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  • 特開-アレイ型超音波送受信装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004096
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】アレイ型超音波送受信装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
G01N29/265
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105595
(22)【出願日】2021-06-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】北見 薫
(72)【発明者】
【氏名】郡司 浩行
(72)【発明者】
【氏名】黛 高明
(72)【発明者】
【氏名】宮部 昇三
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 巖
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC10
2G047BA03
2G047BB06
2G047BC07
2G047DB02
2G047DB03
2G047DB12
2G047EA09
2G047GB02
2G047GB17
2G047GB25
2G047GE02
2G047GF17
2G047GF18
2G047GF31
2G047GH06
2G047GH14
(57)【要約】
【課題】検査時間を短縮した超音波送受信装置を提供する。
【解決手段】本発明の直線状に配置した複数の超音波振動子を有するアレイプローブ4を備えたアレイ型超音波送受信装置1は、被検体の上方の被検体と平行な走査平面において、超音波振動子の配置方向を走査平面のY軸方向、配置方向と垂直な方向を走査平面のX軸方向とし、予め設定された走査条件に基づいて、静止することなくX軸方向にアレイプローブを移動し、アレイプローブが、X軸方向の移動中に、被検体の複数の照射点に超音波ビームを順次送信しその反射波を受信する電子スキャンを行う。
【選択図】 図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配置した複数の超音波振動子を有するアレイプローブを備えたアレイ型超音波送受信装置であって、
被検体の上方の前記被検体と平行な走査平面において、前記超音波振動子の配置方向を前記走査平面のY軸方向、前記配置方向と垂直な方向を前記走査平面のX軸方向とし、
予め設定された走査条件に基づいて、静止することなくX軸方向に前記アレイプローブを移動し、
前記アレイプローブが、X軸方向の移動中に、前記被検体の複数の照射点に超音波ビームを順次送信しその反射波を受信する電子スキャンを行う
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記電子スキャンの開始時の前記アレイプローブの位置のX座標をXとしたとき、
前記Xから、次の電子スキャンの開始時の前記アレイプローブの位置のX座標であるXk―1又はXk+1までの前記アレイプローブの移動速度Vを前記走査条件とする
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記Xから、次の電子スキャンの開始時の前記アレイプローブの位置のX座標であるXk―1又はXk+1までの移動時間Tを、前記電子スキャンの複数の照射点における送受信時間の和であるスキャン時間Tに等しく設定し、
前記移動時間Tと、前記Xから前記Xk―1又はXk+1までの前記アレイプローブの移動距離Dと、から前記移動速度Vを求める
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項4】
請求項2に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記移動速度Vは、前記アレイプローブが前記X軸方向に移動するときに、前記超音波ビーム及び/又は前記反射波の進行に影響を与えるゆらぎや気泡などの外乱要因が生じない範囲内の最大速度である
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項5】
請求項1に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記被検体に超音波ビームを照射する最初の電子スキャンの開始時における前記アレイプローブの位置を前記アレイプローブの走査平面の原点とし、
