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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040944
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】機械学習を用いた操舵特性分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/06 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
G01M17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148169
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津久井 謙
(72)【発明者】
【氏名】高松 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小西 聖英
(72)【発明者】
【氏名】北村 佳彬
(72)【発明者】
【氏名】伊東 敏夫
(57)【要約】
【課題】車両の操舵特性を適切に分析する。
【解決手段】特性分析装置10は、操舵試験の試験条件と、操舵試験の特定区間で取得した、運転者の筋電位データを含む運転者の測定データと、運転者の官能評価の結果と、をデータセットとして学習したAIモデルと取得するAIモデル取得部と、評価対象の操舵試験の試験条件と、評価対象の車両の操舵試験を行う運転者の筋電位データを含む測定データを取得する入力部と、評価対象の車両の操舵試験の試験条件と運転者の応答データ及び脳波データとをAIモデルに入力して、評価対象の車両の操舵試験の官能評価を生成する特性情報生成部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する運転者が入力する操舵操作に対する車両の挙動を評価する特性分析装置であって、
操舵試験の試験条件と、操舵試験の特定区間で取得した、運転者の筋電位データを含む運転者の測定データと、前記運転者の官能評価の結果と、をデータセットとして学習したAIモデルを取得するAIモデル取得部と、
評価対象の車両の操舵試験の試験条件と、評価対象の車両の操舵試験を行う前記運転者の筋電位データを含む測定データを取得する入力部と、
評価対象の車両の操舵試験の試験条件と前記運転者の測定データとを前記AIモデルに入力して、評価対象の車両の操舵試験の官能評価を生成する特性情報生成部と、を含む機械学習を用いた操舵特性分析装置。
【請求項2】
前記測定データは、前記運転者の脳波データを含む請求項1に記載の機械学習を用いた操舵特性分析装置。
【請求項3】
操舵試験の試験条件と、前記運転者の測定データと、前記運転者の官能評価の結果と、を取得し、操舵試験の特定区間を設定し、各操舵試験のデータを作成するデータセット作成部と、
使用するAIモデルを決定し、前記データセット作成部で作成したデータセットで決定したAIモデルを学習させて、学習済みAIモデルを作成する学習部と、を備える請求項1または請求項2に記載の機械学習を用いた操舵特性分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習を用いた操舵特性分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の性能の評価対象として、運転者(ドライバ)が行った操作に対する車両の挙動を評価する操舵フィーリングがある。特許文献1には、ドライバの意図した操舵によって生じる第1の生体情報を検出する第1の生体情報検出手段と、ドライバの意図した操舵によって生じる第1の生体情報以外の第2の生体情報を検出する第2の生体情報検出手段と、第1の生体情報検出手段で検出された第1の生体情報に関連させて、第1の生体情報と共に、第2の生体情報検出手段で検出された第2の生体情報と、を収集する収集手段と、を備えた操舵感計測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-177079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操舵フィーリングは、運転者が運転した主観的な評価を官能評価として取得し、官能評価と取得した種々の情報とに基づいて、評価される。このため、試験対象の車両ごとに官能評価を取得する必要が生じる。また、官能評価は、運転者の主観的な評価であるため、評価基準が変動し、結果が変動する恐れがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操舵特性を適切に分析可能となり、車両の性能を評価できる、機械学習を用いた操舵特性分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る操舵特性分析装置は、操舵試験の試験条件と、操舵試験の特定区間で取得した、運転者の筋電位データを含む運転者の測定データと、運転者の官能評価の結果と、をデータセットとして学習したAIモデルと取得するAIモデル取得部と、評価対象の操舵試験の試験条件と、評価対象の車両の操舵試験を行う運転者の筋電位データを含む測定データを取得する入力部と、評価対象の車両の操舵試験の試験条件と運転者の応答データ及び脳波データとをAIモデルに入力して、評価対象の車両の操舵試験の官能評価を生成する特性情報生成部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の操舵特性を適切に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る特性分析装置の模式的なブロック図である。
