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  • 特開-空気調和機の熱交換器。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004097
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】空気調和機の熱交換器。
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20230110BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20230110BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F3/044
F24F7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105597
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】390003333
【氏名又は名称】新晃工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】田地野 勝己
【テーマコード(参考)】
3L053
3L058
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L053BB05
3L058BE08
(57)【要約】
【課題】
1つの熱交換器で湿度を調節する再熱機能を備え空調環境を形成する空気調和機の熱交換器に関する。
【解決手段】
複数列のコイルからなる冷却用の1つの熱交換器において、一部の領域は複数列のコイルの大部分を冷水が通水して過冷却処理(潜熱処理)ゾーンを形成し、他の一部の領域はコイルの1列或いは数列に冷水を通水するが実質的に過冷却のない顕熱処理ゾーンを形成し、上流からの空気を上記過冷却処理(顕熱処理)ゾーンと顕熱処理ゾーンとに分けて通過させた後に再び混合する再熱機能を備えた空気調和機の熱交換器。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列のコイルからなる冷却用の1つの熱交換器において、
一部の領域は複数列のコイルの大部分を冷水が通水して過冷却処理ゾーンを形成し、他の一部の領域はコイルの1列或いは数列に冷水が通水するが実質的に過冷却のない顕熱処理ゾーンを形成し、
上流からの空気を上記過冷却処理ゾーンと顕熱処理ゾーンとに分けて通過させた後に再び混合して下流に供給することを特徴とする空気調和機の熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換器は4列16段のコイルを配置したもので、前記過冷却処理ゾーンは4列10段のコイル主管すべてに導通すると共に下部に露結による水を除去する排水装置を設け、前記顕熱処理ゾーンは1列6段のコイル主管に導通したことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居室内を適正な温度及び湿度に保つ空調環境を形成する空気調和機の熱交換器であって、1つの熱交換器で過冷却処理(潜熱処理)と顕熱処理をする機能を備えた空気調和機の熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機で冷房する際に、絶対湿度はそのままであると、室内相対湿度は上がってしまうので、一旦露点温度以下まで下げ結露させて絶対湿度を下げてから、再熱器で温度を上げて目標温度にし、居室内を適正な温度及び湿度に保つ空調環境を形成することがなされている。
これを図1で説明すると、空調器Uは、外気吸入口a、還気取入口b、フィルターc、冷却コイルd、再熱器e、加湿器f、ファンg、給気口hの順に配置され、外気OAと還気RAの混合空気は冷却コイルdで過冷却し、過冷却された空気を再熱器eで設定温度に戻し給気SAとして居室に供給する。これを空気線図で示すと図2のようになる。この際、再熱器は外部の温水等の熱源を利用する。
ところで、省エネのため再熱器の熱源に外気を利用することは、特許文献1に開示されている。しかし、特許文献1の図3図4に図示される外気供給部にはファン等を備えければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-80886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の空気調和機は、再熱器として別途熱交換器eが必要であり、さらにその熱交換器の熱源が必要となるが、前掲特許文献1の空気調和機では外気OAを利用するが、外気OAを供給するために外気供給部としてファン等を備えなければならず、特別の送風装置等の外気供給手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、複数列のコイルからなる冷却用の1つの熱交換器において、一部の領域は複数列のコイルの大部分を冷水が通水して過冷却(潜熱処理)ゾーンを形成し、他の一部の領域はコイルの1列或いは数列に冷水を通水するが実質的に過冷却のない顕熱処理ゾーンを形成し、
上流からの空気を上記過冷却処理ゾーンと顕熱処理ゾーンとに分けて通過させた後に再び混合して下流に供給することを特徴とする空気調和機の熱交換器である。
また、前記熱交換器は4列16段のコイルを配置したもので、前記過冷却処理ゾーンは4列10段のコイル主管すべてに通水すると共に下部に露結による水を除去する排水装置を設け、前記顕熱処理ゾーンは1列6段のコイル主管に通水したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の空気調和機の熱交換器によれば、別途再熱コイルを用意する必要がなく、また熱源を別途用意する必要もなく、省エネ効果が期待できる。
また、1台の熱交換器を配置するだけでよく、更に従来の熱交換器の接続管の配置を換えるだけで改造できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】従来の再熱器を備えた空気調和機の側面図、
図2】従来の再熱を説明する冷房時の空気線図、
図3】本発明の実施例の再熱器を備えた空気調和機の全体の側面図、