Y軸方向において、電子スキャンの開始時のアレイプローブの位置のY座標をYとしたとき、移動による前記アレイプローブの次のY軸方向のY座標Yl+1は、Yに電子スキャンの走査幅を加算した値の位置とし、
前記原点から離間する方向に移動するときには前記アレイプローブはX座標がXからXk+1の位置に移動し、前記原点に接近する方向に移動するときには前記アレイプローブはX座標がXからXk―1の位置に移動する
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
電子スキャンを行いながらアレイプローブをX軸方向にX座標がXからXk+1に移動する動作と、X軸方向の移動終端でアレイプローブをY軸方向にY座標がYからYl+1に移動する動作と、から成る往動スキャン動作と、
電子スキャンを行いながらアレイプローブをX軸方向にX座標がXからXk―1に移動する動作と、X軸方向の移動終端でアレイプローブをY軸方向にY座標がYからYl+1に移動する動作と、から成る復動スキャン動作と、
を交互に繰り返して前記走査平面を電子スキャンする
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ型超音波送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体などの被検体に超音波を照射して、その反射波に基づいて被検体内部の画像情報を生成し、被検体内部の欠陥を検出する超音波送受信装置がある。この超音波送受信装置によれば、非破壊による高分解能検査を行うことができ、電子部品の信頼性を確保できる。
【0003】
近年の半導体ウェハの高密度実装化に伴う検査時間の短縮が求められている。これを実現するためには、超音波の送受信処理の短縮が必須になっている。
【0004】
このため、直線状に配置された複数の超音波振動子で構成し、これらの超音波振動子を電子走査(電子スキャン)するアレイプローブを使用する超音波検査装置が考案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
この超音波検査装置では、アレイプローブを静止した状態で一度の電子スキャンで所定幅をスキャンする構成となっている。詳しくは、シングルプローブが、ひとつ超音波振動子により処理をするのに対して、アレイプローブを構成する複数の超音波振動子により電子スキャン処理を行うことにより、高速処理を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-177056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の先行技術では、アレイプローブが静止した状態における電子スキャン処理を終了したら、次の検査位置に移動し、再びアレイプローブを静止して電子スキャン処理を行う方法が開示されている。つまり、電子スキャンするときには、アレイプローブが静止している方法である。
【0008】
詳しくは、ある検査位置において超音波を送信し、次の検査位置で超音波を送信するまでに要する時間は、電子スキャンの時間とプローブの移動時間の和の時間となる。
超音波送受信装置における検査時間の短縮のため、さらなる高速処理が必要になっている。
【0009】
本発明の目的は、検査時間を短縮した超音波送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明のアレイ型超音波送受信装置は、直線状に配置した複数の超音波振動子を有するアレイプローブを備えたアレイ型超音波送受信装置であって、被検体の上方の前記被検体と平行な走査平面において、前記超音波振動子の配置方向を前記走査平面のY軸方向、前記配置方向と垂直な方向を前記走査平面のX軸方向とし、予め設定された走査条件に基づいて、静止することなくX軸方向に前記アレイプローブを移動し、前記アレイプローブが、X軸方向の移動中に、前記被検体の複数の照射点に超音波ビームを順次送信しその反射波を受信する電子スキャンを行うようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波送受信装置の検査時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の超音波送受信装置の全体構成を示す図である。
図2】超音波送受信装置におけるプローブの平面走査の動作内容を説明する図である。
図3A】プローブの超音波ビームの照射点について説明する図である。
