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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040935
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】腎細胞の保管方法及び輸送方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20230315BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C12N5/077
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148155
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 越史
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ08
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BC03
4B065BC11
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】 薬物評価系として利用し得る、細胞生存率が高く、腎臓の生理機能を維持されている腎細胞を、培養温度より低い温度で保管又は輸送する方法を提供する。
【解決手段】 本発明のある態様は、腎細胞を保管又は輸送する方法において、前記腎細胞の凝集体を含む液体を、維持温度として、前記腎細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度に管理する維持工程を含む。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎細胞を保管又は輸送する方法において、
前記腎細胞の凝集体を含む液体を、維持温度として、前記腎細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度に管理する維持工程。
を含む方法。
【請求項2】
前記維持温度が、0℃以上37℃未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝集体1個中の細胞数が、125個以上10000個以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記凝集体の直径が、100μm以上800μm以下である、請求項1~3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記凝集体の体積が、0.001mm以上0.300mm以下である、請求項1~4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体中の前記凝集体の数が1個である、請求項1~5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体に対する前記凝集体の体積比が、0.001%以上0.200%以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記液体に対する前記凝集体の比重が、1.00以上1.20以下である、請求項1~7いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記腎細胞が、近位尿細管上皮細胞である、請求項1~8いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記維持工程の維持期間が、
前記腎細胞の前記培養温度における生存細胞数に対する、前記維持温度における生存細胞数の比である細胞生存率が所定値以上に維持できる維持可能期間以下であり、
前記維持可能期間が以下の計算式から算出される、請求項1~9いずれか一項に記載の方法。
(維持可能期間(日))=A/{(培養温度(℃))-(維持温度(℃))}
A:前記所定値及び前記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
【請求項11】
前記維持温度が、
前記腎細胞の前記培養温度における生存細胞数に対する、前記維持温度における生存細胞数の比である細胞生存率が所定値以上に維持できる維持可能温度以上であり、
前記維持可能温度が以下の計算式から算出される、請求項1~9いずれか一項に記載の方法。
(維持期間(日))=A/{(培養温度(℃))―(維持可能温度(℃))}
A:前記所定値及び前記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
【請求項12】
前記所定値が90%、且つ前記凝集体の細胞数が1000個のとき、前記Aの値が34.5である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記所定値が80%、且つ前記凝集体の細胞数が1000個のとき、前記Aの値が69である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により得られた腎細胞。
【請求項15】
請求項14に記載の腎細胞を含む薬物評価系。
【請求項16】
請求項14に記載の腎細胞を含む細胞製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎細胞の保管方法、腎細胞の輸送方法に関する。本発明は、さらに、腎細胞を含む細胞製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
生体に投与された薬剤は、生体内に吸収された後、腎臓において近位尿細管で血液から尿中に排出される。そのため、薬剤の腎毒性によりしばしば腎障害が引き起こされる。創薬研究においては、薬剤の作用を明らかにするために腎臓での薬物動態を調べることは非常に重要である。このことから、腎細胞を用いた薬物動態や毒性を評価可能な創薬支援デバイスの開発が望まれている。また、このような創薬支援デバイスは、腎臓に関する疾患(例えば、腎臓がん、高尿酸血症等)の治療薬開発にも有用である。
【0003】
このような細胞を用いた創薬支援デバイスを供給又は利用する際には、細胞を安定的に保管又は輸送する方法が必要となる。一般的に、細胞は平底培養プレートにおいて二次元的に平面培養する。従来、正常な細胞状態を維持するためには、細胞の入った容器を培養温度に維持する温度管理装置が必要となり、細胞の保管又は輸送のコストが高額になってしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-50992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、腎細胞の平面培養細胞を、一定期間、培養温度より低い温度で維持すると、細胞の形態が変化してしまい、細胞生存率が低下してしまう旨の知見を得た。そこで本発明は、該知見を踏まえ、細胞生存率が高く、且つ、細胞の生理機能が維持されている腎細胞を、培養温度より低い温度で保管又は輸送する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために種々検討を行った結果、腎細胞において、凝集体を形成させることで、一定期間、培養温度より低い温度で維持することができることを見出した。
【0007】