図4図3の本発明の熱交換器の右側面図、
図5図4の同の左側面図、
図6図4の上流からの正面図、
図7】本発明の熱交換器での冷房時での空気線図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の空気調和機の熱交換器を用い実施例を、図3~5を参照して説明する。
[実施例]
図3は本発明の熱交換器を備えた空気調和機1の全体の側面図であるが、外気OAを取り入れる側を上流として、外気吸入口31から外気を取り入れ、フィルター2から外気吸入室3に外気を導入し、居室からの還気RAの取入口4からの還気RAと混合して熱交換器5に送り込み、熱交換器5は、制御弁911を介して冷水入口91から冷水が供給されジグザク状の経路を経て過冷却ゾーン5Aで過冷却処理を行い、結露した水をドレンパン93に溜めながら除去して絶対湿度を下げた空気(5A)と、垂直経路によって過冷却せずに顕熱処理ゾーン5Bで冷却した空気(5B)とを作り出し、熱交換した後の冷水は冷水出口92から排水し、両処理ゾーンからコイル室55に排出された空気(5A)(5B)とを混合して目標温度と湿度の空気を作りだす。そして、必要に応じて加湿器6で適度に加湿し、送風のプラグファン7で吸引し送風して、室内給気室8で送り込んで給気口81から居室に吹き出して給気SAする。
【0009】
ここで、更に好適な実施例の熱交換器5について、図4~6に沿って詳細に説明する。
実施例の熱交換器(コイル)5は、一対のコイル枠体52の間に、コイル主管51を水平に4列16段に配置し、コイル主管の両端をヘッダー管53で接続したものであり、図4図5に示すように1列1段から4列10段までの過冷却処理ゾーン5Aは全てのコイル主管51には冷水が通水するようにヘッダー管53でジグザグに接続している。
しかし、1列11段から15段、及び、2列10段から16段、3列11段から15段の範囲はコイル未接続ゾーンでコイル主管51はヘッダー管(接続管)53では接続していないため冷水は通水しておらず熱交換に関与していないが、4列10段から4列16段までは図4及び図5に示すように、垂直の3本のヘッダー管531で接続され顕熱処理ゾーン5Bが形成され、過冷却処理ゾーン5Aのコイル主管であるヘッダー管532からの冷水は4列10段からの顕熱処理ゾーン5Bのコイル主管51を通過する空気を顕熱処理して4列16段のコイル主管531及び冷水出口92から排水される。
このコイル主管531は上下に短い距離の配置で、ほとんど冷却には関与することがなく、かつ、冷却を終えた処理水であるので、実質的に過冷却のない顕熱処理ゾーンを形成している。
【0010】
この実施例では、最初のコイル主管51ついて、冷水入口91は1列1段のコイル主管51の一方の端部に接続され、他方の端部は水平のヘッダー管534(図5)で3列1段のコイル主管51の端部に接続され他方の端部は1段上の4列2段のコイル主管51に斜行するヘッダー管533(図4)によって接続され、このコイル主管51は水平のヘッダー管534(図5)によって2列2段のコイル主管51に接続される。こうしてヘッダー管53によって、過冷却処理ゾーン内ではジグザクにより上のコイル主管51に接続される。そうして、上述したように4列10段からの顕熱処理ゾーン5Bのコイル主管51は顕熱処理をして4列16段のコイル主管531及び冷水出口92から排水される。
【0011】
[作動]
以上のような構成の熱交換器5を通過する空気の状態を図7の空気線図で説明する。
図3のような、空気調和機1において、まず、外気OAと居室から還気RAを外気吸入室3で混合するが、図7に示すように、温度35℃、湿度57%(相対湿度、以下湿度は相対湿度)の外気OAの風量比30%(A点)と、温度28℃、湿度50%の還気RAの風量比70%(B点)を外気吸入室3で混合して、温度30℃、湿度54%(C点)の空気として、熱交換器5に供給する。
この外気吸入室3のC点での空気は、熱交換器5の下部の過冷却処理ゾーン5Aと上部の顕熱処理ゾーン5Bに分かれる。
【0012】
上部の顕熱処理ゾーン5Bではコイル主管は4列4段で熱交換し、D点の26℃68%で熱交換器5からコイル室55に排出され、下部の過冷却処理ゾーン5Aでは、4列9段のコイル主管51全てで冷却されるので、E点の露点温度近くまで下げられ、以降飽和線に沿ってF点まで冷却される。このとき結露が発生するが、この結露水は熱交換器5下方に設置したドレンパン93から外部に排出される。したがって、F点では13℃、湿度約98%で熱交換器5からコイル室55に排出される。
コイル室55では、D点の顕熱処理ゾーン5Bからの26℃68%の空気と、F点の過冷却処理ゾーン5Aからの13℃、湿度約98%が混合され、実質的に再熱機能を備えた温度18℃、湿度87%程度の空気が得られ、室内給気室8から居室に給気SAされることとなり、実質的に再熱機能を備えた空気調和機を形成する。
以上のように、前記実施例は1例にすぎず、最終出口G点の温度及び湿度は、過冷却処理ゾーン5Aと顕熱処理ゾーン5Bの冷却の程度を調整することによって、調整することができる。
【0013】
以上のように、本発明の実施例の空気調和機の熱交換器によれば、別途再熱コイルを用意する必要がなく、またヒーター等の熱源を別途用意する必要もないので、省エネ効果が期待できる。
また、1台の熱交換器を配置するだけでよく、更に従来の熱交換器の接続管の配置を換えるだけで改造できるという利点があり、保守も容易である。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【符号の説明】
【0014】
1・・空気調和機、2・・フィルター 、
3・・外気吸入室、31・・外気(OA)吸入口、
4・・還気(RA)取入口
5・・熱交換器、5A・・過冷却処理(潜熱)ゾーン、5B・・顕熱処理ゾーン、
5C・・コイル未接続ゾーン、
51・・コイル主管、52・・コイル枠体、
53,531,532,533,534・・ヘッダー管(接続管)、
55・・コイル室、
6・・加湿器、7・・プラグファン、
8・・室内給気(SA)室、81・・給気(SA)口、
91・・冷水入口、911・・制御弁、92・・冷水出口、
93・・ドレンパン.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7