図3B】プローブの平面走査における超音波ビームの照射点の位置を示す図である。
図4】スキャナ制御部がプローブを平面走査する座標系を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態の超音波送受信装置の全体構成を示す図である。
【0014】
超音波送受信装置1は、3軸スキャナ2(走査手段)と、超音波アレイプローブ(以下、プローブと記す)を備えている。この3軸スキャナ2は、平面状の被検体8に対してプローブ4をX軸方向とY軸方向の二次元で走査(平面走査)する。これにより超音波送受信装置1は、平面状の被検体8を超音波によって映像化することができる。
【0015】
プローブ4は、多数の振動子を短冊状に並べたフェイズドアレイ超音波プローブ(超音波アレイプローブ)である。詳しくは、多数の振動子における一部の複数の振動子(振動子群)のそれぞれの発振タイミングを制御して超音波収束ビーム(超音波ビーム)を作り、振動子群を電子的に切り替えていくことで、照射位置を変えて超音波ビームを照射し、被検体8を一次元走査する。本明細書では、フェイズドアレイ超音波プローブによる電子的な超音波ビームの走査を電子スキャンと記す。
超音波ビームの反射波の受信制御も、振動子群を制御して行う。
【0016】
また、プローブ4が、単一の振動子から発生した超音波を音響レンズで集束して被検体に照射し、この振動子を短冊状に複数個構成されるようにしてもよい。この構成でも、振動子を電子的に切り替えていくことで、超音波ビームの照射位置を変えて、被検体8の電子スキャンを行う。
【0017】
プローブ4は、水槽91に満たされた水に浸漬され、プローブ4の先端が被検体8に対向するように配置される。プローブ4は、ホルダ24により3軸スキャナ2に取り付けられている。
水槽91は、台92の上に載置される。
【0018】
この3軸スキャナ2は、プローブ4を二次元で走査する際に、内蔵する位置変化を検出するエンコーダにより検出した直線位置又は回転位置(角度位置)に基づいて、その走査位置を検出する。これにより、超音波映像装置1は、被検体8の各走査位置(走査点)とエコー波との関係を二次元で映像化することができる。
【0019】
3軸スキャナ2は、プローブ4を走査するX軸スキャナ21及びY軸スキャナ22と、プローブ4と被検体8との間隔を可変するZ軸スキャナ23と、プローブ4を把持するホルダ24とを備える。
また、プローブ4は、検査前に台92によって高さが調整されると共に、Z軸スキャナ23により被検体8との間隔が調整される。
【0020】
プロ―プ4は、複数の振動子がリニアに並設された方向に垂直な方向(以下、この方向をX軸方向と呼ぶ)に、3軸スキャナ2のX軸スキャナ21により所定速度で連続移動(スキャン動作)され、つまり、静止することなくX軸方向にプローブ4を移動し、その後、3軸スキャナ2のY軸スキャナ22により、複数の振動子の並設方向と並行に、電子スキャンの走査幅分の移動(シフト動作)が行われる。
【0021】
このホルダ24は、プローブ4の上部に設けられた鍔部42を支え、このプローブ4に上向きの力が加わったときにスムーズに上方向に動くようにしている。ホルダ24にはセンサ3が設けられており、プローブ4が上方向に動いたことを検知する。
【0022】
制御装置10は、制御部18、送受信指令部12、振動子動作信号生成部14、反射波信号処理部15、反射波画像生成部16と表示部17を備え、3軸スキャナ2の制御、プローブ4の送受信制御と被検体8からのエコー波の表示制御とを行う。
【0023】
メカ制御部11は、後述する走査条件に従い、X軸スキャナ21及びY軸スキャナ22が内蔵するエンコーダ出力に基づいて、X軸スキャナ21及びY軸スキャナ22を駆動し、プローブ4が被検体8の上方の被検体8と平行な走査平面を移動するための制御部である。
【0024】
送受信指令部12は、振動子動作信号生成部14に振動子動作信号の生成を指令し、プローブ4の電子スキャンを開始する制御部である。
【0025】
振動子動作信号生成部14は、送受信指令部12で選択された振動子群と走査順序とに従って振動子動作信号を生成し、走査点毎に、プロ―プ4に送信する。
プローブ4は、振動子動作信号生成部14の振動子動作信号により超音波ビームを照射する。
【0026】
反射波信号処理部15は、走査点毎に、プローブ4から超音波ビームの反射波の信号を受信し、測定する被検体8の深度に対応するゲートを設けてゲート処理することによって反射波の変位(振幅)を求め、その変位によって信号強度を算出する。
【0027】