本発明に係る一実施態様は、腎細胞の凝集体を含む液体を、前記細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度に管理する維持工程を含む、腎細胞を保管又は輸送する方法である。
【0008】
本発明に係る一実施態様は、腎細胞の凝集体を含む液体を、前記細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度に管理する維持工程を含む方法で、保管又は輸送された、腎細胞である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、細胞生存率が高く、腎臓の生理機能を維持されている腎細胞を、培養温度より低い温度で保管又は輸送する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】腎細胞保管・輸送システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】腎細胞保管・輸送システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図3-1】図3-1(a)~(c)は、それぞれ、37℃条件、常温条件、冷蔵条件における、近位尿細管上皮細胞凝集体の光学顕微鏡像である。
図3-2】図3-2は、静置24時間後における近位尿細管上皮細胞凝集体のATP量(細胞生存率)である。
図3-3】図3-3(a)~(d)は、それぞれ、静置48時間後、72時間後、144時間後、240時間後における、近位尿細管上皮細胞凝集体のATP量(細胞生存率)である。
図4-1】図4-1は、常温静置72時間後における近位尿細管上皮細胞凝集体のリアルタイムPCR法によるOAT1遺伝子発現解析の結果を、ヒト腎皮質と比較して示す。
図4-2】図4-2は、常温静置72時間後における近位尿細管上皮細胞凝集体のリアルタイムPCR法によるOCT2遺伝子発現解析の結果を、ヒト腎皮質と比較して示す。
図4-3】図4-3は、常温静置72時間後における近位尿細管上皮細胞凝集体のリアルタイムPCR法によるURAT1遺伝子発現解析の結果を、ヒト腎皮質と比較して示す。
図4-4】図4-4は、冷蔵静置24時間後における近位尿細管上皮細胞凝集体のリアルタイムPCR法によるOAT1遺伝子発現解析の結果を、ヒト腎皮質と比較して示す。
図4-5】図4-5は、冷蔵静置24時間後における近位尿細管上皮細胞凝集体のリアルタイムPCR法によるOCT2遺伝子発現解析の結果を、ヒト腎皮質と比較して示す。
図4-6】図4-6は、冷蔵静置24時間後における近位尿細管上皮細胞凝集体のリアルタイムPCR法によるURAT1遺伝子発現解析の結果を、ヒト腎皮質と比較して示す。
図5-1】図5-1(a)~(e)は、それぞれ、細胞数125個、500個、2000個、10000個、40000個における、近位尿細管上皮細胞凝集体の光学顕微鏡像である。
図5-2】図5-2(a)~(e)は、それぞれ、細胞数125個、500個、2000個、10000個、40000個における、近位尿細管上皮細胞凝集体のATP量(細胞生存率)である。
図6-1】図6-1(a)~(c)は、それぞれ、37℃条件、常温条件、冷蔵条件における、平面培養した近位尿細管上皮細胞の光学顕微鏡像である。
図6-2】図6-2(a)~(c)は、それぞれ、経過時間24時間、48時間、72時間における、平面培養した近位尿細管上皮細胞のATP量(細胞生存率)である。
図7-1】図7-1(a)~(c)は、それぞれ、37℃条件、常温条件、冷蔵条件における、ヒトiPS細胞凝集体の光学顕微鏡像である。
図7-2】図7-2(a)~(c)は、それぞれ、経過時間24時間、48時間、72時間における、ヒトiPS細胞凝集体のATP量(細胞生存率)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。
本発明に係る一実施態様の腎細胞を保管又は輸送する方法は、前記腎細胞の凝集体を含む液体を、前記細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度に管理する維持工程を含む。
【0012】
本発明において使用される腎細胞は、培養可能であればよく、その供給源を問わない。腎細胞は、哺乳類由来であることが好ましく、ヒト、サルなどの霊長類由来であることが好ましい。また、目的に応じて、正常腎臓由来であってもよく、疾患を有する腎臓由来であってもよい。腎細胞としては、例えば、上皮、皮質、近位尿細管、遠位尿細管、集合管、糸球体などを構成する細胞、具体的には、近位尿細管上皮細胞(RPTEC)、メサンギウム細胞などが挙げられる。腎細胞は、初代細胞でもよく、iPS細胞又はES細胞などの幹細胞由来の腎細胞でもよい。また、腎細胞は、不死化された腎細胞、株化細胞(HK-2細胞など)、他動物種由来の細胞(MDCK細胞、LLC-PK1細胞、JTC-12細胞など)、特定のトランスポーター等のタンパク質を発現させるために腎細胞に遺伝子導入した強制発現細胞であってもよい。より具体的には、腎細胞としては、例えば腎臓から採取、単離したヒト近位尿細管上皮細胞、ヒト遠位尿細管上皮細胞及びヒト集合管上皮細胞ならびに、ヒトiPS細胞又はヒトES細胞から分化誘導された近位尿細管上皮細胞、遠位尿細管上皮細胞及び集合管上皮細胞が例示される。創薬研究に使用するためには、近位尿細管上皮細胞、特に、ヒト正常腎由来の近位尿細管上皮細胞が好ましい。
【0013】
腎細胞の培養は、培養しようとする細胞に適した培地及び培養容器を用いることにより、常法に従って、例えば37℃、5%CO条件下で、行うことができる。培養は、静置培養、振盪培養又は撹拌培養などのいずれであってもよい。培養は、接着培養であってもよいが、少なくとも一部の期間は非接着の状態で培養を行うこと(例えば浮遊培養)が好ましい。腎細胞は、培養容器に非接着の状態で培養することによって凝集体を形成させることができる。「非接着(の)状態」とは、全て又は大部分の細胞が培養容器表面に接着していない状態を指し、全て又は大部分の細胞が培養容器表面から離れて存在する状態、及び培養容器表面に接触している場合でも、器具もしくは酵素などを用いずに培養容器のコーティングや培地の対流などにより培養容器表面から容易に離れ得る状態を含む。
【0014】
例えば、ある場合には、腎細胞の凝集体は、腎細胞の培養開始後24時間以内に形成される。そして、一部の期間は凝集体の状態で腎細胞を培養することで、脱分化して低下した腎細胞の生理機能を回復させることができる。腎細胞を培養容器に非接着の状態で培養する期間は、一般に120時間以上が望ましい。これにより、生理機能のより高い発現状態にある培養された腎細胞を得ることができる。培養期間中、培地は定期的に交換することが好ましい。例えば、培地は2日毎に交換される。
【0015】
培地としては、公知の任意のものを適宜使用することができる。例えば、近位尿細管上皮細胞の培養の場合、市販の尿細管細胞培養培地を使用することができ、好ましい培地の例としては、REGM(登録商標)(LONZA社)、EpiCM(登録商標)(ScienCell社)、KeratinocyteSFM(登録商標)(Thermo Fisher Scientific社)が挙げられる。
【0016】
また、細胞培養に有用な従来公知の材料及び添加剤を適宜使用することができる。例えば、培地には、コラーゲンI(I型コラーゲン)を添加することができる。コラーゲンIは、腎細胞同士を接着させる作用を有する。そのため、コラーゲンIを含む培地で腎細胞を培養することにより、凝集体の形成が促進される。コラーゲンIは、完全長のコラーゲンIであることが好ましいが、コラーゲンIを構成するα1鎖又はα2鎖、さらには各鎖を断片化したコラーゲンペプチドなどであってもよい。また、コラーゲンIの供給源は特に限定されず、ヒト由来であっても、他の動物由来であってもよい。