図2図2は、操舵試験の走行経路の一例を示すための模式図である。
図3図3は、脳波の計測装置の一例を示すための模式図である。
図4図4は、AIモデルの概念的な模式図である。
図5図5は、データセットの一例を示すための模式図である。
図6図6は、特性分析装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図7図7は、特性分析装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図8図8は、特性分析装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図9図9は、計測データの一例を示すための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
本実施形態に係る特性分析装置(操舵特性分析装置)は、機械学習を用いて車両の操舵性能の特性を分析する。車両は、乗用車、トラック、バス、二輪車等、運転者が運転して移動する移動機構である。車両は、ステアリング等の運転者が移動方向を変更させる操舵操作を入力する機構を備える。特性分析装置は、運転者が入力した操舵操作に対して生じる車両の挙動を運転者がどう感じるかを分析する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る特性分析装置の模式的なブロック図である。特性分析装置10を備える試験システム1は、特性分析装置10と、試験条件データ取得部12と、計測データ取得部14と、官能評価データ取得部16と、を備える。試験システム1は、試験条件データ取得部12と、計測データ取得部14と、官能評価データ取得部16と、で、車両の操舵試験の情報を取得する。特性分析装置10は、試験条件データ取得部12、計測データ取得部14、官能評価データ取得部16と、接続し、各部からデータを取得する。
【0012】
図2は、操舵試験の走行経路の一例を示すための模式図である。試験システム1は、評価対象の車両を運転者(ドライバ)が運転して、テストコース100を走行する。テストコース100は、操舵操作を伴う経路が設定されており、運転者は、テストコース100を走行する際に操舵操作を入力し、走行時に感じた評価を行う。テストコース100は、一部の区間102が評価対象となる。
【0013】
試験条件データ取得部12は、操舵試験の試験条件のデータを取得する。試験条件データ取得部12は、通信やオペレータの入力により試験条件の情報を取得する。試験条件データ取得部12は、特定分析装置10と一体でもよい。試験条件は、車両の情報、テストコース100の情報、運転者の情報等である。車両の情報は、車両の車種、搭載している操舵装置の種類等の情報である。テストコース100の情報は、テストコースの位置、形状、気象条件等の情報である。運転者の情報は、運転者の識別情報(ID)等である。
【0014】
計測データ取得部14は、測定データとして、操舵試験時の運転者のデータと、車両のデータと、を取得する。つまり、計測データ取得部14は、テストコース100走行時の車両及び運転者の各種情報を取得する。走行時の車両のデータは、車両に入力された操舵の情報、アクセル、ブレーキ等の捜査情報、走行時の車両の各方向の加速度、速度の情報等である。運転者の情報は、運転者に装着した各種センサの情報である。操舵試験時の運転者の測定データは、操舵試験を行っている運転者から取得する各種反応を検出したデータであり、筋電位データ、脳波データを含む。計測データ取得部14は、運転者の測定データとして、腕、肩、首等の動作を検出する筋電位センサと、脳波を検出する脳波センサとで検出した情報を取得する。計測データ取得部14は、筋電位センサで、運転者の腕、肩、首等の動作を筋電位データとして取得する。計測データ取得部14は、脳波センサで、運転者の脳の各部の反応を脳波データとして取得する。
【0015】
図3は、脳波の計測装置の一例を示すための模式図である。計測データ取得部14は、図3に示す計測装置からデータを取得する。図3に示す計測装置は、運転者の頭部120に運転者の各部から出力される脳波を検出する検出端子122を複数備える。検出端子122は、運転者の脳の各位置の反応を脳波として検出する。計測装置は、検出した脳波と検出端子とを対応付けて記録し、計測データ取得部14に出力する。なお、脳波の計測データである脳波データの取得方法は、これに限定されず、運転者の脳の反応(脳波データ)を検出できる種々の方法を用いることができる。また、筋電位データ等、運転者の身体的な反応の計測データの取得方法も運転者の身体の反応を検出できる種々の方法を用いることができる。
【0016】