反射波画像生成部16は、反射波信号処理部15で算出した走査点毎の反射波の信号強度を、例えば、0~255の階調度に変換する。被検体8と水槽91の水との境界や被検体8の内部の材料境界・剥離部・ボイド部等の音響インピーダンス(密度)が変わる境界面では、超音波ビームの反射波が生じる。反射波画像生成部16は、超音波ビームの反射波が無い点を階調度が0、反射波の信号強度が大きくなるほど、階調度を大きくする。
【0028】
表示部17は、反射波画像生成部16で求めた超音波ビームの反射波の信号強度を、被検体8の平面走査した濃淡画像として表示する。具体的には、階調度が0の場合には黒色を表示し、階調度が最大値の場合に白色を表示し、階調度が中間値の場合には階調度に応じて灰色を表示する。
これにより、超音波送受信装置1は、平面走査した被検体8の空洞(周囲と密度の差が大きい)を白い画像として表示する。
【0029】
制御部18は、メカ制御部11を制御すると共に、メカ制御部11から通知されるX軸スキャナ21のエンコーダ出力に同期して、送受信指令部12を制御する。つまり、制御部18は、プローブ4のスキャン動作に同期して電子スキャンを開始する。これにより、プローブ4の電子スキャンによる被検体8のX軸方向の走査ピッチは、X軸スキャナ21のエンコーダ出力のピッチに等しくなる。
【0030】
次に、図2により、超音波送受信装置1におけるプローブ4の平面走査の動作内容を説明する。
プローブ4は、例えば、192個の振動子がリニアに並設されて構成されるが、図2には、プローブ4が、振動子a、b、c、d、e、f、gの7個の振動子で構成される場合を示している。
【0031】
超音波送受信装置1は、被検体8の設定された位置を走査の原点(図2の走査エリアの左上)とし、走査エリアの大きさが指定されて、プローブ4の平面走査を行う。
まず、プローブ4の電子スキャンの開始点が平面走査の原点に位置するように、3軸スキャナ2を駆動して、プローブ4を移動する。詳しくは、電子スキャンはプローブ4の移動中に行うため、プローブ4が電子スキャンの開始点を通過する際の移動速度が所定値になるように、助走分を含めて移動する。
【0032】
平面走査の原点で、プローブ4は、振動子a、b、c、d、e、f、gによる電子スキャンを行うと共に、3軸スキャナ2のX軸スキャナ21により、振動子の並設方向に垂直な方向に移動する。そして、プローブ4は、X軸スキャナ21のエンコーダ出力に同期して、次の電子スキャンを行う。プローブ4は、これを走査エリアの幅分(X軸方向の大きさ分)、繰り返す。
【0033】
プローブ4が、上記のようにして、静止することなくX軸方向のプローブ4の連続移動(スキャン動作1)をしながら、電子スキャンを繰り返して、Y軸方向の長さが電子スキャンの走査幅分で、X軸方向の長さが設定された走査エリアの幅分の帯状の走査エリアに超音波ビームを照射し、被検体8からの反射波を検出する。
【0034】
この際、制御装置10は、プローブ4の一回の電子スキャンで検出した被検体8からの反射波を、X軸方向の位置(走査列)が同一の超音波ビームの反射波として、反射波の信号強度を算出し、濃淡画像として表示する。
【0035】
次に、プローブ4は、3軸スキャナ2のY軸スキャナ22により、複数の振動子の並設方向と並行に、電子スキャンの走査幅分の移動(シフト動作)を行う。そして、プローブ4の電子スキャンの開始点が、上記のスキャン動作1の最後の電子スキャンの開始点と同一のX軸方向の位置になるように、X軸スキャナ21によりプローブ4を移動する。
【0036】
プローブ4は、振動子a、b、c、d、e、f、gによる電子スキャンを行うと共に、3軸スキャナ2のX軸スキャナ21により、スキャン動作1とは逆方向の振動子の並設方向に垂直な方向に移動する。そして、プローブ4は、X軸スキャナ21のエンコーダ出力に同期して、次の電子スキャンを行う。プローブ4は、これを走査エリアの幅分(X軸方向の大きさ分)、繰り返す。
【0037】
プローブ4が、上記のようにして、X軸方向のプローブ4の連続移動(スキャン動作2)をしながら、電子スキャンを繰り返して、Y軸方向の長さが電子スキャンの走査幅分で、X軸方向の長さが設定された走査エリアの幅分の帯状の走査エリアに超音波ビームを照射し、被検体8からの反射波を検出する。
【0038】
制御装置10は、上記のプローブ4のスキャン動作1とスキャン動作2により、指定された走査エリアをカバーできれば、平面走査を終了するが、不足の場合には、プローブ4を電子スキャンの走査幅分のシフト動作をして移動し、先の動作と同様の、電子スキャンすると共にスキャン動作3・シフト動作・スキャン動作4を行う。
制御装置10は、指定された走査エリアをカバーするまで上記の動作を繰り返して、被検体8の平面走査を行う。