【0017】
培養容器は、任意のものを使用することができるが、凝集体の形成を促進するためには、細胞非(低)接着処理が施されているか、細胞非(低)接着材料で構成されていることが好ましい。細胞非(低)接着処理としては、容器表面への細胞非接着ハイドロゲルコーティング処理、MPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)コーティング処理、プロテオセーブ(登録商標)SSコーティング処理、鏡面研磨処理などが例示される。細胞非(低)接着材料としては、ガラス、ならびに、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン-ビニルアセテートコポリマー、ポリ(エチレン-エチルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン-メタアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン酢酸ビニル)コポリマー、及びこれらのポリマーの2種以上の混合物といった高分子材料が例示される。
【0018】
凝集体を大量に形成させる場合は、高密度スフェロイド作製プレート又はディッシュを使用することができる。さらには、必要に応じてスピナーフラスコなどの培養容器を用いてもよい。例えば、ELPLASIA(登録商標)シリーズの培養容器(Corning社)、EZSPHERE(登録商標)シリーズの培養容器(AGCテクノグラス社)などを使用することが好ましい。これらの培養容器は、6ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、種々のサイズのディッシュなどのタイプがあり、容器の底面積の大きさにより作製できる凝集体の数が異なる。例えば、低接着処理を施された96ウェルプレート(V底)、96ウェルプレート(U底)、384ウェルプレート(U底)を用いる場合、1ウェルに1つの凝集体が形成される。
【0019】
高密度スフェロイド作製プレート又はディッシュなどを使用して作製した凝集体は、回収して浮遊振盪培養することができる。浮遊振盪培養する場合は、細胞非(低)接着処理が施されたディッシュ又はプレートなどをシェーカー上に設置して凝集体を培養することが好ましい。シェーカーとしては、往復型シェーカー及び旋回型シェーカーを使用することができる。
【0020】
本明細書において、細胞の「凝集体」は、数個以上の細胞の塊状の集合体を指す。凝集塊、スフェロイドともいう。凝集体を構成する細胞の数は、例えば5個以上、25個以上、50個以上、好ましくは100個以上、より好ましくは125個以上、さらに好ましくは500個以上である。凝集体を構成する細胞の数は、例えば、4000個以下、好ましくは10000個以下、より好ましくは2000個以下、1000個以下である。凝集体を構成する細胞数がこのような範囲だと、凝集体作製時のバラつきが少なく、且つ、凝集体同士が接合しにくいため、凝集体サイズが均一になる傾向がある。さらに、細胞が高い生存率を維持する傾向にある。
【0021】
凝集体の大きさは、培養容器に播種する細胞数を調整することにより、制御することができる。例えば、マルチウェルプレートで培養する場合、1つのウェルに1つの凝集体が形成される。このため、1ウェルあたりの腎細胞の播種数が125個以上10000個以下のとき、凝集体を構成する腎細胞の数は、125個以上10000個以下となる。
【0022】
凝集体の直径は、例えば、100μm以上800μm以下が好適である。また、凝集体の体積は、例えば、0.001mm以上、0.300mm以下が好適である。
【0023】
なお、凝集体の直径は、凝集体の最大幅と定義される。すなわち、凝集体の直径は、凝集体の外縁上の2点をつなぐ直線のうち最大のものの長さである。また、凝集体の体積は、凝集体は略球形であるから、測定された直径から算出できる。凝集体の直径は、例えば、位相差顕微鏡により撮影した写真を用いて計測することができる。位相差顕微鏡としてはBZ-X710(Keyence社)を使用でき、直径の計測には解析ソフトウェアを使用できる。
【0024】
腎細胞を保管又は輸送する際に用いられる液体は、細胞に悪影響を与えない限り特に限定されず、凝集体を作製した際の培地であってもよく、新鮮培地であってもよく、あるいは培地以外の液体(例えば生理食塩水や緩衝液など)であってもよい。この液体は、塩類、緩衝剤、血清、ビタミン、アミノ酸、グルコース(糖)、電解質、抗生物質、成長因子(化合物、タンパク質)を含有していてもよい。保管又は輸送が48時間以上に及ぶ場合は、液体は定期的に交換することが好ましい。例えば、液体は2日毎に交換される。
【0025】
腎細胞の凝集体を含む液体の保管及び輸送用容器は、上述した培養容器と同様、任意のものを使用することができるが、細胞非(低)接着処理が施されているか、細胞非(低)接着材料で構成されていることが好ましい。
【0026】
本発明に係る一実施態様である腎細胞を保管又は輸送する方法は、腎細胞の保管又は輸送する際に、腎細胞の凝集体を含む液体を、前記腎細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度(以下、便宜上「維持温度」と呼ぶことがある)に管理する維持工程を含む。
【0027】
前記腎細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度は、細胞の種類や用途及び/又は保管若しくは輸送が必要な期間などに応じて最適温度を適宜選択することができる。なお、培養温度とは、細胞の生存に適した温度であり、当該細胞は増殖してもしなくてもよい。細胞の培養温度は、典型的には37℃なので、維持温度はこれよりも低い温度であることが望ましい。一方、維持温度が低すぎると、細胞内で部分的な凍結が起こるなどのため、凝集体中の細胞生存率が低下する恐れがある。したがって、維持温度は0℃以上であることが望ましい。維持温度は、例えば、0℃以上37℃未満とすることができ、比較的高温での維持が望ましい場合、好ましくは10℃以上37℃未満、さらに好ましくは20℃以上28℃未満とすることができ、比較的低温での維持が望ましい場合、好ましくは0℃以上10℃未満、さらに好ましくは3℃以上8℃未満とすることができる。なお、本明細書においては、便宜上、10℃以上37℃未満の温度範囲を「常温」と、0℃以上10℃未満の温度範囲を「冷蔵」と、それぞれ呼ぶことがある。
【0028】
保管の場合、維持工程において、所望の温度に調整可能なインキュベーター、恒温室、冷蔵庫などを使用することができる。
【0029】
輸送の場合、維持工程は、発泡スチロール等の断熱性容器を用いることが好ましい。断熱性容器の大きさは、保管及び輸送用容器を梱包できれば、特に限定されない。断熱性容器と保管及び輸送用容器との間に隙間があるときは、保管及び輸送用容器が動かないように、緩衝材が同梱されることが好ましい。また、断熱性容器として、紙製容器や段ボール製容器を使用することもできる。
【0030】
なお、維持工程は必ずしも静置により行う必要はない。したがって、シェーカー上又は輸送中など凝集体の破壊が起こらない程度の振動がある状況下で行うことができる。
【0031】