官能評価データ取得部16は、運転者が操舵試験で走行させた車両の評価結果を取得する。官能評価データ取得部16は、運転者または運転者から結果の情報を取得したオペレータが、評価結果を入力する端末である。官能評価データ取得部16は、特性分析装置10と一体でもよい。評価結果は、例えば、車両に対して感じた情報を10段階で評価した結果である。評価項目としては、車両挙動としてゲイン、繋がり、位相遅れ、ステアリングフィーリングとして中立明瞭さ、ビルトアップ感、フリクション感、粘性感、ばね感等が例示される。また、官能評価としては、好き嫌い、安心不安、軽い重い、狙い通り運転できる・できない等の評価を含めることができる。特性分析装置10は、複数の運転者について、同じ官能評価の項目についての評価結果を取得することで、それぞれの官能評価についてのデータセットを作成することができる。
【0017】
特性分析装置10は、操舵試験の結果に基づいて官能評価の結果を予測する学習済みAIモデルを作成し、学習済みAIモデルと、評価対象の操舵試験の結果に基づいて官能評価(特性)を推定する。
【0018】
特性分析装置10は、コンピュータであるともいえ、入力部70と、出力部72と、通信部74と、記憶部76と、制御部78とを備える。入力部70は、ユーザの操作(入力)を受け付けるユーザインターフェースであり、例えばマウスやキーボードなどであってよい。出力部72は、情報を出力する装置であり、例えばディスプレイなどであってよい。通信部74は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。特性分析装置10は、無線通信で外部の装置と通信を行うが、有線通信でもよく、通信方式は任意であってよい。
【0019】
記憶部76は、制御部78の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つを含む。記憶部76が記憶する制御部78用のプログラムは、特性分析装置10が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。また、記憶部76は、AI(Artificial Interigence)における学習モデルである、AIモデルNを記憶している。また、記憶部76は、AIモデルNの学習に用いるデータセット77を記憶する。
【0020】
図4は、AIモデルNの概念的な模式図である。AIモデルNは、重み係数及びバイアス値が学習されたモデルであるといえる。AIモデルNは、ディープラーニングによって学習された学習モデルであり、ディープラーニングによって学習された、ばね下スペクトログラムからばね上スペクトログラムを再構成するモデル(ニューラルネットワーク)と、変数とで構成される。ディープラーニングは、機械学習のうちの1つの手法であり、狭義には例えば4層以上のニューラルネットワークから構成される。本実施形態の例では、AIモデルNは、CNN(Conventional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)モデルであり、図4に示すように、例えば、複数の畳み込み層及び複数のプーリング層を含むエンコーダ層MN1及びデコーダ層MN2を備える。AIモデルNは、入力データINが入力された場合に、エンコーダ層MN1及びデコーダ層MN2で演算を行って、出力データONを出力する。
【0021】
図4に示すAIモデルは、一例であり、ニューラルネットワークモデル以外のモデルを用いてもよい。AIモデルは、教師あり学習であり回帰分析が可能な種々のモデル、解析方法を用いることができる。例えば、線形重回帰モデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、サポートベクターマシンモデルを用いることができる。
【0022】
図5は、データセットの一例を示すための模式図である。図5に示すデータセット220は、制御部78で作成され、記憶部76に記憶される。データセット220は、評価試験毎に、データのID(データNo)と、被験者(運転者)情報212、ESP仕様情報214と、官能評価点情報216と、計測データ特徴量データ218と、を対応付けて記憶している。ESP仕様情報214は、車両の情報でステアリングの性能を示す情報である。官能評価点情報216は、被験者が車両の走行結果を評価した結果のデータである。計測データ特徴量データ218は、操舵試験で被験者及び車両から取得したデータを加工した結果のデータである。
【0023】
制御部78は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部78は、データセット作成部79と、学習部80と、AIモデル取得部82と、測定データ取得部84と、データ加工部86と、特データ加工部88とを含む。制御部78は、記憶部76からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、データセット作成部79、学習部80とAIモデル取得部82と測定値取得部84とデータ加工部86と特性情報生成部88とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部78は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、データセット作成部79と学習部80とAIモデル取得部82と測定データ取得部84と測定値加工部86と特性情報生成部88との処理の少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0024】