【0039】
本明細書では、プローブ4のスキャン動作1、スキャン動作3…を往動スキャン動作と記し、プローブ4のスキャン動作2、スキャン動作4…を復動スキャン動作と記す。
【0040】
プローブ4は、上記のスキャン動作1、2、3、4で、連続移動しながら、電子スキャンを行うため、詳細には、超音波ビームの照射タイミングによって、超音波ビームの照射点のX軸方向の位置にずれが生じる。次に、超音波ビームの照射タイミングと照射点の関係について説明する。
【0041】
図3Aは、プローブ4の超音波ビームの照射点について説明する図である。
照射点a、b、c、d、e、f、gは、プローブ4の振動子a、b、c、d、e、f、gの電子スキャンによる超音波ビームの照射点である。特に、照射点aは、走査エリアの原点に対応する照射点であり、またスキャン動作の際に、X軸スキャナ21のエンコーダ出力に同期した電子スキャンの最初の超音波ビームの照射点である。
【0042】
プローブ4の電子スキャンは、スキャン動作の連続移動中に行う。図3Aの実線の矩形は、最初に超音波ビームを照射する際のプローブ4の位置、破線の矩形は、最後に超音波ビームを照射する際のプローブ4の位置を示している。
プローブ4では、照射点aからプローブ4の他端に向けて順に超音波ビームを照射する。このため、照射点b、c、d、e、f、gは、スキャン方向に少しずつずれた位置となる。
【0043】
図3Bは、プローブ4のスキャン動作1とスキャン動作2の平面走査における超音波ビームの照射点の位置を示す図である。
プローブ4の照射点aは、X軸スキャナ21のエンコーダ出力に同期して電子スキャンが行われるため、スキャン動作1とスキャン動作2とで、X軸方向の位置が一致する。しかし、照射点b、c、d、e、f、gは、スキャン方向に応じて少しずつずれた位置となる。
【0044】
次に、制御装置10のプローブ4の平面走査の処理を詳細に説明する。
図4は、制御装置10がプローブ4を平面走査する制御座標系を説明する図である。
【0045】
メカ制御部11は、プローブ4の超音波振動子の配置方向と垂直な方向を走査平面のX軸方向、超音波振動子の配置方向を走査平面のY軸方向とし、被検体8に超音波ビームを照射する最初の電子スキャンの開始時におけるプローブ4の位置を走査平面の原点とする座標系を定める。
座標(X、Y)は、プローブ4の電子スキャン毎の照射点a(電子スキャンの最初の照射点)に超音波ビームを照射する際のプローブ4の位置とする。以下、電子スキャン毎の照射点aの位置が、プローブ4の位置を代表する。
【0046】
座標の添え字kは、超音波ビームの照射点のX軸方向の照射点を示す番号であり、0からnのいずれかの値となる。X座標、X座標は、プローブ4のX軸方向の移動の端部の位置を示し、n+1は、走査平面のX軸方向の照射点数を示す。
座標の添え字lは、超音波ビームの照射点のY軸方向の照射点を示す番号であり、0からmのいずれかの値となる。Y座標、Y座標は、プローブ4のY軸方向の移動の端部の位置を示し、m+1は、走査平面のY軸方向の照射点数を示す。
【0047】
nは、平面走査する領域(走査エリア)のX軸方向の長さを、超音波送受信装置1の分解能の半分で除して求める。つまり、nは、走査エリアのX軸方向の長さを、X座標間の距離である移動距離Dmで除した値となる。
また、mは、平面走査する領域(走査エリア)のY軸方向の長さを、プローブ4の電子スキャンの走査幅で除して求める。
【0048】
以上のように、メカ制御部11は、被検体8に超音波ビームを照射する最初の電子スキャンの開始時におけるプローブ4の位置を走査平面の原点とし、Y軸方向において、電子スキャンの開始時のプローブ4の位置のY座標をYとしたとき、移動によるプローブ4の次のY軸方向の位置Yl+1は、Yに電子スキャンの走査幅を加算した位置とし、X軸方向において、電子スキャンの開始時のプローブ4の位置のX座標をXとする制御座標系を定める。
【0049】
そして、図2図3Bとで説明したスキャン動作1又はスキャン動作3におけるプローブ4の移動制御、つまり、原点から離間する方向にプローブ4を移動するときには、メカ制御部11は、X軸スキャナ21により、プローブ4を座標(X、Y)から座標(Xk+1、Y)に連続移動する(kは0からn)。また、スキャン動作2又はスキャン動作4におけるプローブ4の移動制御、つまり、原点に接近する方向にプローブ4を移動するときには、メカ制御部11は、X軸スキャナ21により、プローブ4を座標(X、Y)から座標(Xk―1、Y)に連続移動する(kはnから0)。
【0050】