腎細胞の保管又は輸送の際、液体中の凝集体の数は、凝集体同士が接合してサイズが不均一となることを防ぐために、1個とすることができる。このとき、液体に対する凝集体の体積比の下限値を、0.001%以上、0.002%以上、又は0.003%以上とすることが好ましい。また、液体に対する凝集体の体積比の上限値を、0.800%以下、0.500%以下、又は0.200%以下とすることが好ましい。液体に対する凝集体の体積比がこのような範囲であることによって、保管又は輸送の際に液体が乾燥して凝集体が空気中に露出することを防ぐことができ、且つ、凝集体への酸素供給が十分に行われる。
【0032】
腎細胞の保管又は輸送の際、液体に対する凝集体の比重の下限値は、1.00以上であることが好ましい。このような比重であることによって、凝集体は液体面に浮かぶことなく、液体中に存在できるため、凝集体が細胞外環境の変化に影響を受けにくくなる。したがって、凝集体の比重の上限値は、1.20以下、1.15以下、又は1.10以下であることが好ましい。
【0033】
維持工程の維持期間は、腎細胞の凝集体における細胞生存率が所定値以上となる期間である。なお、細胞生存率とは、腎細胞の培養温度における生存細胞数に対する、維持温度における生存細胞数の比である。細胞生存率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。このような細胞生存率を有する腎細胞は、薬物評価に利用することができる。
【0034】
本発明者は、維持工程における維持期間と維持温度との間に以下の関係があることを見出した。すなわち、細胞生存率が所定値以上に維持できる維持可能期間は以下の式より算出される。
(維持可能期間(日))=A/{(培養温度(℃))-(維持温度(℃))}
A:前記所定値及び前記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
上述の式より、所望の維持温度及び細胞生存率に応じた、維持期間の上限値を算出することができる。
【0035】
また、同様に、細胞生存率が所定値以上に維持できる維持可能温度は以下の式より算出される。
(維持期間(日))=A/{(培養温度(℃))―(維持可能温度(℃))}
A:前記所定値及び前記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
上述の式より、所望の維持期間及び細胞生存率に応じた、維持温度の下限値を算出することができる。
【0036】
ここで、例えば、前記所定値が90%、且つ前記凝集体の細胞数が1000個のとき、前記Aの値は34.5とすることができ、前記所定値が80%、且つ前記凝集体の細胞数が1000個のとき、前記Aの値は69とすることができる。
【0037】
以上から、例えば、凝集体の細胞数が1000個のとき、培養温度が37℃、維持温度が25℃の場合、維持可能期間はそれぞれ、所定値が80%のとき5.75日、所定値が90%のとき2.88日である。すなわち、培養温度が37℃、維持温度が25℃の場合、維持期間は、好ましくは5.75日以内であり、さらに好ましくは2.88日以内である。
【0038】
本発明に係る一実施態様である腎細胞は、腎臓の生理機能がより高い、又はヒト腎皮質と比較して機能的に同等である。
【0039】
「ヒト腎皮質と比較して機能的に同等」とは、少なくとも、ヒト腎皮質において発現される腎臓の生理機能に関連する1以上の遺伝子発現に関して、ヒト腎皮質と同等のレベルの発現を示すことを意味する。
【0040】
腎臓の生理機能に関連する遺伝子としては、AQP1、CD13、SGLT2、Na/K ATPase、URAT1、PEPT1、MDR1、OAT1、OCT2、OCTN2、E-cadherin及びZO-1が挙げられる。AQP1(aquaporin 1)は、水の輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。CD13(alanyl aminopeptidase)は、タンパク質のペプチド化に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。SGLT2(sodium glucose cotransporter 2)は、ナトリウム及びグルコースの輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。Na/K ATPaseは、イオンの輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。URAT1(urate transporter 1)は、尿酸の再吸収に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。PEPT1(peptide transporter 1)は、ペプチドの輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。MDR1(multiple drug resistance 1)、OAT1(organic anion transporter 1)、OCT2(organic cation transporter 2)及びOCTN2(organic cation transporter novel 1)は、薬剤の輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。E-cadherin及びZO-1(zonula occludens-1)は、細胞間結合に関与するタンパク質をコードする遺伝子である。
【0041】
これらの1以上の遺伝子の発現レベルは、ヒト腎皮質と腎臓細胞培養物における発現量を、一般的なリアルタイムPCR法(qPCR法)によって測定することができ、両者が同等か否かは、それらを比較することによって判定することができる。なお、判定に使用する場合は、2回以上の実験の測定値を平均して用いる。
【0042】
例えば、所定期間保管又は輸送された腎細胞において、上記のいずれかの遺伝子発現量が、ヒト腎皮質におけるその遺伝子の発現量の10%以上である場合に、ヒト腎皮質と機能的に同等であると判定される。ヒト腎皮質と機能的に同等な腎臓細胞培養物は、上記の1つの遺伝子発現量が、好ましくはヒト腎皮質における発現量の10%以上であり、さらに好ましくは25%以上である。あるいは、ヒト腎皮質と機能的に同等な腎細胞は、上記の2以上の遺伝子発現量が、好ましくはいずれもヒト腎皮質における発現量の10%以上であり、さらに好ましくは25%以上である。
【0043】
本発明に係る一実施態様である腎細胞は、薬物評価系又は細胞製品として提供することができる。薬物評価系としては、例えば、腎細胞における薬物動態や、腎毒性の評価系が挙げられる。また、このような腎細胞は、腎臓がんや、高尿酸血症といった腎臓に関する疾患のメカニズム解析や、治療薬探索ツールとしても利用できる。
【0044】
(腎細胞保管・輸送システム)
図1は、実施形態に係る腎細胞保管システム10の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、腎細胞保管システム10は、腎細胞保管装置20および温度管理装置30を備える。
【0045】
腎細胞保管装置20は、庫内の温度を所定の温度に維持可能な保管庫であり、例えば、インキュベーター、恒温室、冷蔵庫などである。腎細胞保管装置20の庫内に、培養容器22が格納される。培養容器22には、液体24および腎細胞の凝集体26が収容されている。なお、腎細胞保管装置20内の温度が所定の維持温度で恒温状態であるとき、培養容器22内の液体24の温度は所定の維持温度とみなすことができる。
【0046】
