えばインクが増粘し易い場合には、インクの増粘度合いA1が高くなり易く、インクが増粘し難い場合には、インクの増粘度合いA1が高くなり難い。よって、インクヘッド22から吐出されるインクの増粘のし易さに応じてクリーニング間隔T1を決定することで、インクが増粘する適切なタイミングでクリーニング処理P1を実行することができる。
【0092】
本実施形態では、図12に示すように、第1インクヘッド22Aは、グロスインクおよびプライマーインクを吐出する。第4インクヘッド22Dは、グロスインクおよびプライマーインクよりも増粘し難いホワイトインクを吐出する。図3の決定部93は、第1インクヘッド22Aにおけるクリーニング間隔T1を第1間隔T11Aに決定し、第4インクヘッド22Dにおけるクリーニング間隔T1を第1間隔T11Aよりも大きい第2間隔T12Aに決定する。このことによって、硬化し易いグロスインクおよびプライマーインクを吐出する第1インクヘッド22Aに対して、クリーニング間隔T1を短い時間に設定することができる。一方、第1インクヘッド22Aに比べて硬化し難いホワイトインクを吐出する第4インクヘッド22Dに対して、クリーニング間隔T1を長い時間に設定することができる。
【0093】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るプリンタ210について説明する。図13は、第3実施形態に係るキャリッジ20、インクヘッド22、光照射装置30、および、ワイパーユニット270のワイパー271を示す正面図である。図14は、第3実施形態において、各インクヘッド22における光照射装置30からの距離、照射光量A2、インクの増粘度合いA1、および、クリーニング間隔T1を示す図である。
【0094】
本実施形態では、図13に示すように、プリンタ210は、ワイパーユニット270を備えている。ワイパーユニット270は、ワイパー271と、ワイピング機構72とを備えている。
【0095】
ワイパー271は、走査方向Yおよび上下方向に延びた板状のものである。ワイパー271の走査方向Yの長さは、隣り合う2つのインクヘッド22における左側のインクヘッド22の左端から、右側のインクヘッド22の右端までの距離以上である。そのため、ワイパー271は、2つのインクヘッド22のノズル面23を一度に拭くことができる。
【0096】
ここでは、ワイパー271は、第1インクヘッド22Aのノズル面23と第2インクヘッド22Bのノズル面23とを一度に拭くことができ、第3インクヘッド22Cのノズル面23と第4インクヘッド22Dのノズル面23とを一度に拭くことができる。ワイパー271がノズル面23に接触した状態で、ワイパー271が搬送方向Xに移動する、例えば搬送方向Xの一方から他方(ここでは、前から後ろ)に移動することでノズル面23が拭かれる。ここで、「一度に拭く」とは、ワイパー271が搬送方向Xの一方から他方に移動する間に、同時に拭かれることをいう。
【0097】
なお、2つのインクヘッド22のノズル面23を一度に拭くことができれば、ワイパー271の構成は特に限定されない。図13では、ワイパー271は1つの部材で構成されているが、ワイパー271は、例えば複数の部材を有していてもよい。ワイパー271は、例えば走査方向Yに並んだ第1ワイパー部材と、第2ワイパー部材とを備えていてもよい。ここでは、第1ワイパー部材は、第2ワイパー部材の左方に配置されている。例えばインクヘッド22A、22Bのノズル面23を一度に拭く場合には、第1ワイパー部材は、第1インクヘッド22Aのノズル面23を拭き、第2ワイパー部材は、第2インクヘッド22Bのノズル面23を拭くように構成されている。例えばインクヘッド22C、22Dを一度に拭く場合には、第1ワイパー部材は、第3インクヘッド22Cのノズル面23を拭き、第2ワイパー部材は、第4インクヘッド22Dのノズル面23を拭くように構成されている。
【0098】
図13に示すように、ワイパー271が複数のインクヘッド22のノズル面23を一度に拭くように構成されている場合、図3の決定部93は、ワイパー271が一度に拭くことが可能なインクヘッド22に対してクリーニング間隔T1を同じにする。本実施形態のように、ワイパー271が隣り合う2つのインクヘッド22のノズル面23を一度に拭くように構成されている場合、決定部93は、隣り合う2つのインクヘッド22において、クリーニング間隔T1を同じにする。本実施形態では、決定部93は、図14に示すように、隣り合う第1、2インクヘッド22A、22Bにおけるクリーニング間隔T1を同じに決定し、隣り合う第3、4インクヘッド22C、22Dにおけるクリーニング間隔T1を同じに決定する。
【0099】
本実施形態では、決定部93は、例えば第1、2インクヘッド22A、22Bにおけるクリーニング間隔T1を、第1間隔T11Bに決定する。また、決定部93は、例えば第3、4インクヘッド22C、22Dにおけるクリーニング間隔T1を、第1間隔T11Bよりも大きい第2間隔T12Bに決定する。第1間隔T11Bおよび第2間隔T12Bの値は、増粘度合いA1が高い方、すなわち光照射装置30からの距離が短い方のインクヘッド22に応じた値が設定されているとよい。第1間隔T11Bは、例えば15分である。第2間隔T12Bは、例えば60分である。
【0100】
以上のように、図13に示す本実施形態のようにワイパー71が複数のインクヘッド22のノズル面23を一度に拭くように構成されている場合、一度に拭かれる2つのインクヘッド22A、22Bに対してクリーニング間隔T1を同じ時間に決定する。このことによって、一度に拭かれる2つのインクヘッド22A、22Bに対して同じタイミングでクリーニング処理P1を実行することができる。
【0101】
上記各実施形態では、光照射装置30、130からの距離に応じて、インクヘッド22毎にクリーニング間隔T1が決定されていた。しかしながら、例えば各インクヘッド22に対して、ノズル面23に照射される光の照射光量A2を測定するセンサが設けられてもよい。この場合、上記センサで照射光量A2を測定し、測定された照射光量A2に応じてクリーニング間隔T1が決定されてもよい。
【0102】
上記各実施形態では、光照射装置30、130は、光の中でも紫外線を照射する紫外線照射装置であった。しかしながら、光照射装置30、130が照射する光は紫外線に限定されない。例えば光照射装置30、130は、赤外線を照射する赤外線照射装置であってもよい。この場合、インクヘッド22から吐出されるインクは、いわゆる水性インクであってもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 プリンタ
22 インクヘッド
22A 第1インクヘッド
22B 第2インクヘッド
22C 第3インクヘッド
22D 第4インクヘッド
23 ノズル面
24 ノズル
30 光照射装置
60 キャップユニット
61 キャップ
62 キャッピング機構
63 吸引ポンプ
70 ワイパーユニット
71 ワイパー
72 ワイピング機構
90 制御装置
93 決定部
95 取得部
97 判定部
99 クリーニング実行部
P1 クリーニング処理
T1 クリーニング間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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