プローブ4の座標(X、Y)から座標(Xk+1、Y)への移動速度V、及び座標(X、Y)から座標(Xk―1、Y)への移動速度Vは、X座標間の距離である移動距離Dmを、座標(X、Y)から座標(Xk+1、Y)への移動時間T、又は座標(X、Y)から座標(Xk―1、Y)への移動時間Tで除して求める。
移動時間Tは、プローブ4のX軸方向の移動中に1回当たりの電子スキャンを行えるように、電子スキャンの複数の照射点における送受信時間の和であるスキャン時間Tsに等しく設定する。
これにより、本発明においては、X座標において電子スキャンを開始し、当該電子スキャンが終了して次のXk+1座標において電子スキャン処理を開始するときには、アレイプローブの最初の振動子はすでにXk+1座標に位置することとなる。公知技術のように、一電子スキャン終了後にX座標からXk+1座標に移動するために要する時間は0となる。
【0051】
また、プローブ4が移動すると、浸漬する水にゆらぎや気泡が生じて、超音波ビーム及び/又は反射波の進行に影響を与えることがある。このため、プローブ4の移動速度Vは、水のゆらぎや気泡などの外乱要因が生じない範囲の最大速度(Vmax)以下でなければならない。
【0052】
具体的には、水中の音速を1500m/秒、プローブ4の振動子から被検体の検査面までの距離を10mm、プローブ4の振動子数を192とすると、1回当たりの電子スキャンのスキャン時間は、0.0025536秒となる。0.4mmの欠陥を抽出する解像度を得ようとした場合、移動距離Dmは0.2mmで設定することとなり、移動速度Vは移動距離Dmと移動時間T(=Ts)との関係から78.320802mm/秒となる。移動速度の最大値(Vmax)は、これまでの実験結果から300mm/秒であり、移動速度VはVmax以内であるため、水のゆらぎや気泡などの外乱要因が生じない。
【0053】
メカ制御部11は、この移動速度Vを走査条件として記憶する。そして、メカ制御部11は、X軸スキャナ21のエンコーダ出力によりX座標を管理し、移動速度Vでプローブ4を移動する。
【0054】
メカ制御部11は、X軸方向の移動の終端では、座標(Xk+1、Y)から座標(Xk+1、Yl+1)、又は座標(Xk-1、Y)から座標(Xk-1、Yl+1)にY軸スキャナ22を駆動して、プローブ4のY軸方向移動を行う。
【0055】
以上のようにして、超音波送受信装置1は、プローブ4の電子スキャンを行いながらプローブ4をX軸方向にX座標がXからXk+1に移動する動作と、X軸方向の移動終端でプローブ4をY軸方向にY座標がYからYl+1に移動する動作と、から成る往動スキャン動作と、電子スキャンを行いながらプローブ4をX軸方向にX座標がXからXk―1に移動する動作と、X軸方向の移動終端でプローブ4をY軸方向にY座標がYからYl+1に移動する動作と、から成る復動スキャン動作と、を交互に繰り返して走査平面を電子スキャンする。
【0056】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 超音波送受信装置
10 制御装置
11 メカ制御部
12 送受信指令部
14 振動子動作信号生成部
15 反射波信号処理部
16 反射波画像生成部
17 表示部
18 制御部
2 3軸スキャナ
21 X軸スキャナ
22 Y軸スキャナ
23 Z軸スキャナ
24 ホルダ
3 センサ
4 プロ―ブ(アレイプローブ)
42 鍔部
8 被検体
91 水槽
92 台
図1
図2
図3A
図3B
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配置した複数の超音波振動子を有するアレイプローブを備えたアレイ型超音波送受信装置であって、
被検体の上方の前記被検体と平行な走査平面において、前記超音波振動子の配置方向を前記走査平面のY軸方向、前記配置方向と垂直な方向を前記走査平面のX軸方向とし、
予め設定された走査条件に基づいて、静止することなくX軸方向に前記アレイプローブを移動し、
前記アレイプローブが、X軸方向の移動中に、前記被検体の複数の照射点に超音波ビームを順次送信しその反射波を受信する電子スキャンを行うアレイ型超音波送受信装置において、
前記被検体に超音波ビームを照射する最初の電子スキャンの開始時における前記アレイプローブの位置を前記アレイプローブの走査平面の原点とし、
Y軸方向において、電子スキャンの開始時のアレイプローブの位置のY座標をY としたとき、移動による前記アレイプローブの次のY軸方向のY座標Y l+1 は、Y に電子スキャンの走査幅を加算した値の位置としたときに、