温度管理装置30は、保管情報入力部40、温度管理部50、維持期間算出部60および表示部70を備える。なお、温度管理装置30は腎細胞保管装置20内に内蔵され得る。
【0047】
保管情報入力部40には、培養容器22内の液体24に関する情報、腎細胞の培養温度に関する情報、液体24の維持温度に関する情報、腎細胞の保管期間(維持期間)に関する情報、細胞生存率に関する情報、凝集体の細胞数に関する情報などがユーザによって入力され得る。
また、保管情報入力部40には、凝集体26が保存される液体24の成分および濃度(又は含有量)に関する情報が入力されてもよい。例えば、液体が生理食塩水の場合、成分として「塩化ナトリウム」が入力され、さらに、「塩化ナトリウム」の濃度が入力される。また、保管情報入力部40には、液体24が凍結する温度が入力されてもよい。
【0048】
温度管理部50は、維持温度設定部52および温度制御部54を有する。
維持温度設定部52は、腎細胞保管装置20内の維持温度、すなわち、培養容器22内の液体24の維持温度が、保管情報入力部40に入力された腎細胞の培養温度未満であり、且つ液体24が凍結しない温度となるように設定する。液体24が凍結しない温度は、保管情報入力部40に入力された液体24が凍結する温度より高い温度としてもよく、液体24の成分および濃度から凝固点降下を考慮して算出してもよい。
具体的には、維持温度は、保管情報入力部40によって、ユーザによって設定される場合と、所望の細胞生存率、凝集体の細胞数、維持期間などに従って定められる場合とがある。
細胞生存率や凝集体の細胞数などによって、維持温度が設定される場合には、維持温度は、下記式で算出される維持可能温度以上になるように設定される。換言すると、維持温度の下限値が、腎細胞を保管する期間である維持期間に応じて定められる。
(維持期間(日))=A/{(培養温度(℃))―(維持可能温度(℃))}
A:前記所定値及び前記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
ここで、維持可能温度は、腎細胞の前記培養温度における生存細胞数に対する、維持温度における生存細胞数の比である細胞生存率が所定値以上に維持できる温度である。
【0049】
温度制御部54は、維持温度設定部52で設定された維持温度となるように、腎細胞保管装置20内の温度を制御する。具体的には、温度制御部54と温度管理装置30とが無線又は有線にて通信可能に接続されており、温度制御部54は維持温度に関する情報を温度管理装置30に送信する。維持温度に関する情報を受信した腎細胞保管装置20は、庫内の温度が当該維持温度になるように温度管理を行う。
なお、腎細胞保管装置20内の温度制御は、腎細胞保管装置20に培養容器22が格納された後に開始してもよいが、腎細胞保管装置20に培養容器22が格納される前に、腎細胞保管装置20内の温度制御を開始してもよい。腎細胞保管装置20内の温度制御を予め実施した後、腎細胞保管装置20に培養容器22が格納することにより、培養容器22内の液体24の温度を速やかに所望の維持温度とすることができる。
【0050】
維持期間算出部60は、必要に応じて、腎細胞保管装置20によって液体の温度を維持温度に維持する維持期間を下記式で算出される維持可能期間(日)以下に設定する。換言すると、維持期間の上限値が維持温度に応じて定められる。
(維持可能期間(日))=A/{(培養温度(℃))-(維持温度(℃))}
A:上記所定値及び上記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
ここで、維持可能期間(日)は、腎細胞の培養温度における生存細胞数に対する、維持温度における生存細胞数の比である細胞生存率が所定値以上に維持できる期間である。
【0051】
表示部70は、ディスプレイ(図示せず)に必要な情報を表示する。表示部70によって表示される情報としては、維持期間算出部60によって算出された維持期間(維持(保管)開始日時および維持(保管)終了日時)、維持温度設定部52によって設定された維持温度などが挙げられる。
【0052】
腎細胞保管システム10は、トラック、貨物車、船舶などの輸送手段に設置することができる。この場合、腎細胞保管システム10を腎細胞輸送システム10と読み替えることができる。
【0053】
図2は、腎細胞保管システム10の動作の一例を示すフローチャートである。以下に示す例は、腎細胞の維持期間に応じて維持温度が設定される場合である。
まず、ユーザによって、保管情報入力部40に腎細胞の保管に関する情報が入力される。具体的には、腎細胞の維持期間、腎細胞の培養温度および液体が凍結する温度が入力される(S10)。
次に、維持温度設定部52によって、上述した設定方法にしたがって、液体24の維持温度が設定される(S20)。なお、維持温度は、腎細胞の培養温度未満であり、且つ液体24の凍結温度以下であることが条件とされる。
次に、培養容器22が腎細胞保管装置20に格納された状態で、温度制御部54により、腎細胞保管装置20内の温度、すなわち、液体24の温度が維持温度になるように制御される(S30)。
次に、腎細胞保管装置20内の温度が維持温度に設定された時点から経過した時間が、維持期間に達したか否かが判定される(S40)。経過時間が維持期間に達した場合には(S40のyes)、腎細胞の保管又は温度管理を終了する。経過時間が維持期間に達していない場合には(S40のno)、S40の判定に戻る。
【0054】
本発明のある態様は、腎細胞保管又は輸送システムである。
当該腎細胞保管又は輸送システムは、液体および腎細胞の凝集体を収容した培養容器を格納し、前記液体の温度を所定の温度に維持可能な細胞保管装置と、
前記細胞保管装置によって維持される液体の温度を、腎細胞の培養温度未満であり、且つ液体が凍結しない維持温度になるように維持する温度管理装置と、
を備える。上記態様において、維持温度の下限値が、腎細胞を保管する期間である維持期間に応じて定められてもよい。
また、本発明の他の態様である、腎細胞保管又は輸送システムは、液体および腎細胞の凝集体を収容した培養容器を格納し、前記液体の温度を所定の温度に維持可能な細胞保管装置と、
前記細胞保管装置によって維持される液体の温度を、腎細胞の培養温度未満であり、且つ液体が凍結しない維持温度になるように維持する温度管理装置と、
を備え、上記維持温度に応じて維持期間の上限値を定めてもよい。
本発明に係る一実施態様によれば、腎細胞の維持温度に応じて維持期間の上限値を算出する、又は維持期間に応じて維持温度の下限値を算出することができる。すなわち、本発明に係る一実施態様は、腎細胞の保管・輸送システムとして、維持温度及び維持期間の管理に利用することができる。
【0055】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例0056】
1. 近位尿細管上皮細胞凝集体に対する温度の影響
<1-1. 凝集体の形態及び細胞生存率>
腎細胞として、LONZA社から入手したヒト近位尿細管上皮細胞{Clonetics(登録商標)、カタログ番号CC-2553、RPTEC-腎臓近位尿細管上皮細胞}を使用した。液体窒素保管器に保管されてある凍結バイアルを37℃の恒温槽に浸して解凍した。解凍後、凍結バイアル中の細胞懸濁液を推奨される培地{REGM(登録商標)、LONZA社}と混和し、培養ディッシュ中で培養した。細胞は37℃、5%COの条件下で、2日に1回の頻度で培地交換しながら培養した。細胞を、コンフルエントになる前に回収し、細胞低接着処理された96ウェルV底プレート{PrimeSurface(登録商標)プレート96V、住友ベークライト社}に、1ウェルあたり1000個の細胞数となるように播種して培養することにより、凝集体を形成させた。凝集体は、2日に1回の頻度で培地交換しながら培養した。なお、「コンフルエント」とは、培養容器の培養表面全体に対して細胞の占める面積の割合が約100%であること、すなわち培養表面いっぱいに隙間なく細胞が増殖した状態を意味する。
