(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040975
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】滑り案内装置及びそれを用いたエアチャック
(51)【国際特許分類】
F16C 29/02 20060101AFI20230315BHJP
F16C 17/12 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
F16C29/02
F16C17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021167731
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】392017222
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 信彦
【テーマコード(参考)】
3J011
3J104
【Fターム(参考)】
3J011BA02
3J011EA02
3J011KA07
3J011QA01
3J104AA43
3J104AA65
3J104AA70
3J104AA73
3J104AA75
3J104AA76
3J104BA52
3J104BA55
3J104BA80
3J104CA40
3J104DA06
3J104DA20
3J104EA02
(57)【要約】
【課題】 本発明による滑り案内装置及びそれを用いたエアチャックは、長期間使用した場合でもごみなどによる摺動の円滑性の低下を防止できる滑り案内装置及びそれを用いたエアチャックを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明による滑り案内装置は、断面コの字状の凹部を有し前記凹部の両側壁部に凹状軸受部を設けた摺動台と、前記摺動台の前記凹部に収納され両側に凹状軸接触部が形成されたスライダと、前記摺動台の前記凹状軸受部と前記スライダの前記凹状軸接触部との間に配設された円柱状摺動体とからなり、前記スライダが前記摺動台に対して摺動自在に組み立てられた滑り案内装置において、前記凹状軸受部表面及び前記凹状軸接触部表面にそれぞれ複数の線状突起部を形成したことを特徴とする。本発明によるエアチャックは、上記滑り案内装置においてスライダを2基併設することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面コの字状の凹部を有し前記凹部の両側壁部に凹状軸受部を設けた摺動台と、前記摺動台の前記凹部に収納され両側に凹状軸接触部が形成されたスライダと、前記摺動台の前記凹状軸受部と前記スライダの前記凹状軸接触部との間に配設された円柱状摺動部材とからなり、前記スライダが前記摺動台に対して摺動自在に組み立てられた滑り案内装置において、前記凹状軸受部表面及び前記凹状軸接触部表面にそれぞれ複数の線状突起部を形成したことを特徴とする滑り案内装置。
【請求項2】
前記スライダが前記摺動台の長さ方向に2基配設され、互いに摺動自在に形成されていることを特徴とする請求項1記載の滑り案内装置を用いたエアチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れた滑り案内装置及びそれを用いたエアチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
現在工作機械等において、滑り案内装置が広く使用されている。例えば特許文献1には、レールガイド内に、ベアリングを設けたリニアガイドを挿填して、リニアガイドをレールガイドに沿って往復移動させるレールガイドにおいて、リニアガイドのベアリングが接触するレールガイドの面に平行な二本の溝を設け、二本の溝の各々に、硬化処理を行った鋼材で製造したレール棒を挿入して、レール棒の一側面を溝より露出させ、この側面を露出させた二本のレール棒の間に、リニアガイドのベアリングを摺動可能に挿填して、リニアガイドをレールガイドに沿って往復移動させるリニアガイドとレール棒を設けたレールガイドが開示されている。この技術においては、ボールベアリングを滑り案内の軸受として使用している。
【0003】
特許文献2には、凹欠状の摺動溝を摺動方向・両側壁面に少なくとも一対形成した長尺状のレールと、該レールに跨架するように取り付けられて該レールの摺動溝と突出して接触する堤状の摺動部を有した断面略コの字状の摺動台とからなる滑り案内摺動ユニットにおいて、前記摺動台には前記レールの摺動溝に対向した内壁面に取付溝が形成されており、該取付溝と摺動溝との間にはそれぞれの溝に接触して堤状の前記摺動部となるころが嵌合され、該ころは摺動台側に固着されていることを特徴とする滑り案内ユニットが開示されている。この技術においては、ころは摺動台に固着されており、また
図3から明らかなように、ころとレールの摺動溝とは曲面同士で接触している。
【0004】
特許文献3には、両側面に軸方向に延びた摺動溝を有する案内レールと、該案内レールの摺動溝にそれぞれ対向する摺動溝を有して軸方向に相対移動可能に案内レールに組み付けられたスライダと、前記案内レール及びスライダの対向した摺動溝間に摺動自在に介装した円柱状摺動部材とを備えるとともに、前記摺動溝を横断面ゴシックアーチ形状とした直動案内装置が開示されている。この技術においては、円柱状摺動部材は摺動溝間に摺動自在に介装されているが、摺動溝表面はゴシックアーチ形状とされ、曲面同士で円柱状摺動部材と接触している。
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-210059号公報
【特許文献2】実開平1-143424号公報