前記原点から離間する方向に移動するときには前記アレイプローブはX座標がX からX k+1 の位置に移動し、前記原点に接近する方向に移動するときには前記アレイプローブはX座標がX からX k―1 の位置に移動し、
電子スキャンを行いながらアレイプローブをX軸方向にX座標がX からX k+1 に移動する動作と、X軸方向の移動終端でアレイプローブをY軸方向にY座標がY からY l+1 となるように電子スキャンの走査幅分を移動する動作と、から成る往動スキャン動作と、
電子スキャンを行いながらアレイプローブをX軸方向にX座標がX からX k―1 に移動する動作と、X軸方向の移動終端でアレイプローブをY軸方向にY座標がY からY l+1 となるように電子スキャンの走査幅分を移動する動作と、から成る復動スキャン動作と、
を交互に繰り返して前記走査平面を電子スキャンする
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記電子スキャンの開始時の前記アレイプローブの位置のX座標をXとしたとき、
前記Xから、次の電子スキャンの開始時の前記アレイプローブの位置のX座標であるXk―1又はXk+1までの前記アレイプローブの移動速度Vを前記走査条件とする
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記Xから、次の電子スキャンの開始時の前記アレイプローブの位置のX座標であるXk―1又はXk+1までの移動時間Tを、前記電子スキャンの複数の照射点における送受信時間の和であるスキャン時間Tに等しく設定し、
前記移動時間Tと、前記Xから前記Xk―1又はXk+1までの前記アレイプローブの移動距離Dと、から前記移動速度Vを求める
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【請求項4】
請求項2に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記移動速度Vは、前記アレイプローブが前記X軸方向に移動するときに、前記超音波ビーム及び/又は前記反射波の進行に影響を与えるゆらぎや気泡などの外乱要因が生じない範囲内の最大速度(300mm/秒)である
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明のアレイ型超音波送受信装置は、直線状に配置した複数の超音波振動子を有するアレイプローブを備えたアレイ型超音波送受信装置であって、被検体の上方の前記被検体と平行な走査平面において、前記超音波振動子の配置方向を前記走査平面のY軸方向、前記配置方向と垂直な方向を前記走査平面のX軸方向とし、予め設定された走査条件に基づいて、静止することなくX軸方向に前記アレイプローブを移動し、前記アレイプローブが、X軸方向の移動中に、前記被検体の複数の照射点に超音波ビームを順次送信しその反射波を受信する電子スキャンを行うアレイ型超音波送受信装置において、前記被検体に超音波ビームを照射する最初の電子スキャンの開始時における前記アレイプローブの位置を前記アレイプローブの走査平面の原点とし、Y軸方向において、電子スキャンの開始時のアレイプローブの位置のY座標をY としたとき、移動による前記アレイプローブの次のY軸方向のY座標Y l+1 は、Y に電子スキャンの走査幅を加算した値の位置としたときに、前記原点から離間する方向に移動するときには前記アレイプローブはX座標がX からX k+1 の位置に移動し、前記原点に接近する方向に移動するときには前記アレイプローブはX座標がX からX k―1 の位置に移動し、電子スキャンを行いながらアレイプローブをX軸方向にX座標がX からX k+1 に移動する動作と、X軸方向の移動終端でアレイプローブをY軸方向にY座標がY からY l+1 となるように電子スキャンの走査幅分を移動する動作と、から成る往動スキャン動作と、電子スキャンを行いながらアレイプローブをX軸方向にX座標がX からX k―1 に移動する動作と、X軸方向の移動終端でアレイプローブをY軸方向にY座標がY からY l+1 となるように電子スキャンの走査幅分を移動する動作と、から成る復動スキャン動作と、を交互に繰り返して前記走査平面を電子スキャンするようにした。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
請求項2に記載のアレイ型超音波送受信装置において、
前記移動速度Vは、前記アレイプローブが前記X軸方向に移動するときに、前記超音波ビーム及び/又は前記反射波の進行に影響を与えるゆらぎや気泡の外乱要因が生じない範囲内の最大速度(300mm/秒)である
ことを特徴とするアレイ型超音波送受信装置。