【0057】
240時間以上培養後、凝集体を含む培養液の入ったプレートを、常温又は冷蔵条件にて静置し、あるいは、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。なお、常温条件は、具体的には、発泡スチロール製の容器内にプレートを入れて、室内(空調設定温度:25℃)に静置した。また、冷蔵条件は、具体的には、プレートを冷蔵庫内(設定温度:4℃)で静置した。
【0058】
静置開始から24時間後の各温度条件における凝集体の様子を、光学顕微鏡により観察した。また、凝集体の生存細胞数を、発光法によりATP量を測定するCellTiter-Glo(登録商標) 3D Cell Viability Assay(Promega社)を用いて測定した。具体的には、凝集体を培地ごと回収し、培地の容量と等量のCellTiter-Glo 3D Reagentを添加した。この混合物を、室温で30分間インキュベートした。良く混和した後にマイクロプレートリーダー(Perkin Elmer)で発光値を測定した。
【0059】
図3-1に、各温度条件{(a)37℃条件;(b)常温条件;(c)冷蔵条件}における凝集体の形態を示す。また、静置24時間後におけるATP量測定の結果を図3-2に示す。
【0060】
近位尿細管上皮細胞の凝集体は、培養温度(37℃)より低温(常温又は冷蔵)で24時間維持しても、形態を維持していることを確認した。ATP量測定の結果、低温における生存細胞数は、培養温度における生存細胞数と比較して同程度であった。低温における生存細胞数はいずれも培養温度における生存細胞数の施設内データの範囲内であるため、生存維持が確認された。
【0061】
<1-2. 細胞生存率の経時変化>
上記1-1.と同様に凝集体を培養し、凝集体を含む培養液の入ったプレートを、常温又は冷蔵条件にて静置し、あるいは、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。静置後も、2日に1回の頻度で培地を交換した。
【0062】
静置開始から所定時間経過後、各温度条件における凝集体のATP量を、上記1-1.と同様に測定した。
【0063】
静置48時間、72時間、144時間及び240時間経過後の生存細胞数の結果を図3-3{(a)48時間;(b)72時間;(c)144時間(6日間);(d)240時間(10日間)}に示す。
【0064】
近位尿細管上皮細胞の凝集体の生存細胞数について、常温条件の静置後48時間及び72時間経過においては、培養温度条件における生存細胞数とほとんど差がないことが確認された。一方、常温条件の静置後144時間経過後以降、及び、冷蔵条件の静置後48時間経過後以降においては、生存細胞数の減少が確認された。このときの、細胞生存率(培養温度における生存細胞数に対する各温度条件における生存細胞数の比)を表1に示す。表1において、細胞生存率は、「A」=90%以上、「B」=80%以上且つ90%未満、「C」=50%以上且つ80%未満、「D」=50%未満、で表す。なお、括弧内の数値は、各細胞生存率の100%との差分を表す。
【0065】
【表1】
【0066】
以上の結果から、腎細胞の凝集体は、培養温度より低温で24時間以上維持できることが確認された。また、培養温度との差が小さい温度(常温)においては、より低い温度(冷蔵)に比べて、長期間にわたって凝集体を安定的に維持できることが確認された。
【0067】
2.腎細胞の遺伝子発現量の解析
<2-1. 常温保管における遺伝子発現量>
常温静置後及び培養温度における近位尿細管上皮細胞凝集体の遺伝子発現を調べ、ヒト腎皮質における遺伝子発現と比較した。
上記1-1.と同様に凝集体を培養し、凝集体を含む培養液の入ったプレートを、常温条件にて静置し、又は、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。静置後も、2日に1回の頻度で培地を交換した。
【0068】
静置開始から72時間経過後の各凝集体から、RNeasy(登録商標) Mini Kit(QIAGEN社)を用いてmRNAを抽出及び精製した。さらに、このmRNAから、QuantiTect(登録商標) Whole Transcriptome Kit(QIAGEN社)を用いて、cDNAを合成した。これらのcDNAを鋳型として、Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System 1(タカラバイオ社)を用いてリアルタイムPCR法により近位尿細管に多く発現するOAT1(有機アニオントランスポーター1)、OCT2(有機カチオントランスポーター2)及びURAT1(尿酸トランスポーター1)の遺伝子発現量を測定した。なお、すべての実験について、1回の実験において各サンプルはそれぞれn=3で測定した。
【0069】
比較のため、ヒトの患者ドナーより採取したヒト腎皮質を用いて、上記と同様にRNAを抽出し、OAT1、OCT2、又はURAT1の遺伝子発現量を測定した。
【0070】
OAT1の遺伝子発現量の結果を図4-1に、OCT2の遺伝子発現量の結果を図4-2に、URAT1の遺伝子発現量の結果を図4-3にそれぞれ示す。また、常温条件における培養温度条件及びヒト腎皮質との発現比較を表2-1に示す。
【0071】
【表2-1】
【0072】
培養温度における近位尿細管上皮細胞の凝集体は、ヒト腎皮質と比較して、OAT1、OCT2及びURAT1の遺伝子発現量が同等であった。また、常温条件において、培養温度条件及びヒト腎皮質と比較して、遺伝子発現量に変化はなく、常温で72時間静置したときも、腎臓の生理機能が維持されていることが確認された。
【0073】
<2-2. 冷蔵保管における遺伝子発現量>
冷蔵静置後及び培養温度における近位尿細管上皮細胞凝集体の遺伝子発現を調べ、ヒト腎皮質における遺伝子発現と比較した。
上記1-1.と同様に凝集体を培養し、凝集体を含む培養液の入ったプレートを、冷蔵条件にて静置し、又は、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。静置後も、2日に1回の頻度で培地を交換した。
【0074】
静置開始から24時間経過後の各凝集体、及びヒトの患者ドナーより採取したヒト腎皮質から、上記2-1.と同様にOAT1、OCT2、又はURAT1の遺伝子発現量を測定した。
【0075】
OAT1の遺伝子発現量の結果を図4-4に、OCT2の遺伝子発現量の結果を図4-5に、URAT1の遺伝子発現量の結果を図4-6にそれぞれ示す。また、冷蔵条件における培養温度条件及びヒト腎皮質との発現比較を表2-2に示す。
【0076】
【表2-2】
【0077】
以上の結果から、冷蔵で24時間静置したときも、腎臓の生理機能が維持されていることが確認された。
【0078】
3.凝集体細胞数の影響
<3-1. 凝集体細胞数>
上記1-1.と同様に腎細胞を培養して回収した後、細胞低接着処理された96ウェルV底プレートに、1ウェルあたりの細胞数がそれぞれ125個、500個、2000個、10000個、又は40000個となるように播種して培養することにより、凝集体を形成させた。凝集体は、2日に1回の頻度で培地交換しながら培養した。