(データセット作成部)
データセット作成部79は、試験条件データ取得部12と、計測データ取得部14と、官能評価データ取得部16で、取得したデータから同じ操舵試験のデータを抽出し、対応付け、それぞれのデータから必要な情報を抽出して、1つの走行データの試験条件と測定データと官能評価データとを対応付けたデータを作成する。データセット作成部79は、試験毎に上記処理を実行し、図5に示すデータセットを作成する。また、データセット作成部79は、計測データから、評価対象の区間を特定し、必要なデータを抽出する。さらに、抽出したデータを加工し、特徴量のデータとしてもよい。なお、データの加工処理の基準は、予め設定することが好ましい。
【0025】
(学習部)
学習部80は、学習前のAIモデルを機械学習させて、学習済みのAIモデルを生成する。学習部80は、データセット77のデータを読み込み、試験条件、計測データを入力とし、官能評価を出力として、AIモデルNに機械学習させる。ここで、出力とする官能評価は、オペレータが評価対象として設定してもよい。学習部80は、未学習のAIモデルを学習させて、学習済みのAIモデルを生成する。
【0026】
次に、AIモデル取得部82と、測定データ取得部84と、データ加工部86と、特性情報生成部88は、学習部80で生成した学習済みのAIモデルと、評価対象の試験の試験条件と計測データを用いて、官能評価を出力する処理を実行する。
【0027】
(AIモデル取得部)
AIモデル取得部82は、学習部80で生成した学習済みのAIモデルを取得する。AIモデル取得部82は、取得した学習済みAIモデルを特性情報生成部88に出力する。
【0028】
(測定データ取得部)
測定データ取得部84は、評価対象の試験のデータを試験条件データ取得部12と計測データ取得部14から取得する。
【0029】
(データ加工部)
データ加工部86は、測定データ取得部84で取得したデータを、AIモデルに入力可能なデータに加工する。データ加工部86は、データセット作成部79で、データを作成する際に、試験条件データ、測定データに行う加工と同じ加工を行う。一例としては、測定データから一部データの抽出処理や、測定データを特徴量に変換する処理である。データ加工部86は、学習部80で入力データに加工を行っている場合も、同様の加工を実行する。
【0030】
(特性情報生成部)
特性情報生成部88は、データ加工部86で加工したデータを、学習済みAIモデルに入力し、官能評価の推定値を生成する。特性情報生成部88は、生成した特性情報を、出力部72に出力させてもよいし、別の装置に出力(送信)してもよい。
【0031】
(処理フロー)
以上、説明した特性分析装置10の処理のフローを説明する。図6は、特性分析装置の処理フローを説明するフローチャートである。図6を用いて、学習済みAIモデルを用いた官能評価の推定処理方法について説明する。
【0032】
図6に示すように、特性分析装置10は、AIモデル取得部82により、学習済みのAIモデルを取得する(ステップS12)。次に、試験条件を決定する(ステップS14)。次に、決定した試験条件に基づいて試験を実行し、計測データを取得する(ステップS16)。試験は、運転者がテストコースを運転して行う。運転者が運転している際に、計測データ取得部14で、運転者の操作の情報や筋電位データ、脳波データを含む運転者の計測データを取得する。計測データ取得部14は、車両に装着したセンサからもデータを取得することができる。計測データ取得部14は、取得した計測データを特性分析装置10に供給する。特性分析装置10は、計測データ取得部14から取得した計測データを学習済みAIモデルで処理可能な状態に加工する。具体的には、特性分析装置10は、計測データを、学習済みAIモデルの作成時の入力データと同じフォーマットに加工する。
【0033】
次に、特性分析装置10は、計測データを学習済みAIモデルで解析し、解析結果を出力する(ステップS18)。つまり、特性分析装置10は、試験条件と加工した計測データを学習済みAIモデルに入力し、解析結果として、官能評価を出力する。
【0034】
次に、学習済みAIモデルの作成方法について説明する。図7及び図8は、特性分析装置の処理フローを説明するフローチャートである。まず、図7を用いて、データセットの作成方法について説明する。なお、データセットの元となる試験は、オペレータが試験条件等の処理を行い、運転者が運転して官能評価を行う。オペレータが試験条件を決定する(ステップS22)。試験条件は、設定可能な条件を入力し、特性分析装置10がランダムで決定してもよい。次に、試験システム1で決定した試験条件に基づいて、試験を実行する(ステップS24)。試験条件で決定した運転者が、試験条件の装置構成の車両を運転し、試験条件のテストコースを走行させる。試験システム1は、計測データ取得部14で計測データを取得する(ステップS26)。計測データ取得部14は、テストコースを走行する車両と車両の運転者に装着したセンサで取得したデータを取得する。
【0035】
次に、試験システム1は、官能評価取得部16で運転者の官能評価の情報を取得する(ステップS28)。
【0036】