【特許文献3】実開平4-58620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、摺動の軸受として複数のボールベアリングを使用しているが、長期間使用した場合ボールとボールの間にごみ等が入り込みやすく、摺動が円滑に行かなくなることがあった。また、特許文献2や3においては摺動の軸受として円柱状摺動部材を使用しているが、この部材と接している摺動溝表面が曲面であるため、摺動部材と摺動溝との接点付近にごみが侵入した場合、摺動の円滑性が損なわれやすいという課題があった。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みて、長期間使用した場合でもごみなどによる摺動の円滑性の低下を防止できる滑り案内装置及びそれを用いたエアチャックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため本発明による滑り案内装置は、断面コの字状の凹部を有し前記凹部の両側壁部に凹状軸受部を設けた摺動台と、前記摺動台の前記凹部に収納され両側に凹状軸接触部が形成されたスライダと、前記摺動台の前記凹状軸受部と前記スライダの前記凹状軸接触部との間に配設された円柱状摺動部材とからなり、前記スライダが前記摺動台に対して摺動自在に組み立てられた滑り案内装置において、前記凹状軸受部表面及び前記凹状軸接触部表面にそれぞれ複数の線状突起部を形成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるエアチャックは、断面コの字状の凹部を有し前記凹部の両側壁部に凹状軸受部を設けた摺動台と、前記摺動台の前記凹部に収納され両側に凹状軸接触部が形成されたスライダと、前記摺動台の前記凹状軸受部と前記スライダの前記凹状軸接触部との間に配設された円柱状摺動部材とからなり、前記スライダが前記摺動台に対して摺動自在に組み立てられた滑り案内装置を具備し、前記凹状軸受部表面及び前記凹状軸接触部表面にはそれぞれ複数の線状突起部が形成されており、前記スライダは前記摺動台の長さ方向に2基配設され、互いに摺動自在に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による滑り案内装置は、凹状軸受部表面及び前記凹状軸接触部表面にそれぞれ複数の線状突起部が形成されており、これらの突起部において円柱状摺動部材と接触しているため、接点近傍の空間が広くなりごみ等による摺動への影響を減少することができる。従って、長期間にわたり性能を維持できる滑り案内装置を提供できる。
【0011】
また、本発明によるエアチャックは、上記の滑り案内装置におけるスライダを摺動台の長さ方向に2基配設しこれらのスライダを互いに反対方向へ駆動することにより、物品を把持・解放するチャックとして機能することができる。これによりごみ等による動作への影響を減少させ、長期間にわたり性能を維持できるエアチャックを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例0012】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。
図1に本発明による滑り案内装置の要部模式図を示した。この図は、2個1組の円柱状摺動部材1のうちの片方について、摺動台31及びスライダ20との接触関係を示したものである。摺動台31の断面コの字状の凹部両側壁部に凹状軸受部32が、またスライダ20の両側には凹状軸接触部22が形成されており、さらに凹状軸受部32及び凹状軸接触部22の表面にはそれぞれ複数の線状突起部33、23が設けられている。これらの線状突起部23、33は円柱状摺動部材1の長さ方向に直線上に形成されており、これらの線状突起部23、33において、円柱状摺動体1と接触している。線状突起部23、33を設けることにより、円柱状摺動部材1との接触箇所が狭く明確になるだけでなく、線状突起部23、33両側に空間部ができることによりごみ等による動作への影響を防止することが可能となる。
【0013】
図2は、本発明による滑り案内装置をエアチャックに応用した実施例の(a)正面図及び(b)部分断面図を示す。
図3はこの実施例の斜視図であり、
図4は円柱状摺動部材1の位置を明確にするため摺動台31の一部を取り払った状態の斜視図である。断面コの字状の摺動台31内に2個1組のスライダ20を配置し、スライダ20の両側、摺動台31壁面との間にそれぞれ円柱状摺動部材1を配設する。スライダ20の両側には複数の線状突起部23を設けた凹状軸接触部22が形成されている。それぞれのスライダ20上部にはチャック爪21が形成されている。一方摺動台31の壁面両側にも凹状軸受部32が設けられ、凹状軸受部32の表面上に複数の線状突起部33が形成されている。円柱状摺動部材1は、線状突起部23、33を介してスライダ20及び摺動台31と接している。チャック本体30内には2個1組のスライダ20を
図2(b)における左右方向に駆動しチャックを開閉するための手段が設けられている。
【0014】
上記実施例のチャックは工作機械等に使用され頻繁に開閉動作を行うため、ごみ等が入り込みやすく、故障の原因になっていた。本発明によるエアチャックでは、スライダ20及び摺動台31上の凹状軸接触部22及び凹状軸受部32内の線状突起部23、33において円柱状摺動部材1と接触するため、接触箇所が狭く明確になるだけでなく、線状突起部23、33両側に空間部ができることによりごみ等による動作への影響を防止することが可能となる。
【0015】
上記実施例において線状突起部23、33は半径の異なる曲面加工の境界部として示したが、これに限定されるものではなく、凹状軸接触部22及び凹状軸受部32表面において他の部分より突出していればその形状は問わない。
本発明による滑り案内装置及びエアチャックでは、円柱状摺動部材とスライダ及び摺動台との間に線状突起部を設けたことにより、接点近傍の空間が広くなりごみ等による摺動への影響を減少することができる。従って、長期間にわたり性能を維持できる滑り案内装置を提供できる。