【0079】
240時間以上培養後、凝集体を含む培養液の入ったプレートを、常温又は冷蔵条件にて静置し、あるいは、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。また、各温度条件における培養後の凝集体の様子を、光学顕微鏡により観察した。
【0080】
静置開始から所定時間経過後の各温度条件における凝集体のATP量を測定した。
【0081】
図5-1に、各細胞数{(a)125個;(b)500個;(c)2000個;(d)10000個;(e)40000個}における凝集体の形態を示す。また、各細胞数{(a)125個;(b)500個;(c)2000個;(d)10000個;(e)40000個}における凝集体のATP量経時測定の結果を図5-2に示す。
【0082】
近位尿細管上皮細胞の凝集体の生存細胞数は、細胞数が125個から10000個のとき、いずれの維持期間においても、常温又は冷蔵条件と、培養温度条件とで、顕著な差がみられなかった。このことから、凝集体の細胞数が125個~10000個のとき、静置72時間経過後においても生存を維持できることが確認された。一方、細胞数が40000個のときは、静置後48時間の冷蔵条件において生存細胞数の減少が確認された。
【0083】
また、このときの、各細胞数の凝集体における細胞生存率を表3-1に示す。細胞生存率は、「A」=90%以上、「B」=80%以上且つ90%未満、「C」=50%以上且つ80%未満、「D」=50%未満、で表す。なお、括弧内の数値は、各細胞生存率の100%との差分を表す。
【0084】
【表3-1】
【0085】
<3-2.維持可能期間及び維持可能温度の算出方法>
上記1-2.及び3-1.の結果から、培養温度と維持温度との差が小さいほど、細胞生存率が減少するまでの期間が長くなる傾向を見出した。すなわち、維持工程における維持期間と維持温度との間に以下の関係があることを見出した。すなわち、細胞生存率を所定値以上に維持できる維持可能期間は以下の式より算出される。
(維持可能期間(日))=A/{(培養温度(℃))-(維持温度(℃))}
【0086】
ここで、Aの値は所望の細胞生存率及び凝集体の細胞数に応じて、それぞれ定められる。例えば、表1より、凝集体の細胞数1000個、培養温度37℃のとき、維持温度25℃における細胞生存率90%以上の維持可能期間は72時間(すなわち3日)であるから、A’=36、維持温度4℃における細胞生存率90%以上の維持可能期間は24時間(すなわち1日)であるからA”=33となる。これらの平均値34.5をAと定める。
【0087】
また、例えば、表1により、凝集体の細胞数1000個、培養温度37℃のとき、維持温度25℃における細胞生存率80%以上の維持可能期間は144時間(すなわち6日)であるから、A’=72、維持温度4℃における細胞生存率80%以上の維持可能期間は48時間(すなわち2日)であるからA”=66となる。これらの平均値69をAと定める。
【0088】
また、同様に、細胞生存率が所定値以上に維持できる維持可能温度は以下の式より算出される。
(維持期間(日))=A/{(培養温度(℃))―(維持可能温度(℃))}
A:前記所定値及び凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
上述の式より、所望の維持期間及び細胞生存率に応じた、維持温度の下限値を算出することができる。
【0089】
<3-3. 凝集体の直径及び体積の測定>
上記3-1.と同様に1ウェルあたりの細胞数が所定細胞数となるように腎細胞を播種して培養することにより、凝集体を形成させ、培養した。
【0090】
10日間以上培養後、各凝集体の様子を、位相差顕微鏡BZ-X710(Keyence社)により観察し、撮像した。このとき、いずれの凝集体も培養液中に沈んでいる;すなわち各凝集体の培地に対する比重が1以上であることを確認した。解析ソフトウェア(Keyence社)を用いて、形態写真から直径を計測した。さらに、得られた直径から体積を算出し、凝集体の培地に対する体積比を算出した。また、細胞数が10000個及び40000個の凝集体については、それぞれの凝集体を48個ずつ回収して重量を測定し、培地に対する比重を算出した。
【0091】
各細胞数における近位尿細管上皮細胞凝集体の直径及び体積、並びに培地に対する体積比及び比重を表3-2に示す。
【0092】
【表3-2】
【0093】
4.平面培養近位尿細管上皮細胞に対する温度の影響
<4-1. 平面培養細胞の形態>
上記1-1.と同様に腎細胞を培養して回収した後、1ウェルあたりの細胞数2×10個となるように96ウェル平底細胞培養用プレートに播種した。播種後、コンフルエントになるまで培養した。
【0094】
培養後、平面培養細胞を含む培養液の入ったプレートを、常温又は冷蔵条件にて静置し、あるいは、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。静置24時間経過後、各温度条件における平面培養細胞の様子を、光学顕微鏡により観察した。
【0095】
図6-1に、各温度条件{(a)37℃条件;(b)常温条件;(c)冷蔵条件}における平面培養細胞の形態を示す。平面培養した近位尿細管上皮細胞では、常温及び冷蔵条件において細胞間の隙間が多くなり、細胞の形態が変化するが確認された。近位尿細管上皮細胞は平面培養の場合、培養温度の低下によって細胞形態が変化することが確認された。
【0096】
<4-2. 細胞生存率の経時変化>
上記4-1.と同様に細胞をコンフルエントになるまで培養した。培養後、平面培養細胞を含む培養液の入ったプレートを、常温又は冷蔵条件にて静置し、あるいは、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。静置後は、2日に1回の頻度で培地を交換した。
【0097】
静置開始から所定時間経過後の各温度条件における凝集体のATP量を測定した。各経過時間{(a)24時間;(b)48時間;(c)72時間}における各温度条件の凝集体のATP量経時測定の結果を図6-2に示す。
【0098】
平面培養した近位尿細管上皮細胞の生存細胞数は、常温及び冷蔵条件において、静置24時間経過後の時点で、培養温度条件における生存細胞数に比べて顕著に減少することが確認された。このときの、細胞生存率(培養温度における生存細胞数に対する各条件における生存細胞数の比)を表4に示す。細胞生存率は、「A」=90%以上、「B」=80%以上且つ90%未満、「C」=50%以上且つ80%未満、「D」=50%未満、で表す。なお、括弧内の数値は、各細胞生存率の100%との差分を表す。
【0099】
【表4】
【0100】
5.ヒトiPS細胞の凝集体に対する温度の影響
ヒトiPS細胞(201B7株)を使用した。ヒトiPS細胞は液体窒素保管器に保存してある凍結バイアルを取り出し、37℃の恒温槽に浸して解凍した。解凍後、凍結バイアル中の細胞懸濁液を推奨される培地{StemFit(登録商標)、味の素社}と混和し、培養ディッシュ中で培養した。細胞は37℃、5%COの条件下で、1日に1回の頻度で培地交換しながら培養した。細胞を、コンフルエントになる前に回収し、細胞低接着処理された96ウェルV底プレート{PrimeSurface(登録商標)プレート96V、住友ベークライト社}に、1ウェルあたり1000個の細胞数となるように播種して培養することにより、凝集体を形成させた。凝集体は、2日に1回の頻度で培地交換しながら培養した。
【0101】