次に、特性分析装置10は、データ加工部86で、測定データの抽出領域を特定する(ステップS32)。データ加工部86は、操舵試験で取得した計測データから、評価対象の走行区間を特定する。データ加工部86は、走行区間に対応するデータを抽出する。さらに、データ加工部86は、設定に基づいて抽出領域のデータを加工、例えば特徴量の抽出や、使用するパラメータの選定を行ってもよい。
【0037】
特性分析装置10は、抽出領域の測定データと試験条件と官能評価とを対応付けてデータセットに保存する(ステップS34)。試験システム1は、図7の処理を操舵試験毎に繰り返し、条件が異なる複数の試験について、試験条件と計測データと官能評価とを対応付けたデータセットを作成する。
【0038】
次に、図8を用いて、データセットを用いた学習処理の一例を説明する。特性分析装置10は、図7の処理で作成したデータセットを学習して、学習済みAIモデルを生成する。特性分析装置10は、データセットを取得する(ステップS42)。次に、特性分析装置10は、使用するAIモデルを選定する(ステップS44)。次に、特性分析装置10は、学習部80で学習を実行する(ステップS46)。つまり、学習部80は、データセットの試験条件、加工した測定データを入力とし、官能評価の結果を出力として、AIモデルに対する機械学習を行い、学習済みAIモデルを作成する。
【0039】
特性分析装置10は、AIモデルやデータセットを変更しつつ、複数の学習済みAIモデルを作成し、作成した学習済みAIモデルから、図6で使用する学習済みAIモデルを選定することで、高い精度で官能評価を出力できる学習済みAIモデルを作成できる。また、特性分析装置10は、試験条件毎、例えば、運転者が熟練者か一般的な技能を持つ人かで、データセットを分け、それぞれについて学習済みAIモデルを作成してもよい。また、官能評価の評価項目ごとに、学習済みAIモデルを作成してもよい。
【0040】
図9は、計測データの一例を示すための模式図である。図10から図12は、それぞれ、分析結果の一例を示すための模式図である。特性分析装置10は、図9に示すように、測定データとして、操舵角312、脳波314、筋電位316等の情報を取得する。なお、図9は、データの一例であり、脳波314、筋電位316は、複数箇所の情報を取得する。また、脳波、筋電位以外のデータも取得する。特性分析装置10は、操舵角312、脳波314、筋電位316から、特定領域322、324、326のデータを抽出する。特定領域322、324、326は、同じ時間帯のデータであり、操舵試験で運転者が操舵装置を操作している時間帯のデータである。特性分析装置10は、抽出したデータを解析して特徴量を算出し、データセットを作成する。
【0041】
特性分析装置10は、データセットを用いて、AIモデルに対する機械学習を行う。これにより、特性分析装置10は、測定データのパラメータのそれぞれについて、官能評価に対する影響度を評価して、測定データのパラメータの官能評価に対する影響度を調整した学習済みAIモデルを作成する。
【0042】
(効果)
以上説明したように、特性分析装置10は、筋電位データを含む計測データと試験条件データを学習済みのAIモデルに入力することで、官能評価を算出することができる。特性分析装置10は、測定データから官能評価を推定できることで、運転者が官能評価を行う手間を低減することができる。また、データセットで取得した情報に基づいて、官能評価を行うことで、運転者の試験時の状況による変動が生じて官能評価の結果が変化することを抑制できる。つまり、運転者のその日の体調や気分で官能評価の結果が変動することを抑制でき、筋電位データという物理量に基づいた官能評価を行うことができる。また、異なる車両、操舵装置の試験を行う場合も、測定データに基づいて、官能評価を推定することができる。
【0043】
また、特性分析装置10は、運転者の測定データに脳波データを含めることで、運転者が操舵試験時に感じた情報を脳波データで取得することができる。これにより、測定データとして運転者の筋電位データに加え、運転者が感じた情報となる脳波データに基づいて官能評価を出力することができ、官能評価の推定の精度をより高くすることができる。
【0044】
また、特性分析装置10は、機械学習を用いて学習済みAIモデルを作成することで、運転者、車両に装着した複数のセンサの検出結果(脳波データ、筋電位データ)の多数のパラメータに基づいた学習を効率よく実行し、測定データから官能評価を高い精度で推定できる。
【0045】
また、特性分析装置10は、測定データを加工し、抽出領域の特徴量を算出することで、操舵試験の官能評価を高い精度で推定することができる。
【0046】
また、学習には、サポートベクターマシンのモデルを用いることが好ましい。これにより、測定データのパラメータの影響度を効率よく評価することができ、官能評価の推定精度を高くすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 試験システム
10 特性分析装置
12 試験条件データ取得部
14 計測データ取得部
16 官能評価取得部
70 入力部
72 出力部
74 通信部
76 記憶部
77 データセット
78 制御部
79 データセット作成部
80 学習部
82 AIモデル取得部
84 測定データ取得部
86 データ加工部
88 特性情報生成部
N AIモデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9