240時間以上培養後、凝集体を含む培養液の入ったプレートを、常温又は冷蔵条件にて静置し、あるいは、37℃のインキュベーターに5%COの条件下にて静置した。静置24時間経過後、各温度条件における細胞の様子を、光学顕微鏡により観察した。
【0102】
静置開始から所定時間経過後の各温度条件における凝集体のATP量を測定した。
【0103】
図7-1に、各温度条件{(a)37℃条件;(b)常温条件;(c)冷蔵条件}におけるヒトiPS細胞凝集体の形態を示す。また、各経過時間{(a)24時間;(b)48時間;(c)72時間}における各温度条件のヒトiPS細胞凝集体のATP量経時測定の結果を図7-2に示す。
【0104】
ヒトiPS細胞凝集体の生存細胞数は、常温及び冷蔵条件において、静置24時間経過後の時点で、培養温度条件における生存細胞数に比べて顕著に減少することが確認された。このときの、細胞生存率(培養温度における生存細胞数に対する各条件における生存細胞数の比)を表5に示す。細胞生存率は、「A」=90%以上、「B」=80%以上且つ90%未満、「C」=50%以上且つ80%未満、「D」=50%未満、で表す。なお、括弧内の数値は、各細胞生存率の100%との差分を表す。
【0105】
【表5】
【0106】
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施態様は、腎細胞を保管又は輸送する方法において、前記腎細胞の凝集体を含む液体を、維持温度として、前記腎細胞の培養温度未満であり、且つ前記液体が凍結しない温度に管理する維持工程を含む方法である。これにより、細胞生存率が高く、腎臓の生理機能を維持されている腎細胞を、培養温度より低い温度で保管又は輸送できるという効果を奏する。
【0107】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、さらに、前記維持温度が、0℃以上37℃未満である方法である。これにより、細胞が高い細胞生存率を示すという効果が強化される。
【0108】
本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様において、さらに、凝集体1個中の細胞数が、125個以上10000個以下である方法である。これにより、凝集体サイズが均一となり、さらに、細胞が高い細胞生存率を示すという効果が強化される。
【0109】
本発明の第4の実施態様は、第1~第3の実施態様において、さらに、前記凝集体の直径が、100μm以上800μm以下である方法である。これにより、凝集体サイズが均一となり、さらに、細胞が高い細胞生存率を示すという効果が強化される。
【0110】
本発明の第5の実施態様は、第1~第4の実施態様において、さらに、前記凝集体の体積が、0.001mm以上0.300mm以下である方法である。これにより、凝集体サイズが均一となり、さらに、細胞が高い細胞生存率を示すという効果が強化される。
【0111】
本発明の第6の実施態様は、第1~第5の実施態様において、さらに、前記液体中の前記凝集体の数が1個である方法である。これにより、凝集体同士が接合してサイズが不均一となるリスクを低減するという効果を奏する。
【0112】
本発明の第7の実施態様は、第1~第6の実施態様において、さらに、前記液体に対する前記凝集体の体積比が、0.001%以上0.200%以下である方法である。これにより、保管又は輸送の際に液体が乾燥して凝集体が空気中に露出することを防ぐことができ、且つ、凝集体への酸素供給が十分に行われるという効果を奏する。
【0113】
本発明の第8の実施態様は、第1~第7の実施態様において、さらに、前記液体に対する前記凝集体の比重が、1.00以上1.20以下である方法である。これにより、凝集体が細胞外環境の変化に影響を受けにくくなるという効果を奏する。
【0114】
本発明の第9の実施態様は、第1~第8の実施態様において、さらに、前記腎細胞が、近位尿細管上皮細胞である方法である。これにより、腎細胞における薬物動態や、腎疾患に関する創薬研究に使用可能な凝集体が得られるという効果を奏する。
【0115】
本発明の第10の実施態様は、第1~第9の実施態様において、さらに、前記維持工程の維持期間が、前記腎細胞の前記培養温度における生存細胞数に対する、前記維持温度における生存細胞数の比である細胞生存率が所定値以上に維持できる維持可能期間以下であり、前記維持可能期間が以下の計算式から算出される方法である。
(維持可能期間(日))=A/{(培養温度(℃))-(維持温度(℃))}
A:前記所定値及び前記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
これにより、所望の維持温度及び細胞生存率に応じた、維持期間の上限値を算出することができるという効果を奏する。
【0116】
本発明の第11の実施態様は、第1~第9の実施態様において、さらに、前記維持温度が、前記腎細胞の前記培養温度における生存細胞数に対する、前記維持温度における生存細胞数の比である細胞生存率が所定値以上に維持できる維持可能温度以上であり、前記維持可能温度が以下の計算式から算出される方法である。
(維持期間(日))=A/{(培養温度(℃))―(維持可能温度(℃))}
A:前記所定値及び前記凝集体の細胞数に応じて定められる係数(日・℃)
これにより、所望の維持期間及び細胞生存率に応じた、維持温度の下限値を算出することができるという効果を奏する。
【0117】
本発明の第12の実施態様は、第10又は第11の実施態様において、さらに、前記所定値が90%、且つ前記凝集体の細胞数が1000個のとき、前記Aの値が34.5である方法である。これにより、凝集体の細胞数が1000個の場合、細胞生存率が90%以上となる、所望維持温度における維持可能期間及び所望維持期間における維持可能温度を算出できるという効果を奏する。
【0118】
本発明の第13の実施態様は、第10又は第11の実施態様において、さらに、前記所定値が80%、且つ前記凝集体の細胞数が1000個のとき、前記Aの値が69である方法である。これにより、凝集体の細胞数が1000個の場合、細胞生存率が80%以上となる、所望維持温度における維持可能期間及び所望維持期間における維持可能温度を算出できるという効果を奏する。
【0119】
本発明の第14の実施態様は、第1~第13の実施態様により得られた腎細胞である。これにより、細胞生存率が高く、腎臓の生理機能を維持されている腎細胞を得られるという効果を奏する。
【0120】
本発明の第15の実施態様は、第14の実施態様により得られた腎細胞を含む薬物評価系である。これにより、腎細胞における薬物動態や、腎疾患に関する創薬研究に使用可能な薬物評価系が得られるという効果を奏する。
【0121】
本発明の第16の実施態様は、第15の実施態様により得られた腎細胞を含む細胞製品である。これにより、腎細胞における薬物動態や、腎疾患に関する創薬研究に使用可能な細胞製品が得られるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、薬物評価系において使用し得る腎細胞凝集体の保管及び輸送に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
10 腎細胞保管システム、20 腎細胞保管装置、22 培養容器、24 液体、26 凝集体、30 温度管理装置、40 保管情報入力部、50 温度管理部、52 維持温度設定部、54 温度制御部、60 維持期間算出部、70 表示部

図1
図2
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